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2018年11月25日 (日)

沢田研二 「十代のロックンロール」

from『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』

Fugitive

1. 愛の逃亡者/THE FUGITIVE
2. ゴー・スージー・ゴー/GO SUSY GO
3. ウォーキング・イン・ザ・シティ/WALKING IN THE CITY
4. サタデー・ナイト/SATURDAY NIGHT
5. 悪夢の銀行強盗/RUN WITH THE DEVIL
6. マンデー・モーニング/MONDAY MORNING
7. 恋のジューク・ボックス/JUKE BOX JIVE
8. 十代のロックンロール/WAY BACK IN THE FIFTIES
9. 傷心の日々/NOTHING BUT A HEARTACHE
10. アイ・ウォズ・ボーン・ト・ラヴ・ユー/I WAS BORN TO LOVE YOU
11. L.A. ウーマン/L. A. WOMAN
12. キャンディー/CANDY

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いやはや、更新遅れました。
実は先週、『聖の青春』という映画を観ましてな~。

僕は将棋ファンですから、故村山聖八段(のち追悼九段)の生涯を描いた大崎善生さんの原作小説も発行時に読んでいましたし、この映画化作品も絶対に観るつもりではいました。ただ劇場上映期間は機会を逃し、いずれDVDを購入と思っていたのがそのままになっていて。
それをたまたまアマゾンプライムで見つけてしまい、「こんなお手軽に観ていいのか?」と一瞬躊躇するも抑えきれず全篇鑑賞。観終わったらもう、脳から身体から溢れ出るテンションのやり場が無い!
「自分は何をやってるんだ?」とかそんなことまで考えたり、とにかく興奮状態がずっと続いて、村山さん生前の棋譜ばかり見て過ごしておりました。

映画『聖の青春』、大変な傑作だと思います。
主演の松山ケンイチさんや、村山さんの師匠である森信雄七段(引退)役のリリー・フランキーさんの素晴らしさは言うまでもなく、個人的には羽生善治(現竜王)役の東出昌大さんの演技に驚愕。予告編を見ていた段階で僕は「羽生さんってこんなに背高くないからなぁ」と違和感を持っていたのが、いざ観たら・・・対局シーンでの優勢、劣勢それぞれを意識した時の仕草や表情は正に羽生さんそのものです。また、村山さんから意外な時におずおずとサシ飲みを誘われた羽生さんが「行きましょう行きましょう」と応えるシーンも、東出さんが本当に羽生さんにしか見えませんでした。

この映画が、将棋をよく知らない人にどのくらい評価されるのか僕には分かりません。
例えば村山さんと弟弟子が殴り合いに至るまでのストーリー展開は、奨励会のシステムに詳しくないとうまく飲み込めないかもしれない(この点については、現在公開中の映画『泣き虫しょったんの奇跡』を観ればよく理解できます)。しかし、将棋に興味の無い人達にもストーリーが分かり易いように原作(=現実のドキュメント)とは対象人物や設定を変える(登場人物を絞り込む)工夫は見事成功しています。
多くの一般ピープルにこの映画を観て欲しい、と強く思いました。アマゾンプライム会員の方であれば、今すぐに鑑賞できます。是非!


さて本題。
今日もまた11月1日のポール・マッカートニー東京ドーム公演の話から入ります。
3人体制のホーン・セクションの出番はセトリ全曲ではなく、ブラス・アレンジの曲の時だけステージ下手側に登場するというスタイルでしたが、セットリスト中、いわゆる「ブラス・ロック」としてファンが普段から当たり前のように認識していた「ワインカラーの少女」「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」「幸せのノック」「レディ・マドンナ」「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」「007/死ぬのは奴らだ」といったナンバーのインパクトは当然として、敢えて言えばホーンの存在が決して「目立たない」曲、下手すると遠い席のお客さんはブラスが入っていることすら気づけなかったかもしれない曲・・・具体的には「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」「キャリー・ザット・ウェイト」「ジ・エンド」のブラスにも僕としては大いに感銘を受けたのでした。
「レット・イット・ビー」のサビで「ラ~ソ~ファ~ミ~♪」と優しく噛んできたり、「ジ・エンド」で「ラ」の音をシャキシャキと吹き続けているだけで、同じセトリ定番曲でも昨年までとは音全体の聴こえ方が全然違うのです。

今日はそんな「気をつて聴かないとスルーしてしまう、でも実はあるのと無いのとでは大違い!」という、ある意味究極のプロフェッショナル・ブラス・アレンジが施されたジュリー・ナンバーのお話です。
このテーマを語るにふさわしいアルバムこそ、74年の『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』。その中から「十代のロックンロール」をお題に採り上げことにしました。
よろしくお願い申し上げます!



①まったく意識していなかったサックス・ソロ(汗)

アルバム『THE FUGITIVE
愛の逃亡者』収録全12曲のうち、ホーンが入っている曲は「愛の逃亡者」「ウォークング・イン・ザ・シティ」「十代のロックンロール」「傷心の日々」「L.A. ウーマン」「キャンディー」の計6曲。
この中で「愛の逃亡者」「ウォーキング・イン・ザ・シティ」「キャンディー」と既に考察記事を書き終えている3曲以外の収録曲については、ブラスが入っていたか否かを今回改めて確認作業しなければなりませんでした。大好きなアルバムで相当回数聴いていて、しかも日頃から「自分はアレンジ・フェチ」と自認していると言うのに・・・。それほど、このアルバムのホーン・セクションは目立ちません。
だからこそ、「もし入っていなかったら?」と脳内でシミュレーションしながら聴き返すとその素晴らしさ、的確さ、黒子の徹底ぶりに改めて打たれる思いです。
先述した今年のポールの公演でも、「レット・イット・ビー」が始まってホーン・セクションがスタンバイした瞬間「あれっ、この曲ホーン入ってたっけ?ストリングスは絶対入ってるけど・・・」と迷いました。そしていざその重厚なブラスを体感する・・・これは『THE FUGITIVE 愛の逃亡者』収録のナンバーにも同じことが言えて、特に「十代のロックンロール」はアルバムの中でも個人的にはベスト3に入るほどお気に入りの曲だっただけに、「こんなに聴き込んでいる曲でも、まだ新鮮な驚きと感動は隠されているものなのか!」ということで、今回お題に選んだ次第です。

まず、「十代のロックンロール」はこのアルバムで唯一サックス・ソロが聴ける曲なのです。
そのサックス・ソロに今までまったく意識が行っていなかったという・・・絶対耳では聴いてはいるし、その度に音も追いかけていたはずなのに。
「あまりに完璧なアレンジで、その素晴らしさ故埋没していたのだ!」などと言うのは言い訳で、所詮僕のリスニング能力がその程度ということ(泣)。
でもそんな凡人基準はすなわち大衆の平均でもあって、やっぱり『THE FUGITIVE 愛の逃亡者』で施されたホーン・セクションって、アレンジとしては「隠し味」なんじゃないかと思います。あるのと無いのとでは大違いだけど、それに気づかず全体の音を楽しんでいる聴き手が少なからずいる、という。
その意味でもこのアルバムはいかにも「職人的」。ジュリーの出演した過去のラジオ音源を一昨年から勉強し始めて、「巴里にひとり」のフランス・レコーディング苦労秘話、逸話の数々に大いに感動させられる中、「それに比べてイギリスはずいぶんあっさりと、短期間で12曲も録っちゃったんだなぁ」なんて思ってはいたけれど、これは映像監督に例えるなら
「演者は余計な色をつけなくていい。素材(ここでは歌い手であるジュリーの「声」ということになりましょう)のままでやってくれ。色は後で俺がつけるよ」
とでも言うようなピッカートン先生の偉大さ、引き出しの多さを証明するのが「十代のロックンロール」のブラス・アレンジでもあるわけです。

決して大げさではない、ひけらかさないプロデュースやアレンジの手管は、さすが74年のロンドン・レコーディング、という気がしています。
ちなみに「十代のロックンロール」のキーは「B♭」(変ホ長調)ですから、ホーンセクションは楽々、ウキウキだったと思いますよ~。

②ジュリー流「ポップンロール」の決定版?

え~と、最後に「?」をつけたのは何故かと言うと、この記事を書く段になって今さらのように「ポップンロール」の定義が曖昧であることに気づいたからです。
用語としてはウィキにも記載が無いので、誰かが「言いえて妙」な造語として使い始めたのでしょうが、僕がこの言葉を覚えたのは間違いなく杉真理さん絡み。でも僕の解釈が杉さんのそれと合っているのかどうかは分からない、という状態で。
僕のよく知らないジャンル・カテゴライズに「バブルガム・ポップ」というのもあって、それはたぶん僕の中の「ポップンロール」と近いのかなとは思うけど、実際のところはどうなのか・・・。
なのでここではポップンロール自己流定義を書き出してみますと

・おもにティーンエイジャーをターゲットとした明るい曲調のビート・ポップス(これはウィキによると「バブルガム・ポップ」とほぼ同じ)
・曲調は明るいんだけど、コードはメジャー一辺倒ではなくマイナーも多用し、バラードばりの泣きメロが随所に登場する
・演奏はギターよりもピアノの方が目立つ

これが「十代のロックンロール」にピタリ当て嵌まります。
僕は初めてこの曲を聴いた時、エルトン・ジョンの「クロコダイル・ロック」を想い出しました。「ポップンロール」ということで言えばエルトン・ジョンは僕が真っ先に挙げたいアーティストで、「クロコダイル・ロック」はその代名詞のような名曲。ギター(これがブラス以上に目立たない!)のミュート奏法をはじめ、アレンジ全体の雰囲気は「十代のロックンロール」とよく似ている、とは今でも思っていますが、今回採譜してみますと、「十代のロックンロール」は土台のメロディー、コード進行が「ダニエル」という曲(「クロコダイル・ロック」と同じくエルトン・ジョンのアルバム『ピアニストを撃つな!』の収録曲)との共通点が多いことが分かりました(こちら)。
0’23”~0’30”あたりは「十代のロックンロール」の

Watching all those movie stars
Cm7                    F7

upon the silver screens ♪
D7                 Gm

の箇所とそっくりです(王道ですけどね)。
ピッカートン先生はその作風からしてエルトン・ジョンの曲作りに大いに共鳴していたでしょうから、「ダニエル」をテンポアップさせてロック調にしたら?と意識しつつ「十代のロックンロール」を作曲したかもしれません。

いずれにしても、こういうポップンロールをテレビ企画番組などのちょっとしたカバーではなく自身のオリジナル・ナンバーとして英語詞で歌って自然に受け止められる(ポップ・スターの空気を纏い得る)日本人歌手は、当時ジュリーをおいて他に無かったでしょう。
その意味で『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』収録曲中最も「ジュリー」が迸っているのはこの曲ではないでしょうか。複雑なコード展開でステージ映えする「キャンディー」と、ストレートなポップンロールにして王道進行の「十代のロックンロール」は、この名盤の表裏二枚看板だと僕は思っています。

③来年ツアーで「キャンディー」を切望!

今日も最後のチャプターではお題曲収録アルバムから今後のセトリ入りの可能性を考えていきます。
僕の場合は何と言っても、完全にジュリー堕ちした直後だったにも関わらず、裕也さんとのジョイント『きめてやる今夜』に参加できなかったということで、「キャンディー」をいつか生体感できなければおさまりがつかん!という心境ですな~。
裏を返せばセトリ入りの可能性は充分、ということ。『ジュリーマニア』でも採り上げられていますしね。
これはギター1本体制だと「セーハの鬼」柴山さんのフォーム・チェンジが最大の見どころでしょう。エレキで弾くために生まれてきたようなコード進行の曲です。

アルバム『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』から現時点で僕が生体感できているのは、昨50周年ツアーでの「愛の逃亡者」1曲のみ。
大変な名盤ですが、リリースから時が経ってからは「愛の逃亡者」と「キャンディー」、この2曲以外のセトリ入りはなかなか叶えられていない状況のようです。
でも「もし歌ってくれたら」と想像できるナンバーもいくつかあって、まず「アルバムのスタジオ・ヴァージョンよりライヴ・ヴァージョンの音源の方が好き」と常日頃から感じている「ゴー・スージー・ゴー」。
さらにジュリーファン以外にもよく知られているらしい「恋のジューク・ボックス」・・・いや、僕はジュリー・ヴァージョンを聴くまで全然知らなかったんだけど、手元の歌本資料の中にこんなページがあるので。


Jukeboxjive1

『YOUNG SONG』洋楽コーナーに載ってるってことは、当時話題のヒットチューンであることは確実!

この2曲は今後突然のセトリ入りがあっても不思議は無さそう。その代わり、僕がこのアルバム中格別に好きな3曲「ウォーキング・イン・ザ・シティ」「マンデー・モーニング」そして今日のお題「十代のロックンロール」については、厳しいかなぁ。
とにかく、実現味も考え合わせ来年のツアーで「キャンディー」が聴きたい!どうか叶いますように。

そうそう、古稀ツアーでは開演前のBGMが「ジュリーの外国語ナンバー」特集という感じで、当然アルバム『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』収録曲も流れますが、その(BGM用の)曲順が謎過ぎます!
どなたか、僕の思いつかないような特別な根拠で謎解きされていないものでしょうか・・・?


それでは。オマケです!
今日もMママ様所有の切り抜き資料から、映画『炎の肖像』関連の記事をどうぞ~。


Img669

Img670

Img671

Img672

公開日は74年の暮れで、アルバム『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』リリースのすぐ後だったんですね。


さて。
この記事の下書きを始めた時は全然なんともなかったのですが、どうも風邪をひいてしまったようです。何故こうも弱いのか・・・情けない、としか言えません。
片方の喉が腫れるいつものパターンに加えて、今回は頭痛があり、関節も痛むし寒気もします。
12月に入ると忙しくなるしプライヴェートの予定も立て込んでいるので、早く治さなければ・・・。

ということで、『ホーンが入ってるジュリー・ナンバー』シリーズは今回はここまでとし(本当はもう1曲「muda」を考えていたのですが)、次回更新はちょっと間をあけて12月3日とさせて下さい。
その日は早いもので『ジュリー祭り』10周年。毎年この日は『ジュリー祭り』セットリストから記事お題を選んでいましたが、鉄人バンドのインスト含めた演目全82曲を今年の6月25日をもってすべて書き終えています。
ですから今年からは、過去に書いた『ジュリー祭り』セトリ記事の中から「やり直し伝授!」をしてゆくことになりますな~。
お題はこれから決めます。

とにかく、みなさまは僕のようにタチの悪い風邪に捕まらないように・・・充分お気をつけください。

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コメント

DY様
 こんにちは。風邪の具合はいかがですか?私の周りも体調崩している人ちょこちょこ見かけます。お互いあとひとつき少々、2018年を無事完走しましょう。
 さてお題曲、サックスソロですが、私はこのスタジオ録音より『比叡山』のライブテイクを先に聴いたものですから、「間奏はキーボードソロじゃなくスタジオはサックスか!」と思って聴いたものです。
 この曲はコーラスワークもなかなか素晴らしいですね。ライブ、スタジオどちらも甲乙つけがたい名演、ここんところ「アルバム中1番好きな曲」伝授が続きます(笑)。2番目は「恋のジューク・ボックス」3番目は「同着」で「キャンディー」「愛の逃亡者」というのが私の個人的ランキングです。

投稿: ねこ仮面 | 2018年11月29日 (木) 12時51分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

覚えていますよ~。ねこ仮面様はこの曲好きだと仰っていましたね。

そうか~、僕はまだまだ比叡山コンサートの聴き込みが甘いですね。あの音源だと「ゴー・スージー・ゴー」が秀逸だと思っていましたが、「十代のロックンロール」については「これはスタジオ音源の方が良いかなぁ」と感じ、あまりリピしていませんでした・・・。
確かに、コーラスワークもこの曲の魅力のひとつです。アルバムテイクは現地の人なのかなぁ。

風邪はどうやら重症化を免れています。先の3連休のうち2日をフイにしてしまったのですが(泣)、おとなしくしていて良かったです。

投稿: DYNAMITE | 2018年11月29日 (木) 13時19分

DY様 こんばんは。

ジュリーってアメリカよりイギリス、それよりフランスの方がしっくりくるんですよね、なぜか。湿度の問題(?)かな。


葛飾・横須賀と立て続けに参戦してきました。
葛飾のMCの異様な(?)盛り上がりのあとで横須賀はあっさりし過ぎてた気がしましてが、ライブ自体はどちらも素晴らしかったです。

葛飾一階7列・横須賀一階3列と信じられない神席続き。
横須賀ですぐ後ろに座っていた人が
「今日、当日券で入った。」とおっしゃるので
周りの人たちが「えーっ」
何でも、朝ダメもとで問い合わせたら「関係者席で来られなくなった人がいるので予約しますか?」
と聞かれ速攻で確保したけど、「まさかこんな神席とは思わなかった。」
だそうです。まさに聞いたもん勝ち!ですね。

投稿: nekomodoki | 2018年12月 2日 (日) 22時30分

nekomodoki様

ありがとうございます!

素晴らしいお席が続いていらっしゃるようで何よりです。葛飾は相当盛り上がったと聞いていますが、横須賀も良かったですか~。ジュリー、ツアー終盤でノッてきましたね。

当日販売のチケットのお客さんのお話・・・そんなパターンもあるんですか~。
とにかくどの会場でもそうですがお客さんが隙間なく入ってくれることが一番ですから、良かったですね!

確かにジュリーはアメリカよりイギリス、イギリスよりフランスが似合います。何故なんですかね~。

投稿: DYNAMITE | 2018年12月 3日 (月) 09時25分

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