« 謹賀新年 | トップページ

2021年1月14日 (木)

原田マハ 「キネマの神様」



こちら関東1都3県では1月8日に緊急事態宣言が発出され、また不安な日々が続いています。
みなさまお変わりないでしょうか。

去る11日には「瞳みのる&二十二世紀バンド」四谷区民ホール公演が予定通り開催されましたが、僕は無念ながら参加自粛ということになってしまいました。
もちろん、感染防止対策を徹底しての開催と事前に聞いていました。ただ僕は役職上、緊急事態宣言下でのイベント等への参加自粛とする勤務先のガイドラインを部下に指導せねばならない立場でもあり・・・苦渋の決断を迫られたのです。
2012年以降毎回必ず参加していたピーさんと二十二世紀バンドのツアーを今回初めて欠席したことは、本当に痛恨の極み。
止むを得ない決断だったのだ、と自分に言い聞かせ、「この無念は5月に予定されている四谷左門町LIVEで晴らす!」と、なんとか気持ちを切り替えたところです。

一方ジュリーのLIVE活動再開は未だ見通しの立たない状況ですが、ジュリーファンとしての近々の楽しみは4月公開予定の映画『キネマの神様』ですね。
公式サイトでは予告編映像もリリースされ、映画館でも流れ始めているとか。

そこで今日は、原田マハさんの原作小説「キネマの神様」のレビュー記事を書かせて頂きます。

注:「キネマの神様」のフレーズ検索等でお越しくださった、「はじめまして」の方々へ。
 こちらは沢田研二さん(ジュリー)のファンブログです。
 この記事もジュリーファンとして書いておりますので、一般的な書評やレビューとは若干視点が異なるかと思いますが、その点あらかじめご了承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。


既に本をお読みになっているみなさまはご存知の通り、原田さんの原作は映画『キネマの神様』公式サイトでのキャスティング情報や予告編映像などから推測される映画のあらすじとは大きくストーリーが異なります。
ですから原田さんの原作を読んでも「映画版の重要なネタバレ」にはなりません。
むしろあらかじめジュリー演じるゴウの性格やゴウをとりまく人間関係を予習しておくことで、映画の基本的設定を理解しやすくなると思いますので、是非公開前に一読されることをお勧めいたします。
何より、本当に素晴らしい物語なのです。

僕は結構本を読む方だと思いますが、読了した瞬間にこれほど暖かい気持ちになれる小説などそうそう出逢うこともありません。
今回の更新が、原作未読のジュリーファンのみなさまへのご案内、この名作を手にとる一助となれば幸いです。
よろしくお願い申し上げます。


さて、憎きコロナ禍さえ無ければ、志村けんさんの主演で昨年末には公開され今頃は世の話題となっていたはずの映画『キネマの神様』。
天国に旅立たれた志村けんさんに代わり、志村さんや製作陣と深い関わりのあったジュリーが「代役主演決定!」とのニュースが飛び込んできた時、僕はすぐに原作を読もうと勇みましたが、少し考えてしばらく待つことにしました。
と言うのは、小説が映画化される場合、表紙や帯などに映画の予告ヴィジュアルを押し出した装丁で改めて再販配本されるのが王道で、「キネマの神様」もそうなるだろうと思ったからです。

予想は当たり、昨年秋には最寄りの本屋さんで新装版の文庫がド~ンと平積みに。僕は満を持してそちらを購入したのでした。
このような表紙になっています。

Kinema

原作の主人公は、映画でジュリーが演じる「ゴウ」の娘さんで、名前は「歩(あゆみ)」。
映画を愛し、映画関係の仕事でエネルギッシュに働く女性です。
原作は一貫して彼女の一人称視点で物語が進んでいきます(したがって、映画ではジュリーとダブル主演を張る菅田さん演じる「若き日のゴウ」については原作では描かれません)。

ギャンブルで借金まみれになり母娘を振り回しながら、開き直って飄々と暮らす父「ゴウ」に呆れつつも、「無類の映画好き」は父と娘の共通点であり絆。

そして「歩」自らの人生にも大きな転機が訪れます。
意地と信念の決断とは言え、突然の会社退職。
なんとか「ゴウ」をギャンブル中毒から脱出させようと奮闘する母親と、持ち金を管理されるやギャンブルができず生気を無くしてゆく父親。そんな両親に構ってばかりもいられなくなり・・・といった感じでスタートした物語は、ギャンブル資金を失い失踪中の「ゴウ」が仮のねぐらとしたネット喫茶で「インターネット」の世界に初めて触れ、何気なく映画談議を投稿したことで劇的に変化します。
「ゴウ」の投稿が老舗の映画雑誌『映友』編集部の目に留まったのです。

”映画ブロガー”「ゴウ」の誕生。

この「変化」が起こって以降のストーリーはもうドキドキの連続、一気読み必至なのですよ~。

すべての登場人物が魅力的ですが、中でも僕が特に惹かれたキャラクターが2人います。
ちなみにこの2人、いずれも現時点で映画の方ではキャストの確認ができていないので、スクリーンに登場しない可能性が高いのですが・・・。

ひとりは「歩」の再就職先となった『映友』編集部の先輩編集者、「新村穣」。
「歩」は当初彼に「ぶっきら棒でいけ好かない」印象を持っていたのが、同僚として様々な難題に共に立ち向かってゆく中で徐々に彼の本質や才覚を知り、不思議な親愛の情を抱くようになります。

作者の原田さんには、原田さんよりずっと早く若くして作家デビューを果たしたお兄さん(原田宗典さん)がいらっしゃいます。
「キネマの神様」(原作小説)の主人公「歩」は原田さんご自身がモデルとのことですが、作中で「歩」は「ゴウ」夫妻の一人娘で兄弟はいない設定。
もしかしたら原田さんはその代わりに、この「新村」にお兄さんのキャラクターを投影されているのではないかな、と僕は想像しています。

もうひとりは、「ローズ・バッド」なるハンドルネームの投稿者。
映画批評で「ゴウ」と散々論戦を戦わすネット上の強者(つわもの)で、その正体を巡る顛末は作中で大きな肝となっています。
つまり読者は、風貌も年齢も国籍も、性別すら謎のまま「ローズ・パッドの投稿文」だけでそのキャラクターに魅せられていくのです。

とにかく原田さんの描く「ゴウ」のブログ投稿(「ゴウ」は文章書きとしては素人なので、当初は「です・ます」と「だ・である」が混在するなどしながらも、映画作品の長所・・・「陽」の部分を推しまくった情熱漲る文章でグイグイと読者を引き込みます)と、「ローズ・パッド」のコメント投稿(作品を本質的には評価しつつも、その奥に秘められた監督や製作者の「闇」の部分を掘り起こし、理路整然と「ゴウ」の見落としや見識不足を指摘するクールかつウィットに富んだ文章で読者を戦慄させます)の書き分けが本当に圧巻です。
当たり前のことかもしれませんが、プロの作家さんというのは凄いですね。

サニーサイドの「ゴウ」と、ダークサイドの「ローズ・バッド」の対決。
「歩」は最初にローズ・バッドから挑戦的な投稿があった際、正体不明の「只者ではない」文章の攻撃力に怯え、「ゴウ」が傷ついてしまうのではないかと心配します。
しかし「ゴウ」の長年の映画仲間「テラシン」や先述の「新村」などは「ゴウさんはそんなタマじゃない」と言い切ります。

実際に「ゴウ」は「テラシン」達の予想通り一層奮起し大活躍するばかりか、文章や考察も次第に練れていき(「ゴウ」の投稿文章が徐々に達者になっていくあたり、作家・原田さんの匠の技と言えましょう)、やがてネット上の宿敵であるはずの「ローズ・バッド」との関係も少しずつ変わってきて・・・。

「ゴウ」と「ローズ・バッド」対決の行方は?
そして「ローズ・バッド」の正体とは?

「ゴウ」一家の生活や、「歩」の仕事はうまくいくのか?

さらには「テラシン」が支配人を務める「街の小さな映画館」の閉館騒動なども絡んで、ストーリーは最後までドキドキの糸を切らすことなく、穏やかに疾走します(「穏やかに疾走」なんて表現はあり得ないのでしょうけど、僕の貧困な語彙力ではそうとしか書けない汗)。

僕も末端ながらこうしてブログを続けていて、どちらかと言えば「ゴウ」のようなサニーサイドの発信スタイルを心がけてきました。
ですから「キネマの神様」の物語には感動はもちろん、大いに励まされ共感を抱きました。

そして今回の映画化。
映画の公式サイトで現在流れている予告編映像を見ると、「ゴウ」は若い頃映画製作に情熱を注いでいた、という設定のようです。
老いて失った情熱を、家族や友人の助けもあって取り戻す・・・そんな脚本に書き換わっているのかな。

したがって、僕が原作を読みながら映画化に思いを馳せ散々萌えまくった

あのジュリーがブロガーになる!

との妄想は、映画のストーリーでは実現しないかも・・・でもこればかりは観るまで分からないですね。


ちなみに僕は恥ずかしながら、原田さんの作品を読むのはこれが初めてでした。
素敵な作家さんに出逢った、と思っていて、先日は原田さんの「総理の夫」を文庫で購入。こちらも映画化され、今年秋に公開だそうです。
主演は今をときめく田中圭さん、今年は「原田マハさん原作の映画」同士、ジュリーと勝負じゃ~!


映画『キネマの神様』が4月にいよいよ公開となった時、多くの人が安心して映画館に足を運べる状況になるよう、なんとかこのコロナ禍を落ち着かせなければなりません。
僕らひとりひとりが危機感を持ち真剣に考え、今できることをコツコツやっていきましょう。

そして春には、『キネマの神様』を大ヒットさせましょう!

その映画公開の前に是非みなさま、原田さんの原作もお読みください。なんとも言えない温かい涙が溢れてくること、請け合いますよ~。

|

« 謹賀新年 | トップページ

ジュリーをとりまくプロフェッショナル」カテゴリの記事

コメント

DY様 こんばんは。

遅ればせながら「キネマの神様」本格的に読み始めました。
購入したのはかなり前なのですが、字の小ささにめげたのと、読む環境が・・・。

通勤の車内で読もうと思ったんですが、距離は近いのに乗り換えが多く乗車時間が3分とか10分とかで落ち着いて読めん。

家で読もうとすると、下僕(人間)が何かに夢中になってるのが許せないご主人(猫様達)に叱られる。
今もキーを打つ手をベロベロなめまわしてくる~。

というわけで、猫様方が完全にお休みになった夜中(家の猫Sは夜しっかり寝ます)
しゅくしゅくと読んでいくことにします。

40ページほど読みましたが「憎み切れないダメ男」がジュリーに似合いすぎ。

投稿: nekomodoki | 2021年1月16日 (土) 21時10分

nekomodoki様

ありがとうございます!

僕も20代の頃猫を飼っていましたから、本を読んだり楽器を弾いたりすることに集中させてくれない!という下僕(笑)の悩みは分かりますよ~。

でも、この「キネマの神様」原作小説は本文で書いた通り、「ゴウ」がブロガー・デビューを果たして以降は意識せずとも知らず知らずのうちに集中してページをめくっている・・・そんな展開が待っています。
ご主人様もそんな下僕の姿を見て、きっとお許しくださるはずです(笑)。

読了されましたら、また感想をお聞かせくださいね。

投稿: DYNAMITE | 2021年1月18日 (月) 12時18分

DY様

「なるほど、そうきましたか(笑)」的なご伝授ありがとうございます。

ただ、私は原作未読の場合の映画は、映画が先、原作は後の習性がありまして(笑)、ジュリー繋がりでいえば『魔界転生』など、その最たるものです(笑)

お陰で、派生しまくって、今や柳生十兵衛マニアです(笑)

でも、これってカバーから入った音源マニアと同じ習性かも⁉️

私の場合は今回も原作が後になるかも。

追伸

ピーさんのライブ不参加の苦渋の決断、非常に共感を覚えます。
ロック好きとしては、「個」と「公」の自分の中の葛藤をどう処理するかが、絶えず問われている気がしている毎日です。
特に本当に問題なのは、コロナそのものではない気がしていますので。

ジュリーの詞で言えば、「放射能に罪なし」でしょうか。

投稿: Mr.K1968 | 2021年1月18日 (月) 22時55分

Mr.K1968様

ありがとうございます!

もちろん「キネマの神様は映画の後で原作を読んでも感動は変わらないと思います。
記事本文にも書いたように、映画では原作の設定を生かしつつ、脚本が大きく書き換えられているようですから、それぞれ違った感動が味わえるのではないでしょうか。

そうそう、せっかくプロレスファンのMr.K様からコメントを頂きましたので、僕がいつも愛読している新日本プロレスファンのブログ様の記事をここでご紹介させて下さい。

https://www.njpwfun.com/entry/2021/01/17/093000

管理人の川野さんは僕らよりずっと若い方ですが、見事「昭和のスター」の本質を我らがジュリーに喩えてくださっています。
プロレスを観ていない一般のジュリーファンのみなさまにはよく飲み込めない内容かと思いますが、Mr.K様なら大丈夫でしょう!

川野さんのブログは本当に面白く、数あるプロレスファンブログの中でも考察と想像力が抜きん出ています。
この機に是非、他の記事もお読みくださいませ。

投稿: DYNAMITE | 2021年1月19日 (火) 09時17分

DY様

川野さんのブログのご紹介ありがとうございます。

読みました。このご年齢でこの内容、凄いですね。

プロレスを見ることは、ものの見方を考えることだと、昔、誰かが言ってましたが(笑)、川野さんのブログには、ジャンルに対するまっすぐな愛がベースにあって、その上で独自の考察が乗っている感じがします。

他の記事も拝読してみます。

追伸
リングや道場におけるアントニオ猪木の生き様が、プロレス界のジュリーだというのが、私の自説だというのは変わっておりません(笑)
(ルックスと事業欲だけは除きます(爆))

投稿: Mr.K1968 | 2021年1月19日 (火) 12時46分

Mr.K1968様

ありがとうございます!
(ブラウザによってはサイドバーの反映が遅れていますが、重複のコメントは削除させて頂きました)

川野さんのブログは、開催試合の翌日にその大会のポイントを熱く語る、というスタイルの記事が多く、毎日の更新がとても楽しみです。
もしMr.K様がまだ『新日本プロレスワールド』に入会されていないようでしたら、川野さんのブログを日々追いかける意味でもすぐに入会をお勧めいたします(笑)。
月額999円で、主要大会の全試合リアルタイム配信(もちろん遅れてのアーカイブ鑑賞も可能)がありますし、何と言っても過去の試合が見放題。
Mr,K様も熱く燃えたであろう、「対Uインター」のドーム大会全試合や、平成維震軍vs誠心会館の名勝負など、充実すぎるコンテンツが山盛りですよ~。

ただし、入会直後の2週間ほどは極端な睡眠不足をご覚悟ください(笑)。

投稿: DYNAMITE | 2021年1月20日 (水) 09時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 謹賀新年 | トップページ