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2020年4月11日 (土)

沢田研二 「Help!Help!Help!Help!」

from『Help!Help!Help!Help!』、2020

Helphelphelphelp 

1. Help!Help!Help!Help!
2. 頑張んべえよ

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まるでジュリーの新曲の歌詞「地球規模危機」が予言であったかのように、世界は大変な状況です。
日本でも遂に7都府県で緊急事態宣言が出されました。桜咲く季節にこれほど気が滅入るのは、母親を亡くした年以来かもしれません。

みなさま、お変わりありませんか?

僕は現時点で身体は元気です。
ただでさえ季節の変わり目には風邪をひいてしまう体質なので
、徹底的な手洗い、うがいを敢行しています。今後も油断はできませんね。

反して仕事の方は本当に難儀
しています。
巷で叫ばれている中小企業への深刻な経済的打撃を日々実感。加えて、僕
の仕事は末端とは言え音楽関係で、各イベントの中止(現場の物販売上がゼロ)、楽器店や書店の臨時休業など業界全体の現況を把握していればこそ、例えばプライヴェートであっても社員がアーティスト・ライヴなどの密集・密閉空間に身を置こうとするのはご法度です。
5月までに劇的な終息を見ない限り、僕はたとえジュリーの全
国ツアーが予定通り決行となりチケットが送られてきたとしても、初日の国際フォーラム公演への参加は(下手すると友人3人を誘っている川口リリア公演についても)自粛自重せざるを得ません。そうなったら本当に無念と言う他なく・・・今はただただ、一刻も早く平穏な日常が戻ってくるのを願うばかりなのです。
ジュリーは今その「劇的な
終息」に賭けてスケジュールを睨んでいることでしょう。そのためにも「当面の1ヶ月」は大切な期間です。

僕などはまだ普通に仕事ができているだけ恵まれていると考えなければなりませ
ん。
今はとにかくじっと我慢、グッと踏ん張るしかなく、そんな中でも自分に何
かできることがあるとすれば、このブログの更新しかない・・・仕事のバタバタと父親の重大な病の発覚、さらにはプライヴェートでのとある重要な任務(こちらはとても胸踊る楽しい案件だったのですが)などが重なりあっという間にひと月以上の更新間隔が開いてしまいましたが、緊急事態宣言を受け勤務先でも毎日の業務時間短縮、交代での週休3日制が実施となり、ひとまず時間の余裕はできました。

拙ブログでは当面の間『自宅でジュリ
ーの歌を聴こう!月間』を銘打ち、みなさまが外出を控え過ごす時間のお供となるよう、更新に励む決意です。
よろしくお願い申し上げます!


今日は遅まきながらジュ
リーの新譜お題記事にて更新です。
今年も柴山さんのギター1本(リリース・アーティ
スト・クレジットは遂にジュリーと柴山さんの連名!)の伴奏による2曲入りの新譜リリース。
今回は2つほど特記すべきポイントがあります。
ひとつは収録曲のキーをホ長調で揃え
てきたこと。
2つ目はジュリー現在の声域リミットを超えたメロディー音域の採用です
。2つ目については次回「頑張んべえよ」の記事お題で書くことになりますので、今日「Help!Help!Help!Help!」のお題にあたり、まずホ長調というキーの話から書いてみたいと思います。

通常「キー」とは調号を指す言葉で、「キーが高い」「低い」というのはあくまで相対的な表現。ホ長調の場合「譜面にした時にト音記号の隣に4つの#がつきますよ」という理屈となります(ド、レ、ファ、ソ)。
いや、今のロッカーは「ホ長調」なんて言わないか・・・
シンプルに「Eのキー」と言うでしょう。

僕は60年代のエレキギター・ブームを知
りません。でもギターをやっていれば、当時のイノセントな不良少年がエレキを持って「バ~ン!」とEのコードを弾いただけでロッカーたりえた、というシーンは想像し易い。
ギターの構成上、通常チューニングで最下の開放弦である「ミ」がルート音のE
メジャー・コードは、和音一発でロックを体現できます。
そのEコードをトニックとす
るキーがホ長調。「E」こそ由緒正しきロックのキーなのです。

ジュリーはそのメッセージ・アプ
ローチのみならずエレキギター1本で鳴らすEコードを以って、「ロックへの原点回帰」を表したいのではないでしょうか。
今年の新譜製作にあたりジュリーが柴山さんに「新
曲はEで作って!俺の(自作曲)もEだから」とリクエストした可能性すら僕は考えてしまいます。それほど今回の「Eのキーで2曲並び」はインパクトがありました。

では、楽曲として「Help!Hepl!Help!Help!」自体のインパクトやメッセージについて。
発売日から数日遅れて購入した新譜、まずこの1曲目のCDタイトルチューンを聴き終えての僕の感想はただひと言「うらやましい!」と。
何がって、もちろん昨年の全国ツアー・ファイナル・東京国際フォーラム公演で満員のお客さんがジュリー指導のもと「レコーディング」参加されたと聞く、コーラス・パートのことですよ~。
これはレコーディング作品嗜好の強い僕としては、『ジュリー祭り』の合唱隊以上にうらやましい!
最高にリスペクトするアーティストの新曲のヴォーカルの上に自分の声が重ねられているなんてね、一生の、しかも形に残る宝物。
この記事を読んでくださるみなさまの中にも、「自分もその場にいた!」というかたはいらっしゃるでしょう。
是非、永遠に自慢し続けてください(笑)。

当然2曲目「頑張んべえよ」も同様にうらやましく感じましたが、シャウト・スタイルがビシッと嵌る「Help!」なるフレーズ、せり上がるような裏打ちのリズム割りでジュリーと重なる「声」の完成度、説得力・・・叶わぬ思いで言わせて貰うと、個人的には「Help!Help!Help!Help!」1曲だけでも参加したかったなぁ。
みなさま、見事なコーラスでございました。
ノン・クレジットってのがまた良いじゃないですか。「とっておきの切り札・シークレット出演」みたいな感じで。

さて、「Help!」と言えば僕はまずあの有名なビートルズ・ナンバー「ヘルプ!」を連想します。
リリースは1965年。当時ビートルズは、前年(64年)の1作目の主演映画『ビートルズがやってくる!ヤァ!ヤァ!ヤァ!』(原題『A Hard Day's Night』)を大成功させ、矢継ぎ早に2作目の映画も企画されてました(ザ・タイガースも同じ道を歩みましたね)。
当初主題曲の候補だったのは「エイト・ディズ・ア・ウィーク」だったのですが、「もっとインパクトのあるタイトルを」という話を受けてジョン・レノンが書き下ろした曲が「ヘルプ!」だと言われています(細かなところまでは真偽不明のようです)。タイトル・インパクトとしてこれ以上無いアイデアでしょう。
それから実に55年の時を経たジュリーの新曲タイトルが「Help!×4」というわけですから、鮮烈さ、衝撃はもちろんのこと、感慨深さもあります。

メッセージは当然ながら現在のコロナ禍の予言ではなく、環境問題も含めた昨今の世界情勢を憂いたもの。
ここ数年でジュリーは『PRAY FOR JAPAN』からさらに『PRAY FOR THE EARTH』へテーマを進めたと感じています。タイガースの『ヒューマン・ルネッサンス』で言うならば、地球は既にレコードB面途中まで聴いてしまっている状態なのだ、と。
ジュリーがこのテーマを歌い続けるのは、なんとか針を戻そうとする一心からでしょう。

歌詞中で僕が重視したいのは、1番に登場する「失われた善」というフレーズです。
「善」の対義語は「悪」。ならば「失われた善」とは「まかり通る悪」と置き換えることもできます。

実は僕は社会的な考え方が似た友人より異なる友人の方が多くて、何故か会話のテンポが合い、議論しても発展があると言うか・・・不思議なことなんですけど。
中でも大学時代からの親友とは政治の話も長年してきていて、お互いが「自分はごく真っ当な考え方のつもり」なのに、彼からは僕が左寄りに見え、僕からは逆に彼が右寄りに見えるということが起こります。
そして最終的に行きつくのは、人間の根本を「性善」に立つか(僕)「性悪」に立つか(友人)のせめぎ合い。
僕は右だとか左だとかのイデオロギー分けは好きじゃないんだけど、案外世で言う「左右」は善悪の捉え方の違いに根差すんじゃないかなぁ。

ただしそうなると議論的には僕の分が悪い。何故なら、「じゃあオマエは自分のことを完全に「善」だと言えるのか?」と問われた時、決してそんなことはないですから。
でも、「善」「悪」というのは極論に立った状態で判断をくだすべきものではない、と思うんですよね。

つい先日、中山七里さんの『護られなかった者たちへ』というミステリー小説を読み、改めて「善悪の定義」について突き詰めさせられ考える機会を得ました。

話が逸れますが『護られなかった者たちへ』は大変な傑作でした。
僕の場合はミステリー好きとは言ってもかなり偏っていて、幼少から読んでいる乱歩、正史がベースというのはともかく、一番本を読んだ20代の時期にリアルタイムで「平成新本格」の波をまともに受けるという特殊な経過を辿っています。
そのためミステリーは「謎解き」が第一、「ああっ、そうだったのか!と言わせて欲しい」と思いながら読むジャンルでなければならない、と考えるタイプです。
『護られなかった者たちへ』は、あらすじ案内だけ見るといかにもリアリズム系という印象で普段なら手をつけないところだったのですが、ちょうどこの原作の映画化のニュースがあり、カミさんが特に贔屓にしている俳優さんが2人揃って出演とのことで、「じゃあ、まぁ読んでみるか。俺がストーリー説明したる!」と読み始めた次第。
期待は素晴らしい意味で裏切られました。
例えば島田荘司さんの『奇想、天を動かす』が好きな人であっても、綾辻行人さんの『十角館の殺人』が好きな人であっても双方に自信を持ってお勧めできます。
ちなみに結局カミさんにストーリー説明はしていません。「いいから、自分でも読みなさい!」と言っているのですが・・・今のところ読み始める気配無し(笑)。


法的な善悪と性根の善悪は別物のように感じます。
ジュリーが歌う「善」はおそらく性根のことで、「糸車のレチタティーボ」や「我が窮状」に登場する「信じよう」のフレーズを考えるに、ジュリーも基本「性善」に立って考える人なのかなぁと勝手に思うのですが、だからこそ今回「Help!Help!Help!Help!」で「失われた善」と歌わざるを得なかったのはとてつもなく重い・・・。
直前の「捩れゆく脳」とは善悪の感覚が麻痺してゆく過程や様子を指し、ジュリーには今世界中がそんな状況へと進んでいるように見えるのではないでしょうか。
本当に怖いメッセージです。
しかしそんな鬼気迫る歌詞を歌いながらも、特に2番の

地球上の欲望 絶望 止まれ!
E           A  B   A   B        E

この「絶望」の「ぜ」の発音に極上の色気すらあるという・・・2番では救いの状況も示唆しているだけに、聴き手はその声に悲観ではなく励まされます。
これがジュリーなのですねぇ。
現在のコロナ禍の状況で、僕らには「善」の底力が問われているかもしれません。「失う」ことのないよう、及ばずながら僕も肝に銘じたいと思っています。

最後に、柴山さんの作曲と演奏について。
伴奏含め転調はありませんが、一時的に「レ」「ソ」の音をナチュラルさせる箇所があります。「E」のキーで「D」や「G」を組み込んでいるためで、これは60年代に入ってからの尖ったロックの王道でもあります。
原点回帰のアプローチ、ジュリーと息はピタリですね。

ギター1本体制になってからの柴山さんは、ブラッシング音を打楽器のように見立てたアレンジに取り組んでいるようです。
過去ナンバーのステージ再現もそれは同様で、昨年の「憂鬱なパルス」あたりが明快でした。

近年の新曲が「曲先」の作業であることはジュリーも明言していますが、その点「Help!Help!Help!Help!」で興味深いのは、お客さんと一緒に歌う(叫ぶ)あのうらやましいタイトル・フレーズ部が果たして柴山さんのデモ段階でどうなっていたのか?という。
通常、デモでは作曲者が適当な英語かハミングなどでガイドメロディーを入れるところ、この部分ではガイドは無く柴山さんはギターのアクセントのみをリフ風に入れており、そこにジュリーが乗っかって「Help!」のフレーズを当てた・・・これがまず第一の想像です。

第二は僕が個人的に萌えてしまう推測(妄想)で、柴山さんはこの新曲に、「ROCK'N ROLL MARCH」のような景気のよい会場参加型のシャウト連呼を採り入れようと考え、デモではその箇所で「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」と叫んでおいた。柴山さんのことですからとても奥ゆかしく、ね。その奥ゆかしい「ヘイ!」がジュリーには一瞬「ヘルプ!」に聴こえ、そこから作詞のアイデアが膨らんでいった・・・。
どうです?
2人の「共作」感が増して、萌える妄想でしょ?

ロック史において、共作段階での「空耳」からアイデアを得たタイトルの名曲っていくつか例があるんですよ。
僕のお気に入りの洋楽だと、デヴィッド・ボウイがジョン・レノンと共作した「フェイム」とか、クリーム時代にエリック・クラプトンがジョージ・ハリスンと共作した「バッジ」とかね。
ジュリーと柴山さんの「Help!Help!Help!Help!」では、実際のところどうだったのでしょうか。


それでは次回更新は当然、新譜2曲目「頑張んべえよ」のお題記事となります。
これはもう、ジュリーが敢えて高い「シ」の音を自作曲で採用した志について、多くを書くことになるでしょう。

『自宅でジュリーの歌を聴こう!月間』ということで、頑張ってできる限り早く更新します。
みなさま共にこの難局を乗り越えていきましょう!

(付記)
志村けんさんの訃報、本当に悲しくとても残念です。
僕は「ドリフ」と言えば志村さん、ドンピシャの世代です。小学校までは『全員集合』を毎週観ていましたし、人形劇『飛べ!孫悟空』も強烈に印象に残っています(小林旭さんのCM曲も)。ジュリーとの関わりが特別深かったのを知ったのは『ジュリー祭り』以降に勉強してからでした。
心より、志村さんのご冥福をお祈り申し上げます。

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コメント

DY様 こんばんは。

何だか大変な状況になってきましたね・・・。
ツアー。前半は延期か、中止か、かな?

コーラス、参加しましたよ。
「後でミキシングでどうにでもなるから」と言いつつ駄目出しすごかったです。でも参加出来てよかった!
ジュリー、本当に未来が見えていたんじゃ・・・?

この世界的な騒ぎもいつかは終息し検証される時がくるでしょうが、「勝った方が正義」「言い負かした方が勝利」の世界では、本当のことがうやむやにされてしまうかもしれません。
そうなれば「善と悪」も「誠意と良心」もむなしいばかりです。でもそれでも自分の心だけはごまかせないと信じたいです。

投稿: nekomodoki | 2020年4月13日 (月) 16時46分

nekomodoki様

ありがとうございます!

やはりコーラス参加されていましたか。本当に羨ましいです。
「Help!Help!Help!Help!」のパートはリズムが裏ですから、フォーラム満員のお客さんがピタリと揃うのはなかなか難しかったのではないでしょうか。その難しさも含めて、さぞ楽しい「レコーディング」だったことでしょう。

仰る通り、自分自身はごまかせない・・・こんな状況ですから仕事などで空気がギスギスすることもあります。常に穏やかな心でいることはとても難しいです。
それでも反省と決意を繰り返しながら、今は頑張るしかないですよね・・・。

投稿: DYNAMITE | 2020年4月14日 (火) 08時53分

DY様
 こんばんは。大変遅れてのコメントになります。昨日(5/23)やっとタワーレコードで新譜手に入れました。
 帰りの車中でさっそく聴きました。イントロ聴いてほぼ予想通りの音色で、でも震災からの年月からかメッセージも少しずつ変わって来てるな~が最初の印象です。前作よりは完全に前々作寄りと言うか、根性入ったギターですね。「二人体制?」正直あんまり個人的には好みじゃないんですが、この曲はギターのみの演奏の必然性みたいなもの感じました。
 余談ですが、私はなぜかこの曲聴いて「愛にしよう」を思い出しました。

投稿: ねこ仮面 | 2020年5月24日 (日) 22時14分

ねこ仮面様

ありがとうございます!
(重複のコメントは削除いたしました。ご連絡ありがとうございました)

新譜、購入されましたか~。
仕事をしていても、首都圏はまだまだという感じですが関西を筆頭に各地のCD店、楽器店が元気を取り戻しているなぁと実感しています。

「Help!~」は本当に、今年のこの地球規模の大変な状況、その年にリリースという因縁めいた偶然もあり、発売当時聴くのと今聴くのとでは違った戦慄が走ります。

根性入ったギター、正に仰る通りです。
柴山さんは昔から根性入っていましたが、この体制になってそれが鮮明になってきましたね。

ちなみに僕は「愛にしよう」は「明日は晴れる」と双子みたいだなぁと思っています~。

投稿: DYNAMITE | 2020年5月27日 (水) 09時12分

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