沢田研二 「VERDE ~みどり~」
from『act#4 SALVADOR DALI』、1992
1. スペイン・愛の記憶
2. 愛の神話・祝祭という名のお前
3. ガラの私
4. VERDE ~みどり~
5. 眠りよ
6. 愛はもう
7. 黒い天使
8. 恋のアランフェス
9. 白のタンゴ
10. 誕生にあたっての別れの歌
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梅雨ですな~。
ここ数日は割と涼しいですが、先週は気温が高く湿気が多く天気が安定せず・・・という日が続きました。
コロナ禍のこともあり、例年以上に体調管理に気を遣う季節となりましたね。
さて、6月の『ACT月間』更新シリーズも3曲目。
今日は『SALVADOR DALI』から、フラメンコ・ナンバーのカバーにしてジュリーの日本語詞のセンスが光る名曲「VERDE~みどり」を採り上げたいと思います。
よろしくおつき合いください。
現時点で『SALVADOR DALI』は、『CD大全集』の中で個人的に最も気に入っている作品です。
ジュリーの声がACTシリーズ中、抜きん出て妖艶に聴こえるのは僕だけでしょうか・・・?
最初に聴いた時、この作品のヴォーカルは「鉄人バンドで歌うジュリーに近いな」と感じたものです。
ベースレスというだけでなく、パーカッションのアレンジへの貢献度や、エレアコの音色とライヴ感。元々「アレンジフェチ」で、生のジュリーをまず鉄人バンドの演奏で知った僕にとって、『SALVADOR DALI』は特に「ジュリーの歌」をリアルに聴きとる上でとても自然な音に包まれているように思われます。
まぁ、アレンジについてはフラメンコを意識しているのですからベースレスは必然なんですけど。
収録楽曲のタイプも多彩で、中でも「愛の神話・祝祭という名のお前」そして今日のお題「VERDE~みどり」は、短調のメロディーが軽快なテンポでグイグイ押してくるあたり、いかにもジュリー・ヴォーカルの真骨頂という感じがして大好きです。
以前、「ジュリーは緑色が好き」という話を聞いたことがありました。
言われてみますとジュリーには自作詞で「greenboy」「緑色のKiss Kiss Kiss」という重要な曲があります。
「エメラルド・アイズ」も緑系。また朝水彼方さん作詞の「緑色の部屋」も名曲。あとはトッポさんのヴォーカル曲ではありますが、タイガース時代にも思索的なナンバー「緑の丘」。そして今日のお題「VERDE~みどり」・・・他にジュリー関連で緑系の曲ってあるかなぁ?
で、僕はこの「VERDE~みどり」、熱烈に「ジュリーの日本語詞」推しです。
冒頭キメの部分については「直訳」とも言ってよく、その上で語感が素晴らしいわけですが、物語的にはさすがACTシリーズ、さすがジュリーで、歌が進むに連れ「ダリ」を演じる上でのオリジナルとは異なる展開、言葉使いが堪能できます。
とにかく「驚くほど自然にメロディーに載ってる」点ではACTで採り上げられた幾多のカバー曲で(加藤直さんの詞も含めても)屈指の名篇ではないでしょうか。
その魅力を味わうためにも、まずは原曲、原詞を知っておきたいところ。
残念ながらスコアは発見できませんでしたが、とても勉強になるブログ様が見つかりました。
濱田吾愛さんの『フラメンコ・シティオ』
実は僕は不勉強にてジュリーのACTで出逢うまで「VERDE」という原曲自体を知りませんでした。
濱田さんの解説は大変詳しく分かり易く、楽曲の背景やフラメンコの特色、歴史をも学ぶことができます。
例えばこの曲をヒットさせた「ホセ・マヌエル・オルテガ・エレディア」の芸名が「マンサニータ」とのことで、これは「沢田研二」と「ジュリー」のような感じの使い分けなのかなと思いきや、調べたらそうではなく、昔はスペインの人って同姓同名がとても多かったので、本名ではなく「あだ名」で呼び合うことが通例となり慣習的に引き継がれてきているんですって。
歌手しかり、なのですねぇ。初めて知りました。
さらには「VERDE」の詞の原題が「夢遊病者のロマンセ」というのだそうで、これを知るだけでもジュリーの日本語詞への理解が深まります(特に3番のサイケデリックなフレーズ群)。
それに濱田さんの訳詞を読めば、いくつかの単語についてはジュリーもそのまま日本語詞に採用し端々に散りばめていることも分かります。
僕が凄いと思うのは、物語と情景描写が正に「シュール・レアリズム」であるにも関わらず、ジュリーの言葉の並べ方、語感、畳み掛けにより歌全体に漲る「求愛」のテンションです。
メロディーの勢いを加速させるかのようなフレーズ。日本語だからこその疾走感。
短調という共通点もありましょうが、「愛の神話・祝祭という名のお前」と同じテンションを感じます。さらにはほぼ同時期のオリジナル・アルバムに収録された「涙が満月を曇らせる」や「そのキスが欲しい」と同じような、ある意味破滅的なほど激しい「求愛」を自らのヴォーカルに託す・・・そんな日本語詞だと思うのですよ。
最も衝撃的だった箇所は最後のヴァースです。
水に身を投げた女性の動かぬ冷たい顔、その緑の髪だけが水面でゆらゆら踊っているという。
描かれる情景はシュールと言うか恐怖ですらありますが、詞も歌も強烈になまめかしい・・・ここではジュリーが2行目でメロディーを崩してきて、cobaさんのアコーディオンがすぐさま呼応し速弾きになります。
アドリブかどうかは僕には分からないものの、それがまるで野性の求愛行動のように聴こえたり。
楽器編成が少ないぶん、ドキリとさせられます。
そもそも、「情熱の音楽」と言われるフラメンコは、40代の色気でジュリーが歌い演じるには格好の題材だったと言えそうです。
濱田さんのブログによれば、原曲「VERDE」は70年代末にヒットした歌なのだそうです。
意外な感じがしました。もっと古い60年代の歌だと思っていたからです。と言うのは、「VERDE」にはいわゆる「Aメロ」「Bメロ」「サビ」の変化が無く、嬰ヘ短調の短い同一ヴァースを延々と繰り返してゆく構成なのです。
このパターンが70年代末という時期にヒットするには、まず聴きながら歌詞を追いかける面白さ、さらには主題のメロディー一発で耳を捉えるキャッチーさ、そして何より歌い手の表現力が必須です。「VERDE」にはそれが備わっていて、だからこそジュリーの日本語詞と歌もここまでの名篇、名演に成り得たのでしょう。
僕はACTシリーズの映像をまだ鑑賞できていませんが、いざ!その時が来たらまずこの『SALVADOR DALI』から見ると思います。ズバリ「VERDE~みどり」の「演じ方」に興味が大きいのです。
フラメンコと言えば、ギターメインの伴奏以外に「踊り」が重要不可欠。「VERDE~みどり」のイントロ導入を担うタップ音、或いは楽器演奏が完全に引いてヴォーカル・ソロとなる5番のヴァース途中で聴こえてくる「オ~レ!」の声(cobaさんなのかなぁ?)。
どんなふうに舞台で演じられているのか、やはり音源だけだと想像がつかないんですよね。
もちろん、ストーリーと曲がどう絡んでくるか・・・まぁそれはすべてのACT作品について言えることですが。
それでは次回は6月25日、ジュリー72歳の誕生日に更新を予定しています。
あまり日数が無いけど、こればかりは何としても間に合わせなければ・・・。
お題は、個人的にすべてのACTナンバー中、現時点で一番好きな曲を考えています。頑張ります!
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コメント
DY様
連投します。
明日の更新前に間に合わせなければと(笑)
VERDEはわたしも大好きです。
おっしゃるようにダリでのジュリーのヴォーカルは圧倒的。
声と歌詞が深く響き合ってどの曲も自然にドラマチック。高いレベルでの安定がACTシリーズ中一番の出来だと思います。
それに演奏も熱い思いが感じられて、ジュリーをのせていますね。ヴォーカルだけになるところは演奏の人達が「オレ!」と掛け声をかけてます。ここの高まりがステキです。
シュールでどこか不吉なラブソングを追い詰めていくように歌うところがステキ。
ガルシアロルカの詩をジュリーが歌詞に仕上げて、歌いこなしているのが見事で凄いコラボ。こういうことを何気なくやって、知らん顔をしているのがジュリーらしいところ♪
大好きです、といまさら(笑)
ジュリーのお誕生日の更新を楽しみにしています。
あの曲かな?
投稿: momo | 2020年6月24日 (水) 16時28分
DY様 こんばんは。
猫をモフりながら聴いていたんですが。
「猫の山」
で何だかシュールな光景が頭に・・・。
不思議な歌ですが、ハムレットが川に身を投げたオフェリアに捧げた歌みたいに思えました。
バースデイ更新楽しみにしております。
投稿: nekomodoki | 2020年6月24日 (水) 22時11分
momo様
ありがとうございます!
さすがはmomo様、原詞をご存知だったようですね。
シュールで不吉なラブソングを追い詰めて歌う・・・そうそう、それです!僕が書きたかったことをズバリ言葉にして頂きましたよ~。ジュリーが追い詰めるように歌っているから、僕は「破滅的な求愛の歌」だと感じたのでしょう。
演奏の熱さという点も含め、ジュリーとフラメンコの相性の良さが際立つ歌だと思います。
今日の更新は・・・はい、あの曲です。
「ACTの中ではこれが一番好き!」とmomo様にはお話したことがあったはずです。
頑張ります!
☆
nekomodoki様
ありがとうございます!
昨日たまたま夕食時にテレビで「猫島」の特集を観ていて、僕も「猫の山」を思い出しました(笑)。
シュールですが、猫好きには幸せなシュールですね。
バースデイ更新、昨夜頑張って下書きを終えました。
僕の下書きは、書きたいことをダ~ッと箇条書きにするというスタイルで、更新時にそれを文章で繋げていくのです。だから時々変な誤植が(汗)。
なんとか今夜更新、間に合うと思います。どうぞお楽しみに~。
投稿: DYNAMITE | 2020年6月25日 (木) 09時59分