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2017年12月

2017年12月30日 (土)

沢田研二 「オーバチュア」「バタフライ・ムーン」

from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981

Stripper

1. オーバチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン

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いよいよ2017年も残りあと僅か・・・。
ジュリーのデビュー50周年記念ツアーは年が明けても続き、僕も熊本公演に遠征参加しますが、ひとまずこのメモリアル・イヤーの締めくくりにふさわしい考察お題ということで色々と考えまして。
今日は、個人的に大好きなパブ・ロックとの関わりも深いアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』から、記事未執筆の2曲を纏めて採り上げ、この大名盤の収録全曲執筆達成を以って2017年を送らせて頂きます。

未執筆で残っていた2曲は、はからずもアルバムのオープニングとエンディング。
僕はビートルズでロックに目覚めた少年時代から「LPアルバムの曲順フェチ」でして、ジュリーの場合はレコード時代にリアルタイムで聴いていませんからその点でずいぶん損をしているなぁ、という自覚があります。
LPのA面ラスト、B面1発目にどの曲が配されているかはとても重要ですし、そこから連なるB面2曲目、3曲目といった配置にもそれぞれ役割がある、というのが僕の考え方。LPでリリースされたアルバムをCDで聴くとどうしてもそのあたりが掴み辛く、アルバムの本質までは理解できていないんじゃないかと思います。

ただ、オープニング・ナンバーとエンディング・ナンバーに限っては辛うじてその醍醐味をCDでも味わうことができます。最初と最後の収録曲がアルバム全体の音のコンセプトを表している・・・これはそのまま「名盤の条件」とも言えるでしょう。
その点『S/T/R/I/P/P/E/R』はどうでしょうか。

ということで今日はアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』から、「オーバチュア」「バタフライ・ムーン」の2曲を纏めて語ってまいりましょう。伝授~!

①「ビッグバンド」が製作当初のコンセプト?

このアルバムは、個人的にはジュリー堕ち以前からハマリまくっていたパブ・ロックの一派からビリー・ブレムナー(ギター&コーラス)とポール・キャラック(コーラス、本職はキーボード)の2人がロンドン・レコーディングのゲスト参加ということで思い入れ深い1枚ですが、全体的としては何と言っても2曲目のタイトルチューン「ス・ト・リ・ッ・パ・-」が目立っていて、この曲が短調のハード・ロカビリーですから「ストレイ・キャッツ的な作品」・・・というのが第一印象。
しかし聴き込んでいくと賑やかで陽気で、陽射しの熱さのような感触がしてきて、ストレイ・キャッツのダークでシビアなイメージが払拭されていく、という不思議な二重構造の魅力を持つ名盤なんですよね。

ほぼ同世代ながらジュリーファンとしては大先輩でいらっしゃるkeinatumeg様が、2009年に同じ主旨の素晴らしい御記事を書いてくださっています(こちら)。
実はちょうどこの頃に僕とkeinatumeg様はブログの相互リンクをさせて頂いていて、メールでこのアルバムに絡んでロックパイルの「ハート」(「バイバイジェラシー」のオマージュ元)の話をしたりしていました。
ジュリーファンとロックパイルの話ができるというだけで嬉しかったのに、そんな矢先に書いてくださったこの御記事。我が意を得たり、と言うのかとにかくとても嬉しく、共感したことを覚えています。

keinatumeg様が書いていらっしゃる通り、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の「陽」の色はエンディング収録の「バタフライ・ムーン」が決定づけているでしょう。
そしてその陽気なムードはそのままオープニングのビッグバンドな「オーバチュア」へと回帰します。針を落とす度に(いや、僕はCDなんだけどさ・・・泣)擦り込まれてゆく、肩の力の抜けた気ままなパーティーの雰囲気。「オーバチュア」と「バタフライ・ムーン」にサンドされた名曲群。それがこのアルバムの魅力の正体です。

そう思っていたところに、今年になって僕は81年のラジオ音源『音楽夜話』で、当初「バタフライ・ムーン」にも「オーバチュア」と同じブラスのアレンジが施される予定だった、という衝撃の事実を知りました。
なるほど、ビッグバンド仕様の2曲で最初と最後を彩るというアイデア・・・『S/T/R/I/P/P/E/R』は元々そんなコンセプト・アルバム志向だったんですね。
ただ残念ながら「バタフライ・ムーン」のブラス・テイクは、録ってはみたものの出来がイマイチで、結局カットされたのだそうです(詳細はチャプター③で書きます!)。
そのぶん西平さんのラテンチックなキーボードが際立つアレンジとなり、「バタフライ・ムーン」は申し分のない名曲としてリリースに至りますが、アレンジフェチの僕としては、グダグダのブラス・ヴァージョンも聴いてみたかったなぁ、と思うわけです。
きっと、アルバム全体にビッグバンドの陽気な空気感漂う「起承転結」を楽しめたんじゃないかな?
だって、「テレフォン」→「シャワー」の2曲ってどう考えても「転」じゃないですか。カットされたブラス・トラックがどれほど酷かったのか僕らには分からないけれど(笑)、「起」の「オーバチュア」と対を成す「結」としての、ビッグバンド・テイストな「バタフライ・ムーン」が実現しなかったことは、ちょっと勿体無かったですねぇ・・・。

②ジュリー無敵の覚醒期!

さてここでは「バタフライ・ムーン」に絞った考察を。


Stripper19

Butterflymoon1_2

↑ 今回の参考スコアは当然『ス・ト・リ・ッ・パ・-楽譜集』!


先述のkeinatumeg様の御記事にある通り、これはメチャクチャ高音域のメロディーを擁するナンバーなのですね。「試しにこの曲のサビを一緒に歌ってみて!」と書いていらっしゃるkeinatumeg様のお言葉に、またまた深く共感させられます。
この曲を男声で楽に歌えることができるのは、ほんの僅かの優れた喉の持ち主に限られるはずです。

人生はバタフライ 花から花へ飛ぶよ
E        B7                            E

人生はバタフライ
E        B7

月の光を浴びながら飛ぶ Hey! ♪
B7         E                 B7

サビまでのAメロが音域としては普通で、しかもサビ直前はむしろ低音域のメロディーですから、いきなりのオクターブを駆け上がる展開にまずビックリ。
ひたすらに高音が続き、ひとつの発声も休ませてくれないという・・・しかもこの曲の最高音(高い「ラ」の音)はサビ最後の最後「Hey!」。これはドミナント・コードの7th音をそのままメロディーに採り入れていてすごく「ロック」な感じなのですが、それにしても高い!

ヒイヒイ言いながら歌ってきてトドメにこの最高音を出すなど、普通の男声では無理。
ところがジュリーは楽々です。

何と言っても「バタフライ・ムーン」はジュリー自身の作曲作品です。
伊藤銀次さんが「キーを下げるはずだったものをそのままレコーディングしてしまったのに、ジュリーは楽々声が出ていた」と語った逸話が有名な「渚のラブレター」も然り、「このサビの高音を歌えるのはアイツしかいない」と、トッポのハイトーンを意識して作曲したという「十年ロマンス」然り。いずれもジュリーは当然自分でメロディーを声に出して作曲しているわけで、この頃のジュリーは高い「ラ」の音、或いはそれ以上すらも余裕で発声圏内であったことが分かります。
「バタフライ・ムーン」をはじめとする当時の自作曲が示すのは、ロック・ヴォーカリストとして、作曲家としても完全覚醒したジュリー「無敵の時期」です。

ジャマイカン・レゲエのアレンジは誰のアイデアだったのかな。作曲段階からジュリーの頭にあったのか、それとも銀次さんが満を持して引き出しを開けたのか。
はたまた「裏ノリ」ビートに敏感な吉田建さんの提案だったのかもしれません。建さんは後のEMI期のジュリー・プロデュースで(特にアルバム『Beautiful World』)レゲエっぽいアレンジを多用していて、自身のベーシストとしての演奏もそうでしょうが、「質の高いリズム解釈」を志す人ですから。
ただ、「バタフライ・ムーン」はジュリーにしては珍しいレゲエ・パターンの中でも「陽」が突出しています。三浦徳子さんの「花から花へと飛ぶ」陽気な無頼を感じさせる詞を引き出したのがジュリーの作ったメロディーであったことは疑いようがなく、これはやっぱり作曲家兼ヴォーカリストとしての揺るぎない力量ですよ。

それに『S/T/R/I/P/P/E/R』ってジュリーのアルバムとしては全体のリズム・コンセプトが異色。エイト・ビートが極端に少ないんです。
次々に繰り出されるのは3連符のシャッフルであったり、尖り跳ねまくる16ビートであったり・・・。
そんな中、のどかで無頼なレゲエ・ナンバー「バタフライ・ムーン」は、この大名盤を締めくくるにふさわしい名曲、名テイクではないでしょうか。

③『音楽夜話』より本日のお題2曲の話

ここでは、今年に入って半定番化しておりますジュリーのラジオ音源のご紹介です(たくさんのラジオ音源を授けてくださった福岡の先輩には、1月の熊本公演の会場にて改めて直接お礼を申し上げる機会に恵まれそうで喜んでいるところです)。

とにかく、先輩方にとっては「ジュリーファンとして常識」な逸話であっても、僕にとってはただただ目からウロコ、これ以上の勉強材料は無い!ということで、こうして時々考察記事に織り込んでいます。
今日は、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』リリース直後にジュリーがゲスト出演した、小室等さんの番組『音楽夜話』。僕はこの番組自体を今年になって初めて知りましたが、とても良い雰囲気の番組ですねぇ。
小室さんが本当に「聞き上手」で、ジュリーも胸のうちにある「言っておきたい」ことを存分に話せているんじゃないかな、という印象です。

ジュリーは一週間通してのゲストで、本当に色々な話が聞けますが、今日はとりあえず「オーバチュア」「バタフライ・ムーン」の2曲にジュリーが言及している部分を抜粋する形でお届けしたいと思います(他箇所はいずれの機会に!)。
まず、初日の放送冒頭で「オーバチュア」が流れます。



-突然の1920年代、という感じで始まりましたが・・・今週一週間の『音楽夜話』はお客様に沢田研二さんをお迎えして、『S/T/R/I/P/P/E/R』という6月10日に発売されましたアルバムを聴きながらお話を伺いしようというわけであります。今聴こえているのはそのアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の中の最初に出てくる「オーバチュア」の部分でありますが、何か「ジュリーがこれに合わせて踊っている!」と考えてしまいますが。
(ジュリーの小さな笑い声がここで聞こえます)
ひとつよろしくお願いします。

J「こちらこそ!」(←いきなりすごくイイ声!)

-いやぁ、1920年代ですねぇ。

J「そうですね」

-「キャバレー」と言うか、「ストリッパー」と言うか・・・。

J「ストリップ小屋で本当に出てきそうな感じですね」

-昔は僕もよく行きましたよ。(2人で大爆笑)

ここから、アルバム・タイトルの由来や、「人生はストリッパー」なるコンセプトはジュリー自身の仕事の仕方と重なる部分が大きい、とか、過去に喧嘩事件を起こして新聞に『暴力人気歌手』なんて書かれてしまったので(そ、そうだったのですか・・・)「もうこれ以上恥ずかしいこともないだろう」と肝を固めて歌や衣装も変わってきた・・・等々、「ストリッパー」と「歌手」それぞれの覚悟の在り方、その共通点を中心に話が進み、シングル「ス・ト・リ・ッ・パ・-」がフルサイズでオンエアされてジュリー・ゲスト初日の放送は終わります。

そして、僕が本当に仰天した「バタフライ・ムーン」の逸話が登場するのは3日目の放送回。
ジュリーは一度も「バタフライ・ムーン」というタイトルを口にせずこの話をしてくれていますが、「キーがE(ホ長調)である」「ブラス・トラックをカットした後に西平さんがマリンバっぽい音を足している」などのヒントにより、曲の特定は容易なのです。



-もう少しレコードの話を聞こうかな。え~、ロンドンで(レコーディングを)やろうっていう動機は?

J「最近好きなグループ(バンド)が、たまたまロンドンでやってる人達だったんです。ロックパイルっていうグループと、ストレイ・キャッツっていう。その人達がどういうミキサーでやってるんだろうって、ちょっと興味を持って調べてみたら、たまたま(2つのバンドとも)一緒だったんですね、ミキサーも。スタジオも同じとこを使ってたんです。エデン・スタジオっていうところでね。
で、「これはいいや」と思ってそのエデン・スタジオが空いてるかなって連絡したら、ちょうど僕達が望んでいるところが空いてて。多少空いてないところも、わざわざ日本から、極東から来るんだから(笑)つって調整して10日間空けてくれて。ミキサーの人も空いてるっていうことでね。じゃあ、これはもう「来い」ということだから「行こう!」って感じでね(笑)」


-バンドみんなで行ったんでしょ?

J「そうです。新しいバンド・・・前のオールウェイズにいた3人と、新しいギターと新しいドラムで、初仕事がこのレコーディングだったんですね。だからまぁ、ちょっとした合宿気分でもう行っちゃおう!っていうね」

-そのメンバーでコンサートとかいうのは?

J「まだやったことないです。これからやるんですけどね(笑)」

-ただ、ゲストで誰かいたんですよね?

J「ええ、ビリー・ブレムナーっていう人が。ロックパイルでギター弾いてる人なんですけど、その人に来て貰ったり、あとコーラスも(これはポール・キャラックのことですな)。
あと・・・ブラスの人も頼んだんだけどそれはあんまり良くなくて、カットしましたけど」


-ハッハッハ!

J「お金は払いましたけどね(笑)ヘタなのがいるんですよ、やっぱりイギリスにも。ちゃんと吹かないんだから!(笑)
まぁ、キーもちょっと難しかったらしいんですね、ペット(トランペット)にすると。Eというキーで、ペットだとやりにくいらしいんですよ。さかんに「やりにくい」とか、向こうの人はゴチャゴチャ言うでしょ?言い訳とか(笑)。
ハーモニーにして多少重ねれば誤魔化せるかな、ってやってもね、全っ然ダメなんですよね。ロレロレで」


-それでカットして、どうしたんですか?

J「うちのキーボードがシンセサイザーでね、「もう全然違う感じで行こう」ってマリンバみたいな音にしちゃったんです。
(ブラスを入れる、という当初のアイデアは)本当は「パララララッ!」とかやろうとしてたんだけど(ブラスの人は)「デロレロロ~」みたいな(笑)。お祭り気分にしたいのに、何か黄昏た気分になってるっていう・・・」


-ハッハッハ!(大爆笑)

J「地味~な感じになって、こりゃイカンわ、と。でもせっかく金払うんだったら最後までやらしたろ!って全部やって貰ったんだけど、全部消してる(笑)」

-ロンドンに行きゃあ大丈夫、ってわけじゃないと。

J「そうなんですよ。ヘタな奴はヘタ。前の日くらいにね、「ブラス入れたいんだけど」ってスタジオの人に頼んで、結構有名な人のバックなんかやってたらしいんだけど。

-たまたま苦手なことだったんですかね~。
で、ロックパイルのなんとかっていうギタリスト・・・

J「はい、ビリー・ブレムナー」

-彼はどうでした?

J「いや、もうこの人は全然大丈夫っていうか。コードを書いて、ここのところを弾いて下さい、って。
別に譜面が読めるわけじゃなく「聴いて覚えるから」って言って。「何回もかけてくれ」って、一生懸命そこのとこだけ練習するわけ。向こうの人っていうのは割と自分流でやってる人が多いみたいで、「C#m」って言うと「ん?C#mってのはどうだ?」なんて言ってね。教えると「あぁ、これか、これやったことある!って(笑)。
でも、いざやり出すと凄い。アイデアと言うか、パターンをたくさん持ってるっていうかね。


-自分の身体を通って把握できると、やることは凄い、と。

J「凄いですね」

とまぁ、最後は「想い出のアニー・ローリー」の話(ギター・ソロ部のコード進行にC#mが出てきますからね)ですが、僕はもう、「おおお~!ジュリーがビリー・ブレムナーを絶賛しとる!」と大興奮。
これまで何度か『S/T/R/I/P/P/E/E』収録曲の考察記事で書いてきたように、ビリー・ブレムナーは僕がこの世で最も敬愛しているギタリストですから。嬉しい!
以前先輩に教えて頂いた「現地のプレイヤーがイマイチだった」という話は、ビリーじゃなくて「バタフライ・ムーン」のトランペット奏者のことだったんですね。
良かったよかった。

最後に、この逸話について補足をしておきましょう。
僕は30代後半くらいの頃、映画『スウィングガールズ』に影響されていきなりトランペットを購入、独学で勉強を始めました。相当練習したけれど、結局モノにはならなかったなぁ・・・と、今まで思っていたんです。
と言うのは、曲によって楽々吹けるキーの曲とまったく吹けないキーの曲が出てきて。#が2つ以上つくキーの曲がダメだったんですね。
#が2つつくのはD(Bm)のキーから。A(F#m)だと#3つ、E(C#m)は4つです。
僕のトランペットの場合は具体的に言うと「ド」と「ソ」の#が上手く吹けない。いずれも3本のピストンすべて押さえるフォームになるんですけど、同じ音を連続で繰り出す際、他のフォームは「ぱぱぱっ!」と歯切れ良く音が出るのに、「ド#」「ソ#」のフォームは「ほえっ、ほえっ、ほえっ」みたいな音になる上、素早い連続音がどうしても出せません。
#が2つ以上つく調号の曲は必ず「ド」の音には#がつきます。しかもトランペットはB菅楽器と言って、ギターやピアノに合わせて吹く場合、1音ぶんキーを上げますから、Eの曲を吹こうと思ったらペットはF#のキーで吹かなければいけません。
F#なんて、#6つの調号ですよ・・・とても無理です。

そんなこんなで
「自分は壁にブチ当たり、クリアできなかった・・・才能無かったのかな」
と思っていた次第ですが、この『音楽夜話』でのジュリーの話で、これはプロでも難しいことなんだ!と初めて知り、ちょっと安心しました(笑)。

ちなみにブラス・アレンジということで言えば、「オーバーチュア」のキーはF(ヘ長調)。これならB菅楽器のトランペットはGで吹けばよく、#は「ファ」の1つにしかつきませんから楽ちん(「ファ#」は1本ピストンのフォームで音が出しやすい)なのですよ~。
こういうことは、もしトランペットを練習していなかったら解説できなかったはずで、今日は珍しく「伝授!」っぽい内容の記事が書けた・・・のかなぁ?


それでは、オマケです!
今日は、同い年の男性ジュリーファンからお借りしている切り抜き資料で、Rock'n Tour '81関連の記事(出典が僕には分かりません・・・)から数ページぶんを。


81tour02

81tour03

81tour09

81tour10

81tour12

81tour13


さらに、年の瀬なので奮発してもう一丁!
こちらも出典は不明ですが、ピーファンの先輩に以前お借りした切り抜き集から。

1981091

1981092


ということで、年末ギリギリの更新でしたが・・・。
『G.S. I LOVE YOU』『ROCK'N ROLL MARCH』に続き、この大名盤『S/T/R/I/P/P/E/R』についてもこれにて収録全曲の記事コンプリートとなりました。
時期を見て、それぞれの記事カテゴリーもアルバム・タイトルに移行させようと思います。


今年も大変お世話になりました。
お読みくださるみなさまには、相変わらずの大長文におつきあい頂き恐縮です。ありがとうございます。

まぁ、長文が書けるというのも僕自身にまだまだその体力がある、という証(なのかいな?)。
それができる限り、僕のこのブログについては今まで通りの変わらないスタイルで来年も・・・ジュリーの古希イヤー、頑張って書いていきたいと思います。

年明け1月半ばに熊本公演への遠征が控えていることもあり、この年末年始の我が家は1日だけ温泉に行く予定こそありますが、基本的には節約モード。のんびり過ごすつもりです。みなさまはいかがでしょうか。
どうぞよいお年をお迎えください。

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2017年12月21日 (木)

沢田研二 「奇跡」

from『いい風よ吹け』、1999

Iikazeyofuke

1. インチキ小町
2. 真夏・白昼夢
3. 鼓動
4. 無邪気な酔っぱらい
5. いい風よ吹け
6. 奇跡
7. 蜜月
8. ティキティキ物語
9. いとしの惑星
10. お気楽が極楽
11. 涙と微笑み

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日付、変わってしまった・・・(汗)。不肖DYNAMITE、12月20日を以て51歳になりました!
誕生日のこの日は毎年「寒い」という印象で、風邪をひいていることも多いのですが今年は大丈夫。みなさまはお変わりないでしょうか。

さて今日は例年通り「ジュリーが自分と同じ年齢の年にどんな歌を歌っていたか」をテーマに考察記事お題を選びました。連日の更新で長い枕を書いている時間がありませんので(笑)、サクサク行ってもよろしいでしょうか?(←ジュリーMCのマネ)。
ジュリーが51歳となる年(1999年)にリリースされたアルバム『いい風よ吹け』収録曲の中でも特に好きな曲のひとつです。
「奇跡」、伝授~!


①2009~2018 ジュリーの「奇跡10年」、開幕曲!

未だに「自分はこの曲を生で聴いたことがある」という事実がまるで夢の中の出来事だったように感じる時がある・・・そんな1曲です。

還暦を超えて二大ドーム公演を大成功させたジュリーは、そこから次の節目である自身古希までの10年を「奇跡10年」であると位置づけました。
よって、2009年最初のお正月LIVEのツアー・タイトルが『奇跡元年』。記念すべきセットリストのオープニングとしてジュリーが抜擢した曲が「奇跡」でしたよね。

僕は本当に「一度くらい沢田研二を観ておくか」程度の軽い気持ちで『ジュリー祭り』東京ドーム公演に参加しました。ですから『ジュリー祭り』後の熱病のような「本格ジュリー堕ち」などまったくの想定外。
ついでに、世の中の反応など予想もせずに書いた東京ドームのレポート記事で、これまでお目にかかったことのないアクセス数を目の当たりにしたことにもまたビックリ。以後このブログは完全に「じゅり風呂」へとシフトしたわけですが、あのドームの記事を書いていなかったら僕は『奇跡元年』に参加できていません。
コンビニをハシゴして「お正月LIVE」のチケットを探し求めるも購入できず途方に暮れていたところに、あの記事に目を通してくださったジュリーファンの先輩方とのご縁が重なり繋がって、僕はどうにか『奇跡元年』CCレモンホール(渋谷公会堂)公演への参加が叶ったのでした。
ドームから間を置かず渋公のジュリーを観た、というこの流れが僕のジュリーファンとしての道を大きく変えた、と言っても過言ではありません。

さて、「奇跡」。
『ジュリー祭り』後に怒涛に大人買い→猛勉強した未聴のアルバム、幾多の名盤の中に『いい風よ吹け』もあり、『奇跡元年』なるツアー・タイトルなんだからこれはやるかも知れない、と『奇跡元年』参加前夜にヒヨッコなりにみっちり予習していたという名曲。
予想は当たり、ジュリーにしてはストレートに(と言うか、ジュリーのツアー・タイトルとセトリの関係が一筋縄ではいかない、と僕が知るのはまだまだ先の話になるのですが)、これが見事セットリストの1曲目でした。
今でもあの「初めて体感するお正月LIVEの1曲目」のイントロの興奮はハッキリ身体が覚えています。本当に、血が滾った瞬間でした。
ジュリーファンの先輩方はもう何回もこの感覚を味わっているのか、と羨ましく思ったりしましたね。

実は「奇跡」は僕が初めて”おいっちに体操”に参加した曲でもありまして。
東京ドームの時はYOKO君と2人で2階席から、「あぁ、アリーナの皆さんやってるな~」としみじみ”おいっちに体操”の図を眺めてはいたんだけど、自分達はそこまで踏み出せなくて。
『奇跡元年』参加が確定した段階で僕は、「今度は絶対俺も一緒にやる!」と意気込んだものです(笑)。
でも、ジュリー今回そういう曲やってくれるのかなぁ、なんて思ったりもしてたものですから、「奇跡」のイントロで早くもジュリーが繰り出した”おいっちに体操”に僕は「来た来た~!」と大喜び。今にして思えば、物凄いテンションで腕振り上げてたんじゃないかなぁ。
席が1階の最後列だったしね。『ジュリー祭り』と違って後ろの人を気にせず暴れられましたから。

ジュリーの”おいっちに体操”ナンバーはいくつかありますが、「奇跡」はメロディーラインも綺麗で、でもコード進行はロックに尖っていて、詞もヴォーカルもハジけまくっているという「万能」タイプなんです。
泰輝さんのジュリーへの楽曲提供は、『第六感』収録の「夏の陽炎」に次いで2曲目。どんなパターンの曲も作れる泰輝さんが、おそらく99年当時の「ジュリー」をそのままイメージして作曲し、そこに覚さんが「ズバリ」の詞を載せたのでしょう。

引き際が早くて がんばらない僕が
F#          E           B             D

あきらめなかったの 何故だ ♪
F#              E                B    D

Aメロは、無骨なロック進行に究極にポップなメロディー。そして僕ら凡人でも難なく共感できる、「ささやかな人生の誇り」を描く詞をウキウキと歌うジュリー。
こういう曲が入っている『いい風よ吹け』って、やっぱりエポックなアルバムです。
ジュリーとファンの年齢のことを考えてもね。

「奇跡」ではさらに

小さなキスさえ   奇跡にみちて
D#m        D#mmaj7  D#m7  G#7

この世はまだ 捨てたものじゃない よ
B                  E                   D#m   G#7

熱い夏が終わり告げても ♪
   F#      C#               F#

このBメロは、クリシェの美しい王道コード進行も、覚さんの歌詞も本当に感動的。
「夏の終わり」って、人生を四季に例える時かなり切ないイメージとなる筈なのに、ジュリーの「奇跡」は「いやいや、むしろこれからが本番でしょう」と。
日常のほんのふとした出来事、人との触れ合いが奇跡のように嬉しく、愛おしく思えることがある。
それが正に50を超えてからの人生・・・なのかな?

その上で、スウィートなだけの曲というわけでもないのがまた素晴らしい。
このアルバムに限らず白井良明さんのアレンジはいつも「過激」ですが、明快にエレキ・サウンドを押し出したという点で、アルバム『いい風よ吹け』は白井さんアレンジのジュリー作品の中で重要なターニング・ポイントとなる1枚でしょう。
『サーモスタットな夏』ではビートルズやレッド・ツエッペリン、『第六巻』ではクイーン、とそれぞれのギター・サウンドのオマージュが60年代から70年代の洋楽ロックを元にしてきた白井さんが、この『いい風よ吹け』では突如、当時リアルタイムで全盛を誇ったオルタナ・ロックへと趣向を変化させます。
特に想起させられるのは、90年代にグラミー賞を二度も受賞し飛ぶ鳥を落とす勢いだったレッド・ホット・チリ・ペッパーズの破天荒なギター・アレンジ(ただし、彼等のギター・サウンドと言えばまずヒレル・スロヴァクによる歪みまくったブラッシングを効かせたカッティングですから、ギター・オマージュとしては80年代ということにもなるのですが)。
白井さんのこの試みは、「ライヴ」での表現をこれまで以上に渇望するジュリーの歌人生、さらには音の好み(ジュリーはエレキギター好きなのだとか)ともリンクし、2000年代の重厚なサウンドへと繋がってゆきます。
そんな中、僕はこのアルバムの「奇跡」~「蜜月」の2曲の流れに、エキゾティクス期『S/T/R/I/P/P/E/R』収録の「テレフォン」~「シャワー」をも重ねるのです。
過激で、ラウドで、容赦無いほどにロックで・・・でも実はとてもメロディーがポップで、スリリングな「2曲で1曲」の感覚。大好物です。

あと、「奇跡」は伊豆田さんのコーラスが素敵ですねぇ。
「Can't you see♪」は聴くたびにとろけそうになります。みなさまはいかがでしょうか。

②人生は51から?

ここから先はお題曲の考察からはちょっと外れて、アルバム全体のことを短めの文量で書いていきます。

アルバム『いい風よ吹け』は、(今日のお題「奇跡」もそう言えますが)覚さん、GRACE姉さんのの作詞作品も含め「年齢と向き合う」ジュリーのリアルなメッセージが初めて前面に押し出された名盤です。
50歳を超えるとやはり身体のことがあちこち気になってくる・・・その一方で、気持ちは不思議に正直になってきますよね。ある意味「この世に生まれた状態にリセット」する時期、ということかもしれません。

以前、ご事情あって断捨離された大分の先輩から授かった大量のジュリー関連の資料の中にこのような切り抜き記事がありました。


Img4981

Img4982

小林信彦さん・・・僕が敬愛する作家の一人です。
名作揃いの小林作品の中でも溺愛しているのが『オヨヨ大統領』シリーズで、「日本の小説の中で最も愛する作品は?」と問われたら僕は迷わず「合言葉はオヨヨ」(シリーズ中最長にして最高の傑作)と応えるほど。
その小林さんが2000年(その時ジュリーはまだ誕生日を迎える前の51才)に「特にファンというわけではないけれど」としながらも、ジュリーについてこんな素敵な文章を書いていらしたのですね。

現在51才になったばかりの僕はまだ、「人生は51から」の言葉を実感することはできません。
還暦も過ぎて(2000年当時)なお精力的に活動されていた小林さんだからこそ、の真理なのだろうなぁと。
この先僕もひたひたと老人になってゆく中で「そういえば51才あたりから・・・」と後になって感じる人生の醍醐味がきっとある、と信じたいものですが・・・。

ジュリーはこの年齢の頃から「日常」や「平和」を歌い始め、還暦を超え「奇跡10年」をもうすぐ達成、というところ。まっとうに、当たり前に成果を残してきました。
「お客さんが入らない時期もあった」というジュリーの話は、『ジュリー祭り』が初ジュリーLIVEだった僕にはなかなか想像し難いんですけど、そんな状況があればこそ「ステージで一生懸命に歌う姿を見せる」ことへの確信も生まれたのかなぁとも思うし・・・自分にとって一番大切なことを見つける、やり続けるって、なかなか普通の人にはできないこと。僕らは少しでもそんなジュリーの「真っ当さ」にあやかりたいですね。

まだ再来年の話ではありますが、古希を超えたジュリーは「次の10年」をどのように銘打つでしょうか。
今からとても楽しみです。

③アルバム『いい風よ吹け』から今後のセトリ入りは?

僕がこれまでアルバム『いい風よ吹け』収録曲のうち生のLIVEで体感できているのは、「鼓動」「いい風よ吹け」「奇跡」「いとしの惑星」「お気楽が極楽」の計5曲。
近年のセトリ入り率はかなり高いアルバムと言えます。

最も聴く機会の多いタイトルチューン「いい風よ吹け」は、先日お題記事を書いた「愛まで待てない」と共に、僕にとっては『ジュリー祭り』での鉄人バンドの演奏で歌うジュリーの印象が今も強く残っている大名曲。今後も必ずセトリ入りする(来年か?)と確信していますが、個人的には「ギター1本体制での演奏がまったく想像できない」というのは、下山さんがバンドから抜けた後に何度か書いている通りです。
『ジュリー祭り』79曲目・・・かつて「アコギを弾く指の感覚が無くなっていた」と下山さんがラジオで語っていたように、「いい風よ吹け」=「アコギ・アルペジオ」というのが僕の絶対的なイメージ。
百歩譲ってエレキで弾くにしても、じゃあ柴山さんが代わりにアルペジオ・パートを弾けば良い、という問題でもありません。何故って、「いい風よ吹け」のもう1つのギター・パート・・・「この曲のためにある」と言っても過言ではない柴山さんの白のフェルナンデス(通称”いい風ギター”(byしょあ様)もしくは”『世界のカブトムシ図鑑』に載ってるやつ”(byDYNAMITE汗)による、無限サスティンのリード・ギターもまた絶対に必要だから。
2つのパートを併用して弾くことは無理だと僕には思えるのですが、柴山さんなら何とかしちゃうのかも、と密かな期待もあったり、まぁとにかく「これから」のこの曲のセトリ入りには複雑な思いを抱えています。

未だ生体感できていない他収録曲で、「これからLIVEに通い続けていればいつかきっと聴ける」と予感しているのは、「インチキ小町」です。ジュリーの「逮捕されてしまえ♪」が生で聴きたい!
他では、「蜜月」「ティキティキ物語」が拙ブログで言うところの「ダイブ曲」ですが、セトリ入りの可能性となると厳しいのかなぁ。
「真夏・白昼夢」は可能性ありかもしれません。イントロ数秒で「来た!」と反応して「ぱぱぱん!」のハンドクラップに合わせられるか?が最大の楽しみです。

今日のお題「奇跡」は先に書いた通り「この曲を生で聴いたことがある」あの幸せな時間は夢かうつつか、という状態でおりますので、なんとかもう一度体感してみたいものですが・・・さて実現しますかどうか。


それでは、オマケです!
今日は、先述の大分の先輩から授かりました資料の中から、99年『アサヒグラフ』に掲載された、『いい風よ吹け』全国ツアーの特集記事をどうぞ~!


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ということで暮れも迫ってまいりまして、次回が今年最後の更新になるかと思います。これから仕事納めまで怒涛に忙しい日々が続くので、更新は冬休みに入ってから・・・年末ギリギリになりそうです。
何かジュリーのデビュー50周年イヤーの締めくくりにふさわしい未執筆のお題曲がないかなぁと思いを巡らせていますが、まだ決めていません。いずれにしても、個人的に「大好きな曲」を選ぶことになるでしょう。

インフルエンザが流行っているようです。みなさまくれぐれもお気をつけください。

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2017年12月19日 (火)

2017.12.15 武蔵野市民文化会館 沢田研二『50周年記念LIVE2017-2018』超速レポ

寒くなりましたね~。
師走らしく、仕事も忙しくなってまいりました。勤務先では今年は久々に「大当たり」のピアノスコア(某ドラマのタイアップ)があり重版に継ぐ重版でバッタバタ。いや、この御時世に本当に有難いことです。

さて、僕は先週金曜日にジュリーの武蔵野公演に参加しまして、今回は執筆に割く時間も無く(土日は遊んでた汗)超駆け足の簡単な短文レポとなってしまいますが、更新しておこうと思います。

またしても素晴らしいステージでした。
ジュリーは最初から最後まで上機嫌で、何と最初のMCで突然「まいど!」と。
「あっ!」と思ったのですが、関東人というのはダメですねぇ・・・ジュリーファンならほとんどが知っているはずの「おいど!」のレスポンスが瞬時にできません(恥)。会場でそれができたのは、ほんの数人だったのではないでしょうか。
まぁ、ジュリーも関西なみのレスポンスまで期待はしていなかったかもしれませんけど。

ジュリーは関東圏のLIVEではMCの一人称が「私」というパターンが多いのですが、この日は「オイラ」「オイラ」を連発してくれまして。
「それでさ~、オイラさ~、あっ「さ~、さ~」言ってすみませんね。「さ~」って言いながら(何を話すか)考えてるんだけどさ~」
みたいな感じで、僕がこれまで生で観たジュリーの中で今回の武蔵野は一番「キュート」だったんじゃないかなぁと思い出します。ちょっと甘えるような、リラックスしてるような、そして長いファン歴の先輩方に親しげに話しかけるような・・・新規ファンの僕はまたしても妬けてしまったという。

アンコール前のMCは恒例の「自分史」でしたが、とにかく脱線しまくり、甘えまくり、笑わせまくりで。
僕が一番面白かった話は、ザ・タイガースが「どわ~い、ぶるぇいく!(大ブレイク)」した、そのタイガースの中でも一番人気だったんだ、と言った後に

「まぁ、メンバーの中には勘違いして、自分の方が人気がある、と言っていたのが2人ほどいましたが・・・若気の至りということで許してあげて下さい」

と(笑)。
「2人ほど」って・・・分かり易過ぎる!

あと、「あの頃売れてなかったら」との仮定の話で
「今頃どこに住んでるのかすら分かりませんよ?例えば、(いかにも辺鄙なところ、というようなニュアンスで)岐阜とかさ~(笑)。あ、こんなこと言ったら岐阜の人に怒られる!不適切な発言でございました(一歩下がって礼)。岐阜ってなんかそういうイメージあるじゃない?いや、岐阜のことは好きなんですよ。ホントだよ?京都も近いしさ!同級生も住んでるしさ!」
その必死のフォローが面白くて・・・。
岐阜にはいつもお世話になっている先輩がいらっしゃるので(Mママ様)、終演後に速攻でご報告メール。返信では「岐阜を話題にしてくれるって、初めてかも!」と大変喜んでいらっしゃいましたが、とにかく僕はジュリーが「岐阜」「岐阜」と連呼している時にMママ様のお顔が頭に浮かんで、楽しくて仕方ありませんでした。

さてジュリーの歌ですが、この日は冒頭の「あなたに今夜はワインをふりかけ」の時点で「おっ、調子良さそう!」と思いましたね~。
どの曲だったか、最後のロングトーンをいつも以上に目いっぱい伸ばすシーンもありましたし(saba様の御記事から推測すると「サムライ」だったのかな)、「追憶」のラストの「ニ~ナ~~~♪」では、瞬時に喉の使い方を切り替えるテクニックも。当たり前のことながら、やっぱりジュリーって凄まじいヴォーカリストですよ。

僕は今ツアー何故かとても席運に恵まれていて、この日は初日、大宮(そして熊本滝汗)のような神席とは言えないまでも、7列目のほぼ依知川さん正面という素晴らしい席で観ることができました。
神席だとジュリーのオーラ、吸引力が凄過ぎてなかなかバンドの演奏をじっくりチェックする余裕など無いのですが、今回はその点が程好い距離感。ジュリーの表情もハッキリ見えるし、バンドのフォームも見えるという絶好の位置なのです。
で、絶対音感の無い僕はそれぞれの曲のキー設定を弦楽器のフォームで確認できたわけですが・・・まぁ驚愕したわけです。
確かに、オリジナルからキーを下げている曲もあるにはあります。でも、「ス・ト・リ・ッ・パ・-」はEmだし「危険なふたり」はEだし、あの当時の高音域ナンバーを69才のツアーにして原キーで歌っているのか!と。
俄かには信じられないので楽器の方が変則チューニングなのかな、と思い柴山さんと依知川さんのフォームを比べてみましたが、2人とも揃っているんです。
どちらも変則チューニングというのは考えにくいし、もしそうなら「ポラロイドGIRL」のAというのが説明つかなくなりますから、これはやはり「見たまま」のキーでジュリーが歌っているということ。

実は日曜日に音楽仲間の忘年会があって、先月の松戸公演に参加したメンバーもほぼ顔を揃えました。当然(例年とは違って)ジュリーの話題もたくさん出た中で、僕が武蔵野公演で確認した上記2曲のキーのことを話すと全員ひっくり返りましてね。
例えば「危険なふたり」。
僕らも数年前までなら、苦しいながらもカラオケでこの曲を原キーで歌うことは可能でした。でも皆50代に突入して、今はそれはもう無理なんです。
喉だって筋肉ですから、年齢を重ねれば衰えてくるのが必然。YOKO君曰く
「ミック(ジャガー)だってどんどん(昔の曲の)キーは下げてきてる。ただそれは人間として当たり前のことであって、キーを下げた上でカッコイイと思わせてくれるわけだから何も問題は無い。東京ドーム(『ジュリー祭り』)に行った時、ジュリーも同様だろうと自然に思っていたけど、そうじゃなかった、想定を超えてたってことになるよね。やっぱ、ポール(マッカートニー)とジュリー、この2人は別格だし天才なんだよ」
と。

あとね、今回「ラヴ・ラヴ・ラヴ」がA(イ長調)だったんです。オリジナルよりは下げているんですけど、それでも最高音が高い「ラ」の音ということになる・・・これは「F.A.P.P」の「HAPPINESS LAND」の箇所と同じです。
そんなふうに聴こえます?
ジュリーの発声、全然苦しそうじゃないですよね。なめらかに歌い上げてくれます。
古希を迎えようというここへきて、ジュリーの喉は衰えるどころかむしろ進化してるんじゃなかろうか、と僕はただただ驚嘆するばかりです。

バンドの演奏では、やはり真正面ということで依知川さんに何度も魅せられました。
これまで何度も書いていますが、「TOKIO」での歌メロ直前の4小節は本当に凄い!イントロでは柴山さんと共に前方にカッ飛んできてぴょんぴょんしながら演奏を始めた依知川さんも、その箇所ではさすがにぴょんぴょん中断(柴山さんの方はニッコニコで継続)。そのくらい難易度の高いフレーズなのです。
あと驚いたのは「危険なふたり」と「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」が指弾きなのですな~。
素晴らしいとしか言いようがないですけど、これ初日からなのかなぁ?何故こんな凄い演奏を今までの会場では見逃してたんだろうか・・・。

柴山さんもこの日は笑顔が多く、「ユ・ウ・ウ・ツ」の拳振り上げもお客さんと一緒にやってくれましたし、ジュリーのご機嫌含めて5人が全体的にとても「楽しんでいる」雰囲気のステージだったと思います。同時に、僕らは今本当に超一流のLIVEを観られているんだなぁ、としみじみ感じました。
どんな大規模の、どんなアーティストのLIVEにも負けてない。これは主観ではなく「事実」ですから。
ジュリーはMCの最後に「誠に申し訳ないのですが・・・これまではチケットが7000円だったのですが、今年から値上げをして8000円。ご祝儀、ありがとうございます、ありがとうございます」と、正面、上手側、下手側、もう一度正面と4回も丁寧に頭を下げて恐縮していましたけど、このクオリティーのステージが8000円なんてメチャクチャ安いですよね!
僕らジュリーファンは幸せ者です。


ということで、今回は本当に駆け足のレポになってしまいました。
僕の今ツアー参加も残すは来年の熊本公演のみ。
年が明けてから開催のある近場のNHKホールへの参加をすべてあきらめ1点1公演に張り込み、ジュリーの熊本への、九州への想いを確認しに参ります。
自慢話のようで申し訳ないと心から思ってはいるのですが、今ツアーの僕の席運は信じ難いほどに神がかっていて、この熊本がまたもや神席。こうなったからには気合を入れて全セットリスト・レポを書くつもりです。

そう言えば、武蔵野で聴いた「こっちの水苦いぞ」で、初日に続いてまたしても「霧島の廃炉想う」という空耳が・・・そんなつもりで臨んではいないんだけど、僕の中では自分が思っている以上に故郷・鹿児島の原発への心配が大きくて、この曲とその気持ちが常にリンクしてしまうのかなぁ?
ただ、熊本にはまた別の想いが当然あります。
あの地震で従弟の一家も怖い思いをして、親戚皆で励ましたりして・・・。絶対に忘れてはいけないことですし、ジュリーもそんな熊本の皆さんへの想いを持って、その上でいつも通りの素晴らしいステージを魅せてくれるはず・・・楽しみにしています!


それでは次回更新は・・・明日です!(笑)
明日12月20日は、僕の51回目の誕生日。毎年この日は自分の誕生日を自分で勝手に祝うべく、「ジュリーが自分と同じ年齢を迎えた年に、どんな歌を歌っていたか」をテーマに考察記事お題を選んでいます。

今年はジュリー51歳の年にリリースされたアルバム『いい風よ吹け』から・・・「今このアルバムから記事未執筆の曲を書くなら、これしかないだろう!」というふさわしい名曲があり、ずいぶん前にお題を決めました。
で、12月3日の『ジュリー祭り』記念日に「愛まで待てない」の記事を書いてから、瞳みのる&二十二世紀バンドの四谷公演の日まで1週間、コツコツと下書きをしていたんですよ。もう記事の8割ほどを書き終えていますから、明日の更新は問題なくできるでしょう。

寒い日が続きますが、僕はどうにか忙しい中でも風邪をひかずに過ごしています。なんとかこの調子で年を越したいものです。
みなさまも充分お気をつけ下さい。

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2017年12月13日 (水)

2017.12.10 四谷区民ホール 『瞳みのる&二十二世紀バンド LIVE2017~音楽は時代と国境を越える』

今年も行ってまいりました、瞳みのる&二十二世紀バンドの四谷公演!
これまで毎年参加している彼等のLIVE、今年も最高に楽しいステージでした。

前日の土曜がメチャクチャ寒かったのでガッツリ着込んで出かけたら・・・あ、暑い(汗)。つまり、絶好のお天気だったということです。
新宿御苑の紅葉を楽しんでから会場入り、というお客さんも多かったんじゃないかな?

四谷区民ホールは新宿御苑のすぐ近くなのですが、酷い方向音痴の僕は地図を見ただけでは自力で辿り着ける自信がまったく無し。でも、有難いことにピーファンの先輩方からお誘い頂きビフォーをご一緒することができましたので、迷うこともなく無事に会場入りしました。
エレベーターを降りたらちょうど開場したばかりで多くのお客さんが並んでいます。入場し顔馴染みの先輩方とご挨拶しながら、まずはパンフレットを購入。

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↑ こちらが表紙。中身はさらに素敵なショットが満載!

この日までセットリストのネタバレを我慢してきた僕はもちろんその場では開封せず(毎回、ピーさんによる演目楽曲紹介が掲載されていますから)、帰宅の電車内でじっくりページをめくったわけですが、今年のパンフも充実の内容でした。スタジオ・リハのショット集の中に、ピーさんがギターを構えているという貴重な1枚があったり(Kenyaさんのギターのようですね)。

ということでそれではここから、毎年恒例の大長文にて全曲のレポを書いてまいります。
実は今回、パンフの解説を読んでも「う~ん、どの曲がどれだ?」とタイトル確定できなかった演目が3曲あります。お分かりになるピーファンのみなさまからの伝授をお待ちして最終的には完璧なものにするつもりですが、とりあえず「タイトル不明」が混在すること、ご容赦くださいませ(汗汗)。
また、記憶を振り絞ってなんとかセットリストの進行通りに書きますが、部分的に記憶違いで実際の曲順とは前後してしまっている可能性もあります。
なにとぞよろしくお願い申し上げます。

では、開演です!


☆    ☆    ☆

1曲目「床前明月光」
(2018年3月、yurachan様より曲タイトルご伝授頂きました、ありがとうございます!)

のっけから曲名が分からずお恥ずかしい・・・。
NELOさんのギターが印象に残る、短調のミディアム・ナンバーだったと記憶していますが・・・。

二十二世紀バンドのツアー・オープニングと言えばここ数年、ピーさんとIchirohさんのドラム・バトルで幕開けというパターンが定着していましたが、今年は歌ものから堂々のスタート。この1曲目でさらなるバンドの進化を確信しました。と言うのは・・・。
昨年まではツイン・ドラムのアンサンブルを前面に押し出していた二十二世紀バンドが、今年は「2人の優れたドラマーが、演目に応じてそれぞれメインを張る」ドラム・スタイルとなったのです。
この1曲目はIchirohさんがマラカスをはじめとするパーカッションの「アレンジ」に徹し、ドラムの音とリズムキープを完全にピーさんに託します。
しかもピーさんは「歌いながら」ですよ!どれほどの稽古を積み重ねているのか。70才を超えてどれほど進化してゆくのか、という。
2011年に音楽活動復帰した頃と比較すると、ピーさんのドラム・テクニックは驚異的な飛躍を遂げ、さらにセットリスト中でピーさんが全面リード・ヴォーカルをとる曲の割合も今年は増えています。
進化する、上手くなる、ということに年齢など関係ないのだと、50才を過ぎたばかりの僕は本当に励まされ、背筋が伸びる思いです。

2曲目「
シー・シー・シー

Tigersred

イントロのJEFFさんのベース一瞬でそれと分かるタイガース・ナンバー、早くも降臨。この時点でたまらずスタンディングするお客さんもいらっしゃいました。
この曲は毎年セットリスト入りしていますが、例えば昨年、一昨年はピーさんがスタンドマイクで愉快なアクションと共にヴォーカルに専念。しかし今年はピーさんのメイン・ドラムです!久々ですよね。
「例年通りの編成」という安住のスタイルには留まらない。チェンジ・イズ・ベスト。僕はこうした二十二世紀バンドの志が大好きです。
リード・ヴォーカルはJEFFさんで、サビはピーさんも歌っていたかなぁ。

ブレイク部は、JEFFさんが「シー・・・・・・」とひとさし指を唇に当てた後、お客さんに
「じゃ、”せ~の!”で呼ぶからね・・・。せ~の!」
ピ~~~~!
からの、渾身のフィルが炸裂というパターンでした。

演奏が終わるとスタンドマイクが設置され、ピーさんがステージのセンターに。ここで最初のMC。
大声援に迎えられて挨拶が終わると、ここまで冒頭2曲を紹介してくれたのですが(それなのに僕は1曲目のタイトルを覚えていないのです・・・)
「2曲目は・・・何というバンドの曲でしたかね。え~と、テンプターズか!」
とボケるピーさん。
「いや、スパイダース・・・でもない、ブルー・コメッツでもない・・・そうそう、思い出しました、ザ・タイガースのシー・シー・シーでした!」
これでお客さんは大拍手。
今年も徹底的に笑わせてやろう、というピーさんのサービス精神、嬉しいです。
今日のステージを「今の全力を尽くして頑張ります」
と宣言して最初のMCを締めてたのでした。

3曲目「風に吹かれて」

毎年二十二世紀バンドのステージで楽しみにしているのが「今年はどんなカバー曲をやってくれるかな?」という点です。
この曲は当然知っていました。僕はボブ・ディランのほとんどのアルバムを持っていますが、やはりピーさんと二十二世紀バンドは王道で攻めてきますね~。
「風に吹かれて」はジョン・レノンの「イマジン」と並び、世界のポップ・ミュージックの中で最も知られている「反戦歌」と言えるのではないでしょうか。
今年のパンフレットにあるピーさんの序文の言葉を読むと、「今この時代だからこその選曲」でしょう。

さて、ディランのオリジナルはアルペジオのアコギ1本。それを二十二世紀バンドはシャッフルのカントリー・ロックに仕上げてきました。
ザ・バーズもビックリ?カッコ良いアレンジです。
構成もオリジナルとは違って最後にサビを2回リフレインしたんですけど、1回目の最後のコードをマイナーに着地させて「もう1回来るよ!」と思わせる工夫が素晴らしい!JEFFさんのアイデアでしょうか。

今回のセットリストで、ピーさんがリード・ヴォーカルに専念する最初の1曲です。
向って右に置いたミュージック・スタンドの歌詞を時折確認しながら、良い意味でこの曲にピッタリの、渋みのある歌声でした。

4曲目「花」

続いては、誰もが知るJスタンダード。「風に吹かれて」からこの曲への流れは、ピーさんからの平和へのメッセージとも受け取れます。
サビの「泣きなさい 笑いなさい♪」の最後のリフレインは3回だったでしょうか。
お客さんにマイクを向けて斉唱をうながしながら、この曲もピーさんスタンディングのリード・ヴォーカル。
こぶしが入るニュアンスの旋律はピーさんの得意分野のようですね。

この曲の後にJEFFさんのMC。
「こんばんはJEFFです!」と元気よく始まったのですが、すぐに「俺、硬いなぁ?」と。
「(ここまでのツアーが)ずっとライヴハウスで、今日は広いホールなんでお客さんとの距離感になかなか慣れなくて・・・」という状況のようです。
「ここから、ピーさんの中国語と日本語訳を交えた曲を3曲お届けします。まずは、恋曲1990」!

5曲目「恋曲1990」

ということで曲紹介がありましたので、これはパンフを再確認しタイトルも確定できました。
ただ、帰宅してからYou Tubeで検索したオリジナル(?)は、どちらかと言うとしっとりしたバラード寄り(
こちら)。二十二世紀バンドのヴァージョンでは、テーマ・メロディーの
「ソ#~ソ#ファ#~ミ、ソ#~ソ#ファ#~ミ、ソ#~ソ#ファ#~ミ、ソ#~♪」
を「リフ」として解釈、スタッカート気味に演奏することで、可愛らしいポップスへと変貌しています。

こういうキュートなポップスのアレンジとくれば楽しみなのはキーボードのはなさん。リズムに載って、1音1音「ピッ!」と身体ごと表現されるピアノ。聴こえてくる音だけでなく、視覚的にも「楽しくて仕方ない」気持ちが伝わってくるはなさんの演奏に釘付けです。
今年の二十二世紀バンドはALICEさんが不在で、紅一点のはなさん。変わらぬ笑顔の演奏には本当に元気づけられます。

6曲目「但願人長久」
(2018年3月、yurachan様より曲タイトルご伝授頂きました、ありがとうございます!)

帰宅してからパンフとにらめっこしたのですが、記載のどの曲なのか確定できません・・・。
ピーさんのヴォーカルとはなさんのピアノをメインとした、美しい4ビートのバラードでした。

間奏でNELOさんのギター・ソロがあるんですけど、その1回し目で、それまでとは一転の細かい16分音符のアルペジオに移行する、はなさんのバッキング(あの音符割りを右手1本!)が素晴らしかったなぁ。
スローな曲に速弾きの細かい音符を載せる時のはなさんの抜群の安定感と、鍵盤を射抜くように見つめる入魂のまなざし・・・最高です!

7曲目「何日君再来」
(2018年3月、yurachan様より曲タイトルご伝授頂きました、ありがとうございます!)

これまたタイトル確定できず(泣)。
前曲ほどスローではなかったですがこちらもバラードで、ヴォーカルは1番がピーさんのソロ、2番でピーさんとはなさんがユニゾンしていたと思います。曲中、お2人とも台詞があったんじゃなかったかな。

この曲の後にNELOさんのMC。「NELOで~す!」の後に先程のJEFFさん同様「硬いな~」と。
「硬くならない話と言えば・・・先日JEFFさんが誕生日で。いくつになったんですっけ?まだ16才?」と、お客さんのお祝いの拍手を誘いつつ笑わせてくれました。
そしてピーさんに
「タイガースはメンバー同士誕生日のお祝いなんてやったりするんですか?」
と、ナイスな振り(笑)。
ピーさん曰く
「最近はしています。古希のお祝いを順番に」
と。
「皆いい年になってきてるんで、会うたびにこれが最後かもしれない、と思ってしまう」
のだそうで・・・とこうして書くと寂しいようですが、これはピーさんが今年のパンフに締めくくりとして寄稿している、この李白の言葉


Pee201702

サリーの古希お祝いの時には夜中までお店をハシゴして楽しんだ、という話がありましたが、今タイガースのメンバーは正にこのパンフの言葉を実践しているということなのですね。「人生」を知る偉大な先達に、僕らも是非あやかりたいものです。

8曲目「愛你一万年(時の過ぎゆくままに)」

NELOさんのMCによると
「去年の北京公演ですごく盛り上がった曲。(現地の人は)皆知ってる」
というナンバーが、昨年に続いてのセトリ入り。
ただし向こうのヴァージョンはピーさん(この曲から再度ドラムセットに戻っています)曰く
「公式なカバーではなく、非公式。早い話がパクリ!」
とのこと(笑)。

今年もまずジュリーの日本語ヴァージョンをJEFFさんが歌い、そこから斬新なアレンジ展開を経てピーさんのシャウト・ヴォーカルへ。去年も思いましたが、あの「時の過ぎゆくままに」でピーさんの鬼のキック連打が炸裂するとは・・・新鮮ですね~。

9曲目「グッド・ゴリー・ミス・モーリー」

昨年で言うと「ハウンド・ドッグ」のような配置になるのかな。今年もオールディーズなアメリカン・ロックンロールがセトリ入りしました。
・・・などと偉そうに書いていますが僕はこの曲知らなくて(汗)、パンフを見て初めて「あぁ、あれはリトル・リチャードかぁ!」と。これはタイガースのレパートリーでもあったそうですね。
JEFFさんのランニング・ベースがカッコ良かったです。

10曲目「ホンキー・トンク・ウィメン」

Soundsincolosseum

Ichirohさんのカウベル一瞬で反応できました。
ローリング・ストーンズ不朽の名曲にしてザ・タイガース洋楽カバーの代表曲。僕が生演奏で聴くのは2012年のピーさんとタローさん(&スーパースター)のジョイント、中野サンプラザ公演以来ですか~。

リード・ヴォーカルは1番がJEFFさん、2番がピーさん(ドラム叩き語り!)。
とにかく、ピーさんが「ニュ~、ヨ~ク、シッリィ~♪」と、あのミック・ジャガー独特の抑揚そのままに節回しする、というだけで大きな感動があります。貴重な「エロい」モードのピーさんになりますからね!
2番を担当したのは大正解ではないでしょうか。

自身のパートが空いている時に、はなさんが手拍子をリードしてくれてお客さんも大熱狂。
NELOさんのギターも最高にゴキゲンでしたし、この曲は自然に身体が動いちゃいますよね。

11曲目「朧月」


Oborozuki

↑ 帯を合体させてスキャンしてみました

10曲目の後に例年通り休憩を挟み、ここからが第二部。第一部ではメンバーはオフィシャルのPEE-Tシャツでしたが、ここで全員が渋いスーツに着替えての登場です(ハッと気がついた時にはピーさんは早々に上着を脱いじゃってましたが)。
セットリスト後半は、ピーさんの今年の新譜タイトルチューン「朧月」からスタート。僕はもちろん購入していますが(でも、2ケ月くらいリリースに気づいておらず、遅れてアマゾンさんで買い求めました)、考察記事はまだ書けていません。と言うか一昨年から「書く書く」と言い続けている「時よ行かないで」(『三日月』のカップリング・ナンバー)もまだ未執筆なのです・・・(滝汗)。

新譜『朧月』は、二十二世紀バンドの初代キーボーディストである稲村なおこさんとピーさんとのコラボレーション。カップリング「まっすぐに前だけを」の製作には、なおこさんの特別な思い(出来事)が深く関わっているので、なかなか簡単に楽曲考察などできない重いテーマを含む新譜となりましたが、「朧月」はピーさんらしいストレートな佳曲です。
パンフでは二十二世紀バンド・オリジナル曲として紹介されており、来年以降のセトリ入りも期待できそう。

演奏が終わるとはなさんのMC。「スーツに着替えて、ビシッ!とした気持ち」と。
「ここからは、みなさんがよく知っている曲をやっていきます。後半に向かってどんどん盛り上がっていくので準備しておいてください!」
ということで、第二部のタイガース・ナンバー・オンパレードを予告(?)してくれました。

12曲目「
花の首飾り

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ピーさんはスタンドマイクでリード・ヴォーカルに専念すると、例えそれがバラードであっても、独特の「ピーダンス」を繰り出します。歌の合間で1歩下がり、泳ぐようなアクションで呼吸を計るんですね。

ピーさんが音楽活動を復活したジュリーの2011~2012のツアーで、ジュリーはこの曲をトッポが歌うオリジナルのイ短調から1音キーを下げたト短調で歌いました。
一方ピーさんはオリジナル通りのイ短調で歌います(NELOさんのフォームで確認)。低音より高音の方が歌い易い喉の持ち主なのでしょう。

最後にNELOさんが鳴らす和音は「Am6」。
味わい深い白鳥(しらとり)の余韻が残りました。

13曲目「
銀河のロマンス

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「みなさんご存知の曲」が続くということでワクワクしてたら、このイントロ・・・何だ?と迷子になり、歌が始まってようやく「あぁ、銀河のロマンスか!」と。
大胆にアレンジが変わっているんですよね。NELOさんのギターは結構激しいカッティングで、完全に16ビートの曲になっていましたから。
こういう「えっ、どの曲?」というスリルもなかなか良いものです。今年のジュリーのツアー・セットリストで言うと、「灰とダイヤモンド」がそうです。

「シルビィ・マイ・ラヴ♪」の「シルビィ」のヴォーカル部が、お姉さま達の「ピー!」にかき消されていました(笑)。続く女声コーラス「シャララララララ~♪」は昨年までのALICEさんに代わり、はなさんが歌います。

14曲目「
スマイル・フォー・ミー

Tigersblue

エンディングの「for me♪」こそ声が裏返る一瞬もありましたが、この怒涛にキーの高いナンバーをピーさんは何とオリジナル・キーで(こちらもNELOさんのフォームで確認)渾身のドラム叩き語りです。
Ichirohさんのタンバリンも、昨年のALICEさん同様にオリジナル音源完コピで嬉しくなります。

昨年はこの曲で、はなさんのストリングスの「刻み」に感動させられましたが、今年はジャズ・オリガンっぽい音色のバックアップに痺れました。同一曲の連続セトリ入りについても、二十二世紀バンドは年々変化、進化していきます。だから僕はこのバンドが大好きなのです。

そうそう、この日の「スマイル・フォー・ミー」では、二十二世紀バンドがピーさんのちょっとしたアクシデントを見事にフォローした箇所があったんですよ。
1番と2番の繋ぎ目です。
1番の最後、ピーさんはドラムを叩きながらの熱唱で気持ちが入っていたのでしょう、「return~~~♪」のロングトーンを1小節ぶん余計に伸ばしたんです。普通ならバンドはピーさんより1小節早く2番頭のコード「C」に移行してしまうところ、戸惑いはほんの一瞬、すぐに機転を効かせて皆がピーさんに合わせドミナントの「G」を1小節継続させました。
直後、JEFFさん、NELOさん、はなさんの3人が互いに顔を向けてニコッ、と。
「ビックリするくらい全員の呼吸が揃ったね!」と目で会話しているのが分かりました。これ、どのくらいのお客さんが気づいたかなぁ?
充分な稽古は本番での勇気と踏み込みを生む・・・これぞ二十二世紀バンド!というシーンでした。

15曲目「
淋しい雨

Tigerssingle

リード・ヴォーカルはJEFFさん。
ドラムスに専念するピーさんの手数、足数が凄まじいです。セットリスト佳境に向けて、この曲あたりから「鬼神ロール」率も上がってまいりました。
ジュリーのヴォーカルもそうですが、ピーさんのドラムもセトリが進むに従ってパワーを増し研ぎ澄まされ、瞬時のアドリブも冴えていくのです。

この曲は、最後のリフレイン前に転調した直後、ベース以外の楽器が一時的にサ~ッと退いていく瞬間が最高にカッコイイ、と僕は思っています。二十二世紀バンドの演奏も、そこで目を閉じて聴いていると、まるでサリーがベースを弾いているかのような・・・もちろんそれがJEFFさんの素晴らしさです。
今回JEFFさんは、第一部、第二部、そしてアンコールと、登場するたびにベースを持ち替えています。第二部はザ・タイガースのコーナーですから、当然のヴァイオリン・ベース!
JEFFさんのタイガースへのリスペクトを感じますね。

16曲目「
色つきの女でいてくれよ

Tigersgolden

これは驚きました。
いや、ピーさんが同窓会のナンバーを演奏する、ということなら先述のタローさんとのジョイント、さらには完全再結成の『THE TIGERS 2013』で実現してはいますよ。でも今年のこのステージでは、この曲をピーさんがスタンディング・ヴォーカルで全編歌った・・・しかもとんでもない熱唱だったのですから(「いつまでも いつまでも♪」のジュリー・パートのみNELOさんが担当)。
ピーさんのヴォーカルについて、僕は今回の全セトリ中この曲に最も「熱」を感じたほどです。
ピーさんは「さよなら~僕の~美少女よ♪」では両手をヒラヒラさせて「バイバイ」を、「きりきり舞いの美少女よ♪」ではひとさし指をクルクルとさせ「きりきり舞い」を表現。「バイバイ」のアクションは何人かのお客さんもピーさんと一緒に合わせていらっしゃいました。

二十二世紀バンドの演奏もキレッキレです。
この曲はAメロで「じゃっ、つ、ちゃっ♪」っていうアクセントがあるじゃないですか。それをIchirohさんはオープン→クローズのハイハットで刻むのです。
Ichirohさんのドラムセットはバスドラが透明仕様で、僕の席からはちょうど真正面にIchirohさんの両足の動きがよく見えました。この曲ではハイハットの開閉を操るIchirohさんの「神の左足」が炸裂してます!

17曲目「
風は知らない

Tigerssingle_2

このタイミングだったかどうかは記憶が曖昧なのですが(と言うかこのあたりは曲順の記憶もちょっと怪しいのです・・・)、MCでJEFFさんがタイガースについて少しの間熱く語るシーンがありました。
「リアルタイムではないけれど、後追いで大ファンになって、82年の武道館に行ったんですよ。その時ピーさんはいなかったけど・・・」
と言うとピーさんは
「実はあの時、風邪をひいていて・・・」
と。
病欠だったのか!
な~んてお客さんが無邪気に笑うことができるのも、ピーさんがメンバーとの再会を果たし音楽界に復帰、今こうして皆の目の前にいればこそ、なんですねぇ。

で、今年もピーさんはステージの最初から最後まで思いつく限りのギャグやボケを連発してくれたのですが、中でも一番印象に残ったのが、「次にやる曲は・・・」とこの「風は知らない」を紹介するに際してピーさんが言い放った楽曲タイトルは何と
風邪はひかない」!
呆れ果てたJEFFさんが
「(そういうこと言ってると)ホントにそれでやりますよ!」
とツッコミを入れて場内は大爆笑でした。

でも、そうして演奏が始まった「風は知らない」は本当に美しく、しかもしなやかな力強さもあって。
リリース当時、トッポがいなくなった直後のピーさんの気持ちなんて新規ファンの僕には想像だにできないけれど、今ピーさんがこの曲をスタンディングのヴォーカルで歌っているという奇跡に、言いようもなく心打たれるものがありました。

アレンジは基本オリジナル通り(NELOさんが弾くGm→Amのアルペジオからスタート)でしたが、NELOさんは小節の繋ぎ目に新たに考案したシンコペーションのオブリガートを入れたり、優しさと力強さが同居する素晴らしい演奏。いやぁ、改めて名曲です!

18曲目「
君だけに愛を

Tigersred

このあたりで1階席がほぼ総立ちになったでしょうか。ピーさんのLIVEはジュリーLIVE以上に女性率が高く、頭ひとつ背が高い男性が立ち上がってしまうと迷惑かと考え僕はここまで控えていましたが、後方席のみなさまの様子を確認し、ここからは僕もスタンディングでステージに向い手拍手を送らせて頂きました。

この曲は二十二世紀バンド結成以来毎年セトリ入りしていますが、今年はALICEさんが不在で、「君だけに~♪」の指差しをリードしてくれるメンバーがいません。そのぶん多くのお客さんが積極的にステージへの「逆指差し」でフォロー。これがとても暖かいキャッチボールなんですよね~。
ピーさんはドラムスに専念、本家タイガースのフレージングで躍動します。
リード・ヴォーカルのJEFFさんはドミナントの開放弦を利用してキッチリ「タッチしたい♪」のアクションを再現してくれました。

19曲目「
シーサイド・バウンド

Tigersred_2

こちらも鉄板のセトリ入り。引き続きJEFFさんのリード・ヴォーカルです。

間奏で注目したのは今年もキーボードのはなさん。大きな動きで後方にステップを踏み、左手をリズムに合わせて宙で舞わせながらも、右手だけがピタッと鍵盤に吸い付いて離れない、という熱演は昨年の感動そのまま。素敵過ぎます。

また2度目の間奏部では、ピーさんがドラムを叩きながら様々なヴァリエーションの雄叫び、合いの手を披露してくれます。理屈抜きに楽しい・・・それがピーさんと二十二世紀バンドの「シーサイド・バウンド」であり、タイガース・オマージュなのではないでしょうか。

20曲目「
割れた地球

Human

「君だけに愛を」「シーサイド・バウンド」と怒涛のセトリ鉄板ナンバーが続き、僕は脳内で曲数をカウントしていたこともあり、そろそろセットリスト本割も締めくくりだな、次は「蛍の光」が来るだろう、と予想しました。
しかし!まだまだ続くタイガース・オンパレード・・・何とここでタイガース史上最もハードなナンバー「割れた地球」が降臨です。これはサプライズでしたね~。

後でパンフを見ると、演目紹介にこの日は披露されなかった「怒りの鐘を鳴らせ」の記述がありました。ツアー中、会場によって細かくセトリを入れ替えてくる二十二世紀バンド・・・おそらく関西、名古屋いずれかのセットリストで、「割れた地球」と「怒りの鐘を鳴らせ」を入れ替えていたのではないですか?
僕はもちろん「怒りの鐘を鳴らせ」が大好き。でも、「久々の体感」という点で言えば今年「割れた地球」が聴けたのはとても嬉しいことでした。

それにしてもこの曲、カッコイイです。
詳しいことは以前楽曲考察記事で書きましたが、ピーさんのスネアの打点が変則なんですよね。さらに、はなさんのオルガンが2拍、4拍でシャキシャキの刻みを入れてくれるので、それがスネアの打点とくんずほぐれつになるスリリングなグルーヴを生みます。

リード・ヴォーカルは満を持してのNELOさん。曲想も併せ、「シャウトしながらリフを弾きまくるジミヘン」といった感じのエモーショナルな歌声、熱演でした。

21曲目「
美しき愛の掟

Tigersblue_2

「蛍の光」にはまだ早いよ!とばかりに間髪入れず繰り出されたのがこの名曲。
「1曲でも多く演奏するんだ」というピーさんと二十二世紀バンドの志を感じます。

リード・ヴォーカルは「このナンバーのベース弾き語りなら右に出る者無し」を過去に証明済みのJEFFさん。もちろん今回も、2番に入って16ビートに移行してからが最大の見どころ、聴きどころです。
エンディング・リフレイン直前のピーさんの豪快なフィルは文字通りに「鬼神ロール」!
これもまた、ピーさんの音楽活動復帰から現在に至る驚異の進化、そして安定感を実証しています。

「とわに♪」のコーラスはメンバー全員で。
お客さんを巻き込み虜にする、パワフルなセットリスト佳境のハード・ロックです。

22曲目「Auld lang syne(蛍の光)」

昨年はALICEさんの荘厳なアカペラ・ソロで導入し、ピーさんは曲の間ドラムセットに着いていました。
今年のこの曲ではドラムをIchirohさんに託し、ピーさんはスタンドマイクでセンターに立っての「セットリスト本割、ひとまず終了」のご挨拶。
ピーさんからのメンバー紹介は、はなさん、NELOさん、Ichirohさん、JEFFさんの順でした。最後にはなさんの「そして・・・!」から会場全員で「ピ~!」のコール。
当然、本割ラストに続くのはあの曲しかありません!

23曲目「
ラヴ・ラヴ・ラヴ

Tigersblue_3

というような流れで演奏が始まったので、イントロのフィルに始まり全編のドラムスはIchirohさんが担当、ピーさんは最初からヴォーカルに専念します。

高音域が得意なピーさんも、さすがにこの曲はオリジナルからキーを下げていて、NELOさんのフォームを確認するとト長調。これは近年のジュリーとも同じキー設定ですね(後註:同週末のジュリー武蔵野公演で確認したところ、今年のジュリーはAでした!)。
それでもご存知の通りこの曲には1音上がりの転調があります。最後は高い「ラ」の音(僕はとても出ません)を、目を閉じて歌い上げる箇所もあったピーさん。
「L」の字に揺れる会場に、気がつけばIchirohさんの鬼の3連キック連打が重なり、本当に「時はあまりにも早く過ぎゆく」・・・充実の本割セットリストも、とうとう大声援の中締めくくられることとなりました。

~アンコール~

24曲目「ホテル・カリフォルニア」

大きな拍手に応えてメンバー再登場。JEFFさんはこの日3本目となるベースを抱えての入場です。
・・・と、上手にKenyaさんもスタンバイ!
JEFFさんが「なんか人数増えてるんだけど?」とイジると、ギターを手に恥ずかしそうにしているKenyaさん。
パンフ掲載のリハ・ショットでピーさんが構えていたギターを持っていたと思います。

改めて「本日のスペシャル・ゲスト」としてKenyaさんの紹介があり、アンコール1曲目は・・・スケジュールによりJEFFさんが不在となる公演でベースを担当しているKenyaさんが、この日ギタリストとして駆けつけてくれたからには「これをやるしかない!」という選曲。
昨年のセットリスト第一部で披露されファンの間でも大好評だった、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」です。これがまた進化していましてね~。
昨年は通常のツイン・ドラムス編成で、僕はハイハットの「ピーさんが16、Ichirohさんが8」という分担に驚き感動させられました。ところが今年は何とピーさんが完全にメイン・ドラマーとなり、Ichirohさんはブラシのアレンジで花を添えるというスタイル。
そして昨年同様、ピーさんはハイハットの16を刻みながらリード・ヴォーカルをも担当。相当な稽古量を積んでいなければできないことです。素晴らしい!

後奏ではこの曲のお約束、NELOさんとKenyaさんによるギター・バトルも再現されました。
2人共にステージ中央に進み出てのホットな競演で、曲が終わるとNELOさんが手をかざしてKenyaさんを称えます。仲が良いというだけでなく、お互いへの敬意がある・・・素晴らしいバンドですね。

25曲目「スタンド・バイ・ミー」

おぉ、これですか!
アンコールのここへ来てこの選曲は憎いですね~。
アレンジはベン・E・キングのオリジナル・ヴァージョンが土台。僕はスティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』が原作、映画とも大好きなので、とても思い入れのある曲でありヴァージョンです。曲を知ったのはジョン・レノンのカバーの方が先だったのですが。

引き続きピーさんがドラム叩き語りのリード・ヴォーカル。キングのヴァージョンには不可欠と言えるトライアングルがIchirohさんです。
原曲と大きく異なるのは、2度に渡って挿入されたギター・ソロ。1度目がKenyaさん、2度目がNELOさんですが、やはり個性が違います。ぶっとい指圧でダイレクトに音をぶつけてくるKenyaさん。音の「気」みたいなものをいったん空気に馴染ませてから差し出すかのようなNELOさん。いずれも入魂のソロでした。

そして、ニ十二世紀バンド版「スタンド・バイ・ミー」最大の肝は、ピーさんが新たに寄せた日本語詞(1番が英語、2番を日本語で歌います)ではないでしょうか。
「君がそばにいてくれたら、何も怖くない」というのは直訳と言えばそうなんですけど、これまでピーさんは、自身のオリジナル曲「老虎再来」「楽しい時は歌おうよ」でまったく同一のメッセージを自作詞に託しています。今回その2曲がセットリストから外れた代わりに、ピーさん根幹のメッセージは「スタンド・バイ・ミー」に集約されていた・・・僕はそう考えましたがいかがでしょうか。

「蛍の光」の時だったか終演間際だったか記憶が定かではないのですが、この日ピーさんは以下のようなMCを残してくれました。
「ともに白髪の・・・いや、僕はとっくに白髪なんですけど、これからもずっとみなさんと共にいます」
この言葉(細かい言い回しは正確ではないと思いますが)に、僕も含め会場のファンがどれほど勇気を貰ったことでしょう。「自分はこれからもここにいる。だからみんなも一緒に」ということを心からの言葉として発するのは、本当に気持ちが強く、人を思いやる優しい人でなければできません。その点ではピーさんとジュリーはよく似ている、と僕は思います。

「そばにいて♪」の日本語詞を繰り返し歌うピーさんの勇姿は今も目に焼きついています。素晴らしいメッセージ・ソングとしての「スタンド・バイ・ミー」でした。

26曲目「三日月

Crescentmoon

遂に大トリ。今年はこのハートウォームなパワー・ポップ、ピーさんオリジナル・ナンバー「三日月」がセットリストのラストを飾りました。
昨年はセットリスト中盤に配され、CD音源通りのツイン・ドラムが再現されましたが、今年はピーさんがスタンディングのヴォーカル(&ステージ狭しと大暴れ)に徹し、ドラムスはIchirohさん1人の編成。
とにかく僕はこの曲のIchirohさんのハイハット3連符のリフレインに惚れ惚れしてしまいます。
とんでもなく精密、正確なリムズキープ、その上で「生身の人間の演奏」としか言えない細やかなグルーヴ。「たたた♪」の3連符にひとつとして同じニュアンスが無いという一打一打の素晴らしさ。それを延々とリフレインするわけですから、これぞプロの神技です。

最後のコーラス部「リンリンリン・・・♪」は、途中からお客さんも一緒に歌います。
例年ですと会場の声が小さい段階でピーさんが「聞こえない!」とお客さんを一喝(笑)するのがお約束ですが、今年はJEFFさんが自分のスタンドマイクを客席に向けセッティングし直して、「ほらほら!」という感じで煽ってくれていましたね~。

二十二世紀バンドのコーラス・ワーク(オフマイクのKenyaさんも参加)も堪能。
ステージを縦横無尽に駆け回るピーさんの脚力は最後まで衰えることなく・・・いやぁ、何と言ってもピーさんはジュリーのさらに2コ年上なのですからね。ここまでのドラムスや歌ももちろんのこと、これが71歳のパフォーマンスとは信じられません。
フィナーレは最高に盛り上がりました。


全演目が終了し一度退場したメンバーを、再登場したピーさんがひとりずつ呼び寄せて(年齢順かなぁ?)最後のご挨拶。メンバー全員がお揃いのスーツの胸に刺した花(薔薇?)を最前列のお客さんに手渡して、感動のステージは幕となりました。
そして退場・・・でも場内の拍手は鳴り止みません。そりゃあそうでしょう。ピーさんのLIVE恒例の大事な「儀式」がまだ済んでいないのですからね。
当然ピーさんはもう一度登場してくれて「今日はまだ走り足りない」と皆を笑わせながらステージをグルグルと駆け回り、最後に〆の投げキッス!
この儀式を以て無事、ピーさんのすべてのパフォーマンスが終了。本当に楽しかったです。


☆    ☆    ☆

終演後には多くの先輩方にお声がけ頂きました。
ほぼ1年に1度しかお会いできないピーファンの方々、またこの日が「はじめまして」の方々・・・ステージが終わっても暖かい空気はそのままずっと残っていて、入場してから会場を出るまでのすべての時間含めて素晴らしいLIVEだった、と思います。

今週金曜日にはジュリーの武蔵野公演に参加の予定があり、どうにかそれまでにレポを書き上げようとLIVE当日から毎晩夜なべして(マジです)下書きを頑張って、この記事を仕上げました。
お楽しみ頂けましたでしょうか? てか、毎度毎度の大長文ですみません(汗)
間に合うかなぁ、と思いながら書き始めたのですが予想以上に筆が進んで、今日の更新となりました。それだけ素晴らしいステージだったということです。週末に控える台湾公演も大成功間違いなしでしょう。

20171223


↑ 後註:12月23日付『東京新聞』より。瞳みのる&二十二世紀バンドの台湾公演は、大成功だったようです。


あとは、みなさまからの伝授をお待ちして記事中の「タイトル不明」の部分を加筆修正するのみ。
なにとぞよろしくお願い申し上げます!


れでは次回更新は、明後日に迫ったジュリー武蔵野公演レポートの予定です。
来週半ばから怒涛に忙しくなるので、時間のあるうちに・・・本当に簡易レポになってしまうと思いますが、なんとか週明けの更新にこぎつけたいと考えています。
武蔵野公演にご参加のみなさま、当日まで風邪などひきませぬよう・・・。会場でお会いしましょう!

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2017年12月 3日 (日)

沢田研二 「愛まで待てない」

from『人間60年 ジュリー祭り』、2008

Juliematuricd

disc-1
1. OVERTURE~そのキスが欲しい
2. 60th. Anniversary Club Soda
3. 確信
4. A. C. B.
5. 銀の骨
6. すべてはこの夜に
7. 銀河のロマンス
8. モナリザの微笑
9. 青い鳥
10. シーサイド・バウンド
11. 君だけに愛を
12. 花・太陽・雨
disc-2
1. 君をのせて
2. 許されない愛
3. あなたへの愛
4. 追憶
5. コバルトの季節の中で
6. 巴里にひとり
7. おまえがパラダイス
8. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
9. 晴れのちBLUE BOY
10. Snow Blind
11. 明星 -Venus-
12. 風は知らない
13. ある青春
14. いくつかの場面
disc-3
1. 単純な永遠
2. 届かない花々
3. つづくシアワセ
4. 生きてたらシアワセ
5. greenboy
6. 俺たち最高
7. 睡蓮
8. ポラロイドGIRL
9. a・b・c...i love you
10. サーモスタットな夏
11. 彼女はデリケート
12. 君のキレイのために
13. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
14. さよならを待たせて
15. 世紀の片恋
16. ラヴ・ラヴ・ラヴ
disc-4
1. 不良時代
2. Long Good-by
3. 
4. 美しき愛の掟
5. 護られているI Love You
6. あなただけでいい
7. サムライ
8. 風に押され僕は
9. 我が窮状
10. Beloved
11. やわらかな後悔
12. 海にむけて
13. 憎みきれないろくでなし
14. ウィンクでさよなら
15. ダーリング
16. TOKIO
17. Instrumental
disc-5
1. Don't be afraid to LOVE
2. 約束の地
3. ユア・レディ
4. ロマンスブルー
5. TOMO=DACHI
6. 神々たちよ護れ
7. ス・ト・リ・ッ・パ・-
8. 危険なふたり
9. ”おまえにチェック・イン”
10. 君をいま抱かせてくれ
11. ROCK' ROLL MARCH
disc-6
1. カサブランカ・ダンディ
2. 勝手にしやがれ
3. 恋は邪魔もの
4. あなたに今夜はワインをふりかけ
5. 時の過ぎゆくままに
6. ヤマトより愛をこめて
7. 気になるお前
8. 朝に別れのほほえみを
9. 遠い夜明け
10. いい風よ吹け
11. 愛まで待てない

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from『愛まで待てない』、1996

Aimadematenai

1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

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気になっていた今ツアー九州シリーズ第2弾でのジュリーの様子もチラホラと情報を頂いておりまして、僕の故郷、鹿児島の公演もとても素敵なステージだったと分かり、嬉しく思っています。
他、何でも鳥栖公演では、最前列にいらしたいつもお世話になっている長崎の先輩のお1人が「突然ジュリーからトスを受け取って腰砕けになっていた」とか?
最初は何のことやら状況がよく掴めなかったのですが、どうやらジュリーが「鳥栖=トス」のギャグを思いついて、「鳥栖」と言う度にお客さんにトスをしてくれていたのだそうです。
今日の沖縄はどうだったかな?

こちらは慌しい年末でございますが、先月の小田原遠征に続いての忘年会第2弾・・・昨夜は在京のJ先輩お2人にお誘い頂き、根津の『大八』さんにて美味しい和食とともにたっぷりジュリーの話もしてきました。
そして今日、12月3日。今年も僕の「ジュリー本格堕ち」記念日がやってきました。
『ジュリー祭り』9周年です。毎年この日は『ジュリー祭り』のセトリからお題を選び記事更新しています。
もちろんこの日付以外にも『ジュリー祭り』セトリのお題記事は地道に書いてきて、鉄人バンドのインスト2曲も含めたセットリスト全82曲中、今日が何と78曲目!
とうとうここまで来ましたよ~。
来年のジュリー70歳の誕生日に82曲すべてを書き終える予定でおりまして、来年からはこの12月3日の更新どうしよう?セトリの中から『過去記事懺悔やり直し伝授』を選ぶか?などと気の早いことも考えたりしますが・・・ひとまず今日のお題に集中。

採り上げるのは、現在絶賛進行中のデビュー50周年ツアー、”セットリストを振り返る”シリーズの大トリ曲ともなる、「愛まで待てない」です。
いよいよこの曲も書く時が来たか、という個人的な感慨にも耽りつつ、僭越ながら伝授!


①ゆったりテンポの「原型」を想像してみる

「最速」のジュリー・シングル(演奏時間が短いというのではなく、テンポの速度が速い、ってことね)ってどの曲なのでしょうか?

厳密にBPM計測するまでもなくパッと思いつくのが「世界はUp & Fall」と今日のお題「愛まで待てない」の2曲。どちらもファンの人気が高そうなシングルですが、僕はまだ「世界はUp & Fall」を生で聴いたことが無いので(今回のセトリから外れたのは残念)、高速で突っ走るLIVEヴァージョンの実体験も踏まえると、僕の中では「愛まで待てない」が”ジュリー最速シングル”ですかね~。「B♭→B♭sus4」のイントロ数秒の時点で既に「かっ飛び」感があります。
他に『G. S. I LOVE YOU』収録の「彼女はデリケート」も相当早いですが、「愛まで待てない」の方が僅差で1等賞かなぁ。

この「彼女はデリケート」「愛まで待てない」の韋駄天ツートップは僕もLIVEで聴くことができていて、いやぁジュリーの弾けっぷりは甲乙つけ難い。
それぞれギター(或いはベース)が8分音符を縦にカマすアレンジで疾走感を出し、ステージのジュリーがそこに身体ごと乗っかるのですね。
「愛まで待てない」で言うと、会場が「キャ~!」となる歌メロ直前の”その場駆け足”の部分が分かり易いでしょう。今ツアー、依知川さんがジュリーを通せんぼしながら「8つ打ちのビート×4小節」を繰り出すシーンです。
これが16分音符ではなく8分音符なわけですから、とにかく速い速い!

ところが、聞くところによりますとこの「愛まで待てない」は、吉田光さんの作曲段階ではもっと落ち着いたテンポの曲だった、とのことですから驚きです。
さすがに「バラードだった」と言われると想像すらできないのですが、「程好いミディアム・テンポのハード・ロック」としてあれこれ自分の知る洋楽のパターンに思いを巡らせていたら、吉田さんが最初に提示したテイクはこんな感じのテンポと雰囲気だったのではないか、という曲を発見しました。
ズバリ、キッスの「狂気の叫び(SHOUT IT OUT LOUD)」(
こちら)。この曲のテンポを極限まで速めたら、「愛まで待てない」のような仕上がりになりそうです。

それに、原型がこんな感じだったとしたら吉田さんはおそらくイ長調で作曲していたと思うんですよ。
僕らがCDで耳にしている完成形「愛まで待てない」のキーは変ロ長調。レコーデング段階ではテンポだけでなく、キーも上げたのではないでしょうか。ジュリーのヴォーカル、白井さんのアレンジにはそのくらいのテンションを感じます。

ジュリーが「もっとテンポを速くしたい」と考えたのはどのタイミングだったのでしょうね。
曲を貰ったプリプロ段階で速攻だったのか、覚さんの歌詞が載った後か、はたまたレコーディングの打ち合わせの時だったのか。
個人的には、覚さんの詞がきっかけだったのではないかと推測します。ジュリーはアルバムのタイトルチューンにもなったこの詞を気に入っていたはずですし。
「愛まで待てない」は、「”会い”まで待てない」でもあります。「君」に会えば、愛の火種を振り撒かれて僕は永遠に燃え続ける。でも、会わないでいる時間に火種が尽きかけて僕の身体の炎は灰になりそうだ、今すぐ会わなきゃ、会わなきゃと前のめりになっている歌ですよね。愛へと急ぐ高速のテンポを詞が求めちゃっているわけです。
まぁ、テンポアップしたオケが既に完成していて、覚さんがそれに合わせてきた可能性もありますが。

このテンポチェンジで白井さんが担った役割は相当大きいでしょう。
「仕掛ける」「いじり倒す」アレンジが得意な白井さんですが、この曲の場合は「テンポをトコトン上げる」アイデア自体が冒険的な仕掛けですから(メロディーについては吉田さんの原曲そのままだったそうですが、取り巻く「音」「構成」には当然白井さん考案の変化があるはずです)、より「素」の白井さんが表れた1曲。
豪快なギター・アンサンブルは勿論として、僕が特に惹かれるのは最後のリフレインの小節割りで、2’24”あたりなんて1小節丸々すっ飛んでいるんですよ(通常の小節割りの2’14”と比べてみてください)。
ダメ押しのサビメロ連打を「これは”突っ込む”曲なんだ」と前倒しで繋げてしまうセンス。これがジュリーの生のステージで最高に効いてくる・・・走り回りながら歌うジュリーは、いつもここで「限界を超えたる!」とばかりにギアを上げてきます。LIVEの生歌を聴いて初めて完結するアレンジの素晴らしさですね。

白井さんって、良い意味で「変態」アレンジャーです。曲を一度開封してしまって、改めて構築し直してから作曲者の個性を甦らせる究極の職人。
ただしその変態性はいつも溌剌、健全です。これが『MIS CAST』の頃にはまだ見出されていなかった「ジュリーと白井さんとの相性」ではないかと僕は考えます。
吉田さんのジュリー提供曲中最もステージで歌われる機会の多い「愛まで待てない」は、メロディーを変えずに仕上げたぶん、白井さんの「溌剌」「健全」がフルに生かされたジュリー・シングルではないでしょうか。

年明けのファイナルまで残り少なくなってきた今ツアー、「愛まで待てない」を歌うジュリーも会場のお客さんも、これから一層加速してゆくでしょうね。

②B面「君をのせて1990」について

今年のツアーは、入場してから開演までのBGMも楽しみですね。早めに会場入りしたくなります。
僕はここまで、初日と松戸のBGMがかぶっちゃって(タイガースから70年代初期)。あと大宮では「祈り歌」。次回参加の武蔵野ではまた別の時代の曲を楽しみたいところですが、さてどういう順番が巡ってきますか。

本日のお題「愛まで待てない」のシングルB面は、「君をのせて1990」。
何故90年に製作されたこの曲が96年のシングルB面(と言うかカップリングね)に抜擢されたのか、などの知識を僕はまったく持ちませんし、そもそも時のCMの記憶すら無いのですからお話になりません。
それでも、2009年に兵庫の先輩にCO-CoLO期以降のシングルB面集CDを作って頂き聴いた時から、僕はこのジュリーにしては珍しいリメイク・レコーディング・ヴァージョンがかなり好きで、いつかの機会にこのヴァージョンのことを書きたいと思っていました。
せっかくですからA面がお題の今回、併せて簡単に書いておこうと思います。

そりゃあ71年のオリジナル・テイクには敵いません。音がどれだけクリアになろうと、リズム解釈に斬新かつ高度な味つけがあろうと、やっぱり「君をのせて」はジュリーのソロ・ファースト・シングルが最高。
例えば、「1990」では間奏のストリングスが「ミソラ~♪」まで。そこで「ソミド~、レミレ~♪まで行ってくれよ!」と感じるのはおそらく僕だけではないでしょう。
でも、僕はそこもひっくるめて「1990」が大好き。
オリジナルとは異なる歌とアレンジで「とんでもない名曲なんだ」と再確認できるだけでも、リメイク・レコーディングの意義があったと思います。

で、そういうジュリー・ナンバーは「君をのせて」が唯一だ、とも思うのです。
「君をのせて」はどんなアレンジでも、どんな歌手が歌っても名曲(もちろん僕らにとってはジュリーが一番ですが)。数年前、ドラマのワンシーンで瑛太さんがカラオケで歌ったことがありました。また、今年だったと思いますが、玉置浩二さんがNHK『SONGS』で「沢田研二さんの曲です」と紹介してからこの曲を歌っているのを観た人も多いでしょう。
それぞれが本当に素晴らしく・・・いざ「風に~♪」と歌い出せばその人の、そのシーンの歌になる。同時に「名曲」の本質は変わらない。それが「君をのせて」。
これほど普遍性の高い曲はジュリー・ナンバーで他に無いのではないでしょうか。
それはすなわち、ジュリー自身がどんなアレンジで歌っても普遍の名曲であるということ。
『ジュリー祭り』直前の『SONGS』でしたか、白井良明さんが大胆にアレンジを変えた「君をのせて」をジュリーが歌っていましたよね。白井さんも「これはそうしてよい曲だ」と考えたのだと思います。

「1990」は吉田建さんのアレンジです。連なる3連符それぞれの最後の裏拍にアクセントをつけ、「お洒落」に仕上げていますね。建さんとしては、「これからちょっとお出かけ」みたいなウキウキ感を狙ったのではないかと僕は考えています。
ジュリーの歌もバックの演奏も、とても素敵な意味で「外向き」です。聴いている僕らも「よし、じゃあ一緒に行こうか!」と爽快な気持ちになる・・・そんなヴァージョンだと思うんですよ。

演奏トラックで特筆すべきはアコギ。「1990」のストロークは早い段階から「じゃんじゃかじゃか、じゃんじゃかじゃか♪」と3連を跳ねて弾きます。
これは『Barbe argentee』での柴山さんのアコギとまったく同じ演奏なのですね(2016年お正月LIVE。ギター1本体制となったバンドで、柴山さんがこの曲をアコギ1本で最後まで通したステージは今でも鮮明に覚えています)。後追いファンの僕は知識を持たないのですが、「1990」のレコーディングでは柴山さんがアコギを弾いているのではないですか?

「君をのせて」という曲は、歌詞の解釈も歌手によりアレンジによりシーンにより聴き手の心境により様々です。
久世さんの有名な言葉のように「男同士の友情の歌」でもありましょうし、愛する人に向けてのピロートークでもあり、ちっぽけな存在である自分を嘆く歌でもあり、強い自分を奮い立たせる歌でもあり・・・。
ジュリーはいつも「リアル」な歌手ですから、何度歌ってもその都度解釈は違うかもしれません。今年のツアーはどんな気持ちで歌っているのか・・・僕には、歌詞中の「君」をファンのこととして歌っているように思えて仕方ありませんが、みなさまはいかがでしょうか。
とにかく、こんな普遍の名曲がソロ・デビュー曲であったというそのことひとつとっても、ジュリーは「選ばれた」歌手なんだなぁと今しみじみ思うばかりなのです。

③2008年12月3日(仏滅)の衝撃、醒めやらず

さて、「愛まで待てない」の話に戻ります。
タイトルから曲を思い浮かべる時、僕にはCD音源よりLIVEでの歌、演奏の方が先に出てくるジュリー・ナンバーがいくつかあります。
これは、『ジュリー祭り』以前はほとんど知らなかった→その後LIVEに通い始めてから何度も生で聴いた、という曲に限られていて、「睡蓮」「届かない花々」なんかもそうだけど、その点で圧倒的なのが「いい風よ吹け」「愛まで待てない」の2曲。ご存知の通り、あの『ジュリー祭り』のラスト2曲です。
音で言うと、「いい風よ吹け」と言えば下山さんのアコギ・アルペジオですし、「愛まで待てない」のソロは柴山さんの速弾き・・・僕にとっては今でもそうなのです。

僕が「愛まで待てない」という曲を初めて知ったのは、確か『ジュリー祭り』の前日。まったく初めてのジュリーLIVEを目前にして「知らない曲もやるだろうから、少しは予習していかなきゃ」と思い立って、You Tubeハシゴ勉強一夜漬けの中の1曲でした。
正直なところ僕は、『ジュリー祭り』と銘打つほどの一大イベントなのだから、大野さんや吉田建さんあたりは飛び入りのゲスト参加があるだろうし、セットリスト最後は「誰でも知っている」有名な曲で締めくくられるだろう、とそんな心構えで東京ドームに参加していました。
しかし・・・鉄人バンド4人と共にひたすら歌い、ひたすらに弾き、という感じでステージが進んでいき、「あと、有名な曲って何が残ってるっけ?」などと考える余裕も最後には吹き飛び、過ぎ去る6時間。79曲目の「いい風よ吹け」が終わって、巨大モニターに映ったジュリーが「79曲歌っちゃったか~?」と(モニターには泰輝さんも映っていて、「うんうん」と頷いていました。今でも鮮明に覚えている『ジュリー祭り』名シーンのひとつです)。
もうその時に、「最後も俺等(僕とYOKO君ね)のよく知らない曲が来る!」と直感しましたね。
「無知の知」ではありませんが、僕にとっては「自らのヒヨッコさ加減を覚醒」の瞬間です。

始まった曲は、ギリギリ予習が間に合っていた「愛まで待てない」でした。
今思えば・・・80曲歌い通すセットリストのラストが、80曲の中で一番テンポが速いロック・ナンバーですよ。走るジュリー、叫ぶジュリー、「何なんだこの60歳!」と呆然と観ていたように思います。自分が手拍子したか、してないかの記憶も無い・・・その驚異の気力、体力にただただ「参りました」って感じだったなぁ。

今年の「デビュー50周年」セットリストのラストに向かう数曲もいわゆる「有名曲」ではないですよね。
ジュリーLIVE初参加の人の中には、『ジュリー祭り』の時の僕と同じような心構えで来て、最後の最後に「よく知らない曲」連打で逆に「参った!」したお客さんがいらっしゃると思います。そうして虜になる、知らない曲も改めてCDを聴いてみて、また来ようと思う・・・そんな「次」への繋がりがあります。
今ジュリーが自然体でやっていることが、そのまま最高の集客戦略となってしまう不思議な奇跡。やっぱり継続の尊さ、ジュリーの歴史の偉大さ、でしょうね~。

その意味で『ジュリー祭り』80曲目の「愛まで待てない」は、僕の中で宝物のような1曲です。まぁ、『ジュリー祭り』で歌われた全曲が宝物なんですけど。
「ジュリー70越えまでに『ジュリー祭り』セットリスト全曲の記事を書く」と決めたのは『Pleasure Pleasure』ツアーの時ですが、「公言してしまったけど本当にそんなことできるんかいな?」という不安もありました。
でも、あの東京ドームから丸9年・・・残す曲は鉄人バンドのOVERTURE含めて僅か4曲となりました。
僕のような凡人でも、コツコツ続けていればここまで来れます。それもジュリーが導いてくれたこと。
感謝しかありません。
来年の6月25日、ジュリー70越えのリミットに向けて、何とか達成したい大目標です。


それでは、オマケです!
お題「愛まで待てない」リリースの1996年のネタが手元に尽きておりますので、今日はチャプター②で強引に触れた「君をのせて」関連のものを。
Mママ様からお預かりしている切り抜き資料です。


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ということで僕の次回ジュリーツアー参加は15日の武蔵野ですが、その前に瞳みのる&二十二世紀バンドの四谷公演が控えています。

ピーさんが音楽活動を再開してから、年に1度のLIVE参加は大きな楽しみのひとつ。ジュリーのそれとはまた違った素晴らしさ、面白さがあるんですよね。
次の更新は(またまた間隔が開いてしまいますが)、そちらのLIVEレポートになるかなぁ。
参加されるみなさま、会場でお会いしましょう!

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