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2016年7月 9日 (土)

沢田研二 「インチキ小町」

from『いい風よ吹け』、1999

Iikazeyofuke

1. インチキ小町
2. 真夏・白昼夢
3. 鼓動
4. 無邪気な酔っぱらい
5. いい風よ吹け
6. 奇跡
7. 蜜月
8. ティキティキ物語
9. いとしの惑星
10. お気楽が極楽
11. 涙と微笑み

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『un democratic love』全国ツアー8月までの公演のチケットが澤會さんより七夕発送となりましたね。
もうみなさまお手元に届きましたか?

僕もここ数日、改めてツアー・スケジュールを見ながら各会場へのリンクを作成したりしていますが、毎年のことながら今年も濃密な日程だなぁと最確認。
お馴染みの会場、ちょっと珍しい会場・・・今年も全国を駆けるジュリーの気力・体力、畏るべしです。
多くの先輩方が採り上げていらっしゃいますが、『神戸新聞』に掲載された三木市文化会館公演に向けての三木労音さんの記事は嬉しかったですね~。
満員になると良いなぁ・・・。

ちなみに僕は明日の再配達待ちです。チケットを受け取ってから、選挙に行こうと思っています。


さて。
今年はビートルズ来日50周年のメモリアル・イヤーです。テレビで特番があったり、各地で催し物があったりと巷は盛り上がっています。
僕は彼等が来日した年に生まれているので、50周年ってことは自分が50歳になるということでもあり、なんだか複雑な感情も湧いてくるんですけど、僕にとってビートルズ・ナンバーは12歳からずっと聴き続けている本当に特別な音楽。ほとんどの曲をもうスコアを見ずに弾くことができますし、ほんの一瞬でも曲が流れれば「どの曲のどの部分」だと判別する自信があります。
彼等がその後のポップ・ミュージックに及ぼした影響、貢献は計り知れず、邦洋問わず僕が好んで聴くアーティストやバンドの曲には、頻度の差はあれど必ずビートルズへのオマージュを見出すことができます。
もちろん、ジュリーの曲にも。

今日は、幾多ある「ビートルズライク」なジュリー・ナンバーの中から、詞曲、アレンジ、そしてジュリーのヴォーカルすべてが大好きな、痛快無比のロック・ナンバーを、『un democratic love』ツアー・セットリストの予想曲(と言うか切望曲)として採り上げたいと思います。
アルバム『いい風よ吹け』から、いきなり全開のオープニング・ナンバー「インチキ小町」、伝授です!


今日と次回のお題曲は、「依知川さん久々の全国ツアーに向けて」というテーマでの予想。
まず今日は依知川さん作曲作品の観点から、「インチキ小町」をご指名と相成りました。

「インチキ小町」は、依知川さんがジュリーに提供した作曲作品の中で、現時点で個人的に最も好きな曲です。前々から「一度は生のLIVEで聴きたい!」と思い続けていた曲で、依知川さんがバンドメンバーに復帰したことで、ツアー・セットリスト入りの可能性は以前より高まっている、と期待しているところです。

これまで何度か書いたことがある通り、僕はアルバム『いい風よ吹け』については好きになるまでにちょっと時間がかかった曲が多かったのですが、「インチキ小町」は初聴時のイントロ数秒で、大盛り上がり(部屋で1人で踊ってたかもしれない・・・恥)。
「何故そんなに盛り上がったか」と言うのが、ビートルズと関係してくるわけです。

このイントロのギター・・・ビートルズに詳しい人なら一発だと思います。『ホワイト・アルバム』収録曲にしてラウド・ロックのスタンダード、ポール・マッカートニーのツアー・セットリスト常連ナンバーとしても有名な「ヘルター・スケルター」そのまんま。白井さんのギター、完全に狙っていますよ。
ただ、そこでこの「ヘルター・スケルター」へのオマージュが白井さんのアレンジ段階で採り入れられたのでは、と推測するのは早計。オマージュのアイデアは依知川さんの作曲の時点で既に確固としてあった、と僕は考えたいのです。

幼少よりクラシック・ピアノを通じて音楽人生をスタートさせていた依知川さんは、ビートルズとの出逢いで一転、ロックを志すことになったのだそうです。
僕は「ビートルズが好き」と言ってくれるミュージシャンはそれだけで大好きになり、その演奏や作風の中に「ビートルズ的なもの」を探そうとします。
「インチキ小町」ですと、まず冒頭のメロディー・・・ワンコードの激しいビートに載せたメロディーの高揚感は正に「ヘルター・スケルター」。
ベースの3弦を開放で弾きながらノリノリで作曲したんだろうな~、と勝手に想像しています。

依知川さんの工夫は、敢えてこのビートにポップなメロディーを載せたことです。
その「ポップさ」が覚さんの破天荒に楽しい歌詞を生んでいるわけで、曲はオマージュ元とはまた異なる魅力を持つに至る・・・「ヘルター・スケルター」のラウドな面だけをオマージュしていれば、覚さんの詞は「インチキ小町」とはまったく違う「エロック」系となっていたかもしれませんね。オマージュ元をどのように料理するか、それによって最終的にどんな歌になるのか・・・それがこうした作曲手法の醍醐味なのでしょう。

依知川さんのジュリーへの提供曲の多くは、コード進行についてはストレートなものが多いです(だからこそ、今年の超・変化球「犀か象」に驚かされました)。
「インチキ小町」にもブレイク部の転調はあるものの、採譜時の調号の変化までには至りません。
ただそんな中に、同じメロディーやコードを「繰り返す」パターンを良しとせず、細かな工夫を凝らしているのが依知川さんの作曲の個性。

「犀か象」の記事では、ラストのサビのリフレイン3行で「同一のメロディーに違う和音をあてる」アイデアを解説しました。では「インチキ小町」はどうでしょうか。
本当に細かいことですが、これまた依知川さんの素晴らしい工夫があるんです。
普通ならば同じメロディー、同じコードを繰り返すところ、メロも和音も微妙に変えてきている、という。
分かりやすいように、1番サビ部4行から「ズバリ」の歌詞部だけを抜粋して挙げますと

そりゃも う ♪
        G   A
(3行目「そりゃそう♪」もこれに同じ)

災難 ♪
   F A

言うな よ ♪
     B♭ A

すべて同進行、同メロディーで済ませられるところをここまで手を入れるというのは、依知川さんがプリプロの最後の最後まで考え抜きじっくり作曲している証。
また、部分的に冒険進行と言えるのがブレイク部で

ねぇ 試練を 投げない 者だけに
F           E           E♭          D

ねぇ 授かる 平和が あるよね ♪
F          E         E♭             D

半音ずつガクンガクンと和音が下降していきます。このあたりには、依知川さんのハードな好みが反映されているのかもしれません。
ちなみにこのブレイク部の歌詞は、「今のジュリーが歌ってこそ」の新たな説得力がきっと感じられると思うので、そういう意味でも「インチキ小町」セットリスト入りには期待を高めています。

覚和歌子さんのジュリーへの作詞提供はどの作品も曲想とのマッチング・センスが素晴らしく、「ロック系」と「バラード系」でそれぞれ異なる魅力があると思います。で、「ロック系」の中で僕が突出して好きな覚さんの詞が「忘却の天才」とこの「インチキ小町」です。
どちらも女流作詞家ならではの「ぶっ飛び」路線なんですけど、歌の主人公のキャラクターは正反対。でもどちらも不思議に「ジュリーに似合っている男性像」というのが覚さんの詞の凄さではないでしょうか。

僕は男だからよく分からないけど、女性のみなさまの立場から見て、甘い言葉を連ねてくる男と「参った、キミに万歳!」みたいなヤケンパチなお手上げ状態で囃し立ててくる男と、どちらの方が心地よく口説かれるものなんですか?
え、相手がジュリーならどちらでもOK?
いや、まぁそれはそうでしょうけど、一般的には「ヤケンパチの言いなり男」の方が愛情を信頼できる、と僕は思いますよ。「インチキ小町」は正にそんな感じ。
主人公の男と相手の女性にはちょっと年齢差を思わせますけどね(僕には、女性がずいぶん年下のように思われますがいかがでしょうか)。
若い娘さんの「ヤンチャ」を堂々受け止め賛辞すらし得る、度量のある壮年男の歌です(ホントかいな)。

それにしても覚さんの「ヤンチャ」は桁外れですな~。

高速 裸足で 逆さに歩いて 逮捕されてしまえ ♪
D                                                         A

2番のこの歌詞部をジュリーの豪快なヴォーカルで初めて聴いた時は、あまりに愉快痛快な言い回しに笑ってしまったほどです。
でも、それがロックなんだと思うんですよ。「カッコをつけないロックこそがカッコ良い」典型のような歌詞であり曲だと思いました。

「インチキ小町」がもしセトリ入りが実現したら、注目は泰輝さんのピアノです。
『第六感』収録の「グランドクロス」などもそうなんですが(この曲も一度はLIVEで体感したい!)、ギター・ロックと言っても良いイメージに反して、間奏が狂乱のピアノ・ソロという・・・こうした楽器パートの配置がまた白井さんのアレンジの素晴らしいところ。
LIVEのピアノ・ソロではジュリーが(もしかしたら柴山さんも一緒に)泰輝さんのキーボード正面まで出張してヘドバンしてくれるのでは、と期待しています。

また、レコーディング音源では3トラック存在するギターのパートを、柴山さんがどんなふうに組み合わせてくるかも楽しみのひとつ。
0’34”などで繰り出されるTレックス・カッティングは間違いなく再現されるはず。柴山さんがあのフレーズを演奏する様子を想像するだけで燃えてきます。

さらに大きな見どころは、「インチキ小町」には欠かせない賑やかなコーラス。
依知川さんはベースの腕前はもちろん、コーラスの名手でもあります。初めてのジュリーへの提供曲である「麗しき裏切り」(『第六感』)以後、アルバムのレコーディング音源でも自らの作曲作品については積極的にコーラスを担当している依知川さん。当然「インチキ小町」も然り。ステージでも全開で歌ってくれるでしょう。
たぶんGRACE姉さんとのツイン・コーラスのスタイルになるんじゃないかな(個人的に、この曲には女声が噛んだ方が良いと思う!)。

いつもコメントをくださるnekomodoki様が、「インチキ小町」をオープニングに配したセットリストを希望されていましたが、いやぁ僕も大賛成ですね~。
ただ、依知川さんの作曲作品ということで言えば、お正月歌われ
た「お気楽が極楽」がそのまま全国ツアーにスライドされる可能性も高そうですし、他に「あなたでよかった」「Aurora」あたりも考えられるところですが、今回は僕が個人的に大好きな曲として「インチキ小町」をセトリ予想に抜擢した次第です。
さて実際はどうなりますか・・・。


それでは、オマケです!
今日は、2000年発行の『音楽倶楽部』です。
記事自体は2000年とは言え、『ペーパームーン』再演前の時期のようで、その時点での最新シングル『鼓動』のジャケットが紹介されていますので、アルバム『いい風よ吹け』収録曲がお題となった今日の記事のオマケとして適切かと思い選びました。
内容的には、これまでのジュリーの歴史を駆け足で綴った簡潔なもの。「2000年のジュリーの活動に注目!」という主旨になっていますね。



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ちなみに文末に告知のある『秋号』の記事については、以前「A・C・B」のお題の時に添付させて頂いておりますので、再度合わせてご覧くださいませ。


では次回更新は、引き続き「依知川さん久々の全国ツアーに向けて」をテーマにお題曲を採り上げたいと思います。今度は「ベース演奏」に着目します。
お正月には、「マッサラ」でピンスポットを浴びた依知川さんのベース・ソロの見せ場がありました。もちろんこの「マッサラ」が再度歌われる可能性も高いですが、かつてLIVEで依知川さんのベース・ソロをフィーチャーしていた曲は、もう1曲あるんですよね。
しかも、定期的にセットリストに組み込まれるジュリーお気に入りのロック・ナンバー・・・最後に歌われたのが2013年お正月の『燃えろ東京スワローズ』ですから、これはそろそろ来るんじゃないかな。
今回のセトリ予想全6曲の中で、最も「自信あり!」のお題です。お楽しみに~。

明日は参院選です。
みなさま、投票に行きましょう!

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瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!」カテゴリの記事

コメント

そうですよね!「インチキ小町」に決まってますよね。あれほど一度聴いてみたいと言われてましたもの。

同じアルバムの「お気楽が極楽」大好きな私にとっては、実はあまり心に残っていない曲で何故そんなにお好きなのかしらと思い何度も何度も少し前に聴いていました。
そうでした。
その時私が出した結論は、ジュリーの低音に始まって段々とたくさんの音が重なってくるところが良いのじゃないかしらなんて勝手に思っていました。
ビートルズと関係があるとは全く知識がありませんでした。少し当たっているかも!

今年のコンサートの私の初日は岡山です。今回は多分上手側のようですから、柴山さんのお姿に注視してみます。途中のキーボードの音と柴山さん、依知川さんの動きにも注目しますね。

投稿: 澤會佐賀県支部支部長(自称) | 2016年7月11日 (月) 17時49分

DY様 こんばんは。

いよいよあと半月ですね!
「インチキ小町」「麗しき裏切り」「Aurora」何が聴けるでしょうか?
フォーラムは2階前方、友達も一緒なのでお会いするのは難しいかも。
でも大宮ではご挨拶できそうです。
席は一階やや前方・・かな?
久しぶりに打ち上げご一緒できたらうれしいですね。
さぁ、一曲目は何がきますかね~?

投稿: nekomodoki | 2016年7月11日 (月) 22時58分

澤會佐賀県支部支部長(自称)様

ありがとうございます!

仰る通り、低音から始まって徐々に盛り上がり、ジュリーの声が全開になったところで楽器がガ~ン!と噛んでくる冒頭の構成が、依知川さんと白井さんが「やりたかった」ビートルズへのオマージュであり、この曲最大の聴きどころです。ビートルズの「ヘルター・スケルター」の方は徹底してハードなのですが、「インチキ小町」はポップで楽しげなメロディーとなっている点が素敵です。

澤會佐賀県支部支部長(自称)様はてっきり福岡がツアー初日かと思っておりましたが、岡山に参加されるのですね。今月中にジュリーに逢えますね!
岡山には、日頃仲良くさせて頂いている先輩やJ友さんも何人か参加されます。素晴らしいステージになることでしょう。みなさまのご感想が楽しみです。

細切れのお返事ですみません。一度切ります~。

投稿: DYNAMITE | 2016年7月13日 (水) 09時04分

nekomodoki様

ありがとうございます!

依知川さんの作曲作品ということで言えば、最もセトリ入りの可能性が高いのはお正月に引き続いての「お気楽が極楽」かと思いますが、nekomodoki様の「1曲目・インチキ小町」案は本当に魅力的で、すっかりその気になっているところです(笑)。

それにしても、お互いにフォーラムは毎回似たような席を頂いていますね・・・。
フォーラムって、1階後方はちょっと音が籠もるんですよ。2階の方が音自体は良いので、nekomodoki様が羨ましい気持ちもあります。まぁ、「参加できるだけで幸せ」ということに偽りはありませんが・・・。

大宮アフターは先約がありますが、必ずご挨拶には伺います!
YOKO君に神席報告をしたら、早速座席表をチェックしたらしく、「目の前でシェイクしてくれジュリー!」とメールが来ました。
僕としては、2012年以来となるジュリーvsYOKO君の「おいっちに体操・やる・やらないバトル」が楽しみです~。

投稿: DYNAMITE | 2016年7月13日 (水) 16時33分

DY様
 こんばんは。うちにもフェスティバルホールのチケット届きました。19列目……まあ、立たざるを得ない(端ですが)席ですよね。座って全体をゆっくり観たいので2階前の方が理想なんです、個人的には。
 「インチキ小町」アルバム中、「いとしの惑星」「蜜月」と並んで好きな曲です。中間部のあそこ(どこ?)、Fから半音ずつ下がってたんですね、なるほど。ジュリーの曲、コードとか採ったことないもので、大変興味深いです。大体コード進行把握していて、家でたまに口ずさむ程度に弾き語るのは「時の過ぎゆくままに」「追憶」「気になるお前」「おまえがパラダイス」がほとんどです(笑)。

投稿: ねこ仮面 | 2016年7月13日 (水) 23時47分

ねこ仮面様

ありがとうございます!

ねこ仮面様はフェスが今ツアー初日ですか。
拙ブログではいつものように一定期間セットリストのネタバレ禁止期間を設けますが、解禁は大宮のレポートを福岡公演終了後にupする、という形になると思います。フェスのご感想はside-Bの初日フォーラムのレポート記事にてお待ちしていますよ~。

アルバム『いい風よ吹け』収録曲ですと、「いとしの惑星」はセトリ入り要注意かと思っています。歌われれば2010年以来ですね。
タイトルチューンの「いい風よ吹け」もそろそろ出番という感じなんですけど、この曲は下山さん不在で演奏されるイメージが僕にはまったく沸きません。さてどうなるでしょうか。

ちなみに、自宅で気軽にギター1本で弾き語る曲としては、「あなたへの愛」がお勧めですよ!

投稿: DYNAMITE | 2016年7月14日 (木) 08時54分

インチキ小町、これきたらいいなー
俄然楽しみになってきました、
面白い楽しい曲だなぁと思っていました。ビートルズからきてるんですね、
依知川さんのコーラス、前回、わーと思ったほど素敵でした、素敵な曲が多くてまちどおしいです。

投稿: keik | 2016年7月16日 (土) 00時04分

keik様

ありがとうございます!

面白い曲ですよね。依知川さんのメロディーがあって、覚さんのあの弾けきった詞とジュリーの独特の歌が生まれています。

ツアーで歌って欲しいですが…なにせ僕は今まで「セットリスト予想」として記事を書いてきて、的中したのはこの数年間で2曲のみという…。
今年こそ纏めて3曲くらい当てたいものですが…どうなるでしょうか。ツアー開幕、楽しみですね!

投稿: DYNAMITE | 2016年7月16日 (土) 09時52分

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