沢田研二 「愛していると言っておくれ」
from『act#9 ELVIS PRESLEY』、1997
1. 無限のタブロー
2. 量見
3. Don't Be Cruel
4. 夜の王国
5. 仮面の天使
6. マッド・エキジビション
7. 心からロマンス
8. 愛していると言っておくれ
9. Can't Help Falling in Love
10. アメリカに捧ぐ
11. 俺には時間がない
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こちらは今日はいくらかマシのようですが・・・この一週間は暑かったですな~。雨風も酷かったですし。
僕は水曜日に持病の腰痛(ギックリ腰)を発症しまして、とても難儀をした一週間でもありました。例年、勤務先や通勤電車で冷房が入りはじめる時期に「ピキ~ン!」とやってしまうことが多いのですが、今回は自宅で発症しましたのですぐに安静の態勢になることができ、短期間で復活しました。これが仕事中に発症すると、家に帰宅するまでに悪化して、長引くんですよね・・・。
さて『ACT月間』です。今日は『ELVIS PRESLEY』からお題を採り上げます。
僕は数年前までは”キング・オブ・ロックンロール”エルヴィス・プレスリーの楽曲について、本当に有名なナンバーをいくつか知っているのみという状態でした。
『CD大全集』でジュリーのACT『ELVIS PRESLEY』を知ってオリジナル音源にも興味が沸き、さらにジュリー道の師匠の先輩からも「プレスリーは素敵だった」とのお話(その先輩はプレスリーもリアルタイムなのですから凄い!)があって本格的な勉強を開始。豪華な3枚組ベスト盤をはじめ数タイトルのCDを購入、今はようやく「少なくともジュリーが過去にカバーした楽曲はオリジナル音源も所有している」ところまでこぎつけました(70年代のステージでよく歌われたスタンダード・ロックンロールや、ACTの別作品『BUSTER KEATON』収録「淋しいのは君だけじゃない」なども含めて)。
その先輩も仰っていたのですが、プレスリーはテレビ番組出演時などの映像を合わせて聴く場合は圧倒的に初期のナンバーが魅力的です。
後追いでモノクロの映像を観るだけで途方も無いオーラが伝わってきますし、何しろあの目つきはヤバいです。視線を動かすたびに色気がだだ漏れになってる・・・「これはとんでもない歌手が現れた」と、当時全世界が釘づけになったのでしょうね。
ただ楽曲重視タイプの僕としては、「後期」と言ってよいのかな・・・60年代末から70年代のプレスリー・ナンバーも大いに気に入りました。
セールスに初期ほどの勢いが無くなってきた中で、詞曲、アレンジ、演奏、プロデュースとそれぞれのプロフェッショナルが知恵と手管を尽くして自らのアイデアをプレスリーに捧げ、実際に彼がそれを歌うというシチュエーション。ジュリーで言うと建さんプロデュースのEMI期の5枚のような雰囲気が感じられる「後期」プレスリーと、僕はとても波長が合うのです。
中でも特に惚れ込んでいる3曲が
・「イン・ザ・ゲットー」(収録アルバム『エルヴィス・イン・メンフィス』は素晴らしい名盤!)
・「バーニング・ラブ」(70年代後半のパブ・ロック・ムーヴメントにも通じる、完璧に僕好みの1曲)
そして
・「この胸のときめきを」
これが本日のお題、ジュリーACTヴァージョン「愛していると言っておくれ」の原曲です。
せりあがる3連符のグルーヴ。「あなただけでいい」「おまえがパラダイス」の例を出すまでもなく、ジュリー・ヴォーカルとの相性の良さが最初から約束されていたかのような名曲、熱唱系のバラードなのですね。
スコアも見つかりました。
↑ 『オールディーズ・ベスト・ヒット100』より。オリジナルより1音高いト短調での採譜となっています。
僕は不勉強にて最近知った曲ですが、「この胸のときめきを」はプレスリーの代表的名シングル(70年にヒット)としてのみならず、それ以前にダスティ・スプリングフィールドが歌ったりしていて、かなり有名な曲のようです。
「枯葉」進行の三連バラードという以外に、同主音による近親移調が大きな特徴。物悲しい雰囲気で始まるメロディー(ヘ短調)がサビでド~ン!と明るく視界を開く(ヘ長調)構成は、これまたジュリーのキャリアでも「追憶」をはじめとする名曲に同パターンの例は多く、ACTで採り上げたのは大正解と言えるでしょう。
加えてジュリーはプレスリーとは得意とする声域が近いようで、「愛していると言っておくれ」はもちろん、『CD大全集』収載のプレスリー・ナンバー9曲中7曲までを同じキーで歌っています。
(例外は「Surrender」→「夜の王国」がホ短調→ニ短調の1音下げ、「Love Me Tender」→「マッド・エキジビション」がニ長調→ホ長調の1音上げ)
ACT『ELVIS PRESLEY』はジュリーの「歌い方」が本当に多彩で、「無限のタブロー」を初めて聴いた時に「ジュリー、こんな歌い方もするんだ?」と驚いたものです。朗々と・・・言葉は適当ではないのでしょうが「大げさ」に発声していますよね。
「愛していると言っておくれ」のヴォーカルもこれに近いのは、三連のリズムがそうさせているのでしょうか。
とにかく普段のオリジナル・アルバムでは聴くことのできない発声と間のとり方で、ACTシリーズならではの独特の「哀しみ」を感じるテイクです。
映像を観ずに聴くと、この歌は相当切羽詰まったシリアスな場面で歌われているのではと想像しますが、お客さんの歓声や拍手の雰囲気を考えると、「ショー」の一幕という感じもします。どんなシーンが正解なのかな?(←いい加減映像も観ろ、という話汗)
ジュリーのこの日本語詞がとても気に入っています。
原詞では、去りゆく人への恋慕を主人公の「あきらめきれない、でも受け入れざるを得ない」というスタンスで描きますが、ジュリーの場合はなかなかに往生際が悪くて、「愛している」と無理矢理言わせる。相手が言ったら言ったで「気持ちが伝わらない!」と怒る(笑)。
胸をえぐった 愛なき言葉
Fm B♭m E♭7 A♭
冷たい 視線 甘い 誘い ♪
D♭maj7 B♭m Gm7-5 C7
恋人同士が危機的状況にあるのは原曲と同じではあるけれど、なんとか力技で繋ぎ止めよう、引っ張り抜こうと・・・僕にはそんなふうに聴こえるのです。
あとは語感。
先述したサビでの同主音移調に加え、この曲では最後のサビでド~ン!と1音上がりの転調が登場します。転調の箇所はジュリーの詞で言うと、「長い」までがヘ長調で、「刹那」からト長調。さぁ上がるよ!というタイミングにピッタリのフレーズです。
長い 刹那 ♪
C7 D7
当然「訳詞」ではなくジュリー・オリジナルの日本語詞。劇中のシーンに何かヒントがあったとしても、この言葉選びはトコトン冴えていますね~。
あくまで『CD大全集』音源のみの評価として、個人的に『ELVIS PRESLEY』は10作品中4番手に好きな1枚。演奏がオーソドックスなロック・バンド・スタイルというのが波長が合う要因なのかもしれません。
素敵な女性メンバー達それぞれのこの作品以外のキャリア、その後の活躍についても機会あらば追いかけてみたいところです。
それでは次回、「ジュリーの日本語詞の語感」という点ではACT中でも屈指の名篇をお題に予定しています。
今回の「愛していると言っておくれ」とはまた違って、こちらは原詞に忠実で「訳詞」に近い箇所もあったりするんですけど、メロディーへのジュリーの言葉の載せ方がキレッキレで、しかも「求愛」の歌ですからね。ジュリーの官能ヴォーカル炸裂ですよ~。
さぁどの作品、どの曲でしょうか・・・。
ということで、また来週!
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コメント
DY様 こんばんは。
「長い刹那」
永遠に続くと信じられた一瞬。あるいは取り返しのつかない一瞬。
公私構わず注目され続ける毎日に心をすり減らしてながら本当の愛を誰よりも求めていたのでしょうか。
ジュリーの詞はそこに喰いこんでいる気がします。
マスコミに
「大きなお世話!」
と言い、ファンに私生活中には
「俺の視界に入るな」
と言えるジュリーはある意味最強かも。
投稿: nekomodoki | 2020年6月19日 (金) 22時51分
nekomodoki様
ありがとうございます!
公私構わず注視を受ける日々。スーパースターであれば仕方のないことなのでしょうが、神経はすり減るでしょうね。凡人にはなかなか想像がつきませんが。
ジュリーには、値打ちのなる注視を見分けるセンスがあるのかもしれません。
プレスリーとジュリーは性格的に全然違うようにも思えますが、プレスリーは「金目当て」「名誉目当て」で自分に近づく人には厳しかったのだそうです。逆に愛を以って接してくる人には自ら尽くしたのだとか。そんなところは案外共通しているのかも・・・。
投稿: DYNAMITE | 2020年6月20日 (土) 17時02分
DY様、こんにちは。
DY様のこの曲のご紹介&感じ方が多方面に素敵でl、そうなんだ~とご伝授されました。
エルビスの後期のお気に入りに入っているのですね。あとの2曲もいいですよね。
劇中でこの歌は替え玉のエルビスが歌います。その後が・・・お楽しみに(笑)
ちょっと、わざとらしい歌い方だけど、演技と半々かな。
「長い刹那」
この言葉の指し示す状況のテンションと複雑さは個人の愛情関係だけじゃなくて、1970年のTG田園コロシアム、1986年架空のオペラのライブはそんな感じじゃないかしら?
矛盾しているから強烈にリアルです。
投稿: momo | 2020年6月24日 (水) 16時16分
momo様
ありがとうございます!
劇中に替え玉が登場することは知っていましたが、この曲はその替え玉が歌うシーンでしたか。
いざ鑑賞、となったらまずはダリ、その次にプレスリーを観ようかなぁ。
タイガース田園コロシアムと、架空のオペラLIVEが「長い刹那」ですか~!
想像できるようです。本当に、実際に体感されたみなさまが羨ましい・・・。
そうそう、記事中プレスリー後期曲のお気に入りを3曲挙げましたが、もう1曲衝撃を受けたのが「アメリカの祈り」です。この曲を知っているのといないのとでは、ACTプレスリーのジュリー作詞「アメリカに捧ぐ」の印象がずいぶん違うと思われませんか?
「無限のタブロー」の記事にmomo様から頂いたコメントを読み返し、来年のACT月間で是非「アメリカに捧ぐ」を採り上げたいと思った次第です。
投稿: DYNAMITE | 2020年6月25日 (木) 09時15分