沢田研二 「ジャンジャンロック」
『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1981 シングル『ス・ト・リ・ッ・パ・-』B面
disc-34
1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. ジャンジャンロック
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いきなりですが、「揺るぎない優しさ」とは正反対の「復興相」の発言に怒り呆れています。
彼にとって、「復興」とは一体何なのでしょうか。
失礼しました。ひとまず気をとり直しまして・・・。
全国ツアー後半のインフォ来ましたね!
自分の参加会場については、今週いっぱい熟慮し週明けには申し込みを済ませたいと思っています。
あとは、声がけして「是非」と言ってくださった一般ピープルのみなさまの分を間違いないよう記入すること。そんなこんなで今回はかつてないほどの枚数を申し込むこととなり、ひとまずの立替も合わせ今月はなかなかの金額が手元から飛んでいきますな~。
いやいや、幸せなことです。
さて、前回「卑怯者」の記事は執筆前に「とにかくコンパクトに!」と考えていたのに、土曜に1日中家に籠って下書きしたせいか、結果長文となってしまいました。
勢いだけで書くとこうなっちゃうんですよね~。
お正月の『祈り歌LOVESONG特集』ファイナルでのジュリーの「頑張れ!」エールを伝え聞き感化された僕は、少なくとも全国ツアーが始まるまでは、「今頑張っている人のために頑張る」期間として、記事の更新頻度に重点を置きたいと思っています。
でも、常に長文だと僕自身が大変ですから(汗)、今回は「コンパクト化」を真剣に考えてみました。
今取り組んでいるのは、「この曲のこの演奏にシビれる!」シリーズ。そこで、文の枝葉を少なくするため、記事を大きく大きな3つのチャプターに分けて書いてみようと思います。それは
①お題曲にまつわる(時に個人的な)あれこれ
②楽曲全体について(ジュリーのヴォーカル、歌詞、メロディーなどの考察)
③推奨・この楽器パートを聴けい!
というもの。これなら(いきなり話を飛ばせるので)常識的な文量におさまるやもしれません。
中には「長文大好きなので食い足りない」と仰る読者のかたもいらっしゃるかもしれませんが、そんなあなたは少数派(いやいや、ありがたいことでございます)。
しばらくはタイトに、コンパクトに、そのぶんどんどん更新していこうと思います。
よろしくお願い申し上げます。
では、「この曲のこの演奏にシビれる!」シリーズ、第2弾の今日は「ベース編」。
お題はエキゾティクス期シングルB面の大名曲、「ジャンジャンロック」を採り上げます。伝授!
①「ジャンジャンロック」あれこれ」
これはYOKO君が大好きな曲のひとつ。まぁ、彼以外にも「これ大好き!」と仰る先輩を知っていますから、総じてジュリーファンの人気が高い曲なのでしょう。
もちろん僕自身も特に好きな1曲です。
でもねぇ、YOKO君が熱烈に「大好き」と言ってる曲って、僕からすると一体何を基準にすればそのラインナップになるんだ、という印象です。
例えばポリドール期で彼が特に傾倒しているナンバーは、「古い巣」「コバルトの季節の中で」「バタフライ革命」「MITSUKO」「WOMAN WOMAN」「ジャンジャンロック」・・・この6曲に何らかの共通点を見出せる人がいたら教えて欲しいですよ。
ただ、それぞれ単独に考えれば当然どれも名曲ですし、「ジャンジャンロック」をYOKO君が愛している理由はよく分かります。だってこの近田春夫さんの詞、18~20才くらいのYOKO君の実生活そのままですから。
ジャンジャン雨降り ブラブラひとり
C7 Bm
パチンコするにも金がない 仕事やめちまったのさ
Bm Em Bm
店のオヤジと喧嘩 即クビだぜ ♪
F#7 Bm F#7
YOKO君の場合、「店」は花屋さんだったそうで。
僕はその年齢の頃の彼とはまだ出逢っていませんが(知り合ったのはお互いが20代半ばの時、弾き語りライヴハウスの競演者として)、彼が田舎から「街に出てきて二年目」くらいまでのエピソードの数々は何度も酒席で聞きました。
当時の彼の武勇伝聞くだけで、軽くひと晩飲めますよ。万一今後機会あれば是非お試しあれ(笑)。
②楽曲全体の考察
『ス・ト・リ・ッ・パ・-/ジャンジャンロック』は両面ジュリー自身作曲のシングル。しかもいずれも短調のハード・ロカビリーということで、当時多忙を極めていたジュリーが限られたプライヴェートの時間に熱心にストレイ・キャッツを聴いていたことが窺えます。
そう言えばYOKO君のギタリストとしてのバイブルはブライアン・セッツァーの教則映像でした。「ジャンジャンロック」は詞曲ともに彼の好みだったわけですか。
で、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』にはジュリーの作曲作品が「ス・ト・リ・ッ・パ・-」「渚のラブレター」「バタフライ・ムーン」と3曲収録されましたが、これが悉くキーが高い!
いずれも普通の男声ではとても太刀打ちできない高い「ラ」の音がメロディーの最高音となっています。
DVD『Zuzusongs』で「ラヴ・ラヴ・ラヴ」を歌い終えたジュリーが「いや~、高っかい!」ということで年齢ネタのMCを展開、「昔はGどころかAも余裕で出てた」と語っていますよね。この「A」が高い「ラ」の音を指しています。アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の自作3曲でジュリーは余裕で最高音を出しているばかりか、確実に歌の最大の聴かせどころになっているのですから凄まじい。
「渚のラブレター」について、アレンジャーの銀次さんが(おそらくリズム録りの段階で)キーを下げてレコーディングする予定を忘れて録ってしてしまったという逸話は有名ですが、結果としてそれは「ナイスうっかり」で、「取り消せるBaby♪」の神がかったジュリー・ヴォーカルが生まれたことはみなさまご存知の通り。
「渚のラブレター」よりレコーディング作業が後だったと思われる「ス・ト・リ・ッ・パ・-」「バタフライ・ムーン」の時には、もう銀次さんの頭の中に「ジュリーの声に負担がかからないようにキーを下げる」気配りは完全に消え去っていたでしょう。
そしてこれは「ジャンジャンロック」にもまったく同じことが言えます。
あまりになめらかに歌っているのでパッと聴き「キーが高い曲」とは感じていませんでしたが、今回採譜していざジュリーと一緒に歌ってみると・・・
とび出しナイフがポケットで
Em Bm
何かつぶやいているよ
F#7 Bm B7
遠くにきこえるパトカーのサイレンにまじって
♪
Em Bm F#7 Bm
サビ全体がメチャクチャ高くて息も絶え絶えになる上、最後の最後、「サイレンに♪」の箇所で高い「ラ」の音が矢継ぎ早に登場してギブアップ。
これを楽々歌っているとは、ジュリー恐るべし!
近田さんの詞もカッコイイです。
「不良少年のイノセンス」のコンセプト自体はアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』収録の「DIRTY WORK」や「想い出のアニー・ローリー」と共通しますが、女性の三浦徳子さんとの違いは、「原体験」とも言えるリアルさ。
それはかつてジュリーの「不良時代」や速水さんの「バイ・バイ・バイ」など、井上バンド時代によく描かれていた曲達の主人公その後の物語のようでもあります。
男性がこのテーマを描くとこうなるんですね。
当時ジュリーも近田さんの詞には共感を覚えていたようで、後で添付する『快走通信』のインタビューで「ジャンジャンロック」について語ってくれています。
「ジャンジャン」は雨降りのジャンジャン以外に、「皮ジャン」のダブル・ミーニングもあるみたいですよ。
③建さん渾身のランニング・ベースを聴けい!
僕は20代後半、かけもちしていたバンドのひとつでベースを弾いていて、吉祥寺の曼荼羅や下北沢のガソリン・アレイなど、お客さんの目が厳しい箱でLIVEに出させて貰っていたので、メチャクチャ練習していました。ジャズのランニング・フレーズを反復し、それこそ「ジャンジャンロック」のようなスタイルも勉強しましたし、「俺はベースは結構弾ける!」と思い込んで(勘違いして)いた時期もありますが・・・まぁこの曲の建さんの演奏を聴くと、当然ながら僕などの及ぶところではないと言うか、とにかく凄まじいです。
ランニング・ベースは複数の小節をひと塊と捉え、その中のコード・チェンジにどれだけのヴァリエーションを自然な音階移動と運指で表現できるか、その上でリズム楽器としてしっかり曲の土台となりソロ楽器をバックアップできるのかが勝負。
その点建さんの安定感&冒険心はハンパない!
しかもこの当時の建さんは「主張」も強い(EMI期になると、「Tell Me...blue」や「プライド」のように「縁の下の力持ち、でもよ~く聴くと凄いことしてる」、という感じに変化していきます)ので、その神技も「音」として分かり易いです。
「ジャンジャンロック」ですと、1番締めくくりの方の「電光ニュースを見上げれば♪」の「ば」から始まる長尺の「この曲でここだけ」なフレージング。ハイフレットからうねうねしながら下降してゆくベース、気をつけて聴けばみなさまも必ずフレーズは聴きとれます。
かと言って建さんは、やみくもな音階移動にうつつを抜かしたりはしません。楽曲全体の俯瞰力も素晴らしいのです。
ジャンジャンジャン ジャンジャンロック
Bm
ジャンジャンジャン ジャンジャンロック
Bm
ジャンジャンジャン ジャンジャンロック
Em(onB)
ジャンジャンジャン ジャンジャンロック
Bm
街に出て来ておいらも ちょうど二年目 ♪
F#7 Bm
この「Em」でのBのオンベース解釈。ジュリーが「ジャンジャンジャン、ジャンジャンロック♪」と歌う箇所で建さんは、途中でコードが変わっているのにひたすら「シ」の音だけを弾き続けるのです。
「Em」のところで普通にルートの「ミ」の音に移行したら、行儀が良くなり過ぎて詞曲の「ヤサグレ感」が弱まってしまうと思うのですよ。このあたりの機転は建さんの持って生まれた「センス」なのでしょうね。
あとはBメロと間奏、こちらはなかなか気づきにくいですが(特に間奏ではどうしてもピアノとリード・ギターに耳が行きますからね)、単なるランニングではなく、「タッカ、タッカ、タッカ・・・♪」というシャッフル・リズムを高速で奏でます。
「タッカ」の「カ」の音はロカビリーのウッド・ベースであればスラップ音、エレキベースであればピッキングで演奏されるはずのもの。建さんはそれをエレキの指弾きでやってのける!というこれまた神技。僕はピックベースの演奏もそれはそれで好きですけど、建さんの「あくまで指!」な拘りの凄腕にはやはり憧れます。
これまでジュリーが共演してきた幾多のプロフェッショナルの中で、最もその演奏が「凄い!」と思うミュージシャンは?と問われたら、僕は迷いに迷った末に「吉田建さんのベース」と答えるでしょう。
技術と才能に裏打ちされた、破天荒なまでの演奏スタイルを前面に押し出しつつ、「バンマス」の存在感もあったエキソティクス期の建さん。
その演奏を生で体感されているジュリーファンの先輩方が羨ましい限りです。
それでは、オマケです!
今日は、先ほど文中でも触れた81年の『快走通信』(日産ブルーバードの記事がメインなのですが、売り物ではなくフライヤーなのでしょうか?大分の先輩から授かった貴重な資料です)掲載のインタビュー。
ただでさえデカい紙面に見開きでレイアウトされた記事を強引に4分割してスキャンしましたので見辛いと思います。すみません(汗)。
4枚ぶんをうまいこと繋げば全文読めるはずです。
では
次回更新は、『この曲のこの演奏にシビレる!』シリーズ第3弾、『アコギ編』です。
またまた建さんのことをたくさん書くことになりそう。
エキゾティクスの頃の建さんはとにかく「俺はベーシスト!」の主張が強いのですが、プロデュースを任されたEMI期には楽曲至上の手法に転じ、次回お題曲では何と、自身の作曲作品にも関わらず(いや、自身の作曲だからこそ、なのかもしれませんが)でベースレスでアレンジしているほど。これがまた素晴らしい!
ベースに代わり建さんのセンスを押し出しているのがアコギなのですね~。
アルバム『彼は眠れない』から、僕が特に好きな名曲のお題でまたすぐにお会いしましょう!
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コメント
DY様 こんばんは。
コメ、追いつきません。
「この曲なんでデジタルに落としてなかったんだろう?」と思ってドーナツ盤で聴き直したら、針飛び2か所。で、あきらめたんだっけ。
作詞者の実体験なんだろなコレ、とか思いながら聴いてました。
「電話番号書いたマッチ失くした」
雨の日、偶然久しぶりに会った友人の電話番号、筆記用具が無くて、とっさにレシートにアイライナーで書いてレインコートのポケットに入れ帰って確認したら濡れて読めなくなってた情けなさを思い出しました。
今だったらスマホに入力するんですけどね。
結局その友達とはそれっきりです。
投稿: nekomodoki | 2017年4月 9日 (日) 02時30分
nekomodoki様
ありがとうございます!
お手持ちのドーナツ盤、針飛びですか~。
それははからずも、建さんのベースの素晴らしさを証明されていますよ(笑)。45回転のシングル盤は特に、ベースが激しく動き回る曲ほど針が飛びやすいですから。
昔は電話番号などは書くものが無ければ必死で覚えたものですよね。
今は便利になりましたが、そのぶん人の「数字を覚える」能力は衰えているんじゃないでしょうか・・・。
あ、でも僕はようやく自分の澤会さんの会員番号は覚え込みました~。
投稿: DYNAMITE | 2017年4月10日 (月) 08時56分
DY様
こんにちは。超ハイペースの更新追走がしんどいです。「楽逃げ」されないよう付いて行きたいところですがなし崩し的に足を使ってしまいそうな展開ですね。
お題曲、B面ながらなかなかの名曲ですね。アルバムと同時録音でしょうがシングルのためにわざわざ収録せず残しておいたのでしょうか。
というのが、私の記憶違いかも知れませんが、『ストリッパー』の発売前のチラシかポスターに収録(予定)曲が載っていて、その中に確か「ジャン・ジャン・ロック」も入っていたように思うのですが……。まあ35、6年前の遠い昔の話です。今回の伝授拝読してふと幻のような1981年の初夏のレコード屋さんの風景を思い出しました(記憶違いならごめんなさい)。
アルバムもシングルも全体的にドラムスがデカいですね。その分それぞれのギターは控え目、私好みの「いい音」です(私の好みはこの際どうでもいいですけど)。
投稿: ねこ仮面 | 2017年4月13日 (木) 13時11分
ねこ仮面様
ありがとうございます!
楽器パートに焦点を当てるこのシリーズでは、今第4コーナーを回ろうかという頃合ですが、後続の蹄音がなかなか迫ってこない・・・。
でも来週少しだけ更新間隔が空く予定ですので、ねこ仮面様も直線で差しきってください(笑)。
「ジャンジャンロック」のアルバム収録予定については、僕も何かの資料で見たことがあるような気がします。『ヤング』だったのかな・・・。
確かにこの頃はギターのミックス音量は最近の巷の音楽と比べると小さめですよね。
僕もこのくらいが好みです。「隙間」を感じられるアレンジやミックスが好きなのは、やはり60~70年代の洋楽でロックを覚えたからなのでしょうね。ねこ仮面様も同様でしょう。
さて、皐月賞はもし大荒れするとすれば逃げ馬が絡むでしょうね。サニーブライアンで美味しい思いをしたのももう何年前になるのか・・・僕は今、競馬はすっかり「見る」だけのスタイルになってしまいましたが、ねこ仮面様のご武運をお祈りしています!
投稿: DYNAMITE | 2017年4月13日 (木) 16時15分