沢田研二 「DOWN」
from『彼は眠れない』、1989
1. ポラロイドGIRL
2. 彼は眠れない
3. 噂のモニター
4. KI・MA・GU・RE
5. 僕は泣く
6. 堕天使の羽音
7. 静かなまぼろし
8. むくわれない水曜日
9. 君がいる窓
10. Tell Me...blue
11. DOWN
12. DAYS
13. ルナ
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こちら関東では、今週は暖かい日が多かったです。
通勤途中に通る公園の桜も咲きはじめました。みなさまお住まいの地はいかがでしょうか。
改めて3月11日のジュリーのメッセージを胸に、10年目の春に思いを寄せ過ごしています。
延期となっていた映画『キネマの神様』の公開も改めて決定しました。暑い時期に観るのは内容的にも合っているかも・・・楽しみに待ちたいですね。
さて、『BEST OF NHK!』カテゴリーでの記事更新が続きます。
実は前回更新後に他のお題曲で少しずつ下書きをしていたところ・・・先日のポンタさん旅立ちの報を受け、今日は急遽お題を変えての一気書き更新。
走り書きのようになってしまいますが、若い頃から僕のヒーローの1人であったポンタさんに捧げる記事をここに残しておきたかったのです。
採り上げるお題は「DOWN」。
ポンタさんがかつて、自身の誇れるレコーディング・パフォーマンス作品としてジュリーのアルバム『彼は眠れない』を挙げていらした・・・この話は誰かジュリーファンの先輩に伺ったのだったか、何かの記事で読んだのだったか・・・。
とにかくその『彼は眠れない』収録曲の中でも、「DOWN」はポンタさんを送るお題にふさわしい1曲。ボ・ディドリー調ジャングル・ビートを取り入れた楽曲のロック・バンド演奏の主役は、ドラムスなのですから。
DVD『BEST OF NHK』で「DOWN」はdisc-3とdisc-5にそれぞれ収載されています。
当然ドラムスはいずれもポンタさんです。
↑ 猛るジュリー・ヴォーカルのバックで密かに豪快なハイタム連打を繰り出すポンタさん。disc-3収載、『歌謡パレード』より。
↑ 89年大晦日に降臨したジュリーとJAZZ MASTER。大黒柱・ポンタさんの熱演は、お茶の間ばかりか共演歌手のみなさんのド肝をも抜いたに違いありません。disc-5収載、『紅白歌合戦』より。
今日は追悼記事ということで、ポンタさんのことを中心に書いていきます。
僕が初めて、と言うか生涯唯一ポンタさんの演奏を生体感したのは、20歳の時に観にいった泉谷しげるさんのLIVEでした。
ちょうどLOSERが結成され、泉谷さんの新譜(僕は『80'sのバラッド』からリアルタイムで購入していました)の雰囲気がガラリとハード志向に変貌したタイミング。高校時代からバンドをやり、「ミュージシャン志望」の色気があった大学生の僕を、「ダメだ。プロはレベルが全然違う」と打ちのめし身の丈を知らされるには充分過ぎる圧巻のステージでした。
仲井戸麗市、下山淳、吉田建。
そして村上”ポンタ”秀一。
その後、LOSERのこのメンバーというのはプロの中でも格別凄いのだ、と学んでいきます。
空前のバンド・ブームを巻き起こした『イカ天』では建さんとポンタさんが審査員として登場。
ポンタさんの方はレギュラーではなくゲスト審査員のスタンスでしたが登場回数は多く、BEGINの比嘉さんのヴォーカルを大いに評価し「彼には電話番号教えたから。何かあったらブラシでも何でも俺がやる、と伝えたから」とテンション高く話して司会の三宅さんに「そっちの気があるの?」とイジられたり、バンド名は忘れましたがいぶし銀の素晴らしい演奏を見せてくれたドラマーさんに「いいドラマーは腰からやられるんだよな」とその身体を気遣ったり、一見コワモテなのに気に入ったバンドに声をかける時には「ロック少年」のような笑顔になるポンタさんに、とても癒されたのを覚えています(出演バンドの身になって想像すると、本当にコワイのはポンタさんではなく建さんですね笑)。
吉田建と村上”ポンタ”秀一は邦楽ロック最強のリズム隊。そしてそれを率いていたのは泉谷しげる。
絶対王者、泉谷しげる with LOSER。
と、今なお、日本のロック・リスナーの多くがそう認識しているでしょう。若い頃の僕もそうでした。
しかし僕は随分遅れてジュリーのファンとなりその歴史を後追いで学び、かつてJAZZ MASTERというバンドが存在していたことを知ります。
↑ 老若男女のロック信者よ、見よ!ヴォーカル含め、これが日本のロック・バンド最強のセンターラインだ!(disc-5より)
さらにポンタさんはJAZZ MASTER解散後も数年間、ジュリーのツアー・バンドとして帯同していた・・・早くにジュリーファンになっていたら、僕はもっとポンタさんの演奏を体感できていたのに、と思います。
ポンタさんは間違いなくパワー型ドラマーの最高峰。ところがパワー一辺倒でもない、というのがまた凄い。
例えば湊雅史さんのようにガッチガチのチューニングで「音を聴けばその人だと分かる」タイプではなく(まぁこれは僕自身の耳のレベルが低いこともありましょうが)、変幻自在の仕事人。それがポンタさんの真の凄さであり、長きに渡る日本の音楽シーンへの貢献の証ではないでしょうか。
例えば松任谷由美さんのアルバム・クレジットを見て「えっ、これポンタさん?!」と驚かされた経験も。
考えてみれば、アルバム『彼は眠れない』の音源だけでも「僕は泣く」も「堕天使の羽音」も「静かなまぼろし」もポンタさんのドラムなのですからねぇ。
さて、『BEST OF NHK』の「DOWN」。
収載された2ステージはメンバー構成こそ違えど(『紅白』の方はギター2本)アレンジはほぼ同じで、演奏の印象は似ています(つまり、ギター1本体制時の柴山さんが凄すぎる、とも言えます)。
ただ、レコーディング音源との比較となるとやはり生演奏の映像は随分違う、と感じます。
そうそう、「DOWN」レコーディング音源にもアルバムとシングル2つのヴァージョンがありますね。音の厚みやエンディング等、シングルの方がLIVE感の強い仕上がりです。
後追いの僕は詳しい経緯まで把握できていませんが、「ポラロイドGIRL」の「ポラロイド」が商品名ということでNHKでの演奏がNGとなり(やむを得ないとは言え、ジュリー久々のシングル・ヒットに水を差したような感じで、勿体無い!と多くのファンが残念に思ったことでしょう)、紅白の演目は「DOWN」を抜擢、そのままアルバムからの第2弾シングルとして新ヴァージョン製作、という流れで合ってるのかな?
いずれにしても2つのレコーディング音源はもちろん素晴らしい。
それでも『BEST OF NHK』の映像の方が「ロックバンド」のインパクトは強いのです。
ポンタさんのドラムスは、まずタムのステレオ感がステージ映像ならでは。
加えてブリッジ部でのスネアとキックのコンビネーションが圧巻です。
すれ違う夢が
E F#m7
重なり合っていく Oh ♪
E F#m7 C#7
ここだけジャングル・ビートのリフを離れ、スラッシュ・メタルのような疾走感、倍速感覚が味わえます。
他パートだと、スライド・ギターがメチャクチャ前に出てるんですよね~。
↑ このキャプチャーはスライドのシーンではないけど、JAZZ MASTERの斬り込み隊長・柴山さんのアップも今回は載せておきませんとね。
ジュリーについては、disc-5の方が個人的には好み(disc-3もクールでカッコ良いですが)。
歌も動きもテンションが高く、バンドメンバーもジュリーに引っ張られて大暴れしています。
建さんがここまで派手に動き回る映像は珍しい、と改めて思いました。
89年の紅白ではジュリーはタイガース名義での出演もあり、準備段階から相当気合が入っていたのかな。
最後に、お題曲からは離れますが、ジュリー関連映像の中で僕が個人的にイチオシするポンタさんのベスト・パフォーマンス・シーンを紹介させてください。
ズバリ『サーモスタットな夏』ツアーDVDから、バンドのインストです!
みなさまご存知の通り2010年までのジュリー・ツアーでは、セットリストを大きく前半、後半に分けたジュリーの着替えタイムがあり、その間バンドがインストを演奏してくれます。
演目はツアーによって柴山さんのオリジナル曲だったり、洋楽カバーだったり、井上バンド時代には『太陽にほえろ!』挿入曲であったり様々ですが、97年『サーモスタットな夏』ツアーでは、「PEARL HARBOR LOVE STORY~プログレッシブ・ヴァージョン」とも言うべき名演が披露されています。
セトリ前半のラストが「PEARL HARBOR LOVE STORY」で、ジュリーがいったん退場したと思ったら間髪入れずに始まるのがこのインスト。
「PEARL HARBOR LOVE STORY」は余韻が重要な曲ですから、このインスト・アイデアはステージ全体のバランスや完成度を高めている意味でも、本当に素晴らしい!
特にエンディングで全パートがビシ~ッ!とフレーズを合わせる時にカメラがポンタさんを抜くシーンに痺れます。直後にジュリーがカッ飛んできて、後半1曲目「時計~夏がいく」が始まるという・・・絵的にも音的にも最高にカッコ良いので、DVDをお持ちの方は是非観返してみてください。
僕が『ジュリー祭り』で本格ジュリー堕ちを果たし最初に購入したDVD作品が『サーモスタットな夏』でした。
アルバム自体が大好きなこともありますが、ツアーDVDとしても一連の作品の中で今でもトップクラスに好きな映像です(盟友・YOKO君もお気に入りらしく、「風邪をひいたらサーモのDVD観て治す!」とよく言ってます)。
翌98年の『ROCKAN' TOUR』ではドラムスがGRACE姉さんにチェンジ(ポンタさんの推薦だった、とじゅり勉過程で聞いたことがあります)しています。大好きな『サーモスタットな夏』は、ポンタさん最後の帯同となるジュリー全国ツアーだったのですね。
心より、ポンタさんのご冥福をお祈り申し上げます。
さて次回も『BEST OF NHK!』カテゴリーの更新を予定しています。
disc-1から70年代の名曲がお題。下書きは結構進んでいるので、さほど間を空けずに更新できると思います。
最近の僕は会社の定期健康診断で腎臓が引っかかり病院のお世話になったりしていますが(初めて肉体をスキャンされました・・・)、とにかくこのコロナ禍です。
みなさまもどうぞお身体ご自愛ください。
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コメント
DY様 真夜中に失礼します。
ポンタさんの訃報、ショックでした。
早すぎます。ご冥福をお祈りいたします。
なかなか上手く表現できなかったのですがこの曲がドラムとベースが核なのはわかります。イヤホンで聴いていて今更感じたんですが、ドラムって叩くんじゃなくてスティックを落としてるんだな、と。
ドラムの落ちて跳ね返る音とベースを弾く音が空中でぶつかって不思議なリズムが耳に降ってくる感覚が心地よかったです。
投稿: nekomodoki | 2021年3月27日 (土) 01時12分
nekomodoki様
ありがとうございます!
そうなんですよ~。
僕も(結局モノにはなりませんでしたが)中学時代にドラムをやっていまして、叩きつけるよりも「跳ね返す」動作の方が重要だと教わりました。
改めて「DOWN」の映像でポンタさんの演奏を観ると、叩いた直後のスティックの跳ね返りが強烈であることが分かります。
僕らジュリーファンとしては、もう一度ジュリーと一緒に・・・と漠然と思い続けていた最重要の方だったような気がします。
改めて、ポンタさんのご冥福をお祈りいたします。
投稿: DYNAMITE | 2021年3月29日 (月) 10時03分
DY 様
この頃 ジュリーと共に演った方々の旅立ちを知ることが、さみしくつらいです。先日この端末で、何気なく新聞の画面にポンタさんのドラムを叩く写真が何枚も載っていて、ポンタさん特集なんだと。ところが、さよなら、? ! ......
言葉が出ませんでした。
わたしにとってポンタさんはジャズドラマーだったので、ジュリーと一緒に演っているのを知った時は、本当に驚きました。
スタジオライブ、安藤優子さん司会の番組、神々の宴。YouTubeで遭遇して保存、いつでも観て聴いていました。ローリングストーンズとサーモスタットな夏。これからも変わらず観て聴いていると思います。
投稿: ジュリーのすゝめ | 2021年4月 6日 (火) 22時56分
ジュリーのすゝめ様
ありがとうございます!
僕は仕事中にポンタさんの訃報を同僚から聞き絶句・・・ロック好きなら誰もが知る人でした。
なるほど、ジュリーのすゝめ様は当初ジャズ・ドラマーとしてポンタさんをご存知でしたか。
一般的にはパワフルなロックドラマーとして有名なポンタさんですが、考えてみればジャズ、フォークと幅広いルーツを持っていらしたんですよね。
僕も、これからも『サーモスタットな夏』、観続けると思います。
投稿: DYNAMITE | 2021年4月 8日 (木) 09時04分
DY様
こんにちは。相変わらずひと月も経ってからのコメント、お許しを。
私も初めてポンタさん見たのは1989年?、大阪南港の夏のロックフェス、出演は私のお目当てRCサクセションその他、ブルーハーツ、SION、そしてポンタさんがドラムスの泉谷しげる&ユーザーでした。チャボはRCと掛け持ちで大変そうだったのと、RCの出番直前に大雨が降ったことなんかが思い出されます。
ポンタさんはジュリーの他にチャボバンド、麗蘭、3Gとチャボがらみのライブ、録音で私にはお馴染みなんですが、圧倒的な存在感の割に「歌の伴奏者」としての奥ゆかしさみたいな感じが大好きでした。
お題曲はさほど好きじゃないんですが(すみません)、ジュリーでポンタさんと言えば私には「銀の骨」がベストトラックかなあ?
ご冥福をお祈りします。
投稿: ねこ仮面 | 2021年5月 5日 (水) 10時14分
ねこ仮面様
ありがとうございます!
大阪南港のフェス、凄いメンバーですね。良い時代です。
僕もポンタさんの演奏を生で観たのはLOSER結成直後でしたが、その1度きりになってしまったことが悔やまれてなりません。
仰る通り、「銀の骨」のドラムは素晴らしいです。どちらかと言えばバラード寄りの楽曲であのドラムス、ポンタさんがアレンジ能力にも長けていらしたことを証明していますね。
ポンタさんを敬愛されているジュリーファンの先輩に「この曲のドラムについて書いてください!」とお声がけ頂いたこと等、懐かしく思い出されます。
投稿: DYNAMITE | 2021年5月11日 (火) 09時14分