沢田研二 「オーガニック オーガズム」
from『CROQUEMADAME & HOTCAKES』、2004
1. オーガニック オーガズム
2. whisper
3. カリスマ
4. 届かない花々
5. しあわせの悲しみ
6. G
7. 夢の日常
8. 感情ドライブ
9. 彼方の空へ
10. PinpointでLove
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このところ、気温の高低差が激しいですね。みなさま体調にお変わりありませんか?
僕は、火曜に雨の中を薄着で外回りしたのが祟ったのか、今かなり喉が痛いんですよ・・・。寝込んだりはしていませんが、どうやら風邪をひいたようです(泣)。
さて、”大好きなジュリー・ナンバーをお題にガンガン更新するシリーズ・女性作詞編”は今日を含めて5月内に残すところ3本の記事を予定しています。
本日ご指名の女流作詞家さんは、覚和歌子さん。
まだ執筆していない覚さんの作詞作品、大好きな曲が結構残っています。「いつ暑苦しく語り倒してやろうか」と手薬煉ひいている曲は、ざっと思いつくだけでも「懲りないスクリプト」「恋がしたいな」「インチキ小町」・・・と、まだまだありますが今日採り上げるのは2004年リリースの「エロック」ナンバー。
「エロック」なる呼称が一般的なのかどうか分かりませんが(僕は、以前ひいきゃん様がそう仰っているのを聞いて以来、ブログの文中でこの呼称を愛用しています)、文字通り、エロいジュリー・ロックのこと。
今日のお題はそんな「エロック」の代表格でしょう。先輩方の人気も高い1曲、と認識しています。
アルバム『CROQUEMADAME & HOTCAKES』から、「オーガニック オーガズム」、伝授です!
まず最初に・・・この曲のタイトル、「オーガニック」と「オーガズム」の間に「・」は入らないんですね。
たぶん「ラジカル ヒストリー」同様にこれまでブログでは無意識に「・」を入れて書いてきちゃってると思います。気づいたところから修正していかないと(汗)。
ジュリー・レーベル・リリース以降、完全にキーボードを排したギター・サウンドの追求を始めていたジュリー。前作『明日は晴れる』もゴッツいギター・サウンドではありましたが、アレンジ的にはアコースティック・ギターの活躍が目立ちました。
ジュリーは2004年、「今度は徹底的にエレキの音で、よりハードなものを作って欲しい」とアレンジャーの白井良明さんに伝えたのではないでしょうか。
『CROQUEMADAME & HOYCAKES』では、白井さんの作曲者としてのクレジットは2曲。いずれも「よ~し、じゃあ俺も徹底してハードなロックをぶつけてやろうじゃないか!」と狙い定めて作ったのではないか、と思わせるようなナンバーです。
「感情ドライブ」と「オーガニック オーガズム」。
プログレばりの変拍子構成を擁する「感情ドライブ」、容赦の無いセメント進行の「オーガニック
オーガズム」・・・いずれも作曲段階から「過激なハード・ロック」の仕上がりが約束された特異なナンバーです。
ジュリーはプリプロ段階でこの白井さん作曲の2曲を聴いて「よし、これだ!」とばかりに、それぞれの作詞をGRACE姉さん、覚さんの女性2人に託し、「この曲はエロで!」とリクエストした・・・これが僕の推測する楽曲制作の流れです。結果、2人の女性作詞家によるブッ飛んだ「エロック」競演が実現したわけですね。
GRACE姉さんの「感情ドライブ」の方はいかにもロック的な比喩表現で攻めていますから、中学生が聴いてもなんとか「車に乗って飛ばしている歌」で済むこともあり得ますが、覚さんの「オーガニック オーガズム」は・・・こりゃ完全に成人指定です。
さすがは覚さん・・・男性作詞家に依頼していたら、白井さんのこのメロディーに「いつでもふたりでいきたい♪」なんて詞は載らないでしょう。
男ならもっとカッコつけて、オーガズムを描くにしてもフレーズが小難しくなってくるはず。対して覚さんの表現には、男性視点からすると「うわ、言っちゃった!」みたいな強烈なインパクトがあります。
その辺り、『CROQUEMADAME & HOTCAKES』リリース時、ジュリーのこんな言葉が残っています(大分の先輩がコピーしてくださった資料です)。
作詞を女性に依頼する意義を語るジュリー。
男が書く詞は「女々しい」けれど、女性は「思いきりがいい」のだそうで、覚さんについて、「オーガニック・オーガズム」というタイトルは男じゃ出てこない、と絶賛。
それにしても、ハードな2曲を覚さんとGRACE姉さんに任せて、自らの「エロ」作詞についてはキッチリ「バラードで落とす!」とは・・・どこまで確信犯な色男なんでしょうかジュリーは(←「PinpointでLove」)。
また、「オーガニック オーガズム」は激しいビートに載った「思いきりのいい」歌詞のみならず、その斬新なコード進行によって官能を語ることもできそうです。
先述の通り「オーガニック オーガズム」の白井さんの作曲は、変態的なまでにラジカルでガッチガチのハードな展開で、息つく間も無いほど。
「ムチャクチャな曲を作ったる!」という白井さんの気合がヒシヒシと感じられる・・・これまた「オーガニック オーガズム」と「感情ドライブ」の共通点ですね。
白井さんはきっと、ロックに限らず膨大な楽曲の引き出しから手を変え品を変え音に注入してゆく作曲やアレンジが好みなんだと思います。
僕などでは把握しきれない罠も、きっと数え切れないほど仕掛けられてるはず。そんな中で僕が敏感に察知できるネタと言うと、やはりビートルズです。
白井さんのビートルズへのリスペクトは、白井さんがアレンジを担当したジュリーのどのアルバムからも伝わってきて、その手管はリアル・オーソリティーの域。
例えば『CROQUEMADAME & HOTCAKES』収録曲のアレンジについて言うと、「whisper」に「ノー・リプライ」が隠れていたり、「PinpointでLove」に「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」が隠れていたり。
さらにそれが自身の作曲作品となると注入自由度も高いのか、「オーガニック オーガズム」では、ギター・リフやコード進行で過激な変化球を以ってビートルズ・ネタをブチこんできているようです。
この曲で僕が探り当てたビートルズ・ナンバーは2曲。「ヘルター・スケルター」と「イエスタデイ」です。
ポール・マッカートニーのLIVEセットリストでアンコールの定番ともなっているこの2曲・・・ビートルズに詳しいみなさまなら、「確かに、最初”オーガニック オーガズムのイントロを聴いた時には”ヘルター・スケルター”が始まったのかと思ったけど、このハードな曲にまさか”イエスタデイ”は隠れてないでしょ?」と思われるかもしれませんね。ちょっと解説してみましょう。
コンクリート ひっぺがしたベッドに ♪
A G#7 C#m7 F#
なんとも挑発的なコード進行なんですが、実はこれは
Yesterday all my troubles seemed so far away ♪
A G#m7 C#7 F#m
↑ 比較し易いように、イ長調に移調表記しています
お分かりでしょうか。
起点の「A」から続くコードをすべて「イエスタデイ」進行になぞらえた上で、マイナーはメジャーに、メジャーはマイナーに変換してしまっているという過激な荒技。
いや、偶然そうなったとも考えられますけど、「こういうこと、白井さんならやりかねない」と僕は思ってます(笑)。そもそもこの曲、「メジャーのニュアンスとマイナーのニュアンスを混沌とさせる」というのが進行のコンセプトにあるようで、Aメロにしても冒頭は「Em」で着地は「E」なのです(ホ短調とホ長調の混在)。
で、イエスタデイ進行をいじり倒した後は
種まきする ちょっと野蛮ね ♪
A G#7 F# C#
何と嬰ハ長調に着地しています。
・・・と思ったら、シレッとホ短調のリフが再登場。この破天荒な展開は、白井さんの性癖なのかもしれません。さすがは変態!(大変失礼なことを書いているようですが、気持ち的には絶賛してます)
つまり、詞が載る前からこの曲は「エロック」だったということです。その辺り、白井さんはもう何年もジュリーのアルバムを作り続けてきていたわけですから、「今回沢田さんはエロいロックを望んでいるに違いない!」という以心伝心でしょうか。
好みのエレキ・サウンドで斬新な「エロック」を得たジュリーのヴォーカルは、生き生きと突き抜けます。
驚くべきは、これほどラジカルで煽動的なハード・ロック・ナンバーを、イントロなどで披露してくれる「ヨガリ声」(?)含めジュリーが「歌」をまったく逸脱せずに表現しきっていること。このテーマで、絶対にキワモノにはならないんですよね。それがジュリーの凄さ。
提示された詞曲、アレンジにジュリーが完全に満足していることもあるでしょうが、こういう曲をこともなげに「歌って」しまえるジュリーの能力は特筆もの。
しかもこの曲はアルバム1曲目に配され、さらにはシングル・カットも。ジュリーはこの曲に相当な手応えを感じていたと思われます。
これひとつで『CROQUEMADAME & HOTCAKES』のアルバム全体像を形容できるほどの名曲・・・普段からジュリー以外でもハード・ロックをよく聴いているファンは、特にこのアルバム、この1曲は大好きでしょう。
また、前作『明日は晴れる』では収録各曲の歌詞が少し落ち着いた感じもありますので(もちろんそれはそれで素晴らしいですが)、「過激なジュリー」再降臨を待ち望んでいた多くの先輩方が、この「オーガニック オーガズム」で幕を開けるロックなアルバムを高く評価していらっしゃるようですね。
その意味でも、『明日は晴れる』の1年間お休みとなっていた覚和歌子さんの作詞起用は大当たり・・・そんな2004年だったんだろうなぁ、と後追いファンのヒヨッコは勉強した次第なのです。
そでれは、オマケです!
こちらも大分の先輩がコピーしてくださった2004年の資料です~。元はカラーだったのかな?
それでは次回更新でご指名の女流作詞家さんは・・・この人はもう絶対に外すことはできない特別な存在・・・安井かずみさんです!
昨年僕は「ジュリーが歌った加瀬さんの作曲作品をすべて記事に書き終える」という大それたことに取り組みなんとか達成なりましたが、それは同時にいくつもの安井さんの詞を改めて味わい、感動させられるという貴重な日々でもありました。
今、加瀬さん以外の作曲家とコンビを組んだ安井さん作詞の記事未執筆のジュリー・ナンバーがまだ何曲か残っています。
その中に、個人的に猛烈に好きな1曲があるのです。
ジュリー・ナンバー全体の中でも突出して好きな曲のひとつ。安井さん作詞作品としては、「遠い旅」と同じくらいに溺愛してしまっているシングルB面曲・・・と、ここまで言えばみなさまも「はは~ん、アレだな」と想像がついたりするでしょうか?
「ジュリー・ナンバー女性作詞作品の旅」シリーズも、残すところ2回となりました。
引き続きこのペースで顔晴ります!
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コメント
DY様 おはようございます。
初めて聴いた時は一曲目だったこともあって「お、のりのいいロック♪♪♪・・・でも、歌詞が何なの???」
一通り聴いた後、歌詞をまじまじ見て
(・・・映像はうるさいのに、歌は18禁てないのだろうか?)でした。
でも禁断の果実を食べる前のアダムとイヴみたいで、全然いやらしさを感じないんです。
健全で秘める気すらないエロティック(?)は女性作詞家ならでは、でしょうか。
満足げにそのまんま歌いきるJULIEには脱帽です。
投稿: nekomodoki | 2016年5月22日 (日) 11時19分
nekomodoki様
ありがとうございます!
「平和」を歌いたいのと同じように「官能」を歌いたいジュリー、それが後追いファンの2000年代ジュリーのイメージです。
特に『CROQUEMADAME & HOTCAKES』には強くそれを感じますが、やはり1曲目のインパクトなのでしょうね。
ジュリーにとって「秘めよう」とか「カッコつける」というのが女々しいとすれば、男って女々しいんでしょうね・・・。「女々しい、は男に使う言葉」というのもうなずけます。
投稿: DYNAMITE | 2016年5月22日 (日) 18時24分
DYさま
DYさまより10才程年上の私にとって この曲は恥ずかし過ぎて ダメです。
なんか 女性はイサギいい みたいな流れですが 旧時代の私は 一曲目飛ばして再生……
感情ドライブは ギリギリセーフ 私もR指定かけて頂いたほうが……
でも 2000年以降のジュリーのアルバムは 彼のもとに戻ろう と決意させてくれた楽曲の宝庫です
それまで 私の(ジュリーのではありません)過去の栄光だった彼が
いきなり 生身の沢田研二として わたしの前に君臨したのです。
傷ついて 吠えて 開き直って 昇華して 今を生きている 愛しい愛しい存在となって…
あっ それからyesterday もう コンクリート〜 にしか聞こえませんww
投稿: ぷー | 2016年5月23日 (月) 06時54分
DY様こんにちわ。
時々あるこの様な歌詞の曲を「エロック」というのね。ジュリーが歌うとちっとも気にならなくて平気で聴いているのですが、やっぱり愛車の中でしか聴かないようですね。でも、苦手でもありませんよ。歌詞がちょっとねと思うときは曲の方に集中しているのかな。
要するに全て好きなんです。全て意味を理解したいなと思っているんです。しかし、私の能力ではちょっと無理かなとも思います。残念ですけど。
さて、お次のお題は安井かずみさん作詞のシングルB面曲ですか。B面曲聴くことができないな残念、B面コレクションを再販していただけないかしら?ずーっと待っているんですよ。
安井かずみさん作詞の曲はきっとたくさんあるんでしょうけど、最も好きなのは「片想い」です。切ない歌詞です。初めて聴いたときに胸にジーンと染みました。ジュリーと関係のない話になってしまって申し訳ありません。
投稿: 澤會佐賀県支部支部長(自称) | 2016年5月23日 (月) 16時43分
DY様
こんばんは。サミットに米大統領の広島訪問、それに日本ダービー、忙しい(誰が?)1週間の幕開けです。
お題曲、久しぶりに聴いてみました、なかなか難解ながらもいい曲ですね。ドラムスは私にはチャボバンドでお馴染みの河村カースケさん、ベースは字は違いますが私の上司と同姓同名、詞曲は私の好みとしてはジュリー史上ベストテンに入る「銀の骨」の覚・良明コンビ、評価低い訳がありません(笑)。
「久しぶりに聴いた」というのはジャケット、いやパッケージの問題でしょうか?このアルバムの前後って凝りすぎていて、出し入れが結構面倒というか、収納も他のCDとは分けて置いています。それで何となく聴く機会なくなっていったのかも知れません。あと個人的には次作『GREEN BOY』と印象がごちゃ混ぜになってます。
投稿: ねこ仮面 | 2016年5月23日 (月) 23時06分
お返事大変遅れました。
みなさまの予想通り(汗)、風邪を悪化させPCを休んでおりました・・・。
☆
ぷー様
ありがとうございます!
えっ、この曲ダメですか・・・。
後追いの僕は2000年代前半ジュリーの象徴のような名曲だと思っているのですが。
ジュリー自身が、思いきりの良いエロいロックが好きなのでしょう。この曲のジュリーはある意味世界一エグいロッカーです。考えてみれば、ファンの間でも好みの分かれる1曲なのかもしれませんね。
☆
澤會佐賀県支部支部長(自称)様
ありがとうございます!
僕も好きなアーティストの曲については、「理解したい」という気持ちが強いです。でも、時にジュリーはそういう気持ち抜きで無心に身を委ねて聴いた方が良いのかな、と思うこともあります。
不器用な僕にとって、それができる場がLIVEなのです。ですからこの曲も、他の曲も、1度でもLIVEで体感してようやくスッと自分の中にとりこむことができるように思います。
僕はポリドール時代のB面曲については大枚はたいて「SINGLE COLLECTION BOX」を購入し、そこで初めて知りました。かなりお高い買い物でしたが、購入して良かったと思っていますよ。
☆
ねこ仮面様
ありがとうございます!
確かにジュリー・レーベルの4枚は特殊な形状ですが、このアルバムは普通にCD棚に並べられる大きさですから、僕は手に取る機会も多いです。
その点では、『明日は晴れる』の収納に困っています。しかもCD本体が取り出しにくいですし・・・。
上田さんのベース、好きです。ジュリワンのアルバムでも大活躍でしたね。
もうダービーの季節ですか・・・早いものですねぇ。
僕はもう馬券を買うことはありませんが、今年の3歳馬はメチャクチャ強いのが3頭いる、と言われていて面白そうですね。
投稿: DYNAMITE | 2016年5月25日 (水) 12時40分