沢田研二 「悲しき船乗り」
from『JULIEⅥ ある青春』、1973
1. 朝焼けへの道
2. 胸いっぱいの悲しみ
3. 二人の肖像
4. 居酒屋ブルース
5. 悲しき船乗り
6. 船はインドへ
7. 気になるお前
8. 夕映えの海
9. よみがえる愛
10. 夜の翼
11. ある青春
12. ララバイ・フォー・ユー
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少しご無沙汰してしまいました。
短い記事でもよいから間を置かずすぐに更新を!と考えていたのですが、前回更新後に酷い風邪をひきましてね・・・思い通りにはいかないものです。
発症は先月20日過ぎでした。
まず喉が痛くなって熱が出て、それは数日で治まったもののその後もずっと咳だけが残って、いまだに眠れないほどゴホンゴホンしている夜もあります。
実はこの風邪、カミさんの方が先にかかってそれを貰ってしまったみたいで。
病院では2人ともインフルエンザ陰性で風邪の診断、まったく同じ薬を処方されました。カミさんの方もまだ咳が多少残っていて、本当にしつこい風邪です。
聞けば、この場合の咳は身体が温まると出やすくなるのだとか。それで就寝中に苦しむのですな・・・。
ひとまず気をとり直しまして。
相変わらず忙しくしており新たな採譜の時間がとれませんので、しばらくの間は「過去に採譜済み」のジュリー・ナンバーの中からまだ記事にしていない曲をお題に選び、さまざまな時代の名曲を駆け巡っていきます。
既に採譜しているということは、「自分でも弾いてみたい」と思った曲であり、すなわち個人的に大好きな曲ということ。今日はアルバム『JULIE Ⅵ -ある青春』から、「悲しき船乗り」を採り上げたいと思います。
僕がこの名盤を購入したのは『ジュリー祭り』よりさらに前の、2006年だったかな。
LIVEには行かず、おもにポリドール時代の再発アルバムを大人買いしていた、いわゆる”第一次ジュリー堕ち期”でした。
コンセプト・アルバム『JULIE Ⅱ』がフェイバリットだった僕は、『JULIE Ⅵ -ある青春』をその「続きの物語」を描いたアルバムとして聴いたものです。『JULIE Ⅱ』主人公の少年が成長し、いっぱしの「男の船乗り」として世界中の港を渡り歩いている・・・そんなふうに感じさせてくれる曲がいくつかあるんですよね。
「悲しき船乗り」もそのひとつで、ジュリーファンの間であまり語られることの少ない印象の曲ですが、個人的には大好きな1曲なんです。
『JULIE Ⅵ -ある青春』は、山上路夫さん=森田公一さんコンビとZUZU=KASEコンビが楽曲クレジットを分け合う構成。それぞれのコンビの作品が、似通ったテーマの曲同士で個性を違えながら不思議に対を成し、共鳴し合っているという奇跡の名盤です。
例えば「壮大なスケールで描く海洋物語」のテーマで「朝焼けへの道」VS「船はインドへ」。
「若き日の愛の痛みを美しく歌う」テーマだと「ある青春」VS「二人の肖像」。
そして「ゴキゲンな長調ビート・ロック」ならば「気になるお前」VS「悲しき船乗り」となります。
実は”第一次ジュリー堕ち期”の僕は、後に「LIVEの定番曲でありロックなジュリーの代名詞」だと知る「気になるお前」よりも、「悲しき船乗り」の方が好きでした。
言うまでもなく現在それは逆転しているのですが、何故当時の僕がアルバム収録曲中の貴重なビートものとして「悲しき船乗り」の方を高く評価していたのか。それは、LIVEに参加せずCDのみでジュリーを楽しんでいた者として、ジュリーの「作りこまれたピースに歌を嵌め込む」才能にまず惹かれていたから・・・でしょうか。
『JULIE Ⅵ -ある青春』で言うと、「悲しき船乗り」はじめ山上路夫さん=森田公一さんコンビ作品はレコーディング音源自体「これで完成形」という仕上がりです。
ジュリーはその完成形に「最後のピース」としてヴォーカルを組み込むことで楽曲に貢献している、というのが僕の考えで、これは『JULIE Ⅱ』収録曲にも同じことが言えましょう。
一方「気になるお前」はじめZUZU=KASEコンビの作品は、「その気になればまだまだ変化する」余地が残された「発展途上」の状態でトラック収録されています。つまり、小節割りやメロディーが、主役である歌い手・ジュリーの意思でいくらでも自由に成長し得る、その途上でのアルバム収録です。
それらZUZU=KASEコンビの作品がいつ「完成形」を迎えるかと言うと、スバリLIVEステージなのですな~。
ですから完成形はひとつではなく、LIVEの瞬間瞬間で多様に渡り現在もなお僕らはそんな場面に出逢えてしまうという・・・ジュリーの本質、第一の魅力が正にそちらであることを、『ジュリー祭り』以降の”第二次ジュリー堕ち期”で僕は思い知らされました。
しかしみなさま。
ジュリーが「最後の1ピースであるヴォーカル・テイクを、完成形として提示された楽曲トラックに吹き込む」・・・言わば「歌わされている」(言葉が悪いですけど、そうとしか言いようがない)時に発揮する天賦の才というのは世界トップレベルに凄まじいのですよ、と僕はここで訴えておきたいのです。
加えて思うのは、「悲しき船乗り」ってジュリーがいかにも好きそうな曲でもあるんですよ。
ロック・ナンバー独特のオーティス・レディング風にせり上がるコード進行は、ジュリー本人作の「処女航海」(ザ・タイガース)や「熱愛台風」(ジュリーwithザ・ワイルドワンズ)でもよく似たパターンで採用されています。
間奏のギターはまるでクリーム期のエリック・クラプトンのようで、これもジュリーの好みでしょう。
それにこの曲は、「許されない愛」シングル・リリース時にジュリーが「自分に合ってる」と語った「ブラス・ロック」として仕上げられていますからね。
「気になるお前」のように、LIVEにおけるロック・バンド・スタイルの自由度の高いヴォーカルと演奏はもちろん最高ですけど、腕利きのミュージシャンが「スコア通り」に演奏し、そこにジュリー天性の才で歌入れされたレコーディング音源の説得力というのもまた素晴らしいものです。
その意味で「悲しき船乗り」の出来映えは、『JULIE Ⅵ -ある青春』収録曲中でも屈指と僕は思っています。
是非みなさまに再評価されて欲しい、隠れた名曲・・・この機にじっくり聴き返してみて!
それでは、久々の・・・オマケです!
福岡の先輩からお預かりしている『ヤング』バックナンバーで、73年7月号掲載のジュリーの話題をどうぞ。
あと、この73年7月号の「スター・アンケート」のコーナーには堯之さんと岸部兄弟が登場しているので、そちらも貼っておきましょう。
さて、みなさまも5月からのジュリー全国ツアー、前半のチケット申し込みを終えられたことと思います。
今回のスケジュールは、序盤に限って言うと関西のファン泣かせな感じですね。関西限定で考えると、6月の京都までだいぶ間があります。「辛抱たまらん!」と遠征を決意された関西のかたも多いのではないですか?
すなわち、ツアー初日NHKホールの競争率がハンパない状態なのではないかと。
「初日には絶対参加したい派」の僕ももちろんNHKホールは申し込みましたが、第2希望は書けませんでした。
ただただ抽選に引っかかってくれることを祈るばかりです。席はどんな後方でもよいのですから(と言うか、僕のジュリーLIVE席運は50周年ツアーで完全に使い果たしたのだ、とこの2年で実感させられています笑)。
あと、YOKO君はじめバンド仲間を誘って申し込んだのが6月の川口リリア。
今回は男4人での参加ですが、こちらはメンバーと相談して第2希望を武蔵野として記入しました。
でも、やはり川口と言えばYOKO君がもう30年住み続けている街ということで、彼の「地元枠」として当選を期待したいところです。
ともあれ本当に楽しみな全国ツアー、みなさまの良席ゲットをお祈り申し上げます。
コロナウィルスにインフルエンザ、何かと騒がしい冬。
お互い充分気をつけて、暖かい春を待ちましょう!
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コメント
こんにちは。ご伝授ありがとうございます。
久しぶりに聴き返しました。
「最後の1ピースとしてのヴォーカル」
に完璧になれる人·······そうですね。
ショーケンの本にも、
ジュリーの歌への覚悟を感じさせることばがありました。
今でもジュリーはいつでもピースとしても歌えるけれど歌わないだけ、かもしれませんね。
山下達郎さんのラジオ番組で3週にわたる
故スコット•ウォーカーの特集を聞きました。
歌唱表現と創作意欲という流れで、
日本で一番近似しているのは沢田研二さん、
と昨年に続いて、ジュリーのお名前が出ました。
圧倒的な歌の力。
ルックスも良く若くトップスターとなったこと。
今も人が求め期待する音楽や、歌ってほしい歌があること。
そして、
自分が歌いたい歌を歌うことにシフトして、
自分の音楽を求め作っていく。
いさぎよく真っ直ぐに行動していくスピリット······
アヴァンギャルドな道をゆくことになる
晩年のスコット・ウォーカーですが、
アヴァンギャルドなジュリーといえば、
映画もあるけれど、わたしにはactシリーズです。
加藤直さんの演出、cobaさんの音楽、早川さんの衣装で、演じきり、歌ってしまうなんて!
生で聞かれたみなさんにお話をうかがいたいです。
何より柴山さんと二人きりのライブこそ前衛的。
近似する人なんているかしら·······
ご伝授の趣旨からずれてごめんなさい。
新曲待ち遠しいですね!
投稿: piano | 2020年2月11日 (火) 07時17分
piano様
ありがとうございます!
アヴァンギャルドなジュリー、と言えば確かにactシリーズを思い浮かべますね。
僕は今のところactは音源のみを楽しんでいる状況ですが、なるほど衣装、演出も含めてとのことで・・・老後の楽しみにとってあるact映像鑑賞がますます楽しみになってきました。
僕は、特に2012年からのジュリーの「鉄人バンド期」は、「自由度の高さ」と「最後のワンピースをジュリーが受け持つ」というそれぞれのジュリーの才を両立させているような気がしています。「ピース」の中にはヴォーカル以外に歌詞もありますし・・・。
追加のコメントで頂きました修正箇所、直させて頂きました。お知らせありがとうございました!
投稿: DYNAMITE | 2020年2月12日 (水) 09時13分
DY様 こんばんは。
ライブは回数自体が少ないので行けるところは行こうとしたら、第二希望なんて書きようがありません。NHKホールで無事に(?)お会いしたいです。ホントに。
このアルバムは「ジュリーⅡ」X年後・・・かな?
みたいに聴いてました。
いっちょ前の船乗りになって世界中を航海し、港ごとに心惹かれる女性の出会い、別れ、いつかは自分だけのあの人に巡り合いたい・・・。
そして、運命の人と結ばれ、でもアクシデントで連絡がつかなくなったりしたら、昔の自分のことを棚にあげてあらぬ妄想にさいなまれたりして・・・と。
すみません。あらぬ妄想してるのは私です。
ジュリーが好きな曲であるのは間違いないと思います。
投稿: nekomodoki | 2020年2月13日 (木) 21時03分
nekomodoki様
ありがとうございます!
お返事が遅くなりすみませんでした。
今回のスケジュールは本当に悩ましいですねぇ。確かに「行けるところには行こう」と考えたら第2希望を書く余地はなくなりますね。
僕は川口の第2希望を武蔵野としましたが、川口はツアーが始まってからしばらく経っての平日開催ですからなんとか当選できるかな、とは思っています。
心配なのはやはり初日のNHKホール・・・ここは間違いなく抽選となるでしょう。祈るしかありません。本当に、無事に現地でお会いしたいものです。
僕は、『JULIEⅥ』ではジュリーは若い船長になっていると仮定して聴いています。
かつての自分(『Ⅱ』の少年)がそうであったように、身寄りのない少年達の面倒を見て気にかけているのかなぁと。
それが「悲しき船乗り」への僕の妄想ですね。
投稿: DYNAMITE | 2020年2月19日 (水) 12時45分
DY様
こんばんは。またまた半月遅れの的外れなコメント、ご容赦を。
辛口、偉そうなコメント多い私にもこの曲はなかなか「高得点」です。アルバム中好きな曲3曲をと言われたら「ある青春」「船はインドへ」とお題曲ですね。小学校低学年の時に将来就きたい職業について作文書くことがあったのですが、私は「船乗り」で書いたのを思い出しました。今の子どもたちに船乗りって職業はどんなイメージなんでしょう?
ところで私はお題曲、ライブでは未体験です。こんな名曲なのにセットリストに入ったという話も聞いたことがありません。リリース当時は演っていたのでしょうか?ライブ定番化しない理由は私が考えるに、「コンセプトアルバム中の1曲感」が強いからではないでしょうか。でも間奏とかホントカッコいいですね。ブラスや女性コーラス無くてもいいから「バンド」で聴きたいですねぇ。
投稿: ねこ仮面 | 2020年3月 4日 (水) 22時25分
ねこ仮面様
引き続きありがとうございます!
おぉ、この曲お好きですか。ジュリーファンの間でもあまり話題に上がらない曲だと思っていましたから、嬉しいですね。
僕はこのアルバムなら今は「船はインドへ」「朝焼けへの道」「気になるお前」「二人の肖像」に次いで5番手でしょうか。もちろん残りの曲も好きで、本当に名盤だと思っています。
実は僕もこれまで、この曲をLIVEで聴いたというお話を先輩方から聞いたことがないのです。そもそもセトリ入りしたことがあったのかどうかもまだ分かっていません。
確かにバンドで体感してみたい1曲ですね。
投稿: DYNAMITE | 2020年3月 5日 (木) 12時32分