沢田研二 「ボンヴォワヤージュ」
from 『JULIE SONG CALENDAR』、1983
1. 裏切り者と朝食を
2. ボンヴォワヤージュ
3. 目抜き通りの6月
4. ウィークエンド・サンバ
5. Sweet Surrender
6. CHI SEI(君は誰)
7. YOU'RE THE ONLY GIRL
8. ラスト・スパーク
9. 一人ぼっちのパーティー
10. SCANDAL !!
11. す・て・き・にかん違い
12. Free Free Night
13. BURNING SEXY SILENT NIGHT
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またまたお久しぶりです。
ようやく風邪が治りました。発症が1月20日頃で、完治までひと月ほどかかった計算です。
発熱は数日だけでしたが咳だけがいつまでも残って、今世間は新型ウィルスで大変な時期ということもあり、2月に半ばあたりからは周囲への気配りにも神経を尖らせる毎日でした。
僕のはただの風邪でしたが、新型ウィルスのニュース・・・本当に深刻な状況になっています。
楽しみにしていた新日本プロレスの旗揚げ記念大会(3月3日)の開催中止も発表されました。スポーツ、芸能関連のイベントは3月中旬までは中止であったり無観客開催となるなどしています。
仕方のないことですよね。一番無念なのは舞台に立つ人達です(新日本プロレス・高橋ヒロム選手の写真1枚のメッセージにはグッときました)。
僕らもここはグッと耐え忍び、1日も早い収束を目指しできることをやってゆくしかありません。
そして、ジュリーのツアーが始まる5月にはすっかり落ち着いている、と信じています。
有難いことに僕のところにはNHKホール公演の落選通知は届かず(あと川口公演は抽選自体が回避)、ツアー初日に参加できると思えばなおさらです。
さて、今年は昨年よりは時間ができるかなぁと考えていましたが、2月から公私ともに大忙し。
まぁでも、忙しいというの誰かの役に立てている、必要として貰えているということですから有難いことなのです。
ブログの方もマイペースながら頑張っていきます。
今日は、「既に採譜を終えていたジュリー・ナンバーお題」シリーズの第2回として更新です。
採り上げるのはアルバム『JULIE SONG CALENDER』から「ボンヴォワヤージュ」。
短い記事になりますがどうぞおつき合いください。
アルバムの中では、「裏切り者と朝食を」「BURNING SEXY SILENT NIGHT」と並んで個人的には特に好きな1曲です。
前回「悲しき船乗り」の記事で、『JULIEⅡ』の続きの物語のようだ、ということを書いたんですけど、実は「ボンヴォワヤージュ」にもそんな雰囲気があったりして。
「海の男」として逞しく(色々な意味でね笑)成長した『JULIEⅡ』主人公、もうすっかり船も女もお手のもの・・・のはずが
女とは海だと思ってた
C Em7
男とは気ままな船さ
Dm7 G7
それだけに今はあっけにとられて
F
移る季節に
C Am(onF)
追いつけないのさ ♪
Dm7 G7 C
浮気な船乗りはお株をとられ、「そりゃないよ!」的なフラれ方をしてしまいます。
『JULIE SONG CALENDER』の女性作詞陣では唯一キャリアあるプロの作詞家・湯川れい子さん、さすが「ジュリーに似合う景色」を描いてきていますね。
僕は福岡の先輩から授かったラジオ音源のおかげで、最近ようやくこのアルバムの製作過程、それぞれの曲が最初はどのように世に発表されてきたのか、ということを実感できていますが、収録曲中のほとんどが「詞先」の作業だったとか。
となるとジュリーの作曲は本当の意味での「書き下ろし」(過去のストック作品で作業を補う、というやり方ができない)だったわけで、当時の大忙しなジュリーをしてコンスタントに新たな自作新曲を積み重ねていくという超人ぶり。81年の糸井重里さんとのラジオ対談でジュリーは「曲作りの作業は早い」と自認しているとは言え、他アーティストへの提供楽曲の多さも加え、やはり80年代前半は「作曲家・ジュリー覚醒の時期」だったのだと驚嘆するほかありません。
詞先の作曲の面白さは、良い意味で「メロディーや構成が文字数に左右される」ことです。
例えば里中満知子さん作詞の「裏切り者と朝食を」のように「詞がこうでなければあり得ない」変拍子の導入であったり、この「ボンヴォワヤージュ」或いは「ラストスパーク」では、ジュリーが苦心して言葉をギュギュッ!と小節内に押し込んだ音符割りが登場したり。
限られた時間の中でジュリーが提示したメロディーを、エキゾティクスのメンバーがアレンジと演奏でどう仕上げているか、というのが『JULIE SONG CALENDER』最大の聴きどころでしょう。
その意味で、歌詞がギュッと押し込められた「ボンヴォワヤージュ」に吉田建さんがレゲエのリズムをあてがったのは、正にズバリ!なアレンジ・センスと言えます。
長いジュリーの歴史の中で、レゲエまたはスカ・ビートといった「後ノリ」カッティングの演奏作品はそう多くはありません。
しかしジュリー史まんべんなく、時代時代で思い出したようにその手の名曲が生まれているのもまた事実。「ボンヴォワヤージュ」以前では、「愛の逃亡者」「メモリーズ」「バタフライ・ムーン」・・・いずれも高度なアレンジでありながら堅苦しくなく、ジュリーのヴォーカルがサラリと楽しげにしていますよね。
数年後にリリースされた「EDEN」もそう。ジュリーはレゲエ適性も素晴らしい、ということなのですよ!
「ボン・ボワヤージュ」とは「よい旅を」という意味らしいですね。
今まで不勉強にて知らなかったのですが、ズバリ同タイトルのシャンソンがあるそうで、色々と検索しますと日本人歌手のカバー・ヴァージョンもいくつか見つかりました。かなり有名な曲のようです。
邦洋含めそれらで共通しているのは、歌の主人公が女性であるということ。愛していた男性が突然自分の元を去ってしまう・・・「顔で笑って、心で泣いて」ではないけれど、主人公は「よい旅を」と彼を見送ります。
湯川さんは当然この歌をご存知だったでしょう。ジュリーの作詞依頼を受けて、男女の立場を逆転させた「よい旅を」の物語を改めての視点で描かれたのです。
83年と言う時期の歌手・ジュリーのキャラクターにピッタリの着想だったのではないでしょうか。
詞曲、ヴォーカル、演奏ともいかにも「隠れた名曲」だと思います。みなさまはどうでしょうか。
それでは、オマケです!
お題曲とは時期の異なる資料ですが、『FM fan』の86年新春特大号(発売は85年12月)から。
ジュリーのインタビュー記事が掲載されていて、インタビュアーが他でもない「ボンヴォワヤージュ」作詞の湯川れい子さんということで、この機にご紹介です。
この頃はまだジュリーが「李花幻」のペンネームへの神秘性、ミステリーを貫いていたのですね。
ジュリーの口から発せられている「井上陽水説」・・・これに僕はアッと思ったものです。この記事を読むまでまるで気づけていなかったけれど、「灰とダイヤモンド」の作詞・作曲。特に詞についてジュリーは陽水さんを意識していたようですね。
曲中登場する「~なさい」という冷ややかにしてエロティックな命令口調は、「ジュリー流の陽水解釈」だったのかもしれません。
明日から3月です。早いものですね。
今年はイベントの自粛などで春の街の賑わいが目立たない寂しさもありましょうが、三寒四温が身に沁みる、やわらかな季節です。
11日にはジュリーの新譜『Help!Help!Help!Help!』もリリースされます。拙ブログではもちろん今年も新曲の考察記事に取り組みます。
その前にもう1本、何か1曲書いておきたいところ。
頑張りたいと思います。
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