沢田研二 「むくわれない水曜日」
from『彼は眠れない』、1989
1. ポラロイドGIRL
2. 彼は眠れない
3. 噂のモニター
4. KI・MA・GU・RE
5. 僕は泣く
6. 堕天使の羽音
7. 静かなまぼろし
8. むくわれない水曜日
9. 君がいる窓
10. Tell Me...blue
11. DOWN
12. DAYS
13. ルナ
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今年のジュリーの全国ツアー『Help!Help!Help!Help!』は、すべての公演中止が決まりました。
僕などは「秋からの後半戦はもしかしたら・・・」と希望も抱いていたので本当に残念ですが、今回ばかりは仕方がありません。ジュリーの勇気と英断、優しさに敬意をもって・・・今年はじっと我慢ですね。
来年は無事にツアーが開催されますよう、ジュリー、柴山さん、澤會スタッフのみなさま、そして志を共にするジュリーファンのみなさまもどうぞご無事でありますよう、僕も祈っています。
拙ブログでは現在、『自宅でジュリーの歌を聴こう!月間』ということで、様々な時代の「元気の出るジュリー・ナンバー」を採り上げているところ。
こうなったからには長期の『年間』シリーズとして取り組んでいきたい、と決意を新たにいたしました。
今日も爽快なビートものの名曲をお届けいたします。
アルバム『彼は眠れない』から「むくわれない水曜日」・・・せっかくのこのお題なので本日水曜日を待っての更新です。
短い文量ですがよろしくおつき合いください。
ロック古今東西、楽曲タイトルに「曜日」が入った名曲は枚挙にいとまありません。
最も採用率が高い曜日はやっぱり土曜なのかな。それだけでゴキゲンな感じがしますからね。
では「水曜日」ってどうなんでしょう?
有名どころで挙げると、サイモン&ガーファンクル「水曜の朝、午前3時」とか大滝詠一さんの「雨のウェンズデイ」とか。ちょっとアンニュイな、どちらかと言うと憂鬱な心情を描いた曲が多いでしょうか。
僕もそうだけど、そもそも普通に会社勤めをしていると一週間の中で一番気持ち的にシンドイのがド真ん中の水曜日じゃないかなぁ。今日はたまたま祝日で、こうしてブログを書けていますが。
そんなわけで「水曜日」にはあまり明るいイメージは無い・・・みなさまもそうではないでしょうか。
でもね。
ジュリーの「むくわれない水曜日」は明るい歌だ、と思いませんか?この尾上文さんの詞は色々な解釈ができると思うけど、僕としては
「軽い気持ちでつきあい始めた若い女の子に、思わぬ情が入り調子が狂ってすったもんだしている色男」
の物語と捉えています。
ジュリーが歌うからこそ!のポップな詞だと思うのです。「お嬢さんお手上げだ」の続きの歌、みたいな感じで。
歌っているのがジュリーですから、物語の主人公はイケメン、ダンディーな中年(?)男性という印象。おつき合いする女性には困らない色男でしょう。
ただ、決して特別な立場の人ではなくそれこそ普通の勤め人のように想像します。つまり「水曜日は憂鬱」なサラリーマンですな。
お相手の女の子は20代かな。主人公としては「ちょっと味見」的につき合いだしたものの、次第にその純な性格に本気で惹かれはじめたと。
「いかん、俺らしくないぞ」「それに、俺みたいな奴とこのままつき合ってるとこの娘は不幸になってしまう」と考えたのでしょうか、思い切ってキチンと別れようと決意するわけです。そこで、憂鬱ついでに別れを切り出すのが毎週水曜日という(笑)。
ところがその第1週目(歌の1番)では
街角でGood Night さよならを言った
C Em Dm7
気づかずにGood Luck より添えば
G7 C Em
むくわれない oh Wednesday Night ♪
Dm7 G7 C
それとなく別れを伝えたつもりが、天真爛漫な彼女はまったく気づかず・・・屈託の無い愛情光線に撃沈。
その後も夜な夜な電話で愚痴を聞かされたりして
「こりゃいよいよ向こうもこっちもハマってしまう。ハッキリ言わないとダメだ!」
と意を決した第2週目(歌の2番)。しかし
はじめからGet Right きづいてたことさ
C Em Dm7
たたずんでGet Back 君を見送った
G7 C Em
夜風の中
Dm7 G7
街角でGood Night さよならを言った
C Em Dm7
ふりむいてGood Luck 君が泣き出せば
G7 C Em
むくわれない oh Wednesday Night ♪
Dm7 G7 C
ビシッと別れを告げて立ち去り際にふと振り返ったら、ショックのあまり街中で泣き出してしまっている彼女。
咄嗟に「ごめんごめん、俺が悪かった!冗談だよ~」と、まぁ歌詞中ではそんなことまでは描いていないものの、純情に降参し結局「むくわれない水曜日」を過ごす主人公。
どうです、正に「お嬢さんお手上げだ」のような、ジュリー・ナンバーらしい「明るい」ラヴ・ストーリーの情景が見えてくるではありませんか。
もちろんそう思わせてくれるのは、大羽義光さんの曲が完璧なまでにポップだから。
大羽さんは天才型の人で、82年に筒美京平さんと出逢い師事するようになってすぐの頃から、若くしてその才能を発揮されたようです。
「むくわれない水曜日」は調合の変化も無くハ長調のド直球なんですけど、直球進行に独創的なメロディーを載せられることこそが天才の証。
ジュリーへの作品提供は吉田建さんの人脈で実現したそうで、建さんにとってもこれほど頼もしく誇らしい人材もいなかったでしょう。「ジュリー」のイメージにピッタリな曲をいきなり作ってくれたのですから。
大羽さんは洋楽だとウルトラボックスやデペッシュ・モードに影響を受けていたとのこと。
テクノ・ブームから始まったニュー・ウェーヴ・ムーヴメントがこの日本で産み落とした「アンファン・テリブル」。大羽さんはそのお1人と言えましょう。
アルバム『彼は眠れない』には「ポラロイドGIRL」「DOWN」のシングル2曲が入っていますが(僕はこの2曲いずれかが今年のツアーでセトリ入りすると予想していました)、他にもタイトルチューンの「彼は眠れない」、大沢誉志幸さんの「Tell me...blue」、そしてこの「むくわれない水曜日」などはシングル適性の非常に高いナンバーだと思います。
捨て曲無しのたっぷり全13曲、改めて大名盤!
この1枚をじっくり聴き込むだけで、1日中自宅で過ごせますよ~。
それでは次回更新ですが、「いとしの惑星」「むくわれない水曜日」と続いた流れとは少し楽曲の雰囲気を変えてみようかと思います。
「元気の出るジュリー・ナンバー」は何もアップテンポのビートものだけと限りません。ジュリーの歌声それ自体が癒し・・・甘く妖美なヴォーカルに励まされ心穏やかになる、というパターンもあるはずで、そんな名曲を数多く知っていることは、今この大変な時期にあってジュリーファンの大きな強みではないでしょうか。
ビート系の楽曲収録は僅少ながらも「屈指のヴォーカル・アルバム」として僕は現在2枚の名盤を聴き返しているところです。
その中から1曲ずつを採り上げ、ゴールデン・ウィーク中に2本の記事を書きたいと考えています。
大型連休も外出を控え自宅で過ごされるみなさまに、改めてそんなジュリーの名盤を手にとって貰えるよう頑張ります。どうぞお楽しみに!
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コメント
DY様
来ました大名盤!!
もちろん大好きで、リアルタイムで初めて聴いたときの歓喜の気持ちは、今でも覚えています。
お題曲はもう『私の記憶の中のジュリー』そのもので、初聴以来、何回聴いたかわかりません。
私のまわりのロック好きにがジュリーを勧める時の鉄板5枚が、このアルバムの他『単純な永遠』『ストリッパー』『G.S.I LOVE YOU』そして『愛の逃亡者』で、だいたいはハマります(爆)
お題曲は一度は生で是非聴きたいですね~
投稿: Mr.K1968 | 2020年4月29日 (水) 18時47分
Mr.K1968様
ありがとうございます!
(メールでの早々のコピペミスのご指摘もありがとうございました。助かりました!)
Mr.K様のこの名盤への思い入れが伝わってきます。
ご友人にお勧めする5枚も、納得の厳選ですね。
ちなみに僕の場合は「敢えて」という感じで『今度は、華麗な~』を勧めます。特にプレイヤーの友人だとハマるパターンが多いようです。
「むくわれない水曜日」はじめ、このアルバム収録の隠れた大名曲の数々、今後生で聴く機会はあるでしょうか・・・?
まずは来年、期待しましょう!
投稿: DYNAMITE | 2020年4月30日 (木) 09時05分
DY様 こんばんわ!
「むくわれない」のは、彼か彼女かどちらなんだか。
失恋ブルーに付け込んでいい人演じたなら、水曜日にサヨナラってちょっとヒドイかも。あと二日仕事頑張らなきゃメランコリーにも浸れないなんて(笑)
木・金と仕事に没頭してたら忘れてくれるかもとか、週末に後ろめたさを引き釣りたくない男の都合なんて知りませんて。
冗談はともかく、生で聴いた記憶が少ないので聴きたいなぁ。早くても来年以降ですが。
V・J不足です。
投稿: nekomodiki | 2020年5月 1日 (金) 20時58分
nekomodoki様
ありがとうございます!
確かによくよく考えてみれば、水曜日にサヨナラは勝手と言うか相手からすると迷惑千万ですねぇ・・・。
でも、男の方も深層心理としては別れたくはないようですから、どうなんでしょう?金曜日とか土曜日だと「むくわれた」時のダメージが大き過ぎるから、とか。
ジュリーのLIVEに1年行けないというのは、どういう感覚なのかなぁ?
僕はたかだか12年ですが、今まで50年間そんな年は無かった、と仰る先輩も多くいらっしゃるでしょうし、深刻なビタミンJ不足が心配です・・・。
投稿: DYNAMITE | 2020年5月 2日 (土) 08時20分
不動産屋さんに友人が居ますが、不動産屋さんは水曜日が休み…水に流れるから …と聞いた事があります。水曜日の決め事は報われないのかな?と。
投稿: クリングル | 2020年5月16日 (土) 00時52分
クリングル様
ありがとうございます!
いやぁ目からウロコです。なるほど水曜日=水に流れる、つまりむくわれないということですね。
不動産屋さんが水曜お休みなのは知っていましたが、理由を考えたことはありませんでした。単に土日は休めないので週の真ん中に休むのだろう、と。
もちろんそれはそうなのでしょうが、なるほど理由づけもついてくるものなのですね。
「むくわれない水曜日」、ちょっと僕の歌詞の理解度が進んだように思います。ありがとうございます!
投稿: DYNAMITE | 2020年5月16日 (土) 14時42分
DY様
こんばんは。またまたまた、かなり遅れてのコメントになります。季節はすっかり梅雨になっています。
お題曲、曲調とは裏腹にずいぶんシブイ所突いてますね~。アルバム自体派手なんで私にはあまり目立たない印象なんですが。
前作『TRUE BLUE』でとうとう枯淡の域にまで達した感がありましたので1年でえらく作風が変わったなと当時まず思いました。ただ間にシングル「muda」挟んでましたので、さほどは驚きませんでしたが。DYさんのおっしゃる通り全編捨て曲無しの全力疾走で貫かれていますね。
名曲揃いなのにあまりくり返して聴かなかったのはアレンジがきらびやか過ぎて、音が(特にドラムスの音が)良過ぎて、「噂のモニター」くらいで耳が疲れてしまうからでしょうか?「ポラロイドGIRL」のイントロの入魂の?スネアはその象徴のようでした。次作『単純な永遠』ではもう体が受け入れ体制に入ったのかすんなり馴染みましたが。
「水曜日の考察」なかなか奥深いですね。そこまで考えて聴いてませんでした(反省)。
投稿: ねこ仮面 | 2020年6月21日 (日) 00時44分
ねこ仮面様
ありがとうございます!
お返事遅れてすみませんでした。
そうなんですよ。後追いファンの僕も『TRUE BLUE』→『彼は眠れない』とアルバムだけを並べるとその変貌に「えっ、これが88→89年で繋がってるの?」と意外な印象でしたが、間にシングル「muda」を挟むとしっくりくるんですよね。
いずれにしても大変な名盤だと思います。
アレンジのきらびやかさや、ドラムの音が良過ぎて戸惑う、という感じは何となく分かります。
僕は後追いだからか『彼は眠れない』にその感覚はありませんでしたが、ビリー・ジョエルの『ブリッジ』とかエルヴィス。コステロの『スパイク』でそんな感覚を持ったことがありますよ。
投稿: DYNAMITE | 2020年6月24日 (水) 09時15分