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2019年4月 7日 (日)

沢田研二 「根腐れpolitician」

from『SHOUT!』、2019

Shout 

1. 根腐れpolitician
2. SHOUT!
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4月です。
3日くらいまで寒かったですが、ここへきて暖かくなってきましたね。

3月は裕也さん、ショーケンとジュリーに縁深いレジェンド2人の訃報が相次ぎました。1月のジュリー武道館公演を共にした友人のNさんはショーケンの大ファンで、彼がYOKO君と組んでいるコピー曲専門の2人ギター・ユニット「GENTLE-2」ではこの週末の練習課題曲にショーケンの「ハロー マイ ジェラシー」を採り上げると聞いています。
平成の時代も残り僅かというタイミングで悲しいニュースがあった3月・・・何年経っても思い出すことでしょう。

そんな中僕は、遅れに遅れましたが今年も3月11日にリリースされたジュリーの新譜『SHOUT!』収録2曲の考察記事に取り組んでまいります。
バッタバタの日々ですので例年のような大長文は書けませんが、中長文?くらいな感じでよろしくおつき合いくださいませ。
今日はCD1曲目「根腐れpolitician」です。頑張ります。


①『新しい想い出2019』?

5月からの新たな元号が「令和」と決まりました。世間の反応、意見は様々のようですが、個人的には好印象、気に入りました。
と言うより僕の場合は「明治」「大正」「昭和」「平成」・・・全部好き。基本「戦国武将好き=元号フェチ」というのがあって、永禄とか元亀とか漢字二文字で時代を表す感覚に惹かれるのです。
あと、平成に続いて今回も元号の決定が「書体」で発表されたじゃないですか。「令和」ですと例えば「令」の2画目の「はらい」の太さや、「和」の「へん」が長くて「つくり」が短い独特の縦バランスなど、印刷活字には絶対に無い「人の手で書かれた」生命力のある書体に惚れ惚れしてしまうという・・・。
まぁ僕は特殊な嗜好の持ち主なのかな。

ただし、「令和」がどんな時代になってゆくのかは今生きている僕ら次第。そして、これほど「平和」「平穏」をすべての人々が切に願いつつ迎えた新時代の節目も古来そうそう無かったのだろう、とも思っています。
何故こんな話をしているのかと言うと、今年の新譜『SHOUT!』に「平成を振り返り、新時代を見据えた」ジュリーのコンセプトを強く感じたからです。

ジュリーは時代に振り回されたり阿ったりすることなく自身の志と矜持を以って歌ってきた歌手ですが、それ故それぞれの時代の「急所」に敏感であるとも言えます。
かつて「21世紀」の新時代を迎えてリリースされた『新しい想い出2001』。シンプルなサウンドの中にジュリーのパーソナルな言葉と心境が押し出されたアルバムという印象があります。後追いファンの感覚では、今年の『SHOUT!』がこの名盤とスタンスを重ねるように思えるのですがいかがでしょうか。
1曲目「根腐れpolitician」では社会全体の、2曲目「SHOUT!」ではジュリー個人にとっての平成の急所を抉り、「叫び」をもって新時代(令和)に挑む・・・CDのタイトルチューンは2曲目ですが、「根腐れpolitician」の方もまたジュリー心からの”「SHOUT」ナンバー”であることは明白です。

ジュリー自身は古稀ツアーを機に昨年から「ギター1本体制」による歌人生の新時代をスタートさせています。収録2曲にトータル・コンセプトを持つ今回の新譜は、その伸びしろを掲げて新たな時代を読むジュリーのメッセージ、と僕は捉えました。
では、ジュリーが振り返った「平成」が、社会全体においてはどんな時代であったか、そして「令和」にどう臨むのか・・・そのあたりを「根腐れpolitician」のジュリーの詞から紐解いていきましょう。


②人の「性根」が問われる時代

徒党を確認した上で弱者に寄ってたかる、というのは結局それをする人の性根なのだろう、といった感じのことをブログに書いたのはいつだったかな。
実は僕は今現在個人的にイヤでもそういうことを考えさせられる、身につまされる状況下にあって、夜中に目が覚めたりもするのだけれど、ジュリーの新曲タイトルが「根腐れpolitician」と知って「そう来たか!」と。

世の中が平和に成る、平穏に成る、と期待した平成という時代は、その平和、平穏をリードして成らしめるべき人達の性根が腐った時代であった、とジュリーは歌います。その通り、特にここ数年本当に酷い状況だと誰もが実感しているでしょう。
近年、為政者や利権を保す者への容赦ないメッセージ・ソングを連発させたジュリー。しかし同じスタイルのようでありながら今年の「根腐れpolitician」の詞はそれらの「直球」とは少し違うと僕は感じています。
政治の不正、危うい世界情勢、自然環境の危機、反原発とテーマが多岐に渡り、良い意味での「乱打」と言うか、思いつくままにフレーズを吐き捨てる七色の変化球。「politician」(かつてのキンクスなどがそうであったように、この単語選択には批判的な意味合いがあるでしょう。日本語なら「政治屋」とでも訳すところでしょうか)と「大衆」を分けるとすれば、そんなやみくもな乱打こそ大衆に成り代わっての「シャウト」かもしれません。
当然被災地への想いというのは変わらずあるし、怒髪天・ジュリーが繰り出すフレーズ(「ペラ野ミクス」が凄過ぎる!)は聴き手に「引っかかり」を与えてくれます。
そんな中でも特に「らしい」フレーズの極めつけは

    E F#  G#   C#   D#  G#
そりゃ御為倒 し  光なんか見えねえ

の「御為倒し」です(漢字で書くあたりがいかにもジュリー!と思いました)。
これはpoliticianへの糾弾のみならず、大衆たる僕ら聴き手それぞれの身にすぐさま跳ね返ってくるフレーズでもあります。
自らが普段「人のため」「みんなのため」と言いつつやっていることがあったとして、しかしそれは本当にそうなのか。極端に言えば、こうしてジュリー・ナンバーの記事を書くことだってそれに当て嵌まるかもしれない。でも、そんなふうに考えると何もできなくなってしまいますよね。

何か志のヒントはないものか、と探ると・・・メロディー2回し目の歌詞中に、これまた「ジュリーらしい」普段は耳慣れぬフレーズが見つかります。

F# G#    B C#      B       F#  G#
   官も   民も 根腐れF.E.O.

細野晴臣さん絡みで「F.O.E.」なら知ってるけど「F.E.O.」なんて聞いたことないぞ、と僕は早速あれこれこのフレーズの意味を調べ、完全に分かったとは言えないまでも何となくジュリーの意図を想像できました。
「F.E.O.」=「醜悪」と読み解くのがよいでしょう。
これも「御為倒し」同様に人の性根の部分を掘り下げ手繰った言葉であり、さらにはジュリーにとってこの「F.E.O.=醜悪」の反語が新譜2曲目「SHOUT!」に登場する「健やか」であると考えられます。
ならば僕らは「醜悪」の逆・・・これから何においてもジュリーが歌う「健やか」つまり健全の志をもって行動し、新時代を迎えねばならない、と。凡庸たる僕個人としてはなかなか難しい課題でもありますが、ブログを書くことひとつとってもそれは常に心がけていきたいものです。

「令和」に引き継がれてしまった近々の社会問題と言えば、この国ではやはり

C#    B  F#     E  B   C#
時代遅 れなのに 原発

ということになりましょう。
福島第一原発事故、その終息はおろか、浄化処理に伴うトリチウム汚染水貯蔵タンクの増設が敷地的な限界に達する、という事態が迫っています。これは来年の東京オリンピック開催の後、すぐにやってきます。
東電の対策は「国の指示待ち」。じゃあ国の判断はどうかと言うと、現時点で原子力規制委員会が明言しているのが「海への放出が現実的かつ唯一の選択肢」。
果たしてそれを「アンダーコントロール」と言い張れるものでしょうか。この問題は近い将来ジュリーが歌にするんじゃないかな、と僕は予想しています。

轟音のギターで歌われる「根腐れpolitician」に僕はニール・ヤングが89年にリリースした「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」の歌詞を想起させられました。
近寄る戦争の跫音、その予感があったのかどうか・・・ニールは醜悪な為政者が人々や自然に与えた大きなダメージを歌い叫び、しかし民衆の諦念は強く否定しました。リリース直前の来日公演では、心無い客からの「○○を歌え!」と代表有名曲を求める声に顔色ひとつ変えず、この最新のメッセージ・ソングを熱唱したと言います。
「フリー・ワールド」、すなわち「自由」な世の中であることはこれから先のジュリーの歌人生においても必要不可欠。ジュリーが自由に「SHOUT」し続けられる健やかな時代であることを、まず僕は「令和」に希望します。

③正真正銘・ギター1本レコーディング!

みなさまから遅れること2週間余、ようやく新譜を手にして(僕は3月28日に池袋タワーレコードにて購入。ちなみにアマゾンで予約していたものはキャンセルせず到着次第YOKO君に引き取って貰うという話になっていますが、未だにウンともスンとも・・・これまでで一番遅れているのではないでしょうか)まずこの1曲目「根腐れpolitician」を聴き終えて深く唸らされたのは、先のジュリー古稀ツアーでその演奏を一手に引き受けてきたギタリス・柴山さんが辿り着いた境地・・・それが早速今回の新譜に反映されていたこと。

昨年のCD『OLD GUYS ROCK』では、もちろんその後のツアーを想定し柴山さんがギター1本で再現し得るアレンジを構築していましたが、どの曲もサブ・トラックとして目立たぬようにもう1本ギターを重ねていました。ところが今年はそれが無い!
ギターの音自体は左右のPANにに分けてミックスされているものの、これはたったひとつの演奏トラックを分離したもの。つまり、レコーディング音源においても柴山さんは今回から「完全ギター1本体制」の領域に踏み込んだのです。個人的には、2010年リリースのCD『涙色の空』1曲目のタイトルチューン「涙色の空」(鉄人バンドの4人がそれぞれ「1人1トラック」を貫き追加トラックを排除したアレンジ)を初めて聴いた時と似た感覚、衝撃でした。
本当にイイ鳴りしてる!このギターはテレキャスじゃないかなぁ。何故なら、パブロック好きには「神」とも言えるテレキャスの名手、”マシンガン・ギター”ウィルコ・ジョンソンの音を思い出させてくれるから。

参照楽曲「Another Man
↑ウィルコが在籍した初期ドクター・フィールグッドの名曲群の中で僕が最も愛するナンバー。
曲のタイプは全然違うけど、ギター・カッティングの音色に注目して「根腐れPolitician」での柴山さんの音(特に「hey Sey」直後のCメロからのカッティング音)と比べてみてください。


さらには作曲の素晴らしさ。武骨にして緻密です。
今年の新譜は2曲入り、うち2曲目「SHOUT!」の方はジュリーの作曲作品ということで、柴山さんは1曲入魂の書き下ろしとなりました。得意とする「1曲内に複数の曲想を組み込む」アイデアが炸裂し、Cメロなんて転調もしていないのにメロディーの感触がガラリと変わります。初聴時はドキッとさせられました。
キーは変イ長調。ただし、五線譜にするならそのまま♭4つの調号の「A♭」表記で間違いないのですが、先のチャプターで少し歌詞抜粋した通り、僕ならこの曲の場合はギターのポジション展開を考慮し「G#」表記としたいところ(嬰ト長調ということですね)。
変イ長調の王道パターンでは登場しない「E」「B」「F#」といった#系のコードが躍動する曲ですから。
Aメロはこうなります。

F# G#    B C#       F# G#     D#  C#
   嘘で  かわし   重ね 固 め

F# G#       B C#     B       F#   C#
   まかり  通す 根腐れpolitician

正にギタリストの作曲作品、という感じの進行です。
当然曲調はゴリゴリのロック。ジュリーと柴山さんの超獣コンビは、古稀を超え喜寿を超え傘寿を超え盤寿(←これは将棋用語だけど)を超え米寿を超え・・・令和の時代もヤンチャしてくれそうですね。


最後に余談ですが、先月ココログさんの大幅なリニューアルがありました。
PCで見る限り以前とブログの見え方は変わっていない様子ですが、スマホだとどうなんでしょう?(←未だにガラケーのDYNAMITE汗)
一方、読者のみなさまからは見えない筆者側の管理画面操作については大きな変化があって、まぁまだ慣れていないだけかもしれないけれど以前の方が使い易かった気がします。
過去記事の中に修正不可能(管理画面上で言語変換してくれない)ものが見つかるなど不具合も多く・・・僕の場合、過去記事の修正は日常茶飯事ですのでこれはとても困ります。
また、複数の画像を記事中にupする際、原寸そのままの添付とサムネイル仕様との併用ができないような・・・この記事も、『SHOUT!』のジャケ写以外にもう1枚、通勤途中の公園で撮った桜の写真をupしたかったのですが結局問題解決できず断念しました。
この調子では先が思いやられる・・・。
ただ心強いのは、同じココログでお気に入りのじゅり風呂さんが多いこと。みなさまと一緒に新しい管理画面にも慣れていければ、と思います。

とりあえず今回、サイドバーのコンテンツ試し斬りということで、5月からの全国ツアー各会場座席表へのリンク一覧『神席たちよ集え』前半ぶんを更新してみました。
スマホから見てもうまく反映されてるのかな・・・?
チケット発送第1弾は22日の週かなぁ、と今から到着が楽しみ。僕はまずツアー初日、なんとしても都合をつけて駆けつけなければ。
全国各地、みなさまの良席ゲットをお祈りしています。

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コメント

DY様こんにちは。
スマホからなのですが、PCモードにならないんです。ココログの変更しなのせいかな?
皆さん改悪だっておっしゃってるような。

今の時代ってみんなが地球を人質にお互いを脅しあっているような危うさを感じます。
まず自分の足下見なきゃいけないだろうとジュリーはいつも訴えて来たんですよね。

投稿: nekomodoki | 2019年4月14日 (日) 09時31分

nekomodoki様

ありがとうございます!

まったく仰る通りです。地球を人質に脅しあう危うさですね。恫喝や呪詛の言葉がpoliticianの口から平然と出てくる時代というのはやはりおかしいですよ。

スマホからだとやっぱり見え方が変わっているのですか・・・。実は今回のリニューアルに伴って、ガラケーから自分のブログを閲覧することができなくなってしまいました。
これまでは仕事の移動中にガラケーからコメントのお返事を投稿することが多かったのですが、それが不可能になりまして。仕方がないので今日は会社のPCからコソコソと(笑)。
そろそろ僕もスマホに替えなきゃ駄目ですかね~。

投稿: DYNAMITE | 2019年4月16日 (火) 17時03分

DY様
 こんばんは。スマホではブックマーク?していたのが見れなくなって、一瞬「ブログ閉鎖?」と心配しましたが無事復旧です。
 お題曲、私はタワーレコードで割と簡単に手に入れDYさんの苦労は経験せずすんで良かったです。途中「若者よ」を彷彿させる箇所があるように思うのは私だけ?
 ギター1本体制になってから、編成のシンプルさとは裏腹に歌詞における怒りの尖り具合はずいぶん分厚くなっていて痛快!な気もします。震災以来、テーマをかなり限定しているにも関わらずネタは尽きないものです。

PS.リニューアルされてPCではコメント送信前のチェック画面は見やすくなったと思うんですが。

投稿: ねこ仮面 | 2019年4月17日 (水) 18時21分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

僕の場合は多忙もあって、「本気で」ショップを巡ることまではしていなかったんですよね・・・。いくら店頭在庫切れが続出しているとは言っても、銀座まで足を伸ばせば替えることは分かっていたのに。当然ながら今では、何故もっと早く買わなかったのか、と思っています。

「若者よ」もこの曲もビートが縦ノリですからね。似ている部分はありと思いますよ。
歌詞の尖り方もそうですし、ギター1本体制となってジュリーの発声も、柴山さんのギターがどんなふうに弾いているのかも把握し易くなりましたね。

投稿: DYNAMITE | 2019年4月18日 (木) 16時28分

DYNAMITE 様

「そりゃ御為倒し 光なんか見えねえ」のとこが特に好きです。
「見えねえ〜」の「ねえ〜」のジュリーの声、すごい技じゃないですか!?
なんと言ったらいいのか分かりませんが、聴くたび、ひ〜!かっこいい!と思います。
「Caress」の「僕の肌を撫でてくれぇ〜」の「れぇ〜」を思い出しました。
「Caress 」もそこが一番好きなとこです。

投稿: かあさん | 2019年4月19日 (金) 10時55分

かあさん様

ありがとうございます!

確かに「見えねえ~」でのジュリーの発声と言いますか、細かい上げ下げのニュアンスは凄いですね。
このあたりは若い頃から親しんでいる洋楽直系という感じの技です。柴山さん作曲の時点ではもっとシンプルな音階移動だったと想像しますが、ジュリーが詞を載せていく過程で「化けた」箇所のひとつではないでしょうか。

「Caress」はまだ未体感のジュリー・エロックで「いつか聴きたい!」と切望している1曲。今ツアー・セトリ入りを期待しています!

投稿: DYNAMITE | 2019年4月22日 (月) 12時22分

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