鉄人バンド 「OVERTURE」
from『人間60年 ジュリー祭り』、2008
disc-1
1. OVERTURE~そのキスが欲しい
2. 60th. Anniversary Club Soda
3. 確信
4. A. C. B.
5. 銀の骨
6. すべてはこの夜に
7. 銀河のロマンス
8. モナリザの微笑
9. 青い鳥
10. シーサイド・バウンド
11. 君だけに愛を
12. 花・太陽・雨
disc-2
1. 君をのせて
2. 許されない愛
3. あなたへの愛
4. 追憶
5. コバルトの季節の中で
6. 巴里にひとり
7. おまえがパラダイス
8. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
9. 晴れのちBLUE BOY
10. Snow Blind
11. 明星 -Venus-
12. 風は知らない
13. ある青春
14. いくつかの場面
disc-3
1. 単純な永遠
2. 届かない花々
3. つづくシアワセ
4. 生きてたらシアワセ
5. greenboy
6. 俺たち最高
7. 睡蓮
8. ポラロイドGIRL
9. a・b・c...i love you
10. サーモスタットな夏
11. 彼女はデリケート
12. 君のキレイのために
13. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
14. さよならを待たせて
15. 世紀の片恋
16. ラヴ・ラヴ・ラヴ
disc-4
1. 不良時代
2. Long Good-by
3. 涙
4. 美しき愛の掟
5. 護られているI Love You
6. あなただけでいい
7. サムライ
8. 風に押され僕は
9. 我が窮状
10. Beloved
11. やわらかな後悔
12. 海にむけて
13. 憎みきれないろくでなし
14. ウィンクでさよなら
15. ダーリング
16. TOKIO
17. Instrumental
disc-5
1. Don't be afraid to LOVE
2. 約束の地
3. ユア・レディ
4. ロマンスブルー
5. TOMO=DACHI
6. 神々たちよ護れ
7. ス・ト・リ・ッ・パ・-
8. 危険なふたり
9. ”おまえにチェック・イン”
10. 君をいま抱かせてくれ
11. ROCK' ROLL MARCH
disc-6
1. カサブランカ・ダンディ
2. 勝手にしやがれ
3. 恋は邪魔もの
4. あなたに今夜はワインをふりかけ
5. 時の過ぎゆくままに
6. ヤマトより愛をこめて
7. 気になるお前
8. 朝に別れのほほえみを
9. 遠い夜明け
10. いい風よ吹け
11. 愛まで待てない
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かねてより掲げていた”ジュリー70歳の誕生日までに、鉄人バンドのインストを含めた『ジュリー祭り』セットリスト全82曲のお題記事を書き終える”という拙ブログ当面の大目標。未執筆のナンバーは4曲にまでこぎつけ、2018年リミット・イヤーを迎えました。
偶然なのか必然なのか、もしかしたら僕自身がそう仕向けていたのか今はもう自分でも分からなくなっているのだけれど、その4曲の中に鉄人バンドのオープニング・インスト「OVERTURE」が残っていました。
今年、こんな気持ちで「OVERTURE」の記事を書くことになろうとは、思いもしていませんでした。
僕は今この記事を『ジュリーをとりまくプロフェッショナル』のカテゴリーで書いていますが、これまで鉄人バンドのインストをお題とする場合には『DYNAMITE CANDLES』なる特別なカテゴリーを設けていて、「爺」と「プリンス」が登場する妄想物語形式で自由気ままな文章を書いてきました。
これには、物語設定のオリジナル創案、執筆者である先輩ブロガーのしょあ様が2011年に一時ブログ更新を中断されていた間、僕が強引にお願いしてキャラクターをお借りしたという経緯があります。
「DYさんが爺の物語なんて書いて大丈夫なの?」としょあ様が呆れ笑いながら承諾のお返事をくださった際、おみやげに頂いたのが「DYNAMITE CANDLE」という1ダースの小さな蝋燭ケースで、気持ち的には「鉄人バンドのインスト記事を書く時そのキャンドルを1本ずつ灯して妄想の扉を開く」という心積もりでした。
でももうキャンドルは封印してしまいました。2016年、下山さんの姿がステージから消えたあの時に。
今年の古希ツアーからバックのメンバーを一新する、今のメンバーと揃ってステージに立つのはこの50周年ツアーが最後、とのジュリーの話を伝え聞いた時、僕は何より「ジュリーがお客さんに言葉でそれを伝えた」ことに大きなショックを受けました。
ジュリーは大阪フェスとNHKホールのラスト公演MCでバンドの今後に触れ、お客さんの前でメンバーへの感謝を示し記念写真まで撮影したという・・・これが正に例外中の例外であることは、ジュリーファンとして長いキャリアを積んだ先輩方も衆目一致するところのようです。
ジュリーがバンドメンバーに特別な思い入れを持っていたことの証でしょう。
ただし。
「この4人」というのは、ジュリーとしてもギリギリの表現だったんだろうなぁ、と僕は思っています。
MCの中でジュリーが特に感謝をバンドメンバーに捧げた(と聞いています)、自身還暦イヤーで「二大ドーム公演を共にした4人」を具体的に言うと
ギター:柴山和彦
ギター:下山淳
キーボード:泰輝(大山泰輝)
ドラムス:GRACE
つまり、「鉄人バンド」であるからです。
ネット上では混同した表記もよく見かけることがありますが、下山さんが脱退し依知川さんがベーシストとして加入した2016年から今回の50周年記念ツアーまでの4人のメンバーは、「鉄人バンド」ではありません。当然その間、ジュリーがこの4人を「鉄人バンド」と称したことはただの一度もないのです。
依知川さんは元々2000年代キーボードレス期のジュリーのステージを柴山さん、下山さん、GRACE姉さんと共にしたキャリアがあり、下山さんの抜けた後の加入メンバーとして最適の人でした。
柴山さん、泰輝さん、GRACE姉さんの3人はそのまま残っていたわけですし、2016年以降の4人体制は楽器パートの違いこそあれ「鉄人バンドにとてもよく似たバンド」ではありました。
僕はそこに鉄人バンドの影を求め続けました。
もしかしたら鉄人バンドの幻影を追っていたのは、ジュリーもそうだったんじゃないかなぁ?
ステージ上で今にも「鉄人バンド~!」と叫びそうになってハッと踏みとどまった瞬間が、この2年で何度もあったんじゃないかなぁ?
と、僕はそう考えてしまいます。あくまで想像でしかありませんが・・・。
でも「鉄人バンドにとてもよく似たバンド」は、やはりもう鉄人バンドではありませんでした。
本来ロック・バンドにあるべきベースが復活、オリジナル音源に当然入っているベースの音が加わって「これでしっくりくる」はずの過去のヒット曲、LIVE定番曲の中に、逆に違和感を感じるものが出てくるというのは一体どうしたわけでしょう。それほどあのベースレスの鉄人バンドが誇ったバランスは、音もキャラクターも絶妙でした。最強でした。
だからこそ、いつまでも鉄人バンドの幻影を求めているわけには・・・ジュリーには何にも縛られずにずっとロックし続けて欲しい、とそう思い当たると、今回のジュリーの決断は必然と捉えてもよいかもしれません。
今僕はジュリーの決断を尊重し受け入れつつ、一方でどうしようもない寂しさを振りほどくためにこの記事を書いているようなものです。
いったんは「もっともらしいこと」ばかりを書いて大部分の下書きを終えていましたが、読み直すとまったく納得いかず、体裁を取り繕うことをやめて今の自分の気持ちを正直にそのまま書こうと決め、新たに書き直しています。それがこの文章です。
ひとりよがりな内容ですから賛否異論様々ありましょうが、今日は『ジュリー祭り』オープニング・インスト「OVERTURE」のお題を借りて、「鉄人バンド」への感謝の気持ちをすべて出し切ろうと思っています。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
☆ ☆ ☆
鉄人バンドのバンドマスター、柴山さん。
イ長調の「OVERTURE」ではまず5フレットで「D→A」、3フレットで「G→C」のセーハ・フォームのコード弾き。しかしその複音移行がそのまま自身作曲のテーマ・メロディーとなります。
2度登場するブレイクのヴァース、1度目は柴山さんの「泣きのソロ」は曲中最大の聴かせどころです。
古希ツアーからの新しいバンドに柴山さんだけは残ってくれるんじゃないか、また新たにジュリーと共にスタートを切ってくれるんじゃないか、と思っています。何の根拠もありませんが・・・。
『ジュリー祭り』参加時に僕とYOKO君は「おいおい、下山淳がバックにいるぜ!」と驚きました。日本が誇るロック・ギタリストとして、かつて「ボウイの布袋か、ルースターズの下山か」とその才を並び称されたことでも有名な下山さん。
「OVERTURE」では基本4~6弦のパワーコードを駆使したバッキングに徹しますが、2度目のブレイク部のソロでは不協スレスレのチョーキング・スライドを挿し込むなど「らしさ」が全開。「下山ワールド」に感化されたのでしょうか、『ジュリー祭り』DVDのこの曲では、下山さんのソロ部のみスローモーションの編集が施されています。
大イベント『ジュリー祭り』オープニングで他3人のメンバーに緊張が窺える中、下山さんだけは時折笑顔のシーンも見られます。
オールラウンドな鍵盤魔術師であり、「音の料理人」とも呼ばれる泰輝さん。
シンセベースで「OVERTURE」冒頭のアレンジを支えます。幾多の音色を操り鉄人バンドの世界に幅を持たせる泰輝さんですが、やはり最高の奥義はブルース音階を採り入れたピアノ・フレーズ。「OVERTURE」で魅せてくれるソロもそんな名演です。
「涙色の空」「un democratic love」など、ジュリー・ナンバーとして重要な転機となる名曲を作曲者として多く手がけています。
詩人の魂と女性らしい感性、その上でパワフルに振り抜く打点がカッコ良過ぎるドラマー、GRACE姉さん。
僕は『ジュリー祭り』からずっと鉄人バンドを観続けてきましたが、GRACE姉さんは年々美しくなっていきました。
「OVERTURE」では泰輝さんのピアノ・ソロ直後にフィルを連発する見せ場があります。
また、「歌心」を持つその個性をして、2012年以降の「祈り歌」へのGRACE姉さんの貢献は計り知れません。近年のジュリー・ナンバーで、ジュリーの現在の声域に最もフィットし、歌に気持ちが込めやすいメロディーの曲は、GRACE姉さん作曲の「三年想いよ」だと僕は思っています。
『ジュリー祭り』が初のジュリーLIVE参加、その後怒涛のジュリーライフに突入した僕は、「鉄人バンドの音でジュリーに堕ちた」と言い切れます。
ただし、僕が鉄人バンドに特別の思い入れを持つようになったのは翌2009年『Pleasure Pleasure』ツアー過程でのことでした。
『ジュリー祭り』でバンドの演奏にも感動こそしていたけれど、その時僕の中で4人のメンバーは「今ジュリーのバックをやっている人達」くらいの認識でしかなく、そもそもオープニングの「OVERTURE」演奏中もロクに耳を傾けず(ですから僕がこのインストを再評価できたのはDVDの発売、そして何より『Pleasure Pleasure』での再演があったからこそです)、「早くジュリー出てきてくれ~!」と思っていました。たぶん隣席のYOKO君もそうだったでしょう。
さらに、本当に恥ずかしいことですが『奇跡元年』(2009年お正月LIVE)のレポで僕はセットリスト折り返し時の鉄人バンドのインストについて、「休憩」などと書いています(これは自戒のため加筆や修正はせず、当時の記述のまま残してあります)。
そんな僕の認識、気持ちに最初の変化が訪れたのは、『Pleasure Pleasure』ツアー開幕2日目。
このツアーは渋谷公会堂(当時はCCレモンホール)2daysでスタートしていて、僕は両日の参加でした。チケットは『ジュリー祭り』のレポを読んでくださった、僕にとっては最初のJ恩人とも言える先輩に申し込んで頂き、初日は2階席、2日目の方はジュリーLIVE初の1階1桁席に恵まれていました。
2階後方席で参加した初日に漠然と「下山さん、ちょっと元気がないかなぁ」と感じました。
ちょうどひと月前に忌野清志郎さんが亡くなられ、清志郎さん唯一のジュリーへの提供曲「KI・MA・GU・RE」がアンコール1発目に採り上げられていたツアーでしたが、下山さんの清志郎さんとの関わりを以前から少し知っていた僕は「下山さんはまだ心の整理がついていないのかなぁ」と考えました。
そして2日目、初めて間近で観たジュリーと鉄人バンド。
やっぱり下山さんだけうつむき加減で、「まだ元気無いのかな。いや、いつも下山さんはジュリーのLIVEではこういう感じなのかも」と考え直したりしているうちにセットリストは本割を終え、MCタイムに。
その頃はジュリーの長~いMCの間、鉄人バンドの面々はその場に残って(と言うかジュリーと共に再登場して)お客さんと一緒にジュリーの話を聞く、というスタイルでした。ギターの2人は直立不動で、柴山さんは自然体ですが下山さんは下を向いています。
その日ジュリーは清志郎さんの早過ぎる旅立ちにも触れつつ、当時お馴染みだった自らの体型自虐ネタを繰り出し、「太っているのは悪いことではない。健康の証である。最近はご飯がおいしくて」と力説。その流れで珍しくバンドメンバーをイジり始めました。
「メンバーでも、太っている人はよく食べる!」
とジュリーが後ろを振り返ると、GRACE姉さんがスティックで真っ赤な顔を覆ってしまいました。
「たくさん食べる人は長生きできる。でも・・・(メンバーで)痩せてる人は全っ然食べない!もっと食べなきゃダメよ!長生きできないよ!」
と、ジュリーは今度はハッキリ下山さんの方を見て言いました。ジュリーからの予想外の愛情溢れるイジリに、それまでうつむいてばかりだった下山さんも思わず顔を上げ、背中をのけぞらせて大笑い。
「それではよろしゅうございますか?忌野清志郎君が僕に作ってくれた唯一の曲です!」
から始まった「KI・MA・GU・RE」が初日とはまったく雰囲気が違って、最高にハッピーな名演だったんです。
ジュリーにイジられ「吹っ切れた」感ありありの下山さんが上手側まで出張、柴山さんに絡む絡む!
鉄人バンドの名演多しと言えど、この日の「KI・MA・GU・RE」は僕が体感した彼等のすべての演奏の中で5本の指に入る、素晴らしい名演中の名演でした。
そして思いました。ジュリーは下山さんに元気が無いのをステージ上で肌で感じていたんだ、だからこういうMCになったのだ、と。
いやぁ、ジュリーとこの4人、素敵じゃないか。単なる「バックのメンバー」と言うんじゃない、きっとこの4人こそがジュリーが辿り着いた「自分のバンド」なんだろうなぁ、とそう思い至ったわけです。
ちなみに、この時まだ「鉄人バンド」は正式な呼称となっていませんでした。
ジュリーがステージ上で4人に手をかざして「鉄人バンド~!」と紹介するようになったのはもう少し後のこと。インフォメーションに「鉄人バンド」と明記されるようになるのは、さらにその後のことです。
「鉄人バンド」の呼称は、遡って『奇跡元年』MC、年末の二大ドーム公演の報告をしてくれたジュリーが「80曲歌いました」と言った後、「バンドは(それよりも多い)82曲を演奏しています。鉄人です!」と称えたことに由来しますが、その時はまさか正式名称になるとは誰も思っていなかったんですよね。
とにかくそのような経緯で僕は『Pleasure Pleasure』ツアーが終わる頃にはすっかり鉄人バンドに特別な思いを持つようになり、千秋楽のレポでは4人のメンバー1人1人にお手紙を書いてしまうまでになりました。
それでも僕はまだこの時点では、「ロック・バンドにベースは不可欠」という願望も同時に併せ持っていて、翌2010年に(下山さんは急病で不在でしたが)ジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアーで「ベースあり」の鉄人バンドのアンサンブルを体感したこともあり、「これで依知川さんが復帰してこの4人に加われば完璧だ」と勝手な「完全体」を待ち望んでいました。
そんな気持ちが見事吹っ飛び、「ジュリーと鉄人バンドだけが辿り着いた境地」を確信したのは、2010年夏リリースの新譜1曲目「涙色の空」を聴いた瞬間でした。
ベースレスのバンドが完全1人1トラック、という信じ難い手法でレコーディングされた名バラード。
こんな音源作品を僕は未だかつて聴いたことがなかった・・・もし「5番目のトラック」でベースが入ったらおかしくなっちゃうんですよ、この曲は。例えば、柴山さんの「ちゅくぎゅ~ん!」の箇所がベースのフィルだったら「過剰」に感じてしまうでしょう。
また、CD全4曲が泰輝さん作曲のこのタイトルチューン含めすべて鉄人バンドの「1曲入魂」の作曲作品であり、そこへジュリーがメッセージ性の強い詞を載せ歌うという構成が始まったのもこの1枚からです。
「うわ、行っちゃったな」と思いました。どんな腕利きの他プレイヤーも共にできない、5人だけの未踏の境地に。ここで僕の気持ちは「ジュリーのバックは鉄人バンドのこの4人!」と固まりました。
明けて2011年お正月LIVE『Ballad and Rock'n Roll』では、セットリスト折り返しのインスト・コーナーが無くなるということもありましたが、僕の鉄人バンドへの信頼は揺るぎませんでした。
しょあ様に「爺とプリンスのキャラを僕に貸して下さい」と無茶なお願いをしたのもこの頃で、「自分がそれをしなければいけない」と思い込むほどまでに、いつしか僕は鉄人バンドのことが大好きになっていました。
その2011年は、東日本大震災の年です。
鉄人バンドは、ジュリーのバンドとして活動していなければ絶対に遂げることはできなかったであろう稀有なキャリアを3つ、積んでいると僕は思います。
ひとつ目は言うまでもなく『ジュリー祭り』二大ドーム公演で全82曲を完走し、ステージ上でそれまで体感したことのない特別な景色を見たこと。
そして残りの2つ・・・これがあの東日本大震災と深く関わっているのです。
ひとつは正に2011年・・・日本中が悲しみに沈む中で、トッポの不参加で完全な形ではなかったとは言え、ジュリー、サリー、ピー、タロー(年を跨いだツアー千秋楽はシローも)と全国ツアーを共にし、ザ・タイガース以外のステージでは体感し得ないお客さんからの特別な「熱」を彼等と一緒に浴びたこと。
演奏者としてどれほどの本懐であったか、想像に難くありません。
もうひとつは、震災を機にジュリーの創作の根幹となった『PRAY FOR EAST JAPAN』(『PRAY FOR JAPAN』)のコンセプトによる2012年以降の「祈り歌」を、ジュリーと共に1から作り上げてきたこと。
『涙色の空』を制作し未踏の境地を切り開いていた鉄人バンドなくして、ジュリーはあれほどの作品群を残せなかったのではないでしょうか。
将来ジュリーの一連の「祈り歌」が日本ロック界の伝説的マスターピースとして語られる日は必ず来ます。その際、ジュリーと共に鉄人バンドがあったのだという重要な点が抜け落ちないよう、僕は断固ここにそれを書いておきたいです。
その後2013年にザ・タイガースは完全再結成を果たし、オリジナルメンバーだけの演奏でツアーを大成功させました。
特別な熱を再度浴びたジュリーは、明けて2014年のお正月ツアー・タイトルを『ひとりぼっちのバラード』としました。参加したツアー初日(渋谷公会堂)、ジュリーはMCでザ・タイガースの公演成功を報告しつつ「またひとりぼっちになってしまった」と言った後
「しかし!オイラには鉄人バンドという強ぇ味方があったのさ~!」
と自慢げに4人を称えたのでした。
「祈り歌」の新譜をリリースし続けるジュリーに、「よくぞ自分はこの人のファンになっていたものだ」との思いを強く持つタイプである僕は、ジュリーと鉄人バンドの道はこの先ずっと続いてゆくものと思っていました。
2016年に下山さんが抜けてもその思いは消えず、鉄人バンドの幻影を持ってジュリーの歌とバンドの演奏を追いかけてきました。
思えば、ここまでの僕のジュリーファン歴はそのまま鉄人バンドの軌跡でもあります。
同メンバーによるバンド編成は2005年から始まっていたけれど、この4人を「鉄人バンド」たらしめ、ジュリーの信頼を確立させたのは間違いなく『ジュリー祭り』だったはず。僕はそれに間に合った・・・今、制御の無い感謝の気持ちで自分を持て余すほどです。
最後になりましたが、下山さんの穴を埋めるべく復帰加入した依知川さんの演奏、「祈り歌」に向き合う姿勢は素晴らしいものでした。
2016年の新譜『un democratic love』を見事鉄人バンドから引き継ぎ完成させたこと・・・依知川さん以外の他の誰も、下山さんがいなくなったあの時点でジュリーのコンセプトをバンドの作品として変わりなく成立させることは難しかったでしょう。
「鉄人バンド」は終わってしまったけれど、柴山さんも下山さんも泰輝さんもGRACE姉さんも、そして依知川さんも音楽を辞めてしまうわけじゃない・・・今僕はそう自分に言い聞かせ、彼等のこれからの多岐に渡るであろう演奏活動、作品制作を応援していこうと心に決めています。そう言えば僕は昨年依知川さんの「あさいち」「BARAKA」の2ステージを観にいきましたが、鉄人バンド4人の個別のLIVEにまだ参加できていません。
必ず、コンプリートしたいと思います。
今改めて『ジュリー祭り』のDVDで振り返ると、さすがに全82曲の演奏・・・最終盤には鉄人バンドらしからぬミスタッチの頻度も高くなっていたことが分かります。
「指の感覚が無くなっていた」と後にラジオで下山さんが語った通り、「いい風よ吹け」のアコギ・アルペジオには「こん畜生、俺の指頑張れ!」という「一瞬立ちどまって気合入れ直し」の演奏中止が随所に見られますし、「愛まで待てない」の柴山さんにも「おっと、ココじゃなかった!」と四苦八苦しているシーンを、姿は見えずとも耳で聴きとることができます。
そうしたシーン含めて、僕の完全ジュリー堕ちを誘ってくれた鉄人バンドの音を無修正で楽しめる『ジュリー祭り』の映像、セットリストは生涯の宝物です。
これからもこのDVDでいつでも鉄人バンドに逢える、とそう思うことにします。
ありがとう、鉄人バンド。
絶対に忘れません。
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コメント
DY様 こんばんは。
「OVERTURE」
このライブCDを聴くときは必ずこれから始めます。あの時の高揚感がリアルによみがえるから。メンバーもすごくいい顔しているし。
衣装替えの時間のイントロダクション、とても好きでまとめてCDを出してくれないかな、とずっと思ってました。
トイレタイムにする人が結構いて、それでジュリーが怒って止めてしまったんじゃないかと、残念でした。
今からでもCD化してくれないかな。
投稿: nekomodoki | 2018年2月21日 (水) 22時42分
nekomodoki様
ありがとうございます!
『ジュリー祭り』の時点で鉄人バンドのインストの魅力に気づけていなかった僕にとっては、『Pleasure Pleasure』での再演がとても大きかったです。
ツアー初日にDVDの先行発売もありましたし、すぐに復習できましたからね~。
そう言えば一度、「バンドのインストもちゃんと聴きなさい。トイレに行くくらいだったらオムツしてきなさい」とジュリーがMCで冗談めかして言ったことがありましたね。あれはどのツアーだったんだっけなぁ・・・?
ジュリーの言葉にハッとした覚えがありますから、すなわち僕自身にも心当たりがあったということで、それが2009年だったかもしれません。
鉄人バンドのインストCDは本当に欲しいですねぇ・・・。
投稿: DYNAMITE | 2018年2月22日 (木) 09時10分
DY様
こんばんは。新譜リリースの情報と共に春らしい陽気、寒さ苦手な私にはありがたいです。
ジュリー祭り以降の鉄人バンドへのDYさんの想い、よくわかる気がします。バンドにメンバーチェンジや解散は付き物とは言え、やはり淋しいです。ジャズマスターから少しずつメンバーが入れ替わり現在まで……「鉄人バンド期」が一番長かったですものね。個人的には2001年からしばらく続いたキーボードレス期が好きでしたが(ジュリー入れてストーンズ、タイガース編成だから?)。
大好きだったRCサクセションは解散声明ないまま何処かへ行ってしまいました。清志郎が亡くなって再結成の奇跡もあり得なくなってしまいました。私は立ち合えませんでしたが、ジュリーのMCはファンへの心遣いだったのでしょうか。
投稿: ねこ仮面 | 2018年2月27日 (火) 21時17分
ねこ仮面様
ありがとうございます!
勤務先の決算でバタバタしていてお返事が遅れすみませんでした。
僕の場合は初めて観たジュリーのLIVEが鉄人バンドで、当初は「え~ベース無いの~」などと思いながらツアーを重ねてゆくうちに虜になりましてね~。
ずっとこのメンバーで続いていくものと思い込んでいましたから、自分でも驚くくらいにショックは大きかったです。この記事を書いて、今はもう切り替えているつもりですが・・・。
でも、RCサクセションのお話を伺うと、鉄人バンドの場合はメンバーそれぞれがこの先も元気に音楽活動をしてゆく、というのが僕らにとっても一番の支えですよね。
叶わずとも、「もしかしたらいつかまた」と思えますから。
投稿: DYNAMITE | 2018年3月 2日 (金) 09時09分