from『愛の逃亡者』、1974
1. 愛の逃亡者/THE FUGITIVE
2. ゴー・スージー・ゴー/GO SUSY GO
3. ウォーキング・イン・ザ・シティ/WALKING IN THE CITY
4. サタデー・ナイト/SATURDAY NIGHT
5. 悪夢の銀行強盗/RUN WITH THE DEVIL
6. マンデー・モーニング/MONDAY MORNING
7. 恋のジューク・ボックス/JUKE BOX JIVE
8. 十代のロックンロール/WAY BACK IN THE FIFTIES
9. 傷心の日々/NOTHING BUT A HEARTACHE
10. アイ・ウォズ・ボーン・ト・ラヴ・ユー/I WAS BORN TO LOVE YOU
11. L.A. ウーマン/L. A. WOMAN
12. キャンディー/CANDY
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本当なら今日は『Peeが奏でる「四谷左門町LIVE』があり、13日の水曜日にはジュリーの全国ツアー『Help!Help!Help!Help!』が開幕し、土曜日には横浜銀蠅の完全再結成LIVEがあり・・・僕は生のビタミン・ミュージックを摂取しまくる一週間になるはずでした。
思いもかけずこういう状況になっていますが、今は我慢・・・。本当に皆で頑張ってゆくしかありません。
僕はこの期間、ブログの更新を頑張ると決めました。
『自宅でジュリーの歌を聴こう!月間』ということで様々なパターンの「元気の出るジュリー・ナンバー」を採り上げていますが、今日は再び明快なビート系に戻ります。
僕は昔から洋楽の中でも60~80年代のロックが好きで、「まぁだいたいの重要なバンド、アーティスト名は知ってる」と勝手に自負していましたが、本格ジュリー堕ち後のいわゆる「じゅり勉」の過程で、それがまったくの思い上がりであったことを痛感させられました。
みなさまも聞けば呆れるはず・・・例えば僕は本格ジュリー堕ちまでは、デイヴ・クラーク・ファイヴもミッシェル・ポルナレフもレターメンも知らなかったのですよ(恥)。
さらに、今日のお題に密接に関わってくるイギリスのバンド、ザ・ルベッツ。これまた知らなかった・・・(ただ、さすがに「シュガー・ベイビー・ラヴ」を聴いて「あぁ、この歌か!」とは思いましたけどね)。
彼等のプロデューサー、仕掛け人と言えばよいのか専属ソングライターと言えば良いのか・・・とにかくビッカートン×ワディントンにつても同様。
これから彼等のキャリアを辿り振り返ることは、僕のようなタイプのジュリーファンとしては宿命を思われますのでそこは今後も努力していきますが、今日は現時点で持つ限りのつたない知識、資料を元に、ビッカートン×ワディントン作のルベッツ・ナンバーにしてアルバム『愛の逃亡者』収録のジュリー・ナンバーでもある「恋のジューク・ボックス」をお題に採り上げます。
先輩方からの人気が高い1曲、と認識しております。
短い文量ですが、よろしくお願い申し上げます。
ザ・ルベッツはデビュー・シングル「シュガー・ベイビー・ラヴ」の大ヒットにより日本での当時の知名度も抜群だったようです。やはり僕の場合は洋楽においても「後追い」のハンデが大きいのですね。
それほど有名なバンドだったとは・・・。
複雑な事情も絡んだメンバー交代劇(何と、デビュー前にすらヴォーカリストが交代したりしています)などゴシップにも事かかなかった彼等が、74年に矢継ぎ早のサード・シングルとしてリリースしたのが「恋のジューク・ボックス」という流れだったようです。
同年にジュリーのイギリス進出アルバム『愛の逃亡者』のソングライティングを一手に担ったビッカートンさんが、フルアルバム全12曲のうちいくつかをルベッツへの提供曲と重複させたのは自然な流れであったでしょう。「恋のジューク・ボックス」はそのうちの1曲でした。
では、ジュリーとルベッツそれぞれのヴァージョン・・・当然ながらリード・ヴォーカルは異なりますが、それ以外にどのような違いがあるでしょうか。
THE RUBETTS/JUKE BOX JIVE
まず、キーが違います。
ジュリーが変ロ長調(B♭)でルベッツがイ長調(A)。これはおそらくブラスの採用に伴う移調です。
ジュリーのヴァージョンにはサックス(たぶん2本)のトラックがあり、管楽器のプレイヤーにとってはオリジナル・キーのAよりB♭の方が演奏し易いのです。
後の「バタフライ・ムーン」の時のような事件が起こってはいけませんしね。
この移調によりジュリーは本家ルベッツよりも半音高いキーで歌うことになりました。はからずしてヴォーカルの実力を彼の地で示した、ということは言えましょう。
演奏トラックの大きな違いは上記の通りブラスの有無で、ルベッツのヴァージョンではサックスの代わりにゴキゲンなピアノを効かせているのがポイント。
厚いコーラス・ワークも2つのテイクではかなり違って、ルベッツの方が多彩です。これは楽曲自体の構成にも言えて、ルベッツには「語り」をフィーチャーしたブレイクのヴァースがあるんですよね。
この「語り」はジュリーにも是非欲しかったところ。その点に限って僕はルベッツのヴァージョン推しです。
そしてヴォーカル。
先述の通り、この曲は厚めのコーラスが特徴的です。それはリード・ヴォーカルのパートでも効果を発揮していて、2つのヴァージョンいずれもAメロ部はヴォーカリストとコーラス隊がユニゾンでメロディーを歌います。結果、ヴォーカルが1人残る「Come on now♪」からの展開部の視界を良くしているわけですが、逆に言えばAメロ時点でのリード・ヴォーカリストの存在感を薄めている感も否めません。
アルバム『愛の逃亡者』を1枚通して聴くならともかく、ジュリーの「恋のジューク・ボックス」を何の予備知識も無しに単体で1曲、突然聴いてみたと想像してください。
手練れの先輩方をもってしても、Aメロ終わり間際までは「ジュリーの曲」だと気づけないでしょう。ジュリーのリード・ヴォーカルがブ厚いコーラスに完全に埋もれてしまっているからです。
ただし、Aメロすべてがヴォーカル、コーラスのユニゾンであるにも関わらず、「Aメロが終わるまでそれと気づけない」のではなく「Aメロが終わる間際まで」というのがジュリーの凄さだと僕は思っています。つまり
Come on baby, do the juke box jive
B♭
Just like they did in nineteen fifty five ♪
F D7
「fifty five♪」の語尾。
ここで忽然とジュリーの声がハッキリ現れます。
力量あるヴォーカリストと、ソロが本職ではないコーラス隊との声の差は、母音の伸びにあるのですね。
双方とも「ふぁ~いぶ♪」と歌ってはいるのですが、コーラス隊の方は複数の人数それぞれが普通に「会話する」時の感じで発声しているため、語尾の「いぶ♪」は声量が下がります。
しかしジュリーは「ふぁ~♪」の母音「あ」に第2波の伸びをい作っているため、語尾もそれまでと均一の声量で歌われます。結果、その箇所だけはジュリー1人の声が大きく聴こえるわけです。当時のジュリーなら意図した技術ではないでしょう。天性だと思います。
これまた、はからずして証明されたジュリー・ヴォーカルの素晴らしさではないでしょうか。
「恋のジューク・ボックス」は、アルバム『愛の逃亡者』の中でもLIVEで歌われることが比較的多かったようですね。僕はまた未体感ですので、「いかにもバンド・サウンド」という感じのこの曲の魅力をまだ半分も理解できていないのでしょう。
ツアーがバンド・スタイルのうちに、可能性ある選曲として一度聴いておきたかったなぁ・・・。
最後に、75年の『YOUNG SONG』に掲載されていたルベッツのページを添付しておきます。
何故か、ハ長調での採譜。
メジャー・セブンスとすべきところを普通にマイナーで表記するなど採譜の精度は低めですが、「恋のジューク・ボックス」がジュリーのアルバム『愛の逃亡者』とは違う形で日本によく知られていたことを示す貴重な資料。
「恋のジューク・ボックス」は特殊な例としても、70年代の歌本の洋楽コーナーにはジュリーがロックンツアーのリアルタイムでカバーしていた曲がひょいと掲載されていて、後追いファンの勉強に役立っているのです・・・。
それでは次回もビート系のお題を考えています。
今度はかなりマニアックな曲に走りますよ~。
どうぞお楽しみに!
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