ザ・タイガース 「海の広さを知った時」
from『自由と憧れと友情』、1970
1. 出発のほかに何がある
2. 友情
3. 処女航海
4. もっと人生を
5. つみ木の城
6. 青春
7. 世界はまわる
8. 誰れかがいるはず
9. 脱走列車
10. 人は・・・
11. 海の広さを知った時
12. 誓いの明日
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三連休後の今週は寒い日もありましたが、みなさまお変わりないでしょうか。
新型コロナウィルス感染の第3波がやってきているとのことで、よほどのことが無い限り気軽な旅行、遠出も躊躇われる日々。
一体いつまでこんな状況が続くのでしょう。
そんな中でも僕らにとって何より待ち遠しいのはジュリーのLIVE活動再開ですが、いましばらく辛抱の時間が続きそうですね・・・。
さて今日は、楽曲考察ではなく徒然私的な短い記事での更新です。
ザ・タイガースのアルバム『自由と憧れと友情』から、「海の広さを知った時」をお題に借りました。
メロディーやヴォーカルなどは穏やかなようでいて、妙に不安をかきたてられる(←そこが良い!と思っています) 構成とアレンジ、そして歌詞が印象的な、大好きな1曲です。よろしくおつき合いください。
唐突ですが、僕はいわゆる「鉄オタ」です。
と言っても一般的な愛好家の中では少数派のタイプで車両自体にはまったく興味は無く、「駅」と「路線図」に萌え対象が特化した、たぶん「妄想鉄」の類です。
ネットで駅舎の写真や路線図を見ながら、実際に訪ねたような妄想に浸るというね。
もちろん「乗り鉄」な資質もあるにはあって、電車の旅ならできるだけ鈍行に乗って停車駅を味わいたいですし、若い頃はそうやってローカル線のフラリひとり旅などしていたものです。
電車が普通に走っている間は本を読み、停車前後だけ駅や周辺の集落の風景を楽しむというのが基本スタイル(ですから停車駅が多ければ多いほどよい、ということになるわけです)。
今年はコロナ禍もありカミさんの実家に帰省もできず、電車の旅がまったくできていません。
本当に、早く収束して欲しい・・・。
そんな僕が「あてなき鈍行列車の旅」の雰囲気を妄想し味わえるロック・アルバムこそ、我らがザ・タイガースの『自由と憧れと友情』。
リアル体験世代の先輩方にとってこのアルバムは、解散報道直後のリリースということでそんなのんびりした気持ちでは聴けなかったのではないかと想像していますが、後追いの僕にはそんな壁も無く・・・1曲目「出発のほかに何がある」からラスト「誓いの明日」まで、「妄想鉄」の気分で1枚通して楽しめます。
その意味では『ヒューマン・ルネッサンス』に比するコンセプト・アルバムとして聴いている、とも言えましょう。
アルバム終盤に収録された「海の広さを知った時」には、旅(歌)の主人公にとっての「見知らぬ土地」の雰囲気が満ちていて、「駅」の風景も浮かんだりします。
ここでの「海」とは歌詞のストーリー的には広い広い太平洋、下手するともっとグローバルに大西洋とかインド洋だったりするのかもしれませんが、僕のような「妄想鉄」目線からしますと「オホーツク海か日本海であって欲しい」なぁ、と。
このアルバムには全体的になんとなく「冬」のイメージがあるんですよ。リリースも12月ですしね。
ここで、僕がよくお邪魔する『海の見える駅』というページをご紹介させて頂きます(こちら)。
紹介されている駅のほとんどが、故郷・鹿児島県を除き訪れたことのない土地で、「いつか行ってみたい」と思いながらも叶わないだろうと憧れを抱く中、僕が「海の広さを知った時」の舞台として指名したい駅が2つあります。
まずはオホーツク海で、北海道の「北浜駅」(釧網本線)。
なんと「流氷が見える駅」で、写真からは小林信彦さんの名作『合言葉はオヨヨ』( 僕がこれまで読んできた小説のベスト3に入ります)のラストシーンを連想させられます。
『網走番外地』等の映画ロケ地としても知られている駅のようで、ホームに降り立った瞬間、視界に飛び込んでくる海に圧倒されるのでしょうねぇ。
もうひとつは日本海、新潟県の「越後寒川駅」(羽越本線)。
新潟県と言っても位置的には北東、山形県との県境付近で、「寒川」(「かんがわ」と読みます)ってくらいですから寒さの厳しい土地なのでしょう。
こちらは島田荘司さんの社会派ミステリー野心作『火刑都市』に駅舎や集落の描写がありました。
いずれにしても「海の広さを知った時」に登場する「海」のフレーズが似合うのは、寒さの厳しい土地の駅から望むそれだと個人的には思っています。
海の広さを知ると いつか
Fm7 B♭7 E♭maj7
生きていく ことの
Fm7 B♭7 E♭
静かな 孤独をわかる ♪
G7 Cm A♭m
未知なる土地を訪れる旅はもちろんワクワクもしますが、その中で一抹の寂しさ、不安を感じるところもあり、それが逆に趣き深く心地良かったり。
だからこそ賑やかな観光施設など無い土地の駅の方が僕は好きなんですよね。
「海の広さを知った時」は、サブ・ドミナントだった筈のコードがいつの間にかトニックに転ずるなどの複雑な展開に美しいメロディーが載っていて、不思議な浮遊感があります。
豪華な大作にしようと思えばいくらでもできる強力な曲なのに、途中で投げ出したかのようなフェイドアウト・エンディングであっという間に終わる・・・これは「敢えて」ではないでしょうか。
この潔さに「見知らぬ土地に降り立つ時の漠然とした不安」を僕は見出し、とても惹かれるのです。
今はこんな時ですけど、何の気兼ねも心配もなく鈍行列車の旅を楽しめる日常が1日も早く戻ってくることをとにかく願うばかりです。
では次回更新は、毎年恒例『ジュリー祭り』記念日、12月3日の予定です。
『ジュリー祭り』セットリストはすべてお題記事を書き終えていますので、『過去記事懺悔・やり直し伝授!』のカテゴリーにて、「2度目」の考察記事を書くことになります。
お題はもう決めていますよ~。
それではまた来週!
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