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2019年7月 4日 (木)

ザ・タイガース 「風は知らない」

original released on 1969
single『美しき愛の掟』B面

Utukusikiainookite 
1. 美しき愛の掟
2. 風は知らない

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7月です。早いもので今年ももう半分が過ぎました。

今日7月4日は、昨年天国へと旅立たれたJ先輩、真樹さんの命日です。
亡くなられた2日後の6日がジュリー古稀ツアーの初日・武道館公演で、お通夜と重なりました。翌7日の告別式に参列、そこでBGMとして流れていたのが、真樹さんが最後の入院の際に緩和病棟で愛聴されていたという厳選のタイガース・ナンバー数曲。その中の1曲「風は知らない」をジュリーは古稀ツアーで歌ってくれたのでした。
武道館初日のステージで「風は知らない」を聴き、「来年の真樹さんの一周忌にはこの曲の記事を書こう」と僕は決めていたわけですが・・・それにしてももう1年経つのか、早いなぁというのが今の素直な気持ちです。

でも、感傷的なことを書くのはここまでにします。
今日も一気書きの記事文量にはなりますが、少しでもタイガースのことをたくさん書いた方が真樹さんも喜んでくださると思うので・・・。

「風は知らない」については2010年の12月3日に一度記事を書いているんですけど、その時は『ジュリー祭り』記念日にあやかって、オリジナルとはアレンジを違えた2008年のツアー・ヴァージョンをメインに考察しました。
今日は正真正銘・ザ・タイガースのオリジナル・ヴァージョンについて書くことにします。
よろしくお願い申し上げます。

ジュリーがメモリアル・イヤー「還暦の年も古稀の年にも歌った」という曲は全部で10曲。
いずれもジュリーにとって重要なナンバーなんだろうなぁと思いますが、その中でタイガースの歌は「風は知らない」唯1曲なんですよね。

2008年、2018年それぞれでアレンジも大胆に変えており、現在進行形のジュリーがその都度思い入れを以って新鮮に歌っていることが分かります。
ただ、『ジュリー祭り』も『OLD GUYS ROCK』も僕は生で観ることができ記憶も鮮明に残っているその一方、やはりこの曲はオリジナルのアレンジが一番良い、とも思っています。僕が体感できているツアーで言うと、ピーが復帰した2011~12年の老虎ツアーがオリジナルに近かったですね。

「ザ・タイガースで特に好きな曲」と言うと僕にとっては「風は知らない」「はだしで」「怒りの鐘を鳴らせ」が不動のトップ3です。
リアルタイムの先輩方と違うのは、「後期」に偏っていることでしょうか(いつもお話する先輩方は、特に好きな歌としてやはり前期の曲を挙げることが多いです)。
でも、「風は知らない」を単純に「後期」の括りとするのは乱暴ですね。トッポ在籍時を「前期」とするなら、これはそのラスト・ナンバー(B面)なのですから。
先輩方にも人気が高い1曲と認識しています。

ちなみに『シングルA面「美しき愛の掟」の方はコーラス・トラックをシローを含めた新メンバーで差し替えたけど、「風は知らない」はトッポのテイクがそのまま残った』というのは有名な話ですが、僕には「美しき愛の掟」の間奏ソロもトッポのテイクなのでは?と今は思っています。2013年の完全再結成時にトッポが弾いたギターを生で聴くとね・・・そうとしか聴こえない。
タイガースって、コーラス・テイクについてはクレジットがハッキリしているけど、演奏テイクは(タイガース自身の演奏かどうかも含めて)曖昧な記述が多いというのも特徴的です。それも時代なのでしょうかねぇ。

さて、このまったくタイプの違うシングル両面をジュリーが見事異なるニュアンスで歌いきっているのはもう天性としか言いようがありません。
しかし当時ジュリーはただひたすら「一生懸命に歌う」ことに徹し、「こういう表現がしたい」「こんな思いを届けたい」とまでは考えていないように思えます。
その点は、『ジュリー祭り』はじめ近年のLIVEでは違ってきているでしょう。

例えば昨年の古稀ツアー、歌詞で言えば、自らを「風」に置き換えた時、ジュリーは「果てしない大きな世界の中の、本当に小さな、ささやかな存在」として、だからこそ愛すべき生命を歌っていると感じます。
「知らないことがある」というのはこれから知る喜びがあるということでもあるし、自分を大きな存在、強い存在であると無理に誇るよりも、「広いこの世界で知らないことがたくさんある、それでもそのまま、自然に世界の片隅で生きている」と心得る考え方の方が僕の性には合っています。ことさら「強さ」をふりかざそうとする我が国も含めた今の世界各国のpolitician達に違和感を覚えるのはきっとジュリーもそうだろう・・・「風は知らない」の詞は今ならそんな解釈もできそうだ、と僕などは思っているのですがいかがでしょうか。

まぁでもそんなことを考えなくても、ただひたすら素晴らしい歌。
タイガースのオリジナル・ヴァージョンを聴けばたちまちその基本に僕のような者でも舞い戻ることができます。
岩谷時子さんの詞で個人的に一番好きなのは

淋しさに 夜更けも めざめ  ながら ♪
   B♭     Am7    Dm      Gm7  C   F

作詞家さんであれば「風」を擬人化することは誰でも容易いのでしょうけど、この表現はなかなか出てこないんじゃないか・・・正に天才肌。
夜眠る時に窓の外から風の音が聞こえてきたりすると、いつも思い出す1節です。

もちろん村井邦彦さんの作曲も素晴らしい!
タイガースの「音楽統括」は大きく3つの時期・・・すぎやま先生時代、村井さん時代、クニ河内さん時代に分けられると思いますが、シングルで言うと「美しき愛の掟/風は知らない」から本格的に村井さん時代に突入した感じですね。

多岐に渡る村井さんの音作りの中で、僕は特に長調の朴訥な作品がメロディー、アレンジともに好みで、その双璧が「仙人峠」(映画『悪魔の手毬唄』挿入曲)と、この「風は知らない」です。

演奏ではアコギの「跳ねる」ストロークが特徴。
「風は知らない」は確かに時代背景もあってフォーキーな曲とも言えるんですけど、アコギの独特のストローク(「雲の波間をさまよう♪」の箇所が分かり易いかと思います)が「カントリー・タッチ」へと曲全体のイメージを昇華させているように思うのです。

哀愁はあるけれど押しつけがましくなく、カラッとして開放的。
ジュリーもそう感じとったのか、大げさにならず訥々と歌っているのが良いんですよね。
村井さんとジュリーのコンビ、ソロ以降ももっと頻繁に実現すればよかったのになぁと思ってしまいます。

コード進行面では、曲中「ここぞ!」というところに配置される「A」(もしくは「A7」)が肝でしょう。
そこだけ伴奏和音の「ド」の音がシャープします。トッポのコーラス・メロディーなどにもそれは反映されて、グッとさせられます。

また、この曲のイントロのアルペジオがお好きな先輩も多いと思いますが、アコギが「Gm→Am→B♭→Am」とハッキリした音階移動であるにも関わらず、ぼんやりとした浮遊感がありますよね。
これはベース(残念ながら指弾きっぽいのでサリーではなさそう)がずっと「C」を弾いているから。
「風は知らない」のキーはヘ長調(F)で、「C」はドミナント・コードにあたります。華麗なアコギの独立フレーズの裏で「さぁ、もうすぐ歌が始まりますよ」というドミナントの役目をベースが一手に引き受けているという・・・とても緻密なアレンジなのです。

このように、「風は知らない」は詞曲アレンジ、ヴォーカル、コーラス
ともに「爽やか」な歌だと思います。
深読みすれば確かに「悲しい運命」を歌っているようにも感じますし、実際昨年のツアー初日に生で聴いた時には、個人的な思いで、まるでジュリーが真樹さんを追悼してくれているような気がして感傷的にもなりました。
それに、リアルタイムでシングルを買いもとめた先輩方はこの詞をトッポの脱退と重ねてしまったかもしれない、とも想像します。

でも本質的には爽快な名曲、本当に優れた楽曲。
ジュリーがまた大きな節目の年に採り上げてくれることを期待したいですね。


それでは、オマケです!
・・・と言うか今日は先輩方に「お尋ね」かな。
以下は、以前ピーファンの先輩にお借りしました『セブンティーン』の付録ソノシートなのですが・・・。

Seventeen6901
Seventeen6903

さすがに僕はソノシートまでは聴けていないんですよ。
シローが加入し再スタートを切った新生タイガースが、当時ど
んなことを語っていたのか・・・盤面に「さよならトッポ」とあるのがとても気になります。
実際これをお聞きしたことのある先輩方に、どんな内容だったのかを教えて頂きたいのです・・・。


最後になりましたが、この数日僕の故郷、鹿児島を記録的な大雨が襲い被害も出ています。
僕の実家は、全域に避難指示が出ていた霧島市の隼人町にあります。父親の話では、付近で通行止めとなった道があるとか。
幼い頃からよく知る懐かしい通学路の原風景達・・・特に天降川に接した低い土地や、のどかな山間での今後の被害が心配です。

これ以上何事も起こらないよう、ただ祈るしかありません。どうぞ無事でありますように・・・。


さて次の本館更新は未定ですが、19日の守山公演にカミさんの実家への帰省も兼ねて参加しますので、side-Bの方に初日のフォーラム公演と併せた形でレポが書けたらよいな、と考えています。

そうそう・・・僕は現在、多忙に加え五十肩の症状が長引き苦しんでいます(汗)。
守山公演はなかなかの良席を授かりましたが、この肩の状態では”おいっちに体操”は無理だなぁ・・・。
みなさまもお身体には充分お気をつけください。

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コメント

DY様 こんばんは。

タイガースの中で一番好きな曲です。
レコードジャケットには写っていないトッポが、風になってさまよっているようでした。
前期と後期が裏表になっていて、丸い地球では互いに背を向けたら世界で一番遠くなる・・・なんて、想ったり。切なさが苦く懐かしい時代でした。

投稿: nekomodoki | 2019年7月 9日 (火) 18時10分

>Gm→Am→F→Am
イントロのコードの3つ目はB♭あたりかと思いますが…

投稿: JC | 2019年8月 2日 (金) 18時04分

お返事が大変遅れ、本当に申し訳ありません。

nekomodoki様

前期と後期が裏表・・・楽曲そしてジャケットと、リアルタイムのファンのみなさまは色々な思いを抱えながら耳にしたシングル盤だったのでしょうね。何より『ヒューマン・ルネッサンス』の後だけに、というのもあるのかなぁ、と想像いたします。

八王子公演では久しぶりに少しお話することができ楽しかったです。
また頑張りたいと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

JC様

仰る通り「B♭」です(僕はギター1本で歌う時は「B♭6」でアルペジオを弾きます)。
単純な表記ミスでした。そもそも「F」はこの曲のトニックですからねぇ。

ご指摘ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: DYNAMITE | 2019年12月 2日 (月) 09時18分

はじめまして
ミルキーと申します。よろしくお願いします m(_ _)m
私は TEEN LOOK派でしたが、同様のシートがありました。
盤面「新生タイガースからあなたへ ぼくたち5人のメッセージ」製作:ティーンルック編集部 協力:明治チョコレート
直径13cm、5人のお喋り4分10秒。どちらかというとJulieが関西弁でMC役。シロー君が彼らしくホワホワと話してます。
TGに入ったってカンジせぇへん。抵抗がなかった。最初二日間寝られへんかった。
Peeも 入れたって気がしない__と。

その後に突然トッポの“つぶやき”が33秒。。
TGには夢を持ってた。素晴らしいグループ。客観的に見て一人一人良いし、沢田にしたって世間で言うように10年に一人のスターになれる・・・で、cut off でした。

封筒には〈トッポのお別れのことば入り〉となってますが、ちょっとニュアンス違いますかね。。

投稿: ミルキー | 2019年12月24日 (火) 15時54分

ミルキー様

はじめまして。
コメントどうもありがとうございます!
お返事遅れましてすみません。

ソノシートは昭和のよき時代のお宝ですね。
僕はタイガース世代でこそありませんが、男の子向けの雑誌にもソノシートがついていたことがありました。もちろんタイガースとかではなく、ミラーマンが戦ってる音声、とかでしたが。

当時はトッポもシローも色々な思いがあったでしょうね・・・ただやはり、「送る」そして「迎える」側となった残り4人のメンバーの心は、より大きく揺れ動いていたんだろうなぁと想像しました。

また遊びにいらしてくださいね。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます!

投稿: DYNAMITE | 2019年12月27日 (金) 17時41分

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