沢田研二 「そのキスが欲しい」
from『REALLY LOVE YA !!』、1993
1. Come On !! Come ON !!
2. 憂鬱なパルス
3. そのキスが欲しい
4. DON'T SAY IT
5. 幻の恋
6. あなたを想う以外には
7. Child
8. F. S. M
9. 勝利者
10. 夜明けに溶けても
11. AFTERMATH
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『悪名』公演もいよいよ千秋楽を迎えようとしてます。
今年も見事駆け抜けていきますね、ジュリー。
僕のような貧弱な者が感嘆するのは、今年68歳となるジュリーの体力です。
持って生まれた天賦の才能、ルックス、物事の考え方・・・その3つがあっても、あの素晴らしい体力が無ければジュリーはここまで稀有な歌人生を歩めていなかったでしょう。頭が下がります。
僕など及ぶべくもありませんが、未だいくつかの軽い身体の不調を抱えつつ・・・5月の記事テーマとして矢継ぎ早の更新を頑張ってきた”ジュリー・ナンバー女性作詞作品の旅”シリーズも、今日のお題で最終回。これにて5月の更新を締めくくりたいと思います。
大トリでご指名の女流作詞家さんは、朝水彼方さん。
ジュリーの曲を通じて初めてお名前を知った朝水さんの書く詞が僕は本当に大好きで、特に入れ込んでいる2曲が、既に記事を書き終えている「夜明けに溶けても」と「愛しい勇気」。とても前向きな、健全なパワーを貰えるんですよね・・・。
しかし、朝水さん作詞のジュリー・ナンバーとして絶対に外すことのできない重要な1曲が未執筆でした。
『ジュリー祭り』堕ちの新規ファンは皆、この名曲のインパクトをずっと心に留めているのではないでしょうか。そして、長いジュリーファンの先輩方にとって、この1曲がリリース以降どういうスタンスであり続けたのか、ということにも興味深々。
アルバム『REALLY
LOVE YA !!』から、「そのキスが欲しい」。僭越ながら、満を持しての伝授です!
とにかく、『ジュリー祭り』で本格ジュリー堕ちとなった僕にとって特別な曲です。
冒頭の「そのキスが欲しい♪」から続いてピアノのグリッサンドが鳴っただけで、脳内にパッと甦る東京ドーム2階席から見下ろしたステージとアリーナの光景。
ドームの広い屋根からはまだ午後の陽射しが入りこむ中、真っ赤な衣装(←ご指摘頂きました。正しくは「真っ白な」酋長衣裳でございます。大変失礼いたしました汗)身を包みステージに進み出たジュリーがサッ!と1本指を立てて腕を突き上げるシーンが、年々薄れるどころかますます鮮明な記憶として僕の中に焼きついていくようです。
そこで、このヒヨッコ新規ファンは今ふと思うのです。
「そのキスが欲しい」って、あの『ジュリー祭り』以前、長いジュリーファンの先輩方にとってはどんな立ち位置の曲だったのかなぁ、と。『ジュリー祭り』のあの瞬間のずっと前から、「そのキスが欲しい」は先輩方の「特別な1曲」だったのでしょうか?
大名盤『REALLY LOVE YA !!』からのシングル・カット。
ツアーDVDを見ても、ジュリー自身「シングルはこの曲だよ!よろしく!」といった感じでひときわ気合を入れて歌っているのが伝わってきます。
その後、年が経ってもこの曲は幾度のセットリスト入りを重ね、先輩方の中に「LIVEの定番曲」というイメージは間違いなく確立していたでしょう。
でも、『ジュリー祭り』で歌われたあの80曲(厳密にはインスト合わせて82曲)の1曲目をこの曲が飾ることを予想できた先輩はどのくらいいらっしゃったのかなぁ。
僕は、なんとか『ジュリー祭り』にこの曲を知っている状態で臨むことができました。
”第1次ジュリー堕ち期”最終盤にDVDとCDの『REALLY LOVE YA !!』を購入していたのです。
(僕が「CDよりツアーDVDを先に観た」というジュリー・アルバムは後にも先にもこの1枚だけです。DVDで観た「アルバム収録曲」・・・特に「夜明けに溶けても」「幻の恋」「F.S.M.」「憂鬱なパルス」などに強く惹かれたのでCDも購入、という流れでした)
ドーム二大公演にはいわゆる「中抜け」のファンの先輩方も多く参加されていた、と後になってから認識しましたが、意外に「そのキスが欲しい」を知らなかった、と仰る「中抜け」の先輩も多いと聞きます。僕(とYOKO君)はその点、ラッキーでした。
ただ「1曲目」にこれが来るとは全然考えてもいなくて。
イントロの瞬間、YOKO君と顔を見合わせて何となく「クスッ」としてしまったことを覚えています。
「いやぁ、これですか~!」みたいな感じでね。
なんで2人して笑ったのかなぁ。
「どうやら俺達ヒヨッコが軽々しく描いていた”お祭り”とはだいぶ違うステージが始まったらしいぞ」
という、覚悟というか、自らのヒヨッコ度を直感した照れというか、そんな「笑い」だったのかなぁと今は思ったりしています。
アルバム『REALLY LOVE YA !!』収録曲を俯瞰した時、「そのキスが欲しい」には「シングルならこれしかない!」という「格」のようなものを感じます。
元々、短調のメロディーでガツンと攻める曲は「ジュリー・シングル」にふさわしいイメージがあるのです。これは僕が新規ファンだからこそ分かることなのかもしれません。一般ピープルに近い目線で「シングル」を捉えることができますから。
その意味で、「背中まで45分」や「SPLEEN~六月の風にゆれて」を素晴らしい名曲と踏まえた上で、アルバム『MISCAST』からは「ジャスト フィット」か「デモンストレーションAir Line」、アルバム『PANORAMA』からは「涙が満月を曇らせる」がシングルの「格」を持つ曲なんじゃないかなぁと個人的には考えます。
まぁ、それを絶妙に外してくるジュリーのセンスが好きなんだ、というところまでは僕も成長してきていますが、『REALLY LOVE
YA !!』についてはシングル・カットに「そのキスが欲しい」が選ばれたこと・・・タイムリーでも万人納得の選択だったのではないでしょうか。
でも、セールスは芳しくなかったようです。後追いの僕には、納得いかないんだよなぁ・・・。
ヒットしなかったことに本当に首を捻るくらい、この曲には「大ヒットの要素」が詰まっています。
先に書いた、ジュリー・シングル向きの短調で攻める曲想ということもそうですが、朝水彼方さんの歌詞はジュリーの世間的なヒット・イメージに無理なくリンクし、しかもこの時のジュリーの年齢との乖離も無い、細部まで練りこまれたヒット性の高い1篇。「甘くハードに狂おしい」発信力のある詞だと思うんですよ。
また、覚え易いサビメロに、一度聴いたら忘れられない演奏パートの「追っかけ」を配したアレンジも、「これはヒットするぞ!」という雰囲気バリバリです。
具体的には
そのキスが欲しい(ソファミ♭ド~ミ♭ファ~) ♪
Cm7 A♭maj7
このキーボードね。
僕は『ジュリー祭り』以降のLIVEで「そのキスが欲しい」を体感するたび、このキーボードのフレーズをエアで弾かずにはいられません。僕のような絶対音感の無い者でも鍵盤移動がハッキリと分かる、あまりにキャッチーな音階の素晴らしさ。
その点だけとっても、これほどの曲がヒットせずにタイムリーでジュリーを見ていたファンの間でしか知られずにいた、というのは合点がいかないんだよなぁ・・・。
みなさまはやっぱりこの曲のサビが(ジュリーのステージ上のアクションとも連動して)特にお好きだと思いますが、僕が曲中で一番惹かれるのはBメロです。
RUNTHROUGH THRILLなこの街
A♭maj7 Gm7
あなたはいつでも視線を気にしてる ♪
Fm7 Gm7 Cm
この、「抑えて、抑えて、さぁこれから解き放つぞ!」というSAKI&MATSUZAKIさんのメロディーがスリリングで、完璧な「仕込み」でね~。
あ、わざわざ2番の歌詞を書いたのは、「視線を気にしてる♪」と歌う時のジュリーがいつもメチャクチャにカッコ良く見えるから!
でも、ジュリーのヴォーカルの見せ場、聴かせどころということなら、やはり圧倒的にサビですね。
そのキスが欲しい
Cm7 A♭maj7
熱いダメージ受けるよな
B♭ Gm7 Cm
情熱の雨だ
Cm7 A♭maj7
甘くハードに狂おしく ♪
B♭ Gm7 Cm7
「欲しいぃぃ♪」「雨だぁぁ♪」・・・この小刻みに語尾を下げるメロディーを歌わせた時の威力。僕にとってはジョン・レノンかジュリーか、という素晴らしさです。
しかもこの2行、メロは同じですが語尾のイ行とア行の違いでジュリーの発声のニュアンスがまったく変わるというのがね。「欲しい」は「ねだる」感じで、「雨だ」は「征服する」感じ。つまり、「情熱の雨だ」の箇所ではもう「奪っちゃってる」ように聴こえるわけです。
これは朝水さんが描いた「時間の経過」表現が素晴らしいということでもありますが、それをここまで声で伝えられるんですからねぇ・・・本当に凄いです。
また、「受けるよな」「狂おしく」はそれぞれメロディーが微妙に違うんですけど、その微妙な変化をジュリーの歌は逃さない。僕は「狂おしく♪」と歌うジュリーの「しく♪」の声が、「グッ」と語尾で緊張感を持つ感じが好きです。細か過ぎますかね?
この先も何度も生で体感できる曲だと思っていますが、個人的には常にジュリーLIVEのスタート地点に引き戻される感覚があり、この曲が入っているだけでツアー・セットリストが特別なものになります。
思えば2009年『PLEASURE PLEASURE』ツアーでは、後半1曲目として「インストゥルメンタル~そのキスが欲しい」の『ジュリー祭り』入場編を再現してくれたジュリー。「ドームに来れなかった人のために」という思いからでしょうけど、どちらかと言うと”ドーム堕ち”組への「念押し」効果の方が強かったのでは?
未だ、僕をあの2008年12月3日へと立ち返らせてくれる名曲。今年は歌ってくれるかな?
それでは、オマケです!
93年繋がりということで、音楽劇『漂泊者のアリア』パンフレットから数枚どうぞ~。
それにしても、1993年のジュリーって格別に濃厚ですね~。actが『SHAKESPEARE』、そして音楽劇『漂泊者のアリア』に阿呆劇『三文オペラ』、でもってアルバムが『REALLY LOVE YA !!』という・・・。
さて、5月いっぱい頑張ってきた”ジュリー・ナンバー女性作詞作品の旅”シリーズは、今日の「そのキスが欲しい」の記事をもってひとまず〆とさせて頂きます。
次回更新・・・6月に入りましたら新たにテーマを変えまして、久々に『act』の曲をガンガン採り上げていきます(お芝居繋がりということで、第1回の次回更新では音楽劇『悪名』観劇の感想も少し織り交ぜつつ)。
昨年、J先輩との新たなご縁を頂きまして、遂に購入叶った『act-CD大全集』。
現時点で僕は、全9枚のうち8枚までをじっくり聴き込むことができています。どの作品も素晴らしい!
そんな中から今、イの一番に採り上げたいお題・・・これは、デヴィッド・ボウイが天国へと旅立ったこの年になんとしても書いておきたかった曲。
みなさまは「えっ、actとボウイって何か関係があるの?」と思われるかもしれませんね。
ジュリーファンの先輩方にとってデヴィッド・ボウイの曲と言えば、70年代のジュリーがツアーで歌ったことがある「ジーン・ジニー」でしょう。でも、あまり知られていないけど実はもう1曲あるんですよ。正確に言うと「ジュリーもボウイもカバーしたことのある曲」が。
ともあれ次回から『actを楽曲的に掘り下げる!』カテゴリーにて、いつもより頑張ったこの更新ペースで、actの曲をガンガン書いていきますよ~。
実際にactを観劇されている先輩方からのコメントも楽しみにお待ちしていおります。
よろしくお願い申し上げます!
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