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2015年11月

2015年11月27日 (金)

沢田研二 「ヘイ・デイヴ」

from『JEWEL JULIE -追憶-』、1974

Jeweljulie

1. お前は魔法使い
2. 書きかけのメロディー
3. 親父のように
4. ママとドキドキ
5. 四月の雪
6. ジュリアン
7. 衣裳
8. ヘイ・デイヴ
9. 悲しい戦い
10. バイ・バイ・バイ
11. 追憶

---------------------

毎年、ジュリーの全国ツアーが終わると放心状態になりますが、今年は特にそれが強く感じられます。やっぱり特別なツアー・・・だったんだなぁ。
みなさまはいかがですか?


気をとり直しまして、今日は「ブルース」のお話です。
恥ずかしながら僕は「音楽ジャンルとしてのブルース」について、基本的な根っこの知識がほとんどありません。僕がまず覚えたブルースとは、ローリング・ストーンズであったり、ボブ・ディランであったり、ドアーズであったり・・・60年代から70年代の「ロック」のカテゴリーの楽曲でした。だから、ブルース本来の意味、エッセンスを理解することは未だできていないとは思います。

一方、言わば「人」にまで幅を拡げて、歌手或いはバンドのたたずまい、存在感に「ブルース」を感じる、ということについてはどうでしょうか。
いつも熱いジュリー評を書いてくださる中将タカノリさんの、「沢田研二『こっちの水苦いぞ』ツアー込めた想い」という記事を先日ネットで拝見しました。中将さんは今年の『こっちの水苦いぞ』のジュリーのステージ(声)に「ブルース」を見とっていらしたようです。
実は、僕にはこの点がよく分からなかった・・・。

白状しますと、僕はこれまでジュリーの歌を生で聴いていて、実際にこの目で観ていて、その声に「ブルース」を感じたことは一度もありません。
ロック・シンガーの声にブルースを見る、というのはどういうことなんだろう・・・他の好きなシンガーで今年僕が生でLIVEを観た人で振り返ってみると、ポール・マッカートニーにそれは感じませんでした。でも、ジョン・ハイアットの歌や演奏には「ブルース」を感じたように思えます。
こういう時の「ブルース」って何なのかなぁ?

中将さんがそういう意味で使われたのかどうかは分かりませんが、それは「渋い!」という感覚に近いのかもしれません。
音楽を評して「渋い」と言うのはもちろん褒め言葉。ジュリーのLIVEでも、柴山さんや下山さんのギターを「渋い」と感じることは僕もしょっちゅうあります。
年齢を重ね、歩んできた人生を糧とし技と変えた、若造では出せない味や空気。それをして「渋い」と感嘆するのが「ブルースを感じる」ということなら、ジュリーと鉄人バンドのステージには間違いなくブルースがあると思う・・・でも僕は、ジュリーの「声」にはそれを感じないんだよなぁ。

僕には、今67歳のジュリーの声も未だ「渋み」とはまったく無縁だと思われます。「年を重ねた魅力」は感じるけど、「年を重ねて渋くなった」とは感じません。
まぁこれはあくまでジュリーの歌を受け取る側の感性の話ですから、人それぞれ思いがあるでしょう。
単に僕の感性が劣っているだけのことかもしれませんし、僕はジュリーファンとしてあまりに遅れてきたのかもしれない・・・CO-CoLO時代にタイムリーでジュリーのステージを体感できていたら、その声にブルースを感じていたのかな、と想像してみたり。

僕は最近になって、歌手としてのジュリーを「ロック」で縛る、或いは「歌謡曲」で縛る、という考察に「待った」がかかることが多くなってきました。
安易なカテゴライズに囚われてはジュリーの本質は見えてこない・・・それは、今年加瀬さんの曲を集中して書いていく中で痛切に感じたことでもあったんですけど。
要は、僕自身の頭が長年固まっていた、そしてようやくそれに気がついた、ということだと思います。
はからずも、スージー鈴木さんが『週刊スージー』でこのような鋭い文章を書いてくださっています。
(余談ですが、ページ冒頭のスージーさんのつぶやきに『ちょっとマイウェイ』サントラのお話があってニヤリ。「ラジコン・ブルース」は不朽の名曲です!)

日本語ロックの批評における「はっぴいえんど中心史観」なるものの存在を僕はタイムリーではまったく知らずにいたのですが(ロック系の購読雑誌がほぼ『ロックング・オン』1本だったからかなぁ?)、2010年にいわみ先輩(先生)に大阪でお会いした時、いわみ様も今回のスージーさんとまったく同じことを仰っていたんですよ。

僕は大滝さんも細野さんも『風街ろまん』も大好きだけど、その時のいわみ様のお話、そして今回のスージーさんの文章にはすごく説得力があって。
結局僕は音楽を考える際に、「はっぴいえんど中心史観」にすら辿り着けないほど狭い主観に長い間囚われていて(洋楽至上主義もそのひとつだったでしょう)、それを根底から打ち砕いてくれたのがジュリーだった、と(『ジュリー祭り』で完全ジュリー堕ちして以降も、しばらくは長年の主観から一部脱せずにいましたけどね)。
ですから僕は、ジュリーという歌手をジャンル・カテゴライズすることに今は抵抗があります。

その一方で、「どんなジャンルからの考察にも適する」のもまたジュリーの凄さであるわけです。
アルバム1枚1枚、楽曲1曲1曲を抜粋して、「ロック」から、「ポップス」から、「歌謡曲」から考察観点を絞ってその魅力を探る・・・これは大いにアリです。
つまり、ジュリーを全体像として見るか、突出した「作品」(アルバム、楽曲)として見るかの違い。

枕がずいぶん長くなりましたが、今日は単純に、楽曲ジャンルとしての「ブルース」・・・僕のつたない知識でもなんとか論理的に掘り下げられる、ロック・カテゴリーの中の「ブルース」の観点から、ジュリーが歌ったナンバーについて考えてみたいと思います。
採り上げるのは、74年の大名盤『JEWEL JULIE -追憶-』から、井上堯之さん作曲の名曲「ヘイ・デイヴ」。

70年代のジュリーとそれをとりまくプロフェッショナルの空気を、僕は知りません。
今日は新規ファンの「後づけ」で考察することになりますが(それは毎回か汗)・・・僭越ながら伝授!


まず最初に・・・僕は、堯之さんが作曲したジュリー・ナンバーがとても好きです。
「ジュリーのソロ・ナンバーの中で一番好きな曲は?」という質問にはとても答えられない(決められない)けど、とりあえず70年代の作品に絞って今の気分で厳選に厳選を重ね候補10曲を挙げるとするなら、「愛に死す」「淋しい想い出」「船はインドへ」「ジュリアン」「ウォーキング・イン・ザ・シティ」「U.F.O.」「夜の河を渡る前に」「想い出をつくるために愛するのではない」など、ジュリー本人含めて多彩な作曲家の作品がそれぞれ1曲ずつ並ぶ中、堯之さんの作曲作品だけが2曲入ります。
「美しい予感」と「遠い旅」。
いずれもサビで1音上がりの転調があり、信じられないほどの美しさで元のキーに着地するという「堯之さんオリジナル」の斬新な構成を擁するアコースティック・バラードの2曲。
また、それ以外でも「DEAR」「I am I(俺は俺)」「君が嫁いだ景色」などはたまらなく好きな曲で、極限まで突き詰め細部まで練りこまれたストイックな堯之さんの作品群・・・堯之さんのジュリーへの提供曲は数が少ないだけに、正に「1曲入魂」、どれも他の作曲家作品には無い「異色」の魅力を感じるのです。

そんな中でも「ヘイ・デイヴ」は、特に異彩の魅力を放つ1曲だと僕は思います。

みなさまは、「ヘイ・デイヴ」って「ブルース」だと思われますか?
これはなかなかの難問で、音作りを理論的に見ても、ブルースと言えるところもあれば全然違うところもあり・・・でも僕は「ヘイ・デイヴ」を、作曲者の堯之さんのストイックさが独自に進化させオリジナリティーを加味させた孤高の「ブルース」なんじゃないかなぁと考えています。

ジュリーのブルース・ナンバーについては、『こっちの水苦いぞ』ツアー前に、73年リリース『JULIE Ⅵ ある青春』収録の加瀬さんの作曲作品、「居酒屋ブルース」を記事に採り上げました。
こちらは理屈的にも明快にブルースです。

今年の渋谷公演2日目のMC内容を先輩に教えて頂いてから、僕は堯之さんと加瀬さんという2人の真剣師が揃って70年代のジュリーと共にあり作品制作に心血を注いできた時代に、それぞれの音楽性・・・「ジュリーの曲を作る」ことでどのように個性を違えていたのか、ということに凄く興味が湧いてきているところ。
今日は堯之さん流ブルースの「ヘイ・デイヴ」を紐解いていく中で、加瀬さん流ブルース「居酒屋ブルース」との比較考察を交えながら書いていきますよ~。

「ヘイ・デイヴ」は形式的にはそうとは言えない細かな点も多いとは言え、やっぱり堯之さんがジュリーに「ブルース」を捧げたんじゃないかなぁ、と僕には思えます。
僕が先に「個人的にはジュリーにブルースを感じない」と書いたのは歌手・ジュリー全体像としての話で、加瀬さんの「居酒屋ブルース」、ジュリー自作の「被害妄想」「砂丘でダイヤ」などの例を出すまでもなく、ジュリーの楽曲、作品制作現場にジャンルとしてのブルースの資質、コンセプトは時折顔を覗かせていたようです。

ただし、堯之さんの「ヘイ・デイヴ」は、細部まで煮詰められオリジナリティーを追求した独自のロック・カテゴリーの「ブルース」である、と言えます。

堯之さんが「一曲入魂」の作曲家であることは、「ヘイ・デイヴ」のみならずジュリーへの各提供曲の作風からも疑いようがなく、例えば「ヘイ・デイヴ」については、アルバム『JEWEL JULIE -追憶-』収録曲の中で堯之さんただひとつの作曲作品。
ラスト収録の「追憶」を例外として、明快に「井上バンドの作品」として制作されたこのアルバム。当然収録曲はバンドメンバーのペンによるもので占められる中、提供作曲作品の割合は大野さんが4曲、速水さんが3曲、ジュリーが2曲、そして堯之さんが1曲。
堯之さんはこの時、僅かこの1曲にその技その志を注いでいるのです。単に「アルバム収録の1曲」と軽く捉えるわけにはいきません。
堯之さんは、「ハードなブルース」をジュリーと井上バンドで表現したかったんだと思いますよ。

加瀬さんの「居酒屋ブルース」は王道のブルース進行で導入しますが、こちら堯之さんの「ヘイ・デイヴ」は導入からして独創的。まず、この曲はハッキリと短調である、ということが大きな特徴です(ホ短調)。

長崎の先輩から長々とお借りしてしまっている貴重なスコア本に、「ヘイ・デイヴ」も掲載されています。

Heydave1


↑ 『沢田研二/ビッグヒット・コレクション』より

これがね~、例のごとく困った採譜なのですよ(笑)。
ホ短調の曲を何故か半音上げのヘ短調で採譜し、メロディーの最高音を「B♭」(高い「シ♭」)と解説、キーを下げての演奏を推奨するって・・・本末転倒ですな~。
この曲のジュリーのヴォーカルの最高音は正しくは「A」(高い「ラ」)。まぁこれでも普通の男声では太刀打ちできない高い音ですけどね。
あとは、移調だけならまだしもコード付けに明らかな間違いが多くて・・・スコア通りにを弾き語ると、この曲に「ブルース」の要素は微塵もありません。
でも、「ヘイ・デイヴ」が掲載されているスコア、というだけでこの本は貴重なお宝・・・文句を言わずただ平れ伏し、丁寧に自力修正することで色々な考察ポイントが見えてきます。何事も勉強、努力実践あるのみ!

ということで「ヘイ・デイヴ」のAメロは

酒を飲んで 女口説く奴
Em                         C7

今日もあいつ 夜のパヴに居る
Em                                C7

そして ねえ 水割り ♪
      B7                Em   A7   B7   C7 B7

と、全面的に修正しました。

この1、2行目に登場する「C7」。
ホ短調のもの悲しいメロディーが、歌メロ2小節目にして突然尖り、「シ」の音がフラットします。これがブルースならでは、なのですよ。

そしてリズム。
バッキング・パートが「ずった、ずった、ずった♪」と言っていますよね?
僕がかつてストーンズやディランで覚えた「ブルース」の多くがこのリズムでした(「お前の愛を隠して」や「雨の日の女」など)。これは「居酒屋ブルース」や「砂丘でダイヤ」にも同じことが言えます。

ホ短調のメロディーに、ノッケから「C7」の採用、しかもそれが重厚な3連符のリズムに載っているとなれば、それをして「ヘイ・デイヴ」を「ブルース・ナンバーである」と断ずることはできそうです。
ただし堯之さんの場合はそこから発展させたオリジナリティ-の要素が強く、形式や制約を自ら逸脱し、それがまたジュリーの「無頼」を引き出しているのですね。

さらに。
やはりストーンズやディランなどから学んだ僕の中の漠然としたイメージとして、ブルースの楽曲には「酒」のイメージがついて回ります。これがまた「ヘイ・デイヴ」と「居酒屋ブルース」の、音楽性に止まらない歌詞コンセプトの共通点。
安井さん、サリー両者いずれも文字通り「アルコール度数高め」の詞になっていますよね。
これは、双方の作詞者が作業に取り組んだ際に、目の前の楽曲に「ブルース」をハッキリと感じていたからこそ、のアイデアではないでしょうか。

しかも・・・これは今年6月に「居酒屋ブルース」の記事に先輩から頂いたコメントで教わったことなのですが、安井さんの「居酒屋ブルース」もモデルはデイヴさん、というお話があるのだそうですね。
もちろん「ヘイ・デイヴ」は言わずもがな。僕は詳しく知らないのですが、デイヴさんは当時仲間内で、「お酒好き」で通っていたのでしょうか?
お酒好きはジュリーも同じ(?)ですから、「酔いどれブルース」のコンセプトは楽曲的にも詞の内容的にも、ヴォーカルに「気持ちを入れやすかった」のでは?

それでも、「ヘイ・デイヴ」「居酒屋ブルース」2曲のジュリーの歌い方はそれぞれ全然違うわけです。
これは「演奏面」の影響が大きいと僕は考えています。
ロンドン録音、フル・オーケストラをバックに綿密にアレンジされ譜面化された「居酒屋ブルース」では、おそらくジュリーの「歌入れ」はオケ完成後の作業。
対して「ヘイ・デイヴ」はというと・・・演奏トラックを書き出してみれば歴然なんですが

・エレキギター(左サイド)
・ドラムス
・ベース
・オルガン
・エレキギター(右サイド)

ピッタリ井上バンド人数分のトラック数。
つまりはロック・バンドの「一発録り」です(サリーのベース最高!)。ここまでハッキリと「1人1トラック」を徹底しているからには、ジュリーのヴォーカルも演奏と同時レコーディングだったのではないでしょうか。

提示されたオケを叩き台に「取り組む」時間を与えられて技巧的な表現に踏み込んだ「居酒屋ブルース」。
井上バンドの尖ったロックな生演奏に身体を預けて本能を解放させた「ヘイ・デイヴ」。
どちらが優れている、劣っているということではなく、それぞれのテイクに感じられるジュリーという歌手の稀有な天性。当時の楽曲制作の場で作曲者とプロデューサーの情熱、志が2曲違った形で完成を見たことへの賛嘆。今僕にはそれしかありません。

もうひとつ「ヘイ・デイヴ」と「居酒屋ブルース」の比較で面白いのは、いずれも調号の変わらない平行移調を作曲手法に採り入れていることです。
短調で導入する「ヘイ・デイヴ」はサビで長調に(ホ短調からト長調)、長調で導入する「居酒屋ブルース」はサビで短調に(ヘ長調からニ短調)移調します。
理屈は同じ平行移調。でも長調部と短調部のヴァースの配置は真逆なんですよね。

お前の持ってる 優しさも
G       Bm          Em    D

お前の隠した 哀しさも
G       Bm       Em    D

俺は 知ってるよ ♪
   C  C7         B7

間に1本、骨太な柱を投入された「ヘイ・デイヴ」。
対して「居酒屋ブルース」の移調は、日本人が好む柔らかいワビサビを挿し込んだものです。
フットワーク軽く大衆性を加味した加瀬さんと、ストイックに構成を突き詰め先鋭性を重視した堯之さん。なんともプロフェッショナルな、お2人それぞれの個性ならではの相違点と言えるのではないでしょうか。


こうして、今日は堯之さんの「ヘイ・デイヴ」を、「ブルース」の共通点から加瀬さんの「居酒屋ブルース」と比較することで考察してみました。
今年、同じ74年リリースの「追憶」の記事で書きましたが、この時期に若きジュリーが「僕の歌はロックでも歌謡曲でもない」と自己分析し、「沢田研二というジャンル」なる言葉を何のてらいも見栄もなく将来に見定めていたのは、本当に驚くべきこと。
それは、加瀬さんや堯之さん、大野さんのような素晴らしい作曲家が多彩な角度から様々なタイプの楽曲をジュリーに提供していく過程、それらの曲を歌ってゆく道筋、経験と無縁ではなかったと思います。

ひとたびジュリーが歌えば、ブルースであれ何であれそれは瞬時に「沢田研二」というジャンルとなる・・・そんな中で、作曲者の狙った「ブルース」がそれでも作品に強い意志で残されているのは、忠実にブルースの形式を踏襲した加瀬さんの「居酒屋ブルース」よりもむしろ、変則的な仕上がりのブルースとなった堯之さんの「ヘイ・デイヴ」であるように僕には思われます。
この場合の比較対象曲は加瀬さんの「居酒屋ブルース」だけではありません。
理屈として「ブルース」の形式にのっとっている「マンデー・モーニング」「DIRTY WORK」「a.b.c...i love you」「砂丘でダイヤ」「まほろばの地球」・・・ジャンルを超越したジュリーのヴォーカルが載ってなお、作曲者の狙った「ブルース」色はいずれと比較しても「ヘイ・デイヴ」にこそ強く残されている・・・そう思うのです。

僕は堯之さんのステージを生で観たことはまだ無いんですけど、それが実現した時、ひょっとしたら僕は中将さんがジュリーに見たような「ブルース」を、堯之さんに見ることになるのかもしれません。

最後に。
自分でも「信じられない」と今では思うのですが、この遅れてきた新規ファンである僕も、ジュリーが歌う「ヘイ・デイヴ」を生で体感したことがあるんですよね。
2009年お正月LIVE、『奇跡元年』。
あの時、「ヘイ・デイヴ」の
セットリスト入り(アンコール1曲目)がどれほど貴重なサプライズだったのかすら分からず、本格ジュリー堕ちして年を明けたばかりの僕は、ジュリーが「ねえ乾杯♪」と歌いながら天国のデイヴさんと盃を交わしたあのシーンを、渋谷公会堂の1階最後列から観ていました。

そう言えばあの日ジュリーは、MCで堯之さんのことも話してくれたんだったなぁ。
あの日、僕は「ヘイ・デイヴ」を歌うジュリーに少しでも「ブルース」を感じていなかったのかな?
それを今思い出すには、当時の僕はあまりにジュリーファンとしてヒヨッコ過ぎたのでした・・・。


それでは、オマケです!
今日は、Mママ様からお預かりしている数々の資料の中から、74年『プレイファイブ』のショットをどうぞ~。


1974006

Playfive74011

Playfive74012

Playfive74013_2


さて、次回更新は12月3日の予定です。
毎年この日は『ジュリー祭り』記念日として、あの2008年二大ドーム公演のセットリストの中からお題を採り上げることにしています。
同時に12月から拙ブログでは、来たる2016年お正月LIVE『Berbe argentee』に向けて恒例の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ期間に突入しますので、まずは『ジュリー祭り』セットリストで未執筆の曲の中から予想お題の記事を、ということにもなります。
「この曲については知識も経験も無く、楽曲制作の背景も分からず、一体何を書けばよいやら・・・」とかねてから悩んでいた名曲。つい最近、偶然ながら先輩から頂いたコメントで絶好のテーマを得ましたので、この機に張り切って考察に取り組むつもりです。

いよいよ本格的に冬がやってきたようです。
これから忘年会のシーズンですが、みなさまも風邪やインフルエンザにはくれぐれもお気をつけて!

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2015年11月18日 (水)

『ロックジェット』63号!

ちょっと、短い時事ネタの記事更新です。

今日は、朝から本屋さんに走ったジュリーファンも多かったでしょう・・・『ロックジェットVol.63』(表紙は尾崎豊さん)が本日発売されましたね~。

Rockjet63

「どんな内容なのか分かってから購入するかどうか決めようかな」とお考えの慎重なファンのかたもいらっしゃると思いますので、ここで熱烈推薦させて頂きます。

躊躇は無用。
ジュリーファンならば、そして鉄人バンドのファンのみなさまも、是非ともお買い求めください!

素晴らしい紙面構成になっています。
思えば、『昭和60年のVOICE∞』レポートが掲載された同誌『Vol.60』を手にした時、「こりゃ、『ロックジェット』はジュリーファンのニーズを的確に掴んだっぽいなぁ」と思ったものですが、それは今回の『Vol.63』で完全に証明されたと思います。

とにかく現在進行形のジュリーLIVEの写真の数々は、とてつもなく貴重。
今回も、素敵過ぎるショットが何枚も掲載されていますよ~。「ほえ~っ」と見とれてしまったほどです。
もちろん鉄人バンドそれぞれのショットもあり。
加えて、ジュリーの写真に堂々と憑依している下山さん・・・と思ったら憑依しているのは下山さんだけではなく、ジュリーの後ろでギターを弾く柴山さんの、「あんなシーン」もバッチリ。
これはもう永久保存版ですな~。

LIVEレポートは、お馴染み「ロック姐さん」こと佐藤睦さんが、初日フォーラムと渋谷公会堂について、纏めた形で書いてくださっています。
加瀬さんのことももちろんですけど、ツアー日程変更のジュリーの決断についても触れてくださっていて・・・「うんうん」と頷きながら読みました。
一部誤植もありましたが、僕にとってはとても嬉しい誤植でした。本名が「まさし」なので・・・(って、まだご購入でないみなさま、ワケ分からない話ですみません)。

さらに、少しの間お休みしていたヒロ宗和さんによる「沢田研二・全アルバム解説」の連載も復活。
「今のタイミングであれば、ここまでは書いておくべきだろう」というアルバムまでしっかり書いてくださっていますから、今回はボリューム満点の内容です。
『ロックジェット』のような雑誌で、ジュリーのすべてのオリジナル・アルバムの解説を書き上げるとなれば、間違いなく歴史に残る偉業。今回のヒロさんの文章からは、「俺はそれをやるんだ」と覚悟を決めたと言うのか、並々ならぬ気迫を感じました。
ここは是非とも2009年の『Pleasure Pleasure』以降のマキシ・シングルも「アルバム」と同列にお考え頂き、ヒロさん独自の視点からの『ロックジェット』らしい解説で、この偉業を成し遂げて欲しいものです。


さて、年末に向けて何かとバタバタしております。次の考察記事のupは11月末になりそう。
次回更新までしばしのお時間を頂くことになりますが、みなさまにおかれましては、『ロックジェットVol.63』をお供に、素晴らしかった『こっちの水苦いぞ』ツアーの余韻にどっぷりと浸りつつお待ちくださいませ~。

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2015年11月14日 (土)

2015.11.3東京国際フォーラムA 沢田研二『こっちの水苦いぞ』セットリスト&完全レポ

お待たせしてすみません!
『こっちの水苦いぞ』ツアー・ファイナル、11.3東京国際フォーラム公演のレポート、ようやくお届けいたします(でも、当初自分で思っていたよりはずっと早く
書き終えることができたんですけどね)。

今、最後の仕上げにこの枕の部分を書いています。
いつものことですが・・・大長文です。LIVEの様子を書くこともそうですが、素晴らしかったツアー最後のステージのレポートということで、改めてそれぞれの曲の歴史や個性を振り返ってみたり、関連画像を探して添付したり・・・そんなこともやってます。
加瀬さんを思えばどうしても寂しい、しんみりしてしまう気持ちというのも書いていると確かにあります。
でも
なるべく「本当に楽しかった、本当に凄かった」この日のステージそのままの感動を書こうと心がけ、あまり感傷的にならないよう努めました。

長くなりますのでお茶菓子をご用意の上・・・それでも済まない場合は、お身体、特に目をいたわって頂くためにも、3日くらいに分けてお読みくださいますよう・・・。

本文に入る前にひとつだけ、LIVE直前のお話を。
僕はこの日のフォーラム公演、ジュリーがかけるBGMは「FRIENDSHIP」だろうと決めこんでいました。ツアーの最後はジュリーと加瀬さんの友情の歌を会場に流して、キレイに纏めるんだろうなぁ、とね。
ところが、開演前に計4人の先輩方と、オープニングBGMについてお話する機会がありまして、みなさん長いファンの先輩ばかりなんですけど、4人全員「いや、ジュリーは間違いなく”僕達ほとんどいいんじゃあない”で〆る!」「DYさんまだまだ甘いわよ~」と。

結果はみなさまご存知の通り。
考えてみれば、いつもそうなんですよね~。僕がいくら「今日、ジュリーはこう来るだろう」と思い込んでそれをお話しても、「いやいや」と諭し、(後から思えば)当然の予想を伝授してくださるジュリーファンの先輩方がたくさんいらっしゃることが、僕は嬉しい!
そして、伸びかけた僕の鼻をその都度、何度も叩き折ってくれるジュリーは大きい!頼もしい!
未だジュリー道の入り口近辺をウロウロしている自分は、本当に幸せで有難く深いものに触れているんだなぁ、と改めて実感した次第です。

午後4時、東京国際フォーラムの広い場内に流れた「僕達ほとんどいいんじゃあない」の加瀬さんの歌声。遂にツアー・ファイナルの幕が切って落とされます。
開演!


1曲目「
危険なふたり

741202

初日フォーラム、大宮では気づけていなくて(と言うか見えなくて)、7列目で参加した川越でまず初めて気づいたのは、ジュリーが入場してくる経路でした。
BGMの「僕達ほとんどいいんじゃあない」が終わろうかというタイミング、鉄人バンドより少し遅れて入場するジュリー。今回はドラムセットの後ろを通って中央から登場する最近よくあるパターンではなくて、普通に下手側からゆっくりステージに歩いて入ってくるパターンだったのですね。

この日も本当に凄い拍手に迎えられて入場したジュリーがセンターに位置どると、すぐさまGRACE姉さんのフィルから「危険なふたり」のイントロ。
パ~ッとステージが白い光に包まれて・・・とうとう『こっちの水苦いぞ』全国ツアー、加瀬さんを送るツアー千秋楽のステージが始まってしまいました。
この時点でもう寂しさが・・・。

この日ご参加のみなさまは、「今日は最後にオマケがあるかな?」と考えていらっしゃいましたか?それとも無心で臨まれていらした・・・?
僕は、あれこれと考えていました。

ツアーが始まった頃には
「オーラスの会場(追加で発表があるだろうな、とは思っていました)では”渚でシャララ”を踊るんじゃないか、とまず思って、「いや、それはあったとしても12月3日のワイルドワンズのLIVEだろうな」と思い直して、結局この千秋楽の前には「”ZUZU SONGS”の時みたいに、”危険なふたり”を2回やってくれるんじゃないかな?」
と予想していたんです。
これも、僕の甘さと増長をジュリーがこの日見事打ち砕いた一例と言えます。

ジュリーは「年上のひと」を物色こそしていましたが、「美しすぎる♪」は声に出して歌っていました。
そうすると、「うつくしすぎ~る♪」からの「ちゅくぎゅん!」(←柴山さん)がバッチリ決まるんですね~。

泰輝さんはオルガンのカッティングとストリングス。
ということは・・・やっぱり下山さんがベースラインなんですよ。ステージからは明らかに低音エイト・ビートの音が聴こえていますからね。
これも「ねじれた祈り」の柴山さんのように、コンソールでミキサーさんが音色を設定して出力を切り換えているのか、どうなのか。下山さんの右手は、常に忙しくピッキングで動いていました。

2曲目「
恋は邪魔もの

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イントロ、ツイン・リードを弾きながらせり出してくる柴山さんと下山さん。エアギターのジュリー。
今ツアー・セットリストの中でも、先輩方の支持が高いこの曲・・・僕は今日こそは、との思いでみなさまが絶賛するジュリーの歌とアクションを最後に目に焼き付けよう、とジュリーばかりを目で追いました。

「恋は邪魔さ♪」のサビ(お客さんの手拍子が4拍打ちになります)に突入する直前に「さぁ、行くぞ」とばかりに腕をバッ!と拡げる動きがまずカッコイイ!
あと、今さら気づいたのですが、例の「ちゃ~ん、ちゃ~ん、ずっ、ちゃ~♪」のキメのアクションは、最後の1回だけ腕の振りが違うんですね(ずっ、ちゃ~♪」と逆手で振り上げるトコは同じですが)。
僕がこれまで「手刀」と書いていたのは最後の1回のアクションのことで、それまでは手刀と言うより剣をさばいているような大きな動きをしていたようです。

川越では「あっは~ん♪」を3回で終わらせてしまって勇み足で最後の手刀アクションに移行し、「えっ?」と鉄人バンドを振り向いて焦っていたジュリーでしたが、この日はバッチリとキメました。
リリース当時も、テレビやステージで歌う時には同じアクションだったのでしょうか?

~MC~

「気のせいでしょうか・・・何やら重~い空気が漂っているような気がしてなりません」
と、ジュリーがで言った時僕は「去年のことを思い出して、気を張っている僕らの雰囲気を察しているのかな」と思ってしまいました(終演後の打ち上げでのお話では、同じように考えた人も多かったみたい)。
ジュリーはすぐに加瀬さんの話に繋げていたけど・・・僕は「ジュリーも(去年のことを)気にしているのかな。スーパースターでありながら、そういうことを気にしちゃうところがイイんだよな~」と考えたりして。

「今日のこの日を心待ちにしてくださった方・・・仕事を休んで来てくださった方・・・今日が二度目、三度目四度目の方もいらっしゃるかと思います。既にそういう雰囲気をヒシヒシと感じておりますが・・・(笑)」
ハイ、僕は四度目です(汗)。

〆の言葉は最近の定番で。
「鉄人バンドともども、最後まで一生懸命、つとめます!」

3曲目「
許されない愛

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「つとめます!」で片膝をついたジュリー、少し遅れてそのジュリーに当てられていたピンスポットがサッと消えると、「許されない愛」のイントロが始まります。

GRACE姉さんの重厚なリズム、泰輝さんの狂おしいハモンド、柴山さんの荒ぶるカッティング。
そして下山さんのエロティックなリードギター。
そう、今まで表現できずにいましたが、この曲の下山さんのギターは、エロいのですよ~。
曲の物語の主人公である少年が駄々をこねつつも未練を断ち切ろうとするシチュエーションは、クールな下山さんのキャラクターとはかけ離れているように見えるけれど、ベッタベタな粘着の愛欲表現は共通しています・・・って、なんだかとても失礼なことを言っていますかね、僕は(汗)。
でも今回の「許されない」での下山さんのリードギターは、ベタ~っと曲に絡みつく、ジュリーの歌にまとわりつくような独特のエロスがあると思います。

で、さらにこの日「おおっ!」と思ったのが、2番直前で突如炸裂したGRACE姉さんの3連符。
今までこんなふうに演奏してましたっけ・・・自信は無いんですが、ここまで激しくロール気味に演奏したのは初めてのような気がします。
「今日はジュリーだけじゃなくてGRACE姉さんもひと味違うぞ!」と思った瞬間でした。そんなGRACE姉さんの気合は、アンコールでの「気になるお前」で全力全開となるのですが、それはまた後で。

「逃げて、ゆきたい~♪」をジュリーは声が枯れるまで思いっきり伸ばして、背中を反らせて天を向いたところで嗚咽ともシャウトとも言えない叫びへと繋ぎ、最後のタムのキメに合わせて身体を前方に戻します。
なんちゅうカッコイイ曲でしょうか!

何処の会場でしたか、アルバム『JULIEⅡ』についてジュリー曰く「(ミックスの)僕の声が小さい。でもいいじゃん、カッコイイんだから、と思っていた」と。
結局ジュリーの声を大きめに処理してからリリースされたそうですが(それでも他アルバムと比べるとヴォーカル・バランスはかなり小さめなんですけどね)、その話を聞いて、ジュリー自身も当時『JULIEⅡ』の音作りを「カッコイイ」と思っていたんだ、と僕はとても嬉しく思ったのでした(個人的に一番好きなジュリー・アルバムなので)。
それを今年2015年のツアーで、レコーディング音源以上のカッコ良さで再現してくれたジュリーと鉄人バンド・・・「感動」のひと言です。

4曲目「
死んでもいい

Sindemoii13

「許されない愛」から「死んでもいい」へと繋がる今ツアー・セットリスト。正に怒涛の流れですが、この2曲は色々と似たところがありますよね。
いずれも72年リリースのシングル、当然作曲は加瀬さん。歌詞のコンセプトもほぼ同じですし、短調のハードな曲調に、豪快なブラス・アレンジ。
でも、やっぱりそれぞれ何処か違うシチュエーションを歌うジュリーの魅力を感じます。

「許されない愛」では、主人公がとり残された時間に追いつこうとする焦燥、「死んでもいい」では追いついた時間を逃すまいとする束縛の意志、でしょうか。
この時間軸の違いを、ジュリーの歌で初めて感じます。歌詞だけでは、そこまで分かりませんよね?

ジュリーは、ツアー後半で「愛の、愛の、愛の♪」の発声を変えてきたようです。大宮と川越がずいぶん違っていましたので、川越が特別だったのかと思っていたら、このフォーラムも川越と同じ歌い方でした。
小節の前からタメを作るところは変わりませんが、初日、大宮のようなハスキーに吐き出す歌い方ではなく、地声のド迫力で攻めてくるのです。
喉の使い方、なのでしょうね。ツアー途中で風邪をひいてから意識的に変えたのかなぁ。

また、演奏面での「許されない愛」と「死んでもいい」最大の違いは、リード・ギター。
こちら「死んでもいい」の柴山さんのギターも「許されない愛」の下山さん同様、相当にエロいんです。ただ、下山さんのような「絡みつく」感じではなく、「ねじ伏せる」感じに聴こえます。それは2人の性衝動、もとい「単音衝動」の違いなのでしょうか。
どちらにもSッ気は感じますけど(笑)。

5曲目「
白い部屋

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同じように感じていらっしゃるかたも多いのかな・・・僕は、今回のセットリスト中、ツアー前と今とで「白い部屋」ほどイメージが大きく変わった曲はありません。
これまでこの曲が僕には「普遍的な悲しい失恋の歌」と聞こえていました。歌詞から「特定の誰か」を思い浮かべることなど、考えもしませんでした。
それがまさか、これほどまでに加瀬さんのことを重ねて聴いてしまう歌になろうとは・・・。

今ツアーでこの曲を歌うジュリーを見るたびに、2番Aメロの同じところでジュリーは歌いながら嗚咽してしまう・・・そこでようやく気づかされた「白い部屋」の意味。
ジュリーに、加瀬さんの部屋で2人レコードを聴きながら過ごした夜が実体験としてあったことは間違いないでしょうし、そこで加瀬さんは本当に「ふざけながら踊ってみせた」ことがあったのかもしれません。

「白い」=「空白」「不在」「無」。
それまでいた人が今はいない、という意味での「白い」部屋・・・以前書いた考察記事では、そんな歌詞解釈にまったく触れることができていません。
恥じ入るばかりです。

演奏でこの日気づいたのは、1番Aメロだけ誰かがハッキリとベースラインを弾いていること。
柴山さんは空間系のエフェクトでアルペジオを弾いているので違います。じゃあ下山さん?と思ったのですが、この日はとてもよく下山さんが見える席だったにも関わらず、「白い部屋」の最初のAメロの時点ではジュリーと柴山さん2人だけに照明が当てられていて、下山さんは影しか見えなくて。
ならば影だけでも泰輝さんの手元の動きを見れば、ということになるんですけど・・・実は僕の席からですと、ジュリーが定位置にいる時すっぽりと泰輝さんを覆い隠してしまっていたという・・・無念。結局ベースの演奏者は分からずじまいでした。
まぁ、世の中には「4鉄封じ込め御席」を引き当ててしまわれたかたもいらっしゃるわけですから・・・。

僕の席は、姿こそ見えなかったけどハッキリ「泰輝さんが出している」と分かる音は、バランス良く耳に入ってきました。この曲で泰輝さんは単独のトランペットの音色設定とは別に、「許されない愛」「死んでもいい」に続くシンセ・ブラスの音も繰り出しています。

「白い部屋」はアウトロが長いですよね。
その間ジュリーは、遠くを見つめながら立ちつくしています。この長めのアウトロが、そのまま「追憶」の歌詞世界へと物語を繋げているように感じました。

6曲目「
追憶

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「死んでもいい」「白い部屋」と今年初体感のナンバーが続いた後、今度は新規ファンの僕もこれまで生で何度も体感している大名曲「追憶」。
僕くらいのキャリアのファンにとっても、今回のセットリスト曲順は最高のバランスで・・・それが中盤の新曲コーナー以外すべて1人の作曲家による作品とは、改めて加瀬さんお畏るべし!

この日のフォーラムでは鉄人バンドの演奏から、「追憶」作曲当時の加瀬さんの少なからぬプログレッシブ・ロックの影響というものを初めて感じました。
以前から『JEWEL JULIE』収録の「ジュリアン」「衣装」については、井上バンドがキング・クリムゾンあたりからインスピレーションを得て演奏、アレンジを仕上げたんだろうなぁ、とは思っていました。
時代を考えると、当時加瀬さんの曲作りにもそういう面はあったかもしれません。
僕としてはこの日、ハードなバンド・サウンドの中で泰輝さんが硬軟織り交ぜ絡ませていたストリングスを注意して聴いていたのでそう感じたんじゃないかなぁ。
昨年の大宮公演で、共に参加したYOKO君が
「い~~や~~~、追憶、ロックだな~!」
と言っていたことを思い出します。ドラマティックな展開なのに、いざギターに耳を傾けるととてつもなくハードなことをやっているという・・・YOKO君はそんなふうにこの曲を聴いていたと思います。

面白いのは、多少意識はしてるかな?と思われる「ジュリアン」「衣装」とは違い、「追憶」でのジュリーのヴォーカルには一切プログレっ気が無い(もちろん、良い意味で、ですよ)ことです。
このあたりが「追憶」という曲が髄から「加瀬さん」である、ってことなのかな。
僕は今、加瀬さんと井上バンド(特に堯之さん)とで、根底では同じ志を持ちジュリーにその才を捧げていながらも、実際の音源制作現場(作曲、演奏、アレンジ)でどのように嗜好やセンス、矜持を違えていたのか、ということに凄く興味が湧いているところ。
この点、敢えて「よく似た曲想とテーマ」を擁した加瀬さんと堯之さんそれぞれの作曲作品を採り上げ比較考察する記事構想を持っていますので、近いうちに書きたいなぁと考えています。

話が大幅に逸れましたが、鉄人バンドのキレッキレの演奏を叙情的なまでに昇華し、「ニーナ♪」の表現をその都度変えながら歌うジュリーには、まず作曲家・加瀬さんへのリスペクトを感じずにはいられません。
Aメロの切なさ、孤独感。サビでのロングトーンには信じられないほどの柔らかさも。
一番最後の「ニ~ナ~~♪」を限界まで伸ばして、マイクをサッと宙に捧げた瞬間に声を切るジュリー。見護る加瀬さんも、「やっぱり名曲だ!ジュリーにピッタリだ!」と自画自賛していたんじゃないかな~。

7曲目「
あなたへの愛

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毎週やりとりしているYOKO君とのスコア研究、先週の課題曲がこの大名曲。
これまで何度か書いてきましたが、これはYOKO君の「とてつもなく好きなジュリー・ナンバー」のひとつで、僕が送ったスコア(『沢田研二/イン・コンサート』より)を彼はとても喜んでいましたが・・・「前にジュリーの船上弾き語り映像でコピーしたのと全然違った!」と軽いショックを受けてもいました。
YOKO君の話によるとジュリーは、かな~り大らかなコード進行に変えて弾いていたみたいですね。

加瀬さん作曲ならではの最大の肝は、Aメロの1回し目と2回し目で、メロディーに当てた和音が一部ひっくり返ること。ほぼ同じメロディーなのに、ですよ!
今ツアーでの鉄人バンドの演奏に倣って、オリジナルより1音キー下げた(下山さんのアコギ・ストロークで確認)ヘ長調で表記してみますと

(1回し目)

あなたが言い出せば 悲しく聞こえる
F                                              Gm

星もまばらな夜 何故か遠い道 ♪
B♭            C7  Gm             C7                  

(2回し目)

いつもなら自然に つなぎ合う手と手も
F                                             B♭

途切れがちな愛の 風に泣いている ♪
Gm               C7    Gm               C7

ね?
「Gm」と「B♭」の登場する順序が入れ替わっているんです。歌詞と合わせて弾いてみると、1回し目と2回し目で歌の雰囲気が全然違います。1回し目の方が優しく、2回し目の方が力強く聴こえるんですよ。

当然、下山さんのアコギは加瀬さんの作った進行で演奏されます。加えて、2回し目の「B♭→Gm」の間に、経過音として「A」のルートを半拍だけ挿しこむ細かな工夫もありました。
あと、基本的に「F」のコードを1~4弦のローコードで押さえる下山さんが、この曲では時折1弦セーハのフォームを魅せてくれるのも個人的ポイントかな~。

柴山さんのエレキは、初日とは随分変わりました。川越やファイナルでは、Aメロで
「ファ~、ファファ~・・・ソ~、ソソ~・・・♪」
というベースラインも弾くまでに進化していました(音色はSGVの6弦そのままの音)。その間隙を縫って、繊細な単音が繰り出されるわけです。

ジュリーも気持ち良さそうに声が伸びます。
キーを下げているとは言っても、転調後の最後のサビでは高い「ソ」の音を楽々と出しているのですから、67才にしてこのヴォーカル、ひれ伏すしかありませんね。

8曲目「
胸いっぱいの悲しみ

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これはレコーディング音源と生演奏のLIVEとでかなり印象が異なる曲です。
もちろん僕はCDで聴く「胸いっぱいの悲しみ」も大好き。でもレコーディング音源には「ロッカ・バラード」をさほど感じません。
YOKO君がこの曲について「最初は演歌みたいな感じがして苦手だった」と言っていた(今は撤回しています)のも、まぁ分からなくはないんだけど、フルオーケストラのアレンジは豪華のひと言ですし、ジュリーの入魂にして青々しいヴォーカルも大きな魅力。
一方、LIVEだと一転、見事にハードな「ロッカバラード」なんですよね、この曲。
演奏も完全にロック・バンドのそれで、3連符連打のピアノに、切り裂くようなギター・カッティング。
リリース当時「この曲で特等賞を狙う!」と宣言していたジュリー。セールスは期待通りとはいかなかったようですが、「胸いっぱいの悲しみ」が加瀬さん作曲の大変な名曲であることは、今年のジュリーのステージを観ていても分かります。

遡って73年。
加瀬さんが自分の作ったこの曲をステージで歌うジュリーを間近で見ていなければ、後のロッカ・バラード「おまえがパラダイス」も生まれてはいなかったでしょう。
「加瀬さんを送る」セットリストで、よく似た曲想の「胸いっぱいの悲しみ」と「おまえがパラダイス」を繋げたジュリーのセンスは、本当に素晴らしいと思います。

Aメロ歌い出しで大きく腕を降り下ろすアクション、全部で4回あるはずなんだけど、この日は3回しか観てない・・・うっかり見逃したのか、それともジュリーが1度やらなかったのか、どっちだったんだろう?

GRACE姉さんのコーラスも相変わらず素敵です。
特に、途中まで泰輝さんのストリングスとユニゾンしていたのが、1小節だけ「キーボードは上昇、コーラスは下降」という箇所があって、これが痺れる!
確か『歌門来福』でも、同じ箇所で感動してたっけ。

9曲目「
おまえがパラダイス

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ご存知のみなさまも多いのかな・・・シンコー・ミュージックさんから18日に発売される『ロックジェット63号』に、ジュリー関連の記事がいくつか掲載されるようです。
アマゾンさんでの
内容紹介によれば・・・。

まずは『こっちの水苦いぞ』ツアー・レポート。
これはおそらく渋谷公会堂公演のレポートで、今回も佐藤睦さんの素晴らしい感性による濃厚な文章を読むことができるのではないでしょうか。
あとは、今年お正月の『昭和90年のVOICE∞』レポートの時のように、いくつかの素敵な写真の掲載があるとファンとしてはとても嬉しいのですが・・・。

さらに、『沢田研二・全アルバム解説』の第4回。
しばらく雄伏期間がありましたが、満を持しての連載復活ですね。EMI期のアルバム・リマスター再発が実現した今、この企画も絶好のタイミングと言えるでしょう。

気になるのは、『こっちの水苦いぞ』ツアー・レポートに枕のようについている
おまえがパラダイスOh Yeah!
という文字。
このフレーズがツアー・レポートとどう絡んでくるのかは、実際本を手にしてみないと分からないんですけど、ひょっとしたらこれは『ロックジェット』が加瀬さんに捧げた独立した記事なのかも?と考えてみたり。
いずれにしても、『ロックジェット』のようなロックに特化した雑誌が「加瀬邦彦・作曲作品」について語るならば、またそこで今回のツアー・セットリストから特に1曲を採り上げてフィーチャーするならば、「おまえがパラダイス」こそふさわしい、と思うのです。
ロックでしかあり得ない曲であり、詞であり、演奏であり、そしてヴォーカルなのですから・・・。

ツアー・ファイナルでも見事に「ロック」を証明してくれたジュリーの「おまえがパラダイス」。
皆が期待していた柴山さんの髪をかきむしるシーンこそ今回はお預けとなりましたが、サビで「抱きしめ~たならば~♪」とジュリーが歌い出せば、まるで魔法のように、「ロック」としか例えようのないグルーヴが鉄人バンド全体に生まれ、「Oh Yeah!」という、言わばありきたりなはずのシャウトが加瀬さんのメロディーに勢いよく溶け込み、唯一無二の「ロッカー・ジュリー」がステージを支配します。
これぞ史上最強のロッカ・バラード。ポールごめん、僕はもう「オー・ダーリン」より「おまえがパラダイス」の方が遥かに好きになってしまったよ・・・。

ファイナルにして初めて気づいたのが、下山さんのアーム・プレイでした。こんなことしてたのか!
この曲では8小節のAメロが3回登場するんですけど、その8小節の中でたった1回だけ(つまり曲中で合計3回)、下山さんがアームを使って「ぎゃわわわわん♪」と鳴らす箇所があったのです。
他の箇所では「じゃっ!」とか「じゃ~!」とかブッた斬るようなカッティングなのに、そこだけは和音が揺れるんですね。何食わぬ表情でアームを引き寄せる下山さんの仕草は、なんだかメチャクチャ男臭かったです。
以前から同じように演奏してたのかな・・・過去のツアーDVDで確認しないと!

10曲目「
夕なぎ

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今ツアーに4回参加した中では抜群に素晴らしかったこの日の「夕なぎ」。
今までと何がどう違ったのか、具体的にはよく分からないのですが、やっぱりジュリーの歌かなぁ。

僕はつい先日になって、渋谷2日目のMCでジュリーがこの曲のことを話してくれたのを知りました。
良い意味で「凄い逸話だなぁ」と思っています。もちろん加瀬さんのこともそうだし、70年代、ジュリーという眩い歌手と共にあった井上バンドの志というのも、何となく分かったような気がしましてね・・・。
僕はそんな経緯(ジュリーの当時おかれていた環境も含めて)を何も知らずに、『チャコール・グレイの肖像』と同時期の作品とは思えない、みたいなことを以前「夕なぎ」の記事に書いてしまったけれど、加瀬さんも堯之さんも「再出発するジュリー」に全力で心血を注ごうとしていたんだなぁ、と今さらながらに。

あと、演奏も当然ながら、この名曲をほとんど40年ぶり(?)に見事再現してくれた鉄人バンドのコーラス、素晴らしいです。一番低い声は誰なんだろう?
ただひとりコーラスに参加しない下山さんが黙々とアコギを弾いているのも、逆にその姿がジュリーのバンドっぽいんじゃないかなぁ、と思えてきます。
オーギュメントをローコードで弾くのにあんなに音圧があるなんてね・・・とても真似できません。

そうそう、僕は最近仕事の移動中にジュリワンのCDを聴くことが多いんですけど、GRACE姉さん作詞の「Oh Sandy」にも「夕凪」というフレーズが登場することに改めて感激、ジュリワン・ツアーでの加瀬さんの雄姿に思いを馳せています。
加瀬さんから「こんな風景を詞にしてよ!」というリクエストがあったのかなぁ。それともGRACE姉さんは、加瀬さんがメロディーに託したイメージをその才で自然に感じとって作詞したのでしょうか。
DVDで観ると、「Oh!Sandy」はジュリーと加瀬さんのツーショット率がすごく高いんですよね・・・。

11曲目「
泣きべそなブラッド・ムーン

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新曲を歌う前に、愉快なMCで気息を整えること・・・ジュリーにとっては必要な時間なんだなぁ、とやっぱりこの日も思いました。ガラリと会場の空気が変わり、「祈り」の新曲コーナーが始まります。

今回の新譜のステージでの演奏順、いざ体感すると「こうしかあり得ない」と思えてくるから不思議。僕の場合は勝手な後づけなんだろうけど、「泣きべそなブラッド・ムーン」以外の他の3曲いずれがこの「新曲1曲目」に配されても、ちょっと違うような気がします。
ジュリーはきっと、毎年じっくり突き詰めて新曲を歌う順番を決めていますよね。

イントロ、泰輝さんの淡々としたピアノが薄暗い照明と相俟って、「人間が直には手を触れることのできないブラッド・ムーン」の出現を思わせる荘厳な雰囲気に。
これは、4小節目のハーフ・ディミニッシュ→ドミナントの進行が凄く効いてるんですよね・・・ビートルズ「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」の「negotiations♪」の箇所と同じ手法です。

2015年、今年も変わらぬ被災地への祈りを込めた新譜がリリースされ、僕はこの「泣きべそなブラッド・ムーン」を聴いて、最初は「優しい歌」だと思いました。
考察記事でもそんなふうに書いて、そこでみなさまから多くのコメントやメッセージを頂き、今度は「激しい怒りの歌」なんだろうと思い直しました。
そして始まった今年の全国ツアー。
この曲を歌うジュリーはとても悲しげなんだけれど、エンディングで手を掲げて花束を誰かに手渡そうとするジュリーの仕草を見ると、やっぱり優しい歌なのかなぁ、とも感じます。
結論は出せませんでした。

ただ、この日のフォーラムのジュリーは、漠然と宙に向けて手を差し出したと言うより、ハッキリと2階席のお客さん達に向けて「受け取って欲しい」と花束を手渡したように僕には見えました。
それをどう捉えるか・・・色々な考え方があるだろうとは思う中で、来年お正月のセットリストに答えがあるのかも、と今は思っています。

12曲目「
涙まみれFIRE FIGHTER

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「恨まないよ」「Deep Love」にも匹敵する、被災地の方の視点を借りて歌われる慟哭のバラード。
「海水の焼ける鼻を煎る匂い」など、あまりにリアルなジュリーの詞には、目も耳を背けたくなるのを今でもグッと堪えなければなりません。
でも、この先も継続して作られてゆく『PRAY FOR EAST JAPAN』をテーマとしたジュリーの新譜には、こうした慟哭のバラードが1曲は含まれてゆくものと覚悟していますし、僕らひとりひとりが少しでも何か考えて、しっかり対峙してゆかねばならないでしょう。

今年の「涙まみれFIRE FIGHTER」は柴山さんの作曲作品ということで、ギタリストの作曲作品ならではの「祈り」と「悲しみ」をその徹底的なマイナー・スケールのコード進行から察することができます。
さらには、前曲「泣きべそなブラッド・ムーン」の半音転調後のキー(嬰ト短調)にイントロを合わせる、というさりげない工夫。2012年からの同テーマのCDすべてについて言えますが、4曲入りのマキシ・シングルにしてこれほどのトータル・コンセプト・アルバムを感じさせる・・・これは、ジュリー1人だけではなかなか為し得ないこと。
ジュリーwith鉄人バンドの作品を僕らはこの数年毎年CDで、LIVEで聴いているのです。
それはきっと、これからもずっと。

イントロの柴山さんの素晴らしいスロー・ハンドについては大宮レポートでも書きましたが、影に徹してのユニゾンでその音階を支えているのが泰輝さんのピアノ。
これで、まるで泣いているような「生身のディレイ」感覚が柴山さんのギターに宿ります。

ジュリーは一部歌詞に迷いつつも歌そのものを途切れさせるようなことはなく、怖いほどに紅い照明の中、アウトロの咆哮を何度となく繰り出しました。
最後は、柴山さんのフランジャーによるジェット・サウンドがジュリーに呼応して叫び、GRACE姉さんのドラムスを合図にプツリと音を断ちます。作曲者自身の演奏であるだけに、意味深なエンディングです。

13曲目「
こっちの水苦いぞ

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この曲を生の歌声で聴いて、川越でも思ってしまったこと・・・「ジュリー、こうしている今も、世の中の動きに物申したい事が山ほど溜まっているだろうなぁ」と。

今年の新譜・・・まず1曲目がこの曲で、僕は故郷が鹿児島ですから、「桜島」「川内断層」というフレーズに耳を奪われ、以来、全国ツアーの鹿児島宝山ホール公演のことがずっと気がかりでした。
結局参加は叶いませんでしたが、今年の宝山ホールは素晴らしいステージだった、MCも楽しかった、と参加された先輩に伺って・・・本当に良かったと思ったけれど、川内原発1号機がフル稼働している現実というものは、今確かにあるわけで。
経済効果と言うけど、じゃあ実際地元のかたでそれを実感している人はどのくらいいるのだろう、と。

その川内1号機の前例を踏襲し、2号機も稼働。そして最近、愛媛県の伊方原発も県知事の承認があり、再稼働へ向けての動きを本格化させています。
伊方では先日、万が一の事態を想定した佐田岬から大分県への避難訓練が実施されたようですが、5千人の避難想定の訓練に参加した地元の住人は僅か70人だったとか・・・ジュリーが歌う「誰のための再稼働?」は、ごく当たり前の疑念でしょう。

また一方では、先月に「防衛装備庁」が発足し、今後は国が積極的に、企業の「武器輸出」を一元的に管理することになります。これは言うまでもなく、「防衛装備移転三原則」の制定から派生してきた流れ。
このように、ひとつの法律が制定されれば様々な連鎖が必然的に起こります。
防衛省は今、来年度の日本海でのミサイル実験実施の検討を開始。先に可決された安全保障法案を受け、それは「必要なこと」とされてしまいました。
どこかの国のように「平和のための実験」と言い張るつもりなのか・・・その国と違いは、「アメリカから支持されている」という1点のみでしょう。
相互利益で安全保障・・・この日「苦渋の米国」の「米国」を「アメリカ」と変えて歌ったジュリー。その心中は穏やかでない、どころか怒りに満ちているはず。

そんな中で救いは、この曲を歌うジュリーがロックなビートに自然に乗ってキレッキレのアクションを繰り出し、会場を重ねるごとに多くのお客さんもノッてきたこと。
さらには、本当に素晴らしい鉄人バンドの演奏。
間奏では下山さんが前方にカッ飛んできて、こちらはゴリゴリなのに美しい旋律を奏でてくれます。ガクンガクンと転調するのに、ギターのメロディーの流れにまったく違和感が無いのが凄い・・・。
ソロが終わると、ジュリーもバンドと一緒になって「じゃ、じゃ!」とキメてくれます。

慕ってますフォーメーション”は、初日と比較するとずいぶん明快に、分かりやすくなりました。これは、柴山さんがギターの音色設定をツアー途中で変えたからではないでしょうか。
ハードに歪ませているのは初日からそのままですが、川越やファイナルでは明らかにワウ系のエフェクトのかかりが強くなっていて、「気になるお前」の設定に近くなっているような印象を受けます。

エンディングでは、いつものように僅か3秒でスタンドのアコギへと移行した下山さん。
最後の最後に鳴らす「Dmaj7」、川越ではルート音を強く鳴らしていましたが、この日は3弦2フレットの指で4弦のルートをミュートさせ、硬派に締めくくっていました。
将棋の大駒に例えると(すみませんまたこんなマニアックな話で)神出鬼没の「角行」、縦横無尽の「飛車」・・・鉄人バンドの2人はいずれの役割も互いに入れ替わって担えるわけですから無敵です。名演!

14曲目「
限 界 臨 界

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個人的には、今年の新曲の中で今は1番好きな曲。
2年連続で、全国ツアーを経てGRACE姉さんの作曲作品が「今年1番の曲」になりました。

リリース時には「重いテーマの歌詞だなぁ」と感じていて、考察記事もかなり重たい内容になったんですけど、今はこの曲に明るい視界が開けて見えます。
何度も書いているように、その後僕はジュリーの言う「未熟でも若い者」達の登場に「諦め」の心をド突かれ、すっかり彼等に惚れこんでしまったのでね・・・。

「明るい視界が開けた」と言えば・・・実際に生のLIVEでジュリーの歌と鉄人バンドの演奏を体感してから気づいたこの曲のアレンジの肝は、淡々とクールに進行していた演奏が、間奏(下山さん入魂のソロ!)を境に感情を爆発させると言うのか、決意を高らかに宣言すると言うのか、視界がスパ~ン!と開けるように激しく盛り上がる構成。
CDで聴いていた時にはさほど気に留まらなかったんですけど、間奏後のGRACE姉さんのタム連打が本当に凄いのです。
しかもそれがこの日は特に激しかった!

その証拠に、ソロを弾き終わった下山さんが、その後はず~~っとドラムセットの方を向いてGRACE姉さんを見つめながら演奏していましたからね。
下山さん、姉さんの熱演に見とれてた?

エンディングのジュリーの「限界臨界」のワンフレーズは、ツアーの間に変化を辿ってきました。大宮の頃はギリギリとした強烈なシャウトだったのが、ファイナルでは低音でしぶとく喘ぐようなニュアンスに。
実際に作詞した時点でのジュリーは「憤懣やるかたない」思いでこの曲を仕上げたと思うけど、今は「希望」を見据えているんじゃないか、と僕は今の自分の気持ちを勝手にジュリーに重ねつつそう思っています。
相変わらずキナ臭いニュースは次々に耳に届くけれど、もうそれを「見ないフリ」はしませんよ。

15曲目「
ウィンクでさよなら

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新曲から間髪入れない「KASE SONGS」の楽しいセットリストへの帰還も、ファイナルまで来ると不思議と違和感が無くなってきました。いつもジュリーの切り替えがしっかりしていたからでしょうね。

細かい歌詞の状況説明をフレーズに合わせて身体で表現しながら歌うジュリー。
「I love you♪」「I need you♪」の求愛ポーズは、歌詞に遅れて繰り出されてはいましたが、上手側、下手側それぞれ1度きりではなく、どんどん端の方へ出張していく感じで、丁寧に膝まずいていました。
初日は、「I love you~♪」と歌いながら膝でスライディングでいたわけですから、この曲でのジュリーの魅せ方も、ツアー中にずいぶん変わったようです。

イントロ最初の4小節、GRACE姉さんはハイハットではなくタムでエイトを刻んでいたんですね~。

16曲目「
バイバイジェラシー

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添付の4画像は、『ヤング』81年6月号より。スターに1日密着!という企画で、ちょうどこの取材の日にジュリーはテレビスタジオで「バイバイジェラシー」をチェックのスーツ姿で歌っていたようです。
僕はこの放映を生で観ることはできていません。当時のファンの反応も、この名曲への先輩方の熱烈な支持も、これまで実感としては分かっていませんでした。
今ツアー、ようやくです。
まさか、と思ったサプライズ選曲。「きわどい季節」「甘いたわむれ」あたりはあり得るかな、と予想していたけど、この曲と「夕なぎ」の2曲は本当に頭に無くて。初日に歌われた時には大興奮したものです。

その興奮は、参加を重ねるごとに落ち着くどころかますます増してきているという・・・だって、会場のみなさんの盛り上がりがまず凄いんだもの。
やっぱり、最高のロック・バンドをバックにジュリーがステージ狭しと動き回りながらながら歌うこうしたタイプの曲は、長いファンの先輩方としても「待ってました!」という感じなのかな~。

ジュリーは次から次へと歌詞の状況を身体の動きで表現してくれます。
「ペンダント、何処やったっけ?」みたいなしらばっくれた動作。「それだけさ♪」では、「どうだっていいじゃん!」と言うように彼女の疑問を放り投げる仕草も。
2番で一瞬だけ歌詞に詰まった時に、同時に身体の動きもピタッと止まっちゃったりしてね。
そう言えば、「バイバイジェラシー♪」のところで手を振るシーンがこの日は一度も無かったような?

ジュリーが上手側下手側に出張した時に見えた感じでは、泰輝さんは両手を忙しく動かしながらピアノの音色を弾いているようでした。ひょっとしたら左手はベース音に近い設定になっているのかも。
柴山さんのソロも相変わらず素晴らしかったです。ニコニコとあのフレーズ弾きながらずずい、とせり出してくるシーンも素敵ですけど、涼しい顔で最後のあのフレーズを弾きながら余裕で定位置に戻れる、という神技が僕には信じられません。
どんな体勢だろうと、どんな動作だろうと、指が勝手に動いちゃうんでしょうね。

17曲目「
甘いたわむれ

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こんなにポップで可愛らしい曲なのに、紐解いてみるとメチャクチャ高度な構成の大名曲。
とにかく、ヴォーカル最後の「夢みたい~♪」からリフ部へと繋がる部分の斬新さには惚れ惚れするばかりです。加瀬さん、素晴らしい!「追憶」とどちらをシングルA面にするか迷った、という逸話も肯けます。

「なんとかスカッと失敗してキュートな地団太サービスを!」と、ツアー各会場でジュリーが考えていたのかどうかは分かりませんが・・・大宮、川越でそういうシーンを観てきていたので、この日もジュリーの指笛に注目して観ていました。
結果、見事なまでに成功を連発するジュリー。ツアー最後の最後に真面目な方向で本気出した?
歌い出す寸前まで鳴らしているのは本当に凄いな~。
川越公演の後に僕は、DVD『ワイルドボアの平和』収録の「俺たち最高」のイントロで、ジュリー至高の指笛テクニックをおさらいしてみました。
どう見ても、指を離した瞬間に息を大きく吐いているんだけど、何故その直後にあんなに自然に歌えるのか・・・何か特別な、ジュリーならではの奥義があるのでしょうが、その手法はまだ謎のままです。。
オリジナル音源の「甘いたわむれ」での指笛も、ジュリー自身が鳴らしているのかな?

イントロなどに登場するリフは、柴山さんのギターと泰輝さんのシンセ(「許されない愛」「死んでもいい」と同じ音色設定だと思います)のユニゾンでした。

18曲目「
恋のバッド・チューニング

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オーラスにしてまたまた新たな発見。
今まで僕はこの曲のギター分担について「下山さんが単音で柴山さんがバッキング」と書き続けてきました。違いました~!(汗)
いや、確かにまずサビが来て「ばっ、ちゅにん♪」に行って、その後のAメロ前の単音は下山さんが弾きます。しかし、1番最後のロングトーン「ばっ、ちゅ~~~うに~~ん♪」直後のソロ4小節は柴山さんがリードギターを弾いていたんです。

2人のギタリストが要所要所で単音パートを入れ替わり立ち替わりするスタイル。
互いの「ギター愛」「リスペクト」の交換。愛の電波はどこでも届く・・・だからこの曲では柴山さんも下山さんも特に楽しそうに見えるんですね。

糸井さんの詞は「TOKIO」も突き抜けているけど、こちら「恋のバッド・チューニング」も劣らず凄い。
語感がね・・・「周波数」が3音節の英語みたいに聴こえます。このあたりはいかにも「曲先」作業の妙と言うか・・・曲のデモを作った際、加瀬さんはその箇所にどんなデタラメ英語を当てはめていたのかな。
そのイカした語感を歌に乗せ、「ちょっとずれてる周波数♪」から1本指を立てて宙を乱れ撃ちしながら闊歩するジュリーが両サイドに出張すると、それぞれ柴山さん、下山さんがノリノリで待ち受けているのが目に入る、というわけです。いやぁ楽しい!

今ツアーではジュリーは結局最後まで本来コーラス・パートである「ばっ、ちゅにん♪」を自ら歌っていたけど、いつかまたこの曲を歌う時にはシャウト・コーラスは柴山さんに任せて、「ばっ、ちゅに~~~ん
♪」の主旋律を重ねて欲しいなぁ。
あと、これは先輩方からどのように思われていたのか把握していないのですが、『REALLY LOVE YA !!』で魅せてくれた(もちろん僕はDVD鑑賞での後追い)「気持ちが、あっはん、いいから、あっはん」ヴァージョンも一度は生で体感してみたいです。

19曲目「
ねじれた祈り

Kitarubeki34

相変わらず、イントロの「きゃ~!」が凄いです。

さて、加瀬さんがジュリーのために作った曲には様々なタイプの名曲がありますが、ロカビリー・タッチというのは意外と少なくて、3曲だけです。
アルバム『S/T/R/P/P/E/R』あたりにはコンセプト的にも「バイバイジェラシー」以外にもう1曲ロカビリー調ナンバーの提供があっても不思議はないところなんですけど、ジュリー自作のシングル・カット曲「ス・ト・リ・ッ・パ・-」や、かまやつさんの「想い出のアニー・ローリー」があったりするので、アルバム・プロデューサーの加瀬さんとしてはバランスをとった、ということなのかな。

「バイバイジェラシー」の次に”加瀬流ロカビリー”がジュリーに提供されたのは、2000年。この「ねじれた祈り」まで時を待つことになります(もう1曲は2010年、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの「Oh Sandy」)。
そんなことを考えると、「バイバイジェラシー」と「ねじれた祈り」がセットリストに同居するステージというのは本当に貴重なんだなぁ、と。

でね、この2曲は同じロカビリー調ということでリズムも似ていますから、お客さんのノリ方は似た感じになるんです。でも、ジュリーは違うんだな~。
曲の世界に(歌詞まで考えて)入り込んで、それぞれ身体の動きに明快な違いがあるんですよね。
「バイバイジェラシー」はモータウン・ビートに乗せてスキップするように、ウキウキと縦ノリの軽快さを押し出します。一方、「ねじれた祈り」は重厚な横揺れ。腕もちぎれよ、とばかりに思いっきり身体をブン回し、お客さんを完全支配しようかという・・・。

「背中を~♪」の歌詞部では、この日もステージに背を向けて鋭く腰を振るジュリー。
先輩方の間ではその際のお尻が大変な評判のようですが(笑)、その後にクルッと向き直った時の、ドSな表情と豪快な歌声も素晴らしいですよね。

20曲目「
きわどい季節

Fukyou614

やっぱり柴山さん、最初から3連符のアルペジオを弾いてるなぁ。大宮でのベース演奏、YOKO君も一緒にいたし、見間違いだったとは思えないんだけど・・・。

先輩から教えて頂いたんですが、何処の会場と仰っていたかな・・・この曲の間奏で客席から自然に拍手が起こったことがあったんですって。
僕はすぐに、「あぁ、”君をのせて”みたいで良い話だなぁ、と思いました。考察記事でも書いたけど、僕は「きわどい季節」って”加瀬さん版「君をのせて」”だと思っていますから。
そう考えると、阿久さんの載せた歌詞は加瀬さんのメロディーとは一見乖離がありそうに思えるけど、いざジュリーが歌うと実はそんなことはないぞ、と。
阿久さんの詞は「これから君の本当の人生が始まる。迷わず行けよ」ってことだと思うんですよね(まぁ、しつこいようですが僕はこれ、父親が二十歳になった娘を思うシチュエーションなのでは、と解釈していますが)。それは、ジュリーが独立した時期に加瀬さんが「これからは自分の好きなことをやれば良いよ」と言葉をかけてくれた、という話とシンクロします。

あとね、川越でも書きましたが、最期の転調後のサビからGRACE姉さんが本当に繊細で美しい3連ハイハットの刻みを入れてくるんです。
曲のテンポは変わらないのに、そのハイハットが加わることで何かスピード感が出てきて、「時が流れ出した」ような雰囲気になります。
そこでジュリーがあの優しい伸びやかな声でダメ押しのサビを歌うわけですから・・・同じ歌詞のリフレインなのに、それまでとはニュアンスが違って聞こえてくるし、両手を拡げるジュリーは今、あの時(独立した時)加瀬さんにエールを送られながら選んだ道を真っ正直に歩いてきたんだなぁ、としみじみ思えます。

いやぁそれにしても、下山さんのアコギの弾き方も本当に「君をのせて」にそっくりだったな~。

~MC~

長くて楽しい「加瀬さんとの思い出」MCでした。
詳しい内容はもうご存知のかたも多いでしょう。ここでは特に面白かった(と同時にジュリーの暖かな語り口に癒された)2つの話題・・・「ツアー中での加瀬さんのいたずら・あれこれ」と「加瀬さんの恋とその後のマイッタ話」についてだけ、書いておこうと思います。

まず、加瀬さんのいたずらについて。
ジュリーは何と6つの「本当にあった怖いけど楽しい話」を披露してくれました。
このうち、渋谷2日目の「新曲(僕はそれが「泣きべそなブラッド・ムーン」だった、と参加されたみなさまの情報で知りました)の歌詞を盗みとられた事件」、北陸シリーズ移動中の「ドライヴインの休憩時に突然雨が降ってきた事件」、そして(ジュリー曰く「一番凄いの」だそうですが)明石での「老人会の開演時間勘違いによる2階席ガラガラ事件」の3つは、空で見護る加瀬さんも「こらジュリー、俺のせいにするな!」と苦笑していたかもしれませんが・・・残る3つの事件は、「本当に出た」っぽいですよ。

オープニングBGMについての話は
「都会では「僕達ほとんどいいんじゃあない」、地方では「FRIENDSHIP」をかけるつもりでいたんですが、「FRIENDSHIP」をかけようとしていたのに、「僕達ほとんどいいんじゃあない」がかかってしまったことがあったんですよ・・・しかも2回!」

さらには
「ステージが終わって、ワタシが先に楽屋に戻った時には通路に電気がついていたのに、遅れて鉄人バンドのメンバーが退場したら、電気が消えていた」
このお話はツアーの結構初めの方でしてくてれたみたいですね。コメントで教えて頂いたんですけど、「それって・・・本物じゃん!」と思いましたよ。

そして、川越の事件。
川越公演に参加した僕はその時点でのいきさつをジュリーのMCで聞くことができていますから、これは川越とファイナル双方のMCを詳しく書くことにしましょう。

ウェスタ川越は新しいホールで、ジュリーも初めて使う会場だったようですね。
以下しばらく、川越でのMCから。

「ホールによって楽屋も色々とありますが・・・ここは楽屋にピアノが置いてあるんです。
ピアノと言っても大きなグランドピアノじゃなくて、アップライトみたいな(おそらく、弦を垂直に張ってある家庭用のタイプなのでしょう)やつで。
部屋は冷房が効いているんですが、設定温度が22℃ですよ!いくら何でも寒いやん・・・?
だからワタシ、スイッチを切ったんです。
その後しばらく部屋を出ていて、戻ってきたら切ったはずの部屋の冷房がまたついてるんですよ!」

「よく見ると冷房のところに紙が貼ってあったことに気がついて。ピアノに最適の温度に設定してあるので、スイッチを切らないでください、って書いてあるんですよ。
ワタシが勝手に切ったから、ホールの人がピアノのためにまたつけに来たんかな、と思いましたが、これ、そんな気を遣うほどのピアノか~?とか思って(笑)。
だって、22℃ですよ?
ピアノはいいけどワタシの身体はどうなります?せめて、ピアノとワタシを同等に扱って頂きたい!」

「その話をみんなにしたら、「(ジュリーが部屋を出た時にまた冷房つけたのは)加瀬さんだよ~!」と。
一応ホールの人には「これこれこういうことがあって、ワタシが一度消しました」と伝えておいたんですが、まだ何の返事もない・・・もしや今頃、大変な騒ぎになっているのではないでしょうか(笑)」

・・・と、川越のMCはだいたいこんな感じ。

この時点では、「ジュリーが出ていった隙にスイッチを入れたのは加瀬さん」という説はまぁ冗談で、ホールの人がピアノを気遣ってつけに来たか、消すと自動的に再点灯する仕組みになってるんだろう、ということでジュリーも話をしていたと思います。
ところがフォーラムではその後日談があって

「その日(川越公演当日)は土曜日ということで、ホールについて詳しい人がいなかったらしくて。
後日改めて聞いたところによると、誰もスイッチをつけてなどいない、消したらまた自動的に着く設定などしていない・・・そもそも

そんなことは出来ない!

と言うんですよ。だからこれは加瀬さんの仕業!」

これ・・・さすがにどう考えても、本当に加瀬さんお出ましになっていますよね?
いやぁ何故でしょうか、全っ然怖くない。
むしろ、すごく暖かい気持ちになります・・・。

続いて、こちらも川越MCで途中まで話してくれて、いいトコで切り上げて「続きは国際フォーラムで!」と予告してくれた、加瀬さんのちょっとほろ苦い恋の話と、そのとんでもない後日談。

「加瀬さんが「(好きになった)女の人と会うことになっているんだけど、ついてきてくれないか」と言うのでワタシもついていったんです。そしたら相手の人は、ワタシも顔をよく知ってるモデルさんで。
その後、その人の家に遊びにいくこともあって、ワタシもまたついていって。大きな家で、甥っ子さんや姪っ子さんも一緒に住んでて、挨拶したりしてね。
結局その人と加瀬さんは、加瀬さんが思ったようにはいかなくて・・・ワタシもずっと胸にしまっていたんですが、何年か経って、ワタシとは違う音楽事務所の人とお話する機会があって、その人がいきなり
「実は私、以前沢田さんがつき合ってた女性と今おつき合いしているんですよ」
と。
はぁ?」(笑)
「だ、誰ですか?」と尋ねると、それが加瀬さんと一緒に会ったそのモデルさんのことだったんですよ。なんでも、その人がそのモデルさんの部屋で甥っ子達とテレビを観ていたら、ちょうどワタシがテレビに出てて、甥っ子がワタシを指差して
この人、家に来たことある~!
と言ったんだそうで(笑)。
ワタシは「いや、違います違います」と言ったんですが・・・加瀬さんの名前は絶対に出せないわけですよ~。ただひたすら「いやいや違います。本当に違います」と言うしかないんですが、その人は「まぁまぁいいからいいから」みたいな感じで「ふ~ん、そうだったの~」とか言ってるんですよ・・・」

結局その音楽事務所の人は「ジュリーの元カノとつき合った」と思い込んだまま、もう亡くなられたそうです。加瀬さんもジュリーもずいぶん若い頃の昔話でしょうが、ジュリーはずっと胸にしまっていたんですね。
加瀬さんがあんまりいたずらするので、ツアーの最後にお返しで話しちゃった?

その他にも、ローリング・ストーンズのパリ公演を2人で観に行った時の加瀬さんの愉快な行動の話など、いつまでも加瀬さんのことを話していたそうなジュリーでしたが、時はあまりに早く過ぎゆきます。
照明が切り替わって、鉄人バンドの4人も再登場。
ジュリーはいつものようにメンバーひとりひとりを紹介すると、大きな拍手を受けながら
「それでは、よろしゅうございますか?」

KASE SONGS、あとみっつ~!!

~アンコール~

21曲目「
TOKIO

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LIVE翌日、カミさんが言っていました。「TOKIO」は別格やな、あの曲はやっぱり凄い、と。
そうだよねぇ・・・詞曲ともに完璧なだけでなく、あのパフォーマンス。幼い頃にテレビで観ていたパラシュート。意味は全然分からなかったけれど、圧巻でした。「他の人とは違う」と感じていたと思います。

「賛否ある中で色々なことをやってきた」とこの日もジュリーは加瀬さんとの思い出話をしてくれたけど、当時次から次へとビックリさせてくれるジュリーの新曲でのパフォーマンスに、子供達は大喜びでした。
シングル・リリース時、僕は小学校6年生だったんだなぁ・・・。加瀬さんは「女性と子供に圧倒的に支持されているジュリー」を誇りに思っていたでしょう。

僕はこの日の「TOKIO」で、下山さんの演奏に注目してみました。『ギター・マガジン』のインタビューで下山さんは「勝手にしやがれ」や「TOKIO」について「僕のパートがない(レコーディングされているギター・トラックがひとつしかない)ので、自分で自分のパートを作っている」と言っていたのをふいに思い出したのです。
ダウン・ピッキングの連打とコードの突き放しの組み合わせ・・・見事なバッキング・パートです。

帰宅後、「下山さん不在のジュリワンでは、どんな感じだったっけ?」と思い立ち、DVDを観ました。
泰輝さんが通常のジュリーLIVEとは違う演奏を加えていたことは覚えてる。でもギターは?
確認して驚愕。加瀬さんのギターが凄いんです!
今まで、ジュリワン「TOKIO」の加瀬さんの演奏と言えば、宇宙遊泳のピッキング・スクラッチしか印象に残ってなかったけど、とんでもなかった・・・。
正に職人技のギターでした。当然下山さんとも全然違ったアレンジで・・・柴山さんとのアンサンブルは、華麗にして綿密、「理に聡い」ギターでした。僕の中の加瀬さんのイメージは、またひとつ修正されました。
しかも、その素晴らしい演奏の合間を縫って「チャ・チャ!」の手拍子や「ト~キ~オ♪」の腕振り上げもやってるんです。手を振り上げた、と思ったら次の瞬間には「じゃ~ん♪」と本当に的確なタイミングでギターを鳴らしています。

あぁ、ツアー前に、いや少なくともファイナルのフォーラムの前にそういうことに気がついていれば、「TOKIO」では加瀬さんと下山さんのギターの比較で、もっと楽しい見方も色々できただろうになぁ・・・。

ジュリーの片足立ちはこの日も完璧。
これ、ツアー途中からジュリーにとっては、何かゲンかつぎみたいなパフォーマンスになってたのかなぁ。ファイナルまで見事、完走です!

22曲目「
気になるお前

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次の「海にむけて」が「KASE BALLAD」の大トリなら、この「気になるお前」は「KASE ROCK」の大トリ。
『ジュリー祭り』に参加した頃の僕は、この曲がこれほどジュリーLIVEにとって重要な、大切なロック・ナンバーだとは分かってなかったなぁ・・・。

間奏リレーでは、また下山さんがドラムセットとキーボードの後ろを徘徊して柴山さんのソロ部で上手側に出現してのフロント3人横並びのシーンなどもあり、ツアー・ファイナルにふさわしい熱唱・熱演でした。でも、この日の「気になるお前」では何と言ってもGRACE姉さんのドラムスについて語らなければなりません。
本当に凄かった。
GRACE姉さんがこんなふうにこの曲を演奏するのを、僕は初めて観ました。

病み上がりでのこの過酷なスケジュール・・・体力的にも相当大変だったかと想像しますが、GRACE姉さんは鉄人バンドの紅一点として誇り高い責任感と矜持を以って、見事な完走。
そして、最後の最後に「加瀬さんのためにもすべてを出しきろう」と特別な気持ちでフォーラムに乗りこんでいらしたのではないでしょうか。
「許されない愛」のフィルで「おっ、姉さん今日は凄いぞ!」と気づいてはいたけど、「気になるお前」ではもう・・・余力を全く残さない、というくらいのドラムスで。

僕は、この曲が始まって最初からドラムスに注目していたわけではないんです。基本ジュリーを観つつ、Aメロ途中の「ずっ、ちゃっ、ちゃ~♪」で下山さんがどんな動きをするか、チェックしていました。
いきなりの”2回転ジャンプ”をキメる下山さん。川越での1回転は近くで観ていて、翌日の松戸では2回転だった、とsaba様のブログで知りました。
ファイナルでも引き続き2回転ジャンプ成功!(いや、ぴょんぴょん跳んで着地を繰り返しながら回っているので、正確には「ジャンプ」ではないんだけど)

で。
下山さんジャンプ箇所(=ジュリーの腰ひねり箇所)の最後のシーン、2番の2回し目も僕は下山さんの動きに注目して見ていたんですが

こっちを振り向く ♪
(だ、だ、だ、だん!どん、どん!)

という、物凄い音量のドラムス・アドリブが来て、飛び上がりました。あまりにビックリして、その瞬間はジュリーも下山さんもどんな動きをしたのかまったく見えていません。「あっ!」と思ってGRACE姉さんに目が行っちゃったからね~。
こんな演奏が聴けて、本当に嬉しい!

曲は続いて、音階楽器がサ~ッと消えてジュリーと一緒に会場みんなで拳を振り上げる「きっと、いつかは♪」の盛り上がり部。
ここでジュリーのヴォーカル以外に鳴っているバンドの音は、「ちゅく、ちゅく、ちゅく・・・」という柴山さんのブラッシングと、GRACE姉さんのエイトビートです。
そのドラムスの音が突然

    渡さ~ない~で ♪
(だん!→3拍無音)

分かります?
「渡さないで♪」の「わ」の手前で強烈なスネア・アクセントを一発、その直後3拍ぶんを無音で通してから、フィルで戻ってきたんです。
この無音で、ジュリーが歌うドスの効いた「わ~た~さ~ない~で~♪」が、どれほど強調されたことでしょうか。GRACE姉さんのドラムスの変化に気づけなくとも、ここでジュリーのヴォーカルを「凄い!」と感じたお客さんはたくさんいらしたはず。
それは、GRACE姉さんのこの日のドラム・アレンジが引き出したヴォーカルなんですよ。

全力で押し、全力で引く・・・GRACE姉さんの爆裂ドラムに、比類なき歌心あり!
「KASE ROCK」にふさわしい、ジュリーのこの日のステージにふさわしい、素晴らしいドラムスを魅せて、聴かせて貰いました。GRACE姉さん、ありがとう!

23曲目「
海にむけて

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ジュリー、泣いてたなぁ・・・。
この曲ではまだ大きく音程を外すようなことは最後まで無かったけど、泣いているのが分かりました。「むせび泣いて泣くよ」のところなんかは、特に。

加瀬さんの突然の旅立ちを知らされた時、この曲のジュリーの歌詞を思った人は多かったのかな。
リリース時に加瀬さん自身が「ジュリーの詞が良いんです」と語ったその歌詞は、当然ジュリーと加瀬さんとの別れを歌ったものではあり得ないわけだけれど。僕には「海にむけて」が加瀬さんの遺作のように思えてきてなりませんでした。
実際には加瀬さんはこの曲をジュリーのために作ったその後にも、ジュリワンでたくさん曲を書いてくれているのにね・・・何故か「海にむけて」が最後の1作であったかのような錯覚。不思議なことです。

ジュリーの歌が進んで、泰輝さんのキラキラしたキーボードが噛んでくると、ステージ全体が厳かな光に包まれていくような感じでした。
最後の「舞わせてあげる♪」では涙で発声もちょっと乱れそうになりながら、すぐ次の「すぐに会おう、きっと♪」を、決意するようなニュアンスで歌ったジュリー。
その姿にピンスポットが当たり、鉄人バンドの姿は暗がりに見えなくなって・・・いつものように柴山さんのフィードバックでピタッと終わる、と思ったら、「キ~ン」という残響音をなかなか切ろうとしない柴山さん・・・この演奏もやはり、前曲「気になるお前」のGRACE姉さんのドラムス同様に、柴山さんの中にこのファイナルに臨んでの強い思いがあり、こんな演奏に至ったに違いありません。

YOKO君が大宮の打ち上げで言ってました。「加瀬さんは本当に凄いギタリストなんだ」と。
これは彼が参加前にジュリワンのDVDを集中して観て一緒にギターを弾いてみたからこその言葉だったんだ、と今なら分かります。僕は今頃になってYOKO君と同じことをして、「加瀬さんのギター、凄い!」と実感しているところですから・・・遅いよねぇ。
YOKO君曰く
「今回の柴山さんのSGV使用は、まずギタリストとしての加瀬さんへのリスペクトだと思う」
と。
「海にむけて」で最後にもう一度SGVに持ち替えた柴山さんは、ピンスポットで遠くを見つめるジュリーの姿に切ないフィードバックの音をいつまでも重ねて、この曲の演奏を終えたのでした。

これで柴山さんとしては「音で加瀬さんを送った」という思いだったかもしれませんが、僕はそのフィードバック音に乗って、逆に加瀬さんがハッキリ出てきちゃったような気がするんですよね・・・。
「ジュリー、もう終わり?」と。
なんとも言えない雰囲気の中、大きな大きな拍手が起こりますが、「これで終わってしまう・・・自分はちゃんと加瀬さんを送ることができたんだろうか?」と考えていたお客さんもいらしたかもしれません。

ジュリーは(この時は)いつものように、長い長いお辞儀をして、鉄人バンドをひとりひとり紹介して、「ジジィでした~!」と手を上げて・・・でも、お客さんの熱狂的な「ジュリ~!」の声援が飛び交う中、じっと遠くを見つめながらその場を動こうとしないのでした。
この日僕は、歌い終わったジュリーがマイクをそっとポケットに しまいこむシーンを見逃しました。今思えばその時、別のポケ ットには携帯が入っていたんだね・・・。

24曲目「
想い出の渚

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この感動のフィナーレについては前回の更新で詳しく書かせて頂きましたきましたので、まずはそちらの記事をご参照ください。
ここでは、少し補足と言うかその後のあれこれを書き足しておきたいと思います。

しょあ様やNasia様がその前回記事についてそれぞれのブログで言及くださり本当に嬉しかったと同時に、自力では辿り着けなかった解釈を教えて頂くこともできました。(ありがとうございます!)

1番の後(音源で言うところの間奏の直前)にジュリーが泰輝さんを振り返って何か声をかけたシーンについて、Nasia様が「サビ!」と言っていたんじゃないか、と書いていらして、僕はまたしても「あぁ、そうか!そんなタイミングだったかもしれない!」と。
このことは、しょあ様も書いていらっしゃるように、「想い出の渚」楽曲構成最大の肝(ということすら僕は長い間気づけずにいたわけですが)である「2番の歌メロはサビから(ミドル・エイトの加瀬さんのソロがそのままAメロの進行になっている)」ということにも深く関わってくると思うんですよ。
なるほど、ジュリーはそうやってぶっつけ本番の泰輝さんをリードしたのかなぁ、と。

あと、僕が「”ボイス・フィルイン”で泰輝さんに譜割を知らせる」と書いたことについてしょあ様が「解説プリーズ」と仰っているのでここで説明いたしますと。
「想い出の渚」のその箇所。オリジナルでは

いつまでも ♪
C7         B7

と進行しますが、この日の泰輝さんは

いつまでも ♪
F#m       B7

と弾きました。
実は泰輝さんが弾いたのは

あの 夏の日 ♪
F#m   B7   E

というキメ部と途中まで同じ進行なんです。
「いつまでも♪」と「あの夏の日♪」を歌い比べて頂ければお分かりのように、この2箇所はその後で引っ張る小節数が違うんですよ。
「いつまでも♪」の後は「B7」で2小節、「あの夏の日♪」の後は「E→C#m→F#m→B7」の4小節です。
ですからあの瞬間、ジュリーと泰輝さんとの頭の中で「次の区切り」までに準備する小節数とコード進行が異なっていたことが考えられます。
ジュリーは瞬時に泰輝さんの「F#m→B7」に合わせて歌のメロディーを変えましたが、その後2小節で(オリジナルと同じ譜割で)Aメロ2回し目に行きたかった。そこで泰輝さんが分かりやすいように、口でフィル・インを繰り出した・・・これが僕の推論でした。

それともうひとつ書いておきたいのが、いつもお世話になっている先輩が仰っていた、この日の「想い出の渚」についての見解。僕のそれとは少し違うんですけど、長年ジュリーを見続けてこられた先輩ならではの説得力のあるお話で・・・感動させられました。
あの時、最初は確かにジュリーは伴奏無しのアカペラで歌う気でいた。でもいざ歌おう、とした時「アカン、歌いだしたら泣いてしまう」と悟ったんじゃないか、と。
伴奏無しで歌っているのに泣き出してしまったら、完全に場が途切れてしまいますからね・・・それで急遽、泰輝さんに暗に助けを求めたんじゃないか、泰輝さんもすぐに察して伴奏を買って出たのではないか、というお話。これまた目からウロコです。

ジュリーという人を客席から観ていた時、さすがみなさん、同じものを観ていても、人それぞれにその人なりのステージへの「思い」から得ている、独自の見解が自然に出てくるものなのですね。

いずれにしても、状況に応じて瞬時に対応するジュリー、それに応える泰輝さん、2人とも凄い!
本当にプロフェッショナルとは凄いものです。
「想い出の渚」がいかに素晴らしい名曲であったかを教わったことも含め、とても良いものを魅せてもらい、聴かせてもらった、と今はただ感謝しかありません。


そして、とうとうこの楽しいツアーも終わってしまう時が来ました。一番名残惜しそうなのは「想い出の渚」を歌い終えたばかりのステージ上のジュリーのようでしたが、ジュリーは自分に言い聞かせるように
「キリがないので・・・シメますよ!」
と。
「5本締めで!」と宣言したジュリーの言葉に「えっ、それ分からない!」と焦っていたのは、どうも僕だけではなかったみたいですけど。
ともかく、5本締めなんてものの存在すら知らなかった僕は「どうしたものか」と困っていましたが、ふと気づくとGRACE姉さんが立ち上がって腕を掲げ、ひとさし指とひとさし指を合わせてスタンバイしてくれていたので、ひと安心。
あとは会場のみなさんについていくだけでした。
「たたたん、たたたん、たたたん、たん!」の手拍子を、最初は両手1本ずつのひとさし指で、次にひとさし指と中指の2本で、といった感じでひとつづつ打つ指を増やしていく・・・これが「5本締め」だったんですね。
指が増えていくに従ってどんどん音が大きくなるので「末広がりで縁起が良い」のだとか・・・。

こうして、ジュリーも鉄人バンドの4人も、楽屋にいた鳥塚さんや島さん、ピー先生・・・そして僕らファンも、みんなで無事、加瀬さんを送ることができたのでした。

心から涙し楽しんだ素晴らしいファイナルでした。
ステージが終わって帰路につくお客さんの、なんとも晴れやかな余韻と笑顔。昨年の同じ日の帰り道は、顔見知りの先輩に出会っても何と声をおかけすれば、という状況だったことを考えると、今年は本当に良かったなぁと思いました。
終演後のフォーラムは、まったく知らない人にも「良かったですねぇ」と話しかけたくなるような暖かい空気に満ちていました。実際僕らは、偶然同じ道のりをお帰りだった車椅子でご参加のお姉さんと行き合わせて少しお話する機会に恵まれたりして。
とにかくみなさん笑顔、笑顔なんです。

加瀬さんのおかげですよね・・・。

この日フォーラムの会場にいた人も、遠くから念を送っていた人も・・・今、たくさんの人の心の中で、加瀬さんは生きています。
誰も加瀬さんを忘れはしません、いつまでも。
加瀬さん、素晴らしい名曲の数々、名演の数々を本当にありがとうございました。

ジュリーはこれからも、加瀬さんの曲を歌い続けてくれるはずです。
そうだ、今ジュリーはお正月のセットリストを考えているところだろうから・・・加瀬さん、何か1曲レアなやつをジュリーにリクエストしてみたら・・・?
ジュリーも「これからも、いつでも出てきていいんだよ」と言ってたじゃないですか。

お正月、また加瀬さんの名曲に逢えるかな・・・?


20151103

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2015年11月 5日 (木)

ザ・ワイルドワンズ 「想い出の渚」

『All Of My Life~40th Anniversary Best』収録
original released on 1966、single


Wildones

disc-1
1. 想い出の渚
2. 夕陽と共に
3. ユア・ベイビー
4. あの人
5. 貝殻の夏
6. 青空のある限り
7. 幸せの道
8. あの雲といっしょに
9. 可愛い恋人
10. ジャスト・ワン・モア・タイム
11. トライ・アゲイン
12. 風よつたえて
13. バラの恋人
14. 青い果実
15. 赤い靴のマリア
16. 花のヤング・タウン
17. 小さな倖せ
18. 想い出は心の友
19. 愛するアニタ
20. 美しすぎた夏
21. 夏のアイドル
22. セシリア
23. あの頃
disc-2
1. 白い水平線
2. 涙色のイヤリング
3. Welcome to my boat
4. ロング・ボード Jive
5. 夏が来るたび
6. ワン・モア・ラブ
7. 想い出の渚 ’91
8. 追憶のlove letter
9. 星の恋人たち
10. ハート燃えて 愛になれ
11. 幸せのドアー
12. 黄昏れが海を染めても
13. Yes, We Can Do It
14. あなたのいる空
15. 愛することから始めよう
16. 懐かしきラヴソング
17. 夢をつかもう

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今日は予定外、緊急の更新です。

11・3東京国際フォーラム公演・・・参加できなかったみなさまも、もうご存知でしょう。
『こっちの水苦いぞ』ツアー・ファイナルは、「ダブル・アンコール」とも言えない、「オマケのオマケ」とも言えない、本当に「加瀬さんを送る」ジュリーの心からの気持ちによって、何とお客さんを含めた会場全員で合唱するザ・ワイルドワンズの特大ヒット・ナンバー「想い出の渚」で、大きな感動の幕を閉じました。

今ツアーのセットリストは僕にとって、「ブログで記事に書いていない曲が1曲も無い」という状況で。
恒例の”セットリストを振り返る”シリーズはお休み・・・そのつもりだったんですけど、思いもかけず最後の最後に、このヒヨッコが記事執筆など畏れ多くて夢想だにできていなかった、日本の音楽史に残る超有名曲「想い出の渚」が採り上げられたわけです。
当日の打ち上げで僕は、ご一緒した先輩に
「”セットリストを振り返る”シリーズで書く曲が1曲できたんですけど、この曲ばかりは僕のような若輩が考察するなど荷が重い・・・とても書けません」
とお話していました。
この曲がシングルのA面としてリリースされるに至った加瀬さんの先見性を巡る逸話なども、僕はつい最近になってようやく知った、という状況なのですからね。

ところが、一晩経って考え直しました。
「考察記事」なんて偉そうなことを考えるから書けないんだ。でも、東京国際フォーラムでの、あの「想い出の渚」のシーンを目にした一人のジュリーファンとして、素直な感動のままにその時の様子を詳しく書くことは、できるかもしれない。
「想い出の渚」1曲についてのLIVEレポート、という形にして記事を書けば良いじゃないか、と。
地方にお住まいで、「当日は遠くから念を送っています」と仰っていた方々・・・たくさんいらしゃいます。
ファイナルに参加が叶わなかったみなさまに、ほんの僅かでもあの感動をお伝えしたい。そして僕自身心からの「加瀬さんを送る」という気持ちを表すためにも、レポート本編の下書きを始める前に、11.3の「想い出の渚」について書き留めておこう。
そう思いました。

こんなスタイルの記事執筆は、あのジュリワン八王子公演の「FRIENDSHIP」以来だよ、加瀬さん・・・。

今日は、本当に僭越ながら、考察記事ではなく11.3の部分的なレポートとして、加瀬さんへの深い感謝を込め、僕が生まれる前にリリースされていたこの不朽の名曲の記事を書かせて頂きます。
よろしくお願い申し上げます。


さて、2015年11月3日。午後6時過ぎ。
『こっちの水苦いぞ』ツアー・セットリストの大トリ曲・「海にむけて」が終わると、これまでの各会場と同じように、ジュリー達の長い長いお辞儀(この日はまず泰輝さん、次いで下山さんがフライングの顔上げ。柴山さんだけは、いつ見てもジュリーより先にお辞儀を終えることは無いんですよね~)があり、鉄人バンドひとりひとりの紹介があり、「ジジィでした~!」があり・・・「あぁ、終わってしまう」と、この時にはお客さん全員が寂しい気持ちになったと思います。

でもジュリーはその場に立ち尽くしたまま、なかなか動こうとしません。「バイバイ」もありません。
おもむろにポケットから何やら取り出して(神席でご参加の先輩のお話によりますと、紺色もしくは黒の携帯電話だったそうです)、万歩計の確認をしたのか
「今日の舞台、3千○百○十○歩!」
と。
お客さんは笑いますが、ジュリーはメンバーの方を振り返る格好で思案げに「少ないわ・・・少ない!」

ここで僕らファンは、ジュリーが「歩数」のことより何より、「まだ今日のステージを終わらせたくない」と思っているんだ、と気がつきました。ジュリーに向けて一層大きな拍手が起こったのは、必然。
いつしか、「アンコールを求める時」のそれのように、お客さんの拍手が揃っていきました。
この時点では鉄人バンドのメンバーは、「”危険なふたり”あたりをもう一丁かな?」と考えていたりしたのでしょうか。それは僕らには分かりませんけど。


亡くなった人の魂が現れる時って、確か「エクトプラズム」と言いましたか・・・何やら霧状の物質に乗って現れる、と言われていますよね。
でも加瀬さんはどうやらそんな物質だけでなく、「音」に乗って現れるパワーをお持ちのようです。
この日の「海にむけて」では、ジュリーはもちろんですが柴山さんにも思うところがあったのでしょう・・・エンディング最後の最後、ピンスポットで遠くを見つめるジュリーに、暗がりから柴山さんが長い長いフィードバックを重ねて演奏を終えたのでした。
きっと、柴山さんが奏でたその「キ~ン♪」というフィードバック音に乗って、加瀬さんが現れて、そのままジュリーの隣にとどまったんじゃないかなぁ。

そして加瀬さんは
「ジュリー、もう終わっちゃうの?」
と言ったんじゃないかなぁ。
ジュリーにはその声が聞こえたんじゃないかなぁ。

大きな拍手の中、ジュリーが
「加瀬さんを偲んで、みんなで”想い出の渚”を・・・」
と言ったのは、突発的な出来事だったと思います。
僕はその直後のジュリーと泰輝さんとのやりとり、さらには泰輝さんの実際の演奏からそう思ったのですが、後から聞くと、先輩方の中にはこの時のジュリーの言葉に対する鉄人バンド・メンバーの反応で、早くもそうと気づかれたかたもいらしたようですね。

ジュリーはアカペラで歌うつもりだったでしょう。
携帯をいじって、「ワタシは一応歌詞を見ます」とおどけながらも、感傷を振り切るように念入りに「き~み~を♪」と何度か軽く口ずさんで喉ならし。泰輝さんに「一応、Eで・・・」と話しかけます。
これは、「想い出の渚」のオリジナル・キーであるホ長調のトニック「ミ・ソ#・シ」の和音を泰輝さんにキーボードで鳴らしてもらって、歌いだしの音合わせをしたいという意図だったはずです。
しかしここで泰輝さんが何かひとこと、ふたこと。推測ですが、「何とかします。フルコーラス弾かせてください」という意志をジュリーに伝えたのではないでしょうか。
それを受けてジュリーは「EからC#マイナー・・・」と「想い出の渚」冒頭のコード進行(イントロ代わりにもなります)を泰輝さんに説明。
うなずく泰輝さん。
ジュリワンのツアーで「想い出の渚」の演奏経験がある泰輝さんは、メロディーからEのスケールのコードを脳内で探り当てはめて、今日はぶっつけ本番でピアノ伴奏をつけよう、というのでしょう。
カッコイイ・・・鉄人バンドが誇る魂のピアノ弾き・大山泰輝でなければこうはいきませんよ!

「E」「C#m」の音出しがあり、ジュリーが歌い始めると、しっかり伴奏をつけていく泰輝さん。
僕らも一緒に歌います。
お客さんは皆、スラスラと歌詞が出てきます。

「明るく、爽やかな曲」・・・僕の中に漠然とあった、深く考えもしないままに持っていた「想い出の渚」のイメージは、瞬時にひっくり返りました。

君を見つけた  この渚 に
E             C#m    F#m B7

一人たたずみ  想い出す
E             C#m   F#m  B7

小麦色した 可愛いほゝ
   E       C#m  G#m

忘れはしない いつまでも ♪
  F#m  C#7     C7         B7

何という歌詞でしょう。作詞した鳥塚さんは、こんなふうにジュリーがこの詞を歌う日が来ることを、当時は夢にも考えていなかったでしょうが・・・。

LIVE翌日の夜、僕はワイルドワンズのベスト盤『All Of My Life~40th Anniversary Best』で「想い出の渚」を聴きながら、ギターを持って合わせて弾いて歌ってみました。白状すると、何と僕はこの世紀の大名曲を「自分で弾いて歌ってみる」というのがまったく初めてのことだったのでした。
『こっちの水苦いぞ』ツアー前に「ジュリーが歌ったKASE SONGSを全曲記事に書いた」な~んて偉そうなことを言う資格は、僕には無かった・・・この「想い出の渚」に真剣に向き合わずして、加瀬さんのことをどれほど語れると言うのでしょうか。
本当に、本当に素晴らしい名曲なんだ・・・。

あの信じ難い4月のニュースの翌日。
悲しい形ではあったけれど、様々なメディアが加瀬さんの功績を採り上げてくれていました。
僕はその時、「何故”想い出の渚”ばかりが大きく書かれるんだろう?もっと他に加瀬さんが作った名曲はたくさんある!」と考えてしまいました。
浅はかだった、と今は思っています。
ある年代以上の人、それが普段音楽を聴かないような人であっても、「”想い出の渚”を歌えますか?」と尋ねたとして、「君~を見つけた~ こ~の~渚~に~♪」という冒頭の歌詞とメロディーが出てこない人は、まずいないでしょう。
やっぱり加瀬さんと言えばこの曲なんだ・・・フォーラムで、ジュリーがそう教えてくれました。

こんなにも切ない詞だったのか。
こんなにも力強いメロディーだったのか。
こんなにも素敵な歌だったのか。

波に向って 叫んでみても
E         C#m   G#m

もう 帰らない あの 夏の日 ♪
  F#m  C#7      F#m  B7    E

このあたりから、ジュリーはボロボロでした。
もうメロディーなんて無い・・・ただひたすら、泣きじゃくりながら声を出すのが精一杯。
ジュリーファンとしてまったく経験の浅い僕も、これまで何度か「歌っている途中で泣いてしまうジュリー」を生で観たことはありますが、この日の「想い出の渚」はそんなレベルではありませんでした。
本当に、大泣きしているんです。
「可愛い頬♪」でジュリーは加瀬さんの真っ赤なほっぺたを思い出したりしたのかなぁ。
これほど大泣きするジュリーは初めて見ました。見ている僕ももう涙を堪えることはできません。もちろん周囲のお客さんも・・・みなさん号泣しています。

そんな中で、僕は耳では泰輝さんのピアノを「聴き逃すまい」と追っていました。ペンタトニックのアドリブを加えてはいましたが、基本はコード弾きです。
「想い出の渚」はホ長調のド直球進行で、ほぼ「王道」と言ってよいコード・パターンで作られた曲です。しかし、たった1箇所だけ変則的な進行が登場します。

忘れはしない いつまでも ♪
F#m   C#7     C7         B7

この「C7」。
C#7から半音ずつ和音が下降していく、という理屈にはなるんだけど、加瀬さんはこの「C7」を経過音として使ってはいませんね。1小節まるまるですから。
あくまで、ドミナント「B7」到達前のフェイント。
このパターンはのちにポップスにおける隠し味的な手法として広まり、多くのヒット曲の例もあります。でも、1966年という時代・・・ポップス黎明期にあった日本人には、さぞ新鮮に聴こえたことでしょうね。

この日、そんな半世紀近くも以前に加瀬さんが仕込んでいたフェイントに、名手・泰輝さんが引っかかる・・・これもまた加瀬さんの入念な「いたずら」?
泰輝さんはあくまでホ長調の王道を逸脱せず、「C7」の箇所を「F#m」で弾いてしまったんですよ。「普通はこうなるよね」というパターンを弾いたわけです。
これが、僕が「この日の”想い出の渚”は突発的に歌われた」とする最大の根拠。事前に話があれば、泰輝さんはある程度頭の中でコード進行を確認しておいたでしょう。「C7」を「F#m」で弾くはずがありません。

ジュリーは瞬時に泰輝さんの困惑を察し、歌詞はそのままメロディーだけを変えて対応しました。

いつま~    でも~ ♪
ソソソファ#~ ミファ#~ (オリジナル)
ファ#ファ#ファ#ミ~ レ#ファ#~ (ジュリー)

と。
これで「F#m→B7」にキレイにメロディーが乗ります。

さらに、求めている譜割りを泰輝さんに知らせるために”ボイス・フィルイン”を繰り出しました。
「たかたかどこどこどこどこどこどこ♪」
律儀に16分音符で1小節。ジュリーらしいなぁ!

さらには、1度目のサビの最後。
僕はもうこれで演奏も歌も終わらせる(ショート・ヴァージョンとして歌う)のかな、と思って「あの夏の日♪」を2度繰り返して歌ってしまったんですけど(泰輝さんの伴奏もそう進行したんです。きっと泰輝さんもここで後奏に入ったつもりだったと思います)、ジュリーは振り返って泰輝さんに何かひとこと。
「まだ」と言ったのかな・・・伴奏は続くようです。
そうだよね、キチンと原曲通りに最後までフルコーラス歌いたいんだ、ジュリーは・・・。

(ここで追記です。しょあ様の11月6日付の御記事を拝見し、ハッと気がつきました。ジュリーはこの時泰輝さんに、「間奏ね!」と声をかけたんじゃないか・・・と。
ジュリーも、駆け入ってきた鳥塚さんも島さんも、そして会場の多くのみなさまも、それぞれの心の中で、加瀬さんの12弦ギター・ソロを聴いていたのですね・・・。
当日、僕にはそれが聴こえていませんでした。
ただただ恥ずかしく、自らの未熟を思い知る気持ちです。
加瀬さん・・・きっと最高のギターを弾いていたのでしょうね。僕もこれからもっと勉強して、加瀬さんの曲を聴き込んで、次にジュリーが加瀬さんの曲を歌ってくれる時には、加瀬さんのギターの音も一緒に聴こえるような心の耳を持つべく精進します!)

「いつまでも♪」と最初の「あの夏の日♪」。
この2箇所が、泰輝さんの演奏で僕が気づいたオリジナルの進行との違いでした。その都度、ジュリーは口でフィル・インを入れたり、振り返って言葉をかけたり・・・これをどう考えても、泰輝さんの演奏がぶっつけ本番だったということになります。

で、2番が始まった・・・と思ったら、ステージ下手から駆け入って来たお2人の姿。
鳥塚さんと島さんです!
気づいたお客さんは、本当に大きな拍手でお2人を迎えました。もちろん僕も、手が痛くなるくらいに。

僕は、この鳥塚さんと島さんの飛び入りも突発的なことだったんじゃないかと考えています。楽屋で観ていて、「たまらず入ってきた」という感じがしてね・・・。
それに、事前に「ステージに上がる」と打ち合わせていたら、あの普段着みたいな恰好はナイでしょう(←服飾センス・ゼロのDYNAMITEがそれを言うか汗)。

今にして思えば・・・。
僕のこの日の席は24列の下手ブロック。
フォーラムの1階は21列目までが前方のブロックで、その後ろには出入口へと繋がる広い通路があり、22列目からが後方ブロックという造りになっています。
ですから僕の位置からは、「海にむけて」が終わった後にササ~ッと通路を走って出て行く数人の人影(ほとんど男性)が近くに見えました。暗かったから顔までは見えなかったけど、「来場していた関係者の方々がひと足早く楽屋に向かってジュリーを出迎えに行くんだな」とは思って見ていました。

その中に、鳥塚さんと島さんがいらしたのでしょう。
後になって来場していたことを知ったピー先生もたぶん一緒に。感激屋のピー先生は、ジュリーが泣きながら「想い出の渚」を歌っているのを楽屋で聴いていて、もらい泣きしていたに違いありません(すでにピー先生の今年のツアーに参加された方々は、僕のこの話にもピンと来るものがあるでしょう)。
案外、「行ってこいよ!」と2人の背中を押したのは、ピー先生だったのかもしれないなぁ。

向かって右に鳥塚さん、左に島さんに寄り添われたジュリーは、ここで完全に涙が止まらなくなり、発声すらできなくなってしまいました。
伴奏が続く中、歌が途切れています。
何とか僕もジュリーを助けるべく大きな声で歌いたいのだけれど、情けないことに2番の歌詞が出てこない・・・話にならんぞDYNAMITE!
でもご安心あれ。僕の右隣のおじさまは、とどまることなく2番を歌っていらっしゃいます。ほとんどのお客さんがそうだったでしょう。
終演後にお会いした先輩も仰っていました。「驚くくらいスラスラと歌詞が出てきた」と。
「田舎に住んでたからタイガースのLIVEは行けなかった。中学生の時にすぐ近くの街に来てくれたのがワイルドワンズ。私が初めて観たLIVEは、ワイルドワンズだったのよ」とも。

キレイに揃う会場の歌声・・・それでもジュリーの涙は止まらず、歌うことができません。ならば、という感じで、今度は自然に客席から手拍子が湧き起こりました。
「超・昭和」な「1、3拍の表打ち」の手拍子です。
これなんだなぁ・・・これなんだよ。
僕はどうしても手拍子はロックな「2、4拍の裏打ち」に馴染んでしまっているけど、「想い出の渚」は僕が生まれる前に大ヒットした曲なんだもの・・・手拍子するならこうしかあり得ないんですよね。
気がつくと、柴山さんが穏やかな笑顔で、お客さんの表打ちの手拍子に合わせています。

左右からワイルドワンズの2人に「大丈夫、大丈夫」というように寄り添われて、マイクを持つ手を震わせながら、しゃくりあげるジュリー。
最後のサビでは、(やっぱり泣き声で音程は外れまくりだったけど)ジュリーの声も戻りました。

なんとかフルコーラス歌い終えたジュリーは、ワイルドワンズのお2人をフルネームで「島英二さん」「鳥塚しげきさん」と
紹介してから、涙声で「ありがとうございました、ありがとうございました」と何度も何度も四方に頭を下げていました。
鳥塚さんと島さんが再度の大きな拍手に送られて退場したあたりのタイミングだったかなぁ・・・ジュリーが鉄人バンドのメンバーに「ごめんね」と言ったのは。
これも、この日の「想い出の渚」が突発的に歌われたことを表すシーンだったのではないでしょうか。

あのジュリーが、洋楽カバーでもない、自分の持ち歌でもない有名な曲を、その場で歌詞を確認しながら歌った・・・普通ならばあり得ないことです。それがあるとすれば、この日のこの状況下での「想い出の渚」・・・加瀬さんの代名詞でもあるこの名曲だけ。
正に例外中の例外。11.3フォーラム公演に参加したファンは、それを体感しました。
「海にむけて」の柴山さんのフィードバックに乗って、そのままジュリーの隣にとどまっていた加瀬さんも、これで満足そうにうなずいていた・・・かな?

再びお客さんに「ありがとう・・・ありがとう」と感謝の言葉を何度もかけてくれたジュリーこそが一番名残り惜しそうな様子でしたが、自らに言い聞かせるように
「いつまで経ってもキリが無いので・・・シメますよ!」
と。
「指全部使っての5本締めで・・・」

えっ、えっ、5本締め?それ分からない!
と焦るDYNAMITEでしたが、この続きはこれから書くフォーラム・レポ本編で(←川越ジュリーのマネ)。


ということで。
まだレポ本編は下書きすら始めておりません。
でもでも、じっくり、ゆっくり思いを込めて書きたいので、大幅に遅れてのupになっても、許してください。
そうなっても、「みなさまもう忘却の彼方でしょうが・・・」なんて枕の文章は必要ありませんね。皆、加瀬さんを送るツアーのことを忘れるはずがありませんから・・・。

4月の悲報が届いた直後に、いつもお世話になっている先輩が綴っていらした文章が思い出されます。


せっかちな加瀬さん・・・「あっ、時間だ時間だ」と、あっという間に旅立たれてしまったので、みんなびっくりしています

「さようなら」は本当に寂しくてたまらないけど、「さようなら」なんですね。
でも、僕はこれから本編レポ執筆の大仕事があるから、今はまだ加瀬さんにお別れは言わないでおこうと思います。引き続き頑張りますよ!




最後に、完全な余談で申し訳ないのですが・・・。
本当に有り難いことに、拙ブログもいよいよ「300万アクセス」のキリ番が迫っております。

100万アクセス、200万アクセスはいずれもザ・タイガース絡み(ほぼ虎&完全再結成)のタイミングで迎えましたが、どうやら今度の300万アクセスはザ・ワイルドワンズのこの記事でのタイミングということに。
大げさなようですが、不思議な縁と言うのか巡り合わせと言うのか、自分が初心に立ち返り、偉大なバンドへの新たなリスペクトを真に思い知るような時に、ブログのキリ番が訪れるようにできているようですね。

たぶん明後日くらいになるのかな・・・。
300万のキリ番ヒット、またはニアピン・ヒットされたみなさまへ。拙ブログでは12月に入ったら、お正月LIVE『Barbe argentee』に向けて恒例の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズに取り組む予定です。
5曲書きたいと考えている中で、僕の予想曲は現時点でまだ3曲しか決めていません。
よろしければ、「お正月にはこの曲を切望!」というキリ番ヒット記念リクエストをお待ちしていますよ~。
大丈夫・・・僕自身の予想で無ければ、セットリスト入りの可能性はグンと上がると思いますから(笑)。

それでは次回、11・3東京国際フォーラム『こっちの水苦いぞ』セットリスト&完全レポでお会いしましょう!

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2015年11月 1日 (日)

2015.10.24ウェスタ川越 沢田研二『こっちの水苦いぞ』ちょっと駆け足レポ

お待たせしてしまいました。
ジュリーと鉄人バンドは過酷なスケジュールを元気に乗り越え、いよいよ加瀬さんを送る全国ツアーも残すはファイナル、東京国際フォーラム公演を残すのみとなりました。早いものですね・・・寂しい気持ちです。

僕はと言うと実は先週、ずっと応援していたアマチュア棋士が30才の若さで病気で亡くなってしまって・・・ずいぶん落ち込んでいたのですが、なんとか気をとり直しまして、10・24『こっちの水苦いぞ』川越公演のレポートをお届けいたします。
(やっぱりいつものようなスタイルのレポだとフォーラムまでに書き終えられそうになかったので、簡単な駆け足レポとしてupすることとなりました)

さて今回の川越公演、僕は1階7列目(ここからフロアが1段高くなっています)・・・ちょうど柴山さんのコーラス・マイク真ん前というとても素晴らしい席でした。
ジュリーの動きや鉄人バンドの演奏についても色々と再発見がありました。今回書ききれなかった細かい部分については、フォーラムのレポートを今度こそじっくり書く際に、それぞれの曲目の項で思い出し書き足していければ、と考えています。

それでは。
セットリスト順に楽曲ごとの感想からサクサクと!

危険なふたり

Acollection

今回の松席を報告したらYOKO君が
「柴山さんのリフ1発目の音がビフラートかチョーキングかチェックよろしく!」
と言ってきました。
さすがに初っ端1音目チェックは無理。絶対ジュリーを見ちゃうもの・・・。
でもそれ以降のリフは結構注意して観ていました。1音目はビフラート、2音目から3音目への移行がチョーキングです。後日YOKO君に伝えると、「ギター・ストーリーズ」での堯之さんの演奏と同じだね」とのこと。

ジュリーの
「年上のひと♪美し・・・(イヤイヤイヤイヤ)」
はこの日も炸裂。隣のカミさんはじめ、多くのお客さんが声に出して大ウケしていました。

恋は邪魔もの

Acollection_2

こちらもYOKO君から指令あり。オリジナル音源にある「びよ~ん♪」というシンセサイザーが再現されていたか、という(←大宮では2人して聴き逃していました)。
泰輝さんが上段のキーボードでしっかり出していますね。音が相当長く伸びる設定らしく、手動でボリュームを絞る”神の両手”もしっかり目撃しました。

エンディング、「あっはあ~ん♪」を1個すっ飛ばして「じゃ~、つ、じゃ~、つ、じゃ~♪」の手刀アクションを繰り出してしまったジュリー。
何事もなかったかのように「あっはあ~ん♪」の部分を譜割通りに演奏する鉄人バンドをギョッとした表情で振り返りつつ、改めて正しい箇所で手刀をキメるも、最後の1和音で頭を「ポン!」と叩き「やってもうた!」みたいな表情を見せてくれました。

許されない愛

Julie2

柴山さんの「じゃ~つく、じゃ~つく♪」のバッキング。導入の1小節は「F#m」で4拍、直後に4拍目の裏で「E」のローコードへ一瞬移行してシンコペーションさせます。
ってことは半音キーを下げてるのか~。コード・フォームが見えるとどうしてもそんなことにも気づいてしまいます。あまり考えないようにはしているんですけど。

下山さんのリードギターは粘りのある音色のアドリブ。大宮とはかなり異なったフレージングで、たぶん各会場によって微妙に変わってるんじゃないかな。

死んでもいい

Acollection_3

「愛の、愛の、愛の♪」の箇所は吐息ヴォーカルが封印されていましたか?
ギリギリと絞り出すような発声に変わっていたように感じました。僕はこちらの歌い方も好きですね~。

毎週YOKO君とやりとりしているスコア研究、先週の課題曲がこれ。彼曰く「いざ弾いてみると、ギタリストの作曲として大変な名曲だと分かる」のだそうです。

白い部屋

Acollection_4

大宮ほどハッキリとした感じではなかったけど、やっぱりこの曲の2番Aメロ冒頭の歌詞で何かジュリーの胸に込み上げてくるものがあるようです。
ジュリーはどんなシーンを思い出していたのでしょうか・・・2回し目に入ると気持ちを立て直していました。

追憶

Jeweljulie

イントロ、タオルでゴシゴシゴシ・・・と念入りに顔を拭いてからこちらに向き直るジュリー。
「白い部屋」の涙を拭ったのかなぁ?

演奏は1音下げのニ短調のようです。
伴奏部のキメである「レッレ~、ファッファ、ソッソッソラ~ド♪」は、まず泰輝さんがストリングス系で弾いた後、柴山さんの「Dm→F→G→Am」のコード・プレイのぶっとい音が噛みます。この柴山さんの音がオリジナルのホーン・セクションを代行しているのですね。
それにしても、この箇所ではドミナントが「A7」ではなく「Am」なのか・・・勉強になります。

あなたへの愛

Acollection_5

今度はイントロでジャケットを脱ぎ、丁寧にスタンドにかけるジュリー。それが本当にゆったりとした優雅な動作で、僕などは浅はかにも「歌い出しに間に合わないんじゃ・・・?」などと余計な心配をしてしまったのですが、そこはさすがのジュリー。振り返ってステージ前方に進みマイクを手元に引き寄せると、それがちょうど歌い出しの瞬間という神技です。

Aメロ、柴山さんの演奏に進化が。ベースラインとコード弾きと単音オブリガートの同時プレイです!

胸いっぱいの悲しみ

Julie6

Aメロ出だしのジュリーのアクションに釘付け。この日はあまり大げさに振り降ろさずに軽くスッと動かす感じがとても優しげで、こういうのも良いものですね。
ジュリーはこの曲の途中で一瞬軽く咳き込むシーンがあったりしましたが、歌っていくうちに声に素晴らしい艶が注入されていきます。

おまえがパラダイス

Gsiloveyou

前曲から続いての3連ロッカ・バラードは、ジュリーの声がどんどん良くなってくるのを実感できます。
情熱的な掌、縦にノるアクションが曲の進行につれて
倍増されていくヴォーカルは、タイガース時代に「タイム・オズ・オン・マイ・サイド」など洋楽の3連ナンバーを歌ったことで花開いたジュリーの天性でしょう。

夕なぎ

Singlecollection1

下山さんのアコギが渋過ぎます。「跳ねる」感覚を一手に請負っている感じ。
オーギュメントの箇所は2小節続けて引っ張っているんだなぁ。同じコードなのに1小節ごとに違って聴こえるのは、アンサンブルの魔法ですね。

泣きべそなブラッド・ムーン

Kottinomizunigaizo

下山さんは出番まで仁王立ち状態。Aメロ途中のアルペジオは空間系のエフェクトで噛み、サビ直前でエフェクターを踏むと柴山さんと共にゴリゴリの歪み系に。
一方で、「柴山さん、本当にアンガス・ヤングみたいやな~」とは、AC/DCに詳しいカミさんの感想。この曲から新曲4曲通してSGですからね。

ちなみに、抜き打ちでしょあ様の個展を訪れたYOKO君は、ギャラリーに入るなり「アンカズ・ヤングどれ?」といきなりのひと言だったらしいです(「失礼なことをしてしまった」とは後日の本人談)。

涙まみれFIRE FIGHTER

Kottinomizunigaizo_2

エンディングのディレイが深くて、ジュリーはその音響設定に身体すべてを預けるような魂の咆哮を宙に向けて何度も何度も繰り返しました。鳥肌立ちました。

こっちの水苦いぞ

Kottinomizunigaizo_3

歌詞を聴いていると、本当にジュリーは今現在も為政者や経済人に言いたいことはたくさんあるだろうな~、と思うけれど、ステージのこの曲は何処までも武骨なロックです。自然に客席の手拍子が起りました。

慕ってますフォーメーション”では、柴山さんの切り替えシーンを初チェック。
おぉ、それまでのバッキング・ストロークのハイコード・ポジションをそのまま利用して移行するのか~。1小節限りの神技、素晴らしい!
下山さんのアコギはCD音源やこれまで参加した2会場とは異なり、最後のDmaj7直前にハッキリとルート音が加えられていました。4弦の開放かな?

限 界 臨 界

Kottinomizunigaizo_4

最後のリフレインのGRACE姉さんのタムが凄い!
「未熟でも若い者」達に惚れこんでしまった僕は、今は今年の新譜の中でこの曲が一番好きです。

ウィンクでさよなら

Acollection_6

イントロ、両ギタリストの前方せり出しあり。

今回の川越で一番嬉しかったのは、大宮参加後「新曲で色々と考えさせられて、その後の加瀬さんの曲に気持ちがついていけなかった」と落ち込んでいたカミさんが、この日は最後まで楽しそうにしていたこと。
新曲直後のこの曲のイントロでもすぐに手拍子していました。近くで見るジュリー、肌に直接ぶつかってくるヴォーカルと、鉄人バンドの演奏。
川越の素晴らしい席を授かった時、近くでジュリーの歌を聴けばきっとカミさんの受け止め方も良い方に変わるだろう、とは確信していたけど、本当に良かった。
新曲も凄く良かったって。嬉しい!ありがとうジュリー!

さて、ジュリーは「I love you♪」「I need you♪」の歌詞部と求愛ポーズのタイミングを少し遅らせることにしたようです。2つを同時に合わせると(体力的にも位置どり的にも)本当に大変ですからね~。

バイバイジェラシー

Stripper

何も言うことはないです・・・ただひたすらジュリーの声と鉄人バンドの演奏にノリました。酔いました。
お客さん、ジュリーが大暴れする例の箇所では大騒ぎ。
柴山さんのリードギターも相変わらず凄い・・・でも川越では僕はそこでGRACE姉さんのドッカンドッカン言わせるドラムスに痺れていました。カッコイイです!

甘いたわむれ

Singlecollection1_2

まるでわざと失敗音を出そうとするかのようなジュリーの指笛連発ですが、これがキレイに鳴って絶好調。しかも歌い出しギリギリまでやってるのは凄い・・・ブレスのコツがあるのでしょうか。
エンディング最後の最後でようやく思惑通りに(?)「スカッ」とやらかして地団太パフォーマンスを魅せてくれるジュリーなのでした。

イントロなどに登場するパーカッション、GRACE姉さんは普通にカウベルでした。何故今までウッドブロックの音に聴こえていたのか・・・(恥)。

恋のバッド・チューニング

Badtuning

これまた、狙ってやってるんじゃないか、というくらい見事な「バッ!バッ!・・・バッ!バッ!」のリピート部の先走り。「あれっ?」みたいな表情で鉄人バンドの演奏を確認する仕草に続いて正しい箇所にすぐさま舞い戻るジュリーに、僕は「千両役者」の貫禄を見た思いがしますが、本気で間違った・・・のかなぁ?

ねじれた祈り

Kitarubeki

柴山さんのベース・イントロでお客さんの「きゃあ~!」が凄いです。
間奏後、いったん出番が無くなる柴山さん、照明が当たっていなくて(ここはジュリーのピンスポット)客席からは影しか見えない状態の中、頭上で手拍子を煽る煽る!後ろの席だとこの柴山さんのシーンは見えないのかもしれないな、と思いました。

きわどい季節

Royal80

開演前にしょあ様にお会いして、「きわどい季節、途中からギターの音になるから、コンソールで変えてるのかエフェクターで変えてるのかチェックして!」と指令を授かったものですから、気合入れ直して臨みましたが・・・あらら、最初から3連のアルペジオ?
柴山さん、普通にギターじゃん!
ビックリ・・・大宮とは違う。
じゃあ、今実際に鳴ってるベース音は一体誰が?と探すと、泰輝さんの下段キーボード、左手のリズムが音と連動していました。

アドリブ部分ならまだしも、ツアー途中でバンド・アレンジを変えることなんてあるのか、それともコンソールのスタッフさんの顔ぶれによって臨機応変にやっているのか・・・本当に謎は尽きません。
YOKO君に報告したら
「どっちもあり得るし、当日の会場リハの時に全体の音響を確認してから決めてるのかもよ」
との返事でした。

転調後の最後のサビからGRACE姉さんが3連の刻みを入れてくるアレンジを確認。
それまでハイハットは淡々と1拍ずつの頭打ちですから、この最後のサビで劇的に全体の印象が変わります。必要最小限の人数、ドラムスのアレンジだけでこれほどの再現力・・・鉄人バンド恐るべし!

TOKIO

Tokio

何度も生で聴いますが、この曲ほど「アンコール」が似合う曲も無いなぁ、と改めて思いました。
ジュリーはブレイク部の片足立ち宇宙遊泳を今ツアー中ずっと通しているようですね。体力的にも相当キツイ動作だと思いますが・・・。
それにしてもここからの2着目の衣装はカッコイイです。細く見える、と言ったら失礼なのかもしれないけど、僕にはそう見えます。ただ、よくみなさまがボタンのチェックをしていらっしゃるようなのですが、僕にはそれが(近い距離で観ていたこの日も)何のことやら分からないという・・・情けない。

気になるお前

Julie6_2

この日の松席で特に楽しみにしていたのがこの曲の間奏シーンを間近で観られること。
注目は下山さんです。まず最初のソロ部では、結構上手側近くまで進出してきて動き回りながらの演奏。一度定位置に戻ったあたりでキーボード・ソロが始まるや、音もなく(いや、ギターの音は出してるけど)ドラムセットの後方に回り込み、そのまま涼しい顔でジュリーと柴山さんに煽られている泰輝さんの背後を通過。
そして上手端から前方に進み出て、ジュリー、柴山さんと3人並びになって盛り上がります。
間奏が終わってゆっくりと定位置に戻ったタイミングがちょうど「ずっ、ちゃっ、ちゃ~♪」の箇所(ジュリーがちょっとツイストみたいな動きをしてくれるところね)。
下山さんはそこまでこの箇所でジュリーに倣うようにして軽く飛び跳ねてはいたんですけど、ソロ直後のここでは1回転ジャンプをキメていました(その後の情報によると、2回転にまで進化しているとか笑)。
さて来年は、下山さんの「ポラG」3回転ジャンプを観ることができるのでしょうか。

海にむけて

Rocknrollmarch

ジュリーは途中嗚咽するような感じはありましたが、全体としては涼やかに歌っていたと思います。
僕はまだこの曲でジュリーがハッキリと「泣いている」シーンを観ていません。会場によっては時々あるみたいですね。でもそんなシーンを「観たい」なんて言うのは不謹慎のような気がします・・・。

演奏直前に下山さんがアコギを構えて「いいよ!」みたいな感じでうなずいてGRACE姉さんに「準備OK」を伝えている様子をバッチリ観ました。
続くイントロでは些細なアクシデントが。ギターをSGVにチェンジした柴山さんですが、「気になるお前」のエフェクト設定が残ったまま最初のソロを演奏し始めてしまい、「やべっ!」と足で何かのエフェクターを踏んでオフにしていました。
その間僅か2秒くらいの早業でしたよ。音色から判断すると、柴山さんがこの時オフにしたのはオートフィルターじゃないかなぁ。いずれにしてもワウ系の鳴りがその瞬間に消えましたね。


・・・と、ホント、駆け足の簡単な感想ですみません。

MCも短めでしたが楽しかったです。
メインは川越フェスタの楽屋のお話、その話にも噛んで、加瀬さんのいたずらのお話です。
なんでも、開演前のBGMに「FRIENDSHIP」をかけると、加瀬さんが「お出ましになって」ジュリーにいたずらをするんですって。

「ワタシの頭から、歌詞を抜き取ってしまうんですよ。(頭を指差して)今ココにあったものを、ス~ッと抜き取ってしまうんです。どうやったらこんなことができるのか・・・あちらの世界に行った人でないと、その方法は分からないんでしょうねぇ・・・」

と面白おかしく話してくれて、見護る加瀬さんも喜んでいたんじゃないかなぁ。
僕は、「FRIENDSHIPをかけると、加瀬さんがお出ましになってジュリーの頭から歌詞を抜き取る」というのは、ツアーについて回っている加瀬さんが、2010年のジュリワン八王子公演での「FRIENDSHIP」の出来事を思い出して、ジュリーにそんないたずらをしたくなるんじゃないかなぁと勝手に思っています。

MCはその後加瀬さんの思い出話へと続き
「加瀬さんが、ある人と会うのに(緊張するので?)どうしても一緒についてきてくれ、と言うのでついて行ったら、相手はよく知ってる人だったので驚いた」
と、とても興味深いエピソードを語り始めてくれたのですが・・・何と
「この続きは国際フォーラムで!」
と焦らしてくれちゃって(笑)。
「(お客さんとしては)今さらそんなこと言われても、もう切符は売れちゃってる、ちゅうのになぁ」
とドSなジュリーでしたが、フォーラムのチケットの売行きが好調と分かり、嬉しいお話でしたね。

全国ツアーのファイナルが11月3日、東京国際フォーラム・・・昨年とまったく同じスケジュールです。どうしても、昨年の出来事を思い出してしまいます。
今年初めてジュリーのLIVEに、というかたもいらっしゃるでしょう。昨年は大変だったんですよ・・・ステージのジュリーに話しかけるような声がけがあって、ジュリーは悲しそうに「今日は気持ちよくステージが終えられない」と話して、会場が静まりかえって。

実は川越公演でも、ギリギリの出来事がありました。
やっぱり、ジュリーに話しかけるような声があって、ジュリーが集中力を取り戻すために(?)いったんステージから姿を消す、ということがあったたのです。
(ジュリーはその時何も言わずに去っていったので、これは個人的な推測です。でも、柴山さんやGRACE姉さんの硬い表情が強く印象に残っています・・・)

僕らファンは2012年のツアー以来、「新曲を聴いた直後の気持ちの切り替えが難しい」ということに常に向き合ってきましたが、ジュリーの立場になってみると、むしろ「新曲の後」ではなく「新曲を歌う前」の気持ちの切り替えがとても大切だと思います。
今ツアーで新曲前にジュリーが「ちょっと待ってね」からうがいをしたり色々と喋ってくれているのは、そうした「間」がこれから新曲に向かおうと気持ちを切り替えるジュリーにとって必要だからではないでしょうか。

新曲前のMC、アンコール前のMCと違いはあるけれど、川越でそんな出来事を体験したばかりなので、どうしても昨年のフォーラムのことをあれこれ思い出す日々。今年また繰り返すわけにはいかないよなぁ・・・。すべては僕らファン次第です。
加瀬さんを送る今年の全国ツアーを、ジュリーや鉄人バンド、お客さん皆が心地よく充実の気持ちで終えることができますように・・・そう願っています。

ということで次回更新は、11・3『こっちの水苦いぞ』東京国際フォーラム公演のレポートです。
今度はじっくりと、いつもの大長文スタイルでネチっこく時間をかけて書きたいと思います。
全文書き上げてからの一気更新とさせて頂きますので、upは11月中旬くらいになりそう。
どうぞ気長にお待ちくださいませ~。

20151024

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