沢田研二 「New York Chic Connection」
『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』収録
disc-42
1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection
(『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』全収録曲リストは、「恋から愛へ」の前回記事をご参照ください)
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”『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』再発売・熱烈推奨”のテーマでもう1曲、この機に書いておきたいと思います。
お題はシングル『渡り鳥 はぐれ鳥』のB面「New York Chic Connection」。「ロック」に特化したジュリーが好きなファンから支持の高い1曲のようですね。
今日は妄想考察系の記事となりますが、よろしくおつき合いください。
長いジュリーファンの先輩方なら、特にセールス全盛のポリドール期のシングルについて
「もしB面曲の方がA面だったら?」
と想像してみたことがあるのではないですか?
「あなたに今夜はワインをふりかけ」のような特殊な例を除き、「ファン以外にはまったく知られていないB面曲」がシングルA面として多くの人々の記憶に残っている」という架空の歴史を妄想。
実際のA面曲の実績を凌ぐヒットになっていたかもしれない、曲が違うわけですから当然衣装のコンセプトも違ってくる、この曲ならこういう衣装で、ベストテンは最高何位で・・・と、楽しい想像をかきたてられます。
その点で考える僕の個人的イチ推しは「お前のハートは札つきだ」ですかね~。
『Rock'n Tour '79』のLIVE音源なんか聴いてるとジュリーのハジケっぷりが伝わりますし、詞曲アレンジ演奏、何もかもあの時代ジャストのシングル・ヒットにふさわしい名曲たりえたんじゃないかな?
逆に、「これはB面だからイイんだよな」と思える曲もありますね。
大ヒットしたA面の裏側に隠れた大名曲。一般的には知られていなくても、ジュリーファンである自分はこの名曲を知っている、大切な宝物のように思っている・・・そんな状況自体が愛おしいという。
例えば「青い恋人たち」なんてどうでしょう?
A面が「危険なふたり」であることは揺るぎない、それでももしかしたらA面よりB面の方が好きかも、と1人胸をキュンキュンさせている。そんなスタンスの名曲。
で、今日のお題「New York Chic Connection」。
僕にとってはそのいずれのパターンにも当て嵌まるシングルB面曲なのです。
以下、色々と問題提起じみたことも書きますが、前提として僕はA面「渡り鳥 はぐれ鳥」、B面「New York Chic Connection」いずれも大好きな曲で、今回記事はその上での個人的妄想ということで誤解なきよう、よろしくお願い申し上げます。
「New York Chic Connection」は、楽曲の仕上がりを俯瞰するとまだまだ発展途上要素もあって、その意味では「いかにもB面曲」との印象です。
アレンジや演奏には、それまでのジュリー・ナンバーで徹底されていた時代先取り要素は無く、初期ニュー・ロマンティックの後追い感は否めません。もちろんエキゾティクスの腕前あればこそ出来ることなんですけど。
またこの曲は大沢誉志幸さんが作詞・作曲を一手に担っています。
大沢さんはソロ・キャリアでも自身の作詞作品は少なく、どちらかと言うと作曲特化型のソングライターで、「New York Chic Connection」の作詞については語感追及。
例えば「~tion」の英単語で語尾を揃える手法にしても、さえきけんぞうさんや佐野元春さんのような全体のストーリー性から意味を持たせ演繹法で編み出された単語並びではなく、思いついたまま列挙している感じです。
New York Chic Imagination
F D♭ C
New York Chic Temptation
F D♭ C
New York Chic Connection ♪
D♭ E♭ F
いや、カッコイイんですよ。
でも
「これほどスリリングなメロディーに、この手法は勿体ないなぁ」
・・・と、これはジュリーファン堕ち間もないヒヨッコ時代だった僕の、正直かつ浅はかな感想。
84年のこの時期にあの大沢さんの作曲作品をリリースするからには、「New York Chic Connection」が企画段階ではバリバリの「A面候補」だったと考えるのは自然ですし、当初大沢さんのこの曲には作詞家さん(時期的には三浦徳子さんとか大津あきらさんとか)のまったく違う詞が載る予定だったのではないでしょうか。
大沢さんの詞はあくまでプリプロ用だった、というのが僕の推測(妄想)です。
ゴキゲンな曲を手にしたジュリーとスタッフが、さぁどういう風に仕上げてやろうか・・・とそんな時、もうひとつのA面候補曲「渡り鳥 はぐれ鳥」に、「せっかくスペクトラムの新田一郎さんの歌なんだから、エキゾに加えてホーン・セクションを従えたステージングはどうだ?」との案が持ち上がる・・・「うん、これは行けるぞ。ド派手なジュリー復活にふさわしい!」
かくして「New York Chic Connection」はB面扱いへ。
「時間も無いし、大沢さんのプリプロの詞がなかなか雰囲気良いし、そのまま使っちゃえ。演奏はとりあえず今流行りのパターン踏襲で」
(いや、繰り返しますが全部妄想話ですよ汗)
しかし、ここで僕は言いたい(どん!と机を叩く)。
「ホーン・セクションを従えたド派手はステージング」シングル・ヒット展開案を「New York Chic Connection」でも試してみよう、と切り出す人は誰かいなかったのか!と。
絶対嵌る、と思うんです。
キーも金管と相性の良いF(ヘ長調)ですしね。
もともと曲自体がメチャクチャにカッコ良いし、後の「muda」のような圧倒的なブラス・パワー・ポップに化けていた可能性充分です。
詞の方は専門の作詞家さんが大沢さんのフレーズを生かす形で手を入れ、ニューヨークの雑踏をしたたかに生きるバイセクシャルな男のストーリー性を持たせます。
新田さんに土下座してA面B面をひっくり返し、「New York Chic Connection」は当時のセールス苦戦を取り戻して余りある爆発的な大ヒットに。
さらに、ジュリーの独立話も吹き飛ぶ!
あり得た・・・かもしれないジュリー史の妄想ですがいかがでしょうか。
そうなっていたら当然アルバム『NON POLICY』にはこちらが収録されていたでしょう。
曲順も変わって、ふさわしいのはB面1曲目(CD6曲目)。「シルクの夜」をアルバム大トリにシフト、というのはどうでしょう?
ひいては、ネームバリュー抜群の新田さんが作曲した「渡り鳥 はぐれ鳥」が何とシングルでしか聴けないB面曲という凄まじく贅沢なリリースとなっていたわけで、これはもう歴史的1枚です。
とは言え、現実にはひっそりとB面曲に留まる仕上がりとなった「New York Chic Connection」もそれはそれで素晴らしい。
一般には知られていなくとも、ファンだからこそ大切に聴きたい1曲。
やっぱり「歴史通り」が一番しっくりくる楽しみ方なのかな、とも思います。
新しいジュリーファンの方がもしこの記事を読んでくださり、未知の名曲「New York Chic Connection」に興味が沸いてきましたら・・・是非『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』ご購入を。
前回記事に引き続き、熱烈推奨いたします!
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コメント
DY様 こんばんは。
「New York Chic Connection」」
ん?どういう曲だっけ?(オイ)
レコード、引っ張り出してまず歌詞見て
(あ、何となく覚えてるような・・・)
で、針を落としたらアンプがヒドイ音!!
いつかなんて言ってないで早く全部CDにコピーしておくんでした。半分くらいしかやってない。コレクションやっぱ欲しくなります。
しかし、ヒドイ音ながら聴き返すと当時
うまく言えないけど妙に斬新だな、と感じたのを思い出しました。
投稿: nekomodoki | 2020年11月 6日 (金) 22時29分
nekomodoki様
ありがとうございます!
いや、実際この曲は斬新な名曲ながらも印象には残りにくいと思うのです。僕もこのBOXの中では、完全把握して好きになるまでに多少時間がかかりました。
メロディーは本当に素晴らしいので、たぶんアレンジのインパクトが薄いのかなぁ、と思い今回の記事になりました。
でも、名曲です。それは間違いありません。
レコードはどうしても擦れて劣化してゆくものですが、そこも含めて愛おしいアイテムなんだと思います。僕も昔買った洋楽のレコードで気に入ってるものは未だにとってあります。
やっぱり、ジュリーのシングルを今でも大切に保管されている先輩は本当にリスペクトしますし、羨ましいです!
投稿: DYNAMITE | 2020年11月10日 (火) 16時14分
DY様
こんばんは。ずいぶん冷え込んで来ましたね(久しぶりのリアルタイムのコメント)。コロナに振り回されているうちに今年もあと50日余りですか。
ジュリーのシングルカップリング曲、なかなか名曲が多いというのは私も同感、オリジナルアルバムに収録されていない曲では「夕なぎ」「旅立つ朝」「15の時」「I am I」あたりが私の超お気に入りです。AB面入れ替わっていたらよりヒット?の可能性一番高かったのは「胸いっぱいの悲しみ/気になるお前」じゃないでしょうか?作者両面同じで話もややこしくならないし(笑)
さてお題曲、DYさんの絶賛曲でもあるのに私は「…」です、またしてもごめんなさい。シングル盤も持っていますが針を落としたのは1度か2度、『ノンポリシー』未収録ということもありレア曲としての価値は認めつつも……。私にはちょっとメロディーが難解でアレンジが斬新過ぎて聴こえました。
あと、佐野さんや大沢さんの才能は理解していますが(お二方とも生ライブ経験しております)、(当時の)若手ミュージシャン起用を私はあんまり賛同出来てなかったな~。本人や加瀬さん、バンドのメンバーで作家陣のほとんどを固めて欲しかったんですが、それは一ファンの身勝手な希望、お題曲未収録ですが『ノンポリシー』はなかなかの名盤です。
投稿: ねこ仮面 | 2020年11月10日 (火) 22時18分
ねこ仮面様
ありがとうございます!
僕も、記事で書いたような贅沢な妄想もあり、この曲の実際の音源には「物足りなさ」を感じてはいます。
僕の場合はアレンジを斬新とは思えなかったんですよ・・・初期ニューロマンティックに乗っかっているようなイメージです。
しかし大沢さんの楽曲の素材がピカイチ、ジュリー・ヴォーカルとの相性の良さも間違いなく、その意味で名曲と考える次第です。
確かに「この曲がA面だったら・・・」のジュリー・シングル筆頭格は「気になるお前」かもしれませんね。
ただ、当時加瀬さんはジュリーの3連符適性を見抜いた上で「胸いっぱいの悲しみ」をA面曲として作ったんじゃないかなぁ、と想像しています。
投稿: DYNAMITE | 2020年11月12日 (木) 18時24分
当時 シングルA面の決定~経過の会議?をドキュメンタリーでTVでよく見た記憶があります。「アルフライラ ウィライラ」の決定前のボツ曲はマハラジャの社長のデヴュー曲になったり…。お題のA面「渡り鳥はぐれ鳥」は会議で三浦徳子さんが推しに推していた記憶があります。実質 新田一郎さんのカバー曲にA面が採用されたり、次回作が「AMAPOLA」だったり(それ以前の どん底辺りから)攻めてないなぁ~という時期だったように記憶してます。何が売れるか?に固執し過ぎていて…。この後のジュリーがやりたい事に妥協しない今に繋がっているような思います。
投稿: クリングル | 2020年11月15日 (日) 23時33分
クリングル様
ありがとうございます!
ジュリー・シングル製作会議と言えば、僕は一昨年でしたか、先輩から授かった映像で「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」の時のその様子を観ました。
そこで、作詞担当の三浦さんがセールス戦略についても会議の場にいらして深く関わっていたことを初めて知った次第です。
なるほど、「渡り鳥 はぐれ鳥」A面は三浦さん推しでしたか。
僕はこのA面曲も大好きですから痛し痒しなのですが、三浦さんが「New York~」の補作詞まで取り組んでいたら、また違った歴史が生まれていたかも・・・とは思ってしまいます。
確かに「攻めまくった」シングル「晴れのちBLUE BOY」のセールスが伸びなかったことで、それ以降は「どうしたら売れるか」の検討が純粋なコンセプトに先んじていた印象は否めませんね・・・。
投稿: DYNAMITE | 2020年11月18日 (水) 08時56分