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2017年2月16日 (木)

沢田研二 「絹の部屋」

from『架空のオペラ』、1985

Kakuu

1. 
2. はるかに遠い夢
3. 灰とダイヤモンド
4. 君が泣くのを見た
5. 吟遊詩人
6. 砂漠のバレリーナ
7. 影 -ルーマニアン・ナイト
8. 私生活のない女
9. 絹の部屋

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矢継ぎ早の更新が続きます。
読む方も大変でしょうが、適当にナナメ読みするとか、午後のおやつの時間のお供にするとか、とにかく気楽におつき合いくださいませ。
なるべくコンパクトに、まいります!

先日のオリコン特番で若き日のジュリーを観ていたせいか・・・ジュリーの「デビュー50周年」を振り返る日々の中で、どうしても自分の「ジュリー愛」が長いファンの先輩方に比べて劣っている、ハンデがある、と感じることが時々あるな、と思い至りました。
新規ファンである、ということももちろんですが、まず僕は男性という時点で大きなハンデを負っている・・・つまり僕は「ジュリーに恋をした経験が無い」のですよ。

もちろん、それをして世のすべての男性ジュリーファンが女性ファンに劣っている、と思ってはいません。特にジュリーと世代の近い男性ファンには、同姓ならではの特別な親愛の情の持ち方があって、そのことはたぶん近々の考察記事お題で触れられると思います。それに、真剣にジュリーに「恋をした」経験を持つ男性ファンも少なからずいらっしゃるのでしょうし・・・。
ここで書いているのはあくまでジュリーよりかなり年下、かつノン気な僕個人に限ってのお話です。

そんなハンデを特に強く感じるのが、「官能のジュリー・バラード」を聴いている時。
ただ、例えば「AFTERMATH」「Pin PointでLove」あたりはもう記事を書き終えていますが、これらは男性視点から「行為軸」(ゲスな表現ですみません)と脳内でリンクさせながら聴ける特性があって、同姓だからこそ「分かる」面もあるかもしれません。
ところが、完全に「ジュリーから誘われている受け手」として聴くしかないほどの官能のバラードとなると、これは女性リスナーの感性に敵わないでしょう。
今日採り上げるのはそんな名曲です。

女性ファンの先輩方に比べて、その素晴らしさがどこまで理解できているか分からない、自分のジュリー愛が劣っていることを自覚せざるを得ない・・・。
それでも、大好きな曲。個人的にはアルバム『架空のオペラ』収録曲の中で一番好きな曲です。
「絹の部屋」、畏れながら伝授!


この曲、何といっても圧倒的なのはジュリーのあのヴォーカルですわな~。
ジュリーはデビューからずっと(「ほぼ虎」のあった2011年以外は)毎年新譜をリリースし続けています。
これは本当に世界に類を見ない凄まじい偉業なのですが、毎年リアルタイムで新譜を追いかけていた先輩方が「たったの1年で前作とはガラリと印象が変わった」と感じた作品がこれまでいくつかあったことでしょう。
中でも、84年の『NON POLICY』から85年の『架空のオペラ』の変化には特に驚いたのではないですか?
これはもう、ジュリーのヴォーカルが違う、それに尽きると思うんですよ。

もちろん84年までのヴォーカルだって素晴らしい。
どちらが優れている、という話ではありません。それに、声や歌い方それ自体は、例えば84年の「シルクの夜」と85年の「絹の部屋」を聴き比べれば自然に繋がっている、なだらかに進化している、と思えます。
『架空のオペラ』の衝撃とは、アレンジやミックスといった「楽曲の作りこみ、仕上げ方がジュリーの声をこうも違えるのか」という1点だと僕は考えています。
エキゾティクスのロックな演奏があって、そこで類稀なセンスでヴォーカリストとしての機能を果たしていたそれまでの手法から、ただただジュリーの歌がそこにある、まずジュリーの声があって伴奏がサポートに徹している、という手法への変化。
劇変ですよね。
ヴァイオリンと掛け合う「灰とダイヤモンド」、実験的なダブル・トラックを採り入れた「影-ルーマニアン・ナイト」と各曲ごとの切り口はそれぞれ違えども、「歌を押し出す」曲の作り込みはアルバム『架空のオペラ』全体のコンセプトであったようです。

「絹の部屋」での大野さんの作曲は、長調のバラード王道中の王道です。
特にAメロのコード進行については、キーやメロディーこそ異なりますがまったく同じ理屈で「愛の出帆」「約束の地」「護られているI LOVE YOU」などの純度の高いジュリー・バラードで採り入れてられています。
普通こういう曲って、仕上げに豪華な装飾をしたくなるものなんですよ。厚いオーケストラを入れたり、満を持して転調させたり、コーラスを重ねたり・・・でも『架空のオペラ』はそういうことを排するところで成立している名盤ではないでしょうか。

「絹の部屋」の場合は、「よくぞコーラスを思い留まったなぁ」と。特にBメロです。

お互いにさりげなく 小さな嘘達を
A♭            B♭        E♭        E♭7

ちりばめて見せるのが
A♭                F7

恋のドラマトウルギー ♪
      B♭            B♭7

耳に心地よく綺麗で覚え易いメロディー。音感に疎い僕ですらここは
「ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭~、ラ♭ラ♭ソソソ~・・・♪」
と字ハモのメロディーをすぐに脳内で音源に重ねることができます。
でもこの曲は最初から最後まで「あくまでジュリーのメイン・ヴォーカル1本!」なんですよね。

ただし、黒子に徹する演奏も、だからと言ってただ漫然としているわけでは当然なく、個人的にはジュリーのヴォーカルの間隙を縫うホイッスルのような感じのシンセの音色に特に惹かれます。
あと、独特の雰囲気があるベース・・・これは普通のフレットレスでしょうか。それともシンセ?
僕の耳では分かりません。『架空のオペラ』の演奏については未だハッキリしない謎が多いです。

この曲でのジュリーの発声の特徴は、「そっと置く」ように語尾を歌っている箇所が多いこと。
1番Aメロがとにかく凄くて

君の頬で妖しく     輝   く
   E♭        Gm7(onD)  Cm7  Cm7(onB♭)

美しい罠  だ ♪
Fm7  B♭  E♭     A♭  B♭

の「罠だ♪」の「だ」であったり

瞳を閉じ
  A♭

たまらずゆらりと揺れた ♪
                  Fm7      B♭

の「揺れた♪」の「た」であったり。
前年までの「放り投げる」ロックな語尾表現とはまた違う、「そっと置く」としか言いようのない独特の発声感覚。
特に1番では「さぁ、こっちへおいで」というシーンを歌っているわけですからねぇ。凄い凄いと思いながらも、ここが男性の僕には大きなハンデ。
どうですか、先輩方?「罠だ♪」のところで早くも「もう好きにして~」とメロメロになっちゃうものですか?

さて、ジュリーのヴォーカル、大野さんのメロディーと同じく素晴らしいのが及川恒平さんの詞です。
ジュリーが自作詞以外は女性の作詞作品を好むことは周知の事実ですが、当然男性が作詞したジュリー・ナンバーも名篇揃い。個人的には、ジュリー・ナンバーを通して初めてその才を知った及川恒平さんの作詞作品には格別な思い入れがあります。
”第一次ジュリー堕ち期”に購入したアルバム『いくつかの場面』で出逢った「外は吹雪」「人待ち顔」「U.F.O」の3篇には本当に驚いたものです。これほど素晴らしい詩人を今まで知らずにいたのか、と。

「絹の部屋」は『いくつかの場面』収録の3篇とはちょっと空気感が違いますけど、素晴らしさは不変。
煽動性の無い特殊な剥き出しのエロス・・・ズバリ書いてしまいますが、性交渉を「お互いの不自由を喜びあえる」と表現するセンスは只事ではありません。
「男性が聴くにはハンデがある」と書かざるを得ないジュリー官能のバラードを男性の及川さんが作詞している、ということからして既に凄い。

ゆこうよ君 ゆこうよ君
      E♭ Gdim   A♭  Bdim

真夜中の絹の   部屋へ ♪
       E♭     A♭  B♭7   E♭

このサビの詞、歌に自然に身を委ねることのできる女性ジュリーファンの先輩方が本当に羨ましく・・・今日はなかなかに悔しい(?)伝授でございました~。

それにしても。
この数年、年末にお2人のJ先輩との忘年会開催が恒例となっているんですけど、やっぱりその時期にお会いすると「お正月LIVEはどんな曲を歌ってくれるのか」という話題になります。そのたびに
「今回は”絹の部屋”を歌ってくれそうな気がするんですよ。でも僕がセットリスト予想記事で書いちゃうと外れるので敢えて書きません」
などと自信満々に言い続けて一体何年目になるのか(←去年も言った汗)。

ちなみに毎年、お1人の先輩が「”夜のみだらな鳥たち”を歌って欲しいのよ~」と言った後に僕が「いや、可能性が高いのは”絹の部屋”ですよ!」と応える、というのが完全にパターン化しています。ジュリー、どちらもなかなか歌ってくれません(笑)。
果たしてこの先、生のLIVEでその2曲を体感する機会は訪れるのでしょうか。

とにかく、『ジュリー祭り』デビューの僕は『架空のオペラ』収録曲の中ではまだ「砂漠のバレリーナ」1曲しか生で体感できていないのですよ~(その唯一の曲が「砂漠のバレリーナ」ってのがまた凄い話ですが)。
とりあえずは、夏からの全国ツアーで「未体験シングル曲」の一角にして代表格、「灰とダイヤモンド」に期待しています。歌ってくれるよね、ジュリー?


それでは、オマケです!
今日は、これも福岡の先輩からお預かりしている資料で、85年の『アサヒグラフ』をどうぞ~。


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ということで、怒涛の更新ペースについていけない方が続出しているかとは思いますが・・・まだまだ手を緩めず攻め続けますよ!
次回お題は、吉田建さんプロデュース期の名曲です。ネオ・モッズについても書くことになるかな~。

各地の雪の被害、その後が心配されます。みなさまお住まいの地は大丈夫でしょうか。
こちらは明日の気温が19℃の予報。暖かい日と寒い日、気温の差が激しい季節になってきたようです。

僕は風邪の症状がようやく治まりました。
今の風邪は一度かかってしまうと咳が長引いて大変ですよ。みなさま、充分お気をつけください。

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瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!」カテゴリの記事

コメント

DY様 お久しぶりです。
大好きな頃のジュリーの楽曲を取り上げていただき、ありがとうございます。
本当にこのアルバムは素晴らしいですね。
ライヴも最高でした。
そして、このアサヒグラフの写真、同じ写真業界の人間として、震えるほどカッコいいです。
特に最後の一枚、白のタキシードを羽織ってる絵、多分「眠れ巴里」の時だったと記憶しているのですが、表情、ライティング、露出、これ以外考えられないぐらいの芸術ですね。
勿論、今のジュリーも好きですが、こういう路線をもう一度期待するのは、やっぱりダメですよね。
長々と失礼いたしました。

投稿: 治之祐 | 2017年2月16日 (木) 23時07分

治之祐様

ありがとうございます!

『架空のオペラ』は、コンセプトにしても音作りにしても、他に似た作品の無い唯一無二のジュリー・アルバムですね。
そして、治之祐様のコメントを拝見すると、「ヴィジュアル」的にもそうだったのかな、と想像します。

僕は美的センス、服飾センスがまったく無いので写真の良さもなかなか理解できないのですが、専門のかたから見て素晴らしいということでよく見てみますと、確かに添付最後の1枚は引き込まれるものがあります。84年までのジュリーのヴィジュアルとは違うんだな、ということも分かるような気がします。

僕は85年から数年間のジュリーには、ひたすら仕事に打ち込む「男」の雰囲気を強く感じていて、30代から40代が「男盛り」と言われるのはこういう人のことを指すんだな、と。
自分は同じ年齢の頃に一体何をしていたのか、と恥ずかしくなったり(笑)。

とにかく、この写真のツアーを生で体感されているみなさまが羨ましいばかりです。さぞ素晴らしかったでしょうね・・・。

投稿: DYNAMITE | 2017年2月17日 (金) 09時02分

DY様、こんにちは。
以前に2,3度コメントさせていただいた者です。
ずーっと楽しませていただいております。

私は及川恒平さんのファンなものですから、
「いくつかの場面」で詞を書かれた時とても嬉しかったのです。
余計なことかもしれませんけど
及川さんは小室等さんのフォークグループ「六文銭」のメンバーです。
「面影橋から」「雨が空から降れば」など、名曲を書き、美声を聞かせてくれています。
「絹の部屋」、聞いた時静かな感動が押し寄せて来ました。大人の愛ですな。

投稿: moromoro | 2017年2月18日 (土) 14時46分

moromoro様

ありがとうございます!

及川さんが六文銭にいらしたことを知ったのは、『いくつかの場面』を聴いた後のことでした。六文銭というグループ自体は知っていたのですが、これほど素晴らしい詩人の存在を長い間まったく知らずにいたのです・・・。

そう、仰る通り「絹の部屋」は大人の愛ですね。
「人待ち顔」や「外は吹雪」は少年、青年の愛なんですよね。75年のジュリーにはそれがピッタリでしたし、85年のジュリーには「絹の部屋」がピッタリだったのでしょう。及川さん、素晴らしいですね。

「面影橋から」は知っていますが「雨が空から降れば」はこれまで真剣に聴いたことがありません。勉強したいと思います!

投稿: DYNAMITE | 2017年2月18日 (土) 18時26分

DY様 こんばんは。

「官能」って言葉がこれほどピッタリの曲はないです。
「絹のような空気と音楽で満たされた部屋」
で愛を囁かれたら・・・ダメだ、緊張でフリーズしそう。
Bメロでコーラス・・・想像もしなかった。
いざ、二人っきりで愛を奏でよう、と思った瞬間、絹のカーテンが厳かに開いて天使がすました顔ではハモりしたら・・・
ゴメン、有難すぎてやっぱりフリーズ。
ジュリーのストレートな歌声だけに浸っているのが一番幸せ、かな?

このアルバムは、ジュリーに限らずベスト盤以外はほとんど聴かない夫が、不思議とよく聴いていました。

投稿: nekomodoki | 2017年2月18日 (土) 22時52分

nekomodoki様

ありがとうございます!

やはりそうですか・・・正にそこが男性ファンとしては越えられない壁なんですよね。
官能のバラードであることは分かっても、ジュリーが招く「部屋」に入っていくことはできないのですよ~。

『架空のオペラ』は歌に特化したアルバムですが、演奏、アレンジに独特の潔さもあり、実験性もなり・・・面白い音だと思います。
旦那様がよく聴いていらしたとのこと、やっぱり何気ない音に惹かれる面もあったのではないでしょうか。

投稿: DYNAMITE | 2017年2月19日 (日) 12時18分

DY様
 こんにちは。風邪もすっかりよくなられたご様子、やはり元気が何よりです。おかげさまで私は風邪・インフルエンザとは無縁の冬でしたがまだまだ油断は出来ません。ところで今日はフェブラリーステークスですね。来月は高松宮記念、再来月は桜花賞や皐月賞…あっという間にダービーや宝塚記念、気が付けば有馬って今年も思うんでしょうね。歳もとる筈です。
 お題曲、一度だけ生で聴いたことがあります、いつだったかな?何にせよいい曲ですね、この曲「嫌い」という人はそういないんじゃないでしょうか。
 及川さん作詞、大野さん作・編曲というのは「外は吹雪」「人待ち顔」と全く同じなのに10年経つとサウンド的にはずいぶんかわるものだなあとリリース当時思ったものです。まあ『架空のオペラ』自体ほとんどシンセ/打ち込みのキャリア中かなり独特なアルバムなので、当然といえば当然なんでしょうが。
 『架空のオペラ』は演奏者、録音時期・スタジオ、エンジニア等不明なことが多いので気にはなるアルバムです。でも以前にコメントさせていただいたように正直、それほど好きでもありません。「指」「砂漠のバレリーナ」は時々聴いています。(大野さん、すみません)

投稿: ねこ仮面 | 2017年2月19日 (日) 12時33分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

競馬から足を洗って数十年・・・思えば昔は移る季節をGIローテで感じとっていたものでしたが、今はもう、どのレースが何月だったのかさえ分からなくなっているGIもあります。
と言うかフェブラリーってGIでしたっけ?

ねこ仮面様が生で聴いたのがたったの1度となりますと、この曲はセットリストとしてはかなりレアですか・・・一時期頻繁に歌われていた頃があった曲、というイメージを勝手に持っていました。それほどジュリーが「歌いやすい」バラードだと思っていたのです。
ただ、よくよく考えるとバンド・サウンドとしては不向きなのかもしれませんね。
僕としては、だからこそこのアレンジが素晴らしいとも思うのですが・・・。

投稿: DYNAMITE | 2017年2月19日 (日) 18時00分

この歌を聞くと、うっとりしますね。

投稿: ひろ | 2017年2月21日 (火) 23時17分

ひろ様

ありがとうございます!

やはりそうですか~。
男性ファンの僕は、ただただ「凄いな~」とこの歌を聴いていますが、「うっとりする」境地にたどり着ける女性ファンのみなさまが羨ましいです。

でも、生で聴く機会があれば僕もうっとりできるかもしれません。
この先、一度は体感してみたいものです。

投稿: DYNAMITE | 2017年2月22日 (水) 09時28分

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