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2020年10月

2020年10月24日 (土)

沢田研二 「恋から愛へ」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』収録
Original Released on 1971 シングル『君をのせて』B面

Singlecollection1

disc-1
1. 君をのせて
2. 恋から愛へ
disc-2
1. 許されない愛
2. 美しい予感
disc-3
1. あなただけでいい
2. 別れのテーマ
disc-4
1. 死んでもいい
2. 愛はもう偽り
disc-5
1. あなたへの愛
2. 淋しい想い出
disc-6
1. 危険なふたり
2. 青い恋人たち
disc-7
1. 胸いっぱいの悲しみ
2. 気になるお前
disc-8
1. 魅せられた夜
2. 15の時
disc-9
1. 恋は邪魔もの
2. 遠い旅
disc-10
1. 追憶
2. 甘いたわむれ
disc-11
1. THE FUGITIVE~愛の逃亡者
2. I WAS BORN TO LOVE YOU
disc-12
1. 白い部屋
2. 風吹く頃
disc-13
1. 巴里にひとり
2. 明日では遅すぎる
disc-14
1. 時の過ぎゆくままに
2. 旅立つ朝
disc-15
1. 立ちどまるな ふりむくな
2. 流転
disc-16
1. ウィンクでさよなら
2. 薔薇の真心
disc-17
1. コバルトの季節の中で
2. 夕なぎ
disc-18
1. さよならをいう気もない
2. つめたい抱擁
disc-19
1. 勝手にしやがれ
2. 若き日の手紙
disc-20
1. MEMORIES
2. LONG AGO AND FAR AWAY
disc-21
1. 憎みきれないろくでなし
2. 俺とお前
disc-22
1. サムライ
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
disc-23
1. ダーリング
2. お嬢さんお手上げだ
disc-24
1. ヤマトより愛をこめて
2. 酔いどれ関係
disc-25
1. LOVE(抱きしめたい)
2. 真夜中の喝采
disc-26
1. カサブランカ・ダンディ
2. バタフライ革命
disc-27
1. OH!ギャル
2. おまえのハートは札つきだ
disc-28
1. ロンリー・ウルフ
2. アムネジア
disc-29
1. TOKIO
2. I am I(俺は俺)
disc-30
1. 恋のバッド・チューニング
2. 世紀末ブルース
disc-31
1. 酒場でDABADA
2. 嘘はつけない
disc-32
1. おまえがパラダイス
2. クライマックス
disc-33
1. 渚のラブレター
2. バイバイジェラシー
disc-34
1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. ジャンジャンロック
disc-35
1. 麗人
2. 月曜日までお元気で
disc-36
1. ”おまえにチェック・イン”
2. ZOKKON
disc-37
1. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
2. ロマンティックはご一緒に
disc-38
1. 背中まで45分
2. How Many "Good Bye"
disc-39
1. 晴れのちBLUE BOY
2. 出来心でセンチメンタル
disc-40
1. きめてやる今夜
2. 枯葉のように囁いて
disc-41
1. どん底
2. 愛情物語
disc-42
1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection
disc-43
1. AMAPOLA(アマポーラ)
2. CHI SEI(君は誰)
bonus disc
1. 晴れのちBLUE BOY(Disco Version)

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この2週間、職場の産業廃棄物を片付けたりする仕事があって埃まみれになったせいか体調を崩し、加えて酷使した腰もいたわりつつ・・・前回更新からちょっとご無沙汰してしまいました。

今年は全国ツアーの中止で極度のジュリー枯れ・・・新しい情報もなかなか入って来ない時期が長かったですが、今月は大きな動きがありました。
映画『キネマの神様』ヴィジュアル公開!
一気にジュリーファンも賑やかになりましたね。これだけカッコ良いヴィジュアルが出てくると、一層映画公開への期待が高まります。

12月にはNHKのDVDも発売されますし(当然僕も予約済み)、LIVEが無いのはとても淋しいけれど、いよいよ楽しみが近づいてきたなという感じです。

さらに、『キネマの神様』の情報と同時にじゅり風呂さんの記事で知ったのが、『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』の再発売決定。
僕はこれ持ってるんですけど、今日はこの豪華なBOXをまだお持ちでないジュリーファンの皆様に熱烈にお勧めしたい、という主旨にて更新したいと思います。
よろしくお願い申し上げます。


僕が『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』を購入したのは、『ジュリー祭り』での本格ジュリー堕ち後数ヶ月が経った頃でした。
今思えば一時廃盤状態となる前の時期で、タイミングとしてはラッキーだったのでしょう。
ただ、アマゾンさんでポチッとしてした直後商品が届くまでの間は「エライ高い買い物をしてしまった」と少し後悔もしていました。
ポリドール期のシングル両面網羅ですからボリューム的に値段が張るのは当然、でも単純に計算しても収録されているうち半分の曲は『A面コレクション』でこと足りてるわけでね。
割高だよなぁ、と思ってしまったんです。

ところがいざ聴いてみると・・・何ですかこのB面曲群のレベルの高さ、素晴らしさは。
もちろん長いファンの先輩方はシングルレコードを聴いていらしたでしょうからとうにご存知のことでしょうが、僕は「愛はもう偽り」も「淋しい想い出」も「青い恋人たち」も「遠い旅」も「夕なぎ」も「バタフライ革命」も「I am I(俺は俺)」も「クライマックス」も「ジャンジャンロック」も「ロマンティックは御一緒に」も・・・とにかく書ききれないほどのシングルB面大名曲を知らずにこのBOXを買ったのですから、そのインパクトたるや・・・ご想像ください。

「最近になってジュリーに堕ちた」というファンの方がもしこの記事を読んでくださっていたら、ここで断言しておきます。
このBOXはマスト・アイテムです。
少々お値段が張ろうが、この機に是非ご購入をお勧めいたします!
B面にはアルバム収録との重複もありますが、油断は禁物ですよ~。「世紀末ブルース」「バイバイジェラシー」等は全然違うヴァージョンですから。

さらには復帰組、或いは「ずっとファンだけどシングルレコードは失くしてしまった」と仰る先輩方も、かつて手にされていたシングル盤をそのままの形でディスク化した企画物として、きっと満足できる商品だと思います。
例えばディスクの1枚1枚にしっかり付いているジャケット、歌詞カード。
『君をのせて/恋から愛へ』ですと

Img01

Img02

Img03

↑歌詞をすべて載せるとマズイのでトリミングしてあります

「君をのせて」タイトル下に付記してある「”合歓ポピュラー・フェスティバル”参加曲」。
これだけでもレコードを買った当時を懐かしく思い出されるのではないですか?

あと個人的に惹かれるのが、ある時期まで必ずついていた「英題」です。
変に強引な直訳だと興醒めになるところ、上添付画像の通り「君をのせて」が「MY BOAT FOR YOU」、「恋から愛へ」は何と「PASSION TO LOVE」ですよ。
ズバリ!です。

ポリドール時代にジュリー・ナンバーの「英題」をどなたが担当されていたのか興味があります。
相当センスに長けた人がいらしたのかな。

さて僕は世代的にも本格的にジュリー堕ちした時期的にも完全に後追いのファンなので、ジュリーの作品リリースを後から時系列に脳内整理するだけで大変な作業でした(楽しかったですが)。
当初よくゴッチャになっていたのが、ファースト・ソロ・アルバム『JULIE』とファースト・ソロ・シングル『君をのせて』のリリース時期。
ソロ歌手としてのアルバム・デビューがザ・タイガース活動期で、シングル・デビューが解散後というのはなかなか他に例もなく、「君をのせて」もタイガース在籍時代、と思い込んでしまっていたことがあったり。

で、正しいリリース時期を把握するとどうしても考えたくなるのがPYGとの並行性です。
前提として当時のジュリーファンはほとんどが「タイガースの頃からジュリーが好き!」な先輩方でいらしたと考えてみます。
タイガース解散後、前衛的なバンド「PYG」が結成され、そこでジュリーは「花・太陽・雨」「やすらぎを求めて」「自由に歩いて愛して」「淋しさをわかりかけた時」といった歌を歌い始めました。
メッセージ性が高い曲はタイガースの頃からあるけれど、PYGのそれは明らかにカウンター・カルチャー寄り。歌の内容ばかりかメンバーがグイグイ主張する演奏にまで思弁性があって。

「ジュリーは、バンド内の1ヴォーカリストとして難しい歌を歌う道に進んだんだ」

・・・と、リアルタイムのファンの皆様は、特別な「個」が発する圧倒的な大衆性こそジュリー本来の魅力とは分かっていながらも、新しい道を行くジュリーを変わらず応援していこうと決めた・・・そんな矢先のファースト・ソロ・シングル・リリースだったのではないですか?

まったく異なる2つのベクトルから並行リリースされるジュリーの歌。
最終的にはそれは、PYGの活動が「井上堯之バンド」へとシフトすることで統合されたように先輩方は感じていらしたのかな。

ただ、そんな中シングル『君をのせて』B面にジュリーの自作曲「恋から愛へ」が収められた意義がとても大きいように思えます。
タイガースでデビュー以来、ジュリーが作詞・作曲を1人で担った曲がレコードとなるのは、これが初めてだったんですよね?

72年にジュリーは自身の持ち歌について「自分で作った方が歌いやすい(伝えやすい)」といった発言をしていて、自作曲リリースへの渇望は(タイガース時代後期あたりから?)ずっと強かったようです。

シングルB面という扱いではありましたが、ソロ歌手デビュー盤となった「恋から愛へ」の作詞・作曲には「この1曲に今の自分の創作力をすべて注ぎ込む!A面を食ってやる!」くらいの気合を感じます。
とにかく凝りまくっているんです。
その上で、良い意味でとても初々しいと言うか、ピュアなんですよね。

タイトル的には「恋→愛」を意味しているようですが、詞の内容は完全に「恋<愛」がテーマ。
「今僕の胸で燃えているのは、恋ではなく愛なのだ!」と世界中に発表するように歌われます。
作曲の肝は言うまでもなくサビ部のリズムチェンジで、ジュリーがタイガース時代から「幼少時に親しんだ歌」として挙げていた「美しき天然」のワルツのリズムを自身作曲で初めて採りいれた記念すべきナンバーが、この「恋から愛へ」というわけです。

作曲だけについて言えば過去に「素晴しい旅行」(タイガース)、「やすらぎを求めて」(PYG)など実績を残してきたジュリーですが、いずれも個人の主張よりも「バンドに寄せる」ことを重視して作曲しているように感じます。
「恋から愛へ」ではその点、ジュリーの純粋な解放感が際立つことに。

「恋から愛へ」を知らない、と仰る新規ジュリーファンの方々も多くいらっしゃるでしょう。
You Tubeで探せば曲は聴けるのでしょうけど、ジュリーファンとして本道を行くならばここは是非『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』再発版をご購入ください。

10年ほど前の僕が味わったように、CDケースを1枚1枚取り出してジュリーのシングル・レコードを追体験する至福に浸って頂きたい・・・熱烈にお勧めいたします。
まずはこのdisc-1から!

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2020年10月15日 (木)

沢田研二 「物語の終わりの朝は」

from『女たちよ』、1983

Onnatatiyo_20201015203101

1. 藤いろの恋
2. 夕顔 はかないひと
3. おぼろ月夜だった
4. さすらって
5. 愛の旅人
6. エピソード
7. 水をへだてて
8. 二つの夜
9. ただよう小舟
10. 物語の終わりの朝は

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久しぶりのジュリー・ナンバーお題での更新、別曲の記事の下書きをのんびり進めていた最中だったのですが、またしても訃報です。
先日のシローさんの時と同様、急遽の追悼記事を書くことになってしまいました。

筒美京平さん。80才。
日本が誇る音楽界の重鎮、宝のような方です。

洋楽のエッセンスを下地にしながらも、僕ら日本人が世代を越えて親しみ歌い継ぐ国民的メロディー、数々の名曲を作曲されました。
「サザエさん」の主題歌を知らない人はいませんよね。

一般的な筒美さんのイメージは「稀代のヒット・メイカー」でしょうか。
僕が持っている筒美さんのヒストリーCD-BOX(Vol.1&2併せて8枚組!)付属の豪華ライナー・ブックには、筒美さんが作曲を手がけたシングル曲のチャート・ランキング総覧が載っています。
あらゆる歌手のあらゆるヒット曲が列挙されているだけで壮観と言う他ありませんが、この中に「沢田研二」の名前はありません。意外なほど筒美さんとジュリーの関わりは少なかったのです。
そもそもシングル曲が1作も無いのですから。

しかし、筒美さんが長きに渡り作家として活躍された中のほんの僅かな一瞬、1983年のアルバム『女たちよ』において筒美さんは収録全曲を作曲し、「年月」とか「チャート」とかいった現世の概念を越えようかというほど濃密に、ジュリーと関わっているんですよね。
(このアルバム以外は唯1曲、71年のセカンド・アルバム『JULIEⅡ』収録の清廉なワルツ小品「二人の生活」が筒美さんの作品です)。

『源氏物語』をモチーフとして完全にストーリー形式のコンセプト・アルバム『女たちよ』からは、シングル・カット曲もありません。ですから、83年といえばまだまだジュリーがテレビ番組、年末の賞レース常連の頃だったにも関わらず、このアルバムはファン以外にはまったく知られていないでしょう。

まるで、普段輝かしい陽の中で世間の視線を浴び続けている才人達(歌手・ジュリー、作詞・高橋睦郎さん、作曲・筒美さん、アレンジ・大村雅郎さん)が密かに夜に隠れて、妖しい営みを交わし合ってているような・・・。
『女たちよ』はそんな名盤なのです。

筒美さんと言えば、一度聴いたらスッと覚えてしまうようなキャッチーな曲を連想しがちです。実際、世の中が知る筒美さんの代表曲はすべてその通りです。
しかし『女たちよ』での筒美さんの作曲は、二度、三度聴いたくらいでは把握不可能。
何度も聴いてメロディーが分かりかけてきた瞬間から虜となる・・・そういうタイプの名曲ばかりです。

新規ジュリーファンにとっても、そしてもし筒美さんのキーワード検索でこの記事を読んでくださっている筒美さんのファンの方がいらして、「へぇ、このアルバムは知らなかったなぁ」とお思いであれば、そんな方々にとっても・・・『女たちよ』は超・上級篇です。

アルバムのラストを飾るのが、今日のお題曲「物語の終わりの朝は」。

忍び隠れた営みの夜が明ける朝。
偉大な才人の「生=性」とその終わり。

筒美さんの旅立ちを受けて聴いたこの曲、1番が終わってガクンとキーが下降した瞬間、僕は『源氏』の物語とはまた別のところで筒美さんの真髄を新たに感じることができたように思います。

心より、筒美さんのご冥福をお祈りいたします。
合掌。

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2020年10月 4日 (日)

2020.8.23 四谷LOTUS『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」』セットリスト&完全レポ


大変遅くなりましたが、今日は、去る8月23日に開催された『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE』の大長文レポートをお届けいたします。
(実は下書き段階のミスで箇条書き状態の未完成の記事がワケの分からない日付設定で数日間公開されていました。気づいたかたもいらっしゃるかな?)

シローさんのことがあって悲しい時ですが、楽しい記事にしたいと思っています。
よろしくお願い申し上げます。

敬愛するタイガース・ファンの年長の友人にして今回のLIVEを主催されたYOUさんの「大勝利宣言」をもって、8.23四谷LOTUSさんのLIVEは大成功に終わりました。

このLIVEのレポを書くことは初めから決めていてYOUさんにも約束していましたが、開催前まではセットリストから何か1曲をお題にしてサクッと簡易レポにしようと考えていたところ、あの圧倒的なステージを魅せられてはね・・・そうはいきません。
何より今回は僕自身が微力ながら裏方として参画したLIVEでしたから終わった後の充実感も大きく、YOUさんの凄まじいまでの努力と献身、ピーさんやバンドメンバーの熱意を準備段階から間近で見ていたこともあり、ステージ終了までを見届けた感激から、書きたいことが山ほど溢れてきたのです。

どのみち長文となりますので、本題レポの前に少しだけ僕個人の思いを書かせてください。

このLIVEは、コロナ禍により当初予定されていた5月の開催が中止、8月に延期のアナウンスとなりました。
しかし夏が来ても憎きコロナ禍はいっこうに終息せず、僕はただただ日常に怯えながら、LIVEについては「残念だけど8月も無理かなぁ」と半ば諦めていました。
音楽イベント業界が受けた大打撃はそのまま勤務先の業績不振にも繋がり、呆然と過ごす日々。

そんな中7月初旬でしたか、YOUさんから「(8月23日の開催は)決行します」と連絡がありました。そこで突然僕の中で何かが変わりました。
闘志が沸いてきたのです。

これには、僕がYOUさんという人を完全に信頼している、そんな大前提があります。
YOUさんは、病によりお身体の自由が奪われてしまった奥様(自分の意思では身体を1ミリも動かすことができないのだそうです)の自宅介護をもう長年続けていらっしゃいます。万一にでも奥様がウィルスに感染するようなことがあってはなりません。それにはまず、YOUさん自身が感染しないことが必然必須。
普段からYOUさんが電車移動の際はマスクだけでなくフェイスシールド着用、お勤めの会社でも役員として様々な対策を講じ指示していらしたことは僕も知っていて、そんなYOUさんが8月のLIVE開催を決断、「感染防止対策を徹底的にやる!」と仰るのです。
僕も瞬時に「よし、やろう!」と決めることに迷いはありませんでした。

YOUさんには、最初のスタジオ・リハーサルでお会いした際に僕の気持ちを伝えました。
「何としても成功させましょう。”コロナのある世の中”で万全の対策を尽くしLIVE開催をやり遂げた成功例・・・僕はそういう発信がしたいです」
と。
YOUさんは「気合が入ってるな」と受け取ってくださったようですがそれは逆で、僕はYOUさんの決断ありきで前に向かう気持ちになれたのです。

気合を注入された、という意味では、やる気満々&準備万端でリハーサルのスタジオに颯爽と登場したピーさんの存在も同様です。
僕はLIVE本番までの期間、 ピーさんとYOUさんお2人から「コロナにやられっぱなしでたまるか!」とのオーラを
何度も強く感じさせられ、影響を受けましたね。

さて感染防止対策ですが、もちろんライヴハウスにもガイドラインがあります。
今回の舞台となった、ザ・タイガースゆかりの地・四谷のLOTUSさんでも、入場者数の制限、お客さん入場時の検温と問診、マスク着用、大声を上げての声援の禁止などが義務づけられていました。
ただYOUさんは、ガイドライン以上の対策をこれでもか、と用意しました。
そのひとつが、お客さんにはマスクだけでなくフェイスシールドの着用を義務づける、着用していない場合は入場をお断りする、という厳しいもので、YOUさんは事前にお客さんひとりひとりにその旨を伝え、了承してくださった人だけに来場して頂く手はずを整えました。

僕は当日会場スタッフも担当していました。
入場受付では基本、来場したお客さんへの誘導、アンケート用紙の配布をします。しかしそれ以上に大事な使命をも自覚していました。
もしフェイスシールドを着用していないお客さんがいたら、退場して頂くこと。
辛い任務だなぁと思っていましたが、結局そんなお客さんはひとりとしていらっしゃらなかったのです。

今回のLIVEの成功は、素晴らしいピーファンのお客さんのご協力あってのことでした。感激しています。

YOUさんが尽力したのは感染防止対策だけではありません。リーダーとしてバンドを率いたことはもちろん、ご家族の反対などもあり無念のキャンセルとなったお客さん(現況では致し方のないことで、そうしたお客さんもまた、今回勇気ある決断をされたのだと思います)のために「配信チケット」販売を決行。
念のため書きますが、これらの尽力はYOUさんご本人の個人採算など度外視ですからね。
その熱意と献身は、近くにいたバンドメンバー、スタッフはよく知っています。本当に頭が下がります。

おっと・・・「早よレポ本文に入らんかい!」との声が聞こえてきました。
その前にもうひとつだけ、大事なことを。

この日のステージ、セットリスト全20曲の演奏(+楽しいMCとトークコーナー)を網羅したアーカイブ映像が現在発売中です!(詳しい購入方法は、こちらのYOUさんのブログ記事からどうぞ!)
LOTUSさんは現場の音響も素晴らしかったですが、カメラワーク(もちろんピーさん中心)や各演奏パートのミックス処理も実に素晴らしいです。映像は鮮明だし音もメチャクチャ良いですよ!
これは配信チケットの時とは違って、ダウンロードで永久保存できます。
是非みなさまにはこちらを購入して頂き、リアルタイムで鑑賞しながらこの記事を読んで頂きたいのです。

僕としてはせっかく裏方として準備段階から深く関わったLIVEですし、当日の演奏だけでなく、本番に至るまでのピーさんやYOUさんはじめバンドメンバー(ゆうさんバンド)がどのような経緯、熱意を以ってセットリスト各曲に打ち込んでいたのか・・・そうしたことも書きたいと思っています。
映像を観ながら、「おぉ、最終的にこの形になるまでにそんなことがあったのか!」とか、「確かにこの曲のピーさんのドラムは凄まじい!」とか感じてくださったら、僕は本当に嬉しいです。

さぁ、ダウンロードはお済みですか?
それではレポ本編、まいります!



1曲目「世界はまわる」

1

いきなりの超レア・タイガース・ナンバー降臨に驚いたお客さんも多かったのではないでしょうか。
ステージは、YOUさんの落ち着いたカウントからこの隠れた名曲で幕を開けました。

僕が今回のピーさんのLIVEについてプロデューサー兼バンマスのYOUさんから「力を貸して欲しい」と正式にスタッフ参画をお誘い頂いたのは、今年2月某日のことでした。
その頃はコロナ禍の予兆などまだなく、2人で池袋の飲み屋さんをハシゴしつつ5月開催のLIVEに向けてのYOUさんのアイデア、全セットリスト概要を伺いました。

「セトリの中にいくつかのコンセプトがある」とのお話で、内ひとつが「PEE、友情を歌う」というものでした。
8月の延期開催で最終的には「打倒・新型コロナウィルス」がステージ・コンセプトの主幹となりましたが、当初は「友情」がメイン・コンセプトだったのです。

ピーさんと「友情」と言えば誰もが真っ先に思い浮かべるのが岸部一徳さん、つまりサリーさんの存在です。
YOUさんはその点当然心得ており、「サリーさんのヴォーカル曲」2曲をセットリストに組み込み、重要な箇所に配置しました。これはその1曲目。
加えて「世界はまわる」はタローさんの作曲ということで、オープニングにふさわしい選曲だったと思います。

コロナ禍は未だ終息しませんが、そんな状況に負けじとピーさんに続きタローさんも新たな取り組みを始めましたね。
リモートLIVEの開催やYou Tubeチャンネルの開設。タローさんの今後の活動にも期待大です。
個人的にはやはりタローさんの新曲を待ち望んでいます。そこで、「作詞・岸部一徳/作曲・森本太郎」というザ・タイガースきってのソングライター・チームが復活!となれば最高なのですが・・・。

ちなみに「世界はまわる」は歌詞の文字数が少なく、ピーさんのために作成した歌詞カードは全セトリ中最大フォント(笑)となっています。
そのあたりもアーカイブ映像でバッチリ映っていて、作成した身としてはとても光栄、嬉しく思ったのでした。

2曲目「素晴しい旅行」

2

今セットリストで最もBPMが速いのはこの曲だったでしょうか。YOUさんのギター・リフからベース、ドラムスと噛んでくる展開はやはり生演奏ならではの迫力です。

ベースのいがちゃん&キーボードのリコさんのコンビは、楽器の腕前も素晴らしいのですがコーラス・ワークも得意としていて、YOUさんも加えた「3人コーラス体制」がスピーディーなこの曲で特に映えまくり。
リコさんの女声が加わることで華やかな雰囲気が出るんですよね。

あと、僕は以前からこの曲のアレンジはビートルズの「デイ・トリッパー」もしくは「ペーパーバック・ライター」へのオマージュと見ていましたが、それに加え今回リコさんが奏でるキーボード・フレーズを聴いていて、どうやらザ・バーズの「ロックンロール・スター」も入っているっぽいな、と気がついたのでした。

3曲目「散りゆく青春」

3

ピーさんはこの山上路夫さんの詞が大好きなのだそうです。一人称の歌の主人公だけでなく、愛する(愛していた)相手の人生まで感じられる点が素晴らしい、とリハーサルの時から仰っていましたね。
余談ながら僕は、ジュリーがactシリーズ『むちゃくちゃでごじゃりまするがな』で歌っている「君待てども」の作詞・作曲者である東辰三さんが山上さんのお父様であることをつい先日知ったばかりです。

最後のスタジオリハーサル(本番の1週間前)のこの曲で、面白いシーンがありました。
それぞれの楽曲の出だしを、カウントにするか楽器のフィルから入るかの最終チェックをしつつセットリスト順に演奏していく中、ピーさんが「次の曲はドラムからだね。こう!」とメチャクチャ激しいフィルを叩きます。
メンバー誰も演奏をスタートできません。
「散りゆく青春って、こんなにハードなイントロだったっけ?」という各メンバーの心の声が聞こえてくるようでしたが・・・何のことはない、ピーさんは1曲飛ばしてしまって次曲「嘆き」に入ろうとしていたのですね。
ベースのいがちゃんが「ピーさんがそう言うならそうなんだろうな、と思ってしまった」と言って一同爆笑。

仕切り直しで演奏した「散りゆく青春」の穏やかさ、叙情性が僕には一層際立って聴こえました。
タイガースの曲、特に後期は本当にバラエティーに富んでいます。
村井邦彦さんやクニ河内さんと並び渡り合ったタローさんの作曲開眼、正に名曲です。

4曲目「嘆き」

4

今回僕は、セットリストの中で市販のスコアが存在しない(或いは存在していても精度が低い)楽曲の採譜、バンドメンバー用のコード・スコア作成を担当しました。
とは言っても本当に「叩き台」です。最終的には各メンバーがじっくり音源を吟味し稽古を重ねた音をお客さんは聴いているわけで、僕が特別に凄いことをしたということではありません。
ただ、スコアがあるのと無いのとではメンバーの個人練習のスタート地点がまったく違ってきますから、その点で多少の貢献はできたかな、と思っています。

で、今回採譜したセトリの中で最も苦労したと言うか僕自身の実力不足を痛感させられた曲が、この「嘆き」。細部検証の時間もかけられない中で、2箇所ほど疑問点を残したままのスコア提出となりました。
でも心配はしていませんでした。というのは、ベースのいがちゃんとキーボードのリコさんは普段GSコピー・バンドで活動されていて、僕は彼等が「嘆き」を演奏したLIVEを数年前に観たことがあるのです。
お2人が何とかしてくれる、と思っていました。

そして7月、最初のスタジオ・リハーサルの日。
早めに現地に向かうと既にYOUさんはいらしていて、しばらくするとギターのタイラーさんがいらっしゃいました。そして即座に、僕が懸念していた「嘆き」疑問箇所の正解をご教授くださったのです。
いがちゃん、リコさんばかりでなく「レベルの高い素晴らしいメンバーが集まったのだ」と実感した瞬間でした。

本番のLIVE・・・「嘆き」のような曲では、ピーさんは気持ちが乗ってくると小節の何処でどんな鬼のフィルが飛んでくるか分からない激しいドラミングを展開し、ゆうさんバンドはそれでもビシッ!と合わせピーさんについてゆきます。
後奏でのピーさんのドラムスといがちゃんのベースの絡みは、「果し合い」のような迫力でしたね。

ピーさんのヴォーカルも気魄漲る熱唱系でしたが、実はリハーサル期間に「嘆き」タイガース・オリジナル・ヴァージョンのジュリーのヴォーカルについて、ピーさんがお話してくださったことがあったのです。

「沢田なら、(歌の)初めから余裕で全力の声を出すことができる。でも「嘆き」では敢えてそうせず、抑えた状態で歌に入って、進むに連れてグア~ッと声を出していく。凄いなぁ、と思っていた」

と。
当時、一部の頭の固い世間の人達からジュリーの歌唱力をとやかく言われることがあった、とタイガース・ファンの先輩方から聞いています。
しかしジュリーの歌を間近で聴いていたピーさんは世間よりもいち早く、単なる巧拙、テクニックとは違う歌への解釈力、表現力の凄さをジュリーのヴォーカルに見ていたということなんですよね。
僕はジュリーファンですから、とても感動的なピーさんの「嘆き」絶賛話でした。

~MC~

読んでくださっているみなさまはアーカイブ映像を同時鑑賞中、という前提ですので(笑)、このレポではMCとトークコーナーの内容は書きません。
ここでは別のお話をさせてください。

YOUさんは5月開催に向けた当初から、MCについてもキッチリ進行予定に組み込んでいました。ピーさんの体力回復、水分補給の時間を確保するためですが、8月の延期開催ではそれがそのまま、感染予防対策のための大切な時間ともなりました。
ズバリ、会場内の換気・・・担当は僕です。

当然ながら進行を完全に把握した上で、MC前の曲が終わったらすぐに動きます。
まずステージエリアの二重扉を開け、裏を通って出演者専用の楽屋の扉を開け、さらに楽屋とステージを仕切る扉を開け、これで風が通ります。

MCはまずYOUさんが喋り、途中からピーさんがツッコミを入れ始めるというスタイル。
ピーさんがMCに加わり出したら「体力回復」「もう行けるよ!」の合図で、それを見計らって今度は逆のルートで順次扉を閉めていき、次曲のイントロまでに場内着席の段取りです。

なので僕自身はステージ上でどんなMCが展開されていたのか、後日映像を観て初めて全容把握したんです。
楽しいお話が飛び交っていたんですねぇ。

5曲目「割れた地球」

5

YOUさん構成の今セットリストは、MCを挟み大きく6つのブロックに分かれています。
その中でスタジオ・リハの段階から「地獄の3曲」などと冗談交じりに言いながらピーさんが全力で取り組んでいたブロックがここからスタート。
「割れた地球」「怒りの鐘を鳴らせ」「美しき愛の掟」というザ・タイガースを代表する超ハードなナンバーを一気に駆け抜けるという・・・しかも「叩き語り」です。

ピーファンのみなさまから「あんまりPEEを虐待しないで!」との声が聞こえてきそう、とYOUさんは頭を抱えていましたが(笑)、実は「ハードな3曲を続けて叩き語り」のブロックはピーさん本人のアイデアだったのだそう。
そのココロは・・・「叩きながら歌えるんだぞ!というところを見せたい」と。
ピーさんは「割れた地球」については叩き語りの経験こそあれど、二十二世紀バンドのLIVEでは基本的に「怒りの鐘を鳴らせ」はNELOさん、「美しき愛の掟」はJEFFさんがヴォーカルを担当します。
貴重な「地獄の3曲」ブロック実現は、間違いなく今ステージの目玉のひとつだったでしょう。

さて「割れた地球」。ここではギターはYOUさんがリード、タイラーさんがバッキングです。
YOUさんのジミヘンばりの激しいソロを、キレッキレの「7th+9」カッティングで支えるタイラーさん。
ゆうさんバンドではギタリスト2人が楽曲に応じてリード・パート担当を入れ替えてくるのも大きな見所で、アーカイブ映像ではYOUさんの音が左サイド、タイラーさんの音が右サイドから聴こえるようにミックスされています(LOTUSさんは音響も素晴らしいけれど、ミックス技術も最高!)。
ヘッドホンで鑑賞の際は、是非ゆうさんバンドのギター・アンサンブルも堪能してください。

6曲目「怒りの鐘を鳴らせ」

6

採譜をしながら改めて、この曲の凄まじいコード進行に驚嘆させられました。
70年リリースということを考えれば、世界レベルでロック最先端の楽曲です。
前回「花咲く星」の記事中で少し書いたように、メンバーのソロ活動含めて後期タイガースの周囲にはとんでもない力量と志を持つロック・パーソンが集結していたんだなぁと。

ピーさんの「叩きながら歌える、というのを見せたい!」とのアイデアは、もう初回のスタジオ・リハで「怒りの鐘を鳴らせ」を合わせた時から一同納得。
ヴォーカルをとりながらの鬼神ロール連発にはただ圧倒されるばかり。
簡単なプレイではないはずですが・・・。

そしてピーさん、音がデカい!(←ドラマーにとっては最高の褒め言葉である、と音楽仲間のドラマーから聞いたことがあります)
こうなってくると自然にバンド・メンバーも「ハード」のスイッチが入るというもの。特に印象に残ったのが、ベースのいがちゃんの裏拍を強調するスリリングな演奏。
後からCD音源を聴くとなるほど完コピなのですが、僕はこれまでその奏法にまで気づけていませんでした。

7曲目「美しき愛の掟」

7

”地獄の3曲”は間髪入れず続けざまにやる、というのが肝で、ここではリード・ギター担当のYOUさんが大忙し。
ピーさんのハイハット・フィルまでにこの曲必須のワウ・ペダルを踏む準備をしなければならないのです。
スタジオでも本番でも、態勢が整う前に始まってしまう回もあった中、YOUさんは見事食らいついていきます。

そしてこの曲もベースのいがちゃんが大活躍。当然、2番からの狂おしいフレージングもバッチリです。
他パートも安定の説得力で、今回のセットリスト中、ゆうさんバンド各メンバー最も得意パターンの楽曲ではなかったか、と僕は推測していますが実際はどうだったのでしょうか。

~MC~

8曲目「自由に歩いて愛して」

8

YOUさん曰く「”地獄の3曲”はピーさんのアイデアだったけど、この曲は完全に僕がゴリ押ししました」と。

70年代初頭独特の16ビートでタイガースのレパートリーに似た曲は無く、ピーさんも慣れるまでに時間がかかったようです。
それもそのはず、PYG活動期はピーさんの人生でも最も「音楽から離れていた」時期で、ピーさんにとって初めて触れるタイプの曲でもあったのです。

一方でバンドのメンバーにとっては「持ってこい!」な選曲でした。
先に書いたように僕は数年前にベースのいがちゃん&キーボードのリコさんのお2人が参加するGSコピーバンドのステージを観たことがあって、その時は「嘆き」とともにこの「自由に歩いて愛して」も採り上げられていました。リコさんのオルガン・ソロに釘付けとなったのは、その時も今回も同じです。

ギター・リフはタイラーさんが担当。
僕は今まで自分ではこのリフがうまく弾けないでいて、スタジオ・リハでタイラーさんがコードトーンの運指を使っているのを確認、帰宅してマネしてみたら弾けた!
なるほど、難しそうな音階移動にも弾くコツってあるものなんですね。

9曲目「好きさ好きさ好きさ」

9

今回YOUさんが熟考したセットリストにいくつかのコンセプトが込められていることを冒頭で書きました。
この「好きさ好きさ好きさ」含む3曲の選曲にもまたそれがあって、「ピーさんが自分以外のドラマーの持ち歌を歌う!」というもの。
まずはご存知ザ・カーナビッツの超有名曲。

当日午前10時に始まった「公開リハ」(実質的には1日3回公演のワンステージ目)で特にお客さんの反応がビビッドに感じられた1曲です。
制限により声こそ出せない状況だけれど、「おぉ、これが来たか!」という感じの客席の雰囲気が伝わり、盛り上がっているのが分かりました。
そりゃあそうでしょう・・・ピーさんがアイ高野さんばりのあのポーズをキメて「おまえの、すべ~て~♪」と連発するのですから。

今回ピーさんと色々なお話をさせて頂く機会を得た中、僕はピーさんの「GS愛」にも触れることができました。
もちろんタイガースのメンバー、ファンの先輩方はじめあの時代を共に青春として過ごした方ならば皆GSを愛しているでしょう。ただピーさんの場合は確実にそのムーブメントの中心に自らが有りながら、その後長年音楽から離れていらしたわけで、振り返った時の「青春」の濃度は格別なのでしょう。

ちなみにピーさんの(タイガース以外の)「GS推し曲」筆頭は、シャープ・ホークスの「遠い渚」なのだとか(「詞がイイんだよ~」と歌詞を諳んじてくださいました)。
いつかこの曲も、ピーさんの歌と演奏で生体感してみたいものです。

10曲目「嵐を呼ぶ男」

10

引き続き「ドラマー」繋がりの選曲2曲目は、石原裕次郎さん主演映画で有名、誰もが知っていますね。
この曲を採り上げた理由についてYOUさんは、まず「ドラム・ソロがある曲を1曲入れたかった」さらには、いわゆる映画の「当て」ではなく「この歌を本当に叩きながら歌う」ピーさんの腕前をお客さんに楽しんで欲しい、との狙いもあったそうです。

ただ、曲調がジャズ系とは言え典型的な昭和歌謡。ロック畑が揃った「ゆうさんバンド」メンバーは「どうしたものか」と個人練習の段階からそれぞれ悩んでいたようで(曲のヴァージョン自体も色々ありますからね)。

僕は今回のLIVEに向けてのバンドのスタジオ・リハーサルには7月の初回音合わせと本番1週間前の最終リハの2度、立ち合わせて頂きました。
初回時はいざ「嵐を呼ぶ男」を合わせよう、となってもメンバーは不安を口に出しながらの手探り状態。
ピーさんも間奏の小節数を何度も確認し仕切り直す等、なかなか曲の最後まで通すことができず、バンド全体の演奏も纏まりません。
それぞれが「このままでは拙い」と危機感を抱いたことは雰囲気から伝わりました。

そして最終リハの日。僕は正直「その後大丈夫かな」と思っていたのですが・・・まぁ何と見事な一体感。1ヶ月間の全員の稽古量は明らかで、素晴らしい演奏に仕上げられているではありませんか。
「通し」が終わると僕は「カッコ良くなりましたね!」と思わず感動の声を上げてしまったほどです。
聞けば、ロックのテイストも加えつつ、リコさんを中心に徹底的にアレンジを練っていったそうで、みなさんさすがの腕前と再確認しました。

2度に渡る間奏では、ピーさんのゴキゲンなドラム・ソロから1度目はタイラーさんのギター、2度目はリコさんのピアノと16小節のソロへと繋ぎます。
そして、会場にお越しのお客さん、配信チケットにて参加のお客さん、アーカイブをご購入のみなさまご存知のように、最大の見せ場はドラム・ソロ直前のピーさんの「台詞」ですよね。
「フックだ、ボディだ、ボディだ、チンだ!」と叫びながらスネアやシンバルを思いっきり打ちまくり、最後に「これでノックアウトだぁ!」から豪快なドラム・ソロ。
「当て」では絶対に出せない臨場感、真剣味。
今回のセットリスト中、個人的に特に強く印象に残った曲のひとつです。

~MC~

11曲目「永遠に愛誓う(時の過ぎゆくままに)」

11 

「時の過ぎゆくままに」と言えばピーさんは二十二世紀バンドとのLIVEで、ジュリーのオリジナルとは楽曲構成が異なる中華ポップス・ヴァージョン(「愛?一萬年」)を定番化させています。
YOUさんプロデュースによるこの日のヴァージョンはそれともまた違って、メロディーとアレンジについては完全にジュリーと同一。ただ歌詞は1番がピーさんの日本語詞、2番が漢詞、最後のサビは日本語詞のリフレインという構成でした。

ここまで激しい曲が続き、ようやく訪れたバラード・コーナー。
ひと息ついて当然だというのに、ピーさんはこの曲でもハイハットを思いっきり打つはキックの踏み込みは強烈だは・・・安息の妥協は一切見えません。

さて、「ゆうさんバンド」7月の初回スタジオ・リハのセッティング前に興味深いシーンがあったのです。
バンドメンバーが揃っての初めての音合わせ。ギターはYOUさんとタイラーさんの2本体制です。YOUさんは強力なリーダーシップの持ち主ですが、バンドについては各メンバーの嗜好を最大限尊重する人で、セッティングに際しタイラーさんに「2つあるアンプの、好きな方を先に選んで良いよ」と声をかけました。
2つのアンプとは、音楽スタジオやライヴハウス常備の定番であるマーシャルとジャズコ。
タイラーさんが迷いなくジャズコを選択したのを見て僕は一瞬「あれっ?」と思いました。「ソロをバリバリ弾きたいギタリストならマーシャルを選びそうなものだけど、タイラーさんはそういうタイプじゃないのかな・・・?」。
でもすぐに「いや、違う!と。

事前にYOUさんから聞いていましたが、タイラーさんはあの井上堯之さんと深い親交があり、ギターも師事されていたとのこと。
堯之さんがゴダイゴの浅野孝巳さんと共にジャズコ(ローランドJC-120)の開発に尽力されたというのは有名な話で、堯之さんのお弟子さんであるタイラーさんがジャズコを愛用するのは当然です。

堯之さんも浅野さんも天国に旅立たれましたが、「ジャズコの魂」はこうして次世代のギタリストに引き継がれているのです。
アーカイブをご購入のみなさまは、是非この曲で「堯之さんとまったく同じ運指で弾く」タイラーさんのソロにも注目してみてください。

12曲目「メリージェーン」

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『PEE、他のドラマーの持ち歌を歌う』コンセプト選曲、これが3曲目。
YOUさんのリード・ギターも聴きどころの有名な曲ですが、これは女声コーラスのリコさん参加あっての選曲だったでしょう。イントロそして間奏部で美声を聴かせてくれます。
YOUさんによればこの曲には間奏の女声コーラスを割愛したヴァージョンもあるらしいのですが、ゆうさんバンドは当然長尺のヴァージョンを再現。

YOUさん、いがちゃん、リコさんの今回のコーラス隊3人はいずれもマスク着用のまま歌うという・・・バンド歴長しと言えどもさすがにみなさん人生初体験だったでしょう。
結果、それでもコーラス・ワークに問題無し!
これは世間多くのライヴ活動に関わる音楽を愛するみなさまに今後参考にして頂きたい、と思います。

実は当初、ピーさん含めてフェイスシールド着用で歌うという案もあったのですが、初回のスタジオ・リハでフェイスシールドとヴォーカル・マイクの相性の悪さが判明し(ハウリングを起こしやすい)、当日の形となりました。
YOUさんはこの後「ハートブレイカー」でマスク着用のままリード・ヴォーカルもとります。
ステージに立つ側も徹底的な感染防止対策を駆使してのパフォーマンス。LIVEの成功、YOUさんの「大勝利宣言」は必然と言え、スタッフの僕もそんな「ゆうさんバンド」を本当に頼もしく、誇らしく思います。

13曲目「どうにかなるさ」

13

YOUさん考案のLIVEコンセプト「友情を歌う」に絡み、オープニング曲「世界はまわる」と共に採り上げられることになった「サリーさんのヴォーカル曲」カバーが、アルバム『サリー&シロー』収録のこの名曲。
セットリストとしては1~13曲目までがピーさんのドラム叩き語りで、それをサリーさんの持ち歌で始め、締めくくるという構成がYOUさんの狙いでした。

ピーさんは「どうにかなるさ」をあの71年1.24武道館で演奏したことも忘れていたそうですが、今回改めて歌と演奏に取り組み詞曲を味わってみて「飄々とした独特の雰囲気は、かまやつさんより岸部の歌の方が合うのでは」と感じられたのだそうです。
バンドメンバーは「跳ねる」感覚で演奏するのに対し、ピーさんはハイハットの6つ打ちを強調。不思議に魅力的なアンサンブルで聴けたこともまた貴重な選曲だったのではないでしょうか。

そうそう、リハーサル期間のピーさんとYOUさんとの食事の席でたまたまアルバム『サリー&シロー』の話になっていた際、僕は思いきってピーさんに「マザー・ネイチャー」(『サリー&シロー』に収録されているピーさん作詞・加瀬邦彦さん作曲という超貴重なクレジットによるナンバー。ヴォーカルはサリーさん)という歌を覚えていらっしゃるかお尋ねしてみました。
正直「ダメ元」な質問でしたがピーさんはハッキリ「覚えてるよ」と。
さらに「ピーさんの詞と加瀬さんの曲とどちらの作業が先だったのですか?」とまで掘り下げて尋ねてみますと、何と「詞が先」と即答です。
やはり何か当時の強い思いを込めた作詞で、今でも覚えていらしたのでしょう。

残念ながらその話題は直後にピーさんの
「詞が先・・・茅ヶ崎!」
というギャグの炸裂によりそこまでとなりました(笑)が、本当に貴重なお話を伺うことができました。

~MC~

14曲目「ハートブレイカー」

14

セットリスト全20曲中、唯一ピーさんがリード・ヴォーカルをとらなかった曲です。
もちろん1~13曲目と同じ「叩き語り」スタイルも可能ではあったでしょうが、ご存知の通りピーさんの「ハートブレイカー」でのドラミングはハンパな激しさではありませんからね。「この曲ではピーさんはドラムスに専念」とYOUさんは最初から決めており、自らヴォーカルを担当。ファンの間で「ドラマー・PEE」の真骨頂とされるこの曲を、ピーさんに思いきり叩いて欲しいとの思いがあったようです。

有り難いことに僕はバンドのスタジオ・リハに立ち合った際には、キックの振動まで伝わるほどの特等席でピーさんの演奏を味わうことができましたが、やはり「ハートブレイカー」は圧巻でした。
ピーさんも叩き慣れている曲ですから音合わせ段階から迷いなど一切無く、「そんなに激しく叩いて、ピーさんよりむしろ太鼓の方は大丈夫?」と心配になるほどのド迫力。
「ザ・タイガースのドラマー」という稀有なポジションから生まれた独特の大きな動き(たとえ身体的にキツかろうが何だろうが、左のシンバルを右手で打ち右のシンバルを左手で打つ)も健在・・・どころか年々激しさを増しているようにすら思えます。

そうそう、レア曲&初めて歌う曲の多い今回、ピーさんは基本的に歌詞カードを見ながらの演奏や歌唱という事情があり、スタジオリハの段階からずっとメガネをかけてドラムを叩いていたのですが、そのまま「ハートブレイカー」を演奏したらメガネが大変な状態に。
リハでも本番さながらのシリアス・モードで常にバンドを引き締めるYOUさんですら、これには「大村崑さんみたいになってる・・・」と思わず笑ってしまったほど。

結局YOUさんは「本番ではこの曲だけメガネは外すことにしましょう。もしピーさんが忘れていたらメンバーの誰かが声をかけるように」と的確に話を纏めましたが、「ハートブレイカー」でのピーさんの熱烈なドラミングを物語るエピソードだったなぁと思い出します。

もちろんLIVE本番はスタジオ・リハ以上の入魂、熱演でした。お客さんも「これが観たかった!」と大満足だったのではないでしょうか。
YOUさんは昨年のご自身プロデュースのピーさんLIVEでのお客さんの感想アンケートで、「ドラムを叩くPEEをもっと観たい」との声が多かったことを受け、「今年はこの曲は外せない!」と決めたのだそうです。
セットリストの配置も「ここしか無い」位置で、ハードな演奏を終えてこの直後にトークコーナーでひと息、という構成にもYOUさんのピーさんに対する暖かな心遣いが感じられました。

~トークコーナー~

アーカイブ映像の通り、貴重なお話が聞けました。
基本的にはYOUさんが事前にだいたいの進行を決めておいて会話をリードしますが、ピーさんがそこから脱線してゆくのが面白かったのです。
ピーさんは少しシローさんのお話もされています。
この日のLIVEからあまり日が経たないうちに、シローさんが突然旅立たれるとは・・・会場の誰もが予想だにしていなかった突然のお別れでしたね・・・。

15曲目「ダニー・ボーイ」

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トークコーナー以降のセットリストは、ピーさんがヴォーカルに専念し、まずは二十二世紀バンドのステージでも採り上げられた有名なスタンダード、「ダニー・ボーイ」を歌います。
1番が英語、2番が中国語、3番が日本語という構成。「忘れかけた子守唄」のような歌詞解釈も可能な歌ですが、ピーさんはそんな解釈に偏ることはせず、中国語詞、日本語詞部では素直に原詞の雰囲気を伝えるべく朴訥に訳されたようです。

ドラムスは代わってケンさんが担当。
普段はYOSHIKIさんばりの鬼のツーバスを踏むドラマーとして活躍され、マラソンが趣味というケンさん、キッチリとセットリスト終盤のリズムを支えてくれました。

さて、「ダニー・ボーイ」については7月の最初のスタジオ・リハでなかなか面白い出来事がありましたので紹介しましょう。
過去に歌った経験を踏まえてか、ピーさんはこの曲の音合わせの前に「ちょっとキーが高いので下げて弾いてください」と仰いました。

当初この曲の伴奏はリコさんのピアノ1本、キーはハ長調の予定で、リコさんはその場突然のリクエストにも「じゃあA(1音半下げのイ長調)でやってみましょう」と難なく対応・・・さすがです!
ところがピーさん、サビ部に来て「まだ高いなぁ」。さらに1音下げのG(ト長調)で再度伴奏も「まだ高い・・・」。
雲行きが怪しくなってきました・・・が、実は毎年ピーさんのLIVEを観ている僕は常々ピーさんのヴォーカルのキーの高さに驚くことが多く、この話の最初から「もしかして?」と思っていたことがありました。
そこで畏れ多くも
「D(ニ長調)でやってみたらどうでしょう?ピーさんには低い声で入って頂いて・・・」
と提案。
これがとてもうまくいったのです。

「ダニー・ボーイ」はピーさんにとって、キーが「高い」のではなく低かったのだ、というオチ。
つまりピーさんはメロディーの出だしをオクターブ上で歌い出した結果、サビが高くなってしまったのですね。そもそもメロディー音域の広い曲ですし。
あのままリコさんが次々にキーを下げていって最終的に完全に一周して「オクターブ下で歌えばオッケ~」みたいな流れになっていたらそれはそれで愉快なエピソードだったところですが、さすがにそこまではありませんでした。
こうして「ダニー・ボーイ」はハ長調から「1音上げ」のニ長調での伴奏が確定。はからずもヴォーカリスト・ピーさんのキーの高さを証明することとなりました。

さらに「インテンポの方が歌い易い」とのピーさんの要望があり、本番までには他メンバーも参加したバンド・スタイルのアレンジに落ち着きました。
歌と演奏の素晴らしさ、気持ちの入り方は、アーカイブを鑑賞のみなさまならばお分かりの通り、当日のLIVE3ステージで見事結実していましたね。

~MC~

16曲目「失うものは何もない」

16

LIVEの開催が5月から8月に延期されたことで、僕らには思わぬサンプライズが待っていました。ピーさんの新曲解禁が可能となったのです。
今回フル・コーラス演奏初披露、会場のお客さんや配信映像ご購入のみなさまに届けられた新曲は3曲。
いずれもピーさん作詞、KAZUさん作曲。これが名曲揃いで、当然セットリストの大きな目玉となったわけです。

まずその1曲目「失うものは何もない」。
他2曲「明月荘ブルース」「Lock Down」はCD音源化されましたがこの曲についてはまだリリースが無く、現時点で8.23のこの日のLIVE映像収録のヴァージョンが唯一の音源です!

ビート系の力強いナンバーで、コード進行が斬新。
ピーさん復帰後のオリジナル曲の中、ここまで矢継ぎ早の転調が登場するのは初めてのパターンで、採譜にも気合が入りました。
詞のテーマは「Lock Down」にも通じる前向きなメッセージ・ソング。賑やかな字ハモ・コーラスのパートもあり、ここでもリコさんの女声がウキウキとピーさんのヴォーカルとバンド演奏を盛り上げていました。

17曲目「明月荘ブルース」

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ご存知、ファニーズ時代の聖地「明月荘」の想い出を歌ったピーさんの新曲です。
昨年の二十二世紀バンドのLIVEの時点で「いい曲ができた」とピーさんは既に曲の存在を告知してくださっていましたが、遂に完成。この8.23のステージが生歌、生演奏の初披露です。
「この曲をシローに聞かせたかった」と語ったピーさんの西成イベントでの様子は、先日「花咲く星」の更新にてネットニュース記事をリンクさせて頂きましたのでそちらをご参照ください。

復帰後のピーさんのオリジナル曲の中でも特に感動的な名曲だと思います。
完成まで何度も改稿を重ねていったピーさんの詞、美しいメロディーを載せたKAZUさんの作曲について書きたいことはたくさんあるのですが、おそらくこの曲は近いうちに本格的な考察お題記事に取り組む機会があると思っておりますので、ここではLIVE当日の素晴らしいステージの様子を書き留めておきましょう。

8.23、「ゆうさんバンド」の「明月荘ブルース」の演奏は、僕が立ち会った2度のスタジオ・リハーサルのそれと比べても圧倒的に進化した最高の出来映えでした。
何故そうなったか・・・これはもう、ピーさん入魂のヴォーカルにメンバーが引っ張られたからに他なりません。
カラオケや機械の打ち込み演奏ではあり得ない事象で、既にCD音源をお持ちの方々は比較も楽しめますし、この1曲のパフォーマンスだけでアーカイブ映像購入の価値はある、と断言できるほどです。

ケンさんといがちゃんの16ビートばりのリズム・グルーヴ、リコさんのピアノ、ストリングス2つの音色を駆使したキーボード、ピーさんの想いの深さにに寄り添うかのようなYOUさんのストローク。
そしてスタジオ・リハとはまるで別人の演奏のようだったタイラーさん狂乱のソロ。単に「バラード」の範疇にはとても収まらない名演でした。

これらバンドの音を引き出したのがピーさんの入魂ヴォーカルだったわけで、ウィルスの感染は絶対にあってはならないけど、こういう「魂の感染」は大歓迎、生のLIVEの醍醐味です。

僕はこの曲のピーさんのヴォーカルで特に「青春の岐路に立ち♪」の「岐路」の箇所の歌い方が大好きです。
京都から大阪ミナミにやってきたファニーズのメンバーが、今度は東京の輝かしい表舞台へと立つべく明月荘を去りゆく・・・その一歩前の期待と不安、嬉しさも寂しさも、他にも様々な感情が入り混ざったピーさんの当時の「想い」がこの「岐路」の歌い方に凝縮されているように感じます。
是非多くの人に観て、聴いて頂きたい名曲、名演です。

18曲目「My Way~いつも心のあるがままに」

18

2月にYOUさんと最初の打ち合わせをした際、YOUさんは「今回のLIVEの目玉のひとつ」としてこの曲のセトリ入りを挙げていました。
YOUさんはその時点からキッチリとセトリ進行のタイムテーブルを作成、各曲のおおよその演奏時間まで明記していらして、ひと際目を引いたのが「My Way」の演奏時間の長さ。
「この曲はピーさんが独自に日本語詞を書いて載せた。何と13番まであるんだよ!僕らはそれを今回、フルコーラス演奏しようと思う」
YOUさんはそう説明してくださったのでした。

僕の手元には、その数日後に受け取ったピーさんの日本語詞初稿のデータがあります。
それはみなさまがLIVE会場や配信チケット、アーカーブで鑑賞された8.23の詞と比較すると、かなり内容、構成、フレーズ使いが違っています。
当日のMCでもYOUさんからお話があった通り、ピーさんは最後の最後まで自作の歌詞を何度も推敲し、練り上げてゆく人なのですね。
今セトリで言うと「明月荘ブルース」も改稿は多かったですが、「My Way」の改稿頻度は抜きん出ていました。
なにしろピーさんはこの詞をLIVEの前日まで書き直されていたくらいですから。

ピーさんは、「ゆうさんバンド」のメンバーはもちろん、僕のような裏方スタッフにも気さくに接してくださいますが、その上で「こうしたい」「こうして欲しい」という自らの要望については変に遠慮することなく明快に伝えてくださり成果を求めます。
これは「相手も自分と同じように全力で取り組んでいる」と前提に立ったコミュニケーションのとり方で、こちらの「本気」が問われることでもあるのです。この点、ピーさんとYOUさんは本当によく似ていらっしゃいます。
僕はもちろん全力で応え、「My Way」歌詞カードの修正は最後まで頑張りました。

あまりにも大きく変わったので初稿のネタバレはできませんが(墓場まで持っていく所存です笑)、何度も何度も推敲を重ねるごとに「My Way」の詞は良くなっていき、僕も作成中の歌詞カードに修正部を書き写す度にピーさんが詞に込めた想いがより近しく感じられるようになっていくという・・・それだけでも僕は今年の春から夏、信じられないくらい濃厚で幸せな時間を過ごさせて頂いた、と言えます。

LIVE本番も歌、演奏ともに素晴らしかったです。
同じヴァースが繰り返される中、小気味よい変化をつけていたのがリコさんのキーボード。
個人的には「11番」で一度だけ登場する木管系の音色に痺れました。リコさんに確認したところ、フルートの音を作ったのだそうです。
ケンさんのドラムスも長丁場の中で要所を押さえ、「サビに向かう」抑揚を毎回狂い無く作ります。「今、何番だっけ?」という迷いなどまったくありません。
聞けば、奇数番と偶数番でハイハットとライド・シンバルの使い方を入れ替えていたのだそうで、なるほどこういう同一パターンを長く繰り返す曲でのドラム演奏にはそんな手法があるのか、と感心させられました。

ピーさんのヴォーカルは圧倒的な「想い」に溢れ、そして何よりこの詞です。
ピーさんの人生をその心のままに綴った名編、是非みなさまに今一度味わって頂きたいです。

19曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ」

19

前曲「My Way~」が終わったら間髪入れずに「ラヴ・ラヴ・ラヴ」のドラム・フィルへ、というのは最終スタジオ・リハの場でYOUさんが決定したアイデア。ケンさんがブラシからシティックに素早く持ち替えてスタートします。

先述の「ピーさんはキーが高い」を実証する1曲。
今回ゆうさんバンドはイ長調での演奏です(転調後はロ長調)。キーの高さで言えばピーさんはジュリーにも比肩する喉の持ち主だと分かります。

1番を歌い終えた後にピーさんからバンドメンバーの紹介があるんですけど、2ステージ目(公開リハも合わせて実質3ステージ目)ではそこでピーさんが「僕の仲間を紹介します」と言っていました。
「ゆうさんバンド」のメンバーとしては「ここまでやりきった」との思いもあり、ピーさんの「仲間」という言葉がとても嬉しかったのではないでしょうか。

~アンコール~

20曲目「Lock Down」

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ネタを明かしてしまうと、当初5月開催に向けての準備段階では、セットリスト大トリ・・・つまりアンコールの1曲には「色つきの女でいてくれよ」が配されていました。
実際僕もメンバー用の採譜を済ませ、ピーさん使用の歌詞カードも初稿の作成までは終えていました。

ところが、YOUさんのブログでの事前告知や本番のMCでも語られた通り、5月の開催予定が8月に延期されたことで「災い転じて」ではないけれど、セットリストにピーさんの新曲を加え演奏することが可能となりました。
特に「Lock Down」については、正にその延期期間真っ只中にピーさん作詞、KAZUさん作曲で製作されたものであり、いつしか今回のLIVEコンセプトの柱となった「打倒・新型コロナウィルス」を掲げるステージにふさわしい重要な1曲となったのです。

大トリの「色つきの女でいてくれよ」と入れ替えるYOUさんの決断に迷いは無かったでしょう。このセットリストのために最終的なLIVE開催日程はあったのだ・・・そう思えるほどの運命的な名曲です。

セトリ変更は大成功でした。
会場に駆けつけた熱いピーファンのお客さんの多くはピーさんの配信で既に曲をご存知だったでしょうし、ピーさんも激しく動き回るだけでなく、伴奏部で自然にシャウトを繰り出すなど最高に盛り上がるフィナーレとなりました。

この曲には最後のサビ部でギタリスト2人のツイン・リードによるハーモニー・ソロの対位法メロがあるんですけど、タイラーさんは最終のステージの最後の最後、この箇所の直前で2弦を切ってしまい、急遽バッキングに切り替えたとのこと。
あまりに盛り上がっていたせいか僕はそのお話を終演後に聞くまで気づきませんでした。それもそのはず、サビ部後のエンディングではタイラーさんはキッチリとソロを弾いていたのですから。
キーがA(イ長調)の曲で2弦を使わずにあのソロを弾き通した・・・アクシデントが生んだ、凄まじい機転の名演だったというわけです。

ちなみに「Lock Down」のピーさんのこれまでの配信やリリースには「日本語」「中国語」「英語」の3か国語それぞれのヴァージョンに加え、「バラード」ヴァージョンもあります。
「バラード」ヴァージョンは詞は同一ですがKAZUさんのメロディー、コード進行は異なり、CDのカップリングとして収録されているようです。
西成のイベントに参加できなかった僕は、まだCDを購入できていないのですよ(泣)。

毎日ピーさんのオフィシャル・サイトをチェックし一般販売開始を心待ちにしていたところ、ちょうど昨日サイト内ストアで更新がありました。おそらくネット通販店やCD店にも品揃えされるでしょう。
近々にも購入するつもりです!



大熱狂のステージが閉幕し後片付けも終わった時に僕は、なんとも言えない高揚感に包まれました。
疲れているはずなのに、「大成功だった!」という安堵でしょうか、充実感でしょうか、はしゃぎたくなる気持ちでいっぱいでした。皆そうだったと思います。
しかしYOUさんは言いました。
「まだまだ。2週間経って、この場にいた全員の健康状態を確認するまでは「成功」とは言えません」

そして2週間後のYOUさんの「大勝利宣言」。
本当に嬉しかったですね・・・。

巷では今でも「今日の感染者は何人」といったニュースが中心で、不安に陥りがちな毎日です。
音楽業界でも、大きなホール・コンサートはまだまだですが、小規模のライヴやイベントを成功させた例は数あるというのに、コロナに絡めてなかなかそうした前向きな報道は目にしません。
しかしそんな「成功例」に8月23日のピーさんのLIVEが加わり、「こういう工夫、対策をしたんだよ」と次の挑戦者にお伝えすることができる・・・僕が7月に心に決めた「発信」目標は実現に至りました。
コロナ不況にあえぐ音楽業界の末端で働く身としても、仕事への心構えが劇的に(前向きに)変わりましたし、一生の思い出となったLIVEです。
何よりこの期間に触れることが叶ったピーさんの人柄が本当に素晴らしく、エネルギッシュで、フランクで、お茶目で、思索的で・・・「YOUさんほどの人が惚れ込むのも道理だなぁ」と何度も思ったものでした。

ピーさんはその後も西成のバースデイ・イベントを成功させるなど、精力的に活動を展開。
10月に入っていよいよ二十二世紀バンドとのツアーも申込受付が始まりました。
僕は毎回ご一緒してくださるピーファンの先輩にお誘い頂き、年明けの四谷公演、夜の部に参加予定です。

「気がかりなのは、コロナ・・・」
とした上で
「悲しいこと辛いことが多い世の中ですが、そのぶん嬉しいこと楽しいことも、きっとあるはずです」
と、これは8.23最終ステージ「ラヴ・ラヴ・ラヴ」曲間MCでのピーさんの言葉です。

ピーさんはこうして、僕らに嬉しいこと、楽しいことを次々に届けてくれます。
これはもう、ついてゆくしかない!

ピーさんのような志のロッカーが小規模のところからコツコツと積み上げるLIVEイベントの実績、成功例は近い将来、ジュリーのように大きなホールでLIVEを開催するロッカー達の今後の道へ繋がってゆくと信じます。
YOUさんプロデュースの8.23四谷LOTUSのLIVEは、その第一歩となりました。
お客さんと一緒にその場にいられたこと、身にあまる光栄としか言えません。
ピーさん、YOUさんはじめこのLIVEに僕を導いてくれ、出逢わせて頂いたすべての皆さん、お客さんにこの場を借りまして御礼申し上げます。多謝多謝。

そして、公開リハも合わせ驚異の「1日3ステージ」を完遂したピーさんと「ゆうさんバンド」のメンバーに、改めて感嘆、賞賛の拍手を贈りたいと思います。

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