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2020年12月 3日 (木)

PYG 「花・太陽・雨」

『PYG/ゴールデン☆ベスト』収録
original released on single、1971
and album『PYG!』、1971

Pygbest_20201202220601

1. 花・太陽・雨(Single Version)
2. やすらぎを求めて(Single Version
3. 自由に歩いて愛して
4. 淋しさをわかりかけた時
5. もどらない日々
6. 何もない部屋
7. 遠いふるさとへ
8. おもいでの恋
9. 初めての涙
10. お前と俺
11. 花・太陽・雨(Album Version)
12. やすらぎを求めて(Alubim Version)
13. ラブ・オブ・ピース・アンド・ホープ
14. 淋しさをわかりかけた時(Album Version)
15. 戻れない道(Live Version)
16. 何もない部屋(Live Version)
17. 自由に歩いて愛して(Live Version)
18. 祈る(Live Version)

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本日12月3日は、僕が本格ジュリー堕ちを果たした『ジュリー祭り』東京ドーム公演記念日。
まるでこのタイミングに合わせたかのように、予約していたDVD『BEST OF NHK』も届きました。

201203_1

毎年めでたい日ではあるのですが、おかげで今年は格別の気分です。
今は忙しいのでお預けですが、年末年始の連休にじっくり鑑賞するつもりです。まぁ、その前にチラ見は絶対しちゃうでしょうけどね。

2008年のあの忘れ難い東京ドーム公演から、早いものでもう12周年ということで干支もひとまわり。今年はあの日と同じ「仏滅」なのですな~。感慨深いです。

毎年この日は『ジュリー祭り』セットリストからお題を選んでブログ更新しています。
鉄人バンドのインストも含めて全82曲、既にすべてお題記事は書き終えていますが、特に2010年あたりまでに書いた記事の多くは僕自身の知識も足りず身の丈もわきまえず、という状態で到底再読に耐えうるものではありません。
ですから、今日も、そしてこれから先もこの12月3日は『過去記事懺悔・やり直し伝授!』のカテゴリーにて、同公演セットリストから「2度目のお題記事」を更新させて頂くことになります。

今年はPYGの「花・太陽・雨」を選びました。
この曲の過去記事は『ジュリー祭り』直後に本当にお世話になった、僕にとっては最初に「ジュリー道」を示してくださった先輩からのリクエスト曲として書いたのですが、ヒヨッコ丸出しで「考察記事」とはとても言えない内容となってしまっていました。
今回は、その時にはまったく触れずに済ませてしまった「シングル、アルバムそれぞれのヴァージョン比較」をメインに考察していきたいと思います。
よろしくお願い申し上げます。


そもそも僕が「PYG」というバンドを知ったのはかなり遅く、『ジュリー祭り』のほんの数年前のことでした。”第一次ジュリー堕ち期”の頃にYOKO君から「タイガース解散後にジュリーとショーケンが同じバンドに在籍していた」と聞かされとても驚いたものです。
まぁYOKO君にしても当時はバンド名を平気で「ピーワイジー」と発音していたくらいですからヒヨッコには変わりなかったのですが、僕よりはいくらか先を行っていた、と。
僕がPYGのベスト盤を購入し初めて「花・太陽・雨」の2つのヴァージョンを聴いたのは、ちょうどその頃だったんじゃなかったかな。もはや記憶が(汗)

アルバム『PYG!』を聴いたのは・・・これはハッキリ覚えていて『ジュリー祭り』後でした。
当時「澤會」さんが会員の新期加入を一時停止していて、僕のような『ジュリー祭り』堕ち組はなかなか会員になれずツアー・チケットの申し込みができない状況でした。そこで先述の先輩が『Pleasure Pleasure』ツアー前半のチケット予約を代行してくださり、送ってくださったチケットにPYGの音源(ファーストと『FREE with PYG』の2枚)が同封されていたのです。
先輩としては「新しいジュリーファン」である僕に「PYG」を聴いて欲しいとのことだったのですが、それにしても本当に色々とお世話になりっ放しで・・・改めて感謝、感謝なのです。

さて、みなさまは「花・太陽・雨」のシングルとアルバム、どちらのヴァージョンが好きでしょうか?
アルバム・ヴァージョンは当然アルバムで聴くことが本道ではありますが、冒頭に添付した『ゴールデン☆ベスト』は2つのヴァージョンいずれも収録していますので、「聴き比べ」には重宝します。
お持ちのかたはここで今一度聴き比べてみてください。

さぁ、どうでしたか?

拙ブログをお読みくださっているのはほぼジュリーファンでしょう。故に僕は、「もちろんシングルも好きだけど、どちらかと言えばアルバムの方が好き!」派が多数を占めるのではないか、と予想します。
僕自身がそうですから。

シングル・ヴァージョンの方が音源全体の完成度が圧倒的に優れていることを前提、承知の上で、「ジュリー・ヴォーカル」の1点を以ってアルバム・ヴァージョンに軍配を上げることになるのですね。
例えば

色のない花 この世界
   Am                G

春の訪れのない 私の
   C                      Bm

この 青春  に問いかけ る ♪
    Am  Em G  A7    C B7  Em

特に「春」の発声です。
この楽曲は滅々とした雰囲気が逆に大きな魅力で、サリーさんの詞も否定的な意味を持つ言い回しが多いのだけど、歌の主人公は暗闇の中にひとすじの光をかすかに見据えている、実はそんな前向きなメッセージもあって、アルバム・ヴァージョンのジュリーのヴォーカル、発声にはそれを感じることができます(ジュリーはシングルも同じようには歌っているのでしょうが、ダブル・トラック処理に重きを置いていること、ミックス・レベル自体が小さいこと等がその点を抑えてしまっています)。

それにしてもサリーさんの詞は凄い。「青春に問いかける」「青春に呼びかける」のフレーズは、これが40代とか50代の作品ならば普通に出てくるのかもしれませんが、サリーさんは当時まだ20代半ばですから・・・凄まじいまでの俯瞰力!(これは「やすらぎを求めて」にも同じような凄味があると思います)

タイトルの「花・太陽・雨」には「・・・」とその後に続く言葉が隠されていて、それが「花・太陽・雨・・・愛」であることはシングル・ヴァージョンを聴いても分かります。
しかしこの歌が「まよ(迷)える人」に宛てたメッセージなのだということは、アルバム・ヴァージョンでしか判明しません。
そう、アルバムの方はエンディングに追加のフレーズがあるんですよね。初めて聴いた時は驚きました。
ちなみに堯之さんのソロが入るタイミングもヴァージョン違い。そこも含めてアルバム・ヴァージョンの方が「歌詞が多い」(←身も蓋も無い表現ですみません笑)ことは比較上特筆されるでしょう。

では、演奏とミックスについてはどうでしょうか。
「どちらがより広く受け入れられるか」との観点に立てば、シングルの方が圧倒的に優れています。
並行移調のBメロに噛み込む大野さんのドラマティックなオルガン、エッジを効かせた大口さんのシンバルの刻み、スネアの音色。
そして堯之さんのギターも、ソロ部以外にヴォーカルの間隙を縫うフレーズがあります。このパターンは後の「今、僕は倖せです」に引き継がれていますね。

シングルでの堯之さんのソロは、「ギターのダブル・トラック」です。ただしそれはエフェクター採用ではなく「同じフレーズを二度弾く」という手間を惜しまない手法。
「花・太陽・雨」ではイントロのギター4拍打ちがジョン・レノン「マザー」のオマージュとしてよく語られますが、このリードギター・ダブル・トラックはジョージ・ハリスンのアルバム『オール・シングス・マスト・パス』での「同一のパートを複数同じように演奏し重ねてゆく」手法を彷彿させます。こちらは特にアレンジ・オマージュではないけれど、『ジョンの魂』と同じくフィル・スペクターが深く関わったアルバムであり、いかにも71年という時代を象徴する堯之さんのテイク、と言えましょう。
「速く弾ける」ギタリストが」世に登場したからといってそこからすべて右に倣え、とはならない・・・それがロックの面白いところです。

曲想とはかけ離れた表現かもしれませんが、シングル・ヴァージョンの「花・太陽・雨」の音作りは「キャッチー」と言ってよいと僕は思います。
一方で僕はアルバムの方の音の仕上がりも好きなんですよね・・・。
各楽器パートが淡々としているぶん、左サイドに振られたアコギに耳が奪われるのです。この歌の世界観にはアコギのストロークが目立つアレンジが合っている、とも思うのですがいかがでしょうか。

最後に、『帰ってきたウルトラマン』の話も今回は書いておきましょうか。
(「花・太陽・雨」に関する逸話としてかなり有名のようですから、ジュリーファンのみなさまも、少なくとも「そんな話がある」との知識はお持ちかと思います)
第34話「許されざるいのち」でこの曲がBGMとして採用されているんですよね。

昭和の特撮ヒーロー番組を単に「子供向けだろう」などとナメてはいけません。
「ヒーロー番組とは教育番組である」・・・これは、『仮面ライダーV3』や『快傑ズバット』で主を張った、僕の世代にとっては永遠のヒーロー俳優である宮内洋さんのお言葉です。
僕の経験からしますと、宮内さんのそんな名言が心に響き実感として受け止められるようになるのは、実際に番組を観ていた子供達が大人になってからのことではないかと思います。
幼い頃に観たヒーロー番組を再視聴した時、「そういえばこのシーンでこんなふうに感じていた、こんなことを学んでいた」と自らの成長過程を思い当たるのです。

ウルトラマンシリーズにも当然そんな面はありました。
ただ、『ウルトラセブン』では地球規模、或いは宇宙規模のスケールで人類の奢り、環境破壊、差別などの問題提起が多かったのに対し、『帰ってきたウルトラマン』ではもっと身近な、主人公(郷秀樹)の周囲の近しい人達が非業の運命を辿る、大切な人を失ってしまうというダイレクトに胸抉られるようなストーリーが多かったように思います。

『許されざるいのち』では主人公の幼少時代の友人が、自ら生み出した「命」(怪獣レオゴン)の犠牲者となる道を選びます。
懺悔なのか、けじめなのか、怪獣に向かってゆきそのまま命を断とうとする友人を阻止すべく、湖を泳ぐ郷秀樹。郷の脳裏に甦る友人と過ごした幼少期の記憶。
しかし結局友人を救うことはできなかった・・・。
「花・太陽・雨」はそんな一連のシーンで忽然と流れ始めます。イントロのギター4拍の説得力たるや、BGMとしてこれ以上ない!という効果です。

今までは考えていなかったのですが、もしこれが『七人の刑事』の「レット・イット・ビー」のように「シングルではなく敢えてアルバム・ヴァージョン」だったら事件だな、と思い今回再度確認したところ、さすがにここでは普通にシングル・ヴァージョンでした(YOU TUBEにてBGMシーンだけ上げてくださっているかたがいらっしゃいました。ありがとうございます!→こちら)。

「許されざるいのち」は71年12月の放映ですから、タイムリーなBGMであったとは言えるにせよ、幾多ある歌、もっと有名なヒット曲があったにも関わらずのPYG「花・太陽・雨」の採用には演出の執念、高いセンスを感じずにいられません。
上記のようなシーンだからこそ選ばれた歌。
ジュリーの発声やサリーさんの詞に希望を見出すのもそれはそれで一局ですが、やはり「花・太陽・雨」は胸かきむしられる悲しみのメッセージ・ソングとして聴くのが王道なのでしょうね。


それでは、年内の更新はあと3本の予定です。
2020年も残り1ヶ月を切りました。これからはコロナ禍に加えてインフルエンザの同時流行も心配です。

みなさまどうぞ気を抜かず、うがい・手洗いを継続させましょう。僕もなんとか気をつけて、この師走を過ごしたいと思います。

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コメント

DY様
 こんばんは。今年も残すところあと3週間ですか、コロナは長いけど体感的には早い1年でした。
 お題曲、名曲中の名曲ですね。一番PYGらしいと言うか、こんな音楽やりたかったんだなって意気込みが伝わって来そうなテイクです(シングルバージョン)。
 私の好みとしては断然シングル、ギターソロの圧がたまりません。バランス的には演奏がグッと前に出てる感じがロック!です。
 私がこの曲初めて耳にしたのは再放送の「帰ってきたウルトラマン」なんです。私が中1の年末か年明けくらいに明星か平凡で『沢田研二大全集』の特集があって、収録曲の歌詞(もしかしたらコードも付けて)が何曲か掲載されていて当時未知の「花・太陽・雨」の歌詞を読み子供心にいい詞だなあと思っていたんです。で、多分その後間もなくTVで「帰ってきた~」見てたら挿入歌で何か知ってる歌詞の曲が流れているなと思ったら、それがあの「花・太陽・雨」だった訳です。そのあと『比叡山フリーコンサート』買ってジュリーソロの「花・太陽・雨」を知り、その後PYGのカセットテープ(当時売ってたんですね~!)でシングルバージョン、数年後再発アナログ『PYGファースト』でLPバージョンにたどり着いた次第です。そう言えば『大全集』に収録されているのは『比叡山』のライブバージョンですね。今も時々針を落としています。

投稿: ねこ仮面 | 2020年12月10日 (木) 22時16分

DY様 こんばんは。

シングルレコードが随分前から見当たらず、アルバムとの違いがわかりません。
どんな風にあの音が出来てるのか軽く謎でした。フリーコンサートはまたアレンジが違うし。確認できたのはジュリー祭りでした。
イントロのバーンはギターの弦全体をを掌で叩いてたのか、キュイーンのきっかけ音はキーボード、それからすかさずスティックがドラムにタタンと落ちて歌に雪崩れ込む。(この流れがすごく好きです。)

PYGは生で何度か観てるんですよね。
でも当時はミーハーモード真っただ中でしたからジュリーショーケンにくぎ付け、周りはキャーキャー状態(私も含めて)
演奏をどうやってたかなんて全く上の空。
役立たずゴメン・・・。

ジュリー祭りの直後のDY様の記事、当時は
「ちょっとそれ違う」とか思ったこともあったけど、先入観無しで聴けばそうかも、と思うことも多くて、、改めて聴き直した歌がたくさんありました。

投稿: nekomodoki | 2020年12月11日 (金) 22時53分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

そうそう、考察するならLIVEヴァージョンも比較しないといけませんでしたね(汗)。

ねこ仮面様はシングル派ですか。仰る通り、ギター・ソロの圧はじめ、演奏についてはシングルの方が良いと僕も思います。
それでも僕がアルバム派なのは、やはりミックスレベルも含めたジュリー・ヴォーカル1点ということなんですよね~。

僕も『帰ってきたウルトラマン』は再放送で観た世代ですが、当時の記憶では「レオゴン」は覚えていてもBGM「花・太陽・雨」は意識できていませんでした・・・。

nekomodoki様

ありがとうございます!

「PYGを何度か生で観ている」・・・本当にうらやましく、頼もしい!
PYGについては、生体感された先輩方が意外と僕の周囲には少ないんですよ。是非いつかの機会に詳しいお話を伺いたいものです。

本文にも書いた通り、シングルはアルバムと比べて纏まりがよく「聴きやすい」と言ってよいと思います。
2009年のこの曲の過去記事は、ほとんどシングル・ヴァージョンしか頭に入っていない状態で書いたと思います。
身の丈をわきまえない内容で、今は自分で読み返す勇気すらありません(笑)。

僕自身の知見の低さはさておき、このブログが『キネマの神様』のゴウさんのような「サニーサイド」のスタンスに振り切れたのは、実はあの震災がハッキリとした契機になっています。
それ以前の記事は、可能ならすべて書き直したいくらいです・・・。

投稿: DYNAMITE | 2020年12月15日 (火) 12時30分

過ぎた記事にごめんね。

花・太陽・雨をあの時、書いてくださった事に意義かあったと思いダイさんに感謝しています。

あの曲に心血を注いだ中井さん、尭之さん、ショーケン、ヒロシ・・みんな逝かれてしまいましたね。

神田共立講堂や、日比谷の野音、確かな青春の場所でした。
自分の年代と一致したというだけの人生の幸運に過ぎませんが。

お若いダイさんにここまで取り上げて頂け、尭之さん始めミュージシャン冥利に尽きるのではないでしょうか。

コロナ渦の中、ご自愛下さいますよういつもお祈り申し上げています。

投稿: Fuji | 2021年3月13日 (土) 10時19分

Fuji様

ありがとうございます!

僕も本格的なジュリーファンとしてようやく10年以上のキャリアとなり、多くの先輩方と出逢いましたが、PYGのLIVEを生で観た、と仰る先輩は意外なほど少ないのです。
そんな中、Fuji様は最初からPYGや堯之さんのことを色々とお話してくださいましたね・・・「花・太陽・雨」を聴くと、あの頃を改めて懐かしく思い出します。

堯之さんと言えば、一昨年、勤務先の引越のため地下室の試聴盤資料を整理していたら、『井上堯之の世界』というCDが出てきました。
以後、愛聴しています。まだまだ勉強することは多いです。

Fuji様が『ジュリー祭り』直後の新規ファンの僕に色々とジュリーやジュリーをとりまく人達について教えてくださったこと、感謝の気持ちは一生忘れることはありません。
これからもよろしくお願い申し上げます。お身体どうぞご自愛ください。

投稿: DYNAMITE | 2021年3月17日 (水) 09時03分

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