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2016年12月

2016年12月28日 (水)

沢田研二 「SPLEEN~六月の風にゆれて~」

from『パノラマ』、1991

Panorama

1. 失われた楽園
2. 涙が満月を曇らせる
3. SPLEEN~六月の風にゆれて~
4. 2人はランデブー
5. BACK DOORから
6. 夜明け前のセレナーデ
7. STOIC HEAVY~盗まれた記憶~
8. テキーラ・サンセット
9. 君の憂鬱さえも愛してる
10. 月の刃
11. Don't be afraid to LOVE

---------------------

2016年も残すところあと僅か。
もう冬休みのかたも、まだまだお仕事頑張るかたも、風邪などひいていませんか?

著名なミュージシャン達の訃報が相次いだ年でした。
先日も、ジョージ・マイケルが50代の若さで旅立ったというショッキングなニュースが・・・僕は彼の作品は代表曲をいくつか知っているのみですが、高校生の時にワム!の「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」が大ヒットし、よくバンド仲間で話題になっていました。
また、ジョージの有名ソロ曲のひとつである「フェイス」については、ジュリーの楽曲考察絡みでいずれこのブログで触れる機会があろうかと思います。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

年の瀬のニュースとしては他に、10月に突如報道され全国の将棋ファンを驚かせ戸惑わせた、三浦弘行九段のいわゆる「スマホ・カンニング疑惑」が、先日第三者調査会により三浦九段の潔白を証明する形でひとまずの結論を見ました。
安堵すると同時に、日本将棋連盟の体質改善を求める一般の将棋ファンの声が高まっています。
10月の三浦九段に対する処分発表の会見ではテレビカメラを入れ、今回の決着会見ではカメラをシャットアウトするという連盟の行為は、将棋ファンから見て決して気持ちの良いものではありません。連盟は今後に重大な課題を残したと言えるでしょう。
何より、「自分だけなら耐えられるが、家族が酷い目に逢い、悔しく辛い思いをした」と語る三浦九段への公の場での謝罪、名誉回復、不当な処分期間の対局料をはじめとする金銭的な保証問題などへの明確な意向を早急に提示しない限り、将棋界に愛想を尽かすファンが多数現れかねません。
谷川会長はじめ、連盟の誠実な対応に期待します。

さて、個人的には2016年は「人生初の手術(脱出性内痔核の切除)を体験」という40代ラストイヤーならではの出来事(?)が大きかった1年でした。
今となっては「貴重な経験をしたなぁ」と思えますが、術後は本当に大変だった・・・。
幸い経過は順調で、どうやら年明けの次回診察を以て「完治」のお墨付きを頂けそう(という前回診察での先生の見立てです)。来年、再来年のジュリーのメモリアル・イヤーLIVEにお尻を気にしながら参加、などという事態は未然に防ぐことができましょう。

また、痔の手術術前検査として「一応」という感じで受けた大腸内視鏡検査でポリープ2個が見つかりその場で除去するなど、身体にも年齢相応のガタがきていることを痛感させられましたね。
先生からは定期的な検査を勧められています。確かに大腸内視鏡検査もそれなりに苦しい体験でしたが、「痔の切除術後のあの苦しみを体験した今となってはあんなの辛いうちに入らん!」と思えますので、来年秋くらいには再び検査を受けるつもり。
僕も50代に突入し、これから毎年そんなふうに身体のメンテをしながらのジュリーLIFEとなりそうです。


では本題。
今日は2016年最後の記事更新、並びにお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』に向けての”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズ大トリです。
少し前まで「今年はこの曲で〆!」と決めていた洋楽カバー曲があったのですが諸事情あって延期、さぁ代わりにどの曲を採り上げるか、と散々悩みました。
せっかくなので予想シリーズ最後の1曲は的中させたいし、かと言ってストレートに超有名シングルを選ぶというのもなんだか悔しい(笑)。
ここは「大ヒットしたとは言えず、世間的にはあまり知られていないけど、ジュリーにとっては重要(と思われる)なシングル」で、なおかつ『ジュリー祭り』セットリストからは惜しくも漏れていた名曲群の中から、デビュー50周年幕開きのステージにふさわしいだろうなぁ、と夢想できるものをお題として考えてみました。

「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」「STEPPIN' STONES」の2曲と最後まで迷いましたが、今回のご指名は、個人的に『真田丸ロス』な最近の心境と何故かシンクロしまくる名曲「SPLEEN~六月の風にゆれて」(あ、今日は『真田丸』の話題は自重しますのでご安心を笑)。
アルバム『パノラマ』から、伝授です!


『ジュリー祭り』セットリストから外れた重要なシングル、という以外に、この曲には特記しておくべき大切なポイントがあります。それは
「2012年の全国ツアー『3月8日の雲~カガヤケイノチ』セットリスト冒頭1曲目に配された曲である」
ということ。
『PRAY FOR EAST JAPAN』1作目となる『3月8日の雲』は世間ばかりか僕らジュリーファンをも驚愕させ、惑わせ、感動させ・・・何か落ち着かない、会場の雰囲気がどうなるかすらまったく予想できない、そんな状況で迎えたツアー初日。
ジュリー自身も特別な決意を以ってスタートさせたツアーだったはずですが、その1曲目に流れたのが、泰輝さんのストリングスの音色・・・「SPLEEN~六月の風にゆれて」のイントロでした。

あの時、何故ジュリーはこの曲を1曲目に選んだのでしょうか。みなさまもそうだったでしょうけど、僕も当時はその点、色々と考えましたね・・・。
やはり意識したのは2番の歌詞です。

甘やかな日々 が
G     D(onF#)   Em  Em7

永遠に過ぎ去って
       C    D       G   D7

思い出の中  に
G    D(onF#)  Em  Em7

深い雪が降る ♪
   C   D      G

あの年のジュリーファンは皆、凄まじいメッセージをジュリーの新譜から受けとり、それぞれ真剣に3.11について考えつつもどこか無力感、喪失感のようなものを胸に抱えていました。そこへきて「何もかも失くした」と歌われる曲でツアーが始まり、「大切な日常を失ってしまった」悲しみをジュリーはこの曲に託して歌ったのではないか、と僕は考えたものでした。

でもその後、別の考え方も多く持つようになりました。その中のひとつが「分別ある大人」への断罪。
そしてその中には「自分自身への非難、悔恨」も含まれていたんじゃないか、と。
まぁこれは僕自身が自分を責め立てている状況に当時直面していたので、「ジュリーだってそうかもしれない、と思いたい」部分が大きいんですけどね。

そこで、コシミハルさんの歌詞、最後の一節に目を向けてみましょう。

僕はこんなに  大人になって初めて
G       Gmaj7(onF#)  G7(onF) E7

恋をしたのに  今では何もかも失くした ♪
   Am        Ammaj7  Am7    D7         G

近年のジュリーの作詞作品を聴いているからでしょうか、僕はどうも「大人」というフレーズに過剰なまでに敏感になっているようです。
中でも今年の「un democratic love」が痛烈過ぎた・・・。

もちろんコシミハルさんが書いた「大人」に特別な「マイナス」の意は無いでしょう。とすればこの歌の「大人」のフレーズから導き出されるのは「君」の年齢ではないか、と僕はまた得意の深読み(邪推)をしました。
主人公は「分別ある」大人で「君」はまだ純粋無垢な少女、という図式です。
無垢故に未来を拒み「幸せ」に怯える少女に対して、主人公は「物の分かった大人」の分別をふりかざした挙句、相手を傷つけた結果、愛を終わらせ何もかも失ってしまった・・・「SPLEEN~六月の風にゆれて」を、そんな自責のLOVESONGと捉える見方はどうでしょうか。

いずれにしても、常に「人の考えないところを考える」ジュリーのアルバムからシングル・カットされた曲です。ジュリーがこの曲の歌詞に深い共感を持ちそれなりの意味を持たせていたと考えることは可能でしょう。
そもそも、アルバム『PANORAMA』には他にシングル向きのキャッチーなナンバーは何曲かあるじゃないですか。曲想的には「涙が満月を曇らせる」あたりがシングルだったら、と僕などはいつも考えてしまいますが、そこを敢えて「SPLEEN~六月の風にゆれて」。確かに美しいメロディーを擁する名曲なんだけど、アレンジがトリッキーですから、「シングル向き」だったかどうかには疑問が残ります。
ただ、ファンとすればそれも込んだ上で納得、というのがジュリーの凄いところなんですけどね。

では、メロディーとアレンジについて。
作曲者である小林さんのザ・ブームからの人脈を辿ると、チト河内さんや朝本浩文さんといったジュリーファンにはお馴染みのお名前に繋がります。
僕はブームのアルバムは『極東サンバ』1枚しか聴いていないんですけど、若い頃には分からなかった魅力がたくさん発見できそうなバンドですからいずれじっくり聴き込んでみたいところです。

小林さんのジュリーへの初の楽曲提供となった「SPLEEN~六月の風にゆれて」は本当に瑞々しいメロディーの名曲。単に美しいというだけでなく、「他のジュリー・ナンバーに似た曲が無い」ことが特筆さます。
これはアレンジの特異性以外に、サビの進行がそう思わせてくれるのですね。

そして二人は    優しい風の  中
G        Gmaj7(onF#)    G7(onF)  E7

淡い夢と接吻(くちづけ)ばかりの ♪
   Am  Ammaj7        Am7         D7

クリシェの胸キュン進行としては王道なのですが、これは「同じ歌手、バンドで曲数乱発できない」パターン。
聴き手に強烈な印象を残す進行だけに、歌手やバンドにとって「この1曲!」の存在となるのです。それがジュリーの場合は「SPLEEN~六月の風にゆれて」。
もちろん邦洋問わず他アーティストに同進行の「この1曲」が数多くあって、有名なところでは山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」。
この曲が大ヒットし街で流れまくっていた時、ふと「あれっ、このサビ、よく知ってる何かの曲に似てる気がする・・・」と考えたジュリーファンの先輩方がいらっしゃったかもしれません。それはズバリ「SPLEEN~六月の風にゆれて」のことだったのですよ。

こういうアレンジだけに、僕は初めてこの曲を聴いた際「これは・・・通常のバンド体制のLIVEで再現できるものなんだろうか」と疑問を持ったものです。
しかし実際『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーで泰輝さんのシンセ・ストリングスを体感し、改めて鉄人バンドの凄さを思い知りました。
オリジナル音源にはベースが入っていませんが、きっと依知川さんが復帰した現在の編成でも新たなアレンジ解釈で楽曲再現は可能と期待しています。

ストリングス・アレンジのオマージュ元はビートルズの「エリナー・リグビー」。これは明白。


Eleanorrigby

↑ 『ビートルズ/リボルバー』バンドスコアより

どの弦パートも、確信犯的に似せていますね。
プロデューサーの建さんが楽曲を得た段階でアイデアを練り、鶴久正基さんにストリングス・アレンジを依頼した、という流れだったのかなぁ・・・


今回セットリスト予想として選んだこの曲、タイトルに”六月”とあるので、一瞬「お正月LIVEのイメージではないかなぁ」と思ったのですが、よく考えればコシミハルさんの詞は少し前に記事を書いた「午前三時のエレベーター」と同じく、1番と2番で主人公が語る季節(時期)が違うんですよね。「六月」が幸せ絶頂の時で、「何もかも失くした」と歌う2番がおそらく真冬(「雪が降る♪」のフレーズから)です。
そもそもジュリーが真夏にクリスマス・ソング(「さよならを待たせて」「溢れる涙」)を歌ったり、お正月に真夏のナンバー(「時計/夏がいく」)歌ったり、というのは後追いファンの僕でもこれまで何度も体感済み。
その意味でも、「SPLEEN~六月の風にゆれて」・・・要チェックの 1曲だと思いますよ~。


それでは、オマケです!
91年の資料のネタが尽きておりますので、若き日のジュリーの「年末っぽい」雑誌記事資料を2つほど。いずれもMママ様からお預かりしている切り抜きです。
まずは72年。


1972101

1972102

1972103

1972104

1972105


続いて、翌73年。

Img270

Img271

Img272

こうしてみますと、たった2年間でジュリーがとてつもない飛躍を遂げていることが一目ですねぇ・・・。


ということで。
今年も大変お世話になりました。
個人的にはなかなか大変な1年を過ごしましたが、ブログはいつもの調子で継続できています。平和な日々だからこそ・・・ありがたいことです。
来年、再来年の大きな楽しみを前に、改めて「なにげない普段の生活」に感謝。手術とその術後の苦しかった時期の、みなさまの激励にも感謝、感謝です。
来年も相変わらずの感じで、ブログ頑張ります。

年末年始はカミさんの実家に帰省、せっかくの関西なので『真田丸』ゆかりの場所を巡ってくる予定。
そのぶん新年のご挨拶が遅れるかと思いますが、ご容赦くださいますよう・・・。
それではみなさま、よいお年を!

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2016年12月20日 (火)

沢田研二 「麗しき裏切り」

from『第六感』、1998

Dairokkan

1. ホームページLOVE
2. エンジェル
3. いとしいひとがいる
4. グランドクロス
5. 等圧線
6. 夏の陽炎
7. 永遠に(Guitar Orchestra Version)
8. 麗しき裏切り
9. 風にそよいで
10. 君にだけの感情(第六感)
11. ラジカル ヒストリー

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『真田丸ロス』で傷心真っ只中の年末ではございますが・・・本日12月20日をもちまして、不肖DYNAMITEも遂に50歳となってしまいました。
幸村公よりも長い人生に踏み込むことになります。

『ジュリー祭り』レポートを機に、末席ながらいわゆる「じゅり風呂」として拙ブログを地道に続けてゆく中、先輩方から畏れ多くも「若手ジュリーファン」と呼ばれることがあり、長年確信犯的に勘違いをして参りました。
しかし!「50歳」ともなればさすがに「若手」ではありえません(涙)。まだまだ勉強中、修行中のヒヨッコの身ではありますが、そろそろ「中堅ジュリーファン」を名乗らせて頂くわけにはいきませんでしょうか(笑)。

同年齢の友人達や職場同僚は、一様に「50歳」を大きなため息と複雑な顔で迎えています。
男って、自分がどんどん「オッサン」となり体力が衰えてゆくことを認めるのが嫌なんでしょうかねぇ。
もちろん僕にもそういう感情が無いと言えば嘘になりますし、実際身体にもガタはきています。
先日「HELLO」の記事を書いた時に思ったのですが、ほぼ半年前に「君をいま抱かせてくれ」の記事を書いた時と比べて、老眼が猛烈な勢いで進行していることも実感しています(アルバム『HELLO』の歌詞カード、今はもうほとんど読めません・・・)。

でもそこはジュリーファンですから!
ジュリーなんて49歳の時点で「ジジィを意識しないと」と言ってるわけです。あれほどの偉大なスーパースターが年齢に真っ直ぐに向き合う姿勢というものは本当に凄いと思いますし。見倣っていかないと・・・。

ただし、ジュリー50歳の年の全国ツアー・ステージ(『Rock'an Tour '98』)DVDを観て「50歳?まだまだイケる!」と思い込むのは禁物。あれはジュリーだからこそ成し得ることであって、凡人の僕らは年齢相応に、身体をいたわりつつ元気な若者を引き立て、全力で残された人生に対峙してゆく・・・それしかありません。
そんな思いも新たに、ブログについてもこれまで通りコツコツと頑張っていきますよ!

さて今日もジュリーのお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』に向けて、恒例”全然当たらないセットリスト予想”シリーズとして更新するわけですが、毎年この日は「ジュリーが自分と同じ年齢の年にどんな曲を歌っていたか」ということでお題を選んでいます。

ジュリーが50歳となる年にリリースしたアルバムは『第六感』。収録曲のお題記事はここまで7曲を書き終えていて、その中だと「ラジカル ヒストリー」「グランドクロス」の2曲をマークしている、と前回更新の時に書いたのですが、その後今日の記事のために日々通勤電車内でアルバムを通して聴き込んでいて、ひょっとしたらジュリーなら「風にそよいで」を採り上げるかもしれない、と考えました。
来たる2017年は、賛否どうあれ「オリーブの木」が流行語大賞にノミネートされる1年にならなくてはおかしい、と個人的には思っていますから。

まぁいずれにしても今挙げた3曲は既にお題記事を執筆済。それ以外の未執筆のアルバム収録曲4曲の中からセットリスト予想に適うものとなると・・・。

偶然なのかもしれないけど、このところのツアーでジュリーは毎回、バンド各メンバーが作曲、或いは作詞に関わった曲の中から必ず1曲は採り上げています。
その観点から今回着目したのは・・・。
今日は、昨年華麗にメンバー復帰を果たし、ベースのみならずコーラスでも大活躍している依知川さんが、そのキャリアにおいて初めてジュリーに楽曲提供した記念すべき名曲を採り上げたいと思います。
「麗しき裏切り」、伝授!


どのジュリー・ナンバーもそうだ、と言われればそうなのですが、この曲で最も強烈な印象を残すのはやはりヴォーカルだと思います。発声が独特ですよね。
ファルセットとは言えない、でも地声とも違うハスキーで艶っぽいジュリーの声。
前作『サーモスタットな夏』収録の「恋なんて呼ばない」でも一部よく似た発声が見られますが、「麗しき裏切り」の場合は全編その歌い方で通しています。

そのためこの曲はパッと聴きだととてつもなくキーの高い曲のように感じます。でも実際はさほどでもなく・・・嬰ハ短調のメロディーで最高音が高い「ミ」の音ですから、ジュリーとすれば楽々歌えるキーです(もちろん、普通の男声としては高いですよ!)。
何故ジュリーはこの発声を思いついたのでしょう?

ひとつには、朝水彼方さん(個人的には過去にジュリーへ作品提供した作詞家さんの中で一番好きなかたと言えるかもしれません)の詞の世界に合わせて、ということがあるでしょう。
タイトルにもなった「麗しき裏切り」なる朝水さんのフレーズは、真逆の意を持つ言葉を一列に繋ぐという王道のレトリック。ジュリーはその「繋がり」を官能に求めたようで、狂おしいニュアンスを強調しています。

もうひとつは、依知川さんの作ったメロディーが、例えキー自体は高くなくとも、多くの箇所で高い「ド#」の音から「ミ」の音の間を行き来すること。「全体的には高音域に偏っている」曲なのですね。
例えば最初の歌い出し

ある夜の偶  然 始まりはなり ゆき ♪
C#m      F#m  B7  C#m     F#m  B7

最初の1音が既に「曲中の最高音」からスタート。
その後もとにかく「最高音出現率」の高いメロディー(依知川さんがハイトーンの持ち主だからこそそうなったのでしょう)ですから、ジュリーも歌い方を工夫してきたのではないでしょうか。

さらに言うと、この曲が一見「メチャクチャ高く聴こえる」大きな要因として、作曲者・依知川さん自身による字ハモのコーラス・パートの効果も挙げられます。
これは本当に高い!
依知川さんはこのアルバム以降も基本的に「自分が提供したジュリー・ナンバーでは自らコーラスをとる」ことを通例としていきますが、『第六感』では自作の「麗しき裏切り」以外に泰輝さん作曲の「夏の陽炎」でもコーラスを担当。伊豆田洋之さんがレコーディング参加しているアルバムにも関わらずの抜擢ですから、初の楽曲提供となったこの年既に依知川さんは、「高いパートのコーラスを任せられる」美声の持ち主としてジュリーや制作スタッフの信頼を得ていたようです。

僕は依知川さんが(かつて)在籍していた時期のジュリーのツアーDVD作品をほぼ購入しています。そうすると、依知川さんのコーラスの進化が一目です。
もちろん依知川さんのコーラスは90年代末の最初から上手いんですが、どんどん「ジュリーが求める」スタイルに特化してゆく感じを受けるのです。
そして昨年のメンバー復帰。
改めて直にそのコーラスに触れてみると、依知川さんって高低のパートどちらもいけるようです。それだけ確実にジュリーのヴォーカルも生きてきます。
そんな依知川さんの「コーラス第1段階」・・・「麗しき裏切り」では圧倒的な高音パートが堪能できます。

『第六感』での白井さんのアレンジは、クイーンを意識した曲が多いです。「麗しき裏切り」はさほどそれが強く押し出されてはいませんが、ブライアン・メイばりの「鬼のオーヴァーダブ」はここでも見られ、ギター・トラックは全部で5つ(エレキ3、アコギ2)。
目まぐるしく入れ替わり、時にはハモリ、と繰り出されるアンサンブルは圧巻で、それでいて「軽さ」(良い意味ですよ!)も兼ね備えています。
依知川さんの作ったコード進行がキャッチーですから、その「軽さ」にGSっぽさを感じたファンも多くいらっしゃるのでは?

「依知川さん作曲、白井さんアレンジ」のコンビのジュリー・ナンバーは、依知川さんの直球に白井さんが変化球で応える仕上がりの曲が多いように思います(そのあたりについては今年執筆した「お気楽が極楽」の記事でも触れました)。
「麗しき裏切り」では何と言っても「イントロだけキーが半音高い」という白井さんのアイデアが斬新過ぎる!
ニ短調で始まったイントロが、歌メロでガクッと嬰ハ短調に下がる、という・・・こんなことを平気でやってのける白井さんも白井さんなら、何の問題もなく歌い出せてしまうジュリーもジュリーですよ(笑)。
以前にも貼ったことのある資料ですが


200017

200018

この2000年『音楽倶楽部』誌上でのインタビューで白井さんが「イントロだけ転調したり・・・」と語っている曲こそ、98年の「麗しき裏切り」なのです。

依知川さんのコーラス、そして白井さんのアレンジの効果もあり、「麗しき裏切り」レコーディング・テイクのジュリー・ヴォーカルには先述した独特の発声による「濡れた」魅力を感じます。

僕をどこまで 惑わせるの
   C#m     B   F#m     G#7

麗し き裏切りで
C#m  B    A

こんなはずじゃなかったのに
C#m         B   F#m       G#7

騙される快楽に 溺れて ♪
C#m   B    Amaj7    C#m  B  Amaja7

これが生のLIVEとなると、そこに「熱さ」が加味されるのでしょうね。是非一度体感したい、と夢想しますが果たしてお正月の実現は成るでしょうか。
今回のセットリスト予想シリーズの中では「大穴」印の「麗しき裏切り」。的中したら褒めてください!

☆    ☆    ☆

ということで、ここまでちょっと駆け足で書いてきましたが・・・最後に、お題とは全然関係ない話を。

僕は今、信じ難いほどの『真田丸ロス』に陥っています。そこで、自分の淋しさを紛らわすためだけに

『真田丸』個人的感動シーン・ベスト5

を厳選、熟考の上ここで書かせて頂きます。
興味の無いかたは、ここから先はオマケのコーナーまで読み飛ばしてくださいね・・・(汗)。
まずは5位から。

第5位
そうか・・・胃が痛むか
(片桐且元)

夜中に粗相をしてしまった秀吉の寝具を密かに取り替えんとし、その首尾のため「胃薬を分けて貰えないか」と片桐且元相手にひと芝居打った源次郎。
人の良い且元が心から同情し、ポンポンと源次郎の肩を叩きながら言った台詞です。

三谷さんの『真田丸』では、信繁(源次郎)、昌幸、信幸の主役3人以外・・これまで「戦国武将マニア」以外にはあまり知られていなかったと思われる、サイドを固めた登場人物達が本当に魅力的に描かれました。
そんな中、「賤ヶ岳七本槍」に数えられ豊臣子飼いの武将として出世コースに乗りながら、その後は「猛将」の型から逸れて次第に大坂と江戸の板ばさみとなり苦悩の道をゆくことになる且元は、司馬遼太郎さんの『城塞』を読んで僕が好きになっていた武将の1人。
小林隆さんが演じた且元は僕のイメージ通りで、この「胃薬」のシーンは特に心に残っています。

最終回では北政所と揃って登場してくれた且元。戦国の世の終わりを複雑な心境で見届けました。

第4位
俺と腕相撲しよう!
(加藤清正)

これまで世間的にはあまり好かれていたとは言えない石田三成。今回三谷さんの脚本と山本耕史さんの名演で一気に人気武将の仲間入りを果たしました。
実は僕も少年時代は三成のことを「虫の好かん奴」と思っていました。加藤清正や福島正則といった武断派に憧れていましたからね。
それが20歳の時に読んだ司馬さんの『関ヶ原』でイメージは一変し、三成は個人的に3本の指に入るほど大好きな戦国武将となりました。

ただ、史実として加藤清正との犬猿の仲は歴然で、従来の戦国ドラマではどうしても人気者・清正に対する悪役的配置となることが多かったのも事実です。
ところが三谷さんの描いた三成と清正の関係は斬新でした。仲が悪いなりに清正が常に三成を気にかけ、事あるごとになんとか胸襟を開こうとします。
普段理詰めで動く割には、追いつめられ激情すると無謀な行動に出てしまう三成。「たまってるものがあるなら吐き出しちまえよ」ということで清正が放った「俺と腕相撲しよう!」・・・何とも感動させられました。

イケズな三成は清正の差し出した腕に応えることはありませんでしたが、関ケ原の前、清正だけには決死の意を伝え豊臣の将来を託していたことが、後に本多正信を突き飛ばしてまで秀頼と家康の対面に付き添った清正の回想シーンとして描かれます。

第3位
良き策じゃ・・・
(真田昌幸)

全国の『真田丸』視聴者全員が「私の選ぶベストシーン」を挙げたとすれば、おそらく最も支持を集めるのがこのシーンではないでしょうか。

あまりに有名な「犬伏の別れ」。
しかし従来「昌幸、信繁が豊臣方につき、信幸が徳川方につく」のは昌幸が真田家の生き残りを賭けた策として描かれるのが常でした。三谷さんの『真田丸』ではそれを「信幸最大の見せ場」として用意。
「わたしは決めました・・・わたしは決めたぁっ!」からの大泉洋さん演じる信幸渾身の「策」を聞かされた父・昌幸がうつむきながら小さく発した「良き策じゃ・・・」には背筋が震えました。それまで昌幸が信幸の策を採用したことは皆無だっただけにね・・・。

また、その昌幸の台詞直前に、信繁が兄の策に驚愕しつつも目を見開いてひとつ大きく頷く、というシーンがあります。演じる堺さんの表情からは、「兄上」への信頼、尊敬が一気に溢れ出していました。
堺さん、草刈さん、大泉さん3人それぞれの迫真の熱演が生み出した、屈指の名シーンです。

第2位
源次郎さま・・・!
(きり)

最終回。
千姫を徳川陣に送り届けるべく山道を歩いている途中、きりが天王寺口戦場で馬を駆り孤軍奮闘する幸村を遠くから偶然見つけ、発したひと言です。

カミさんが隣で一緒に観ていなかったら、僕はこのシーンで大泣きしていたと思います。涙を堪えるのが本当に大変でした。
きりは当然、もう幸村がこの戦場から生きて帰ることはないと覚悟を決めています。
千姫を無事送り届け、そのまま徳川陣に居残っていれば、きりは一命を繋いだでしょう。しかし彼女は無言でそっと姿を消しました。

夏の陣直前の「源次郎さまのいない世に生きていてもつまらない」との言葉の通り、きりは来た道をそのまま戻り落城必至の大坂城に向かって歩いたでしょう。
行きがけに偶然幸村の姿を見た場所にさしかかると、もう生きている兵は敵味方ともまったく姿無く、もちろん幸村の姿も見えず・・・きりは思いつめた表情でただ1人、城へ向け一層歩を速める、とそんなシーンすら勝手に脳内に思い描いてしまいました。

第1位
決まっているだろう・・・真田丸よ!
(真田幸村)

僕はこの44話のエンディング・シーン、You Tubeでもう100回くらいは繰り返し観ています。

遂に完成した真田丸を櫓から見下ろす幸村、大助、内記。「ようやくこれで城持ちになった」との幸村の台詞は、ここまで「誰かのために」助け役の人生を歩んできた幸村が今まさに自らの意志で配下を動かし「生きた証」を刻もうとする、その出発点ともとれます。
ふと気づいたように内記が発した「城の名は何とします?」に応えた幸村の
「決まっているだろう・・・真田丸よ!」
これが僕の『真田丸』ベスト・シーンです。

何が素晴らしいって、この44話は冒頭にメイン・テーマが流れずいきなりナレーションで始まり、最後の最後、幸村の「真田丸よ!」の台詞直後にあのヴァイオリンのイントロが来る、という構成なわけですよ!
今回の『真田丸』は音楽も素晴らしかったですが、この44話ほどメインテーマのイントロがカッコ良く聴こえた回はありませんでした。
来年はもう、日曜になってもテレビからあのヴァイオリンとティンパニが躍動する名曲が流れてくることはないんだなぁ、と思うと本当に寂しいです・・・。


いや、長々と失礼いたしました。
もし、『真田丸』を1年ずっと夢中で観ていたよ、と仰る方々がいらっしゃいましたら、みなさまそれぞれの「ベストシーン」も是非聞かせて頂きたいものです。

それでは、オマケです!
昨年でしたか、『中野まんだらけ海馬店』さんで結構お得な価格で購入した『Rockan' Tour '98』パンフレットから数枚どうぞ~。


Rockan01

Rockan03

Rockan04

Rockan05

Rockan06


では・・・ちょっと早いんですけど、次回更新が2016年最後の更新、ならびに今回の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ大トリの記事となります。

個人的な予想では、『祈り歌LOVESONG特集』のセットリストは「じっくり聴かせる祈り&愛の歌」をまず15曲ほど立て続けに歌い、「お年賀」としてノリノリのロック・ナンバーをアンコールで7、8曲、という変則構成を思い描いています。
2014年の『ひとりぼっちのバラード』と似た感じですね。あの時はザ・タイガース再結成直後ということで曲数が少なかったのですが、今回は全20数曲でそれをやる、と。まぁ僕の予想なんて本当に当たらないのですが・・・勝手にそんなふうに夢想して盛り上がっています。
ここまで書いてきた「あなただけでいい」「HELLO」「麗しき裏切り」はその構成で言うと「じっくり」コーナー(LOVESONG)としての予想。次回はどうしましょうか。
2016年を締めくくるにふさわしいお題を、ということでいくつかの名曲を頭に思い描いているところ。できれば大トリに書く1曲くらいは当てたいのですが・・・。

お正月のチケットも届きました。
カミさんと参加する初日・NHKホール公演は望外にも1階席を賜り、気にかけていた初ジュリーLIVE参加の4人の一般ピープルのお姉さま方のために申し込んだフォーラム公演については、2階ではありましたが「立つ」「座る」に迷わずに済み、雑念無くステージに集中して頂けるようなポジションの席だったのでひとまずホッとしました。感想を伺うのが今から楽しみ・・・初日が終わったら、お姉さま方がおそらくご存知でない曲だけをセットリストから抜粋(有名シングル曲は当日のお楽しみ、ということで)したCDを作成、差し上げて予習に役立てて頂くつもりです。

『真田丸』も完結して、いよいよ年の瀬ですな~。
お互い身体には充分気をつけて、2016年の残りの日々を元気に過ごしましょう!

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2016年12月 9日 (金)

沢田研二 「HELLO」

from『HELLO』、1994

Hello

1. HELLO
2. DON'T TOUCH
3. IN BED
4. YOKOHAMA BAY BLUES
5. 卑怯者
6. RAW
7. ダーツ
8. Shangri-la
9. 君をいま抱かせてくれ
10. 溢れる涙

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『大悪名』の申込期限が近づいていますが、みなさまもう振込は済まされましたか?
僕は先の火曜日に申込みました。

関東にお住まいのみなさまは、「あぁ、そうだった」と思い出してくださるかと思いますが、この火曜日はとても風の強い日でね~。
仕事の3時のおやつ休憩にちょっと抜け出して、払込書を裸で片手に持って気軽に最寄の郵便局へと向かったその途中、突然払込書が風に飛ばされ・・・。
瞬時に飛び上がって、「ぱんぱ~ん!」と空中のそれを両掌で捕獲しようとするも失敗。払込書はあっという間に道路の向こう側へ。
風に乗ってヒラヒラと遠ざかってゆく払込書を見失わないようにしながら車の往来が途切れるのを待ち、30メートルくらい全速力で追いかけましたよ。無事捕獲はしましたが、とても恥ずかしかったです・・・。

ともあれ。
『大悪名』申込みを済ませたら、あとはお正月LIVEのチケット到着を待つばかりですね。
僕はどうやらNHKホールの抽選はクリアしたようで(落選通知が来ていないということは大丈夫ですよね?)、初日に参加できるとあらばどんなお席でもOK!
むしろ気になるのは、今回初のジュリーLIVE参加でいらっしゃる一般ピープルの4人連れのお姉さま方のチケット申込を請け負ったファイナル、フォーラム公演。
せっかくの機会ですからなんとか良いお席で観て頂きたいなぁと思っていますが・・・こればかりは運を天に任せるしかありません。

さて今日は、先週執筆した「あなただけでいい」に続きまして、あとひと月ほどで開幕するジュリーお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』に向けての”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ、第2弾更新です。
採り上げる「LOVESONG」は、僕がまだ生で体感したことのない90年代ジュリー・シングルの代表曲「HELLO」をご指名。「あなただけでいい」同様、個人的には初聴時の段階で正当に評価できず、後々になってその素晴らしさに気づいた名曲です。
採譜に自信が無いながらも、気合で伝授!


アルバム『HELLO』、1994年リリース。
翌95年から「自分の歌いたい歌を歌ってゆく」ことを主眼としたセルフ・プロデュース期へと突入するジュリーがその前年、正に当時「時代を手に」していた後藤次利さん、秋元康さんという2人のビッグネームと組んでいた、というのはかなり興味深い歴史です。

産業に特化して音楽業界に貢献する後藤さん、秋元さんのコンビ(決して悪い意味ではありませんよ。真のプロフェッショナルでないと成し得ないことなのですから)とジュリーの組み合わせとくれば、まず「セールスの成功」が期待されたでしょう。
その意味で言えばアルバム『HELLO』は、翌95年からのジュリーの創作姿勢とは真逆の方向性を持つ特殊なスタンスの作品とするべきかもしれません。
でも、今日僕は「実はそうとばかりは言えないのかも」という話をしたいと思っているのです。

後藤さんも秋元さんもこの作品以前にジュリーと深く関わっていました。
後藤さんは『チャコール・グレイの肖像』で圧巻のベースを弾いていますし、アレンジャーとしてだけでなく、『TOKIO』収録の「ミュータント」、『BAD TUNING』収録の「マダムX」といった提供曲は強烈なインパクトを残し、ジュリーのセールス黄金期を支えました。
また秋元さんは『NON POLICY』収録の「ナンセンス」「ノンポリシー」で作詞提供。いずれも素晴らしくカッコ良い名篇ですよね。

そんなお2人が再び「ジュリー」と対峙し心血を注いだ94年のアルバム・タイトルチューン「HELLO」。
後藤さんの作曲とアレンジ、錚々たるメンバーの演奏、そして秋元さんの作詞の観点からの考察で、この名曲を紐解いていきましょう。

まずは後藤さんの作曲から。
先述したジュリーへの過去の提供曲「ミュータント」「マダムX」はいかにも才気走っていて、若い後藤さんが解釈したロックの先鋭性をジュリーにぶつけた斬新な仕上がりとなっています。対して「HELLO」は耳だけで聴く限り、オーソドックスな「見栄え」重視の熟したロック、と僕は当初思い込んでしまいました。
ところがいざ採譜してみると・・・「こりゃ、一体どうなってるんだ?」とウンウン唸ることに。
トリッキーな転調や革新的な譜割などは登場しないのに、細部が難解なんですよ。耳当たりの良いポップ性の裏に施された洗練の技。
これこそプロフェショナル!な作曲です。

僕の実力では限界がありますが、なんとか起こし終えたコードで特に悩まされたのは

今日 まで  生きた時間が
F#m   D#m7-5     E         C#m7

長すぎたせいさ ♪
Bm7      G7

この「D#m7-5」。こんなところにハーフ・ディミニッシュが使われているなんて、聴いただけでは想像もつかないことでした。って、この採譜合ってるのかな?
これが2回し目の展開部で

おま えから  Oh~ サヨナラと
F#m  F#mmaj7    F#m7     D#m7-5

切りだすのがいい ♪
D                    E

ここの「D#m7-5」の方は分かり易いんです。「ファ#→ファ→ミ→レ#→レ」のクリシェですから。そのぶんこちらは美しさが際立ちます。

「いきなりジュリーの声から!」という構成でハードに導入したと思ったら突如ポップに印象を変える0’14”の箇所は、なんと「F」から「F#m」への移行。
大村憲司さんのギターがあまりにもなめらかで、「際どい」進行を自然に聴かせていることもまた特筆すべき点。後藤さんはそこまで計算していたでしょう。

そもそも、ジュリーの名盤は数多くあれど、『HELLO』というアルバムはその演奏面については「オンリーワン」の1枚。天才アレンジャーの後藤さんが腕をふるうにはふさわしい面々が揃っていました。
タイトルチューンである「HELLO」の演奏でもやはり特徴的なのは湊雅史さんのドラムスです。
「同じ曲を2度と同じようには叩かない」と言われる湊さん。「HELLO」においても、リリース・テイクはレコーディングその時限りの名演。繰り出されるフィルの数々、ハイハットやキックのニュアンスなど細かい「その一瞬」を挙げればきりがない中、僕が最も好きなのは2’47”に突然挿し込まれるフィルです。
ここ、普通のドラマーならリズムキープに専念する箇所のはず。歌メロが始まってすぐですからね。
しかしこの湊さんのフィルはまったくジュリーのヴォーカルを邪魔していません。そのセンス、畏るべし!

また、この曲ではギターも鍵盤もそれぞれ3つのトラックが割かれているんです。でも全然「厚過ぎる」感じは受けませんよね?これもまたアルバム『HELLO』全体の古藤さんのアレンジの個性と言えます。
後藤さんは超一流のベーシストですが、アレンジの前面には出ず、隠れたところで凄いことをやっている、という・・・76年のアルバム『チャコール・グレイの肖像』収録の「夜の河を渡る前に」での「俺のベースを聴けい!」的なアプローチと比較すると、これもアレンジャーならではの「進化」なんですよね。
同じことはEMI期の吉田建さんにも言えて、そちらはいずれ「噂のモニター」あたりのお題記事の際語りたいと思っています。

では、秋元さんの作詞についてはどうでしょうか。
僕は正直最初にこの曲を聴いた時(2009年)、秋元さんの詞に惹かれることはなく、むしろ「Lonely」や「so sad」という英フレーズなどがあまりにもありきたりで、ジュリー・ナンバーとしては空回りしている、と感じました。しかし今はまったく違う感想を持ちます。

同アルバム収録の「卑怯者」(こちらも後藤=秋元コンビの大変な名曲!)と並べて聴けば歴然なのですが、流行の先端を走っていた秋元さんが改めてジュリーへの作品提供に臨むにあたり、決して「ギンギンの80年代ジュリー・ロックよもう一度」的な安易な手法をとっていない、ということが分かってきたのです。
かつて秋元さんは

おれの  気紛れだから
       Gm  Gmmaj7       Gm7

ハートを痛めるなんて ナンセンスだよ ♪
Em7-5         Cm     F   B♭             D7


↑ 「ナンセンス」より

と、愛を断ち切るダンディズムを徹底的にクールな主人公に投影して描き、それこそが正に「虚像としてのジュリー」(この表現も悪い意味ではありませんよ!)だったわけですが、「ナンセンス」の主人公たるジュリーも年齢を重ね40代後半となりました。
「別れ」の数ほど自分ばかりか相手の「痛み」までをもハートに抱え、ギリギリのところで辛うじてダンディズムを保つ・・・それが94年の秋元さんが「HELLO」「卑怯者」の2篇に託した「ジュリー像」のようです。
そして、そんな秋元さんのアプローチは驚くべきことに、70年代後半に阿久さんがジュリーに投影していたような「虚像」がここへきて40代の生身のジュリーとリンクしてくる、という不思議な輪廻をも感じさせます。

確かに、後藤さん、秋元さんを擁しても、結果アルバムもシングルもかつてのようなセールスを得ることはできませんでした。
でも、そのことをして「もうセールスなんて関係ない」とばかりにジュリーが次作からのセルフ・プロデュースに踏み切った、とするのは短絡なのかも。
誤解を怖れずに言うと、結果として後藤さんと秋元さんは見事ジュリーの「虚像」にピリオドを打ったのだ、と今なら僕はそんなふうに考えてみたいです。

どうせ愛はいつか 消えてしまうものさ
D             E          A                F#m

かたちがないよ Lonely
Bm7                  D     E

どうせ夢のように 覚めてしまうものさ
D             E         A       C#7   F#7

思い出せずに Lonely Ah ♪
Bm7               D    E     Fmaj7

「かたちがない」虚像から解放され、次に進む道。
そう考えれば、後藤さんがプロデュースし秋元さんも言葉を紡いだアルバム『HELLO』は、建さんプロデュースの5枚から、95年リリース『sur←』以降今なお続くセルフ・プロデュースへの橋渡しとしてふさわしい、ジュリーの歌人生になくてはならない名盤と位置づけることができるのではないでしょうか。

そして・・・それからさらに20余年の歳月が過ぎ、68歳となったジュリーは今やもう完全に「突き抜けた」歌手となっています。
どんなメロディーも、どんな歌詞フレーズも自らに引き込む力を真に得て、来年お正月LIVEのタイトルに堂々の「LOVESONG」を掲げてくれたジュリー。
「HELLO」に登場する「lonely」「so sad」を今のジュリーが歌えば、フレーズの響きが一周してどれほどカッコ良く聴こえることでしょう。
デビュー50周年のメモリアル・イヤーに是非歌って欲しい「シングル曲」のひとつですね。


それでは、オマケです!
手元の94年の資料のネタが現在尽きておりますので、お題曲とはまったく関係ないのですが・・・12月の更新ということで「クリスマス」繋がりから、83年の有名な年末コンサート『沢田君からのクリスマス』(NISSAN NEW BLUE BIRD SPECIAL FINAL)パンフレットから数枚のショットをご紹介したいと思います。

実はこのパンフレットは、先の痔核切除手術の直前に、いつもお世話になっているピーファンの先輩が「術後の療養のお供に」ということでわざわざ貸してくださったのでした。本当に有難いことです。
また、『沢田君からのクリスマス』公演については、2009年執筆の「
BURNING SEXY SILENT NIGHT」の記事へのコメントで、先輩方が色々と教えてくださっています。よろしければそちらもご参照ください。

それではどうぞ~!


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さて次回更新は・・・ちょっと仕事やプライベートの予定がたてこんでいることもあって、間を空けて12月20日のupを予定しています。
この日は僕の誕生日で、毎年「自分と同じ年齢の年にジュリーがどんな曲を歌っていたか」というコンセプトでお題を採り上げています。

僕はこの20日でいよいよ50歳になります。
ジュリー50歳の年にリリースされたアルバムは『第六感』。この名盤の中からお正月セットリスト予想曲を選ぶわけですが、これがなかなか難しい。
既に記事を書き終えている曲ですと、「ラジカル ヒストリー」が有力。また、「いつか一度は生で体感できる」と勝手に確信している「グランドクロス」にも期待できそう。でも記事未執筆の曲となると・・・。
そんな中、どうにか「予想根拠」を捻り出した名曲がありますので、そちらを採り上げるつもりです。

最近職場の同僚の間で「子供が風邪でお腹をやられて学校を休んでいる」という話題がしきりです。
タチの悪い胃腸炎を伴う風邪が子供達を中心に流行っているようで、大人も気をつけなければ。
日々のうがい、手洗いを心がけましょう!

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2016年12月 4日 (日)

沢田研二 「子猫ちゃん」

from『愛まで待てない』、1996

Aimadematenai

1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

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急遽、追悼の記事更新をします。
昨日「あなただけでいい」の記事をupし、カミさんと出かけて帰宅した夜になって、朝本浩文さんの訃報を知りました。

2年前の自転車事故からずっと闘病されていたことは、ジュリーファンなら皆知っていました。深い悲しみが広がっています。
JAZZ MASTERを生でご覧になられていたジュリーファンの先輩方のお言葉ひとつひとつが、突き刺さるように悲しい・・・。
僕は昨夜、改めて朝本さんの年齢を知ってビックリしました。僕とさほど変わりません。JAZZ MASTERの時は20代でしたか・・・建さんや柴山さんよりずいぶん若い、末っ子メンバーだったのですね。
今回はあまりにも早過ぎる旅立ちです。残念でなりません。

朝本さんのお姿を生で観たことはありません。でも映像で、本当にたくさんのジュリーLIVEでの雄姿を拝見していました。
そして、ジュリーのアルバムに朝本さんが提供した素晴らしい名曲の数々は、もう完全に僕の血肉となっています。

「PEARL HARBOR LOVE STORY」
「サーモスタットな夏」
「緑色の部屋」

そして・・・近いうちにちょっと触れておこうと思ってたんです。
来年デビュー50周年のジュリーはきっと「50th Anniversary Club Soda」を歌うんじゃないかな、って。
『ジュリー祭り』で「60th~」として歌われて以来セットリストから遠ざかっている「待望の名曲」なんですよね。
朝本さんの作ったメロディー、コード進行の奥深さを、もう一度ジュリーの歌で味わいたいです。

そんなことを考えながら「30th Anniversary Club Soda」収録のアルバム『愛まで待てない』のCDをとり出し、歌詞カードをパラパラ。すると・・・「えっ、これも朝本さんの作曲だったか!」と再発見。
8曲目「子猫ちゃん」。
いい曲だとは思っていたけど、朝本さんの作品とは認識していませんでした。そう言えばこれまで深く和音を追いかけたことのない曲。朝本さんの曲なら、きっと一筋縄ではいかないぞ・・・。
鍵盤で音をとってみました。


キスをしようとして 肩を抱くたび
C       G               D    G

パチパチ瞬きをする
C       G       F

不思議なことでも しているような
D          G           C#        F#         

恥じらい キラリ若さ ♪
   G           A       B



なんという斬新な進行!
ニ長調の曲のAメロが「C→G」から導入、あれよあれよという間に展開して、ロ長調に着地してサビに向かっています。
こんなアヴァンギャルドな進行に、これほどキュートなメロディーが載っているのか・・・。

超人的な才能、才気に包まれた朝本さんの「内」に秘められた、キュートでヤンチャな少年性を見る思いでした。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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2016年12月 3日 (土)

沢田研二 「あなただけでいい」

from『人間60年 ジュリー祭り』、2008

Juliematuricd

disc-1
1. OVERTURE~そのキスが欲しい
2. 60th. Anniversary Club Soda
3. 確信
4. A. C. B.
5. 銀の骨
6. すべてはこの夜に
7. 銀河のロマンス
8. モナリザの微笑
9. 青い鳥
10. シーサイド・バウンド
11. 君だけに愛を
12. 花・太陽・雨
disc-2
1. 君をのせて
2. 許されない愛
3. あなたへの愛
4. 追憶
5. コバルトの季節の中で
6. 巴里にひとり
7. おまえがパラダイス
8. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
9. 晴れのちBLUE BOY
10. Snow Blind
11. 明星 -Venus-
12. 風は知らない
13. ある青春
14. いくつかの場面
disc-3
1. 単純な永遠
2. 届かない花々
3. つづくシアワセ
4. 生きてたらシアワセ
5. greenboy
6. 俺たち最高
7. 睡蓮
8. ポラロイドGIRL
9. a・b・c...i love you
10. サーモスタットな夏
11. 彼女はデリケート
12. 君のキレイのために
13. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
14. さよならを待たせて
15. 世紀の片恋
16. ラヴ・ラヴ・ラヴ
disc-4
1. 不良時代
2. Long Good-by
3. 
4. 美しき愛の掟
5. 護られているI Love You
6. あなただけでいい
7. サムライ
8. 風に押され僕は
9. 我が窮状
10. Beloved
11. やわらかな後悔
12. 海にむけて
13. 憎みきれないろくでなし
14. ウィンクでさよなら
15. ダーリング
16. TOKIO
17. Instrumental
disc-5
1. Don't be afraid to LOVE
2. 約束の地
3. ユア・レディ
4. ロマンスブルー
5. TOMO=DACHI
6. 神々たちよ護れ
7. ス・ト・リ・ッ・パ・-
8. 危険なふたり
9. ”おまえにチェック・イン”
10. 君をいま抱かせてくれ
11. ROCK' ROLL MARCH
disc-6
1. カサブランカ・ダンディ
2. 勝手にしやがれ
3. 恋は邪魔もの
4. あなたに今夜はワインをふりかけ
5. 時の過ぎゆくままに
6. ヤマトより愛をこめて
7. 気になるお前
8. 朝に別れのほほえみを
9. 遠い夜明け
10. いい風よ吹け
11. 愛まで待てない

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『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1972、single

Anatadakedeii


disc-3
1. あなただけでいい
2. 別れのテーマ

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『ジュリー祭り』(東京ドーム)8周年の12月3日です。
あの宝物のような6時間半のステージから、もう8年が経ちますか~。早いと言えば早いですけど、その後のジュリーの活動があまりに濃密で、たった8年間の出来事だったとは思えないほどです。
それはきっと『ジュリー祭り』以前も、そしてこれからもそうなのでしょう。

僕にとって『ジュリー祭り』は本当に大切な、人生の節目ともなったLIVEでした。
明けて2009年。『Pleasure Pleasure』ツアーMCでのジュリーの決め台詞だった
「私の70越えを見届けてください!」
にビビッ!と来た僕は
「ジュリーの70越えまでに、鉄人バンドのインスト2曲も含めた『ジュリー祭り』セットリスト全82曲のお題記事をすべて書き終える」
ことを拙ブログの大目標として掲げました。
当時は「ずいぶん大それたことを宣言してしまったけど大丈夫かな?」という思いも正直あったのですが、コツコツ積み重ねてゆくうちに気がついてみれば、今日採り上げる「あなただけでいい」の記事が『ジュリー祭り』セットリストから73曲目のお題となります。
今年バンドに復帰した依知川さんがエッセイで「10年あればたいていのことはやり遂げられる」と書いていましたが、本当なんですねぇ。
なるほど、あの日から8年と言う月日が確かに経っているんだなぁ、と実感が沸いてきます。

その大目標も、再来年6月25日の期限までに残すは9曲。ここまで来たら何としてでも達成したいです。

さて、今日の記事からは来年のお正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』へ向けての”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズとなります。
第1弾としてご指名となったのが、『ジュリー祭り』以来ツアー・セットリスト入りがちょっとご無沙汰となっている「あなただけでいい」。
来年全国ツアーではシングル曲をたくさん歌う、とのジュリーのプチ予告もあり、ここ数年はお正月に歌った曲を夏からの全国ツアーにスライドさせるパターンが目立つということもあって、全国ツアーで歌う予定の「レアなシングル曲」がいくつか新年早々セトリ入りを果たす、その1曲が「あなただけでいい」と見ました。

また、ツアー・タイトルが『祈り歌LOVESONG特集』。
「祈り歌」と言うからには今年の新譜から「un democratic love」或いは「Welcome to Hiroshima~平成26年(2014年)8月6日『平和への誓い』より」あたりが歌われ、他にも社会性の高いメッセージ・ソングが採り上げられるとは思いますが、今回の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズでは「LOVESONG」の方に焦点を当てて、4、5曲を書いてゆくつもりです。
ジュリー珠玉のラヴ・ソングを各時代から・・・そう考えるだけでワクワクするじゃありませんか!
まずは1972年、若きジュリーが「禁断の愛」(と僕は思い込んでいます)を狂おしく歌うヒット・シングル「あなただけでいい」・・・張り切って伝授です!



Anatadake11

「許されない愛」同様、僕にこの曲をテレビで歌うジュリーのリアルタイムでの記憶はありません(「あなただけでいい」リリース時のDYNAMITE少年は5才)。
曲自体もまったく知らず、初めて音源を聴いたのがいわゆる”第1次ジュリー堕ち”最初期の2005年。YOKO君に借りた『A面コレクション』でした。

disc-1の3発目ですから印象には残りました。しかしその時は前後収録のシングル「許されない愛」「死んでもいい」ほど強く惹かれることはなかったのです。
これは当時の僕がまだ「自分が好む楽曲のロック性」に頑で見栄っ張りな拘りを持っていたための先入観によるものかと思います。

平尾昌晃さんの作曲は正に「完璧」なのです。それはその頃から分かっていました。特に反復進行の美しさには、「ヒット曲」にふさわしい気品を感じます。
ただ、短調の3連符構成はいかにも「歌謡曲の王道」だと当時の僕は思ってしまいました。それがまったく悪いことではないはずなのに、余計な観念がこの名曲の評価を遅らせてしまった・・恥ずかしい次第です。
確かに今でもオリジナル音源については、ジュリー・ナンバーの中ではロック色が希薄、とは思っています。完全にブラス・ロックと言い切れる「許されない愛」と、井上バンドの演奏によりロックのグルーヴがおし出された「死んでもいい」の間に挟まれ、時代を置いて聴くと目立ちにくい立ち位置のシングルではあるでしょう。
しかし、やはり「そこはジュリー!」なのですね。
僕が「おおっ!」とこの曲を再評価する機会は無事訪れました。『ジュリー祭り』の時点ではまだ気づけていなかった(恥)のですが、生でこの曲を歌うジュリーのエモーションに圧倒されるに至ったのが、DVD『爛漫甲申演唱会』を鑑賞した時です。

「3連バラードに入魂のヴォーカル」とくれば、僕はビートルズなら「オー・ダーリン」、ストーンズなら「アイ・ガット・ザ・ブルース」といった「ロッカ・バラード」を想起します。もちろんジュリーなら「おまえがパラダイス」。まだまだ他アーティストの他の名曲も数多くありますが、そのすべてに共通するのは「長調である」こと。
これが短調の3連でエモーショナルな熱唱となると、日本人の性でしょうかね・・・僕はそこに良くも悪くも演歌のアプローチを連想してしまうのです。
これはジュリーに限らず邦洋問わず、です。

「あなただけでいい」は演歌ではあり得ませんが、最初にCDで聴いた時から、いわゆる「歌謡曲」的な印象が強くありました。ところが・・・『爛漫甲申演唱会』でのジュリーのヴォーカルは、正に「ロッカ・バラード」としか表現できないほどの凄まじい熱唱で。
僕が『ジュリー祭り』以降何度となく打ちのめされてきた感覚・・・「ジュリーはやっぱりLIVEなんだな」を叩き込まれたナンバーのひとつが「あなただけでいい」です。

その上でCD音源を聴き直すと、それまで気づけずにいた魅力を改めて発見できます。
まずミックス。『JULIEⅡ』収録曲とは比較にならないほどヴォーカル・トラックが前面に出ています。いよいよジュリーはその「歌」によってセールス戦略を練られる時期に突入したわけです。
ジュリーのヴォーカル・テイクで最高の箇所はやっぱり最後のハミング部

ラララ、ララララ~~~ァァア~オッ!

のシャウトでしょう。
リフレインのハミングは、エンディングに向けて徐々にディレイが深くなりつつフェイドしていきます。
最後の最後に「終わりです!」みたいな感じでセンターのドラムス、ベースのトラックがいきなり音量を上げているのがいかにも当時のミックスだなぁ、と思えてなんだか微笑ましかったり。
あと、サビのヴォーカルは1番と2番で発声が違いますよね。2番の方が「狂おしい」度が高くて、ジュリー必殺の吐息攻撃が素晴らしい!

また、この曲は演奏は全体的にカッチリした仕上がりなんですけど、よく聴くとドラムスやベースのグルーヴが凄まじいではありませんか。
左サイドのギターもディストーションを効かせたラジカルな単音で要所を締めてくれています。
特にカッコイイのが

どこか  遠く   二人だけで
F#m7-5  Fmaj7    Em  Em7

愛をもう一度 ♪
C          B7

1拍ごとに目まぐるしく変化する和音を土台で支えているのは、ベースよりもむしろギターの単音です。

ホーン・セクションだって、「許されない愛」のような「ブラス・ロック」とは趣が違うけど、左サイドが低音チーム、右サイドが高音チームとミックス分離も綺麗で、特に高音のトランペットが豪快。
いやいや今さらながら・・・「あなただけでいい」、カッコイイ名曲じゃないですか!

『ジュリー祭り』での僕の印象が薄いのは、個人的な「ヒヨッコ」度によるものでしょう。お正月、僕にリベンジの機会は果たして訪れるでしょうか。
なにせ僕のセットリスト予想、お正月LIVEについてはここまで全敗記録更新中なんですよね・・・(泣)。

ここで、先日この記事の下書きにとりかかったところで唐突に思い出した話を。
ジュリーは3連のグルーヴには特に敏感な歌手ですが、ドリフでの志村さんとのコントでそんなジュリーの感覚がひょい、と顔を覗かせたシーンがあります。
以前You Tubeで何気なく観た動画で、今はもう探そうとしても探しきれず(僕は検索というものが本当に下手なのです)、それが何年くらいのコント作品だったのかすら分からないんですけど、志村さんが「危険なふたり」や「あなただけでいい」をメチャクチャに歌い、ジュリーが「違~う!」とばかりにお手本を披露する、といった内容でした。
志村さんは「危険なふたり」についてはデタラメな音階で歌い、肝心の「あなただけでいい」はどんな調子だったか記憶が薄れているのですが、ジュリーの「お手本」の方はハッキリ覚えていて、「この曲はリズムが大切」と言わんばかりに

「あなただけでいい~、ちゃかちゃかちゃか♪」

と伴奏の3連のノリを擬音化していたんです。それを受けて志村さんの「ちゃかちゃかちゃか♪って何?」とのツッコミが笑いどころでした。
これなどは正にジュリーの「身」から滲み出た感覚の表現としてふさわしいものりで、ジュリーが発案したシーンだったのではないか、と僕は推測します。
そうではなく、もし志村さんがそこまで考えてジュリーと打ち合わせしてあのシーンが生まれていたとすれば、志村さんは「天才」としか言いようがないですね。

次に、歌詞についてはどうでしょうか。
先に僕はこの曲のテーマ(歌詞)を「禁断の愛」と思い込んでいる、と書きました。
これはまぁ勝手な個人的解釈で、とにかくアルバム『JULIEⅡ』を愛してやまない僕は、「許されない愛」から続けてリリースされた72年のシングル「あなただけでいい」「死んでもいい」いずれについても、「港町に辿り着いた孤児の少年」と、彼が敬愛する船長の美しい夫人との僅かな時間の熱愛そして必然の別れ・・・このストーリーを重ねて聴いてしまうのです。

忘れようとして 忘れられない
D               G  B7            Em

愛よ 愛よ 胸しめつける ♪
   Am         F#m7-5    B7

もちろん、「許されない愛」の大ヒットを受けて制作サイドにその狙いはあったでしょう。
ただ、『JULIEⅡ』のコンセプトを一手に担った山上路夫さんが続編的に書いた「死んでもいい」と、安井かずみさんの「あなただけでいい」とでは、まったく手法が異なることも明らか。コンセプトとしての「叶わぬ純愛」はあったにせよ、「あなただけでいい」では安井さん
ならではの「女性視点」が垣間見えるのです。
主人公が女性でも成立する・・・そこが「死んでもいい」とは明確に違う点と言えますね。

ところで、この頃のジュリーのシングル曲については、雑誌付録の歌本なども含め多くのスコア資料が手元にあります。
70年代は市販の「スコア」の精度がまだまだ進化途上。それぞれ楽曲解釈がまったく違うスコアの乱立を比較し楽しむことも「今でこそ」の醍醐味と言えます。
ちょっと数例を挙げてみましょう。
まず、先程から述べている「ロッカ・バラード」的な解釈で採譜されているのがこちら。


Anatadake44

↑ 『沢田研二/イン・コンサート』より

現代ならば「8分の12」表記となるであろう「スローかつソウルフルな4拍子」の解釈。
これはギタリストならば最も「あなただけでいい」という曲を「飲み込みやすい」採譜形態ではあるんですけど、1小節内の音符密度が高く、パッと見ではゴチャゴチャしている印象も受けますね。

一方、なんとこの曲を「4分の3」で解釈してしまった衝撃のスコアがこちら。


Anatadake43

↑ 『沢田研二のすべて』より

まず、「ストレート」の意味がまったく分からない・・・大谷投手ばりの超速球ってこと?
一体どれだけ速いテンポに聴こえているんだ、という驚愕の採譜(笑)です。
先の『沢田研二/イン・コンサート』のスコアと比べると4倍速テンポのワルツ解釈。指揮者も大変だ~。

で、結局のところ一番安心する、というか落ち着いて眺めていられるスコアがこちらです。


Anatadake86

↑ 『沢田研二/ベスト・アルバム』より

やっぱり「あなただけでいい」は8分の6の「モデラート」(中くらいの速さ)ですよ。
それをジュリーのヴォーカルが(詞も含めて)「ロッカ・バラード」へと昇華させている・・・そんな解釈が一番しっくりくるのではないでしょうか。


それでは、オマケです!
Mママ様からお預かりしている切り抜き資料は70年代前半のものがメチャクチャ充実していて、記事冒頭にも1つ貼りましたが、「あなただけでいい」と書かれた切り抜きだけでも相当な枚数がございます。
今日はその中からいくつかご紹介しましょう。

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Anatadake14

Anatadake7

Anatadake10

Anatadake4

Anatadake8

Anatadake9


では、次回更新も「シングル曲」のお題予定です。
「シングル」と言っても70年代、80年代の曲ばかりではありませんからね~。
『ジュリー祭り』デビューの僕がまだ1度も生で体感できていない90年代のシングルを、お正月セトリ予想としてこの機に書きたいと考えています。

風邪が流行っているようです。
僕はもうやられてしまった後ですが、これから忘年会シーズンに向け、みなさまどうぞお気をつけて・・・。

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