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2018年8月 6日 (月)

沢田研二 「マッド・エキジビション」

from『act#9 ELVIS PRESLEY』、1997

Elvis1

1. 無限のタブロー
2. 量見
3. Don't Be Cruel
4. 夜の王国
5. 仮面の天使
6. マッド・エキジビション
7. 心からロマンス
8. 愛していると言っておくれ
9. Can't Help Falling in Love
10. アメリカに捧ぐ
11. 俺には時間がない

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8月6日です。
広島は今、大変な状況です。西日本豪雨による甚大な被害、継続する過酷な猛暑。そんな中にあっても広島の人々はこの日の祈りを忘れることはないでしょう。
その姿に心からの敬意を以って、僕も祈ります。


それでは拙ブログ8月は『真夏のact月間』、今日は97年の『act#9 ELVIS PRESLEY』から、「マッド・エキジビション」をお題に採り上げます。
(拙ブログとしては)短めの文量で考察控え目、徒然風にサクサク更新すると決めたシリーズ。下書きのない一気執筆ですが、今日もよろしくおつきあい下さい。



Elvis4

前回記事ではパット・ブーンのカバーで「あくび・デインジャラス」を採り上げました。
パット・ブーンとエルヴィス・プレスリー。この2人は黒人が生んだR&Bを白人文化にまで浸透させたロック黎明期にあって2大スターと称されたそうです。
キャラクター的には優等生タイプ(ブーン)と不良タイプ(プレスリー)ということで、それぞれ各方面の評価は異なるようですね。ただ、いずれも「俗」のエネルギーを持った眩いスターだったんだろうなぁとリアルタイムで彼等を知らない僕は想像しています。
「雅」よりも「俗」のエネルギーの方が強大で大衆に膾炙しやすい、というのは6月の新宿カルチャーセンターで、かの人見豊先生が講義してくださった通り。
まぁ僕は自分の名前に「雅」が入っているので、人見先生がホワイトボードに「雅」の文字を書いてくれたのを見て「お~っ!」と思いましたけど(笑)。

さて、幾多あるプレスリー・ナンバーの中、最も日本人に知られ愛されている名曲となると、やはり「ラブ・ミー・テンダー」ではないでしょうか。
当時「ロックンロール」と聞くと「不良の音楽」と決めつけていたPTA的「雅」な頭の固い大人達も、この美しいバラード・ナンバーについては抵抗感が少なかった・・・タイガースで言えば「花の首飾り」のようなスタンスだったんじゃないかな。
今現在でもCMなどで耳にする機会も多いですから、プレスリーの名前すら知らない若い人達もこの曲のメロディーだけは知っている・・・柔らかくて普遍性が高い名曲と言えるでしょうか。

その「ラブ・ミー・テンダー」をカバーしたジュリーのactナンバーが、「マッド・エキジビション」。
日本語詞は加藤直さんでもジュリーでもなく音楽統括のcobaさんなのですね。横文字のフレーズも敢えて片仮名読みの語感で、母音のコブシを効かせるようにメロディーに載せているのが面白いです。
既に記事を書き終えている「グレート・スピーカー」(『BUSTER KEATON』)同様、多忙でステージ演奏までは参加できなくなったcobaさんが、それでもジュリーのactに惜しみない尽力を注ぎ、作曲・編曲のみならず日本語詞についても名篇を残している・・・actシリーズに漲るそんな熱量をリアルタイムで体感されている先輩方が本当に羨ましい!

映像を観ずに楽曲だけで掘り下げようとすると、「マッド・エキジビション」のcobaさんの詞はかなり難解。幻想的のようでもあるし、写実的のようでもあり・・・。

行き先       知れぬ
E    G#7(onD#)  C#m  E7(onB)

スウィート スウィート ドーナッツラヴ
A                             Am         E

月を なめるは あおい天使 ♪
E  C#7  F#7      B7         E

ここで登場する「ドーナッツラヴ」とは?
プレスリーの死因にまつわる都市伝説(事実とは異なります)と何か関係があるのでしょうか。
そうそう、「ドーナツ」と言えばいわゆる45回転レコードの「シングル盤」。この「ヒット曲」流布のスタイルを確立させたのがプレスリーなんですよね。
僕は「プレスリーとドーナッツ」の関係については、変な都市伝説よりもこちらの偉大な事実(功績)の方を広く世間に知って欲しいと常々思っていますが・・・。

この曲のジュリーの歌声に何故か「慟哭」を感じてしまうのは僕だけなのかなぁ。
具体的に悲しいフレーズが出てくるわけではないのに、「泣いている」ように聴こえてしまいます。その上でコミカル(と言うより自虐的?)な感覚もある・・・不思議な不思議なジュリー版「ラブ・ミー・テンダー」。
ジュリーがこの曲の中に何か「痛み」を見出して歌っているのかなぁとも思えます。

泣いているように聴こえる、と言えば最近の曲だと「un democratic love」。
「Don't love me so」・・・「そんなふうに僕を愛さないでくれ」と歌うわけですが、じゃあどんなふうに愛して欲しいのか。それがたぶん「Love me tender」・・・直訳すればズバリ「やさしく愛して」。
act『ELVIS PRESLEY』以前に英語原詞のまま「ラブ・ミー・テンダー」を歌ったことがあるジュリーは(『ロックン・ジュリー・ウィズ・タイガース』)、その時既に「ラブ・ミー・テンダー」ってどういう「愛し方」だろう?と考えたこともあると思うんですね。
「tender」の志は昨年リリースの2曲でも重要なキー・フレーズとなっていて、「ISONOMIA」では「TENDERNESS」、「揺るぎない優しさ」ではそのまま「優しさ」とジュリーの自作詞に採り入れられています。
そう考えるとプレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」は「祈り歌」のように思えてくるし、「ISONOMIA」も「揺るぎない優しさ」も「un democratic love」も、そして一連の「祈り歌」は逆に「LOVE SONG」なんだなぁ、と昨年お正月のセットリストが思い出されます。

人の痛みを懸命に思わずして「祈り歌」も「LOVE SONG」も歌えない。ましてや「平和」は語れない。
今日はジュリーの「マッド・エキジビション」を聴きながら、そんなふうに考える夜を過ごしました。

ちなみに、独自の日本語詞でカバーされた「ラブ・ミー・テンダー」と言えば、僕がジュリーの「マッド・エキジビション」より先に知っていたのがRCサクセションのヴァージョン(アルバム『カバーズ』収録)。

Lovemetenderrc

こちらは、「核などいらない」「放射能はいらない」と歌う痛烈なメッセージ・ソングでした。


僕はこの日8月6日の午前8時15分を、(休日でない限り)毎年ちょうど出勤で職場最寄の駅を降り立ったあたりで迎えます。
行き交う人を避け路肩に佇み、祈り、歩き出した1日。
73年目の、そして平成最後の「広島原爆の日」がこうして過ぎてゆきます・・・。

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ACTを楽曲的に掘り下げる!」カテゴリの記事

コメント

DYさま こんばんは。


プレスリーの生涯、というと有名人の突然死によく付きまとう「暗殺疑惑」が否応なくクローズアップされますが。
この舞台も「ある仮説」を元にストーリーが展開していくんですよね。
結構衝撃的ですが、それはDY様の老後の楽しみ、ということで。(笑)
actシリーズを通して様々なスターの人生を疑似体験したことは、その後のジュリーの歌手としての立ち位置に大きな影響を与えたんじゃないでしょうか。
いかし、カラフルなスケルトンにおおわれたライフタイムって・・・私の想像力ではイメージが追いつきません。

投稿: nekomodoki | 2018年8月 9日 (木) 22時44分

nekomodoki様

ありがとうございます!

nekomodoki様の仰る「ある伝説」にのっとったストーリーについては、以前先輩方から他収録曲に頂いたコメントである程度の想像はできていますよ~。
たぶん『ELVIS PRESLEY』はactの中でも比較的早めに映像を観ると思いますので、老後が(笑)楽しみです。

cobaさんの詞、僕はその抽象的な部分も含めて「たぶん映像を観れば納得いく言葉使いなんだろうな」と考えていましたが、どうやらそうでもなさそうですね。
自分の想像力が試されそうな?
う~ん、自信なしです(汗)。

投稿: DYNAMITE | 2018年8月10日 (金) 11時12分

DY様
 こんにちは。今日は終戦記念日、でも、核も戦争もない世界には程遠いですね。
 この曲もどんな曲だったかな?と聴いてみたら「ラヴ・ミー・テンダー」じゃないですか。別にDYさんの本文疑ってた訳じゃありませんが(笑)。
 RCサクセションファンの私ですから、どうしてもあの『カバーズ』収録のあの「ラヴ・ミー・テンダー」にはインパクトではお題曲はぶが悪いです。しかし意外な発見というか、CDを引き続きかけていたら「心からロマンス」以降、なかなかいいじゃないですか。苦手と思ってたactシリーズ後半、プレスリーは有り!ですね、上からですみません。
 THE WHOの「リアル・グッド・ルッキング・ボーイ」に「Can't Help Falling In Love」の1節が使われているのも親しめる理由かも知れません。お題曲からかけ離れたコメント、またしてもお許し下さい。

投稿: ねこ仮面 | 2018年8月15日 (水) 15時56分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

おや、僕はCD版のact『ELVIS PRESLEY』だと、ねこ仮面様とは逆でどちらかと言うと前半が好きですけどね~(笑)。
冒頭の「無限のタブロー」が特に好きなんですよ。

『カバーズ』では、「ラブ・ミー・テンダー」も東芝からNG食らった中の1曲でしたね。
そう言えば今、オリンピック開催に絡んでサマータイム導入が検討されているようですが、清志郎が天国で「狭い日本の~」と皮肉まじりに歌っている気がしてなりません。
今からでも開催時期をずらすのが「真っ当」な政治的決断なんじゃないかと僕自身が思っているからでしょうね・・・。

投稿: DYNAMITE | 2018年8月17日 (金) 09時21分

DY様こんにちは。

せっかくの「ラブ・ミー・テンダー」なのに、cobaさんの詞は難解、この詞は、どうしても意味をこっちに投げかけてしまうので、ジュリーも歌い出しあたりはそれらしく歌っているし、機嫌のいい歌ではないですよね。真っ向から甘いラブソングの詞でときめかせて欲しかったな。
「actエルビスプレスリー」は詞がちょっと面倒くさいなと感じるところがあります。そんな視線がエルビスを早死にさせたのか、早死したからそういう解釈をするのか、生身の人間なのにスーパースターは大変ですww
ガールズバンドのストレートで陽気な演奏にのってイカレた兄ちゃん風に歌っているロックンロールのジュリーをいいわ~♪と思って聴いています。初期のエルビスの雰囲気を意識して出しているけど、もともとジュリーはこういうロックンロールが得意で好きだと思う。「ジャンジャンロック」にはそんな感じがあります。

42歳で逝ったエルビスをはるかに超えた70歳のジュリーのステージを見ている今はとても大切な時間です。

投稿: momo | 2018年9月25日 (火) 12時19分

momo様

ありがとうございます!

僕はこのcobaさんの詞は、敢えて聴き手に何も考えさせないというか、不思議な語感を第一に仕上げたのかなぁと想像しています。ただ、映像を観るとまた解釈が変わり、意味を追求したくなるのかもしれませんね。

僕はこの作品のガールズバンドの演奏、大好きです。ちょっとルーズな感じで。
タイガースや、初期井上バンドにもその雰囲気はあったとのではないでしょうか。井上バンドは速水さんが加入し、さらにサリーが抜けた後は腕自慢のバンドになりましたけど、初期の演奏は良い意味でルーズで危なっかしい空気もあり、個人的にはそれがジュリーにとても合っていたんじゃないかと思うのですが・・・。

ジャンジャンロックはストレイ・キャッツですけど、他でもないブライアン・セッツァーが「エルヴィスに似ていないものはロックではない」と言っているくらいですから、もちろんプレスリーを彷彿させますよね~。

投稿: DYNAMITE | 2018年9月25日 (火) 15時48分

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