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2020年4月20日 (月)

ザ・ワイルドワンズ 「セシリア」

『All Of My Life~40th Anniversary Best』収録

Wildones_20200418121701

disc-1
1. 想い出の渚
2. 夕陽と共に
3. ユア・ベイビー
4. あの人
5. 貝殻の夏
6. 青空のある限り
7. 幸せの道
8. あの雲といっしょに
9. 可愛い恋人
10. ジャスト・ワン・モア・タイム
11. トライ・アゲイン
12. 風よつたえて
13. バラの恋人
14. 青い果実
15. 赤い靴のマリア
16. 花のヤング・タウン
17. 小さな倖せ
18. 想い出は心の友
19. 愛するアニタ
20. 美しすぎた夏
21. 夏のアイドル
22. セシリア
23. あの頃
disc-2
1. 白い水平線
2. 涙色のイヤリング
3. Welcome to my boat
4. ロング・ボード Jive
5. 夏が来るたび
6. ワン・モア・ラブ
7. 想い出の渚 ’91
8. 追憶のlove letter
9. 星の恋人たち
10. ハート燃えて 愛になれ
11. 幸せのドアー
12. 黄昏れが海を染めても
13. Yes, We Can Do It
14. あなたのいる空
15. 愛することから始めよう
16. 懐かしきラヴソング
17. 夢をつかもう

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『自宅でジュリーの歌を聴こう!月間』ということで更新を頑張っていますが、今日のお題はジュリー・ナンバーではなくワイルドワンズです。
今日4月20日は加瀬さんの命日。
拙ブログでは、加瀬さんが旅立たれてから毎年この日はワイルドワンズの曲を書く!と決めているのです。

ただ、今日お題に選んだ「セシリア」はジュリーファンのみなさまご存知の通り、「原曲」をワイルドワンズより先にジュリーが歌っているのですね。
シングル盤『コバルトの季節の中で』のB面に収録されている名曲「夕なぎ」がそうです。

Cobalt

「夕なぎ」はずいぶん前にお題記事を書き終えていますが、当時の僕はジュリーファンとしてようやく白帯を脱したかどうか、くらいのヒヨッコの時期。考察も甘く充分な内容とは言えない記事でした。
そこで今日はワンズの「セシリア」 とジュリーの「夕なぎ」を併せる形で、同一メロディーの名曲2曲を比較考察してゆきたいと思います。
今年も、加瀬さんの笑顔を思い出しながら・・・よろしくお願い申し上げます。


遅れてきたファンの僕ですが、「セシリア」「夕なぎ」ともLIVEで生体感できています。
「セシリア」は2010年、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの全国ツアー『僕たちほとんどいいんじゃあない』、「夕なぎ」は2015年、加瀬さんの旅立ちを受け特別なセトリが組まれたジュリーの全国ツアー『こっちの水苦いぞ』で。
いずれのツアーも僕は比較的参加公演回数が多く、2曲ともにステージの様子を今でも色々と思い浮かべることができます。

『僕たちほとんどいいんじゃあない』ツアーの方はDVDが手元にありますので、その時の「セシリア」をちょっとおさらいしてみましょうか。

Cecilia0

セットリスト2曲目。1曲目のオープニングが「シー・シー・シー」でしたから、僕にとってはこの「セシリア」が「初めて生で聴くワイルドワンズ・ナンバー」となりました。

初日の渋谷公会堂では、リード・ヴォーカルにハッキリ緊張の色が見えていた鳥塚さんですが、八王子公演では早くも堂々の熱唱でした。
もちろんDVD収録された終盤になっても。

Cecilia1

あと、やはりワイルドワンズ・ナンバーはコーラスが肝だなぁ、と。ジュリーと鉄人バンドが加わっても、植田さんを「コーラス部長」として綿密なコーラス・ワークを楽しませてくれました。
DVDでも、植田さん、ジュリー、GRACE姉さんの声が聴きとり易いです。

そして「セシリア」では柴山さんに見せ場があり、ギター・ソロのヴァースでピンスポットを浴びました。
間奏こそアレンジ・アドリブがあったものの、前奏・後奏はワンズのヴァージョンをキッチリ完コピしてくれて、柴山さんのこうした律儀な職人肌が一層頼もしく感じられるツアーだったと思い返します。

Cecilia4

その「セシリア」、オリジナル音源は79年リリース。
『アンコール』というアルバムの2曲目に収録されていたようです。こちらもいつか聴いてみなければ・・・。

冒頭に添えた僕の所有するワンズのベスト盤は2枚組で、「セシリア」は1枚目のラス前収録。そのちょっと前の「美しすぎた夏」から明快に音の感触が変わります。
再結成期ということですね。

さて、DVDやCDと一緒に自分でもギターをガチャガチャやってみたところで、ジュリー76年リリースの「夕なぎ」との比較に移りましょう。

まずは歌詞。
楽曲タイトルは変わっても山上路夫さんの詞はほぼそのまま。ワンズの方はAメロ冒頭に「Oh、セシリア~♪」とコーラスが入る関係で、「夕なぎ」の歌詞を前後させたり短縮したりしていますが、それでも大きな変化はありません。
その中で敢えて「特に変わった」点を挙げるとすれば、中盤のAメロでしょうか。

君がいた 暗い夢を見て
    C                   Dm

目ざめれば 変わらずにほほえんで
      G7                        C    F    C

愛あれば 人は生きられる
    C                      Dm

何もかも 失うとも ♪
    G7              C

(↑「夕なぎ」)

Oh セシリア 傷ついた僕に
        B♭                  Gm

君がいた 変わらずにほほえんで
    F7                        B♭ E♭ B♭

Oh セシリア 愛があるならば
        B♭                  Gm

生きられる 人は誰も ♪
      F7                 B♭

(↑「セシリア」)

ここは言い回しも結構変わっていますね。

・・・と、こう歌詞を並べたところで、「あれっ、振ってあるコードネームが違うぞ」と気がついたみなさま。お察しの通り、ジュリーとワンズでは曲のキーが異なります。
「夕なぎ」がハ長調で、「セシリア」が変ロ長調。
「セシリア」は「夕なぎ」から1音ぶんキーを下げてのリメイクだった、ということです。
そりゃ、76年のジュリーなんて特に悠々と高音が出ていた時期ですから、鳥塚さんが同じキーで歌うのは苦しい。ここはキーを下げて正解です。
ちなみにジュリーwithザ・ワイルドワンズの年の「セシリア」も変ロ長調は
変わらず、鳥塚さんが30年前と同じキーで歌っている素晴らしさをこそ特筆すべきでしょう。

さて、キーが違うのでコードネームも1音ぶん違う、と言っても上記箇所などはいわゆる「コード進行」についてはまったく同じ(移調すれば同一のコードネームとなる)。リメイク楽曲なのですからね。
ただし「セシリア」では、メロディーは「夕なぎ」と最初から最後まで同じなのに、コード進行だけを一部変えている箇所があるのです。しかも、加瀬さんのこの作曲で最も「オイシイ」と(聴き手からも)思える箇所でね。
分かり易いように、「セシリア」の方を「夕なぎ」と同じハ長調に移調した表記でコードを振ってみましょうか。

失くしかけてた  暖 かさ ♪
     F          Dm    C      Am (←「夕なぎ」)
     Am       G     C E7  Am (←「セシリア」)

柴山さんは2010年に「セシリア」、2015年に「夕なぎ」と演奏していますから、「夕なぎ」の年にはここで改めて「おおっ?」と思ったかもしれませんね。

当然、後からのリリース「セシリア」のレコーディングに際して加瀬さんが手直しをしたことになります。
これは、鳥塚さんのヴォーカルの個性を考慮しての作業だったんじゃないかなぁ。
おそらくポイントは、1番の歌詞で言うと「あたたかさ♪」の最初の「た」(小節内の第1音)の歌い方。かなりの高音ですが、「夕なぎ」でのジュリーはダイレクトにスパ~ン!と高音を発声していますね。
サブ・ドミナントからトニックに直行する進行がジュリーの「鋭さ」を引き出しています。

対して鳥塚さんは、どんな曲であってもゆったりとメロディーを上昇させる朴訥な歌い回しが持ち味。「セシリア」でも「あたぁ~たかさ♪」と歌い、高音に到達するのは「た」の直後にくっついてくる母音「ぁ」の箇所です。
その場合、直前のコードは明快なドミナントの方がよく、加瀬さんはまずそこに「F」(上記の移調表記だと「G」)を当ててから細部変更していったのではないでしょうか。
もちろんジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアーでもこの進行がそのまま再現されています。

こうした微妙な進行の違いは、今回2曲をじっくり比較してみて初めて気づけたこと。
この2曲に限らず、まだまだ僕が把握できていない加瀬さんの「秘策」は、きっとたくさんのパターンがあるのでしょうね。

最後に、個人的な歌詞解釈(妄想ですな)を。
アルバム『JULIEⅡ』に強い思い入れがある僕は、同じ山上路夫さんの作詞作品ということで、「夕なぎ」「セシリア」を『JULIEⅡ』から派生したサイド・ストーリーとして楽しむこともできます。
物語の時間軸は『JULIEⅡ』の最序盤。歌の主人公はあの船長さんで、長い出航から港町に帰還し「もう俺はどこにも行かない、これからはずっと一緒だ」と、長い留守を護ってくれていた奥さんを改めて口説きつつ、しばしの間はおとなしく暮らしている・・・その情景が「夕なぎ」の歌詞であると。
しかし山上さんによれば船乗りは本質的に「気ままで浮気な鳥」なのですから、しばらくしたら船長はやっぱりまた長い旅に出てしまう・・・そうなると、奥さんだって突然目の前に現れた若い美貌の少年(ジュリー)によろめいてしまうのも無理からぬ話なのですな~。

これをして、『JULIEⅡ』に登場する美しい船長夫人のお名前は「セシリア」さんだった・・・ということでいかがでしょうか(強引)。


それでは『自宅でジュリーの歌を聴こう!月間』、次回からは様々な時代のジュリー・ナンバーを採り上げてまいります。

こんな時ですから、「元気の出る歌」「力を貰える歌」というテーマでお題曲を探してゆくつもりです。
みなさまが自宅で過ごされる時間、少しでもそのお供となるよう頑張ります!

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ジュリーをとりまくプロフェッショナル」カテゴリの記事

コメント

DY様 こんばんは。

仕事と最低限の買い物以外どこにも出かけてません。

「夕なぎ」がワンズのリメークだと初日聴くまで知らなかったから新鮮な驚きでした。

「夕なぎ」の「君の名」が「セシリア」・・・と考えるといろいろ繋がるんですが、船長さん、ようやく再会した愛する妻が自分が世話した若いツバメ(死語)によろめいてた、って気づかなきゃいいんだけど。・・・大きなお世話ですね。

ライブ、どうなるかわかりませんが、一度がけでも行きたいです。

投稿: nekomodoki | 2020年4月26日 (日) 23時35分

nekomodoki様

ありがとうございます!

僕も思わぬ形で久々に連休をとれていますが、買い物以外はずっと自宅で過ごしています。
いつまでこの状態が続くのやら・・・まぁそのぶんジュリーの音楽に触れる時間が多くなっているのが救いです。

船長さんが自ら気づくことはないと思いますが・・・セシリアさん(笑)がどこまで黙っていられるか、ですね。
ジュリワンの時、多くの先輩方がそう言えばオリジナルの「夕なぎ」の方をLIVEで聴いたことがない」と仰っていたのをよく覚えています。
5年後、加瀬さんが旅立たれての全国ツアーでセトリ入りを果たしたわけですが・・・。

今年のツアーがどうなるかまだ分かりませんが、僕も一度だけでよいから行きたいと思っています。渋谷公会堂は希望通りとれているかなぁ・・・?

投稿: DYNAMITE | 2020年4月27日 (月) 09時17分

DY様
 こんばんは。ひと月遅れのコメント、お許しを。
 私の住む関西は明日にも緊急事態宣言解除のようですが、とりあえず閉塞感が少しは和らぐかと期待しています。
 自粛、ジュリーのツアー全公演中止、それにお正月公演に不参加だったこともあってか、私まだ新譜購入していないというファンの風上にも置けないファン歴中級のとんでもない奴です(反省)。何となく発売日直後の週末にタワーレコード寄るチャンスあったのに忘れていて、その後あれよあれよと言う間に外出しづらくなり今日に至っております。オンラインでも買えるご時世ですがいまだにレコード屋さん楽器屋さんうろうろしながら購入派なんですよね。全くお題曲に関係ありまんでした、失礼。
 「セシリア」、スタジオ録音は聴いたことなく、ジュリワンのライブとそのDVDでしか知りませんが、「夕なぎ」と一部コード進行が違うっていうのは目から鱗!加瀬さんやりますねぇ。
 ただ正直、イントロ初め随所に存在感バリバリのコーラス、エンディングのサックスとベースの質感、「夕なぎ」に軍配ですね、私個人は。

投稿: ねこ仮面 | 2020年5月20日 (水) 22時57分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

こちらはまだ緊急事態宣言下の緊張感は変わらず続いていますがすが、関西のみなさまは少し和らいでくるかもしれませんね。
それにしても、本当に大変な春になったものです・・・。

仕事柄、楽器店やCD店の動向はリサーチしていますが、地方でもまだまだ休業中というところが多いですね。少しずつ商品の流れは上向きにはなっていますが、まだまだ前年比並みとは到底ゆきません。
ジュリーの新譜も確かにお店で手にとって購入しようとなると今は大変ですよね。

「夕なぎ」のコーラスはイイですねぇ。
あとはやはりジュリーのヴォーカル。高音への移動にまったくためらいが見られず、もしかすると一番声がよく出ていた時期だったのでは。
僕は「セシリア」の方も開放感や暖かみがあって好きですけど。

投稿: DYNAMITE | 2020年5月21日 (木) 15時15分

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