ザ・タイガース 「帆のない小舟」
from『ヒューマン・ルネッサンス』、1968
1. 光ある世界
2. 生命のカンタータ
3. 730日目の朝
4. 青い鳥
5. 緑の丘
6. リラの祭り
7. 帆のない小舟
8. 朝に別れのほほえみを
9. 忘れかけた子守唄
10. 雨のレクイエム
11. 割れた地球
12. 廃虚の鳩
---------------------
10月です。
すっかり涼しくなりましたね。これからあっという間に寒くなってくるのでしょうか。
昨日はジュリーの静岡公演が台風のため中止となったそうです。参加を予定されたいた首都圏から遠征の親しい先輩も多く、残念なことではありますが、相手が台風では致し方ありません・・・。ジュリーは必ず、「埋め合わせをしなきゃ」と考えてくれるはず。
とにかく、今後もうこれ以上各地で台風や大雨の被害の出ないようにと祈るのみです。
さて、最近の拙ブログはこちら本館では9月の記事更新が無く、閑散状態の別館side-B(笑)にどうにかこうにか和光市レポを書き終えたのみ。
これではイカン!と気持ちを引き締め、10月を迎えての今日の更新です。
僕の次のツアー参加会場は、広い広いさいたまスーパーアリーナ。先日無事にチケットも届きました。
さいたまアリーナには「ホールモード」というのもあるらしいですが、僕が授かったのは「全方位」でないと存在しない席。会場の広さでは今ツアー最大のこの公演。みなさま、我々ジュリーファンも是非万難排して応援に駆けつけましょう!
どんなふうに見える席なのかは入場してみないと分からないのですが、たぶんステージを後ろから観る感じなのかな。想定内の会員席、ってところでしょうか。
一方、実は僕はさいたまアリーナの約2週間後、11月1日にポール・マッカートニーの東京ドーム公演にも参加します。こちらもチケットが届いて・・・手にした瞬間震えましたよ。ド真ん中ブロックの11列目です。自分史上最短距離までポールに接近!
ポールのドーム公演のアリーナ神席って、芸能人業界人コネの特別枠だとばかり思っていました。一般販売でこんな席が当たることがあるんですねぇ。
ジュリーのさいたまアリーナからポールの東京ドーム、間違いなく僕にとって特別な2大アイドルのビッグな公演、とてつもなく楽しみです。
今年は悲しいニュースも続きますが、そんな中で元・井上バンドの雄、速水清司さんがご病気を乗り越え森本太郎とスーパースターのLIVEでステージ復帰、という嬉しいニュースもありました(9.28、銀座タクト)。
LIVEに参加された先輩のお話によりますと、速水さんの名演復調ぶりは凄まじく、会場で速水さんはサリーや鈴木二郎さんとも再会されたのだそうです。
拙ブログとしても、ここで速水さん関連のジュリー・ナンバーの記事を・・・と一度は考えたのですが、思えば拙ブログ、さいたまスーパーアリーナが終わるまでは記事本文でのネタバレ禁止体制続行中なのですな~。
まぁジュリーファン界で未だに「ネタバレ我慢!」と言ってる人はもうYOKO君くらいのものだとは思いますけど、一応彼に仁義を通し、さいたまアリーナ当日までの間を『ジュリーのセトリには関係なさそうな類のタイガース・ナンバー特集月間』とさせて頂くことにしました(「月間」と言いつつ期間は半月ですけどね)。
act月間に引き続き適度に短い文量で、更新頻度に重点を置いて書いていこうと思います。
まず第1弾の今日はアルバム『ヒューマン・ルネッサンス』から、「帆のない小舟」を採り上げます。
今現在の僕等にこの詞は他人事じゃないぞ!と痛感させられるメッセージ・ソング。もちろん、そのこと抜きにしても素晴らしい名篇、名曲。頑張って書きます!
アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』は僕の知る限り、邦楽ロック史上初の「コンセプト・アルバム」。
アルバム1枚通してのテーマはもちろん、収録曲それぞれにストーリーの一翼を担わせるという点では、ビートルズの『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』以降、幾多の洋楽ロック・バンドがこぞって「なんとかそれを越えられないか」と模索し徹底的なまでに楽曲の相関性を重視する手法をとっていった・・・我がタイガースの『ヒューマン・ルネッサンス』はこの極東の島国で、いち早くそれら名盤群に名を連ねたのです。
しかもLIVE音源ではない新規レコーディング作品としては、実質これが彼等のファースト・アルバムとも言えるわけで、完全に国内のライバルとは一線を画し本当に凄い歴史的な1枚だと思います。
アルバム構成は、当時の洋楽でも類を見ない「オービタル・ピリオド」形式。つまり、最終収録曲「廃虚の鳩」がそのまま冒頭の「光ある世界」のイントロダクションを兼ねるという、輪廻無限のストーリー展開ですね。
そのストーリー・・・僕はCDでしかこの作品を聴いたことはないんですが、LPA面(「リラの祭り」まで、で合ってますよね?)では生命の誕生から人類の様々な営み、美しくも力強い自然や生物を描きます。
それがB面になると、加速的に破滅へと向かってゆく・・・破滅の原因が、我が物顔でこの星を跋扈する人類の愚行、つまり戦争であることは明白。
B面2曲目「朝に別れのほほえみを」で戦争は始まり、「忘れかけた子守唄」で戦地から還らぬ兵士とその母親、「雨のレクイエム」では大地に降りしきる黒い核の雨、さらに「割れた地球」でこの星の無残な崩壊と断末魔が描かれます。「廃虚の鳩」が生命の再生。ストーリーは「光ある世界」へと回帰します。
では、B面冒頭の今日のお題曲は?
タイトル「帆のない小舟」とは、まるで現在の世界情勢を予言するかような厳しいフレーズです。制御の帆を失いゆらゆらと揺れ漂う危ういバランスの小舟に、刻々と進む終末時計の針が突き刺さる・・・リリースから50年が経った今、なんとも身につまされる詞、なかにしさんの表現にドキリとさせられます。
僕等はこの現実世界で、その時計の針を実際に進めさせてはなりません。50年前にタイガースが紡いだ『ヒューマン・ルネッサンス』のストーリーを、この「帆のない小舟」の時点で食い止め、押し戻さねばならないと強く思っています。
オービタル・ピリオドのコンセプト・アルバムの素晴らしさとは別に、作品全体を現代への警告と受け止め、じっくり耳を傾けてみる・・・そんな聴き方ができるロック・アルバムは、邦洋含めてそうそうありませんよ。
今こそ世界は『ヒューマン・ルネッサンス』のコンセプトを改めて再評価し、現在流れている時間はもうこのアルバムのB面「帆のない小舟」までさしかかってしまっているのだ、と自覚するべきなのです。
一方、純粋に楽曲面ではどうでしょうか。
タイガース・ナンバーの歴史は、偉大なメインライター別に大きく3つの変遷を辿ったと僕は考えます。すぎやま先生の時代、村井邦彦さんの時代、最後にクニ河内さんの時代です。
『ヒューマン・ルネッサンス』の素晴らしさのひとつは、その中にあってすぎやま先生と村井さんの楽曲が絢爛にリンクしている、という特殊なクレジット構成。
ラインナップは、曲作りの力をつけたバンドメンバー、トッポとタローの作品が1曲ずつ。残りを「なかにし=すぎやま」作品と「山上=村井」作品が分け合い、なおかつコンセプト統一されているという素晴らしさです。
面白いのは、タイガースが迎えた新たなソングマスター・村井さんの曲の方がどちらかと言うと王道の曲作りであり、かつて王道スタイルからタイガースをスタートさせたすぎやま先生の曲の方が(進行やリズムなどが)冒険的、挑戦的であること。普通に考えれば逆になりそうなところで、タイガースというバンドが『ヒューマン・ルネッサンス』の時点で2人の名作曲家にどう捉えられていたのか、と考えればこれは非常に興味深い。
このアルバムですぎやま先生は、もうビジネス感覚から離れたところで「ザ・タイガースの音楽」を見ているような気がしてなりません。
「帆のない小舟」のキーはニ短調。
印象的なリフレイン部(Aメロも同進行)については
ゆら ゆら ゆら ゆら
Dm F G Dm F Am
ゆらり ゆ ら ゆら ♪
Dm C B♭ Gm E A7
こう弾けば音源とは合いますが、すぎやま先生の頭の中ではもっと複雑過激なテンション・コードが鳴っていたんだろうなぁ。
そして、曲中に登場する3人のメンバーの声。
タイガースのハーモニー、それぞれ中高低と個性の異なる声質のメンバーが揃った奇跡はよく言われることですが、「帆のない小舟」はその極みですよね。
「ゆら、ゆ~ら♪」のリフレインはサリーのあの声があって不穏な雰囲気が出せるわけですし、漂う小舟の危ういバランスを表現するリード・ヴォーカルにはトッポのビフラート気味のボーイ・ソプラノが最適でしょう。さらに「Tell me god!」のジュリーのシャウト。
それぞれ担当パートの入れ替えは考えられません。
例えばサリーとジュリーが逆だったら?トッポとジュリーが、或いはサリーとトッポが入れ替わったら?
それはそれで聴いてはみたくなりますが、やっぱり変は変でしょう。
タイガースを最初期から知るすぎやま先生、3人の適性を計算しての渾身の作曲ではないでしょうか。
後追いファンの僕がこの曲を生のLIVEで体感する、ということはもう叶わないでしょうね・・・。
僅かに可能性があるとすれば「瞳みのる&二十二世紀バンド」ですが、ピーが『ヒューマン・ルネッサンス』からレアなナンバーを選曲するなら、「光ある世界」(僕はこちらもまだ生で聴いたことがないんですよ・・・)あたりが先に候補となるでしょう。
つくづく、リアルタイムのタイガース・ファンの先輩方が羨ましいです。
それでは・・・久々のオマケです!
今日の資料は当然ザ・タイガース。ピーファンの先輩に以前お借りした『LET'S GO THE TIGERS』から・・・先日のジュリー古稀ツアー・真駒内アイスアリーナ公演大盛況、大成功をお祝いがてら、北海道絡みのショットを中心に数ページ分どうぞ~。
ということで、さいたまスーパーアリーナ公演までの間はこんな調子でザ・タイガースの隠れた名曲を採り上げてまいります。よろしくおつき合いくださいませ。
あと、side-Bの和光市レポも読んでね~(笑)。
| 固定リンク
「タイガース復活祈願草の根伝授!」カテゴリの記事
- ザ・タイガース 「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」(2022.07.04)
- ザ・タイガース 「夢のファンタジア」(2021.12.28)
- ザ・タイガース 「涙のシャポー」(2021.08.01)
- ザ・タイガース 「エニーバディズ・アンサー」(2021.07.04)
- ザ・タイガース 「海の広さを知った時」(2020.11.27)
コメント
DY様 こんばんは。
タイガースの「声」の特性を存分に楽しめるナンバーです。とにかく新鮮でしたね。
私が初めて自分のお小遣いで買ったレコードは
「サウンドオブミュージック」のサントラ版でした。(姉と共同だったかも。)
まだ家の近くにも映画館があった時代でした。
コミカルなミュージカルのバックのテーマは「戦争からのエクソダス」
今でも大好きな映画です、
タイガースと出会った頃はいわゆるフォーク系の「反戦歌」も普通に耳に入りましたが、このアルバムは「人間の目」というよりも人間の宿業を冷徹に見守る何か(時に神と呼ばれるモノ)からの視点で見ているような感じがしました。
投稿: nekomodoki | 2018年10月 5日 (金) 00時11分
nekomodoki様
ありがとうございます!
いやぁ「さすが!」のコメントを頂き目からウロコです。
『ヒューマン・ルネッサンス』のコンセプトの何が特別か、何が最先端かと言えば、このストーリーを「人類」よりも高い視点から俯瞰していることなんですよねぇ。生命の尊さと同時に、生命の平等も考えさせてくれます。
「サウンドオブミュージック」は僕も大好きです。
ギターを覚えたての頃、よく「エーデルワイス」を練習していたなぁ、と思い出しました~。
投稿: DYNAMITE | 2018年10月 5日 (金) 09時10分
DY様
こんにちは。この雨を境に秋の空気に入れ替わりそうな……台風のおかげで散々でしたが自分の運気も変わってほしいものです。
『ヒューマン・ルネッサンス』、初めて聴いた時は「何か大袈裟やな~」と好きになれず「光ある世界」ばかり聴いていました。A面1曲目だったんでレコードでも「頭出し」が楽でした(笑)。全体的に初期のシングル同様、バンドサウンドより絃とかいわゆる装飾音が目立って全然ロック的に聴こえなかったからか、初のオリジナル・アルバム!という期待が大き過ぎて肩すかし、みたいなアルバムでした、私には。
ところがタローとピーを加えたツアーで「割れた地球」やったと思ううんですが、それ以降『ヒューマン・ルネッサンス』の凄さが遅まきながら少しずつ理解できて来たような次第です。
お題曲の暗さ、重さ、フィナーレの「廃墟の鳩」に向けた大事な大事な布石なんですね。
投稿: ねこ仮面 | 2018年10月11日 (木) 12時48分
ねこ仮面様
ありがとうございます!
実は僕も最初はこのアルバムより『自由と憧れと友情』の方が好きでした。今は2枚が並び立ち、どちらかというと『ヒューマン・ルネッサンス』の方が好きになっているかもしれません。
再評価のきっかけは何といっても2011年、「ほぼ虎」ツアーに向けてタイガースの曲ばかりブログに書いていたあの時期です。要は、それまで充分に聴きこめていなかったということでしょう。
「ほぼ虎」の「割れた地球」は本当に素晴らしかったですね。ピーのあの変則打点のドラムを生体感できたことは僕にとっても大きかった・・・そのこと含めて、『ヒューマン・ルネッサンス』はやはり大変な名盤だと思っていますよ~。
投稿: DYNAMITE | 2018年10月12日 (金) 09時04分