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2019年12月18日 (水)

瞳みのる・稲村なおこ 「GS陽気なロックンロール」「君は僕のすべて」

from『GS陽気なロックンロール』、2019

Gsrocknroll

1. GS陽気なロックンロール
2. 微笑の彼方へ
3. あの日の小道
4. 君は僕のすべて

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あっという間にもう10日ほど過ぎてしまいましたが・・・去る12月8日、瞳みのる&二十二世紀バンドLIVE2019『音音楽楽、人種・国境・時代を越えて!』四谷区民ホール公演に行ってまいりました~!

生のLIVEは9月のジュリーの『SHOUT!』ツアー八王子公演以来、さらにバンド・スタイルのステージとなると昨年の瞳みのる&二十二世紀バンド、四谷公演以来。
個人的には仕事のバタバタからある程度解放されたタイミングでもあり、本当に「無」の気持ちで純粋に音楽に身を委ねることができました。
開演前にはピーファンの先輩方とお茶を同席させて頂き、11月六本木でのタローさんのLIVEで実現した「ほぼタイガース」の様子を伺ったり、本当に楽しい1日となったのでした。

ブログの下書き時間がとれない今年は、例年のような全曲網羅のLIVEレポートではなく、セットリストから「この1曲!」をお題に選んでの簡単な振り返り記事とする・・・前回更新でそのように書いたのですが、結果「この2曲!」になってしまいました(笑)。
もちろん、四谷公演セトリの中で強く印象に残ったという意味でこれらが甲乙つけ難い2曲だったからです。

「GS陽気なロックンロール」
「君は僕のすべて」

いずれもピーさんが稲村なおこさん(二十二世紀バンドの初代キーボード)と共に今年リリースした新曲で、それぞれ新譜CDの1曲目と4曲目に配されたピーさんのオリジナル・ナンバー。
実は、今年ピーさんのこの新譜が出たことは知っていたのですが、買おう買おうと思っているうちに怒涛の日々に突入。いざCDを購入したのは他でもない、四谷公演当日の開演直前、グッズ売り場でのゲットでした(そうそう、毎年楽しみにしているパンフを一緒に買おうとしたら並んでない!すわ、売り切れてしまったか?と思いスタッフさんに尋ねると、「今年は出来てないんですよ」とのことで、とても残念です・・・)。

つまり僕はジュリーの『Pleasure Pleasure』の初日と同じく、LIVE会場で新曲を初体感してから帰宅後改めてCD音源で復習する、ということをやったわけで、こういうのもまた良いものですな~。
記事お題2曲のうち「君は僕のすべて」についてはLIVEとCDではまったくイメージが違って。それぞれの魅力を1日のうちに堪能することができました。

それでは、簡単にではありますがお題2曲についての僕の感想を書いていきましょう。

まず「GS陽気なロックンロール」。
新譜の収録4曲のうち唯一、作詞・作曲ともピーさん単独で担ったCDタイトルチューンです。
オフィシャルサイトで発売情報が解禁され楽曲タイトルを知った時、僕は「陽気なロックンロール」なる部分のみのイメージから、チャック・ベリーやバディ・ホリーに代表される、長調スリー・コード主体のいわゆる「オールディーズ」系ロックンロールの曲調、進行を漠然と思い描いていました。
ところがいざLIVEセットリスト1曲目、バ~ン!と始まったビート・ロック(イントロのドラム・フィルの瞬間に限ると、
「危険なふたり」が始まったのかと思ってしまったことをここで白状でしおきます笑)は意外や短調のメロディーと進行。
哀愁の泣きメロをして、ロックンロールだと歌うのです。
「あれっ、タイトルのイメージとは違うな」などと考えたのは僕の浅はかさ・・・NELOさんがゴキゲンなクロマチック・グリスをカマした時、ようやく「そうか!」と。

世代的に僕にはなかなか気づけないことなのですが、「陽気なロックンロール」の前に「GS」がついている意味・・・日本のGSはまず空前のエレキ・ギター・ブームから産まれたという歴史的事実。
つまりベンチャーズなんですね、この曲は(もちろんそれだけではないけれど)。

この日のMCでピーさんは
「エレキギターを持っていたらそれだけで不良と言われる、そういう時代でした」
とファニーズの頃を思い返していました。
ピーさんやリアルタイムGS世代の皆様にとって「ロックンロール」の原点、原風景は、ベンチャーズ流のエレキギターであり、短調のアフター・ビートなのですねぇ。

思えばピーさんは不在だったけど、80年代の同窓会期に「ザ・タイガースのシングル」を掲げてジュリーが作曲した「十年ロマンス」、タローさんが作曲した「色つきの女でいてくれよ」、いずれも短調のビート系でした。それすなわち「GSに立ち返る」作曲ということなのでしょう。
ベンチャーズがロック黎明期の日本であれほどの人気を博したのは、哀愁感のある短調の旋律、進行を擁した代表曲が多く、当時の日本人の歌謡気質にも合ったからじゃないのかな。
「陽気な」の意味を僕は自分の尺でしか量れていなかった、とLIVEステージ1曲目から僕はしみじみと思い知らされたのでした。

その「GS陽気なロックンロール」は帰宅してから「そうそう、こういう曲だった!」とステージを振り返りつつCD音源を聴いたのですが、一方「うわ、LIVEとCDでは全然違う!」と感じたのが、「君は僕のすべて」です。

LIVEヴァージョンの方を今回の四谷公演で先に聴いて、「君は僕のすべて」に僕は「畳みかけるポップ・ロック・ナンバー」という印象を持ちました。
マーシーさんの跳ねるドラムスやJEFFさんの表拍の4つ弾きから、モータウン・ビートに近いノリも感じました。
しかしCD音源の方を聴くとこれが落ち着いたハート・ウォームなポップスで。
もちろんテンポ自体はLIVEと同じはずなのに、じっくりとメロディーを聴き入るタイプの歌、作曲者のKAZUさんの繊細な魅力が強く出たテイクだと思いました。

ここまで印象が違うのは何故か・・・アレンジや演奏面もあるけれど、一番はピーさんのヴォーカルではないでしょうか。
CDでのピーさんは、優しいメロディーを丁寧に歌っている印象。それが四谷のLIVEでは、アンコール1曲目ということでピーさんのテンションが相当上がっていたことも含まれるのでしょうが、とにかく「我を忘れ、身を猛り、すべてを晒す」ような歌いっぷりに圧倒されたのです。
既にCDで曲を知っていたお客さんも、「えっ、こんなに激しい歌だったっけ?」と驚かれたのではないですか?

ピーさんはステージでこの曲を歌いながら、あんなにも無心に、懸命に、何を伝えたかったのでしょう・・・。
ここからは僕の勝手な推測です。

この日のMCと他セトリ選曲でピーさんからいくつかのヒントが示されていたように思います。
まずは、某国会議員を穏やかな口調ながらも一喝したシーンが思い出されます。

「ロシアと戦争?おじいさんの時だけでもうたくさんだ」

とピーさんは言いました。
ピーさんのおじいさんはロシア出征を経験し、すんでのところで一命をとりとめたのだそうです。
「その時命を落としていたら、(ピーさんの)親父は生まれていない」
と。
またそのお父さんも先の大戦に出征、被弾して除隊となっていなければ南方にやられておそらく戦死していたであろう、そうなっていたらピーさん自身この世にはいないと。
そして
「子供を戦争に行かせるようなことはしたくない」
とピーさんは静かに言ったのです。

また今回のセットリストは「タイガース多め」で、久々に生体感となるいくつかの名曲が披露されました。
「落葉の物語」「割れた地球」「誓いの明日」などと共に「生命のカンタータ」が採り上げられたのはファンにとって嬉しいサプライズでしたが、では何故ピーさんは今、この曲を歌おうと思ったのか・・・。

今年の3月11日、ピーさんの息子さんが誕生されているんですよね。

ステージで躍動するピーさんは、もちろんお客さんに向けて「君は僕のすべて」だと歌ってくれているのだけど、表現者として、演者として「世の子供達」にそのシャウト、メッセージを捧げようと歌っているんじゃないかと僕は感じました。

子に捧げる親の思い・・・作詞の時点でそんなコンセプトがあったかどうかは分かりません(もしあったとしても、リリース時期から考えて息子さんが産まれる前の時点での作詞ではあったでしょう)。
ただ、歌詞カードに添えられたピーさんの解説によれば(ピーさんのCDにはいつも簡単な解説が記してあるのが嬉しい!)、「君は僕のすべて」はピーさんとしては初めての「曲先」の作詞作業だったそうです。
ピーさんはLIVEで選曲した中華ポップスに新たな日本語詞を載せる、ということをずっと続けていますから、オリジナル曲での初めての曲先作詞も違和感は無かったでしょうが、ジュリーが数年前に語ったように「メロディーが先にあった方がシリアスな詞のテーマを載せやすい」と言われますし、ピーさんが「生命の誕生」を曲先の作詞題材として採り上げた、と考えるのはタイミング的にも不思議ではありません。

そのコンセプトがステージで一気に開放された・・・僕はそんなふうに想像していますが、いかがでしょうか。

最後に、8日のステージについて少しだけ。

12.8 四谷区民ホール セットリスト

1. GS陽気なロックンロール

2. シー・シー・シー
3. シーサイド・バウンド
4. 勝手にしやがれ
5. エメラルドの伝説
6. YOUNG MAN(Y.M.C.A.)
7. 吻別(キスして別れた夜)
8. 心太軟(君の心優しすぎ)
9. スタンド・バイ・ミー
10. サマータイム
11. マイ・ウェイ
12. 都会
13. 生命のカンタータ
14. 誓いの明日
15. 落葉の物語
16. 君だけに愛を
17. Sylvie My Love(銀河のロマンス)
18. 割れた地球
19. 美しき愛の掟
20. 怒りの鐘を鳴らせ
21. Auld Lang Syne~蛍の光
22. ラヴ・ラヴ・ラヴ
~アンコール~
23. 君は僕のすべて
24. 色つきの女でいてくれよ

(今年はパンフが無いので、僕の自力では中華ポップスのタイトルが分からずセットリスト全曲の明記は厳しかったと思います。纏めてメールにて教えてくださったピーファンの先輩に感謝!)

例年よりタイガース・ナンバー多めの構成。
昨年に引き続き同窓会期のヒット曲「色つきの女でいてくれよ」が大トリで、ピーさんオリジナルの振付もすっかり定着しました。
4曲目の「勝手にしやがれ」は、あの「勝手にしやがれ」です(笑)。ピーさんドラム叩き語り!

今年もヴァラエティーに富んだ楽しいステージでした。
各メンバーのパフォーマンスで特に印象に残ったのは

・ピーさん
ヴォーカルについては先述の「君は僕のすべて」。これに尽きます。
ドラムスはやはり「割れた地球」。元々そういうアレンジとは知っていても、あのスネアのスリリングな変則打点は生で聴いてこその迫力。オリジナルとは違う1拍目の頭打ちも時折飛び出しました。
あと・・・この曲は特にドラムの音それ自体がデカい!
ちなみにバンド仲間の友人の話では「ドラマーにとって、音がデカいというのは最高の褒め言葉」なのだそうですよ。
もう1曲挙げるなら「誓いの明日」。
こちらは激しさよりも「細やかでテクニカルなドラムス」という印象でした。曲後半のソロの安定感は、71年タイガース・ヴァージョンでの狂おしい乱打と比較すると感慨深いものがあります。いずれもピーさんの本質で、どちらが優れているとは言えませんが、楽曲コンセプトに合っているのは現在の演奏ではないでしょうか。

・JEFFさん
「美しき愛の掟」と迷いますが、今回は選曲のサプライズ感も併せ「生命のカンタータ」を挙げたいです。
この曲のベースは「生き物のように動き回る」と言われたビートルズ「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」でのポール・マッカートニーのプレイへのオマージュ・アレンジで、僕の大好物。
JEFFさんは見事再現してくれただけでなく、サリーさんの低音コーラス・パートまで担当する見せ場の1曲となりました。

・NELOさん
今や「タイガース・ナンバーのギターを弾かせたらこの世代で右に出る者なし!」というくらいNELOさんのギターはタイガース・サウンドに馴染んだ感があります。
ギターはどの曲も素晴らしかったのですが、加えて特記したいのが「怒りの鐘を鳴らせ」でのリード・ヴォーカル。昨年まではこの曲、ずっとJEFFさんが歌っていたんじゃなかったでしたっけ?
NELOさんの持ち歌としてセットリスト常連だった二十二世紀バンド版「ハートブレイカー」が今年の四谷公演では無く、「短調のハードなナンバー」繋がりということで、改めてNELOさんにこの曲が託されたのでしょうか。

・はなさん
笑顔のオールラウンダーとして今年も大活躍。僕が強く惹かれたのは「サマータイム」のオルガンです。
この曲って、普通ならジャズの雰囲気を残してカバーされるところ、二十二世紀バンドのヴァージョンは70年代ロック・テイストで、まずアレンジが新鮮。
その中でもまるでキース・エマーソンのような音色とフレーズで縦横無尽に走り回るはなさんのソロ・・・個人的にはこの日の二十二世紀バンドの演奏で最も感動させられたプレイです。

・マーシーさん
今回僕は2列目の良席を授かりましたが(ピーファンの先輩が一緒に申し込んでくださいました)、ピーさんがドラムスを叩く曲ではマーシーさんの立ち位置が死角となりました。昨年も披露されとても気に入った「心太軟」でのイントロのマラカスも、音だけ聴こえている状況。
ドラムセットに座っての演奏では、レスリー・ヴァージョンの「銀河のロマンス」が素敵でした。昨年以上に素晴らしかったと思います。

・Kenyaさん
後半のタイガース・コーナーから登場し、ギター・プレイ以外でもお客さんのスタンディングをリードするなど、今年の四谷も「飛び入りゲスト」ながら重要な役割を果たしてくれました。
大トリ「色つきの女でいてくれよ」のソロは今年もNELOさんではなくKenyaさん。ゴキゲンな演奏でした。


MCでは、来年の公演も約束してくれたピーさん。
僕にとって二十二世紀バンドのLIVE参加はすっかり年の瀬恒例の行事となっていますから嬉しい告知です。
あと、来年は「明月荘ブルース」(だったかな?)という新曲のリリースがあるそうです。もう音は出来上がっていてこれから歌入れなのだとか。
こちらも楽しみ・・・今度は音源をゲットしてからLIVEに臨みたいと思っています。

昨年も書いたように、二十二世紀バンドのLIVEはタイガース・ファンの皆様に自信を持ってお勧めできる楽しいステージです。
まだ参加されたことの無い方、来年は是非会場でお会いしましょう!

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コメント

ダイナマイトさん、四谷では1年ぶりの再会でしたね。
いろいろ話は積もっていたし、お願いもあるので、ゆっくり会おうということにさせてもらいました。
とにかく、一応元気な姿を拝見して、ホッとしました。
ゆっくりお話しできる時を楽しみにしています。

投稿: YOU | 2019年12月20日 (金) 17時10分

ありがとう!
毎度素晴らしいレポに感動ふたたびです。
ご一緒できて楽しかったです。
ピーのブログでも、こちらの記事が紹介されてましたので、きっと訪れる方が増える事でしょう!
相変わらずお忙しそうですが、お身体ご自愛の上、良いお年をお迎えくださいね!

投稿: miyolin | 2019年12月22日 (日) 12時08分

この年の瀬にガッツリ寝込んでしまいました・・・お返事遅れて申し訳ありません。

YOU様

ありがとうございます!

今年はYOU様のライヴにも行くことができず、本当に不義理を重ねてしまいました。

四谷での久々の再会、感慨深いものがありました。ひとまわり年上のYOU様が、相変わらずバイタリティーに満ち元気なオーラを放っているのを実感し、我が身を引き締めましたよ。
来たる2020年、少しでも御恩を返していきたいと思います。諸々どうぞよろしくお願い申し上げます。

miyolin様

ありがとうございます!

ここ数日寝込んでいたのですが、久しぶりにブログが繁盛していたらしく、YOU様からのメールでピーさんのブログのことも知って・・・本当に有難いことです。

あ、ご心配頂いた五重肩はまだ治りません(汗)。
なんかもう慣れてしまいましたよ・・・。

四谷公演当日は色々と楽しいお話を有難うございました。
miyolin様もどうぞよいお年をお迎え下さい。

投稿: DYNAMITE | 2019年12月25日 (水) 09時16分

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