« ザ・タイガース 「BA-BA-BANG」 | トップページ | 沢田研二 「しあわせの悲しみ」 »

2018年5月24日 (木)

沢田研二 「懲りないスクリプト」

from『Beautiful World』、1992

Beautifulworld

1. alone
2. SOMEBODY'S CRYIN'
3. 太陽のひとりごと
4. 坂道
5. a long good-bye
6. Beautiful World
7. 懲りないスクリプト
8. SAYONARA
9. 月明かりなら眩しすぎない
10. 約束の地
11. Courage

--------------------

みなさま、古稀ツアー後半の申し込みは忘れずに済ませましたか?
今年から音楽劇がなくなり、夏からのツアーまでの間の「ジュリ枯れ」期間が長いですね。でももうツアー初日まで2ヶ月を切りました。あと少しの辛抱です!

今月は悲しい訃報も相次いで・・・先週は井上バンド時代のジュリーのライヴ・アルバムをひたすら聴いていました。今週に入ってからはYou Tubeで西城さんのシングル・ヒットをおさらいしています。
素晴らしいプロデューサー、素晴らしいソングライター・チームが組まれ、素晴らしい演奏がある。70年代、80年代にアイドルと呼ばれた歌手の楽曲、パフォーマンスの何と素晴らしいことか、と改めて感じました。それはジュリーが作ってきた道、時代なんですよね・・・。


さて今日は”作曲家・ジュリーの旅”シリーズの第4弾。
90年代ジュリーの作曲作品ということで、アルバム『Beautiful World』から「懲りないスクリプト」を採り上げたいと思います。
このアルバムには豪華な作曲家陣が起用されヴァリエーションに富んだ名曲達を提供していますが、ジュリー自身の作曲作品も3曲収録されています。
「SOMEBODY'S CRYING」「Courage」そして今日のお題「懲りないスクリプト」。僕はアルバムの中でこの3曲が特に好きなのです。

建さんプロデュース期に入って、しばらくジュリー作曲のナンバーがオリジナル・アルバムでお披露目されることなく3年が過ぎ・・・そのぶん作曲家・ジュリーの魅力はactで炸裂していたとは言え、一方では沸き上がる作曲活動へのさらなる渇望を持て余しつつ、アイデアを練り込む雄伏期間でもあったでしょう。
『Beautiful World』ではタイプの異なる名曲を3曲一気でブチ込んできたジュリー。
その作曲法の進化、素晴らしさについて、今日も張り切って書いていきます!


①建さんプロデュース期の隠れた名盤!

まずはアルバム『Beautiful World』の話を。
EMI期の吉田建さんプロデュースのアルバム5枚の中では地味、というのが多くのジュリーファン共通の認識のようです。他の4枚と違ってド派手に迫る豪快なナンバーが収録されておらず、ギターよりもキーボードの活躍が目立ちます。
アレンジもリズムに重きを置いて「お洒落」である代わりに派手さでは劣る、と。
その点は僕もそう思います。でも、しみじみ好きなんですよねぇ、このアルバム。

収録曲の中で僕が生のLIVEで体感できているのは2曲。「約束の地」については今後も必ずセットリスト入りするであろうツアー定番曲ですが、「SOMEBODY'S CRYING」を生で聴いたことがある、というのは最近になってジュリー堕ちした若い方々、中抜け復帰した先輩方が羨むレア度高めの体験なんじゃないかな。
まぁ『歌門来福』(2010年お正月)って全体的にそんなセトリだったんですけどね。

アルバム最大の個性は、作詞が覚和歌子さんで統一されていること(「Courage」のみジュリーとの共作)。僕は歌詞カードを熟読しながらアルバム通して聴き込むタイプなので、このアルバムでの「覚さんの詞からコンセプトを統一できないか」という製作スタンスはかなり好みと言えます。
そう言えば、先頃再発されたこのアルバムの歌詞カードってどんなレイアウトなんですか?
僕は幸運にも『ジュリー祭り』後にオリジナル盤を安値の中古で入手することができて、独特の「見開き」歌詞カードも気に入っています。


Beautifulworldlin

先の再発盤がここまで再現されているのかどうか・・・気になるところです。

前作『A SAINT IN THE NIGHT』での鮮烈な共同製作作業が実現、覚さんの詞を気に入ったジュリーは、引き続きアルバム『Beautiful World』でも覚さんに収録全編の詞を依頼・・・後追いファンとしては、そんな認識で合っているのでしょうか?
覚さんの作品が人間・ジュリーの生き様とリンクしてくるのはもう少し先のことですが(アルバム『sur←』あたりからです)、女性作詞家らしい奔放さ、男性では描けない視点からの「確信のある男らしさ」は既にここで発揮されていますね。
例えば今日のお題「懲りないスクリプト」。
気分良く羽根を伸ばしフワフワしている「君」にジェラシーを燃やす主人公。このシチュエーションを男性作詞家が描くと良くも悪くも「下衆」感が出がちです。そこが覚さんにかかると、「君」がどれほど素敵なのかを僕だけが知っている、という視点で「やせ我慢しない」主人公を描くわけで、阿久さんとは対極です。

ジュリーはどちらかと言うと「相手に惚れ込んで弱みから恥からすべてを晒せる」ほどの愛情を持てる男を「男らしい」と感じ、自らにも投影しやすいのかな。ならば、覚さんの詞はピッタリでしょう。
結果、「カッコついてない状態がカッコイイ」というジュリーの魅力が引き出されます。時代を遡って「どうして朝」あたりにも通じる名篇ではないでしょうか。
僕は個人的に「男性より女性の方が格上」と思って生きていますし、世の男性がすべてそう思っていれば世界は平和に違いないとすら考えるほどですので、「懲りないスクリプト」に登場する男女の揉め事が結局主人公の「服従するは我にあり」的な確信で解決するであろう描き方はとても微笑ましく、好感度が高いのです。

また、覚さんで統一された作詞クレジット以外でアルバム『Beautiful World』の特性と言えば、各収録曲それぞれのリズムの多彩さが挙げられるでしょう。
そもそも建さんプロデュースの5枚はリズム重視のアレンジですが、これはその中でも突出した1枚。
「Beautiful World」「SAYONARA」と、レゲエ調のリズムの曲が複数収録されているのはジュリー・アルバムとしては珍しいですし、他にもソウルな「SOMEBODY'S CRYING」、3連バラードの「太陽のひとりごと」、ボサノバ風の「坂道」、ハーフタイム・シャッフルの「a long good-bye」など・・・原曲自体が持つリズムの個性を建さんがあの手この手で料理しているんですね。
そして「懲りないスクリプト」が16ビートのポップスです。これぞ「メロ先」ジュリー作曲の真骨頂。
次チャプターではこの魅力的な名曲に絞って考察を進めていくことにしましょう。


②90年代16ビート・ポップスのお手本のような名曲!

ここでは、僕がこの曲のジュリーの作曲作業を、「コード先」ではなく「メロ先」であると推測するいくつかの根拠を書いていきたいと思います。

第一は、メロディー(ヴォーカル部)に関して最後まで調号の変化が登場しないこと。
「懲りないスクリプト」のキーは変イ長調ですが、間奏部ではヘ長調へのカッコイイ転調があります。しかしこれはアレンジ段階で建さんが考案した進行と見るべきで、ジュリーのヴォーカル部は一貫して変イ長調の王道。変則的な箇所はまったくありません。
かつて堯之さんが語った「沢田は、普通では考えられないようなコード進行の曲を作る」という言葉は、ジュリーの「コード先」作曲作品に限られるものと僕は考えています(一部例外を除き70年代までの楽曲)。

ジュリーが、知っているコードを凡例に囚われず並べて作曲する場合は(天賦の才も手伝って)周囲が驚く斬新な進行となる一方で、鳴っている和音にメロディーが縛られるということも生じます。反対に、脳内に浮かんだメロディーから作曲にとりかかる際には、自分にとって歌い易く無理のない「好みの歌いまわし」が自在に操れる代わりに、進行自体はシンプルになりがちです。
もちろん鍛錬を積めばこの限りではありませんが、特に「ここのメロ、カッコイイ!」と自分で気に入ったものができれば、やみくもに凝った進行を採り入れず頭で生まれたそのままに仕上げる方が良い場合が多いのですね。メロディーを「線」、楽曲を「絵」と例えると、秋風先生が「勢い重視!生きた線を描け!」と若い弟子達に特訓を課していたことと理屈は同じです(あ、朝ドラ観てない人にはワケ分からない話ですみません)。
結果「懲りないスクリプト」は、メロディーの勢いそのままに、シンプルなコード進行を以って完成しました。

第二に、この曲のリズムが16ビートのポップスに仕上げられていること。
「コード先」の作曲の場合、ジュリー自らが「ギターを弾きながら」作るわけですから、まず「ギターがちゃんと弾けて、なおかつそれに合わせて歌う」ことができていなければなりません。そうなると、ジュリーの弾くギター・ストロークがその曲のリズム・パターンとして既にデモ音源で固まっているでしょう。「弾き語り」に適したエイト・ビートやシャッフル、3連バラードの出現率が高いのは自然なこと。
これが16ビートとなるとなかなか・・・最初から「この曲は16で」と決めてかからないとデモ段階でそこまでは出てこないと思います。

対して「メロ先」の作曲だと、もちろん後からコードを当てるには当てますが、伴奏は小節頭に「じゃ~ん♪」とひと鳴らしとか、そのくらいの(リズムに限っては)ラフな状態でデモ音源が作られます。
すなわち、アレンジャーによるリズム解釈の自由度が跳ね上がるのです。
メロディーの抑揚から適性のリズム・パターンを導き出す作業は、本来ベーシストである建さんにとって本懐、真骨頂。エモーショナルな16ビートの導入は、作曲者ジュリーも大いに納得の仕上がりだったはず。


ちなみに僕が「16ビートってこんなにポップになりうるんだ」と初めて学んだ曲は、佐野元春さんの「ニュー・エイジ」でした(邦楽ロック16ビート・ムーヴメントの先駆け的アルバム『VISITORS』収録)。
よく間違われることが多いのですが、16ビートというのは「テンポの速いビート」と同義ではありません。と言うか、当然例外も多々あれど16ビートのナンバーって基本テンポはあまり速くないです。
ジュリー・ナンバーで「高速」代表格の「愛まで待てない」や「彼女はデリケート」は、16ビートではないのですよ。「彼女はデリケート」には銀次さんのアイデアで16分の3連のニュアンスが加味されているので混同しやすいですが、これら2曲はいずれも「破天荒に高速なエイト・ビート」です。
逆に、16ビート・ポップスのお手本のような名曲「懲りないスクリプト」は「忙しく」は聴こえるけれど、曲に合わせて「1、2、3、4」と数えると実は落ち着いたテンポであるとお分かりになるはず。
曲の1小節ぶんを馬車に例えるならば、8人乗っている時と16人乗ってる時ではどちらが速く走れるのか、ということですね。

また「速さ」とは別に、16人も乗っていると馬車の運転自体が大変です。制御し辛い。
しかし80年代以降、その制御し辛さを革命的に解決した「リズムボックス」が流行。その影響を経て、やがて16ビート全盛時代が到来しさらに進化していきます。
「懲りないスクリプト」はそのシンセ・プログラミング採用パターンの進化上に位置する作品のひとつ。僕自身はいわゆる「打ち込み」のアレンジにさほど抵抗の無い方ですけど、それでももし「懲りないスクリプト」がリンドラムの演奏、音色だったら曲の評価は一段下がったと思います。
しかしそこはさすがのPONTAさん、しっかり生音なんですよね。機械のプログラミングと人間の生音の共演にしてガチンコ勝負です。

あと、アレンジの建さんはイカ天審査員時などの発言からサンプリング全面否定派のように語られることがありますが、決してそうとは言い切れません。ただ、「もたれかかるな」「依存するな」と。
制御されたリズムと対等に勝負しそれを凌ぐ技量を持て、ということです。「グルーヴ」において人間は機械に勝る・・・これは今後も永久の真理ですから。
ジュリーの「懲りないスクリプト」は、演奏面でそれを証明している1曲ではないでしょうか。

「メロ先」の作曲は最初から自分の好みの抑揚をメロディーに組み込めますから、ヴォーカル・テイクにジュリーならではの魅力が反映されるのは当然。
「懲りないスクリプト」では特に語尾に注目です。
例えば

新しいルージュとジョーク
A♭          E♭

何が気分の Standard Jazz
D♭            A♭

君の視線は逸れて ひとり歩きする ♪
D♭                            B♭m7   E♭7

「Standard Jazz♪」では最後の1音が跳ね上がり、ジュリーはビシッ!とジャストでその高さに到達。これは「突き抜ける」感覚。一方で「視線は逸れて♪」の最後の「て」は1拍の中に細かい音階の下降があり、こちらは粘り強い着地感。いずれもジュリー・ヴォーカル独特の、語尾の表現ですよね。
僕はこの曲、メロディーについてはBメロよりもサビよりもこのAメロが好きです。覚さんの歌詞だと

密かなジェラシー ふりまわされて
D♭            E♭   D♭             E♭

今夜もきっとモメる ♪
D♭         E♭   C7

のところが好きなんですけどね。
おそらく作詞作業はジュリーの作曲後だったと推測しますが、「モメる」なんてフレーズが素晴らしくメロディーと合っているのが覚さんのセンスだと思います。
みなさまはいかがでしょうか。


③糸井重里さんが作曲家・ジュリーに迫る(前編)

今取り組んでいるのが”作曲家・ジュリーの旅”シリーズということで、今回と次回のチャプター③では、お題曲とは直接関係無いのですが、81年に糸井重里さんの番組でジュリーがゲスト出演したラジオ音源について書いておこうと思います。

番組名は『音の仲間達』で、たぶん週一で糸井さんが担当していらしたのかな。糸井さんはこの時期ちょうどジュリーの作品制作に深く関わっていて、作詞が糸井さん、作曲がジュリーというコンビの名曲も次々に誕生。
放送内容をご存知の先輩方も多いかもしれませんが、ジュリーの「ソングライターとしてのパーソナリティー」を身近で感じ高く評価する糸井さんが、80年代に入って「作曲開眼」したジュリーを掘り下げその手管に迫るという大変貴重な放送回ですので、僕自身の勉強にもなりますし、じっくり吟味しながら書いていきます。
まず、「TOKIO」で初めて仕事を共にした2人がお互いの第一印象を語るところからトークはスタートです。


♪「TOKIO」(アルバムヴァージョン!)オンエア

-JULIE-
まず(「TOKIO」の)詞が来て、字を見てね。その字が、目をくすぐるような字でね(笑)。「ん?」っていう感じでね。
読んでいくとね、ブッ飛びましたね。それ以前に、コピーライターとしての糸井さんの話を聞いてて。ある種コピーライターなんていうと、すごい憧れを持ってね。羨望を持って見てたから、どういう人なのかなぁっていう。くすぐるような字を書くんで「どうなのかなぁ」って心配してね(笑)。
でも(会ってみると)話がすごい好きな人みたいでね。割と僕はいつも黙って聞いてる方だから」


なるほど、そういう点では相性抜群だったということですか。加瀬さんもそうだったように、ジュリーは話好きな人とウマが合うようですねぇ。


-糸井さん- 
僕は沢田さんのことを前から知っていまして。
ただ衣装とかね・・・お化粧とかしてる人に会うとね、あがるんですよ僕。普通に「沢田研二です」「こんにちは」って時はいいんだけど、例えば一番最初にね、コマーシャルの撮影の現場に行って、その時は挨拶はしなかったんですけど、ちゃんと衣装着てたわけね。もうねぇ・・・ダメ。何にも言えない(笑)。
あとテレビで一緒に出させて頂いたことがあったんですけれども、その時も沢田さんがちゃんと歌った後で話をしたもんだから、「あの人がこの人?」と思うと恥ずかしくて。始めから普段着でいれば、普通に「同い年の人」としていられるんだけど。
二度目はどこかスタジオで加瀬さんに紹介して頂いたんですけど、「あっ沢田さんだ」と。「年いっしょ!」とかそればかり思っててね。


糸井さんの気持ちは分かりますねぇ。女性の場合はどうか分かりませんが、男って初対面の人に年齢を聞いて「タメ」だと分かると余計な気兼ねがスッと無くなると言うか、自然に関係を構築できるんですね。
例えば僕も、最近の例だと一昨年にお友達になって今もやりとりが続いている京都の男性ジュリーファンの方と最初に電話でお話した時がそんな感じでした。
糸井さんとしては、「スーパースター」ジュリーを前に緊張は隠せないにせよ、「同い年」というところに気兼ねの無さも感じて、なんとなくもイイ雰囲気で接することができたのではないでしょうか。


♪「嘘はつけない」オンエア

-糸井さん-
(ジュリーがデビューしてから)何年もの間いろんな人(作家)と組んでやってこられたわけなんですけど、どんな人がいました?

-JULIE-
最初タイガースの時はすぎやまこういちさん、橋本淳さんがしばらく続いて、途中からなかにし礼さんなんかも入ってきて、山上路夫さん、村井邦彦さん。あとPYGがあって、安井かずみさん、井上堯之さんとか大野さんとか。1人(ソロ)になってから加瀬さん、安井さん、山上さんもありました。で、大野さんと阿久悠さん。たまに刺激が欲しい、なんて感じで荒井由実さんとか。
自分で作ったりもしてました。久世さんも1回ありましたね。そして最近糸井さん、加瀬さん。一番新しいのが三浦さんですね。

-糸井さん-
そうやってたくさんの人とチームを組んできて、その度に沢田さんっていう人は少しずつ変わってゆく?

-JILIE-
そうですね。

-糸井さん-
その「変わる」ってことに対する冒険心みたいなものは?

-JULIE-
割と僕は「こうしたら?」とか言われて「やってみようかな」と思って。言ってくれた人が想像してるのと(自分が)やったことっつうのは多少ズレはあるんだけど、常にこう「作っていく」っていうかね、「演じる」っていうか。すごい面白いしね。
自分自身で詞を書いたり曲作ったりってのはたまにはやってるけど、ほとんどそうじゃないでしょ?
割とみんながその時期その時期で・・・売れてる時期もあれば売れない時期もあったりすると、その売れない時期に「なんとかしてやりたい」と思うらしいのよね。そういう人間らしいの、僕は(笑)

-糸井さん-
言える言える!

-JULIE-
その度に(チームを組む)人が変わっているようですね。なんつうか、本当に恵まれた環境に・・・15年でござんすよ(笑)

-糸井さん-
だから、自分を壊してもいいや、って気持ちがると、逆にみんなが「いつでも大丈夫よ!」って言ってくれるみたいな?

-JULIE-
そう。

-糸井さん-
もうひとつね、僕は作る立場からなんだけども・・・沢田研二っていう、言ってみれば絵描きにとっての素材の方が変わっていく代わりに、作り手がね、沢田研二っていう絵を描くことによってまたひとつ大きくなるっていうことをしてきたんじゃないかなと思うのね。関わった人達が、沢田研二っていう絵を描くことで作家としての自分を伸ばしてきたっていう。
これは作る人にとっても「尽くすこと」というか、幸運なことだというふうに思います。


♪「クライマックス」オンエア
♪「I LOVE YOU, TOO」オンエア

-糸井さん-
え~、恐れていたことが起こりました。
この歌(「I LOVE YOU, TOO」)は僕のために沢田さんが作ってくれたんですけど・・・あ、前の曲「嘘はつけない」「クライマックス」は沢田研二作曲で、「I LOVE YOU, TOO」もそうです。
恐れていたことというのは、1月にこの曲の作曲者である沢田研二が、大阪フェスティバルホールと日比谷公会堂で歌ってしまったという(笑)

-JULIE-
もう歌えないでしょ?(笑)

-糸井さん-
もうやだ!そういうことをしないように!(笑)比べないで聴いてください、みなさんね~。


ちなみに僕は糸井さんのためにジュリーが作曲した「I LOVE YOU, TOO」というナンバーをこのラジオ音源で初めて知りました。と言うか、糸井さんが「歌手」としても活躍されていたことすら知らなかった・・・不勉強にてお恥ずかしい次第です。
「I LOVE YOU, TOO」は、「おまえがパラダイス」にも似た3連ロッカ・バラードですが、ジュリーらしい意表を突く展開もあり一筋縄ではいかない面白い曲ですね。


-糸井さん-
とっても、「歌う人が作った曲」だなって感じが僕なんかしてるんですけど、どんなふうに作っているのかってお話をちょっと聞こうと思うんですけど・・・沢田作曲工場の秘密!(笑)

-JULIE-
僕は、早いのが自慢なんですけどね。作るのが。

-糸井さん-
詞を渡すと翌日にはできてる(笑)。どの曲もそうだったの?

-JULIE-
あまり深く考えこんだりしないんですけど。
だいたい作るのはギターいじくりながら作るんですけど、ギターだと割とコード進行とかそういうのに囚われてしまって、なかなか発展していかない。最近ではもう、しっちゃかめっちゃかにカセット回しといて、詞に合わせていろんなことを勝手気ままにやるわけですよ。その中で、聴き直した時に「あっ、ここイイ!」ってチェックして、コードを今度は逆にとるわけですね。このコード、あのコードっつって。そういう具合に割と無責任風で。

-糸井さん-
ギターで作るっていうよりも、囚われていないってのが、やっぱり。で、歌って作るからさ、歌う人の歌ができるんですね。
(ジュリーの作曲について)周りの音楽関係の友達はさかんに感心して、僕も「これは新しい作曲家が活躍するのではないだろうか」と思ってるんですけど。


いやぁ、「以前はコード先で作曲していたのが、最近メロ先に変わった」というジュリーの話を引き出しているだけでもう、糸井さんのこの番組は貴重です!
ちなみにジュリーは2000年代になると完全に二刀流、つまりコードもメロディーも最初から連動して作曲していると分かる曲が増えていきます。次のお題予定曲がその一例ですから、そこで改めてそのあたりを解説したいと思っています。
いずれにしても80年代に入り作曲家・ジュリーは一段進化したのだ、と糸井さんがこの時掘り下げてくれた・・・リアルタイムでラジオを聞いていた先輩方にとってとても嬉しい内容だったのではないでしょうか。

ひとまず今日はここまでにしまして、番組後半のお2人のやりとりはまた次回のチャプター③にて。


それでは、オマケです!
今日は92年のアルバム『Beautiful World』からのお題でしたので、同年のact『SALVADOR DALI』パンフレットから数枚どうぞ~!


Dali12

Dali13

Dali22

Dali28


では次回お題で”作曲家・ジュリーの旅”シリーズの締めくくり。2000年代のナンバーを採り上げます。

実はひと月前にこのシリーズを書くと決めた時、2000年代からはアルバム『忘却の天才』収録の「1989」を採り上げる予定でいました。しかしその後、隣国をとりまく国際情勢に大きな動きがあり、今後の推移も予測し辛いという状況。
リリースから20年以上が経とうという時ですが、現在起こっているこのことは、「1989」をお題とするなら避けては通れない考察課題です。
ですから「1989」については情勢の推移を注視し、しかるべき機会を見て僕自身の考えも纏まってから書くことにします。古希ツアーのセットリスト入り有力と考えている曲でもありますが、ツアーが終わるまでに考察が纏められるかどうか。

で、今回代わりに採り上げる曲は、アルバム『CROQUEMADAME & HOTCAKES』から。
これまた歌詞解釈はとても難しい1曲なのですが・・・。先述の通りジュリーの作曲に「メロディー、コードが同時」という二刀流手法が表れた名曲です。


僕は先週、今週と珍しく身体の調子は良いですが、涼しくなったり暑くなったりと極端な気候の毎日です。
みなさま充分お気をつけください。

|

« ザ・タイガース 「BA-BA-BANG」 | トップページ | 沢田研二 「しあわせの悲しみ」 »

瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!」カテゴリの記事

コメント

DYNAMITE様

このアルバム、10日ほど前に買いたてほやほやで、まだまだ十分聴き込めていませんが、全体を通してクセがなくて優しい雰囲気、繰り返し聴きたくなるアルバムだと思いました。
ちなみに歌詞カードはこの写真と同じ見開きでしたよ〜

アルバムを買うと、最初は気に入った曲だけ繰り返し聴くことが多いのですが、このアルバムは最初から最後まで飛ばす曲はなく、いつも通して聴いています。全体通して似た雰囲気の曲が多いのに飽きないのは、リズムの多彩さということもあったのか!と納得しました。

地味そうに思えたので購入がだいぶ後回しになってしまいましたが、考えてみれば私が特に好きなアルバムは「今僕は倖せです」と「新しい想い出2001 」なのでした。地味そうという理由で後回しにしていた自分が意味不明です(笑)
このアルバムもこれからじっくり聴き込んで参ります!

佐野さんの「ニュー・エイジ」、以前コメント書かせていただいたThe Grooversもカバーしていて、私はそちらで覚えました。
とてもかっこいいアレンジになってますので、機会があったらぜひ聴いてみてください〜!!

投稿: かあさん | 2018年5月26日 (土) 15時41分

かあさん様

ありがとうございます!

歌詞カード、そのまま再現されていましたか~。
『Beautiful World』、仰る通り優しいアルバムです。ゆったりとした全体の流れは、建さんプロデュース期では異色と言えるかもしれませんね。個人的なお勧めはやはり記事に書いた通り、ジュリー作曲の3曲ですかね~。
ジュリーの声も淡々としつつ味わい深いです。そろそろこれまでLIVE未体感のこのアルバム収録曲を聴きたいところなのですが、古希ツアーではどうなるでしょうか。

Grooversの「ニュー・エイジ」、You Tubeで探してみますね。

投稿: DYNAMITE | 2018年5月29日 (火) 09時18分

DY様 こんばんは。

「To be continued」
の前には必ず新たな火種が投入されるのがドラマのセオリーですから。(笑)
で、現実はたいていナナメ下。ナナメ上だったらパニック、かな?
ジュリーの曲と覚さんの詞は相性いいですね。
自然に寄り添うように耳になじみます。

投稿: nekomodoki | 2018年6月 1日 (金) 20時55分

DY様
 こんばんは。今日から「SPLEEN」の6月。ジュリーのツアーはいよいよ来月開幕、どんな編成なんでしょう?どうでもいいですが、安田記念は◎②サトノアレス、どうなりますやら。
 お題曲、アルバム中では「alone」「a long good-bye」と並んで私のお気に入りベスト3です。私の記憶が正しければアルバム中唯一ライブで演奏されていない曲です。ライブ映えしそうな曲ですけどね。
 ただアルバム自体はさほど好きじゃないんですよね、またしてもすんません。全曲ラブソング?で後半の曲が何か区別つきにくい?、おっしゃるようにキーボード前面出過ぎ?、はたまたおしゃれ過ぎてストーンズ的なカッコ良さが感じられない?、ジャケットが難解?、大半のファンの方はそんなこと気になさらないでしょうから、あくまで私見です。でも先に挙げた3曲はめちゃ琴線に触れるんですよね。何が違うんでしょう?(笑)
 

投稿: ねこ仮面 | 2018年6月 1日 (金) 22時42分

nekomodoki様

ありがとうございます!

なるほど「To be continued」直前の火種ですか。
どうやら覚さんのこのスクリプトでは主人公・ジュリーが毎回すったもんだする展開ですかね~。

覚さんの詞はこの後徐々にジュリー本人像とシンクロしていきますが、このアルバムではまだ距離がありますね。それがまた新鮮で良いものです。ピュアな感じがしますね。

ねこ仮面様

ありがとうございます!

えっこの曲ツアー・セットリストから外れていたんですか?
もしそうなら、打ち込み併用のステージ再現にジュリー或いはJAZZ MASTERのメンバーがNGを出したんでしょうねぇ。
その後「緑色の部屋」「嘆きの天使」などでは打ち込み再現も見られますから、やはり「懲りないスクリプト」の場合は建さんが、レコーディング作品は良しとしても生演奏については嫌ったのかな。

ちなみに、古稀ツアーでは打ち込みの採用が大いにあり得ると僕は予想しています。
セトリ予想シリーズで今下書き中の「生きてたらシアワセ」はその点を突き詰めるには格好のお題です。

安田記念のご健闘、お祈りしています。
「観るだけ」の気軽な身としては(笑)、無印の「ブラックムーン」を推奨しておきます。

投稿: DYNAMITE | 2018年6月 3日 (日) 11時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 沢田研二 「懲りないスクリプト」:

« ザ・タイガース 「BA-BA-BANG」 | トップページ | 沢田研二 「しあわせの悲しみ」 »