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2019年3月

2019年3月29日 (金)

ショーケンよ永遠に

ブログの更新が悲しい訃報続きになっている。
裕也さんが亡くなられてまだ間もないというのに、今度はショーケンが突然旅立ってしまった。

昨夜、池袋タワーレコードでようやくジュリーの新譜を購入、「よし!」という気持ちで遅くに帰宅した途端、信じ難いニュースを伝えられた。
まったく予想だにしていない訃報だった。それもそのはず・・・ブログに頂いたコメントで、「今ショーケンが精力的なライヴ活動に邁進中」と知ったのが本当につい昨年のことなのだ。まるでジュリーのデビュー50周年ツアー・セットリストに呼応するかのように、ショーケンが「自由に歩いて愛して」をステージで歌ったと聞いて、ショーケンも古稀を目前にしてますます元気なのだとばかり思い込んでいた。

僕はGS世代ではなく、ショーケンのことはまず俳優として知った。忘れもしない、公開から数年遅れてテレビ放映が成った映画『八つ墓村』での多治見辰弥役(主演)である。横溝原作以上の凄まじい存在感、気魄漲る熱演だと思った。子供心にではあるが、特別な男が寡黙の中に持つエロスも感じた。
その後、『太陽にほえろ!』のマカロニ刑事を後追いで知り、こちらも夢中になった。
少年時代を思い起こすと、世代を超えてショーケンはとにかく男子に人気があったと思う。特に、ちょっとアウトロー的で腕っぷしの強い友人達・・・例えば以前「青春藪ん中」の考察記事中で書いた高校時代の友人もショーケンの大ファンだった。
考えるに、あの美貌で隠れてしまっているけれど、若き日のジュリーもそんなタイプの「男子」だっただろう。ショーケンのことが好きだったに違いないのだ。

僕はPYGやテンプターズのことは10数年前までほとんど知らずにいた。だから、歌手としてのショーケンを深く知ったのはジュリーファンになって以降のことだ。
ジュリーは先の古稀ツアー『OLD GUYS ROCK』で「お前なら」を歌った。この曲がショーケンのことを歌っているのではないか、というのは個人的解釈に過ぎないのだが、それにしてもジュリーはショーケンの病気のことを知っていたのだろうか。
いや、知らずながらに何か気脈が通じてのエールだったのだ、とそんな気がする。

年下のショーケンに旅立たれたジュリーの胸中を思わずにいられない。
それに、世代の違う僕ですらこれほどのショックを受けているのだから、リアルタイム世代の先輩方の驚き悲しみはいかばかりか。

今はただ安らかに、と祈るよりない。合掌。


Withshoken1 

Withshoken2 

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2019年3月19日 (火)

沢田研二 「叫び」

from『比叡山フリーコンサート 時の過ぎゆくままに』

Freeconcertaimthiei

~opening~
1. ビー・マイ・ブラザー、ビー・マイ・フレンド
2. 夢のつづき
3. グッドナイト・ウィーン
4. 夜の都会(ナイト・タイム)
5. 恋のジューク・ボックス
6. 十代のロックンロール
7. キャンディー
8. トゥ・ラヴ・サムバディ
9. 時の過ぎゆくままに
10. お前は魔法使い
11. メドレー
 a.グループバンド
 b.ムーヴ・オーバー
 c.ジーン・ジニー
 d.ユー・ガッタ・ムーヴ
 e.シー・シー・ライダー
12. 美し過ぎて
13. 花・太陽・雨
14. 自由に歩いて愛して
15. ホワッド・アイ・セイ
16. 聖者の行進
17. 気になるお前
18. 悲しい戦い
19. 残された時間
20. 叫び

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インフォ来ましたね!
今年も必ず「祈り歌」の新譜リリースがある。そしてジュリーは「作るからには3.11リリースでないと意味がない」・・・そう考えているのではないかと期待しつつ、さすがに日が迫り「間に合わないのかなぁ?」と心配していただけに嬉しい新譜情報の解禁でした。

そこで今日は、ジュリー作詞・作曲の70年代ナンバー「叫び」をお題に借りまして、まもなく発売される新譜の内容を予想してみたいと思います。
拙ブログ恒例の「全然当たらない予想」パターンにはなりましょうが、今夜はたまたま時間もあり、急遽一気書きの短い記事にておつき合いくださいませ~。


インフォによりますと、今年の新譜は2曲入り。
各トラックの詳細は

1.「根腐れPolitician」
作詞・沢田研二/作曲・柴山和彦

2.「SHOUT!」
作詞・作曲・沢田研二

となっています。
タイトルだけパッと見ると、曲調は2曲ともに武骨なロック・ナンバーを思わせます。
少なくとも柴山さん作曲の「根腐れPolitician」はそうでしょう。根拠は「politictian」なる英フレーズの語感です。詞の内容は「一極化」へとひた走る政権の腐敗に向けた痛烈なメッセージかと思いますが、その前の段階・・・ジュリーは80年代以降、自作詞に際し「メロディーに載せた際の語感とフレーズの韻」に拘り続けているように思えますので、柴山さんの作ったキメのフレーズに嵌る単語としての「politician」。ジュリーの作詞動機と最初の作業はそこだったのではないか、と想像しました。
それにしても「根腐れPolitician」とは、かなり「思い切った」タイトル。ジュリーとすれば、もう容赦はならぬ、といったところでしょうか。
ジュリー得意のダブル・ミーニングが鋭く散りばめられたリフ・ロック・ナンバーと予想しておきます。

続いて、5月からの全国ツアー・タイトルともなっている2曲目の「SHOUT」。
こちらは久々にジュリーの「書き下ろし」作曲作品である可能性が高く、それだけで心躍ります。
しかし反面、ジュリーの詞に悲痛を感じさせるタイトルと言えるかもしれません。被災者を含めた「弱者」の声ならぬ「叫び」を歌っているのではないでしょうか。
そして・・・その曲調について僕の予想の振り幅はとても大きいのです。

まず「ロック調」と仮定してみた時、ジュリーにしては珍しいストレートなコード進行と予想します。
キーはホ長調。何故曲のキーまで予想に入れるかと言うと、ジュリーが詞だけでなく作曲においても何らかの「隠しメッセージ」を込めている場合を考えたから。
ホ長調のスリー・コードは「E」「A」「B」。これを使って「A」→「B」→「E」と和音進行させメロディーを載せることができると気がつきました。
「A」→「B」→「E」です。お分かり頂けたでしょうか。
もし詞の内容が特定の人物に向けた弱者達の叫びを代弁し歌ったものだとすれば、コード進行がそのまま歌詞中の二人称を指す手法となり得る・・・今のジュリーなら、そして今の世の中なら、怒髪天・ジュリーがそこまで斬り込んでも不思議はないと思ってしまったのですが、まぁさすがにこれは考え過ぎですか。
予想と言うより妄想かな(汗)。

一方で。
「ホ長調スリー・コードのロック・ナンバー」案はジュリーの「作曲」クレジットの意義を深める予想ではありますけど、それ以上に魅力的な予想が、「SHOUT!」のタイトルでバラードを歌うジュリー(!)というもの。

ここで振り返ってみたいのが、本日のお題に借りた「叫び」。先輩方はよく御存じの、70年代ジュリーの自作(作詞・作曲)曲の中でも特に重要な名曲です。

僕が『比叡山フリー・コンサート』で歌われたこの曲の存在を把握したのは『ジュリー祭り』から数年後でしたが、歌詞の一部については今から15年ほど以前、『ROYAL STRAIGHT FLUSH』3枚のリマスター再発試聴盤を機に僕自身に訪れた「第一次ジュリー堕ち期」(ポリドール期のアルバムを大人買い)に、それとは知らず目にしていたのでした。これです。

Sakebi01


見事に折り目がついてしまって・・・すみません。
それだけ大好きなアルバムで、歌詞カードも読み込んでいるということでどうかひとつ(汗)。


78年リリースのアルバム『今度は、華麗な宴にどうぞ』歌詞カードに記された刺激的な一節。
新規ファンの僕は当時これを、当アルバム製作に寄せて、トップスターの道を行くジュリーが決意を表し書き下したコンセプト・フレーズだと勘違いしました。
『ロックジェット』にジュリー・アルバム解説を連載されたヒロ宗和さんも、その時の僕の解釈とまったく同じことを書いていらっしゃいました。しかしそれは誤りで、これこそが「叫び」からの歌詞引用だったのですね。

「歌を枕に」を文字通り芸能活動とリンクさせ始めたスーパースター・・・良い意味での「虚像」を演ずる阿久=大野時代のジュリーを象徴するにふさわしいキャッチフレーズとしてこの引用は的確とは言え、実際にはそれはさらに若き日の「人間・ジュリー」による本音の言葉であり決意であり、偽らざる心情の吐露でした。
そして、過激とも言える楽曲タイトルや歌詞フレーズからの連想とは真逆、というくらいに「叫び」の曲調は穏やかにスタートします。
ジュリー自身が奏でるギターの説得力。シンプルな演奏に載せて迸る「歌」。それがジュリーの「叫び」。

その後40年以上の年月が経ち・・・近年のジュリーにとって「SHOUT」(叫び)とは、相反しつつも「祈り」とごく近しいフレーズとなっているのではないでしょうか。
例えば2013年リリースのGRACE姉さん作曲「Pray~神の与え賜いし」に載せたジュリーの歌詞とヴォーカルには、穏やかに始まる曲調の中にギリギリと憤りを増してゆく「SHOUT」のニュアンスが歴然とありました。
27歳の時、「叫び」という自作曲に自らの歌人生に向けての「祈り」を歌い上げたジュリーが、古稀を超えて今度は「SHOUT!」のタイトルで弱者に成りかわっての「祈り歌」を歌う、とすれば。
それが穏やかなバラード・ナンバーであることは、特に比叡山での「叫び」をリアルタイムで体感された先輩方にとって何ら違和感は無いのではないか・・・と、僕はそんなふうにも考えてみたのですがいかがでしょうか。

いずれにしても(予想が当たるかどうかはともかく)、今年もジュリーの新曲が聴ける・・・もちろん柴山さんの演奏も楽しみですし、本当に嬉しく、変わらぬ姿勢のジュリーを頼もしく思った新譜の情報でした。

最後に余談ながら・・・。「叫び」は世間的には相当マニアックな曲だと思いますが、なんと僕の手元にはかつて市販されていたスコアがございます。

Sakebi02

↑ 『沢田研二/イン・コンサート』より


僕の勤務先からちょうど40年前に発売されたギター弾き語りスコアで、なにせ発売当時僕はまだ小学生だったくらいですから、編集担当者が誰だったのか(そもそも僕の知っている人なのか)等、製作の詳細は今ではまったく分からなくなっています。
想像するに、参考音源として取り寄せたレコードの中に『比叡山フリー・コンサート』のライヴ盤もあって、「この中からも1曲」という流れだったのでしょう。「残された時間」こそ収載を見送られていますが(採譜作業が大変な曲ですからね←経験者は語る笑)、「叫び」の貴重なスコアが残されたこと、僕が思いもかけずそれに出逢えていること・・・不思議な縁だなぁと思います。

ちなみにレコード時代にありがちな正規音源のピッチの曖昧さ故でしょうか、このスコアで「叫び」は変ホ長調(E♭)で採譜されています。
しかし僕は、ジュリーはこの曲をニ長調(D)で作曲していると確信します。
イントロから登場する「sus4→トニック→add9」のクリシェ進行は、Dのフォームのギターで演奏するのが一番カッコ良い、とロック界では決まっていますからね!

さて新譜リリースは今年も当然3月11日。
現時点ではネット店舗の予約が開始されておらず、発売日に聴くためには当日ショップに出向くことが一番確実、という状況です。
ただ僕は来週、公私共にバタバタに拍車がかかる予定なんですよ~(泣)。
11日にショップに行くのは無理かと思います。残念ながら、発売日より遅れての購入となるでしょう。

僕はLIVEツアーとは違い新譜の歌詞や曲調の事前ネタバレはOKですので、先に聴かれたみなさまの感想、この記事のコメントにてお待ちしていますね。
ジュリー2019年の新曲、楽しみです!

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2019年3月18日 (月)

裕也さん

裕也さんが亡くなられた。
希林さんを追いかけるように行ってしまった・・・。

昨年は堯之さん、そして今度は裕也さん。この国のロック黎明期を支え、体現した偉大な先達の相次ぐ旅立ちがあまりに辛く、寂し過ぎます。

裕也さんは、西洋のロックンロールを音のみならずスタイルやスピリットまるごとこの国に持ち込んだ最初の人。以後、邦楽ロックは細分化し様々なキーパーソンが出現しますが、先駆者なくしてそれは始まらなかった。

心をこめて、合掌。ロックンロール。

Kyoto003

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2019年3月14日 (木)

新譜到着を待ちながら・・・

こんばんは。
ジュリーの新譜『SHOUT!』を未だ手にしておらず、旬の話題に完全に乗り遅れております(泣)。

僕の場合、アマゾンさんでの予約分が発送時期未定とのこと・・・まぁジュリーの新譜については過去3度ほど同じ状況を経験済ですからそれは予想していました。
「ショップで購入して後から到着したアマゾンさんの予約分はYOKO君に引き取って貰う」という恒例のパターンで行こうかな、とは思っていたのですが、僕がぐずぐずしている間に今年は大型のショップさんでも品切れが続出しているとか?
古稀を超えてなお加速するジュリー人気、畏るべし!

それにしても、各地でCDを手にしたみなさまの感想を拝見するにつけ「早く聴きたい!」と指をくわえるばかりの日々です。
みなさまの情報の中で何より驚いたのが豪華なコーラス・クレジット。タイトルチューンの2曲目「SHOUT!」はどうやらLIVEでは「お客さん参加型」となるであろうとてもエネルギッシュなナンバーのようですね。
あ、ちなみに僕はこの新譜についてファンのみなさまの感想は積極的に目を通していますが、いわゆる「試聴」には手を出していません。実際の音のファースト・インパクトは、楽曲フルサイズで体感したいですから。

とにかく今は期待がパンパンに膨らんでいます。
週末時間があったら都心に出かけて店頭販売を残しているショップさんを探してみたいところですが・・・。


さて、2019年全国ツアー後半戦のチケット申し込みが始まっていますね。
期待していた追加公演は、首都圏だと東京国際フォーラムのツアー千秋楽公演がリリースされましたが残念ながら平日です。毎年恒例の大宮ソニック公演も今回は見送られていますし、サラリーマンの身には複数会場参加がなかなか厳しい。
音楽仲間にもスケジュール全体を案内しつつ多く声をかけたものの、とりまとめは難航しました。結局、僕もYOKO君とS君の2名と共に八王子公演(ここは休日)1本に(後半戦の参加は)絞ることになりました。
で、今日その振込を済ませてきたのですが・・・払込票記入時に八王子が抽選会場であることに気がついたという。今まで僕は「第2希望会場」の記入欄がある際には必ず書いていたけれど、今回ばかりは友人2人の都合もあり記入することができませんでした。
もし落選したら僕は後半戦の参加会場はゼロとなります。YOKO君達に至ってはツアーを1度も観ることができずに終わってしまうわけで・・・。
なんとか無事の当選を祈るしかありませんな~。

ということで、新譜入手が遅れ新曲の考察記事着手がまだまだ先になりそうなので、今日はつらつらと現況報告の更新でございました。
あ~早く聴きたい!

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2019年3月 2日 (土)

沢田研二 「サムシング」

from『Gentle Guitar Dreams』、2002

Gentleguitar

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ご無沙汰しております。
多忙と風邪(汗)のためブログ更新ままならぬ日々ですが、あまりに間が空いてしまうとみなさまに忘れられてしまう・・・時々は頑張って書いていきますよ~。

2月を振り返れば、ジュリーの古稀ツアーも無事終了、オーラス大宮も武道館3daysに負けないほどの大変な盛り上がりだったようで、参加されたMママ様が当日夜にお電話くださいました(「声が最高だったよ!」と大興奮状態←うらやま)。
聞けば何とMCで「お正月コンサート復活」を宣言してくれたというではありませんか。これは嬉しい!
大都市限定のお正月コンサートはセットリストが独特。例えばこれまでお正月のツアーに参加したことのないYOKO君は未だに「PEARL HARBOR LOVE STORY」を生体感できていません。僕などからすると「結構セトリ入りしているなぁ」と感じるのですが、『ジュリー祭り』以降に限るとこの曲はお正月しか歌われていないんですよね。
気の早い話ではありますが、その2020年のお正月コンサートは新年早々の5日東京国際フォーラムにて開幕予定とのことで、調べるとこれが日曜日。YOKO君に限らず音楽仲間を誘い易い日程です。
現時点でリリースされている2019年全国ツアーのスケジュールだと彼等を誘うのは難しい、と肩を落としていたので本当に嬉しい情報でした。YOKO君も遂に初の正月LIVE参加実現なる・・・かな?

さて本題。
今日はジュリーの幾多ある洋楽カバー名演・名曲の中から、ビートルズの「サムシング」をお題に採り上げたいと思います。
作詞・作曲はジョージ・ハリスン。ジュリーのカバー・ヴァージョンは、2001年に亡くなったジョージへの追悼トリビュート・アルバム(邦楽アーティスト、バンドによるジョージ・ナンバーのカバー集、2002年リリース)『Gentle Guitar Dreams』に収録されています。
僭越ながら伝授!


①OLD GUYSとジョージ・ハリスン

このお題記事を書こうと決めたのは、僕の古稀ツアーのラスト参加となった1月20日武道館公演でのジュリーのMCをその後よく思い出していたからです。

「ロックの聖地」と言われる日本武道館も渋谷公会堂同様にいよいよ改修の時期が来て、今年には着工するとか。
ザ・タイガース解散コンサート、デビュー25周年記念の『ジュリーマニア』、タイガースの完全再結成、そして今回の古稀ツアー3days・・・等々、ジュリーにとっても特別な思い出の会場であろう武道館。会場に駆けつけたファンともども色々な記憶を甦らせたに違いありませんが、ジュリーがMCで語ったのは自身のデビュー前、ザ・ビートルズの来日公演(「初」にして「最後」の来日です)鑑賞時のエピソードでした。
「確か南西スタンドにいました」というジュリーは、周囲が「ジョ~ン!」とか「ポール!」とか叫んでいる中で、1人「ジョージ!」と声援を送っていたのだそうで。

後追いジュリーファンの僕は、ジュリーがかつて「ビートルズ・メンバーの中ではジョージが好きだった」と語っていたことを『ジュリー祭り』後に知りました。
それまでジュリーに「幼少時に観ていたテレビの中のスーパースター」のイメージしか持てていなかった僕にとって、『ジュリー祭り』からの数年間は「人間・ジュリー」を学ぶ濃密な時期となりましたが、ビートルズの4人の中で当時「静かなビートル」と呼ばれあまり目立つ存在ではなかった(らしい)ジョージに着目し惹かれる、というのがまたジュリーの人間味を示しているようで興味深く、そして納得もしたものです。
テレビではあれほど目立ち、比類なき存在感を誇るジュリーが実は素の部分ではとてもシャイで、ちょっとだけ神経質で、決して「俺が、俺が」のタイプではなかった・・・ジョージが好きだ、というのも自らの性質と似た部分を見ていた故ではないのかなぁ、と。

ビートルズのLIVEステージでもジョージは黙々と演奏するので、よく「何故他のメンバーのようにアピールしないのか」と記者に尋ねられたりしたのだそうです。
するとジョージ答えて曰く「僕はリード・ギターだから。他のメンバーは多少間違えてもお客さんは気づかないけど、僕は間違えられない」と。
この頃のリード・ギターのソロって、今のように「くあ~っ!」とか「ぬお~っ!」とか陶酔して弾きまくるんじゃなくて、楽曲アレンジの根本としてのフレーズありき(もちろん例外もありますけど)だったんです。
分かり易いのが、歌メロと同じ音階をギターが間奏で受け持つパターン。タイガースで言うと「銀河のロマンス」ね。ファンは皆メロディーをよく知ってるから、その通りにギターも弾かなきゃいけないんだ、という着想で、当時のジョージは頑固なまでにそこに拘りました。

この話と関連して僕が今回の古稀ツアー『OLD GUYS ROCK』について強く感じていたのが、ジュリーと柴山さんの演者としての変化なのです。
「冒険」的なギター1本体制。どちらかが自由に走ってしまうと、もちろんこの2人の実力であればそれはそれで素晴らしいパフォーマンスたりえるけれども、原曲のイメージを逸脱させてしまう。それぞれの曲を「2人だけでどう再現するか」に徹して練りこまれたアレンジ、フレーズをキッチリそのまま歌と音にすることがとても重要になったわけで。
だから、原曲とは異なるリズム割りの「風は知らない」についてはツアー中の試行錯誤も出てきた・・・それは必要なことだった、と今僕は考えています。

「間違うわけにはいかない」とのかつてのジョージの心構えが、この先のジュリーと柴山さんにも同じようについてくるはずで、特に柴山さんにかかるプレッシャーは相当のもの。それでも静かに、しかしハートは熱く柴山さんはやり遂げてゆくでしょう。それが出来るギタリストと出逢えていたから、ジュリーはこの道を選べたのだと思います。
ギターのスタイルはずいぶん違えども、ジョージ・ハリスンのことが好きなジュリーは、柴山さんのことも大好き・・・間違いありませんよ。
まぁそれはジュリー自身が古稀ツアーのステージ上で堂々カミングアウトしてくれましたが(笑)。

②「正攻法」で捧げるジョージ愛

僕はジョージについてはビートルズ期はもちろんソロ時代もすべての公式リリース音源を所有する黒帯ファンですが、そんなマニアな視点で見てもこのトリビュート盤のラインナップはとても濃厚で、提供アーティスト、バンドそれぞれのジョージ愛を感じる素晴らしい選曲となっています。

Gentleguitarback

特に「ザ・ライト・ザット・ハッド・ライテッド・ザ・ワールド」(ソロ・アルバム『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』収録)や「ファー・イースト・マン」(ソロ・アルバム『ダーク・ホース』収録)の2曲は、隠れた名曲に光が当てられたようで嬉しく思います。
さらにザ・コレクターズがジョージのソロ最高傑作と言われるアルバム『オール・シングス・マスト・パス』から有名な「マイ・スウィート・ロード」ではなく敢えて「美しき人生」を採り上げているのも最高に渋い。また音の面でもムーンライダース提供の「アイ・ニード・ユー」(ビートルズ『4人はアイドル』収録)、BOX提供の「タックスマン」(ビートルズ『リボルバー』収録)は、カバー・タイトル以外のジョージ作品が合わせ技のアレンジで組み込まれ、ジョージへの深いリスペクトを感じさせます。
ただし、そうしたマニアックで「我こそは」的な選曲群の中に、「これは誰でも知ってるよね」という「看板」曲があって初めてトリビュート盤の完成度は保たれ豊饒の遺産たり得るわけで、ここでその看板を背負っているのが我らがジュリー!なのですよ。

ジョージ・ナンバーで世に最も知られているのは間違いなくビートルズの「サムシング」でしょう。
ジョージの作品としては唯一のビートルズ・シングルと言うだけでなく、完璧なメロディーとコード進行にアレンジ、崇高な詞は正にロック史上に輝く大名曲です。
ジョージが亡くなった後はポール・マッカートニーがこの曲をLIVEの定番ナンバーとして歌い継いでいますが、歌い終えた後時々話してくれるMCネタがあって


この間、○○っていう人(←結構な有名人)に初めて会ったんだけど、僕とビートルズの大ファンということですごく感激してくれてね・・・でも、彼がこう言うんだよ。一番好きなレノン=マッカートニー・ソングは「サムシング」だ!ってね・・・。

と、「それ俺の曲じゃないし・・・」みたいな感じでおどけて肩をすぼめる、という。
これを要するに、「サムシング」は本当に有名なビートルズ・ナンバーだけど、それがジョンやポールではなくジョージ・ハリスンの作品だというのは(一般的には)意外に浸透していないのではないかと。
ですから、「ジョージ・ハリスンのトリビュート」を広く世に問うにあたり「あの有名な「サムシング」はジョージの曲なんだよ」との大看板を担うことは、大変な責任を伴います。生半可なテイクを収めるわけにはいきません。

白井良明さんがジョージファンであることは、ジュリーの「愛は痛い」や「勇気凛々」でのリードギター・トラックを聴けば一目。そんな白井さんでも、ジュリーというヴォーカリストなくしてこの企画にジョージ最高峰の王道ナンバー「サムシング」を立てて挑み、故人に捧げることはできなかったでしょう。
ジュリーは何らトリッキーに走ることなく、背伸びもせずへりくだりもせず、誰もが知るこの楽曲をただ心を込めて歌う・・・そこに徹するのみ。
CDを通して聴けば歴然なのですが、その歌声はもう他収録曲とは別次元なんですよ。ジュリーの正攻法は、ジョージへの最高のリスペクトだと感じます。

見事看板を担ったジュリーと、「沢田さんが歌うならそれができる」と確信を持った白井さんに、ジョージファンとしても大きな拍手を贈りたいです。

③キーボードレス期ジュリー・アレンジの基本形

最後に、ジュリー版「サムシング」の音について簡単に。

ジョージが天国へと旅立った2001年は、ちょうどジュリーが新たな創作スタイルへとシフトした時期でした。翌2002年から始まるキーボードレスのハード・ロック期。そのすべてにレコーディング音源のアレンジマスターとして大きな役割を果たしたのが白井さんで、このトリビュートに収録された「サムシング」はその音作りの基本形、と見ることができます。
ベースにスティング宮本さん、ドラムスにカースケさんという当時のジュリー・アルバムでもお馴染みのリズム隊。そこに白井さんの多様に絡むギター・トラックが載って全体のアレンジが構築されます。
白井さんのギター・トラックは3つ。それぞれ明快に音色が異なる上、几帳面にPANが振られているので聴き取り易いですね。
リード・ギターのフレーズについてはオリジナル完コピ。イントロから鳴っているアルペジオのバッキング・トラックのみ白井さんの新たなアレンジ提案で、これは「サムシング」でのジョージ渾身の美しいクリシェをこれでもかと詰め込まれた進行を強調し聴き手に伝えようと編み出されたのではないでしょうか。

そして何より、ジュリーのヴォーカルがガツン!と耳にダイレクトで飛び込んでくる感覚こそが2000年代ジュリー×白井さん創作音源の真骨頂。
僕はジョージファンでありながら長らくこのトリビュート盤を耳に留めず、ジュリーの「サムシング」含め初めて聴いたのが『ジュリー祭り』後の本格ジュリー堕ちの後だった、というのも「遅れたけれど出逢いのタイミングとして最高だった」と今は思っています。
良い曲を、良い声で歌うという朴訥かつ武骨な2000年代ジュリーの基本形・・・ジュリーの「サムシング」は、ここへ来てまた増え続けている新しいジュリーファンの皆様にも是非押さえて欲しい1曲です。


さて、5月から始まる全国ツアーのタイトルは『SHOUT!』と発表されました。なんとも心躍る一発フレーズ・・・ジュリーの並々ならぬ気魄を感じます。
これは今年の新譜タイトルでもあるのでしょうか?
昨年の『OLD GUYS ROCK』は、収録各曲とは別にCDタイトルがつけられそれがツアーのタイトルにもなりました。今年も同じパターンなのかなと予想していますが、その新譜情報が3月に入ってもまだ解禁されません。

今年はツアーの振替公演が2月に入ったことで、新譜制作のスケジュールが相当タイトになっていると予想できます。普通に考えれば不可能でしょう。
しかしジュリーは毎年の「3・11リリース」には無理をしてでも拘ってゆくと思うので、ギリギリの日程でやはり今年も新譜発売はあるのではないでしょうか。
情報解禁を楽しみに待ちましょう。


風邪はだいぶ良くなってきました。気温変動の
激しい折、みなさまもどうぞご自愛ください。

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