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2019年12月

2019年12月28日 (土)

沢田研二 「ZOKKON」

from『A WONDERFUL TIME.』、1982

Wonderfultime 

1. ”おまえにチェック・イン”
2. PAPER DREAM
3. STOP WEDDING BELL
4. WHY OH WHY
5. A WONDERFUL TIME
6. WE BEGAN TO START
7. 氷づめのHONEY
8. ZOKKON
9. パフューム
10. 素肌に星を散りばめて

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2019年、ラスト更新です。

まずはお知らせから。
ザ・タイガースのファンのみなさまならご存知、あの1・24の重要登場人物でもいらっしゃる坂田さんが、ブログを開設されました。
坂田さんは、2012年のピーさんとタローさん(&スーパースター)のジョイント・コンサート中野公演で何と僕のお隣の席にいらして、その時まず僕の顔を覚えてくださり(本当に僥倖でした。一緒にいらしていた綺麗な奥様が、少し離れた席に来場していたサリーさんとお話するのを目の前で拝見したりとか)、その後坂田さんの青山でのLIVE(ゲストでタローさんも参加)で色々とお話させて頂いて以来、望外のご縁を賜りました。
ブログの開設もメールで知らせてくださって(熱で寝込んでいる僕に、「ウィルスなんかダイナマイトでふっとばせ!」とエールもくださいました)、これは僕としても微力ながら広く皆様に案内しなければ・・・と、ここでご紹介させて頂く次第です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて本題です。
2019年も残り僅か・・・ということはすなわち、ジュリーの2020年お正月LIVE『名福東阪阪東・寡黙なROCKER』開幕がもうすぐにまで迫っているという。
僕は今回残念ながら初日名古屋公演には参加せず、10日の東京国際フォーラム公演までセットリストのネタバレ我慢を敢行しますが、「ジュリー自身の作詞・作曲作品がかなりの比重を占める」と予想しているのは前回「AZAYAKANI」の記事中で書いた通り。
今日は”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズ第2弾として、これもやはりジュリー作詞・作曲のナンバー「ZOKKON」を採り上げ、賑やかな名曲にあやかって今年を締めくくりたいと思います。

僕にとって2019年は仕事が忙しかった1年でした。
中でも大変だったのは、本社ビルの移転に伴う資料本スコアの取捨・整理を一手に任されたことです。
勤務先の会社は昭和42年創業、しかも「とにかく新刊を矢継ぎ早に出す」ことが宿命づけられている楽譜業界の出版社ですから、地下資料室に残されている50数年ぶんの資料本の単体冊数たるや・・・眩暈がするほどでした。
90年代に入社した僕がこれまで目にしたことの無かったスコアもたくさんありまして、それを早急なスキャン化が必要なもの、今後その可能性があるもの、不要廃棄処分のものと自分の判断で選別のうえ保管作業までしていかねばならず、責任重大にして労力も莫大(本って纏めるととても重いですからね)。
ただ僕は元来スコアフェチですから、未知の資料を吟味する作業というのは大変ではありましたがさほど苦ではなかったです。

ジュリーのギター・スコアやピアノ・スコアも点数は少ないながらすべて発掘。最終版は82年ながら、当然「今後の可能性」アリとして大切な保管組としました。
で、ジュリー単体のスコアではないけれど、言わば「関連商品」と呼ぶべきもの・・・混載のオムニバス以外に、こんなスコアも発掘したのです。

Zokkon1

ジュリーファンの先輩方ならばピンと来たはず。
そう、ジュリーはシブがき隊のファースト・アルバムに2曲の楽曲を提供しているんですよね。

1982年と言えば、ジュリーが「作曲家」として完全覚醒した時期。僕もジュリーの彼等への楽曲提供したこと自体は数年前に知っていましたが、こうしてスコアを見て曲調を把握する機会は初めてでした。
そしてまず驚愕。
これまで僕は、てっきりジュリーは作曲のみの提供で作詞は森雪之丞さんなのだろう、と勝手に思い込んでいたのです。ところがジュリーは提供2曲いずれも作詞・作曲まで1人で担っていたのですねぇ。
先輩方としては「何をいまさら」と仰りたいところでしょう。これは完全に僕の勉強不足でした。

でこうなると、音符やコードだけでなく歌詞についてもじっくり吟味しつつスコアを読み解きたくなるのは必然。すると

Zokkon2

Zokkon3

こ、これは・・・!
2曲とも明快に「ZOKKON」系ではないですか!

オラオラ・モードな口調でイキがって迫っているけれど、内心目の前の彼女にはメロメロにしてお手上げ。そんな主人公がすっかり舞い上がってすったもんだしている、という「バカ・ロック」(←念のため書きますが、この表現は最上級の褒め言葉ですからね!)な仕上がり。
その上で詞曲には時代にジャストな「流行歌」エッセンスがあります。正に「ZOKKON」系列なんですよ。
もちろん各曲それぞれバラエティーに富みキーも違います。「Weather Girl」は短調の進行ですし、「ハートでCOME ON!」の詞には「ZOKKON」以上に「氷づめのHONEY」を連想させるフレーズが登場。
ただ、ジュリー渾身の「バカ・ロック」はやはり「ZOKKON」に集約されまると思いますから、この曲がボス的位置なんですよね。

同い年の男性ジュリーファンの友人が、かつてヤマハさんから出版されていた『A WOUDERFUL TIME.』のマッチング・エレクトーン・スコアを持っていて見せて貰えているので、「ZOKKON」とシブがき隊2曲はスコア比較としても非常に興味深い類似を楽しめました。

シブがき隊のファースト・アルバム『ボーイズ&ガールズ』は82年7月リリース、一方「ZOKKON」がシングル「”おまえにチェック・イン”」のB面としてリリースされたのは同年5月(アルバム『A WOUDERFUL TIME.』は6月)。とすれば「ZOKKON」とシブがき隊への提供2曲はほぼ同時期に作詞・作曲されたと考えられます。
ここで、拙ブログ得意の「勝手な推測」(妄想、邪推とも言う笑)が炸裂。

「ZOKKON」は元々、ジュリーがシブがき隊アルバムのオファーを受けて作った曲のひとつではなかったか?

という。
シブがき隊には翌83年の「ZOKKON 命(LOVE)」というヒット・シングルがありましたし(こちらの作詞が森さん)、そもそも「ZOKKON」なるタイトル・フレーズがデビュー時の彼等のイメージにピッタリ、という後づけ要因もあります(ちなみに上記スコアは彼等のサード・アルバム『夏・ZOKKON』までの全曲を収載)。

ところがジュリーはシブがき隊のために作った曲の中で「ZOKKON」の出来を大いに気に入り、自らの次シングル曲としてプリプロにかけたのではないでしょうか。
福岡の先輩から授かった80年代のラジオ音源でジュリーは「シングルのA面とB面は、最初はどちらもA面のつもりで作って、その上で皆で話し合っていずれをA面にするか決めている」と語っていました。結果的には彗星のごとく登場した大沢誉志幸さん作曲の「”おまえにチェック・イン”」にA面の座を譲りましたが、当時ジュリー・シングルの流れは「ス・ト・リ・ッ・パ・-」「麗人」と自作曲が続いており、そこで今度は作曲のみならず作詞も自ら手がけた「ZOKKON」で勝負!とジュリーが考えた、というのはあながち無理な推測でもないような気がするのですが・・・深読みですかねぇ。

ともあれ「ZOKKON」は、元気で脳天気で愛すべき名曲です。長いファンの先輩方にとっては「セトリ率高め」のイメージもあるかもしれません。
しかし『ジュリー祭り』堕ちの僕は、この曲をまだ生で聴けていないんです(と言うかアルバム『A WONDERFUL TIME.』の中では「”おまえにチェック・イン”」しか生で聴いたことがありません)。
お正月、期待したいです!


さて、来年も今年ほどではないにせよ忙しそうなので、ライトな文量&内容の記事が続くと思いますが、更新はなるべくマメにやっていこうと思っています。
今年はとにかく約半年間のブログ放置状態がありましたから・・・いつも読んでくださっているみなさまには本当に申し訳なかったです。
2020年はそんなことがないよう頑張ります。

春に発症した五十肩ともつきあいながらバッタバタで駆けた2019年も、もうあと少しで終ります。
今日からは9日間の冬休みに入りました。実感する連休のありがたみ・・・ひさしぶりにゆっくり過ごしたいです。

それではみなさま、風邪、インフルエンザ等に気をつけて、よいお年をお迎えください。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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2019年12月20日 (金)

沢田研二 「AZAYAKANI」

from『新しい想い出2001』、2001

Atarasiiomoide 
1. 大切な普通
2. 愛だけが世界基準
3. 心の宇宙(ソラ)
4. あの日は雨
5. 「C」
6. AZAYAKANI
7. ハートの青さなら 空にさえ負けない
8. バラード491
9. Good good day

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一昨日に瞳みのる&二十二世紀バンド四谷公演の記事を書いたばかりですが・・・本日12月20日は毎年の更新日と決めていますので、本当に短い記事ですがupいたします(実は38℃の発熱で今日は仕事を休ませて貰ったのです汗)。

不肖DYNAMITE、
今日で53歳となりました。
毎年書いていますが、同年代の友人や同僚達は今や誕生日を
迎える度に「こんな歳になってしまったのか・・・」と表情も沈みがち。僕もジュリーファンになっていなかったら同じだったでしょう。
でも、「今の自分と同い年だったジ
ュリー」の活動は幾つであっても現役バリバリ。毎年勇気づけられています。

あと、
「53歳」というのはプロレスファンとしても特別な数字で、今は引退されましたが、あの天龍源一郎さんが今の僕と同じ年齢で開発した必殺技の名前がズバリ「53歳」。
変形の
脳天砕きなんですけど、とにかく53歳の天龍さんは、才能豊かな若い選手やリヴィング・レジェンドを向こうにまわしバッタバッタとこの「53歳」で試合に勝ちまくっていました。53歳なんて、全然老け込む歳ではないのだと教えてくれました。

僕は凡人ですからジュリーや天龍さんのようにはいかないけれど、リスペクトする人生の先達に少しでもあやかりたいものです。

さて、ジュリーが今の僕と同い年・53歳の年にリリースしたア
ルバムは『新しい想い出2001』。
収録曲の少なさ(全9曲)や、この作品からジャケッ
トにジュリーの写真が載らなくなるなど一見地味な印象のアルバムですが、これはジュリーファンならば心から愛すべき名盤!
今日は、まだ記事を書き終えていなかった収録曲の中から「AZ
AYAKANI」をお題としました。

「AZAYAKANI」・・・ジュリー自身の作詞・作曲。これは
お正月LIVEに向けての『恒例・全然当たらないセットリスト予想』シリーズも兼ねた楽曲お題です。
僕は参加できませんでしたが、『SHOUT!』ツアー大千秋楽、東京国際フ
ォーラム公演でジュリーが少しだけお正月LIVEの告知MCをしてくれたのだそうですね。
曰く、「(セットリストは)1曲以外総入れ替えする」と。
いやぁワクワクします。ど
んな曲が選ばれるのでしょうか。ジュリーは「出来の悪い子(曲)ほど可愛い」とも言っていたそうですから、アッと驚くサプライズ選曲が期待できそう。
もちろん僕らファン
からすれば、ジュリー・ナンバーで「出来の悪い」ものなど皆無です。ただ、ジュリーがそうした表現をする時、どんな歌を頭に思い描いているか・・・それを僕は「ジュリー自ら作詞・作曲した歌」ではないかと想像しています。
今度のお正月にはジュリー作詞・作
曲の名曲が多くの比重を占める、というのが僕の予想。「明日は晴れる」なんて、個人的には鉄板だと思いますよ!

『新しい想い出2001』からまず僕がセトリ入りを切望するのは、
未だ生体感が叶っていない「Good good day」(これもジュリー自作)ですが、「当てに行く」予想をするならば「AZAYAKANI」に軍配が上がるでしょう。
2009年の『Pleasur
e Pleasure』ツアーで採り上げられたように(GRACE姉さんの「ダバダバダ~♪」コーラスが懐かしい!)、ジュリーが「さぁ、この先10年また行くぞ!」とギアを入れ直すステージにふさわしい選曲ではないかと思うからです。
また、「彼岸と此岸」についてのジュリーの考
え方が初めて作詞にハッキリ表れた、という意味でも重要な1曲。つまり、近年の詩人・ジュリーの創作ととても近しい名曲と言えます。
個人的には「君の記憶に残りたい、僕の記憶
に残したい」なるメッセージは「たとえ(此岸で)君が僕のことを誰だか分からなくなっても、僕は君と一緒にいる」という決意をも併せ持つ、と考えます。
みなさまはいか
がでしょうか。

ともあれ、53歳当時のジュリーを見習い、しっかり地に足をつけてこれ
から先の道を見出す・・・そんな1年にしたいものです。

それでは、なんとか年内にも
う1本セトリ予想の記事を書いて2019年を締めくくるべく、頑張りたいと思います。

寒暖の差が激し
い年末となり、インフルエンザも流行しているようです。僕は既にやられてしまいましたが、みなさまは充分お気をつけて!

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2019年12月18日 (水)

瞳みのる・稲村なおこ 「GS陽気なロックンロール」「君は僕のすべて」

from『GS陽気なロックンロール』、2019

Gsrocknroll

1. GS陽気なロックンロール
2. 微笑の彼方へ
3. あの日の小道
4. 君は僕のすべて

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あっという間にもう10日ほど過ぎてしまいましたが・・・去る12月8日、瞳みのる&二十二世紀バンドLIVE2019『音音楽楽、人種・国境・時代を越えて!』四谷区民ホール公演に行ってまいりました~!

生のLIVEは9月のジュリーの『SHOUT!』ツアー八王子公演以来、さらにバンド・スタイルのステージとなると昨年の瞳みのる&二十二世紀バンド、四谷公演以来。
個人的には仕事のバタバタからある程度解放されたタイミングでもあり、本当に「無」の気持ちで純粋に音楽に身を委ねることができました。
開演前にはピーファンの先輩方とお茶を同席させて頂き、11月六本木でのタローさんのLIVEで実現した「ほぼタイガース」の様子を伺ったり、本当に楽しい1日となったのでした。

ブログの下書き時間がとれない今年は、例年のような全曲網羅のLIVEレポートではなく、セットリストから「この1曲!」をお題に選んでの簡単な振り返り記事とする・・・前回更新でそのように書いたのですが、結果「この2曲!」になってしまいました(笑)。
もちろん、四谷公演セトリの中で強く印象に残ったという意味でこれらが甲乙つけ難い2曲だったからです。

「GS陽気なロックンロール」
「君は僕のすべて」

いずれもピーさんが稲村なおこさん(二十二世紀バンドの初代キーボード)と共に今年リリースした新曲で、それぞれ新譜CDの1曲目と4曲目に配されたピーさんのオリジナル・ナンバー。
実は、今年ピーさんのこの新譜が出たことは知っていたのですが、買おう買おうと思っているうちに怒涛の日々に突入。いざCDを購入したのは他でもない、四谷公演当日の開演直前、グッズ売り場でのゲットでした(そうそう、毎年楽しみにしているパンフを一緒に買おうとしたら並んでない!すわ、売り切れてしまったか?と思いスタッフさんに尋ねると、「今年は出来てないんですよ」とのことで、とても残念です・・・)。

つまり僕はジュリーの『Pleasure Pleasure』の初日と同じく、LIVE会場で新曲を初体感してから帰宅後改めてCD音源で復習する、ということをやったわけで、こういうのもまた良いものですな~。
記事お題2曲のうち「君は僕のすべて」についてはLIVEとCDではまったくイメージが違って。それぞれの魅力を1日のうちに堪能することができました。

それでは、簡単にではありますがお題2曲についての僕の感想を書いていきましょう。

まず「GS陽気なロックンロール」。
新譜の収録4曲のうち唯一、作詞・作曲ともピーさん単独で担ったCDタイトルチューンです。
オフィシャルサイトで発売情報が解禁され楽曲タイトルを知った時、僕は「陽気なロックンロール」なる部分のみのイメージから、チャック・ベリーやバディ・ホリーに代表される、長調スリー・コード主体のいわゆる「オールディーズ」系ロックンロールの曲調、進行を漠然と思い描いていました。
ところがいざLIVEセットリスト1曲目、バ~ン!と始まったビート・ロック(イントロのドラム・フィルの瞬間に限ると、
「危険なふたり」が始まったのかと思ってしまったことをここで白状でしおきます笑)は意外や短調のメロディーと進行。
哀愁の泣きメロをして、ロックンロールだと歌うのです。
「あれっ、タイトルのイメージとは違うな」などと考えたのは僕の浅はかさ・・・NELOさんがゴキゲンなクロマチック・グリスをカマした時、ようやく「そうか!」と。

世代的に僕にはなかなか気づけないことなのですが、「陽気なロックンロール」の前に「GS」がついている意味・・・日本のGSはまず空前のエレキ・ギター・ブームから産まれたという歴史的事実。
つまりベンチャーズなんですね、この曲は(もちろんそれだけではないけれど)。

この日のMCでピーさんは
「エレキギターを持っていたらそれだけで不良と言われる、そういう時代でした」
とファニーズの頃を思い返していました。
ピーさんやリアルタイムGS世代の皆様にとって「ロックンロール」の原点、原風景は、ベンチャーズ流のエレキギターであり、短調のアフター・ビートなのですねぇ。

思えばピーさんは不在だったけど、80年代の同窓会期に「ザ・タイガースのシングル」を掲げてジュリーが作曲した「十年ロマンス」、タローさんが作曲した「色つきの女でいてくれよ」、いずれも短調のビート系でした。それすなわち「GSに立ち返る」作曲ということなのでしょう。
ベンチャーズがロック黎明期の日本であれほどの人気を博したのは、哀愁感のある短調の旋律、進行を擁した代表曲が多く、当時の日本人の歌謡気質にも合ったからじゃないのかな。
「陽気な」の意味を僕は自分の尺でしか量れていなかった、とLIVEステージ1曲目から僕はしみじみと思い知らされたのでした。

その「GS陽気なロックンロール」は帰宅してから「そうそう、こういう曲だった!」とステージを振り返りつつCD音源を聴いたのですが、一方「うわ、LIVEとCDでは全然違う!」と感じたのが、「君は僕のすべて」です。

LIVEヴァージョンの方を今回の四谷公演で先に聴いて、「君は僕のすべて」に僕は「畳みかけるポップ・ロック・ナンバー」という印象を持ちました。
マーシーさんの跳ねるドラムスやJEFFさんの表拍の4つ弾きから、モータウン・ビートに近いノリも感じました。
しかしCD音源の方を聴くとこれが落ち着いたハート・ウォームなポップスで。
もちろんテンポ自体はLIVEと同じはずなのに、じっくりとメロディーを聴き入るタイプの歌、作曲者のKAZUさんの繊細な魅力が強く出たテイクだと思いました。

ここまで印象が違うのは何故か・・・アレンジや演奏面もあるけれど、一番はピーさんのヴォーカルではないでしょうか。
CDでのピーさんは、優しいメロディーを丁寧に歌っている印象。それが四谷のLIVEでは、アンコール1曲目ということでピーさんのテンションが相当上がっていたことも含まれるのでしょうが、とにかく「我を忘れ、身を猛り、すべてを晒す」ような歌いっぷりに圧倒されたのです。
既にCDで曲を知っていたお客さんも、「えっ、こんなに激しい歌だったっけ?」と驚かれたのではないですか?

ピーさんはステージでこの曲を歌いながら、あんなにも無心に、懸命に、何を伝えたかったのでしょう・・・。
ここからは僕の勝手な推測です。

この日のMCと他セトリ選曲でピーさんからいくつかのヒントが示されていたように思います。
まずは、某国会議員を穏やかな口調ながらも一喝したシーンが思い出されます。

「ロシアと戦争?おじいさんの時だけでもうたくさんだ」

とピーさんは言いました。
ピーさんのおじいさんはロシア出征を経験し、すんでのところで一命をとりとめたのだそうです。
「その時命を落としていたら、(ピーさんの)親父は生まれていない」
と。
またそのお父さんも先の大戦に出征、被弾して除隊となっていなければ南方にやられておそらく戦死していたであろう、そうなっていたらピーさん自身この世にはいないと。
そして
「子供を戦争に行かせるようなことはしたくない」
とピーさんは静かに言ったのです。

また今回のセットリストは「タイガース多め」で、久々に生体感となるいくつかの名曲が披露されました。
「落葉の物語」「割れた地球」「誓いの明日」などと共に「生命のカンタータ」が採り上げられたのはファンにとって嬉しいサプライズでしたが、では何故ピーさんは今、この曲を歌おうと思ったのか・・・。

今年の3月11日、ピーさんの息子さんが誕生されているんですよね。

ステージで躍動するピーさんは、もちろんお客さんに向けて「君は僕のすべて」だと歌ってくれているのだけど、表現者として、演者として「世の子供達」にそのシャウト、メッセージを捧げようと歌っているんじゃないかと僕は感じました。

子に捧げる親の思い・・・作詞の時点でそんなコンセプトがあったかどうかは分かりません(もしあったとしても、リリース時期から考えて息子さんが産まれる前の時点での作詞ではあったでしょう)。
ただ、歌詞カードに添えられたピーさんの解説によれば(ピーさんのCDにはいつも簡単な解説が記してあるのが嬉しい!)、「君は僕のすべて」はピーさんとしては初めての「曲先」の作詞作業だったそうです。
ピーさんはLIVEで選曲した中華ポップスに新たな日本語詞を載せる、ということをずっと続けていますから、オリジナル曲での初めての曲先作詞も違和感は無かったでしょうが、ジュリーが数年前に語ったように「メロディーが先にあった方がシリアスな詞のテーマを載せやすい」と言われますし、ピーさんが「生命の誕生」を曲先の作詞題材として採り上げた、と考えるのはタイミング的にも不思議ではありません。

そのコンセプトがステージで一気に開放された・・・僕はそんなふうに想像していますが、いかがでしょうか。

最後に、8日のステージについて少しだけ。

12.8 四谷区民ホール セットリスト

1. GS陽気なロックンロール

2. シー・シー・シー
3. シーサイド・バウンド
4. 勝手にしやがれ
5. エメラルドの伝説
6. YOUNG MAN(Y.M.C.A.)
7. 吻別(キスして別れた夜)
8. 心太軟(君の心優しすぎ)
9. スタンド・バイ・ミー
10. サマータイム
11. マイ・ウェイ
12. 都会
13. 生命のカンタータ
14. 誓いの明日
15. 落葉の物語
16. 君だけに愛を
17. Sylvie My Love(銀河のロマンス)
18. 割れた地球
19. 美しき愛の掟
20. 怒りの鐘を鳴らせ
21. Auld Lang Syne~蛍の光
22. ラヴ・ラヴ・ラヴ
~アンコール~
23. 君は僕のすべて
24. 色つきの女でいてくれよ

(今年はパンフが無いので、僕の自力では中華ポップスのタイトルが分からずセットリスト全曲の明記は厳しかったと思います。纏めてメールにて教えてくださったピーファンの先輩に感謝!)

例年よりタイガース・ナンバー多めの構成。
昨年に引き続き同窓会期のヒット曲「色つきの女でいてくれよ」が大トリで、ピーさんオリジナルの振付もすっかり定着しました。
4曲目の「勝手にしやがれ」は、あの「勝手にしやがれ」です(笑)。ピーさんドラム叩き語り!

今年もヴァラエティーに富んだ楽しいステージでした。
各メンバーのパフォーマンスで特に印象に残ったのは

・ピーさん
ヴォーカルについては先述の「君は僕のすべて」。これに尽きます。
ドラムスはやはり「割れた地球」。元々そういうアレンジとは知っていても、あのスネアのスリリングな変則打点は生で聴いてこその迫力。オリジナルとは違う1拍目の頭打ちも時折飛び出しました。
あと・・・この曲は特にドラムの音それ自体がデカい!
ちなみにバンド仲間の友人の話では「ドラマーにとって、音がデカいというのは最高の褒め言葉」なのだそうですよ。
もう1曲挙げるなら「誓いの明日」。
こちらは激しさよりも「細やかでテクニカルなドラムス」という印象でした。曲後半のソロの安定感は、71年タイガース・ヴァージョンでの狂おしい乱打と比較すると感慨深いものがあります。いずれもピーさんの本質で、どちらが優れているとは言えませんが、楽曲コンセプトに合っているのは現在の演奏ではないでしょうか。

・JEFFさん
「美しき愛の掟」と迷いますが、今回は選曲のサプライズ感も併せ「生命のカンタータ」を挙げたいです。
この曲のベースは「生き物のように動き回る」と言われたビートルズ「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」でのポール・マッカートニーのプレイへのオマージュ・アレンジで、僕の大好物。
JEFFさんは見事再現してくれただけでなく、サリーさんの低音コーラス・パートまで担当する見せ場の1曲となりました。

・NELOさん
今や「タイガース・ナンバーのギターを弾かせたらこの世代で右に出る者なし!」というくらいNELOさんのギターはタイガース・サウンドに馴染んだ感があります。
ギターはどの曲も素晴らしかったのですが、加えて特記したいのが「怒りの鐘を鳴らせ」でのリード・ヴォーカル。昨年まではこの曲、ずっとJEFFさんが歌っていたんじゃなかったでしたっけ?
NELOさんの持ち歌としてセットリスト常連だった二十二世紀バンド版「ハートブレイカー」が今年の四谷公演では無く、「短調のハードなナンバー」繋がりということで、改めてNELOさんにこの曲が託されたのでしょうか。

・はなさん
笑顔のオールラウンダーとして今年も大活躍。僕が強く惹かれたのは「サマータイム」のオルガンです。
この曲って、普通ならジャズの雰囲気を残してカバーされるところ、二十二世紀バンドのヴァージョンは70年代ロック・テイストで、まずアレンジが新鮮。
その中でもまるでキース・エマーソンのような音色とフレーズで縦横無尽に走り回るはなさんのソロ・・・個人的にはこの日の二十二世紀バンドの演奏で最も感動させられたプレイです。

・マーシーさん
今回僕は2列目の良席を授かりましたが(ピーファンの先輩が一緒に申し込んでくださいました)、ピーさんがドラムスを叩く曲ではマーシーさんの立ち位置が死角となりました。昨年も披露されとても気に入った「心太軟」でのイントロのマラカスも、音だけ聴こえている状況。
ドラムセットに座っての演奏では、レスリー・ヴァージョンの「銀河のロマンス」が素敵でした。昨年以上に素晴らしかったと思います。

・Kenyaさん
後半のタイガース・コーナーから登場し、ギター・プレイ以外でもお客さんのスタンディングをリードするなど、今年の四谷も「飛び入りゲスト」ながら重要な役割を果たしてくれました。
大トリ「色つきの女でいてくれよ」のソロは今年もNELOさんではなくKenyaさん。ゴキゲンな演奏でした。


MCでは、来年の公演も約束してくれたピーさん。
僕にとって二十二世紀バンドのLIVE参加はすっかり年の瀬恒例の行事となっていますから嬉しい告知です。
あと、来年は「明月荘ブルース」(だったかな?)という新曲のリリースがあるそうです。もう音は出来上がっていてこれから歌入れなのだとか。
こちらも楽しみ・・・今度は音源をゲットしてからLIVEに臨みたいと思っています。

昨年も書いたように、二十二世紀バンドのLIVEはタイガース・ファンの皆様に自信を持ってお勧めできる楽しいステージです。
まだ参加されたことの無い方、来年は是非会場でお会いしましょう!

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2019年12月 3日 (火)

沢田研二 「君をのせて」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1971


Myboatforyou 

1. 君をのせて

2. 恋から愛へ

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大変ご無沙汰しております。
長い間コメントのお返事も遅れてしまい、
本当に申し訳ありませんでした。

その間ジュリーは全国ツアー
『SHOUT!』を見事完走。オーラスのフォーラムではお客さんも参加して楽しいレコーディングも催されたとか?
立ち会えたみなさまが羨ましい限りです。

さて不肖DYNAMITE
、勤務先の本社移転が無事終わったとは言えまだまだ忙しい日々ではあるのですが、ブログに向かう余裕はどうにか戻ってまいりました。
僕にとっては(きっと多くのジュリーフ
ァンにとっても)大切な日付である本日、12月3日の『ジュリー祭り』記念日(早いものでもう11周年ですか~。ちなみに個人的に今年は結婚10周年の記念日だったりもします)にブログ復帰したいと思います!

毎年この日は、常々宝物のように思っている『ジュリー祭り』
セットリストの中から記事お題を選ぶことにしていて、鉄人バンドのインスト2曲も含めたセットリスト82曲についてはジュリー70歳の誕生日に全曲の記事を書き終えることができましたので、昨年からは「改めて2度目の記事を書く」ということをやっています。

今回は「君をのせて」を選びました。
と言うのは、なにせ今年の目まぐるしかった
日々・・・ブログも長期に渡り放置状態となり、初日の東京国際フォーラム、7月の守山、9月の八王子と『SHOUT!』ツアーに3度参加するも結局LIVEレポは書けずじまい。この機に今年のツアーを振り返りたいという思いもあって、『SHOUT!』ツアー・セットリスト本割トリで歌われたこの名曲に再び挑ませて頂こうというわけです。
これまでの
拙ブログお馴染みの大長文とはいかず短めの記事となりますが、どうぞよろしくおつき合いください。

僕は『ジュリー祭り』で本格ジュリー堕ちを果たした
後、裕也さんとのジョイント『きめてやる今夜』を除くすべてのツアーに参加してきました。その中で、ツアー途中にこれほど大きく演奏スタイルが変化した楽曲は他に記憶が無い・・・それが今年の「君をのせて」。
しかもギター1本体制での出来事です
からね。今日は是非その点を文章記録として残しておきたいです。

まず初日フォーラム。
柴山さん
の伴奏は指弾きでした。間奏ソロは親指で低音部を、高音部はひとさし指、中指、薬指を駆使し、掌で弦を包むような奏法で「1人ツイン・リード」を披露してくれたのです
この奏法は、下山さん不在となった後に「いくつかの場面」のソロでも採用されたこと
があって、「そこまで1人でやってしまうのか!」と驚かされたものでした。それが今年の「君をのせて」で再現されたのですね。

ところが次参加の守山公演ではガラリ一変

ピック弾きで、ソロについては単音。これはバンド時代スタイルのギター、ピアノ、
ストリングスの各パートを網羅したヴァリエーションです。
それだけでも凄まじいのに
、さらに驚嘆したのは歌メロ部のバッキングでした。
コード・アルペジオと言うより「
フレーズ・アルペジオ」とでも表現すればよいのでしょうか・・・ギター・アルペジオというのは普通縦の動きですが、ここでは左右の横移動が肝。
柴山さんはこの短期間で、ジュリ
ーが歌うメロディーとは別の裏メロを考案していました。1小節1拍ごとに「3連・4分音符・3連・4分音符」が基本スタイルで、「君をのせて」のシンコペーション・メロディーとガッチリ噛み合っています。
冒頭で言うと、「風に~♪」の「に」が小節の頭です
からそこで3連。「むかい~♪」の「むか」でジュリーのヴォーカルとぶつからないように4分音符で音を伸ばし、「い」で再び3連という・・・素晴らしいアレンジ構成力!

初日から7月の守山までの間、いつこのように演奏を変化させたのかはまだ
分かっていませんが、ピック弾きへの変更は「伴奏の輪郭をハッキリさせた方が歌っていてしっくりくる」というジュリーのサジェスチョンかなぁと僕などは想像しています。
そこで
単に弾き方だけでなく構成までガラリと変えてきた柴山さん、「さすが!」のひと言ですね。

・・・と、ここまで演奏のことばかり書いてきましたが、今回『SHOUT』ツアー・セットリストから個人的に「この1曲」ということで「君をのせて」を採り上げたのは、やっぱり(初日の段階から)昨年亡くなられた先輩のことが思い出されてならない歌だったから。
旅立たれる3ケ月ほど前に緩和病棟にお見舞いに行った時「私を『songs』ヴァージョンの「君をのせて」で送ってね」と仰られたあの日のことを今でも鮮明に覚えていますし、その曲をいざジュリーの生歌で体感すると、悲しみだったり暖かみだったり、いろんな感情が押し寄せてくるのです。
ジュリーが先輩を送ってくれている気がしてね・・・。

思えば、「君をのせて」がジュリーにとってもファンにとってもこれほど大切な1曲となったのは、一体いつ頃からなのでしょうか?
僕は後追いのファンですから、油断すると「君をのせて」を「誰もが知るジュリーの大ヒット・シングル」と書いてしまいそうになります。でも実際はヒットと言うほどヒットしていなくて。『ROYAL STRAIGHT FLUSH』の選からも漏れているくらいですし。
しかも、かつてジュリー自身が「あまり好きな曲じゃない」というようなことも言っていたらしいですね。
シングル盤のB面に配されたジュリー自作の「恋から愛へ」がコード進行やリズム展開細部に至るまで凝りに凝った作品であることを考えると、ジュリーはその頃「自分の歌は自分で作りたい」との希望があり、そんな思いからの発言だったかもしれません。

一方で「君をのせて」をリリース当時から絶賛派だったのが加瀬さん。
「ああああ~♪」というところが実に沢田らしくてイイ!」
とは我等が加瀬さん、さすがの慧眼ですが
「それ以来私は、あ~あ♪と歌う曲が増えました」
と、ジュリーが面白おかしくMCで語ってくれたのは、いつのツアーだったかな。

とにかく今では「君をのせて」はジュリーもファンも双方が大事にしている「知る人ぞ知るソロ・デビュー・シングルにして不朽の名曲」となりました。

以前書いている通り、この歌には普遍性があります。
誰の胸にも覚えがある青春の情愛。それを久世さんのように「男同士の歌」と見るのももちろんアリです。
男女限らず、心通った同姓の友人と実際に遠慮なく「肩と肩をぶつけながら」歩くというのは、まぁ20代まででしょう。大人になってしまえば、そうした気持ちはあってもやっかいな「分別」が邪魔をしますからね。
ジュリーの「君をのせて」はその分別を取っ払ってくれます。だから、「大人になってから」の方がよりこの歌への愛情が増すんじゃないのかなぁ。ジュリー自身にとってもそうじゃないのかなぁ?

ジュリーはもしかしたら今年「君をのせて」を歌いながら、ショーケンと一緒に仕事をしていた頃を思い出すことがあったかもしれませんね。


さて、ひとまずブログ復帰は果たしましたが、この1年で勤務先の人員がかなり減ったこともあり・・・今までのように毎日帰宅後じっくり下書きを積み重ねていったり、耳だけでは採譜しきれない箇所を楽器と合わせて検証したり、お題に合ったオマケ画像をあれこれ探して選別するなどの時間がありません。
今週末に迫った瞳みのる&二十二世紀バンドのLIVEや、チケット到着が待ち遠しい年明けのジュリー正月LIVE『名福東阪阪東・寡黙なROCKER』についても、全セトリ網羅の長文レポではなく、今日のような「この1曲」がお題の簡単な振り返り記事にするつもりです。
あらかじめ、よろしくお願い申し上げます。

そうそう、ジュリーの正月LIVE参加会場は珍しく締切ギリギリまで悩んだ末に、どうにか早退できそうな金曜日の東京国際フォーラムに決めました。
オーラスのNHKホールは休日だけど用事ありで断念。日帰りで初日名古屋参加を最後の最後まで考えたんですけど、僕はこの日が正月休みのラスト日で、やはり翌日仕事初めというのがね・・・絶対休めないし万一のことがあってはいけませんから。
2011年『BALLAD AND ROCK'N ROLL』以来となるツアー初日不参加、ネタバレ我慢決定です。
忙しいぶん、我慢はできるかな~。

それでは次回は瞳みのる&二十二世紀バンドLIVE後の更新です。
僕は今年ここまでジュリー以外のLIVEには一切行けていないので、「バンドサウンドのステージ」を体感すること自体が昨年の四谷公演以来。
楽曲お題はもちろんセトリを体感してから決めます。
ピーファンの先輩方とお会いするのも本当に久しぶり・・・楽しみです!

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