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2020年2月

2020年2月29日 (土)

沢田研二 「ボンヴォワヤージュ」

from 『JULIE SONG CALENDAR』、1983

Juliesongcalender 

1. 裏切り者と朝食を
2. ボンヴォワヤージュ
3. 目抜き通りの6月
4. ウィークエンド・サンバ
5. Sweet Surrender
6. CHI SEI(君は誰)
7. YOU'RE THE ONLY GIRL
8. ラスト・スパーク
9. 一人ぼっちのパーティー
10. SCANDAL !!
11. す・て・き・にかん違い
12. Free Free Night
13. BURNING SEXY SILENT NIGHT

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またまたお久しぶりです。
ようやく風邪が治りました。発症が1月20日頃で、完
治までひと月ほどかかった計算です。
発熱は数日だけでしたが咳だけがいつまでも残っ
て、今世間は新型ウィルスで大変な時期ということもあり、2月に半ばあたりからは周囲への気配りにも神経を尖らせる毎日でした。

僕のはただの風邪でしたが、新型ウィルスのニュース・・・本当に深刻な状況にな
っています。
楽しみにしていた新日本プロレスの旗揚げ記念大会(3月3日)の開催中
止も発表されました。スポーツ、芸能関連のイベントは3月中旬までは中止であったり無観客開催となるなどしています。
仕方のないことですよね。一番無念な
のは舞台に立つ人達です(新日本プロレス・高橋ヒロム選手の写真1枚のメッセージにはグッときました)。
僕らもここはグッと耐え忍び、1日も早い収束を目指しできるこ
とをやってゆくしかありません。
そして、ジュリーのツアーが始まる5月にはすっかり
落ち着いている、と信じています。
有難いことに僕のところにはNHKホール公演の落選
通知は届かず(あと川口公演は抽選自体が回避)、ツアー初日に参加できると思えばなおさらです。

さて、今年は昨年よりは時間ができるかなぁと考えていましたが、2月か
ら公私ともに大忙し。
まぁでも、忙しいというの誰かの役に立てている、必要として貰
えているということですから有難いことなのです。
ブログの方もマイペースながら頑張
っていきます。

今日は、「既に採譜を終えていたジュリー・ナンバーお題」シリーズの
第2回として更新です。
採り上げるのはアルバム『JULIE SONG CALENDER』から「ボンヴ
ォワヤージュ」。
短い記事になりますがどうぞおつき合いください。


アルバムの中では、「裏切り者と朝食を」「BURNING SEXY SILENT NIGHT」と並んで個人的には特に好きな1曲です。
前回「悲しき船乗り」の記事で、『JULIEⅡ』の続きの物語のようだ、ということを書いたんですけど、実は「ボンヴォワヤージュ」にもそんな雰囲気があったりして。

「海の男」として逞しく(色々な意味でね笑)成長した『JULIEⅡ』主人公、もうすっかり船も女もお手のもの・・・のはずが

女とは海だと思ってた
C                         Em7

男とは気ままな船さ
Dm7                  G7

それだけに今はあっけにとられて
F

移る季節に
C          Am(onF)

追いつけないのさ ♪
Dm7    G7        C

浮気な船乗りはお株をとられ、「そりゃないよ!」的なフラれ方をしてしまいます。
『JULIE SONG CALENDER』の女性作詞陣では唯一キャリアあるプロの作詞家・湯川れい子さん、さすが「ジュリーに似合う景色」を描いてきていますね。

僕は福岡の先輩から授かったラジオ音源のおかげで、最近ようやくこのアルバムの製作過程、それぞれの曲が最初はどのように世に発表されてきたのか、ということを実感できていますが、収録曲中のほとんどが「詞先」の作業だったとか。
となるとジュリーの作曲は本当の意味での「書き下ろし」(過去のストック作品で作業を補う、というやり方ができない)だったわけで、当時の大忙しなジュリーをしてコンスタントに新たな自作新曲を積み重ねていくという超人ぶり。81年の糸井重里さんとのラジオ対談でジュリーは「曲作りの作業は早い」と自認しているとは言え、他アーティストへの提供楽曲の多さも加え、やはり80年代前半は「作曲家・ジュリー覚醒の時期」だったのだと驚嘆するほかありません。

詞先の作曲の面白さは、良い意味で「メロディーや構成が文字数に左右される」ことです。
例えば里中満知子さん作詞の「裏切り者と朝食を」のように「詞がこうでなければあり得ない」変拍子の導入であったり、この「ボンヴォワヤージュ」或いは「ラストスパーク」では、ジュリーが苦心して言葉をギュギュッ!と小節内に押し込んだ音符割りが登場したり。
限られた時間の中でジュリーが提示したメロディーを、エキゾティクスのメンバーがアレンジと演奏でどう仕上げているか、というのが『JULIE SONG CALENDER』最大の聴きどころでしょう。
その意味で、歌詞がギュッと押し込められた「ボンヴォワヤージュ」に吉田建さんがレゲエのリズムをあてがったのは、正にズバリ!なアレンジ・センスと言えます。

長いジュリーの歴史の中で、レゲエまたはスカ・ビートといった「後ノリ」カッティングの演奏作品はそう多くはありません。
しかしジュリー史まんべんなく、時代時代で思い出したようにその手の名曲が生まれているのもまた事実。「ボンヴォワヤージュ」以前では、「愛の逃亡者」「メモリーズ」「バタフライ・ムーン」・・・いずれも高度なアレンジでありながら堅苦しくなく、ジュリーのヴォーカルがサラリと楽しげにしていますよね。
数年後にリリースされた「EDEN」もそう。ジュリーはレゲエ適性も素晴らしい、ということなのですよ!

「ボン・ボワヤージュ」とは「よい旅を」という意味らしいですね。
今まで不勉強にて知らなかったのですが、ズバリ同タイトルのシャンソンがあるそうで、色々と検索しますと日本人歌手のカバー・ヴァージョンもいくつか見つかりました。かなり有名な曲のようです。
邦洋含めそれらで共通しているのは、歌の主人公が女性であるということ。愛していた男性が突然自分の元を去ってしまう・・・「顔で笑って、心で泣いて」ではないけれど、主人公は「よい旅を」と彼を見送ります。

湯川さんは当然この歌をご存知だったでしょう。ジュリーの作詞依頼を受けて、男女の立場を逆転させた「よい旅を」の物語を改めての視点で描かれたのです。
83年と言う時期の歌手・ジュリーのキャラクターにピッタリの着想だったのではないでしょうか。
詞曲、ヴォーカル、演奏ともいかにも「隠れた名曲」だと思います。みなさまはどうでしょうか。


それでは、オマケです!
お題曲とは時期の異なる資料ですが、『FM fan』の86年新春特大号(発売は85年12月)から。
ジュリーのインタビュー記事が掲載されていて、インタビュアーが他でもない「ボンヴォワヤージュ」作詞の湯川れい子さんということで、この機にご紹介です。

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この頃はまだジュリーが「李花幻」のペンネームへの神秘性、ミステリーを貫いていたのですね。
ジュリーの口から発せられている「井上陽水説」・・・これに僕はアッと思ったものです。この記事を読むまでまるで気づけていなかったけれど、「灰とダイヤモンド」の作詞・作曲。特に詞についてジュリーは陽水さんを意識していたようですね。
曲中登場する「~なさい」という冷ややかにしてエロティックな命令口調は、「ジュリー流の陽水解釈」だったのかもしれません。


明日から3月です。早いものですね。
今年はイベントの自粛などで春の街の賑わいが目立たない寂しさもありましょうが、三寒四温が身に沁みる、やわらかな季節です。

11日にはジュリーの新譜『Help!Help!Help!Help!』もリリースされます。拙ブログではもちろん今年も新曲の考察記事に取り組みます。
その前にもう1本、何か1曲書いておきたいところ。
頑張りたいと思います。

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2020年2月 8日 (土)

沢田研二 「悲しき船乗り」

from『JULIEⅥ ある青春』、1973

Julie6

1. 朝焼けへの道
2. 胸いっぱいの悲しみ
3. 二人の肖像
4. 居酒屋ブルース
5. 悲しき船乗り
6. 船はインドへ
7. 気になるお前
8. 夕映えの海
9. よみがえる愛
10. 夜の翼
11. ある青春
12. ララバイ・フォー・ユー

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少しご無沙汰してしまいました。
短い記事でもよいから間を置かずすぐに更新を!と考えていたのですが、前回更新後に酷い風邪をひきましてね・・・思い通りにはいかないものです。

発症は先月20日過ぎでした。
まず喉が痛くなって熱が出て、それは数日で治まったもののその後もずっと咳だけが残って、いまだに眠れないほどゴホンゴホンしている夜もあります。
実はこの風邪、カミさんの方が先にかかってそれを貰ってしまったみたいで。
病院では2人ともインフルエンザ陰性で風邪の診断、まったく同じ薬を処方されました。カミさんの方もまだ咳が多少残っていて、本当にしつこい風邪です。
聞けば、この場合の咳は身体が温まると出やすくなるのだとか。それで就寝中に苦しむのですな・・・。


ひとまず気をとり直しまして。
相変わらず忙しくしており新たな採譜の時間がとれませんので、しばらくの間は「過去に採譜済み」のジュリー・ナンバーの中からまだ記事にしていない曲をお題に選び、さまざまな時代の名曲を駆け巡っていきます。
既に採譜しているということは、「自分でも弾いてみたい」と思った曲であり、すなわち個人的に大好きな曲ということ。今日はアルバム『JULIE Ⅵ -ある青春』から、「悲しき船乗り」を採り上げたいと思います。

僕がこの名盤を購入したのは『ジュリー祭り』よりさらに前の、2006年だったかな。
LIVEには行かず、おもにポリドール時代の再発アルバムを大人買いしていた、いわゆる”第一次ジュリー堕ち期”でした。
コンセプト・アルバム『JULIE Ⅱ』がフェイバリットだった僕は、『JULIE Ⅵ -ある青春』をその「続きの物語」を描いたアルバムとして聴いたものです。『JULIE Ⅱ』主人公の少年が成長し、いっぱしの「男の船乗り」として世界中の港を渡り歩いている・・・そんなふうに感じさせてくれる曲がいくつかあるんですよね。
「悲しき船乗り」もそのひとつで、ジュリーファンの間であまり語られることの少ない印象の曲ですが、個人的には大好きな1曲なんです。

『JULIE Ⅵ -ある青春』は、山上路夫さん=森田公一さんコンビとZUZU=KASEコンビが楽曲クレジットを分け合う構成。それぞれのコンビの作品が、似通ったテーマの曲同士で個性を違えながら不思議に対を成し、共鳴し合っているという奇跡の名盤です。

例えば「壮大なスケールで描く海洋物語」のテーマで「朝焼けへの道」VS「船はインドへ」。
「若き日の愛の痛みを美しく歌う」テーマだと「ある青春」VS「二人の肖像」。
そして「ゴキゲンな長調ビート・ロック」ならば「気になるお前」VS「悲しき船乗り」となります。

実は”第一次ジュリー堕ち期”の僕は、後に「LIVEの定番曲でありロックなジュリーの代名詞」だと知る「気になるお前」よりも、「悲しき船乗り」の方が好きでした。
言うまでもなく現在それは逆転しているのですが、何故当時の僕がアルバム収録曲中の貴重なビートものとして「悲しき船乗り」の方を高く評価していたのか。それは、LIVEに参加せずCDのみでジュリーを楽しんでいた者として、ジュリーの「作りこまれたピースに歌を嵌め込む」才能にまず惹かれていたから・・・でしょうか。

『JULIE Ⅵ -ある青春』で言うと、「悲しき船乗り」はじめ山上路夫さん=森田公一さんコンビ作品はレコーディング音源自体「これで完成形」という仕上がりです。
ジュリーはその完成形に「最後のピース」としてヴォーカルを組み込むことで楽曲に貢献している、というのが僕の考えで、これは『JULIE Ⅱ』収録曲にも同じことが言えましょう。

一方「気になるお前」はじめZUZU=KASEコンビの作品は、「その気になればまだまだ変化する」余地が残された「発展途上」の状態でトラック収録されています。つまり、小節割りやメロディーが、主役である歌い手・ジュリーの意思でいくらでも自由に成長し得る、その途上でのアルバム収録です。
それらZUZU=KASEコンビの作品がいつ「完成形」を迎えるかと言うと、スバリLIVEステージなのですな~。
ですから完成形はひとつではなく、LIVEの瞬間瞬間で多様に渡り現在もなお僕らはそんな場面に出逢えてしまうという・・・ジュリーの本質、第一の魅力が正にそちらであることを、『ジュリー祭り』以降の”第二次ジュリー堕ち期”で僕は思い知らされました。

しかしみなさま。
ジュリーが「最後の1ピースであるヴォーカル・テイクを、完成形として提示された楽曲トラックに吹き込む」・・・言わば「歌わされている」(言葉が悪いですけど、そうとしか言いようがない)時に発揮する天賦の才というのは世界トップレベルに凄まじいのですよ、と僕はここで訴えておきたいのです。

加えて思うのは、「悲しき船乗り」ってジュリーがいかにも好きそうな曲でもあるんですよ。
ロック・ナンバー独特のオーティス・レディング風にせり上がるコード進行は、ジュリー本人作の「処女航海」(ザ・タイガース)や「熱愛台風」(ジュリーwithザ・ワイルドワンズ)でもよく似たパターンで採用されています。
間奏のギターはまるでクリーム期のエリック・クラプトンのようで、これもジュリーの好みでしょう。
それにこの曲は、「許されない愛」シングル・リリース時にジュリーが「自分に合ってる」と語った「ブラス・ロック」として仕上げられていますからね。

「気になるお前」のように、LIVEにおけるロック・バンド・スタイルの自由度の高いヴォーカルと演奏はもちろん最高ですけど、腕利きのミュージシャンが「スコア通り」に演奏し、そこにジュリー天性の才で歌入れされたレコーディング音源の説得力というのもまた素晴らしいものです。
その意味で「悲しき船乗り」の出来映えは、『JULIE Ⅵ -ある青春』収録曲中でも屈指と僕は思っています。
是非みなさまに再評価されて欲しい、隠れた名曲・・・この機にじっくり聴き返してみて!


それでは、久々の・・・オマケです!
福岡の先輩からお預かりしている『ヤング』バックナンバーで、73年7月号掲載のジュリーの話題をどうぞ。

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あと、この73年7月号の「スター・アンケート」のコーナーには堯之さんと岸部兄弟が登場しているので、そちらも貼っておきましょう。

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さて、みなさまも5月からのジュリー全国ツアー、前半のチケット申し込みを終えられたことと思います。
今回のスケジュールは、序盤に限って言うと関西のファン泣かせな感じですね。関西限定で考えると、6月の京都までだいぶ間があります。「辛抱たまらん!」と遠征を決意された関西のかたも多いのではないですか?
すなわち、ツアー初日NHKホールの競争率がハンパない状態なのではないかと。

「初日には絶対参加したい派」の僕ももちろんNHKホールは申し込みましたが、第2希望は書けませんでした。
ただただ抽選に引っかかってくれることを祈るばかりです。席はどんな後方でもよいのですから(と言うか、僕のジュリーLIVE席運は50周年ツアーで完全に使い果たしたのだ、とこの2年で実感させられています笑)。

あと、YOKO君はじめバンド仲間を誘って申し込んだのが6月の川口リリア。
今回は男4人での参加ですが、こちらはメンバーと相談して第2希望を武蔵野として記入しました。
でも、やはり川口と言えばYOKO君がもう30年住み続けている街ということで、彼の「地元枠」として当選を期待したいところです。

ともあれ本当に楽しみな全国ツアー、みなさまの良席ゲットをお祈り申し上げます。
コロナウィルスにインフルエンザ、何かと騒がしい冬。
お互い充分気をつけて、暖かい春を待ちましょう!

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