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2018年11月

2018年11月25日 (日)

沢田研二 「十代のロックンロール」

from『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』

Fugitive

1. 愛の逃亡者/THE FUGITIVE
2. ゴー・スージー・ゴー/GO SUSY GO
3. ウォーキング・イン・ザ・シティ/WALKING IN THE CITY
4. サタデー・ナイト/SATURDAY NIGHT
5. 悪夢の銀行強盗/RUN WITH THE DEVIL
6. マンデー・モーニング/MONDAY MORNING
7. 恋のジューク・ボックス/JUKE BOX JIVE
8. 十代のロックンロール/WAY BACK IN THE FIFTIES
9. 傷心の日々/NOTHING BUT A HEARTACHE
10. アイ・ウォズ・ボーン・ト・ラヴ・ユー/I WAS BORN TO LOVE YOU
11. L.A. ウーマン/L. A. WOMAN
12. キャンディー/CANDY

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いやはや、更新遅れました。
実は先週、『聖の青春』という映画を観ましてな~。

僕は将棋ファンですから、故村山聖八段(のち追悼九段)の生涯を描いた大崎善生さんの原作小説も発行時に読んでいましたし、この映画化作品も絶対に観るつもりではいました。ただ劇場上映期間は機会を逃し、いずれDVDを購入と思っていたのがそのままになっていて。
それをたまたまアマゾンプライムで見つけてしまい、「こんなお手軽に観ていいのか?」と一瞬躊躇するも抑えきれず全篇鑑賞。観終わったらもう、脳から身体から溢れ出るテンションのやり場が無い!
「自分は何をやってるんだ?」とかそんなことまで考えたり、とにかく興奮状態がずっと続いて、村山さん生前の棋譜ばかり見て過ごしておりました。

映画『聖の青春』、大変な傑作だと思います。
主演の松山ケンイチさんや、村山さんの師匠である森信雄七段(引退)役のリリー・フランキーさんの素晴らしさは言うまでもなく、個人的には羽生善治(現竜王)役の東出昌大さんの演技に驚愕。予告編を見ていた段階で僕は「羽生さんってこんなに背高くないからなぁ」と違和感を持っていたのが、いざ観たら・・・対局シーンでの優勢、劣勢それぞれを意識した時の仕草や表情は正に羽生さんそのものです。また、村山さんから意外な時におずおずとサシ飲みを誘われた羽生さんが「行きましょう行きましょう」と応えるシーンも、東出さんが本当に羽生さんにしか見えませんでした。

この映画が、将棋をよく知らない人にどのくらい評価されるのか僕には分かりません。
例えば村山さんと弟弟子が殴り合いに至るまでのストーリー展開は、奨励会のシステムに詳しくないとうまく飲み込めないかもしれない(この点については、現在公開中の映画『泣き虫しょったんの奇跡』を観ればよく理解できます)。しかし、将棋に興味の無い人達にもストーリーが分かり易いように原作(=現実のドキュメント)とは対象人物や設定を変える(登場人物を絞り込む)工夫は見事成功しています。
多くの一般ピープルにこの映画を観て欲しい、と強く思いました。アマゾンプライム会員の方であれば、今すぐに鑑賞できます。是非!


さて本題。
今日もまた11月1日のポール・マッカートニー東京ドーム公演の話から入ります。
3人体制のホーン・セクションの出番はセトリ全曲ではなく、ブラス・アレンジの曲の時だけステージ下手側に登場するというスタイルでしたが、セットリスト中、いわゆる「ブラス・ロック」としてファンが普段から当たり前のように認識していた「ワインカラーの少女」「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」「幸せのノック」「レディ・マドンナ」「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」「007/死ぬのは奴らだ」といったナンバーのインパクトは当然として、敢えて言えばホーンの存在が決して「目立たない」曲、下手すると遠い席のお客さんはブラスが入っていることすら気づけなかったかもしれない曲・・・具体的には「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」「キャリー・ザット・ウェイト」「ジ・エンド」のブラスにも僕としては大いに感銘を受けたのでした。
「レット・イット・ビー」のサビで「ラ~ソ~ファ~ミ~♪」と優しく噛んできたり、「ジ・エンド」で「ラ」の音をシャキシャキと吹き続けているだけで、同じセトリ定番曲でも昨年までとは音全体の聴こえ方が全然違うのです。

今日はそんな「気をつて聴かないとスルーしてしまう、でも実はあるのと無いのとでは大違い!」という、ある意味究極のプロフェッショナル・ブラス・アレンジが施されたジュリー・ナンバーのお話です。
このテーマを語るにふさわしいアルバムこそ、74年の『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』。その中から「十代のロックンロール」をお題に採り上げことにしました。
よろしくお願い申し上げます!



①まったく意識していなかったサックス・ソロ(汗)

アルバム『THE FUGITIVE
愛の逃亡者』収録全12曲のうち、ホーンが入っている曲は「愛の逃亡者」「ウォークング・イン・ザ・シティ」「十代のロックンロール」「傷心の日々」「L.A. ウーマン」「キャンディー」の計6曲。
この中で「愛の逃亡者」「ウォーキング・イン・ザ・シティ」「キャンディー」と既に考察記事を書き終えている3曲以外の収録曲については、ブラスが入っていたか否かを今回改めて確認作業しなければなりませんでした。大好きなアルバムで相当回数聴いていて、しかも日頃から「自分はアレンジ・フェチ」と自認していると言うのに・・・。それほど、このアルバムのホーン・セクションは目立ちません。
だからこそ、「もし入っていなかったら?」と脳内でシミュレーションしながら聴き返すとその素晴らしさ、的確さ、黒子の徹底ぶりに改めて打たれる思いです。
先述した今年のポールの公演でも、「レット・イット・ビー」が始まってホーン・セクションがスタンバイした瞬間「あれっ、この曲ホーン入ってたっけ?ストリングスは絶対入ってるけど・・・」と迷いました。そしていざその重厚なブラスを体感する・・・これは『THE FUGITIVE 愛の逃亡者』収録のナンバーにも同じことが言えて、特に「十代のロックンロール」はアルバムの中でも個人的にはベスト3に入るほどお気に入りの曲だっただけに、「こんなに聴き込んでいる曲でも、まだ新鮮な驚きと感動は隠されているものなのか!」ということで、今回お題に選んだ次第です。

まず、「十代のロックンロール」はこのアルバムで唯一サックス・ソロが聴ける曲なのです。
そのサックス・ソロに今までまったく意識が行っていなかったという・・・絶対耳では聴いてはいるし、その度に音も追いかけていたはずなのに。
「あまりに完璧なアレンジで、その素晴らしさ故埋没していたのだ!」などと言うのは言い訳で、所詮僕のリスニング能力がその程度ということ(泣)。
でもそんな凡人基準はすなわち大衆の平均でもあって、やっぱり『THE FUGITIVE 愛の逃亡者』で施されたホーン・セクションって、アレンジとしては「隠し味」なんじゃないかと思います。あるのと無いのとでは大違いだけど、それに気づかず全体の音を楽しんでいる聴き手が少なからずいる、という。
その意味でもこのアルバムはいかにも「職人的」。ジュリーの出演した過去のラジオ音源を一昨年から勉強し始めて、「巴里にひとり」のフランス・レコーディング苦労秘話、逸話の数々に大いに感動させられる中、「それに比べてイギリスはずいぶんあっさりと、短期間で12曲も録っちゃったんだなぁ」なんて思ってはいたけれど、これは映像監督に例えるなら
「演者は余計な色をつけなくていい。素材(ここでは歌い手であるジュリーの「声」ということになりましょう)のままでやってくれ。色は後で俺がつけるよ」
とでも言うようなピッカートン先生の偉大さ、引き出しの多さを証明するのが「十代のロックンロール」のブラス・アレンジでもあるわけです。

決して大げさではない、ひけらかさないプロデュースやアレンジの手管は、さすが74年のロンドン・レコーディング、という気がしています。
ちなみに「十代のロックンロール」のキーは「B♭」(変ホ長調)ですから、ホーンセクションは楽々、ウキウキだったと思いますよ~。

②ジュリー流「ポップンロール」の決定版?

え~と、最後に「?」をつけたのは何故かと言うと、この記事を書く段になって今さらのように「ポップンロール」の定義が曖昧であることに気づいたからです。
用語としてはウィキにも記載が無いので、誰かが「言いえて妙」な造語として使い始めたのでしょうが、僕がこの言葉を覚えたのは間違いなく杉真理さん絡み。でも僕の解釈が杉さんのそれと合っているのかどうかは分からない、という状態で。
僕のよく知らないジャンル・カテゴライズに「バブルガム・ポップ」というのもあって、それはたぶん僕の中の「ポップンロール」と近いのかなとは思うけど、実際のところはどうなのか・・・。
なのでここではポップンロール自己流定義を書き出してみますと

・おもにティーンエイジャーをターゲットとした明るい曲調のビート・ポップス(これはウィキによると「バブルガム・ポップ」とほぼ同じ)
・曲調は明るいんだけど、コードはメジャー一辺倒ではなくマイナーも多用し、バラードばりの泣きメロが随所に登場する
・演奏はギターよりもピアノの方が目立つ

これが「十代のロックンロール」にピタリ当て嵌まります。
僕は初めてこの曲を聴いた時、エルトン・ジョンの「クロコダイル・ロック」を想い出しました。「ポップンロール」ということで言えばエルトン・ジョンは僕が真っ先に挙げたいアーティストで、「クロコダイル・ロック」はその代名詞のような名曲。ギター(これがブラス以上に目立たない!)のミュート奏法をはじめ、アレンジ全体の雰囲気は「十代のロックンロール」とよく似ている、とは今でも思っていますが、今回採譜してみますと、「十代のロックンロール」は土台のメロディー、コード進行が「ダニエル」という曲(「クロコダイル・ロック」と同じくエルトン・ジョンのアルバム『ピアニストを撃つな!』の収録曲)との共通点が多いことが分かりました(こちら)。
0’23”~0’30”あたりは「十代のロックンロール」の

Watching all those movie stars
Cm7                    F7

upon the silver screens ♪
D7                 Gm

の箇所とそっくりです(王道ですけどね)。
ピッカートン先生はその作風からしてエルトン・ジョンの曲作りに大いに共鳴していたでしょうから、「ダニエル」をテンポアップさせてロック調にしたら?と意識しつつ「十代のロックンロール」を作曲したかもしれません。

いずれにしても、こういうポップンロールをテレビ企画番組などのちょっとしたカバーではなく自身のオリジナル・ナンバーとして英語詞で歌って自然に受け止められる(ポップ・スターの空気を纏い得る)日本人歌手は、当時ジュリーをおいて他に無かったでしょう。
その意味で『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』収録曲中最も「ジュリー」が迸っているのはこの曲ではないでしょうか。複雑なコード展開でステージ映えする「キャンディー」と、ストレートなポップンロールにして王道進行の「十代のロックンロール」は、この名盤の表裏二枚看板だと僕は思っています。

③来年ツアーで「キャンディー」を切望!

今日も最後のチャプターではお題曲収録アルバムから今後のセトリ入りの可能性を考えていきます。
僕の場合は何と言っても、完全にジュリー堕ちした直後だったにも関わらず、裕也さんとのジョイント『きめてやる今夜』に参加できなかったということで、「キャンディー」をいつか生体感できなければおさまりがつかん!という心境ですな~。
裏を返せばセトリ入りの可能性は充分、ということ。『ジュリーマニア』でも採り上げられていますしね。
これはギター1本体制だと「セーハの鬼」柴山さんのフォーム・チェンジが最大の見どころでしょう。エレキで弾くために生まれてきたようなコード進行の曲です。

アルバム『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』から現時点で僕が生体感できているのは、昨50周年ツアーでの「愛の逃亡者」1曲のみ。
大変な名盤ですが、リリースから時が経ってからは「愛の逃亡者」と「キャンディー」、この2曲以外のセトリ入りはなかなか叶えられていない状況のようです。
でも「もし歌ってくれたら」と想像できるナンバーもいくつかあって、まず「アルバムのスタジオ・ヴァージョンよりライヴ・ヴァージョンの音源の方が好き」と常日頃から感じている「ゴー・スージー・ゴー」。
さらにジュリーファン以外にもよく知られているらしい「恋のジューク・ボックス」・・・いや、僕はジュリー・ヴァージョンを聴くまで全然知らなかったんだけど、手元の歌本資料の中にこんなページがあるので。


Jukeboxjive1

『YOUNG SONG』洋楽コーナーに載ってるってことは、当時話題のヒットチューンであることは確実!

この2曲は今後突然のセトリ入りがあっても不思議は無さそう。その代わり、僕がこのアルバム中格別に好きな3曲「ウォーキング・イン・ザ・シティ」「マンデー・モーニング」そして今日のお題「十代のロックンロール」については、厳しいかなぁ。
とにかく、実現味も考え合わせ来年のツアーで「キャンディー」が聴きたい!どうか叶いますように。

そうそう、古稀ツアーでは開演前のBGMが「ジュリーの外国語ナンバー」特集という感じで、当然アルバム『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』収録曲も流れますが、その(BGM用の)曲順が謎過ぎます!
どなたか、僕の思いつかないような特別な根拠で謎解きされていないものでしょうか・・・?


それでは。オマケです!
今日もMママ様所有の切り抜き資料から、映画『炎の肖像』関連の記事をどうぞ~。


Img669

Img670

Img671

Img672

公開日は74年の暮れで、アルバム『愛の逃亡者 THE FUGITIVE』リリースのすぐ後だったんですね。


さて。
この記事の下書きを始めた時は全然なんともなかったのですが、どうも風邪をひいてしまったようです。何故こうも弱いのか・・・情けない、としか言えません。
片方の喉が腫れるいつものパターンに加えて、今回は頭痛があり、関節も痛むし寒気もします。
12月に入ると忙しくなるしプライヴェートの予定も立て込んでいるので、早く治さなければ・・・。

ということで、『ホーンが入ってるジュリー・ナンバー』シリーズは今回はここまでとし(本当はもう1曲「muda」を考えていたのですが)、次回更新はちょっと間をあけて12月3日とさせて下さい。
その日は早いもので『ジュリー祭り』10周年。毎年この日は『ジュリー祭り』セットリストから記事お題を選んでいましたが、鉄人バンドのインスト含めた演目全82曲を今年の6月25日をもってすべて書き終えています。
ですから今年からは、過去に書いた『ジュリー祭り』セトリ記事の中から「やり直し伝授!」をしてゆくことになりますな~。
お題はこれから決めます。

とにかく、みなさまは僕のようにタチの悪い風邪に捕まらないように・・・充分お気をつけください。

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2018年11月14日 (水)

沢田研二 「alone」

from『Beautiful World』、1992

Beautifulworld

1. alone
2. SOMEBODY'S CRYIN’
3. 太陽のひとりごと
4. 坂道
5. a long good-bye
6. Beautiful World
7. 懲りないスクリプト
8. SAYONARA
9. 月明かりなら眩しすぎない
10. 約束の地
11. Courage

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先週末までは暖かかったのですが、今週は月曜から急に寒くなりました。
ジュリーも最近風邪をひいてしまったそうで、喉も本調子でない中、それでも九州シリーズ(長崎→熊本)は大盛況の素晴らしいステージだったと聞いています。
みなさまは大丈夫ですか?
これから冬本番、僕もなんとか風邪をひかずに年末を乗り切りたいところですが・・・毎年12月にやられちゃうんですよねぇ。気をつけたいと思います。

さて今日は前回の「誰もとめはしない」に引き続き、超神席で観たポール・マッカートニーのホーン・セクション入り新編成バンドにあやかった「ホーンが入ってるジュリー・ナンバー」シリーズの第2弾として更新。「サックス・ソロ」に焦点を当てます。
ポールのLIVEでは「レディ・マドンナ」で生サックス・ソロがありまして、セトリ定番曲にバリバリの新鮮味が加わり大変感動したのですが、考えてみるとビートルズが60年代に確立した、ロックやポップス・ナンバーにおける「サックス・ソロ」のアレンジも、いつしか王道の手管としてすっかり定着しているんですよねぇ。
僕の世代だと、「サックス」がその意味での市民権を得ていると普通に実感したのはやっぱりチェッカーズが登場した時からかな。でも実はビリー・ジョエルの「さよならハリウッド」「ニューヨークの想い」「素顔のままで」であったり、日本では特に佐野元春さん・・・僕が高校生になってようやく聴くようになった音楽の中にそうしたアレンジの名曲が既に巷には溢れていました。
もちろんジュリー・ナンバーにも。

そこで今日はアルバム『Beautiful World』から井上大輔さん作曲の「alone」をお題に採り上げ、サックスの話をあれやこれやと書いていこうと思っています。
よろしくお願い申し上げます。


①井上大輔さん「哀 戦士」の思い出

僕は一応ブラスバンド部出身で、担当楽器は小学生時代から愛聴していた『太陽にほえろ!』のサントラで憧れていたドラムスを志願。
音楽的下地があったわけではないので、当初は他部員の担当楽器についてそれぞれの音の特性を深く知ろうともせず、太鼓にばかり集中していました。そもそも『太陽にほえろ!』のサントラにしても、メインテーマがサックスで「青春のテーマ」がトランペットで、といったことすら意識していなかったのです(恥)。
ただ、部員達が持っている楽器の形状だけは知らず知らずのうちに覚えていた、というちょうどそんな頃・・・「サックスってこんなにカッコ良いのか!」と教えられたのが他でもない、本日お題「alone」の作曲者である井上大輔さんが出演された『ザ・ベストテン』放映回でした(「今週のスポットライト」のコーナー)。
披露された曲は「哀 戦士」。

僕はSF好きでしたから当時『機動戦士ガンダム』にも興味があって、モビルスーツのプラモデルなんかを集めていた世代。「へぇ、ガンダムの曲か」くらいの軽い気持ちでその時井上さんの歌を聴き始めて・・・最初は(井上さんがフリーハンドで歌っている間は)気づかなかったんですが、歌が進み井上さんがサッ!と横に置いてあったサックスを構えましてね。「あれっサックスだ」と気づいてからはもう目からウロコの大感動。
『ザ・ベストテン』でもギターを弾きながら歌う人はカッコ良いなぁと思ってそれまでも色々な歌手、バンドを観ていたけれど、サックスを構えて歌う姿というのがこれほどカッコ良いとは!と。
しかもその音の響き・・・「間奏ソロ」としての説得力抜群ではないですか。

それからですよ、自分の知っている音楽にホーンが入っていると、この音はサックス、この音はトランペット・・・と注意して聴く習慣ができたのは。ビートルズの曲だってそうだったんですから。
ブラスバンドでも他部員の出す音が聴こえてくるようになって、そのせいだか何なんだか、テナーサックス吹いてた1コ年下のT子ちゃんに片思いの恋をする、というワケ分からないオチもつきました(笑)。
まぁそんな話はさておき、あの時の井上さん出演の『ザ・ベストテン』映像がupされてないかなぁ、とYou Tubeを探してみたら、ありました!

こちら

な、懐かしい・・・(感涙)。
そうかぁ、ちょうど岩崎宏美さんが「すみれ色の涙」を大ヒットさせていたのと同じ時期だったんですね。僕はあの頃ブルー・コメッツも知らなかったから・・・。

それでは次チャプターにて、偉大な作曲家にして最高にカッコ良いサックス・プレイヤー、井上大輔さんが91年のジュリーに提供した『Beautiful World』のトップを飾る名曲「alone」について色々と書いていきましょう。

②サックスの導入は井上さんへのリスペクト?

今ちょうど通勤時間にスージー鈴木さん渾身の名著『イントロの法則80's』を読んでいるところ。世代が同じ(と言うか同い年です)こともあり共感しまくりの内容なんですが、寺尾聰さん「ルビーの指輪」の項で


「(この曲がヒットした時)自分はもうギターを弾いていたけど、キーが「Gm」(ト短調)ってのに敷居の高さを感じてた」

と書いていらして。
これ、僕もリアルタイムでまったく同じことを考えたんですね。クラスで誰かが持ってきた歌本広げて皆でワイワイと歌ったりする時、一応僕がギターで伴奏役を受け持つんだけど、「ルビーの指輪?ちょっと待ってそれGm?え~とえ~と・・・」みたいな。
ギターから楽器演奏を覚えると初心者の頃はどうしても「Gm」とか「Cm」、「B♭」や「E♭」がキーの曲は「面倒くせぇ!」となってしまいます。
ところがホーンを覚えると劇的にそれが変わります。
僕の場合は40歳くらいに独学でトランペットでしたが、それまで敬遠しがちだったフラット系のキーの方が、慣れ親しんできたシャープ系より遥かに演奏し易くなるという・・・これは衝撃的な経験でしたね。

もちろんプロのミュージシャンならどんなキーであろうが難なくスラスラと演奏できるものなのでしょうが(例外は、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』のロンドン・レコーディングで「バタフライ・ムーン」のために急遽呼ばれて来たイギリス人のペット奏者くらいか?笑)、それでもフラット系のキーの方が自由度が高くて吹き易い、って感覚はプロにもあるんじゃないかなぁ。

そんな想像をしながら「alone」のサックス・ソロを聴くと、噛み込んでくる瞬間のうねるような音がとても楽しそうでね~。「alone」のキーは「G」(ト長調)ですけど、サックス・ソロ部はいったん「B♭」(変ホ長調)に転調させて始まるんですよ。
これはおそらくアレンジの小林信吾さんのアイデア。でも伏線は井上さんの作曲段階から既にあって、この曲で井上さんは同主音による近親移調を採用し、Bメロのキーは「Gm」(ト短調)に転じています。

眠れぬ夜ばかり いくつも数えた  よ
Gm7   Cm7    F7            B♭maj7  E♭maj7

吐息で部屋がかすんだ
         Cm7        Fsus4  F  Fadd9  F

どうしてこんなに 君でなきゃならない
Gm7    Cm7        F7      B♭maj7  E♭maj7

おかしいほどに ♪
A7         D7

このト短調が、サックス・ソロ部の変ホ長調とは並行調の関係。だから1番、2番と歌われてきたメロディーを引き継いでの間奏でサックスの導入は「これしかない!」というくらいに自然で、インパクトも強いです。
小林さんは、大先輩である井上さんの作曲への敬意をもって「alone」の間奏にフラット系のキーでサックス・アレンジを捧げたのではないでしょうか。
ちなみに先述した「哀 戦士」での井上さんの作曲も、歌メロのキーは「C」ですがサックス・ソロ部は転調して「E♭」→「F」→「A♭」と進行します。

それにしてもこの曲のBメロ部後半、ジュリーの「セルフ字ハモコーラス」のキレの良さよ!
本当に語られることが少ないのですが、ジュリーの「自分のヴォーカルに重ねてハモる」才能は超一級です。音についての俯瞰力の高さ、なのでしょうか。
またいつか、新曲でその類稀なる才を魅せてくれる日を期待しています。

あと、覚さんの詞についても少し。
「alone」というタイトルは、普通だと寂しいイメージの単語です(ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」とか)。でもこの歌は違うんですよね。
「君」に逢うために今までずっと1人、或いは「君」に触れるために今この時は1人、という主人公。超未来志向の「意思」を感じさせるラブ・ソング。こうした覚さんの「男らしい」面(かつてジュリーは、男性よりも女性の詞の方がむしろ男らしい、と語っていますね)がジュリーは大好きなんだろうなぁ、と。
その点で「alone」はアルバム収録曲の中でも最強で、オープニング・クレジットにふさわしい名曲です。この詞のコンセプトが後の「銀の骨」や「グランドクロス」あたりに引き継がれていったのではないでしょうか。

ジュリー史において覚さんとの出逢いはその後の創作活動の方向性を決定づけるほどの運命的なもので、95年から始まるセルフ・プロデュース期への後押しにもなったんじゃないかなぁ、と後追いファンの僕は考えています。
自らの意志を以って「alone」である限り、道を選ぶのは自分自身でしかない、良いこともそうでないこともすべて自分に還ってくる、帰結できる、というのがジュリーにとっての「セルフ・プロデュース」の動機であり志ではないか、と僕は想像していますが・・・いかがでしょうか。


③恒例(?)アルバムから今後のセトリ入り予想

これはね、『Beautiful World』は収録全曲油断ならん!というのが個人的な考えです。

まず僕がこのアルバムからこれまで生のLIVEで体感できているのは、セトリ常連の「約束の地」と『歌門来福』(2010年お正月)での「SOMEBODY'S CRYIN'」。僅か2曲ではあるんですけど、本格ジュリー堕ち以降大人買いしたツアーDVDのセットリストを改めて見ると、結構渋めの他収録曲もこの20年ほどの間にちょこちょこ歌われてきていることが分かります。
それに、「約束の地」は言うに及ばず、シングル・カットされた「太陽のひとりごと」や「坂道」「月明かりなら眩しすぎない」「Courage」のバラード群は、柴山さんとの2人体制がとても似合いそうだと思いませんか?

『Beautiful World』は、建さんプロデュース期の5作品の中では決して目立つ方ではないけれど、ジュリー自身の志の高さを反映するような楽曲がズラリと並ぶタイプの名盤だと思うんです。覚さんの詞で統一されているのが大きいんですよね。
ジュリー本来の「歌心」が存分に引き出されている1枚。同年のact『SALBADOR DALI』も合わせ、情熱的でありながらも「ちょっと離れたところから自らを見おろしている」ようなジュリー・ヴォーカルが素敵な時期です。

加えて、贅沢な作家陣に負けじと書き下ろされたジュリー自作の3曲、「SOMEBODY'S
CRYIN'」「懲りないスクリプト」「Courage」は作曲家・ジュリーとしてもかなりの自信作なんじゃないかな。80年代入ってから「意識した」と語っていた「リズムから入る曲作り」を、それぞれ違うパターンで成就させた3曲だと想像していますから。
まぁでも、来年のツアー・セトリ入り候補1番手はやっぱり「約束の地」でしょう。その後機を見て他収録曲が少しずつ体感できていければ良いな、と期待します。


それでは、オマケです!
今日は1992年リリースの「alone」がお題ということで、act『SALBADOR DALI』パンフレットから過去記事で未添付のショットを数枚どうぞ~。


Dali06

Dali11

Dali17

Dali21



それでは次回更新は、また時代を遡って70年代のナンバーを採り上げる予定です。
「このアルバムから!」というのは決めていますが、どの曲にするかは思案中。
もちろん引き続き「ホーンが入ってるジュリー・ナンバー」シリーズとしてのお題ですよ~。

この記事を下書きしている数日の間に、カミさんが風邪をひいてしまいました。僕も本当に気をつけなくては・・・夜更かしなどしないよう心がけたいと思います。
みなさまも充分お気をつけください。




記事をupしようとしてココログさんのサイドバーをふと見たら、佐山雅弘さんの訃報が・・・絶句。まだまだお若いのに!
ご冥福をお祈り申し上げます。

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2018年11月 8日 (木)

沢田研二 「誰もとめはしない」

from『JULIE』、1969

Julie1

1. 君を許す
2. ビロードの風
3. 誰もとめはしない
4. 愛のプレリュード
5. 光と花の思い出
6. バラを捨てて
7. 君をさがして
8. 未知の友へ
9. ひとりぼっちのバラード
10. 雨の日の出来事
11. マイ・ラヴ
12. 愛の世界のために

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from『THE TIGERS CD-BOX』
disc-5『Legend of THE TIGERS』


Tigersbox

1. タイガースのテーマ
2. スキニー・ミニー
3. 白いブーツの女の子
4. 愛するアニタ
5. 南の国のカーニバル
6. 涙のシャポー
7. 涙のシャポー(別テイク)
8. 傷だらけの心
9. 730日目の朝
10. 坊や祈っておくれ
11. Lovin' Life
12. 誰もとめはしない
13. 夢のファンタジア
14. ハーフ&ハーフ
15. 遠い旅人
16. タイガースの子守唄
17. あなたの世界
18. ヘイ・ジュード~レット・イット・ビー
19. 明治チョコレートのテーマ
20. あわて者のサンタ
21. 聖夜
22. デイ・トリッパー
23. アイム・ダウン
24. 雨のレクイエム
25. ギミー・シェルター

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11月に入り、名古屋そして仙台と大会場を満員御礼で成功させたジュリー。参加されたみなさまの感動のお言葉がとても嬉しい留守番組のDYNAMITEです。

そんな中、先の月曜日にさいたまスーパーアリーナのチケット振替申込用紙も無事到着し、YOKO君、S君とも相談の上、僕らは3人揃って年明け1月5日の大宮ソニック公演に振り替えることにしました。
ジュリーの元気な「あけましておめでとうございます!」が聞けることでしょう。色々あったけれど、今は「楽しみ!」の気持ちに満ちています。

さて僕は11月1日のポール・マッカートニー東京ドーム公演をアリーナド真ん中11列目という超神席で観てまいりまして、未だ夢見心地の日々でもあります。
ごく普通の一般先行発売で奇跡的に(カミさんが)引き当てたこの特等席・・・すぐ近くの斜め前に矢沢永吉さんがいらっしゃるという、そんな席ですよ!
そのもっと前にはYOSHIKIさん(最前列)、さらには藤田朋子さん(2列目か3列目。開演前のBGMからノリノリ!ビートルズファンでいらっしゃったんですねぇ)のお姿も。着席するまでに3度も係員さんにチケット提示しないと進入できないというそんな選ばれし者だけの神席エリアで、ポールの3時間ブッ通し(!)の熱演を肉眼で体感できたこと、一生の宝物となりました。

で、今回のポールはお馴染みのバンドメンバーに加えて、3人体制のホーン・セクション(編成はサックス、トランペット、トロンボーン)を引き連れての来日公演だったのです。僕は一切のネタバレを我慢しての参加でしたのでこれは衝撃的でした。
当然その編成は選曲にも反映され、日本のポールファン全員が「いつの日か」とセットリスト入りを待ち続けていたであろう「幸せのノック」のイントロ(チャイム音)が流れた瞬間は狂喜乱舞。他、「ワインカラーの少女」「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」「007/死ぬのは奴らだ」等の大好きなブラス・ナンバーはもちろん、「さすがに耳タコになってきたなぁ」と感じていたセトリ鉄板の「レディ・マドンナ」「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」なども生のホーンが入るととても新鮮で、本当に素晴らしいライヴでした。次回来日ではこの編成で「心のラブ・ソング」「カミング・アップ」あたりも期待できるかもしれないなぁ、と夢が広がっています。
それにしてもポールのLIVEで「イエスタディ」無しのセットリストって、さすがに僕も初めてだったなぁ。個人的にそれは何ら問題ありませんが。

ポール・マッカートニー76歳、健在。となれば古稀になったばかりのジュリーもまだまだ行けますよ~。
そこで!
拙ブログでは今回からしばらくの間、ポールのホーン・セクション入りバンド新体制にあやかりまして、「ホーンが入っているジュリー・ナンバー」シリーズを開催し、楽曲お題を選んでいきたいと思います。
豪快なブラス・ロックは言うに及ばず、サックスやトランペットのソロを採用したナンバー等、ジュリー史にあって該当する名曲は数えきれないほど存在しますが、その中からこの機に3、4曲を採り上げていければ・・・可能な限りどしどし更新したいと思っています。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず今日は、ファースト・アルバム『JULIE』およびタイガースのレア音源集『Legend of THE TIGERS』収録と、2つのヴァージョンが残されているブラス・ロック・ナンバー、「誰もとめはしない」をお届けいたします。
確信と妄想が入り乱れての伝授です!


Nobodycanmakeyoustop


①2つのヴァージョン聴きくらべ

まず、みなさまにお尋ねしましょう。
『JULIE』ヴァージョンとタイガース・ヴァージョン、どちらの「誰もとめはしない」がお好きですか?

この質問にはおそらく多くの先輩方が「タイガースの方!」と答えると思います。
シローのコーラスが入ってて、「うわぁ、タイガースこの曲レコーディングしてたんだ~!」という、先輩方でもリアルタイムでは知り得なかった貴重なヴァージョンの後年の公式リリースの衝撃、感動・・・そうした思いが大きいのではないでしょうか?

でも、ちょっと待って!
僕もこの曲大好きですけど、「どちらか」と言われれば『JULIE』ヴァージョンの方が「推し」なんですね。
もちろんそれは「後追い」のファンの少数派感覚でもありましょう。しかしながら、楽曲全体の仕上がりが優れているのは確実に『JULIE』ヴァージョンの方です。
これにはみなさま、こう仰るでしょう。「でもでも~、タイガースが演奏してる、ってことが重要でしょ!」
まったくその通りです・・・ただし、タイガース・ヴァージョンが実際に「タイガースの演奏」ならば。

かなりの自信を持って書きますと、「誰もとめはしない」の2つのヴァージョンは、いずれも同一の演奏者によるもので、タイガース・ヴァージョンに参加しているタイガースのメンバーはヴォーカルのジュリーとコーラスのシローだけ、というのが僕の結論です。

まず、数年前の僕なら「タイガース名義の音源であればドラムスは絶対ピーが叩いてるはず」と頭から決めてかかっていました。でも、その後僕はピーのドラミングを実際にこの耳で、ロックな曲もバラードも、スネアの音や叩き方、もちろんシンバルもタムもキックも毎年必ず生のLIVEで聴き続けているわけです。僕はレベルの低いアマチュア演奏者ではあるけれど、ピーのドラムスについて「プレイヤーの個性」はもう把握しました。
それでも判別つかないタイガース・ナンバー(あくまでレコーディング音源に限ります)は残っていますが、「これはピーじゃないなぁ」と最近ハッキリ分かってきた曲もいくつかあって、「誰もとめはしない」のタイガース・ヴァージョンもその中のひとつ。
ピーならサビでキックが突っ込むでしょうし、シンバルも「バッシャ~ン!」と豪快に行くでしょう。フロアタムの打点ももっと強い。そもそも『JULIE』ヴァージョンがスタジオ・ミュージシャンのドラマーでタイガース・ヴァージョンがピーだったならば、ここまでフレージングやフィルが同じにはならないはずです。

次にベース。タイガース・ヴァージョンはベースの音量設定が大きくフレージングの聴き取りは容易です。
サリーが特にロックなナンバーで得意とするオクターブ・フィルがまったく登場しません。逆に、コードトーンからフレーズを組み立てるタイプのサリーの演奏では聴いたことがない、半音移動の経過音奏法が登場。
69年当時でこの奏法を採用するのは、ジャズの心得があるプレイヤーでしょう。サリーがこの曲だけわざわざ慣れない弾き方をした、とは考えにくいのです。

最後にギター。こちらは自信は持てません。でもサリー、ピー不参加でタローだけ参加するものかなぁ?
それに、2つのヴァージョンでフレージングは異なりますが間奏の音色設定が同じで、演奏者が違う人とは思えないんですよ。

以上「同一演奏者による2つのヴァージョン」聴き比べを前提として、次チャプターでは僕が『JULIE』ヴァージョンの方を推す理由を書いていきましょう。

②静かなるアルバムに投入されたブラス・ロック!

ここからは、個人的な推測が大いに混ざりますが・・・僕はこの「誰もとめはしない」は「タイガース→ジュリーのソロ」とプリプロがシフトしていく過程と結果によって2つのヴァージョンが偶発的に存在していると考えます。
アルバム『JULIE』以前にまずザ・タイガースの新曲として進行していた製作途中のテイクが後日「未発表音源」リリースの陽の目を見た、という考え方ですね。

最大の根拠はホーン・トラックの進化。先述した「音源の仕上がりとして『JULIE』ヴァージョンの方が優れている」所以もこの1点に尽きます。
みなさま、試しに「ホーン・セクションの音」だけに集中してまずはタイガース・ヴァージョンの方からじっくり聴いてみて下さい。
あれっ、ホーンはなかなか登場しませんね。サビに入ってようやく噛んできますが、高い音が目立つばかりで何となくぎこちなく、寂しく感じませんか?
そこで続いてジュリーのソロの方を聴いてみましょう。いきなり「パパパ~♪」とイントロ・リフからガツン!と耳に入ってきますよね。
歌が始まっても

忘れるために ひとりきた
G7                 C7       G7

     見知らぬ街は 陽もくれる ♪
F7 F#7 G7                  C7       G7

ジュリーのヴォーカルの合間をすぐに追いかけて、「パラララパ~ラ~、パラッパッ!」と。
この低音パートの歯切れの良さ。これこそがブラス・ロックですよ!ミックスも完璧で、左サイドが高音、右サイドでは低音部隊がしっかり鳴っています。
そう、タイガース・ヴァージョンではホーン・セクション低音の肝であるトロンボーンが不在なのです。

これは、まずタイガースの新曲としてジュリーのヴォーカル、シローのコーラスを録り終えてから、「ちょっとパンチが足りないな。ブラスを入れたらどうなる?」とのアイデアが出た・・・そこでまず急場試しに吹いて貰った。つまり、アレンジを固める前の「リハ」作業です。
正にその「未完成」テイクを今僕らはタイガースの未発表音源として聴いている・・・それが僕の推測です。

アルバム『JULIE』製作の話がどの時点で持ち上がっていたかは分かりませんが、「誰もとめはしない」レコーディング中にスタッフの間でふと
「これ、ジュリーのソロ・アルバムに入れたらどうかな?」「確かに・・・1曲くらいこんな感じのロック・ナンバーが入ってて良いかもね」
な~んて話になって(もちろん会話は僕の妄想です)、東海林先生にアレンジを依頼、仕上げまで至らなかったタイガース・ヴァージョンのトラックを再利用する形で、「誰もとめはしない」はアルバム『JULIE』収録曲へとシフトされ、リリースされた、と。
もしかするとこの経緯がきっかけで、安井かずみさん=村井邦彦さんコンビで固めたジュリー・ソロデビュー案が出てきた・・・そんな順序も考えられなくはありません(さすがにそこまで行くと妄想が過ぎるかな汗)。

確かに、シローのコーラスの効果もあってタイガース・ヴァージョンのジュリー・ヴォーカルはパッと聴きだと「うん、バンドしているよね!」という感じがしてしまうのですが、しっかり比較するとヴォーカル・トラックに差異はなく(と言うか、『JULIE』ヴァージョンの0’30”あたりではシローの生き霊の声をジュリーのトラックが拾っちゃってるのが分かる笑)、その上でブラス・アレンジの素晴らしさを加味すれば、『JULIE』ヴァージョンの方が楽曲全体として「ロック」だと僕は思うのです。

アルバム『JULIE』は、後期タイガース・シングルですら散見される「ジュリーを前面に押し出して歌謡色を強め大衆性を持たせる」というプロモート戦略が徹底されたようなソロ・デビュー作品ですが(だからこそ、その対極と言える『サリー&シロー/トラ70619』のクオリティーも大いに評価されるべきなんですけどね)、そんな中に突如挿し込まれたブラス・ロック「誰もとめはしない」の存在はひと際光っています。
ファンの間でも語られることは少ないながら、ジュリー史を彩る重要な1曲ではないでしょうか。

③記念すべきファーストから今後のセトリ入りは?

僕がアルバム『ジュリー』収録曲で生のLIVEを体感できているのは、「ひとりぼっちのバラード」ただ1曲。それ以外の曲は、僕の初ジュリーLIVE『ジュリー祭り』以前を遡ってもなかなかセトリ入りが見られません。
やはりオーケストラ・サウンドのアレンジで、歌謡曲に寄せている曲想
が多いからなのかな。

ただ、古稀ツアーでの柴山さんとの2人体制を観た今となっては、今後のジュリーLIVEで「原曲のアレンジに左右されない選曲」が可能であることは確信しました。今年の「お前なら」級のサプライズを僕らはこの先毎年のように体感できるかもしれないわけで、ならばこのファースト・アルバムなら個人的には「光と花の思い出」に▲印を打っておきたいです。

「光と花の思い出」は「ひとりぼっちのバラード」「雨の日の出来事」と並び『ジュリー』収録曲の中で僕が格別に好きな曲。候補に挙げる理由はそれに加えて安井かずみさんの詞ですね。ジュリーがふとこの詞に思いを託せるような出来事があるかもしれない、と。
どちらかと言うと悲しい内容の詞ですが、爽やかなメロディーに載せて歌われるシンプルな言葉並びはとても清潔で美しい・・・「ひとりぼっちのバラード」がそうだったように、今現在のジュリーが歌ってしっくりくる詞でありメロディーではないでしょうか。

一方で今日お題の「誰もとめはしない」をはじめ他の曲はなかなかセトリ入りの想像がつきにくいです。
「マイ・ラブ」や「愛の世界のために」あたりは現在のジュリー好みかなとは思うけど、同じテーマならジュリーは近年の自作詞ナンバーの方を選ぶでしょう。
と言いながら、こちらがビックリ仰天するような今後のラインナップをジュリーは既に練っているかもしれませんし、とにかく「あと10年は頑張る、その先はエンドレス」という頼もし過ぎるジュリーの言葉が僕らには本当に嬉しく、楽しみですよね。
70代のジュリーにもますます期待しましょう!


それでは、オマケです!
今日はタイガース時代にリリースされたファーストのナンバーがお題記事ということで、若虎ジュリーのショットを数枚どうぞ。すべてMママ様所有の資料です!

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本日11月8日、ジュリーは長崎、ポールは名古屋。どちらも素晴らしいステージだったことでしょう。

では次回更新も『ホーンが入っているジュリー・ナンバー』シリーズ、この勢いで続けてまいります。
どの時代の曲にしようかな・・・お楽しみに!

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