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2018年4月

2018年4月29日 (日)

沢田研二 「一人ベッドで」

from『JULIEⅣ~今 僕は倖せです』、1972

Julie4

1. 今、僕は倖せです
2. 被害妄想
3. 不良時代
4. 湯屋さん
5. 悲しくなると
6. 古い巣
7. 
8. 怒りの捨て場
9. 一人ベッドで
10. 誕生日
11. ラヴ ソング
12. 気がかりな奴
13. お前なら

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更新間隔が空いてしまいました~。
世間はいよいよゴールデン・ウィーク。我が家は先週の金土日とカミさんの実家のお墓参りで関西方面を旅しましたので、カレンダー通りのゴールデン・ウィークは遠出はせず、近場にちょこちょこと出かけるだけになりそうですが、みなさまはいかがでしょうか。

先週の関西の旅は、京都→守山→西脇→加古川→神戸→芦屋→大阪と結構あちらこちらに移動がありまして、各地で美味しいものを頂いてきました。


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↑ 京都駅新幹線改札内のお蕎麦屋さん『松葉』さん。
カミさんがこのお店の「にしんそば」が好きで関西旅行の際は必ず立ち寄っていますが、僕はやはり蕎麦は「もり」派です。個人的には、蕎麦は今くらいの季節が一番美味しいと思います。


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↑ 守山にて、たまたまマグロの解体ショーをやっていまして、見た後にカミさんの両親に大量の中トロと赤身を買って貰いました。夜、ちょっと食べ過ぎた・・・。


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↑ 西脇にて、カミさんが通っていた小学校の真ん前にある播州ラーメンの有名店『大橋ラーメン』さん。今回初めて訪れましたが、甘みの強い醤油味は噂に違わぬ絶品でした。


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↑ 神戸三宮の老舗ステーキ店『モーリヤ』さん。渋み走ったカッコ良いシェフのおじさま(と言ってもたぶん僕より年下笑)が目の前でランプとフィレを焼いてくれました。溶けるような柔らかさでした。


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↑ 結婚前にカミさんが住んでいた芦屋にて、有名なパン屋さん『パンタイム』さん。朝9時半くらいに行ったのですが、その時点で品切れ(と言うか焼くのが追いつかない状態)続出の大賑わい。


・・・と、ちょっと膝の調子が悪かったのですがのんびりとした良い旅で、リフレッシュしてきましたよ~。


さて、お題に関係の無い枕はこのくらいで。
拙ブログでは今日から5月いっぱいの間、”作曲家・ジュリーの旅”シリーズということで、ジュリー自作の名曲群をお題に採り上げていきます。
70年代が2曲、80年代、90年代、2000年代がそれぞれ1曲、計5曲の考察記事を書く予定。まず今日は70年代、作詞・作曲ともにジュリーのペンによるナンバー、72年リリースのアルバム『JULIE Ⅳ~今僕は倖せです』から「一人ベッドで」を選びました。

実は、いつも仲良くしてくださる先輩(ジュリーだけでなくビートルズ・ファンとしても先輩です)が急病で入院されまして、「今弱っているので、元気が出る系ではなく何か癒され系の曲を」とリクエストを頂きました。
入院中のかたに向けて「一人ベッドで」って選曲として逆にどうなの?というお声も聞こえてきそうですが、僕はこの曲「癒し系」だと思うんですよね~。
確かに歌詞はちょっと辛い感じなのですが、いざメロディーに載ると不思議に鎮痛効果があり、演奏も穏やかです。それに、このジュリーの声ですよ!張り上げる箇所もなく訥々と語りかけるように歌っているのも癒され要素ではないでしょうか。

あ、その先輩からは「病人にも優しいコンパクトな文量で」とお願いされたのですが、それは無理(と言うかむしろいつもより長めになるかもしれません汗)。
毎度毎度の長文ですみません・・・。


①『JULIE Ⅳ~今僕は倖せです』製作の意義

僕などは後追いのファンですし、ジュリーの歴史を知れば知るほど「稀有な存在」とか「天や時代に選ばれし人」と言いたくなりますが、その歴史を線ではなく点としてそれぞれの時代に目を向けると、決してジュリーはただ選ばれていただけでなく、自らの判断を以って進むべき道を切り開いていたのだと分かります。

先日「美しい予感」の記事で、最先端のプロフェッショナルに囲まれリードされた『JULIEⅡ』の演奏が個人的には好みである、と書きました。
ただし、『JULIEⅡ』のようなレコーディング製作、プロデュース法だけがその後続いていたとしたらジュリーの歴史はどうなっていたでしょうか。次第に井上バンドがジュリーに関わる機会が減少し、ジュリー個人は歌謡界のごくごく一般的な「ソロ歌手」となっていく・・・そんな道程も可能性はあったかもしれません。
それを「自分はロック・バンドと共に歌いたい」というタイガース以来の思いを持ち、巡ってくるタイミングを逃さず自ら道を切り開いていったジュリーだからこそ、この50年の実際の歴史が作られているでしょう。
製作サイドの思惑からすると、もしかしたら「逆」と言えるようなことであっても、ジュリーはその都度バンドに拘り、もちろん一方では「用意された」外部プロフェッショナルとの共演も拒絶することなく歌手人生の糧としてきた・・・頑固な信念にまで至る自分自身の好みと、聞き分けの良いプロ根性。両輪フル稼働するジュリー70年代初期の製作活動は正しく「冒険と実力」並び立つ偉大なキャリアです。

『JULIEⅡ』から「周囲の反対を押し切って」シングル・カットした「許されない愛」が大ヒット。そのご褒美としてセルフ・プロデュースを任されたという有名な逸話が残るアルバム『JULIEⅣ~今 僕は倖せです』は、ジュリーの創作志向が明快に押し出され、周囲にもその志を認めさせたという点で、2018年の現在に至るロックなツアー、製作スタンスを最初に確立させた最重要の1枚。本来の意味でのファースト・アルバムと言って良いかもしれません。
もちろん『JULIEⅡ』とは真逆のベクトルながら、井上バンド(正式には当時は「井上堯之グループ」であり、かつジュリーの意識としてはPYG)の演奏的にも大いに評価されるべき名盤です。

僕はまだこのアルバムから「不良時代」「涙」のただ2曲しか、しかも10年前の『ジュリー祭り』東京ドーム公演の1度しか、さらには「涙」の演奏中にトイレに行ってしまったので厳密には「不良時代」1曲のみしか、生体感できていません。
裕也さんとのジョイント・コンサート『きめてやる今夜』に参加できなかったのが痛過ぎますが(そこで「湯屋さん」がセトリ入り)、今後このアルバム収録曲を体感する機会は巡ってくるのでしょうか。
タイトルチューンの「今、僕は倖せです」や、「不良時代」「湯屋さん」とともに、個人的にアルバム収録曲の中でも特に好きな1曲「一人ベッドで」・・・今日お題に採り上げるこの曲については今後の生体感は諦めていますが、若き作曲家・ジュリーのワン・アイデア構成、それを完璧にサポートし練り上げた井上バンドのアレンジ双方に語るポイントの多い「静かなる隠れた名曲」です。
では、僕がこの曲のどういう点に惹かれているのかを次チャプターで詳しく書いていきましょう。



②「一人ベッドで」とフォトポエム

アルバム『JULIE Ⅳ~今僕は倖せです』を初めて聴いたのはたぶん2006年。ポリドール期の再発リマスターCDを怒涛の勢いで買いまくっていた、いわゆる僕にとっての”第1次ジュリー堕ち期”の終盤でした。
既に『チャコール・グレイの肖像』を聴いた後で、「ジュリーの作曲は面白い!」という予備知識もありましたから、特にジュリー独特の曲作りに驚くこともなく初聴時からゆったりと楽しみながらアルバム全編を通して聴けた記憶があります。
この「一人ベッドで」は一発で気に入って、「うわ、こういう変テコな曲は好みだなぁ」と思いました。しかし何度か聴くうちに「ちょっと待てよ」と。
この曲の、何処が変テコなの?
そう自問し始めたのです。

まったく同じメロディーの短いヴァースが、1番→2番→3番と繰り返されるのみ。「Aメロ」とか「サビ」の概念が無い、これ以上ないほどのシンプルな構成です。
コード進行にも、何も変則的なところはありません。調号の変化は登場せず、ニ短調の王道過ぎるほどの王道進行。ジュリーのヴォーカルは淡々とメロディーをなぞり、大げさな箇所も力を入れる箇所もなく、最初から最後までいたって普通に歌われます。
なのに、すごく変テコな印象の曲に聴こえる・・・こりゃあ一体何だ?と。
しばらくして、このアルバム自体が「曲」と言うよりジュリーの「スケッチ集」と呼ぶべきプライヴェートな作品であり、「一人ベッドで」は特にそんな要素が濃くて、もし「ビジネス的」なプロデューサーが製作していたら真っ先にオミットされる、或いは大幅に書き換えられるような・・・そんな曲がむき出しの原型をとどめたまま収録されていることこそがこのアルバムの目玉なのだ、と気づくことになります。

72年というと、邦楽の「作曲」作業が技術的にも構成的にも大きく飛躍した時代。「一人ベッドで」は(あくまでも「当時」の)プロの目からするととても未熟な曲と捉えられたかもしれません。
しかし、もし近年のアルバムの中でこの曲がリリースされていたとしたらどうでしょう。それは、ベテランの作曲家が腕をしならせて提示する愛らしい小品、例えば映画の挿入歌であったり、舞台のワンシーンに演奏時間も雰囲気もピッタリ当て込むような「熟練」の作曲手法として散見される類のものに見えます。
「一人ベッドで」は、若きジュリーの「歌」であるが故に、妙に時代的に早過ぎる曲なんですよ。

しかもよくよく考えてみれば、同時期の音楽とリンクしている曲でもあるんですよねぇ。

Hitoribedde


↑ 今回の参考スコアは、Mママ様からお借りしている『深夜放送ファン別冊・沢田研二の素晴らしい世界』から。
この本は時々古書店で凄まじい値段で販売されているのを見かけます。採譜の精度は低いですが(今回の「一人ベッドで」にも、「B♭」が抜け落ちる致命的な箇所があったりします)、本当に貴重な資料が今自分の手元にあることに感謝! 

詞はジョン・レノンが妻の小野洋子さんに日本の俳句を伝授され影響を受けた『ジョンの魂』収録の一連の「最小限にまで言葉を削った」短いヴァース・リフレインそのものですし、曲(メロディー)についてはそのまま井上バンドがインストものとして『太陽にほえろ!』挿入曲へとシフトさせても違和感なく成立してしまいそうな映像感があります(『太陽にほえろ!』風にインスト・タイトルをつけるなら、「”眠り”のテーマ」といったところでしょうか)。

驚くほどに親身で噛みくだきが良く大衆性もある、それでいてジュリーがファンに手紙を書いたかの如き私的な「シンプルさ」。僕にはどのようにしてジュリーがこういう詞曲を生み出したのかが当初まったく分からなかったのですが、その後『ジュリー祭り』に参加し多くの先輩方に出逢い、古い貴重な資料などを見せて頂いて・・・『女学生の友』のフォトポエムを知った時に「あぁ、これか!」と思いました。
ジュリーは決してその時々の「思いつき」の作詞家、作曲家ではなかった、日々充分「稽古」していたのだと納得させられたと言いますか。
流行雑誌に「アイドル歌手(と敢えて言いますね)のポエム連載」企画が立ち上がったとして、本来ジュリーほどの人気歌手なら自らはフォトの仕事だけ、あとは編集者がそれっぽい文章を併記し、ポエム本編はゴースト任せで何ら問題は無いし、むしろそれが普通のやり方です。実際、『女学生の友』のフォトポエムも連載開始当初はそのスタイルじゃないですか。
ところがジュリーは「この企画に沿う詞を自分で書く」ことをやってみよう、と。なにかしら面白いんじゃないか、と。そう考えるタイプの人だったんですね。
で、やり始めたらそりゃあ進歩しますし深化もしますよね。それが連載同年リリースの『JULIE Ⅳ~今僕は倖せです』に自然に反映されていると。
特に「一人ベッドで」はアルバムの中でも『女学生の友』一連のフォトポエムに最も手触りが近い1篇。
アルバム『JULIE Ⅳ~今僕は倖せです』の特異性、「一人ベッドで」のプライヴェート色に同時期のポエム連載が深く関わっていたことを、僕は初聴時から数年かけてようやく理解しました。

ところで、その後はどうか分かりませんけど、72年当時のジュリーは普段「ベッド」ではなくお布団敷いて寝ていますよね。同じ時期のどの資料だったか、ジュリーは寝る時は自分で布団を敷いて、雨戸をガッチリ閉めて部屋を真っ暗の状態にして眠る、と書いてあったはずです。
ならば「一人ベッドで」はジュリーにとって「自宅」以外の環境を描いた作品ということになります。

夜も 更けて
冷たいベッドで
Dm   F         Gm     B♭  A7

からだよこたえて 疲れた心  に ♪
Dm     F              Gm     B♭ A7

72年秋のリリース、ということを考えればやはりこれはショーケンと一緒にギリシャに行った際のある日、撮影を終えてホテルに帰ってきて「疲れた~!」とベッドに倒れ込む・・・そんなことを歌った歌なんじゃないかな、と想像できます。
「やりきれない」とか「いやなこと」とか結構ダメージ度の高いフレーズが多く使われていますが、僕はそれらのフレーズにさほどの重さは感じません。むしろ充実感や「明日もまた大変やな~。でも頑張るか!」といった「仕事に燃える若きジュリーの、1日のしめくくりの歌」と捉えたいです。純潔な男っぽさを感じますね。
疲れながらも、しっかり今日、明日と向き合っている・・・「一人」になれるつかの間の時間を楽しんでいるような感覚すらある、と思いますがいかがでしょうか。
「身近なところから色々な題材を拾ってみよう」と喜怒哀楽すべてを前向きに盛り込んだアルバムで、「哀」を担ったのがこの曲、と僕は受け取っています。

堯之さんのアレンジ、井上バンドの演奏で僕が特に惹かれるのは、歌メロの最後にくっついてくる堯之さんのアコギとサリーのベースのユニゾンですね~。
たった1小節のブルー・ノート・フレーズがあるだけで、曲全体の緊張感が大きく違ってきます。
このアレンジ・アイデアは、やはり『太陽にほえろ!』のサウンドトラックと同時進行のレコーディングだからこそ生まれたのではないでしょうか。「歌の場面を切る」演奏感覚は『JULIEⅣ~』独特のものです。
初聴時に「一人ベッドで」を(良い意味で)「変テコな曲」と感じたのは、この堯之さん渾身の一瞬のアレンジが耳に残ったからかもしれないなぁ。


③『愛をもとめて』より「脚色」の話

今日はジュリー界の時事ネタ(と言ってももう先々週の話題になってしまうのですが)から思い当たったラジオ音源のご紹介です。
ジュリーファンのみなさまならご存知の通り、先に発売された『週刊現代』にて『芸能界「ステゴロ」(素手の喧嘩)最強は誰だ!?』なる企画記事が掲載され、そこにジュリーの名前も挙げられていたそうですね。
僕は記事そのものは読んでいませんが、saba様のブログでだいたいの内容は掴めました。

ジュリーが喧嘩が強い、ということ自体のは間違いないのでしょう。ジュリーの周囲にいた人達の証言、多々ありますから。ただ、こういう「芸能人の武勇伝」的な記事ではなにかしらの脚色はされてしまう・・・それもまた言えると思います。
今日ご紹介する『沢田研二の愛をもとめて』の放送回では、20代のジュリーがそんな「芸能人のエピソード記事の脚色」について、自らの「あるある話」をしてくれています。詩の朗読メインの回だったのか話自体は短いのですが、この機に書き起こしてみましょう。


自分の過去とか経験というのは、他人に話す時どうしても・・・なんというか、脚色するというかね、まぁ特に僕らみたいなこういう、人に見られるっていうか、そういう仕事をしてますとね、やっぱり脚色されますわね、うん。「勉強はよくできた」か「ぜ~んぜんできひんかった」か、どっちか極端になりますわね(笑)。
「全然できひんかった奴がこうなった!」とかさ、「すごくおとなしかったのがこうなった」とかね。
まぁ僕はおとなしかったですけどね。

それと、まぁ中学時代野球をやってた・・・本当は僕はキャプテンで一塁を守ってた。ファーストをね。
でも最初の頃は(デビュー当時は?)「野球部のキャプテンで、ピッチャーで、4番で」とか(書かれて)。そうした方がカッコええもんね。
やれ高校時代にちょこっと空手部にいた、と。そしたら「空手をやってる」と。「段を持ってるんじゃないか」とか・・・何でもそうですね。

それからまぁ、逆に自分が「こうだったんだ」「ああだったんだ」と記憶していることと、(周りにいた)人がその当時のことを思い出して話したりすると、すごい僕が思ってるのと違ってた、ということがあるんですね。
例えば僕は中学時代、いわゆる番長グループの中にいまして、「一目置かれてる」と思ってたら、それが(人によれば)そうでもないのよね。なんか「おとなしくて、勉強してへんようでもできる人やった」・・・なんてまぁ、それは余計な話ですが(笑)。
ハハハ・・・まぁエエやないですか、うん。

話をしている時のBGMが「白い部屋」で、ジュリーが最後に「僕の新曲」と紹介していますから、75年3月くらいの放送ですね。
ジュリー26歳、なんともてらいの無い俯瞰力です。
一般的に20代の男って、ことさら自分を大きく見せようとするものです。ましてや、それこそ「人に見られる」仕事だったとしたらね。
でもジュリーの「脚色されとるなぁ」とか「そうしちゃう時、あるなぁ」という話し方はすごく自然で、ピュアなんですよねぇ。「謙遜」ともちょっと違う、やっぱり俯瞰力の高さなんだと思います。
加えて「何がポイントか」を世間の常識、憶測から成るある意味での「脚色」に囚われずに判断するという、そういう素質があって、今現在も僕らファンが予想もしていないこととか、あっと驚く想定外のやり方を自然に考え実行に移せるわけですよね。

「自分の曲で、自分のプロデュースでアルバムを作りたい」というのもその一例であり原点でもあり、『JULIEⅣ~今 僕は倖せです』の製作が実現したことも、ただ「人気があって周囲の脚色に乗っかる」だけではないジュリーの本質と言うか気骨と言うか、それがあって刻まれた歴史なんだなぁと改めてこの新規ファンは感心させられているところなのです。
ジュリーのそういう気質が、このアルバムの時点でもう作曲作品にもひそやかに反映されているのかな。


それでは、オマケです!
今日は当然『女学生の友』連載のフォトポエムから。Mママ様が長年保管されていた切抜き資料です。
ポエムのテーマはちょっと今の季節とは違うようですが(たぶん夏の終わり)、「何か特定のテーマがあった方がうまく作れる」とジュリー自身が語り、近年の「祈り歌」で完全に突き抜けた作詞感覚は、72年のこの頃から育まれていたのだと改めて思います。


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そう言えばジュリーは2012年のびわ湖公演で、「子供の頃に泳ぎにいったのは琵琶湖」と話してくれました。レスリング選手みたいなつなぎの水着を着て、通りかかりの人に「可愛いねぇ」とか「おとなしいねぇ」と言われたら一層おとなしくして見せていた、とか。
僕は参加できませんが、今年の古希ツアーでは久々のびわ湖公演があります。
参加されるみなさまは楽しみですね!


では次回の”作曲家・ジュリーの旅”シリーズでは、もう1曲70年代の名曲を。

今日の「一人ベッドで」は王道のコード進行でしたが、次はとんでもない変態作曲の名曲ですよ~。
アルバム『チャコール・グレイの肖像』から、これまた大好きなナンバーを予定しています。お楽しみに!

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2018年4月20日 (金)

ザ・ワイルドワンズ 「バカンス事情」「Love Island」

from『ROMAN HOLIDAY』、1983

Romanholiday

1. ロマン・ホリディ
2. Hello Summer Girl
3. 6月のジェラシー
4. きらきらお嬢 Summer
5. 最後の楽園
6. 避暑地の出来過ぎ
7. バカンス事情
8. Joe
9. Love Island
10. 想い出の渚

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今年のジュリーの新譜『OLD GUYS ROCK』の中では「ロイヤル・ピーチ」が圧倒的に好きになった僕ですが、仕事中などCDを聴いていない時に脳内でリピートしているのは相変わらず「屋久島 MAY」。
今年の新譜は例年に比べじゅり風呂界でそれぞれの楽曲が話題に上ることが少ないような気がしてちょっと寂しい思いをしています。僕の考察はいささか固い、甘い、というところがありますから、毎年みなさまのご感想を楽しみにしているのですが・・・。

でももちろん、敬愛する先輩方のいつくかのブログ様では記事がupされておりまして、特に「屋久島 MAY」については「目からウロコ!」状態です。

例えばsaba様はこの曲のテンポを「屋久島の縄文杉を見にいった時のジュリーの歩く速度」と書いていらして、「あぁ、本当にそんな感じだったんだろうなぁ」と。
2拍子は「行進曲」の鉄板。そんな中に「徒歩曲」ってのがあっても良いよね~。とすれば「屋久島 MAY」はピッタリではないでしょうか。
ちなみに昨年4月に母親の13回忌で鹿児島に帰省し「嘉例川」駅に立ち寄った時ウグイスが賑やかに鳴いていたけど、こちら首都圏では全然聞かないなぁ、と御記事を拝見しながらそんなことも考えました。

また星のかけら様は「こういう覚えやすいメロディーって、ヒットするんじゃないだろうか」と書いていらっしゃいました。これまた僕の盲点。
「屋久島 MAY」がヒットしている世の中を妄想してニヤニヤしてしまいました。「平和」を実感できそう!
『OLD GUYS ROCK』はいわゆる「マキシ・シングル」なのでそこからさらに1曲シングル・カット、というのはあり得ない話ですが、この新譜を「アルバム」に見立てたとしてジュリーがどの曲をシングルに選ぶか、と考えたら意外に「屋久島 MAY」じゃないかと・・・いつも僕の中の安易な「常識」の上を行くジュリーですから。


では本題。
今日4月20日は加瀬さんの4回忌。頑張って昨日までに下書きを終え、朝出かける前の更新です。

今年も加瀬さんの命日にワイルドワンズのナンバーを採り上げますが、今回のお題は加瀬さんの作曲作品ではありません。
「えっ、じゃあ誰の曲よ?」
・・・よくぞ聞いてくださった。
今日のお題2曲はいずれも、ワイルドワンズ再結成期、83年リリースのアルバム『ROMAN HOLIDAY』にジュリーが作曲提供した「隠れた名曲」なのですよ~。

このアルバムはもちろん加瀬さんの作曲作品も収録はされていますが、基本的には作家を外部招聘して、83年という時代に即した音作りで新たなワイルドワンズの世界観を提示したコンセプト・アルバム。シティ・サウンドなワイルドワンズです。
作曲家・ジュリーはそんなアルバムにどのように貢献したのでしょうか・・・ということで伝授です!


①80年代前半は作曲家・ジュリーの覚醒期!


Romanholiday2


僕がアルバム『ROMAN HOLIDAY』を購入したのは、加瀬さんが亡くなられてしばらく後だったか・・・mixiで仲良くさせて頂いている先輩が「ジュリーが2曲作っていますよ」と教えてくださり、俄然興味が沸きまして。
僕は常々、80年代前半のジュリーの「作曲」への熱度は尋常じゃない、と感じていました。ジュリーはこの頃、自身のシングルやアルバムは当然としてそれ以外にも色々な人に作曲提供していますよね。
代表格はアン・ルイスさんの「ラ・セゾン」。このシングルは両面ジュリーの作曲です。
また、このブログでも1曲過去に記事を書いている原辰徳さんの歌手デビュー・アルバムに2曲。さらに、まだ聴けていませんが「シブがき隊」の曲もあるらしい。

何が凄いって、『ヤング』掲載のスケジュール表なんか見てても、この頃のジュリーってメチャクチャ忙しいじゃないですか。それでもこれだけの「作曲家」活動に邁進していた・・・正に超人級の活躍です。
やっぱりジュリー本人の中で曲作りへの開眼があり、その自覚もあり、また「渚のラブレター」「ス・ト・リ・ッ・パ・-」「麗人」を立て続けにヒットさせたことで、業界の間でも「作曲家・沢田研二」の評価がうなぎ昇りの時期だったのでしょう。
これをして僕は80年代前半を「作曲家・ジュリーの覚醒期」と位置づけたいです(一方で、作詞の覚醒期が80年代後半なのではないかと考えています)。
ニュー・ワイルドワンズのアルバム企画がそんな時期に立ち上がった際、加瀬さんとの関係を考えれば作曲家・ジュリーの起用は自然な流れと思えますよね。

ジュリーは自らのパフォーマンスと同様、「依頼された作曲」についても「全力」なのは当たり前として、すごく真面目です。しっかり「誰のために、どのバンドのために作る」かを考えて作曲しているのが伝わってくる・・・ワイルドワンズの『ROMAN HOLIDAY』収録2曲はそんなジュリーの姿勢が明快に表れた作品。
具体的には、まずジュリーが提供2曲を「バラード寄りでハートウォームな長調ポップス」(「バカンス事情」)、「激しい抑揚で攻める短調のビート・ロック」(「Love Island」と、明快に「色分け」をしていること。
これは当然ワイルドワンズが誇るツイン・ヴォーカリスト、鳥塚さんと植田さんいずれが主を張るナンバーなのかを想定して作曲しているわけですよね。

第二には、そんな「色分け」がされまったく違ったタイプの2曲がそれぞれ「ワイルドワンズ」のカラーを裏切らない、彼等の「得意」なメロディー、コード進行で作られていること。
いずれもジュリーの作曲作品としては珍しく「maj7」のコードを採用。「maj7」については、2015年のツアーで、その時セットリストしていた「夕なぎ」(のちにワイルドワンズが歌詞とタイトルを変えた「セシリア」としてリリース、2010年のジュリワン・ツアーでもセットリスト入りしました)に絡めて「加瀬さん作曲」の個性を示すコードとしてMCで語ったことがあったそうですね(僕はその場にいませんでしたが、ブログに頂いたコメントをきっかけに先輩から詳しくお話を伺うことができました)。
『ROMAN HOLIDAY』への楽曲提供に臨んでジュリーが「maj7」をワイルドワンズ・ナンバーの鍵としたのは、非常に興味深い手法です。

様々なコード・ヴァリエーションや進行例も会得済みだったと思われる83年は、作曲家・ジュリーがノリにノっていた時期であること疑いありません。
加瀬さん達の期待にも見事応えたジュリー・・・次のチャプターでは、アルバムへの提供2曲それぞれについて詳しく書いていくことにしましょう。



②「バカンス事情」

Romanholiday3



『ROMAN HOLIDAY』収録のジュリー作曲作品、まずはアルバム7曲目(レコードだと「B面2曲目」だと思われます)の「バカンス事情」が最初に登場します。

作詞は岩里祐穂さん。
岩里さんはこのアルバムでは他に、シングル・カットされたタイトル・チューン「ロマン・ホリディをはじめ「最後の楽園」「避暑地の出来過ぎ」と、計4曲の作詞を担当されていて、メインライター級の活躍です。83年当時はちょうど岩里さんの才能が見事開花しようという「ブレイク寸前」の頃。「さきもの買い」を得意とする加瀬さんらしい起用、と言えるかもしれません。

「バラード寄りのハートウォームなポップス」ですから、ヴォーカルは鳥塚さんで決まり。
詞のシチュエーションは「フランスのニースをバカンスで訪れた邦人男性が、あいにくの雨にもめげずに女の子を物色する」という感じなので、もしジュリーが歌ったらエロエロ路線にもなるのでしょうが、鳥塚さん独特の語尾をスッと抜く朴訥な歌声ですと「雨か~、まいったな~」みたいな穏やかな歌になっています。その方がメロディーには合っていますし、作曲者・ジュリーとしても「狙い通り」のヴォーカル・テイクじゃないかな?

アレンジは矢島賢さん。ジュリーファンにはお馴染みのお名前ですよね。
個人的にも、阿久=大野時代のアルバム(特に『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』)での矢島さんのギター・ソロは大好物です。そんな腕利きギタリスト・矢島さん、この曲では敢えてギター・トラックを抑え目のアレンジで勝負。
間奏はキーボードの美しいフレーズと大胆なベース・ソロを採用していますが、このベースが(エフェクトの効果もあり)まるで波音のように聴こえます。

ところで、アルバム『ROMAN HOLIDAY』って、演奏陣に謎が多いんです。
CDのブックレットを見ますと演奏クレジットはワイルドワンズのメンバーのみ。そして最下行に
「*アーティスト、スタッフの表記は発売当時のものを使用しています」
との但し書きがあります(上添付画像参照)。

要は「本当は他のミュージシャンも多数参加しているけど、クレジットはそれらを割愛したLPリリース当時のまま転載しています」ということ。と言うのも、もちろんベーシック・トラックの多くはワンズの演奏でしょうが、このアルバムは結構キーボードを前面に押し出したアレンジの曲が目立つんですよ。
「バカンス事情」では木管系の音色のシンセとエレクトリック・ピアノ、という具合にね。
矢島さんがアレンジを担当しているのは、この曲と「6月のジェラシー」ですが、もしかしたら渋いギターをご自身で弾いていらっしゃるのかもしれません。僕の耳では残念ながら聴き分けられないんですけどね。

さて、ジュリーの作曲。「ワイルドワンズ対策」に特化した曲作りとは言え、当然そこにはジュリーならではの手クセや好みも身受けられます。
「バカンス事情」をそれ以前のジュリー作曲ナンバーとの比較で表現するなら、「バタフライ・ムーン」をゆったりめのテンポに落とした感じ、とすれば伝わり易いでしょうか。例えば冒頭から配されるサビ部

a ten day's Journey 勝手な
C                           G7

a ten day's journey バカンス ♪
G7                        C

は、「バタフライ・ムーン」の

人生はバタフライ
C        G7

花から花へ飛ぶよ ♪
G7            C

(註:「バタフライ・ムーン」はホ長調ですが、ここでは比較し易いように「バカンス事情」のキー、ハ長調に移調させて表記しています)

コード進行だけでなく、メロディーもよく似ています。良い意味で能天気な明るさ、開放感も共通。その上で全体のイメージは違うというのが肝です。
ジュリーは「バカンス事情」を「湘南サウンド」に寄せて仕上げていると僕は思いますね。

あとは、Bメロの「いかにもジュリー」といった感じの不思議な小節割りに惹かれます。詞先でないとこうはならないと思うのですが、実際はどうなのでしょうか。
いずれにしてもそれらはジュリーの個性。作曲家として幅が出てきているのがよく分かる名曲です。


③「Love Island」

Romanholiday4


続いて9曲目(レコードだとB面4曲目?)に登場するのが「Love Island」。
作詞は秋元康さんです。84年リリースのジュリーの名盤『NON POLICY』の前に、ワイルドワンズのアルバムでジュリーと一緒にお仕事されていたんですね。しかも作詞・作曲のコンビとして。

で、この曲は秋元さんの詞、ジュリーの作曲いずれも「ひととき(一夜)のワンダフル・タイム」的な雰囲気があります。ワイルドワンズのイメージが「海」「夏」とすれば、ジュリーにとってマリンサウンドな「A WONDERFUL TIME」(ご存知ジュリーのアルバム・タイトルチューンの曲ね)とのリンクは自然な発想だったのかも。
そこをガッチリと引き受けて表現しきっているのが吉田建さんのアレンジで。
ニュー・ワイルドワンズに爽やかな16ビートを提示した建さん。アルバムではもう1曲「避暑地の出来過ぎ」も建さんのアレンジですが、いれも情熱的なビートものに纏め上げています。
しかも「避暑地の出来事」ではホーン・セクション、「Love Island」にはヴァイオリンを導入。83年のレコーディングで建さんアレンジの曲に生ヴァイオリンが入っているとなれば、ジュリーの「枯葉のように囁いて」「裏切り者と朝食を」同様、ムーンライダースの武川雅寛さんが演奏していると考えるのが自然ではないでしょうか。豪華なノン・クレジットというわけです。

あと、演奏面では間奏ギター・ソロ、これは間違いなく加瀬さんでしょう。みなさまもお聴きになれば「あっ、そう言えばジュリワン・ツアーの「Oh!Sandy」で加瀬さんこんな弾き方してたよなぁ」と懐かしく思い出したりするのではないでしょうか。

そんな情熱的なビートで攻める短調のナンバーに、かき鳴らされるヴァイオリン・・・こうなるとヴォーカルは植田さん以外考えられません。ハスキーな歌声は、この手の曲だと特にカッコイイです。
タイプの違う複数のヴォーカリストを擁しているのは、タイガースのみならずワイルドワンズの大きな武器で、ジュリーもその点は当然承知の作曲ですよね。

ちなみにちょっと話が逸れますが、植田さんはこのCDブックレットに結構長めの文章を寄稿してくれていて、その中に面白い話が。
バンド名「ワイルドワンズ」の名付け親が加山雄三さんというのはあまりにも有名ですが、加山さんから「英語で”自然児”という意味。プロに毒されていない、手垢がついていないということだ」と名前の由来を電話で聞いた加瀬さんがメンバーにその話を伝えた時、鳥塚さんが
「修善寺ですか?」
と言ったんだとか(笑)。
加瀬さんは
「バカだなお前、修善寺じゃない、自然児だよ」
と。
で、この逸話はデビューしてからステージのMCでもよく使っていたんですって。
どこか天然な鳥塚さんと、それを面白そうに解析している植田さん、というのは、ワイルドワンズの2系統それぞれのヴォーカル・スタイルによく表れているのではないかと僕は思っています。

さてジュリーの作曲。全体の仕上がりは先述の通り佐藤健さん(「たける」さんではなく作曲家の「けん」さんの方ね。念のため笑)の「A WONDERFUL TIME」に似ているのですが、それ以前のジュリー自身作曲のナンバーとの比較で考えるなら、僕は「Love Island」の以下の進行箇所に注目してみたいです。

恋も面白いね ♪
E7  A7       Dm

この「E7」の採用。
Dmのキー(ニ短調)で「E7」を使う手法は、それぞれキーこそ違えど、「麗人」の「束縛も♪」の箇所や、先日記事を書いたばかりの「嘘はつけない」での「気分になれる♪」の箇所と理屈はまったく同じ。
どうやらこの進行は短調のビート・ナンバーを作曲する際のジュリーの手クセであり、得意技でもあると言えそうです。

ジュリーは80年代、「ス・ト・リ・ッ・パ・-」「十年ロマンス」「麗人」「灰とダイヤモンド」「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」のシングル群に象徴されるように、短調のメロディーに自作曲の「ヒット性」を求めていたようです。
そう言えば「ラ・セゾン」もそうですよね。
『ROMAN HOLIDAY』への作曲提供でジュリーが製作サイドから依頼された具体的内容は分かりませんが、作曲段階で「あわよくばシングル」を狙ったとすればこちら「Love Island」の方だったんじゃないかなぁ。


このように『ROMAN HOLIDAY』は加瀬さん作曲のナンバーこそ少ないものの、作詞、作曲、アレンジそして演奏と、外部の様々なキャリアのプロフェッショナルがアイデアを持ち寄り、丁寧に作り込まれた好盤です。
そのプロフェッショナルの中で我らがジュリーも作曲者として一際存在感を放っている、というのがやはり僕らにとって大きなポイントでしょう。

全体の音作りは、ジュリーのアルバムで言えばまずやはり『A WONDERFUL TIME.』、或いは『JULIE SONG CALENDER』を彷彿させます。
ワイルドワンズ『ROMAN HOLIDAY』を未聴のジュリーファンのみなさま、この機にアルバムを聴いてみてはいかがでしょうか?


それでは、オマケです!
今日は、いつもお世話になっているピーファンの先輩に以前お借りしてスキャンさせて頂いた切り抜き集の中から、81年ウェスタン・カーニバルの資料です。
記事お題曲とは年が異なる資料ですが、ワンズとタイガースのショットが揃っておりましたので・・・。


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2015年、加瀬さん突然の旅立ち。あの悲報は、つい昨日のことのように思い出されます。
もう4回忌ですか・・・早いものです。
これからも僕はブログを続ける限り、この4月20日にワイルドワンズの曲をお題に採り上げていきます。
今年はジュリーからの提供2曲を纏めてという形でしたが、来年はまた加瀬さん作曲のナンバーを書きますからね、加瀬さん。



では次回更新から再び自由お題です。
「何かテーマは・・・」と考えていて思いついたのは、このところ「嘘はつけない」そして今日のワイルドワンズの2曲と、ジュリー作曲ナンバーのお題が続いているので、その勢いに乗って”作曲家・ジュリーの旅”シリーズを書いていこうかな、と。
斬新な変則進行から王道まで、ジュリーの作曲作品は本当に幅広い。70年代から2000年代まで、5曲ほどを5月いっぱいまでに書くつもりです。

それが終わって6月に入ったら、いよいよ古希ツアーのセトリ予想ですよ~。そこで『ジュリー祭り』セットリストで未執筆の残り3曲も書くことになります。
「まだまだツアー開幕までは遠いなぁ」と感じていたのですが、そう考えたらあっという間・・・かな?
どうぞお楽しみに!

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2018年4月15日 (日)

沢田研二 「嘘はつけない」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1980 シングル「酒場でDABADA」B面


Dabada

disc-31
1. 酒場でDABADA
2. 嘘はつけない

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新しいNHK朝ドラが始まっていますが、みなさま観てますか?(朝ドラ好きのジュリーはたぶん観てる・・・と思うけどどうかな?)
僕は会社の昼休みにテレビでNHKがつけっ放しになっているので自然と朝ドラは再放送で全作網羅する感じなんですが、今回の『半分、青い』は、普段朝ドラに見向きもしないカミさんがせっせと録画をしておりますので自宅でも観ることができます。
と言うのも、カミさんは数年前から佐藤健さんに嵌っているのですな~。
『半分、青い』に出演する佐藤さん(たぶんヒロインの相手役なんだと思う)は他NHK番組での番宣露出も多く、最近の我が家は夕食のお供がほぼ佐藤さん出演番組の録画鑑賞という状態になっております。
カミさん曰く
「朝ドラ観てるジュリーファンの中で何人かは必ず佐藤健に堕ちるはず!」
とのことで、女性から見ると佐藤さんはちょっとジュリーに重なる魅力もあるっぽいです。

それにしてもこの数年、カミさんはことあるごとに佐藤健が佐藤健がと連呼するので、僕は遂に昨年、旦那の威厳をもってガツン!と叱りつけてやりましたよ。

『仮面ライダー電王』観ずして佐藤健を語るな!

と(笑)。
僕は昔から特撮好きではありますが、DVDを全巻購入するほどまでに入れ込んだ作品はほんの僅か。佐藤さんの出世作となった『仮面ライダー電王』(2007年放映)はその中でも筆頭格でした。
旦那の意見を素直に聞き入れ『電王』を観始めたカミさんはまたたく間に主人公を演じる佐藤さんのみならずスーツアクターの高岩成二さんにまで嵌り、現在カミさんの部屋は『電王』登場キャラクターであるイマジンのフィギュアで溢れかえっています(笑)。

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こちらは先月川越に遊びに行った際に訪れた、『仮面ライダー電王』ロケ地として有名な『モダン亭太陽軒』さん。
実際には洋食屋さんなのですが、『電王』作中では佐藤さん演じる主人公のお姉さんがきりもりしている喫茶店『ミルクディッパー』の外観として登場します。

ということで僕らは夫婦で佐藤健さんを応援中。

『半分、青い』は今週から青年期に突入するという、ちょうど佐藤さん登場のタイミングです。ジュリーファンのみなさま、是非『半分、青い』を観ましょう!


おっと、久々にお題とはまったく関係のない枕を長々と・・・失礼いたしました。
前回に引き続き、今日もジュリー珠玉のシングルB面曲を採り上げます。
『酒場でDABADA』のB面で糸井重里さん作詞・ジュリー作曲「嘘はつけない」、伝授です!


①50周年ツアー会場BGMの思い出

と言いつつ、今日は曲の考察自体は少なめです。
枕に引き続き、記事本文でものっけから話が逸れてしまうのですが・・・。先の50周年ツアーの参加会場でBGM体感したジュリー・シングルB面曲を、僕はあれこれと今改めて思い出しているところ。

僕の場合は初日のNHKホールと11月の松戸がほぼ同じ内容だったりするなど、全時代まんべんなくとはいきませんで、結果オールウェイズ&エキゾティクス期、CO-CoLO期、JAZZ MASTER期をまったく聴くことなくツアーを終えました。
やっぱり「もうするステージが始まる」という緊張感、期待感の中で会場内音響で体感するBGMというのは、ただ自宅で聴く時とは違う味わいがあって、しかもそれがシングルB面群という素晴らしい趣向・・・全時代をひと通り聴いてみたかったのでその点は少し残念。まぁ巡り合わせですから仕方ないんですけどね。
今日のお題「嘘はつけない」も僕の参加会場では遂に聴けずじまいでした。

みなさまはそれぞれ参加された会場で特に印象に残ったB面曲、ありましたか?
僕が「おおおっ!」と盛り上がったのは、12月の武蔵野公演。おフランス・シングルのあたりで入場して、着席してからはじっくりと阿久=大野時代の濃厚なB面名曲群を満喫。今さらながら凄い詞曲の組み合わせだなぁと聴き入っていたら、「真夜中の喝采」が終わったところでブザーが鳴って「まもなく開演」のアナウンス。
「え~と、アナウンスの後もBGMって流れるんだったっけ?」と考えた瞬間に「バタフライ革命」のイントロが始まりました。いやはや、「まもなく開演」からの「バタフライ革命」って・・・インパクトあり過ぎでしたよ~。

詞を普通に考えれば、曲想的には「パーティーさわぎ~♪」と歌う「真夜中の喝采」が軽快なテンポで、「お前は男~♪」と歌う「バタフライ革命」がしっぽりとしたバラードとするのが本来似合いそう。でもそれを平気でひっくり返しちゃうのが阿久=大野時代の醍醐味なんだよなぁ、とそんなことを考えつつジュリーとバンドの登場を待っていた・・・これが僕の50周年ツアー・会場BGMの一番の思い出ですかね~。

ファンはそれぞれ自分の中に「ジュリー像」を体現する詞曲というものを違う形で持っていると思うけど、世間一般のジュリー像って、やはりこの時期の阿久さんの詞のイメージだと思います。
阿久さんは「男のやせがまん」という言葉を使っていたと聞きます。まぁ「ダンディズム」になりますね。
男性作詞家が書く(投影する)ジュリーの詞、突き詰めればここに極まれり。80年代以降、大津あきらさんや秋元康さんが阿久さんのその路線を踏襲しつつ、名編を生み出していきました。

では、比類なきオリジナリティーで新たな「ジュリー像」を果敢に切り開いた糸井重里さんは、その点どうだったのでしょう?
「TOKIO」「恋のバッド・チューニング」。はたまた「MITSUKO」「みんないい娘」「HEY!MR.MONKEY」「クライマックス」・・・糸井さんの描くジュリーは、いかに主人公の「男」が漲っていようとも阿久さんのそれとはまったく違うように感じられます。
しかしただ1篇だけ、阿久さんが確立させた「ジュリー像」にとても近い作品、それが今日のお題「嘘はつけない」ではないでしょうか。
といったところで、次のチャプターからようやく楽曲の考察に入ります~(汗)。


②「みんないい娘」とは兄弟曲?

僕が「嘘はつけない」を初めて聴いたのは2009年、大枚はたいて購入した『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』でした。
僕もまだまだジュリーファンとしては基本知識が浅く、未知のB面曲を単独で聴いた時にリリース時期も特定できないような状態の頃。それぞれの曲を一応歌詞カードとクレジットを見ながら聴いていましたから、初聴時に「これは○○のB面」と頭に叩きこんでいくわけですが、何せ「こんな名曲があったのか・・・全然知らなかった」という、その数が多い。すべてをいっぺんには覚えられませんわな。
だからなのでしょうか、「嘘はつけない」のクレジットもずっと記憶が曖昧で。

作詞・糸井重里さん。
作曲・ジュリー。
編曲・松任谷正隆さん。

いずれも「へぇ、そうだったのか」とCDを取り出したその都度再確認してきた感じです。編曲の松任谷さんなんて、ジュリー・ナンバーとしては珍しいですよね。

まず僕はこの曲の作詞者を一時期阿久さんだと思い込んでいました。

裸のあなたがカメラを向けた
Em                                    D  Em

冗談(ジョーク)はよせよ
Am

思い出ができちまう
Am                    Em    F#7  B7                            

そろいのグラスでシャンパン飲めば
C          Em       D                    B7

愛に似たような 気分になれる ♪
Am         Em     F#7           B7

出だしから、阿久さんっぽくないですか?
「よせよ」とか「できちまう」とか「気分になれる」とかね。断定的と言うか、阿久さんの描く「男」の台詞回しを僕は連想してしまいます。

次に作曲者がジュリーという点。
これはね、特に違和感は感じていなかったんですが、昨年福岡の先輩から授かったジュリーのラジオ音源の中の『NISSAN ミッドナイト・ステーション』特別企画『ジュリーB面ベストテン』放送回で、ジュリー自身がこの「嘘はつけない」を「加瀬さんの作曲」と紹介しているんですよ(詳しくは次のチャプターで!)。
これは単なるジュリーの勘違い?
それとも当時のシングルレコードのクレジットが誤って「作曲・加瀬邦彦」と記されていて、ジュリーはそれをそのまま読み上げてしまった?
シングル盤『酒場でDABADA』をリアルタイムで購入し今も保管されている先輩方、お手数ですがその点チェックして頂けると嬉しいです。

僕の想像ではおそらく、当時ジュリーが作ったプリプロのデモ音源を加瀬さんが相当な範囲で手直しして、ジュリーとしては「ずいぶん感じが変わった」=「ほとんど加瀬さんが仕上げたような曲」というイメージが強く残り、その後「加瀬さんの曲」と認識するに至った、という・・・いかがでしょうか。
それ以前の曲にも、例えば「コバルトの季節の中で」は加瀬さんが手直ししてくれた、と話がありましたし、逆に「危険なふたり」はキメのメロディー部をジュリーの希望で変えたと言いますし。
ジュリーと加瀬さんはずっとそんなふうに「曲作り」を二人三脚でやってきたのでしょうからね。

で、「嘘はつけない」に加瀬さん色を感じながら改めて曲の仕上がりを紐解くと、リリース時期の近いアルバム『BAD TUNING』収録の加瀬さん作曲の名曲「みんないい娘」との共通点が浮かびあがります。
キーこそ違いますが(「みんないい娘」はニ短調、「嘘はつけない」はホ短調)、いずれもミディアム・テンポの短調によるビートもの。また、オルガンを前面に押し出すシャキシャキとしたアレンジや、サビでの並行移調のニュアンスもそっくりです(「みんないい娘」はヘ長調へ、「嘘はつけない」はト長調へ)。
さらに、作詞がどちらも糸井重里さん。これはまるで「兄弟曲」のような関係ではないですか。

そう考えると、先に「嘘はつけない」は糸井さんが唯一世間的なジュリーのイメージに沿って阿久さんの詞に近づいた、と書いた僕の考察も怪しくなってきます。
「みんないい娘」にはズバリ「嘘はつけない♪」というフレーズも登場。浮気な色男が可愛い女の子達を手当たり次第に口八丁手八丁で口説いていた中で、1人だけストップモーションの特別な存在を意識したのは、「大人の女性」だったのでは?

嘘はつけない 大人の女(ひと)に
G       Bm7     C        D7         G

嘘はつけない 大人の男 ♪
Bm7   Em       F#7       B7

「嘘はつけない」と「みんないい娘」は同じ女性のことを歌っているのかもしれないなぁ。てか、下手するとそれが「MITSUKO」さんなんだったりして。
糸井さん作詞のジュリー・ナンバーは約2年という短期間に限定されていて、だからこそそれぞれの詞の密度はとても濃いです。こうして色々と(強引に)作中の登場人物を関連づけてみるのも面白いですね。

糸井さんは今も多方面で大活躍されています。福島の原発事故については一貫して「反差別」の志を持つ糸井さん・・・それは先月「ロイヤル・ピーチ」の記事で書いた僕自身の考え方とよく似ていて、僕としては本当にリスペクトする人です。
ただ、ジャイアンツファンなんですよねぇ、糸井さんって。そこだけはちょっと・・・(笑)。

あと、このシングルのA面の方・・・「酒場でDABADA」についても少しだけ書かせて下さい。

盟友YOKO君の「元祖・ダイブ曲」です。
10年前の12月3日、2人連れ立って参加した初のジュリーLIVE『ジュリー祭り』の開演前、遥か高い2階スタンド席に着いて眼下のアリーナを眺めながらふと「どの曲のイントロが来たら、あそこ(アリーナ)にダイブする?」という物騒な話(笑)になって、僕は「ロンリー・ウルフ」、YOKO君は「酒場でDABADA」を挙げました。
あれから10年が経ちますが、その時僕らが口にした2曲はそれ以来未だにツアー・セットリスト入りしていません。ビッグチャンスだった先の50周年記念ツアーでも見送られ、「何故ジュリーはなかなかこの2曲を歌わないんだろう」と不思議に思い、昨年ジュリー道の師匠の先輩に疑問をぶつけてみました。
先輩は「酒場でDABADA」について、「以前DYさんがDABADAをセトリ予想で書いた時、昔からのファンは皆”それは難しいんじゃない?”と思っていたのよ」と。
しかし「でも、今年のツアー(50周年ツアー)を観てたら、”今のジュリーならDABADA歌えるわ!”と思った」のだそうです。

僕は新しいファンなので先輩の教えをうまく噛みくだけてはいないんですけど、「ジュリー本人が”その気”になる」ための高いハードルが「酒場でDABADA」という曲にはある、ってことなのかな。
先輩曰く「今のジュリーなら歌える」・・・僕には、数年前のジュリーと50周年ツアーのジュリーとでどんな変化が先輩に見えているのかまでは分からないのですが、古稀ツアーでの「酒場でDABADA」降臨に期待を膨らませています。
ということなので、さいたまスーパーアリーナのスタンドから10年越しのダイブを敢行するYOKO君を目撃したいみなさま、万難排して是非さいたまスーパーアリーナに集結してください!(笑)


③『ジュリーB面ベストテン』(後半部)

さぁここでは、昨年来猛勉強中のジュリー過去のラジオ音源、今日は前回の続きで『NISSAN ミッドナイト・ステーション』特別企画『ジュリーB面ベストテン』放送回の後半をお届けしますが、まずはお詫びから(汗)。
前回記事の予告で「惜しくもベストテンから漏れた11位から20位の曲」と書いてしまいましたが、『B面ベストテン』で発表されているのは11位から15位まででした(『A面ベストテン』の方では20位まで発表しているんですけどね)。ごめんなさい。
ということでその11位から15位の「隠れた名曲」についてジュリーのコメントを聞いていきましょう。

11位「世紀末ブルース」(35票)


何というタイトルなんだこれは(笑)。
またこれ演奏した時大変だったんですよ。横浜球場で。病気して、病気明けの時でございますよ~。その頃はオールウェイズというね、バックバンドでございました。
恐怖の世紀末ブルース、うん(笑)。


厳密には「シングルB面」としての「世紀末ブルース」はスタジオ・レコーディング・ヴァージョンなんですけど、やっぱりジュリーはアルバム『BAD TUNING』収録のLIVEヴァージョンのイメージの方が強いようですね。
そうかぁ、大変だったんだ・・・オールウェイズの演奏自体が大変なことになってるのに加え、ジュリーはまだ体調が万全ではない中での激しいパフォーマンスだったということなんでしょうね。
ちなみにほぼ同世代の男性ジュリーファンであり、じゅり風呂の大先輩でもあるkeinatumeg様が最近の記事で、「自分は世紀末ブルースに投票した」と書いていらっしゃいます。このラジオ番組をリアルタイムで聴いていらしたんですねぇ。羨ましい!

12位「遠い旅」(31票)


これはなかなかねぇ、渋い曲でございますよ。井上堯之さんの生ギターでね。難しい、何分の何、というコードが出てくるやつでございますよ。僕には弾けないという・・・ハッハッハ!

ジュリーは弾けないみたいですが僕は弾けますよ~。ただしカポ2のCで。

僕が現在のジュリー知識のまま『NISSAN ミッドナイト・ステーション』放送当時に遡ってラジオを聞いていたとしたら、たぶんこの「遠い旅」に投票しただろうなぁ。
前回書いた「美しい予感」も同じくらい好きなんだけど、あちらは「アルバム収録曲」のイメージが強いですからね。「B面」の括りなら僕は「遠い旅」推しです。

13位「旅立つ朝」(28票)

ちょっとこれはタンゴ調のリズムになっておりましてね。なかなかステージ映えした曲でございますよ。

14位「嘘はつけない」(25票)


糸井重里さんの作詞でございますね。曲は加瀬邦彦さん。

・・・ね?「曲は加瀬邦彦さん」って澱みなく言ってるんですよ、ジュリー。
先のチャプターでも書きましたが、実際のところどうなんでしょう。とにかく僕はこのラジオ音源を聞いたのが昨年のことで、ま~ブッたまげました。
だって、2015年の時点で僕は「加瀬さん作曲のジュリー・ナンバーはすべて記事に書いた!」と堂々と言ってしまっているわけですから。
慌ててCD取り出してクレジットを確認しましたし、ウィキも見てみて・・・やっぱり「作曲・沢田研二」となっているんでホッとしたんですけど。


この頃になると割と最近だから、これといって思い出も・・・あっ、そうだ。ジャケット見ました?髭はやして・・・髭薄いのに!
この時これね、睫毛につけるやつ・・・マスカラ?マスカラで(髭を)濃くしてね、撮影したんです。こんな写真のように濃くはならないんですよ、僕の場合は。


男性は、普段髭の濃い人より薄い人の方がカミソリ負けしやすいと聞いたことがあります。だから今ジュリーは髭を剃るのをやめて整えるだけにしているんじゃないかな。カミソリ負けが酷い人は「朝から大流血」なんて日常茶飯事らしいですから。
かく言う僕は・・・濃いです!南国系ですので(笑)。


15位「夕なぎ」(22票)

この曲は・・・この番組でも言いましたっけね、ワイルドワンズがタイトルを変えて、詞の内容も変えて、メロディーはそのまま使ってLPに入れとるんです。
しっかりしとるぜ、加瀬さん、作曲家!(笑)


以上が11位から15位。なかなか興味深いラインナップです。先輩方に人気が高い、というイメージがある「青い恋人たち」が入ってないのが意外でした(ベスト3にもランクインしていません)。
それではいよいよ3位、2位の発表です。

3位「月曜日までお元気で」
(89票)

これはもう今年の1月に発表した『麗人』のB面なんですけど、まぁこの1年足らずの間にね、ずいぶん僕のサウンドも変わったなぁとつくづく思いましたね。
それからやっぱり、曲のテンポを決めるっつうのは難しいな~。ステージなんかでやってると、もうちょっとゆったりめだもんね。(この曲は)ゆったりめの方が気持ちいいもんね、うん。


2位「ZOKKON」(108票)


これは僕の作詞・作曲でございましてね。
え~まぁ、「この曲はどういうふうに書いたんですか?」というお便りを当時たくさん頂きましたね。「これ、ひょっとして田中裕子さんのことを思いながら書いたんじゃないですか?」とか。そんなことは決してございません、ハイ。


なるほど、「ZOKKON」はそういう時期のリリースですか。でもこれはジュリーの言う通りだと僕は思いますよ。アルバム『A WONDERFUL TIME.』に収録されているジュリーの自作曲は詞曲とも「夏に向けて」という明快なコンセプトがあります。作ったのはちょうど今くらいの時期か、もうちょっと前でしょうけど、「夏からの新しいアルバムのツアーで歌う」ことを念頭に、夏らしい曲をということで2曲それぞれこういう詞になったんじゃないかな。
あとこれはね、「景気づけ」という役割を持つ曲。ジュリー自身が自らを鼓舞する・・・そんな進行、譜割りになってます。いずれ考察記事を書きますが。

ちなみにタイトルを発表する際ジュリーは「ぞっこん」ではなく「ぞここん~!」と発音しています。

さてここまで進んだところで、ジュリーがひとしきり「B面とは」と講義してくれています。
チャプターがかなり長くなりますがとても興味深い内容ですから、書きおこしてみましょう。


やっぱりB面って言うと・・・(シングルを買った人は、まず)A面聴いて「うん!」と。まぁ2、3回A面聴きますわね。で、ちょっと気分直しに「ああ、B面?あったね」という感じでB面パッと聴いて、「あ~、ふ~ん、B面ね」って感じで、またA面を聴くという。本当に「恵まれない」という感じがするんですけれども。
かと言って僕たち作る側としては、「これはB面用」なんて思って作るわけでは決してないんですよね。
いや・・・でも正直言ってあるかもしれないなぁ。
作家の心理としてはですね。「これがA面、ギンギンに行く!」・・・で、もう1曲、まぁ2曲ぶんシングル用で頼まれていたとしたらよ?例えば、(何も)言われなかったらどっちが(A面かB面か)分からないわけだから一生懸命に、僕の場合でも作るんだけど、割とね、(製作サイドから)2曲シングル用って頼まれる時には、詞が先にあったとしたら「こっちの詞のやつをバ~ッと思いっきりやって下さい。あとは(もう1曲は)流して結構です」なんて言われる時もあるね。時々あるよ!うん(笑)。

それからね、シングル候補が2曲あった時に、「1位、2位」ということで「A、B」となる場合と、LPを出す都合とかそういうのが色々とあってやね、「LPにも入ってる、シングルにも入ってる」ということよりも、「シングルにはLPに入ってない曲を入れると、ファンの人が買ってくれるんじゃない?」というそういうセコい考えで入れるような場合も、あるようでございますよ。
いや、決して僕のことっていうのではなくて・・・あるようでございますねぇ(笑)。ここだけの話ですが。
今日は暴露話になっております(笑)。


僕のシングルに関しては、ここ2、3年は本当に「1位、2位」になっていますね。A面をすべった曲がB面に入ってる、という場合が多いですね、うん。
まぁ何はともあれですよ、「出してみないと分かんない」ということがあるじゃない?
いつも決まったスタッフなりがいてね、そういうスタッフが決めるわけだ。「こっちもイイんだけどな~。どっちだろう?」なんて言いながらこう、いざパッと出して、「B面もイイ」なんて言われる場合がしょっちゅうあるわけですよね。人の好みにもよるだろうし。
でも過去において一番凄かったのは、タイガースの頃にね、「銀河のロマンス」、A面ね。B面が「花の首飾り」。これが完璧逆転しちゃったわけよ。こういうことっつうのはまぁ、凄いね。

それからね、「サムライ」を出した時に、(B面が)「あなたに今夜はワインをふりかけ」。「これもイイ!」って、ある番組なんかね、こっちの方がリクエストが多いとか、ラジオなんかでね。いわゆるオリコンなんかにも、「あなたに今夜はワインをふりかけ」が単独でランクに入ってきたりね。
でもそれが(A面とB面を)逆転する、ということまでにはいかなかったということでございましてね。
まぁ本当に、いまだに決して忘れないのは「花の首飾り逆転事件」というね。これはもう永遠にワタクシのウィークポイントであったりなんかするわけでございますけれども(笑)。


いやぁ面白い話です。
「花の首飾り」って、僕なんか新規ファンですから「かつてそういうことがあった」というのはまぁ知識としてありつつ、でもそんな気にすることのほどでも・・・なんて思っているのに、ジュリーファンの先輩方は一様にすごく気にされているから不思議に感じていたんです。
そうかぁ、ジュリー本人がず~っと気にしていて、みなさんそれをご存知だったということなんですね。

あと、A面B面を2曲纏めて作曲依頼される時の話も興味深い。ジュリーは実体験から話してくれていると思うので、アン・ルイスさんの『ラ・セゾン』の時にそんなことがあったのかな。
B面の「Clumsy Boy」も名曲だと僕は思いますが、じゃあそちらがA面で違和感無しか、と言われるとやっぱりねぇ。ジュリーは「あとは流して結構です」を真に受けて作ってはいないでしょうが、どうしてもそんなふうに依頼されてしまうと入魂度も違ってきたりするものなのでしょうか。

では放送本編に戻りまして、ここでジュリー本人からのリクエスト・・・「15位以内には漏れたけど僕が好きな曲」ということで

番外篇「甘いたわむれ」

がオンエア。
そしていよいよ1位の発表です。

1位「あなたに今夜はワインをふりかけ」(186票)


『ジュリーB面ベストテン』、栄えある第1位は、186票のダントツで「あなたに今夜はワインをふりかけ」でございました。
順当なところですね、この1等賞は。うん、そう思いますね。
さっきも話が出ましたけれども、これも「何でB面なんでしょう?」っていうお便りもね、たくさんありました。
でも僕たち思うんですけど、「この曲イイから、今度のシングルにとっておこう」なんてすると、絶対古くなるんですよ。「あの時のやつ出せばいいのに」と思っても大概ダメ。だからその時その時にやっぱり、新しいチャレンジをして、B面にしろ何にしろね、作ってやっていきたいと思いますね。「ストックの曲をB面に入れる」とかそういうことは決してしないようにしようと思っておりますよ、ハイ。
みなさまもこれからは、恵まれないB面に愛の手をさしのべて頂きたいと思っております。


その後時代は大きく変わり、今はもう「シングル・ヒット」なんて言葉すら意味が希薄となりました。
それこそジャケ違いだなんだと「セコい考え」のセールス戦略がが当たり前になったり、タイアップありきになったり・・・。最早「A面があってのB面曲の素晴らしさ」が前提として語れない時代になってしまいましたから、今の若い人達がこのジュリーの「B面講義」を聞いてもよく飲み込めないかもしれませんね・・・。

『ザ・ベストテン』全盛世代の僕はギリギリ「シングル・ヒット」の意味を知っています。
ウィングスの「デイタイム・ナイトタイム」、邦楽だとゴダイゴの「ア・フール」、ツイストの「cry」とか、「お気に入りのB面」が入ったシングルが実家に残っています。
僕は、今となってはもう貴重な、いい時代を過ごすことができた・・・『ジュリーB面ベストテン』のラジオ音源は、改めてそんなふうに実感させてくれましたねぇ。
ジュリーファンのみなさまの「私にとってのイチオシB面曲」、この機に是非教えてくださいませ。


それでは、オマケです!
今日は『G. S. I LOVE YOU』パンフレットの中から、「マスカラで髭を濃くした」ショットを4枚どうぞ。


Gs16

Gs8

Gs6

Gs5



では次回更新は、4月20日の予定。
加瀬さんの4回忌ということで、ワイルドワンズの曲を採り上げたいと思います。

どの曲を書くかはもう決めているんですけど(2曲同時執筆のつもり)、問題は20日までに記事を仕上げられるかどうか。実はその20日金曜日から日曜まで、2泊3日でカミさんの実家のお墓参りに帰省するのです。
ですから前日の木曜日までにすべての下書きを済ませ、20日の朝出かける前にupという段取りに。
間に合うかなぁ?
もし間に合わなかったら、加瀬さんごめんなさい!

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2018年4月10日 (火)

沢田研二 「美しい予感」

from single、1972

Forbiddenlove

1. 許されない愛
2. 美しい予感

from『JULIEⅡ』、1971

Julie2

1. 霧笛
2. 港の日々
3. おれたちは船乗りだ
4. 男の友情
5. 美しい予感
6. 揺れるこころ
7. 純白の夜明け
8. 二人の生活
9. 愛に死す
10. 許されない愛
11. 嘆きの人生
12. 船出の朝

---------------------

今年の新譜『OLD GUYS ROCK』からラスト1曲「屋久島 MAY」の記事を書き終えて1週間。この間にメールで頂いた3人の先輩方の記事へのご感想が何とすべて同じような内容だったのでビックリしました。
僕は「屋久島 MAY」の記事冒頭で、「多くのジュリーファンを仰天させた」と書いてしまったのですが、みなさん仰るには「収録理由というのは分からないけど、曲に仰天することはなかった。自然に素敵な歌だと思った」と。そう言えば記事コメントで「違和感は無かった」と書いてくださった方もいらっしゃいました。

「屋久島 MAY」をジュリーの放った「超・変化球」と受け取った僕は、どうやら少数派のようです。
考察とか解釈とかいう以前に、ジュリーが提示してきたいかなる曲でもスッと心にとりこみ「この曲好き!」と言える先輩方は素晴らしいし、「屋久島 MAY」のような曲をいきなり新譜に収録してくるジュリーと、違和感無く受け入れるファンの関係って・・・50年の歴史はダテじゃない。深過ぎます、ジュリー道。
「童謡調」なんてカテゴライズしている時点で僕はまだまだ青い、ということなのですな~。


さて、新譜全曲の記事も書き終わり、今日からまた自由お題期間。今回と次回の更新では、ジュリー・シングル珠玉のB面曲を続けて採り上げます。
まず今日は、過去に一度お題記事を書いたことがある大名曲「美しい予感」です。本当にとてつもなく大好きな曲なんですが、記事を書いたのが『ジュリー祭り』直後のスーパー・ヒヨッコ期でしたので、「考察」もなにも書けていません(一応過去記事は
こちら)。
ちょうどその頃、堯之さんが肺気腫のため一度引退を決意されたというニュースがあったので、安易に「堯之さん作曲のジュリー・ナンバーの中で一番好きな曲」ということで記事お題としてしまいました。
あ、ちなみに僕はまだこの時「遠い旅」という曲を知りません。今では堯之さん作曲のジュリー・ナンバーと言えば僕の中では「美しい予感」と「遠い旅」が双璧で、甲乙はつけ難いんですけどね。

ということで今日は、2015年に書いた「バイバイジェラシー」に次ぐ、『過去記事懺悔やり直し伝授!』カテゴリー記事の第2弾です。
(と言いつつ、「バイバイジェラシー」の記事はこの機に『S/T/R/I/P/P/E/R』の他収録曲と共にアルバムタイトルのカテゴリーに移行させるのですが)
よろしくおつき合いくださいませ~。


①『JULIEⅡ』の春夏秋冬と「美しい予感」

このところすっかり暖かくなって、先週はまるで初夏の陽気、という日も何日かありましたね。
僕は今日のお題「美しい予感」にそんな「初夏」の陽射しのイメージを持っています。以前『JULIEⅡ』から”秋を感じるジュリー・ナンバー”シリーズとして「二人の生活」を記事に採り上げたように、僕はこのコンセプト・アルバムをちょうど1年間のストーリーとして捉えることができると考えています。
春夏秋冬の3区分が収録12曲それぞれにピタリと嵌る・・・書き出してみますと

1月(旧暦12月、晩冬)「霧笛」
2月(旧暦1月、初春)「港の日々」
3月(旧暦2月、仲春)「おれたちは船乗りだ」
4月(旧暦3月、晩春)「男の友情」
5月(旧暦4月、初夏)「美しい予感」
6月(旧暦5月、仲夏)「揺れるこころ」
7月(旧暦6月、晩夏)「純白の夜明け」
8月(旧暦7月、初秋)「二人の生活」
9月(旧暦8月、仲秋)「愛に死す」
10月(旧暦9月、晩秋)「許されない愛」
11月(旧暦10月、初冬)「嘆きの人生」
12月(旧暦11月、仲冬)「船出の朝」

いかがでしょうか?

あなたに今 初めて逢い
C                 Em7(onB)

なぜに胸が      震えるのか ♪
      Am  Am7(onG)     Fmaj7

山上さんの詞は「美しい予感」でこのアルバム中最も美しく瑞々しいシーン「少年と船長夫人の最初の出逢い」を描きます。
浮かんでくる情景で、夫人はきっと日傘さしてたと僕は思うんですよね~。初夏の陽射しが美しい夫人の涼しげな瞳を実際眩しく思わせる・・・登場人物の2人に「美しい予感」が舞い降りる瞬間は季節的にも舞台が整っていたというわけです。

ジュリーの神秘的なまでに無垢なヴォーカルについては『JULIEⅡ』全曲を語る上での大前提として、僕はまずこの山上さんの詞と堯之さんの曲が大好物。
山上さんは別に難しい言葉は使っていないし、文字にしてもとても短く、同じヴァースの繰り返しもある簡潔な作品なのに何故こうもドキドキさせてくれるのか。
そしてその詞がこれほどピタリと堯之さんの高度な転調メロディーに違和感無く載ってしまうのか。
製作作業的には曲先でしょうが、いずれにしても奇跡的な名曲。ずっと以前に採譜は済ませていましたが、その後長崎の先輩からお借りしたスコアも今は手元にあります。ま~これが例によって大らかな採譜で(笑)。


Utukusiiyokan1

『沢田研二/ビッグヒット コレクション』より。このスコアでは何とBメロが転調しません!

この通り弾くと、なんだか物悲しい出逢いの歌になりますねぇ。天下のシンコーさんにも、これほど低い精度のスコアを販売していた時期があったとは・・・まぁこれが「時代」なのでしょうか。
だからこそ当時、プロのレコーディング現場で演奏者達に行き渡る、僕ら一般ピープルには決して拝むことのできない一流のスコアの存在というものがどれほど貴重であったか・・・という話は次のチャプターに譲るとして、Bメロの正しい進行は

涼しそうな瞳 僕を見つめた
      B♭                     F

なぜかそれが僕は眩しく ♪
B♭                       F

冒頭のハ長調からいつの間にかドミナント・コードの「F」がトニックにとって代わりヘ長調に転調するという斬新なアイデア。ちなみにこの曲、AメロとBメロ2つのヴァースしか登場しませんけど、僕としては冒頭部のみをAメロ、Bメロ後のAメロ繰り返し部を敢えて「サビ」と解釈したいです。
同じ進行なのにイメージがまったく違う・・・これも堯之さんの作り込んだ曲に山上さんの詞が載った「マジック」の成せるところ。
いい曲があって、いい詞が載って、そしてジュリーが歌う。正に名曲の条件が整った「美しい予感」。それを実際に真に名曲たらしめ、世に出すための「作品」としての作業完遂に不可欠なもうひとつの条件とは?
次のチャプターではそんな話をしていきます。


②「譜面通り」を侮るなかれ!

山上さんの叙情味溢れる名篇群、GS時代からジュリーに縁深い作曲家陣による入魂の書き下ろし、そして若きソロ歌手・ジュリーの無意識な覚醒。それぞれがいかに優れていようとも、それを生かすのは(特にこうしたコンセプト・アルバムの場合)アレンジと演奏次第。僕が『JULIEⅡ』を個人的にジュリーのキャリア中で最強の名盤と未だ推しまくるのは、東海林先生のアレンジと、現地ロンドンのオリンピック・サウンド・スタジオ・オーケストラによる超一流の演奏あればこそです。
演奏陣各パートのクレジットが無いのが本当に惜しいです。例えば「美しい予感」のギターは一体誰が弾いているのか・・・現地のオーケストラ専属バンドのギタリスト?いやもしかしたら、日本から誰か名手をロンドンまで同行させていたとか?
詳細、知りたいですねぇ・・・。

個々の1曲1曲を採り上げればそうとは言い切れませんし、そもそも技巧面に限っての話ではありますが、1枚全体の作品としてこれほどのアレンジと演奏を誇る『JULIEⅡ』を超えるレコーディング・アルバムはジュリー50年の歴史でも未だ生まれていない・・・2014年の『三年想いよ』が僅かに迫るくらいでしょうか。

『JULIEⅡ』のレコーディング・メンバーは、東海林先生が用意したスコアをほぼ「譜面通り」に演奏していると考えられます。こう書くといかにも機械的でグルーヴが無いように思われるかもしれませんが、一流の演奏者が、一流のアレンジャーの用意したスコアを手にした時の威力を決して侮ってはいけません。
僕レベルですら、ごく稀にスコアの音符並びを見ていてその曲の世界観が閃いたり、語りかけられているような感覚を掴めることがあります。おそらく一流の演奏者にかかると、スコアを一見するだけで曲が求めている心情から風景、色合いに至るまで瞬時に悟ることができるのでしょう。
加えて「この箇所はアドリブを欲しがっているよ」というスコアの声すら聞こえてきたりするのかもしれません。「美しい予感」では間奏部のベースがその一例と推測しますが、そのアドリブにしても自分一人で突っ走るのではなく、周囲の音がどう噛んでいるのかまで理解した上で発揮する、共に作り上げていくということ・・・これが一流のオーケストラ&バンドによる「譜面通り」の真髄。『JULIEⅡ』はその最高峰です。

やはり1971年というのは特別な年です。
世界のロックやポップスにおける演奏技術はおそらくこの時に絶頂を極めている、というのが僕の考え方。これ以降はその技術を踏襲したり焼き直ししたり、或いは部分的に改良(「速く弾く」というのもその一部)しているわけで、絶頂期独特の演奏者の「熱」は後年のそれを寄せつけないんですね~。
その意味で、71年という年にロンドン・レコーディングで最先端の演奏者の熱に触れているだけでも、ジュリーは「選ばれし歌手」の資格を得ているでしょう。

ではここで、「美しい予感」の演奏パートを具体的に見ていきましょうか。
派手なストリングスやホーンは無く、「オーケストラ」的な音はオーボエ1本。「譜面通り」のバンド演奏がこれほど素晴らしいグルーブを起こし得るのだ、というお手本のような編成です。
パートとミックス分けを列記しますと

左サイド・・・アコースティック・ギター(コード・ストローク)、ハモンド・オルガン
センター・・・ベース、オーボエ
右サイド・・・ドラムス、アコースティック・ギター(アルペジオ、ソロ、カッティング)

の6トラック。
右サイドのアコギの多指奏法がとにかく凄い!
アルペジオもコード・フォームのリフレインではなく、次々に「旋律」として展開。これこそが「アレンジありき」「スコアありき」の特性です。カッティングのしなやかさ、ソロの美しさは同一トラックとは思えないほどのメリハリで、「ここにはピアニシモがあったんだな」とか「ここはメゾフォルテなんだな」と、演者がスコアの表記まで甦らせてくれるようです。
もちろん他のパートもそれぞれ完璧な名演で、ドラムなんて「現代の若いバンドのドラマーにここまでデリカシーある演奏ができるのかな」と思うほど。
個人的な好みなのかもしれませんが、僕はレコーディング作品についてはこういう『JULIEⅡ』のようなスタイルが好きなんだなぁ。

その上で、ジュリーのヴォーカルが神がかっている・・・やはりこのアルバムはそこに尽きます。
「美しい予感」はアルバム収録曲の中でもジュリーとしては低めのキー設定。これには理由があって、転調後の最後のサビ部だけ2音上がってホ長調になっているのです。楽曲終盤の半音上がりや1音上がりの転調は王道ですが、一気に2音上がりは珍しい。
ズバリこの最後のサビ部がジュリーの適性キーなんですね(「屋久島 MAY」とほぼ同じ音域)。
つまり、転調するまでの間はキーの低さから歌詞を併せて何処となく「迷い考えている」感があります。それが2音上がりのホ長調でパ~ッと開ける!
ここぞ、と女声コーラス(よくぞ最後の最後までこの切り札をとっておいたものです。これもまた「アレンジ」の妙)が絡み、主人公の少年(ジュリー)に「性の覚醒」をうながす・・・「美しい予感」は最後の転調で「美しい確信」へと変貌するわけです。

これをして、堯之さんの作曲の素晴らしさは言うまでもありません。
もし「全ジュリー・ナンバーで格別に好きな曲を20曲挙げなさい」と言われた時、僕はバランス重視のタイプですから各時代まんべんなく、対象曲の作曲家も1人ずつに絞って列挙したいところなのですが、堯之さんの曲だけは2曲入ります。「美しい予感」と「遠い旅」が絶対に外せないからです。
しかもこれがいずれもシングルB面曲という・・・何度も書きますけど、ジュリーのシングルB面は真に名曲の宝庫なんですよね。


③『ジュリーB面ベストテン』(前半部)

さぁここでは、ジュリー珠玉のシングルB面お題にあやかり、ただいま猛勉強中のジュリーの過去ラジオ音源から(日時)『NISSAN ミッドナイト・ステーション』(毎週火曜日『沢田研二の夜は気ままに』)の特別企画、リスナーのハガキ投票による『ジュリーB面ベストテン』放送回をご紹介しましょう。

とにかく何につけても「ベストテン形式」が流行っていた時代。『夜は気ままに』でのベストテン企画は昨年「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」「STEPPIN' STONES」の記事で『A面ベストテン』の方をご紹介済ですが、僕としてはA面以上にB面曲への(当時の)ジュリーファンの評価に興味津々。
そもそもジュリー本人が自らの楽曲についてひと言でもふた言でもコメントする、という企画自体がメチャクチャ貴重です。ましてやシングルB面曲はその機会も本当に稀でしょうからねぇ。


「B面を笑う者はB面に泣く。隠れたところに名曲あり」ということで、みなさんの選んだ『B面ベストテン』はどのようになったでございましょうか。
『沢田研二の夜は気ままに』・・・今夜はB面と恋をしてみよう!


ジュリーはきっとこの頃、大滝詠一さんの「A面で恋をして」が収録された『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』のレコードを聴いていたんでしょうね。佐野元春さんとの繋がりが深い時期ですから。
ちなみに佐野さんセルフ・カバーの「彼女はデリケート」は、こちら『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』収録のヴァージョンがおススメですよ~。

話を戻しまして、まずは10位から8位の発表です。

10位「I am I」(36票)
9位「俺とお前」(43票)
8位「バイバイジェラシー」(44票)


というわけでございましてね、まぁ色々思い出もございますが。
10位の「I am I」。これは日産ブルーバードのコマーシャル・ソングでございまして、コマーシャルの方では「ジャスト・ブル~バ~ド、アイアムア~イ♪」と言っとるんですね。レコードになったやつでは・・・え~、何つってた?ちょっと待て(笑)、歌詞カードを見よう!(ゴソゴソさせながらレコード・ヴァージョンのサビ最後を歌って)なんだかよく分かりませんでしたね(笑)。

それから「俺とお前」。
これはね、「勝手にしやがれ」の次に出してね。「俺とお前」をA面にするんだろうなぁと思って。たぶん「憎みきれないろくでなし」みたいな曲だと渡辺プロの社長がOKしないだろうと思ってたら、「何を言っとるんだお前、これ以外にあるか!」なんて言われて(笑)。そういう思い出もございましたね。

「バイバイジェラシー」、これはこっちの方が本当はA面候補だったんですよね。ところがどういうわけか逆転いたしまして、「渚のラブレター」のB面になってしまって、というような事実もございましたけれども。


ハハ、さすがの加瀬さんも「バイバイジェラシー」のA面はすんでのところで気が引けたんでしょうか。ビリー・ブレムナーとニック・ロウに申し訳ない、みたいな?


続いて、7位から4位の発表。

7位「ロマンティックはご一緒に」(45票)
6位「気になるお前」(49票)
5位「ジャンジャンロック」(50票)
4位「お嬢さんお手上げだ」(51票)


9位から7位、6位から4位がそれぞれ「1票差」という偶然にテンションが上がるジュリーです。


「ロマンティックはご一緒に」、これはね、最近の曲だから。しかも僕が作った曲だから、ある程度票は獲得するだろうな、なんて思っておりましたけれども、第7位。
まぁちょっとでき過ぎかな、という気もいたしますがね。

「気になるお前」、これは実にロンドン録音でございますよ。
ジャケット見てみますとね、73年8月発売。ロンドン・オリンピック・スタジオ・・・ここで録音したというね。ミュージシャンも全部ロンドンの方でございますよ。
ジャケットがね、ちょうどロンドンのアンティーク・マーケットで買い物してて、お化粧も何もしておりません(笑)。素顔でございますね。

「ジャンジャンロック」、ジャケットはエキゾティクスのメンバーがみんな海賊ルックで映っとりやすね、うん。なかなか渋い!

「お嬢さんお手上げだ」、これは「ダーリング」のB面でございますよ。この曲もすごく評判良かったんですよ。ポリドールの営業サイドではこっちの方が(A面として)いい、という声もあったようでございますけれども、押し切りました、「ダーリング」で(笑)。


いやぁこうして聴いていると、後追いファンの僕には初めて知る話ばかりで。
バリバリのシングルのA面、とファンが当然のように認識している大ヒット曲についても、ひょんなことでB面と入れ替わっていた可能性もあったのだと。「もしこっちがA面だったらセールス的にはどうなっていただろうか」とあれこれ想像しながら改めてB面曲を聴くとまた違った味わいも出てきますね。

気になるベスト3の発表、また惜しくもベストテン入りを逃した11位から20位までのランキングなど、放送の後半部はまた次回。しばしお待ちくださいませ。


それでは、オマケです!
今日はMママ様からお預かりしている資料の中から、『女学生の友』の切り抜きです。
ジュリーはロンドン・レコーディングから帰国してすぐに、PYG北海道公演に駆けつけていたんですね。


Inhokkaido1

Inhokkaido2

Inhokkaido3

Inhokkaido4

Inhokkaido5



『過去記事懺悔やり直し伝授!』の記事頻度はこれからどんどん増していくと思っています。
他にまだまだ未執筆の曲もたくさんありますし、ジュリーが歌ったすべての曲を記事にするなんてことは一生かかっても無理、という中にあっても、このカテゴリーは機を見てやっていかなければならないこと。
例えば7月からの古稀ツアーが、僕が予想しているようなテーマ(「PRAY FOR JAPAN」或いは「LOVE AND PEACE」)を前面に押し出したものになったとして、そこでもし「PEARL HORBOR LOVE STORY」とか「風にそよいで」のような曲がセットリスト入りしたとすれば、やっぱり僕は改めて今やるべき「考察」をやり直したい・・・おそらくそういう曲が古稀ツアーでは出てくるだろう、と楽しみにしているところです。

では、次回更新もシングルB面がお題です。
今度は記事未執筆の曲。A面曲に比べてB面曲はまだまだ書いていない曲が多く残っていますね~。
もちろん、『ジュリーB面ベストテン』後半部もお届けする予定です。どうぞお楽しみに!

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2018年4月 3日 (火)

沢田研二 「屋久島 MAY」

from『OLD GUYS ROCK』、2018

Oldguysrock

1. グショグショ ワッショイ
2. ロイヤル・ピーチ
3. 核なき世界
4. 屋久島 MAY

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こんばんは、熊本城主のDYNAMITEです。
先週あたりからすっかり暖かくなり、僕は季節の変わり目毎度お馴染みの風邪にやられていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

ということで、今年1月14日のジュリー50周年記念LIVE熊本公演に遠征した際、現地・熊本城にて申し込んだ『復興城主プロジェクト』。とりあえず仮の手形だけ発行して貰い、「後日郵送」の正式な城主証を待っている状況でしたが・・・先日遂に届きました!

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18033122

いや~、「額でも買おうかな」と思うくらい立派な城主証にテンションが上がりました。
このプロジェクトでは、1万円以上の寄付で誰でも熊本城主になれます。
みなさまも今後熊本を訪れる機会があれば、是非申し込んでみてはいかがでしょうか(現地での申し込みだとその場で写真集も貰えます)。

まぁ、城主証を頂いたとは言え実際には僕は名もなき歩兵ではありますが、これで正式に加藤清正公の配下の者となったわけで、今後は「賤ヶ岳七本槍の中で一番好きなのは福島正則!」と言い辛くなりましたな・・・。


さぁ、『OLD GUYS ROCK』全曲考察シリーズもいよいよラスト1曲となりました。
今日のお題は多くのジュリーファンを仰天させた謎の4曲目「屋久島 MAY」・・・ある意味、収録曲中最も難解なナンバーでしょう。
2003年のシングル『明日は晴れる』に、ジュリーのオリジナル携帯着信メロディー(?)として収録されていた、ということも僕は今年初めて知りました。
ジュリーが何故今年この曲を改めてリメイク、レコーディングし新譜に収録したのか・・・その意図を僕がまるで理解できていないため、今日の記事はあちこちに話が飛びますが(汗)、ご容赦の上おつき合いください。


①ジュリー流「童謡」の中にヒントを探る

僕が生涯で初めて聴いたレコードは・・・3歳か4歳くらいの時、母親が買ってくれた童謡全集でした。
「こがねむし」と「山寺の和尚さん」が特にお気に入りで、その2曲にはなんとなく「怖さ」のようなものも感じつつ(まぁ歌詞は実際とても怖いんですけどね)繰り返し聴いていました。「山寺の和尚さん」なんて今聴くととんでもなくファンキーなロック・ナンバーですが、子供心にはそこまでは分からなかったなぁ。
ふと母親に「あんたは短調の曲が好きみたいだね」と言われて、「短調は悲しい感じ、長調は楽しい感じ」と教わったことをハッキリと覚えています。

「童謡の中に潜む怖さ」で思い出すのが、伝説的テレビ番組『イカ天』にゲスト審査員として出演された大島渚さんがズバリその通りの表現で、3代目グランド・イカ天キング「たま」を絶賛されていたこと。
『イカ天』では5週連続でキングを勝ち抜いたバンドが「グランド・イカ天キング」となりメジャー・デビューを勝ち取るシステムなのですが、その大島さんの言葉が飛び出したのは、「たま」がいよいよ運命の5週目に臨んだ放送回。その時チャレンジャーとなったバンドがあの「マルコシアス・バンプ」(ジュリー絡みでみなさまご存知の秋間経夫さんや佐藤研二さんが在籍)で、ゴリゴリのグラム・ロック「バラが好き」を立て説得力抜群の「マルコシアス・バンプ」に対し、5週目にして番組コンセプトそのものを挑発するかのようにアッと驚く変化球「まちあわせ」を用意した「たま」と、『イカ天』史上に残るハイレベルかつ「まったくタイプの異なる2バンドに敢えて優劣をつける」という審査員泣かせの名対決だったわけです。
結果は、7人の審査員のうち萩原健太さん、吉田建さん、伊藤銀次さんの3人がマルコシアス・バンプに票を投ずるも4対3で「たま」が勝利、5週勝ち抜きを達成します(ちなみに、「このバンドを1週限りの登場とするのは勿体無さ過ぎる」との審査委員長・萩原さんの計らいでマルコシアス・バンプには「暫定イカ天キング」の特例が与えられ、その後暫定週を含めた6週の勝ち抜きにより彼等もグランド・イカ天キングを勝ち取りました)。
この時の4対3の票分けは、「週替わり」の特別審査員に大島さんがいたことが大きかったのですね。
これがもしポンタさんなら、或いはジュリーだったならば、マルコシアス・バンプが逆転していたんじゃないかな。大島さんはマルコシアス・バンプについても絶賛した上で(曲のタイトルを「おまえのバラが好き」にしてくれ、と言いながら大喜び)も、キング対決に限っては「童謡の中に潜む怖さ」を以って「たま」の方を高く評価した、と明言されていました。

で、この放送回での楽曲対決を双方ジュリー・ナンバーで例えるならば、マルコシアス・バンプが「Come On!! Come On!!」(秋間さん繋がりでね)で、「たま」が「屋久島 MAY」といった感じ。
すなわち僕はジュリーの「屋久島 MAY」を、作曲手法からしていかにも「童謡」的だと思っているのです。
こんなことを書くと「ジュリーはロッカーだ、童謡とは何事だ」とお叱りを受けるでしょうが、僕はジュリーの「ロック」を愛しつつも、自らの狭量でそれのみを標榜し本質を見ない、ということはもうやめたのですよ・・・。

そもそも「屋久島 MAY」は2拍子なのですね。これが揺るぎない本質の面です。それはロック的なツービートではなく、童謡独特のもの。しかも日本古来のね。
採譜をすれば明快です。


Yakusimamay

(全編載せるとヤバイので一部のトリミングのみで。ちなみに「ホケキョ」や「ホケキョー」ではなく「ホケキョウ」と表記させているのがいかにもジュリー、という感じで好き!)

そこで僕は、一連の「祈り歌」の中でジュリーが突如この歌を採り上げた収録理由を求め、大島さんに倣って「屋久島 MAY」に「童謡の中に潜む怖さ」を見出そうと、この数日色々な聴き方をしてみました。
でも結局分からない。唯一引っかかるのはノン・クレジットのコーラス隊の存在ですが、荘厳ではあるのだけれど「怖さ」は感じない・・・まだ聴き方が甘いのか、センスが無いんでしょうかねぇ。

頭に浮かぶ光景は、数人の男女がてくてくと林間の山道をゆく姿。「自然への畏怖」・・・今僕はそのくらいしか、曲に込めたジュリーの思いを量れずにいます。
目からウロコなみなさまの解釈、コメントにてお待ちしております(笑)。


②さらに脱線しながら考えてみる

僕は鹿児島出身ですが、屋久島を訪れたことはありません。行ったことのある人は皆「是非」と勧めてくれますからそれは素晴らしいところなのでしょう。

実際にこの目で樹齢2000年とか3000年の屋久杉を見ることが叶えば、その時ジュリーの「屋久島 MAY」の中に「童謡の中に潜む怖さ」を感じられるのかもしれません。2000年以上の生命の前では、人類の欲望のぶつかり合いがいかに愚行であることか・・・そんなふうに思うものなのかなぁ。
それにジュリーの場合だと、かつて見た縄文杉を古稀を迎える年に改めて思い出しながら、「70才?ヒヨッコもいいトコじゃないか!」と考えているとか?

『OLD GUYS ROCK』が福島に捧げられた1枚であることはジャケットが示す通りですが、その中にポンと織り込まれた「屋久島 MAY」にはやはり謎が多いです。
シャクナゲ繋がりで「やくしま」と「ふくしま」を掛けた?
もしかするとLIVEでは「ふくしま」と発音する?
いやいやそれは考えにくいし安易すぎます。そもそも僕は「屋久島 MAY」が古稀ツアーでセトリ入りするかどうかも可能性半々だと考えているのです(演奏上の理由が大きいのですが、それは次のチャプターで)。開演前のBGMに採用かなぁ、とかね。

ただ、4曲入り1枚の作品構成、その楽曲並びにおいて「屋久島 MAY」のようなタイプの意外なタイプの小品で締めくくる、落とすというプロデュースについては幾多のロック名盤に先例があり、大変心地よい、馴染みやすいということは言えるでしょう。
ビートルズなら『アビィ・ロード』の「ハー・マジェスティ」、ウィングスなら『ヴィーナス・アンド・マース』の「クロスロードのテーマ」。邦楽に目を向ければ、佐野元春さんで『Someday』の「サンチャイルドは僕の友達」、杉真理さん『ミストーン』で「タラップにて」。僕は収録ヴァージョンをレコードで持ってはいないけど、ジュリーの「くわえ煙草にて」も加えて良いのかもしれません。
今回の「屋久島 MAY」の場合は、ここまで一連の「祈り歌」が(楽曲的にも演奏的にも)ロックで固められていただけに意外性が高く、「素」のジュリーに聴き手が立ち会えるような・・・ホッとした気持ちになります。

とにかくメロディーが癖になる!ことに尽きます。
僕が今回の新譜で最も好きになった曲は「ロイヤル・ピーチ」ですが、CDを聴いていない仕事中などに頭を駆け巡るのは「屋久島 MAY」の旋律なんですよね。
これ、「五・七・五」じゃないですか。僕は俳句や短歌が大好きですから(毎年カミさんの誕生日には下手な歌を詠んでる笑)、いつの間にやら脳内で自分の好きな句とジュリーのメロディーが合体しちゃって

ひとつ家に~ 遊女も寝たり 萩と月~ ♪

なんて具合に再生されたりとか。
あ、この句は横溝正史さんの『獄門島』の小説や映画で知る人にはおどろおどろしいイメージを持たれていると思いますが、「ええっ寝ちゃうの!?まぁ、こんな月の晩じゃしゃあないか~」と苦笑いしながら娘の寝顔をつまみに一杯やってる芭蕉さん、みたいな絵を想像すると、とても愉快な心温まる名句です!(←なんという失礼な解釈・・・汗)

・・・と、グダグダに話が逸れましたが、結局「屋久島 MAY」の収録理由は僕には分からないまま。
それでも、この歌を聴いていると瑣末な諍い、悩みが馬鹿らしくなるというのは確かにあるんだよなぁ。この穏やかさ、煩悩の無さは一体何だろう。「達観」ともまた違う、独特の自然体。
それは、1曲目から3曲目のシリアスさは何だったの?とすら思ってしまうほど。
ここまで新譜3曲、僕はずいぶん重いことを書いてきましたし、古稀ツアーの編成についてもあれやこれやと・・・。でもそれって、自分自身の心配を紛らそうと勝手にあり得ない妄想を振り撒いたに過ぎないわけで。僕は正に煩悩の人なのですな~。
泰然としたジュリーの本質、ジュリーが「整えた」古稀ツアーの大きな楽しみが、この朴訥なメロディーに表れているのかもしれない、と思い直しています。

本当はボ~ッと聴くのが一番良い曲なのでしょうが、あれこれ考えてしまうのは僕の性質ですかね。


③2本のギターが織り成す神々しさ

新譜への収録意図を量りかねている僕でも、「屋久島 MAY」でのジュリーの歌と柴山さんのギターの音に神々しさを感じることはできます。

実は僕はまだシングル『明日は晴れる』収録の正規ヴァージョン(つまり、完全に信頼に足るピッチでは)聴けていません。でも、You Tubeでチラッと聴いた限りではどうやら当時とはキーを変えてきているようですね。
ジュリーの歌が入るということで、今回のテイクはメロディーの最高音が高い「ミ」の音、最低音が低い「シ」の音と、ジュリーの現在の声域にピタリと嵌るようホ長調の設定ででレコーディングされています。

ギターの音色は、収録曲中一番好きですねぇ。
最初にイントロを聴いた時、「出た~!『世界の昆虫図鑑』に載ってるやつ!」と(笑)。
今回の新譜4曲は
すべて2本のギター・アンサンブルですが、「屋久島 MAY」だけそのミックス配置が異なります。他3曲は2つのギター・トラックが明快に左右に分かれているのに対し、この曲はセンター付近で塊に近い感じ。よく聴くと、それぞれのトラックが微妙に左右に振られていることが分かります。
PAN設定は10時と2時くらいでしょうか。

で、音色自体もここまで3曲がゴリゴリのハード・ロックで来て、最後にガラッと変わる・・・これは柴山さんが使っているギターも他3曲(たぶんSG)とは違う、と僕は聴き取ったわけです。
「10時」(僅かに左のトラック)の方は、例の白いフェスナンデス(しょあ様命名「いい風ギター」、もしくはDYNAMITE命名「『世界の昆虫図鑑』に載ってるやつ」)じゃないですか?先の50周年ツアーで、唯1曲「永遠に」で登場したあれです。
そして「2時」(僅かに右のトラック)の方・・・2番の「屋久島の~♪」の「の」からアルペジオで噛んでくる瞬間が僕は特に好きなんですけど、こちらはテレキャスと見ました。いずれも確証はありませんが・・・。

不思議なコーラス・ワークも相俟ってか、2本のギターがそれぞれになんとも神々しい。
「屋久島 MAY」は、ジュリーが作ったメロディー部についてはワン・コードです(全編「ミ・ソ#・シ」の和音伴奏で通すことが可能)。
ジュリーから「好きに仕上げて良いよ」と言われた柴山さん(妄想)は、幾多の手管、ヴァリエーションを見事ギターだけの表現でこの曲に捧げています。
イントロ、エンディングは単音のみで和音は登場しないんですけど、柴山さんはそこで新たな和音進行を考案し組み立てているに違いなく、それがまた荘厳な想像をかきたてられます。
僕の推測では、柴山さんは単音部で

ソ#~ファ#、ミ~  ラ~ソ#、ファ#~
E                           F#m

シ~ラ、ソ#ファ#ミ~  ラ~、シシ~
G#m                            A         B

シ~ラ、ソ#~  ミ~レ#、ド#~
E                       C#m

ファ#~ミ、レ#ド#シ~  ミ~ ♪
F#m          B                    E

とコードを当てているのではないでしょうか。
実際には鳴っていない音を探す・・・「屋久島 MAY」はそんな楽しみも差し出してくれる曲。もちろんそれは柴山さんの尽力によるものです。

先にちょっと書いたように、僕は今回の新譜からこの「屋久島 MAY」だけは古稀ツアーのセトリ入りの可能性半々、と考えています。
これは僕自身がこの曲をうまく「祈り歌」として溶かし込めていない、という個人的状況に加えて、柴山さんのギターが推測通りフェルナンデスとテレキャスだったら、という点からも言えること。
無限のサスティンが奏でる単音と、吸い付くような鳴りのアルペジオ。CDではその2トラックが重なることなく独立しているとは言え、音色がまるで違います。
まさかLIVEでは2本のギターを構え、一方では背負って、瞬時に取り換えて弾くとか?
柴山さんなら何とかしちゃうのかな。

もしセットリスト入りしたら「HU~」およびリフレイン部の「膝はガクガク、ホ~ホケキョウ♪」に参加したい(笑)と思っていますが、みなさまはどうされますか?


2012年からは毎年、ちょうどジュリーの新譜全曲の記事を書き終える頃に春がやってきます。
でも、今年は春が来る方がかなり早かったなぁ。
先月25日の日曜に川越に行った時は、桜も「もうちょい」な感じだったのに、一昨日に訪れた谷根千の桜スポット、寛永寺近くの上野桜木はもう葉桜に。

180401_13

満開の桜を見ることができなかったのは残念でしたが、この後いつもお世話になっている先輩の薫陶を受けて、晴れ晴れと過ごすことができました。
4月に入り、ツアーを待つ僕の気持ちも「屋久島 MAY」のメロディーのような自然体になれた・・・かな?


さて、次回からは自由お題にてまた様々な時代のジュリー・ナンバーを採り上げていきます。
何かテーマがないかと考えて思いついたのは・・・50周年ツアーでは、入場してからのシングルB面BGMが楽しみのひとつでしたよね。その振り返りというわけでもないのですが、次回、次々回とジュリー珠玉のシングルB面を2曲続けて採り上げたいと思います。
その後、今年も加瀬さんの命日にワイルドワンズの曲を書いて・・・そこから先はまだ未定。毎年ジュリーの誕生月6月に開催しているactシリーズ月間も、今年は7~9月あたりにシフトします。
と言うのは、古稀ツアーのセトリ・ネタバレ禁止期間が長くなりそうなのですよ~。なにせYOKO君の初日が10月のさいたまスーパーアリーナですから。
さすがにそこまで長期間こちら本館を留守にするのも何ですからね。セトリに関係なさそうなテーマで色々と更新のネタを考えていかねば・・・。

さて、そのさいたまスーパーアリーナ。
ツアー後半日程のチケット申し込みはまだ先で(5月くらいですかね)、なんとか古稀ツアー最大の箱(現在告知されている中では)、あの広い会場を埋め尽くしたいと思って今は仕事関係など色々な人に声がけ、お誘いを頑張っているんですけど、「平日ど真ん中の水曜日、17時開演」という条件はなかなかハードルが高いようで・・・色よいお返事が頂けません。
僕自身はもちろん有給休暇を申し込みむつもりですし、YOKO君も「職場のカレンダーに今から”腹痛で休み”って書いておくよ!」と言っていましたが(笑)、特にジュリーファンでない人はなかなかそこまではねぇ・・・。もう少し頑張ってみますが。

それでは次回、ジュリー・シングルB面のお題にて。
曲はもう決めています。2015年に書いた「バイバイジェラシー」に続き、『過去記事懺悔やり直し伝授!』カテゴリー2本目の記事となります。
よろしくお願い申し上げます。

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