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2015年9月

2015年9月26日 (土)

沢田研二 「バイバイジェラシー」

from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981

Stripper

1. オーバチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン

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『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1981 
シングル『渚のラブレター』B面


Nagisanoloveletter

disc-33
1. 渚のラブレター
2. バイバイジェラシー

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体調も回復し、過ごしやすい季節をようやく実感し始めた今日この頃・・・と思っていたら、何とジュリー発熱のニュース。微熱状態の神戸公演を終えた直後、遂に39℃近い高熱を出してしまったのだとか。

ただでさえハードなツアー・スケジュールにあって、札幌から1日空けての仙台と、連投で振替公演の名古屋という過密な日程を厳しい体調で臨まなければならなくなったジュリー・・・とても心配です。
やはり疲れが出たのかな・・・。
それでもいざステージに上がればジュリーは全力で歌うのでしょうから、僕らファンは僅かのオフの間に少しでもジュリーの身体が休まり、早く本来の体調に戻ることを祈って、見護ってゆくしかありませんね。

さて今日は、新カテゴリーでの記事更新です。
カテゴリー・タイトルもズバリ

過去記事懺悔やり直し伝授!』(汗)

今年2015年の『こっちの水苦いぞ』全国ツアー・セットリストは僕にとって、「記事未執筆の曲が1曲も無い」という初めて遭遇するパターンでした。
長くLIVEに通っていればいずれそういうツアーもあるだろうな、とは考えていましたが、まさかこんなに早くその時が来るとは思っていなくて。

4月に加瀬さんの旅立ちを知らされ、「ツアーが始まるまで、加瀬さんの曲だけを書いていこう」と思い立ち、それはセットリスト予想とは全然別の気持ちで取り組んだことだったんですけど、ツアーの日程変更で時間ができたこともあったりして、結局僕はジュリーが歌ったKASE SONGSをすべて記事に書き終えることとなりました。
今回嬉しいことに「新曲4曲以外はすべて加瀬さんの作曲作品」というセトリをジュリーが組んでくれたおかげで、恒例の”セットリストを振り返る”シリーズで採り上げる曲が無い、という初めての状況に色々と考えました。
そこで、「過去に執筆済の考察記事の改稿」を目的とした新たなカテゴリーを作ることにしたのです。

なにせ僕は2008年末の『ジュリー祭り』がジュリーLIVEデビューというヒヨッコで、基本的にジュリーの曲について記事を書き始めたのもそれ以降。
とにかく最初は基本的な知識すらなく、読んでくださる方々がどれほどいらっしゃるのかも分からず・・・恥ずかしい内容の記事がたくさんあります。
大好きな曲なのに、その魅力の億分の1も書ききれていなかったり(「PEARL HARBOR LOVE STORY」など2008~2009年あたりに書いた記事にそうしたものが集中しています)、時が経って記事執筆時とは僕の楽曲解釈や思い入れが劇的に変化していたり(今はとにかく「若者よ」に尽きます!)。

今後、「もう全曲書き終えている」セットリストに出逢った時には、そうした記事の中から1曲を選んで「セットリストを振り返る」ことも兼ね「過去記事の改稿、清算」に取り組んで行こうと決めました。
今日はその第1回というわけですが、これはねぇ・・・本当に唯一『ジュリー祭り』以前に執筆していたジュリー・ナンバーの記事お題。
ポリドール期のアルバムをすべて聴いている、というだけで「自分はジュリーファンである」とふんぞりかえっていた頃に筆がすべって書いてしまった、どうしようもない内容のその記事について、この機会にジュリーや加瀬さん、そしてジュリーファンの先輩方に懺悔し、キチンとした形で考察記事を書き直したいと思います。

アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』収録曲にしてヒット・シングル『渚のラブレター』B面曲。加瀬さんのペンによる和製パブ・ロックの大名曲です。
「バイバイジェラシー」、今度こそ気合入れて伝授!

まず最初に、過去記事の懺悔から(汗汗)。
思えば、ジュリーファンとは名ばかりの若造がまぁとんでもない記事を書いてたもんだ、と。
この記事については、後になってから色々と恥ずかしい話もありましてね~。

2009年、ほぼ同世代ながらジュリーファンとしては大先輩でいらっしゃるkeinatumeg様と光栄にもブログの相互リンクをさせて頂くことが決まった際に、個人メールのやりとりの中で
「なかなかここまでハッキリとは書けませんよね~」
と、「バイバイジェラシー」の記事のご感想を頂いた時には、顔から火が出る思いでした(汗)。
いや、僕だって『ジュリー祭り』以降であれば、あんな記事は絶対に書けませんよ~。

さらに、今ではとても親しくさせて頂いている長崎の先輩・・・「西の検索クイーン」として日頃から大変お世話になり僕が勝手に慕いまくっているお方なのですが、何とあの記事をほぼタイムリーで検索ヒットさせていらしたようで(当時ココはジュリーファンのみなさまにはまったく知られていない、音楽仲間内輪限定のブログだったのです。おそるべき検索能力笑)、その時に
「え~と、あなた誰?」
と思われたのだそうです(滝汗)。
無理もないことです・・・今となっては自分でもあの記事を読むと「オマエ、何者だよ?」と思うもの。

本当に恥ずかしい。
あの頃は万事あんな調子で下調べもせず曖昧な記憶のまま勝手に洋楽の記事など書き殴っては「伝授!」な~んて偉そうにしていたわけで。

『ジュリー祭り』のLIVEレポート執筆後、拙ブログは多くのアクセスを頂けるようになり、特に「アーティスト名+楽曲タイトル」というパターンの検索フレーズには特に強くなったようで、過去のいい加減な洋楽記事ですら検索ヒットし易い状況となっています。
とても有難いことではあるんだけど、つい最近もビリー・ジョエルの曲の記事中の致命的な間違いをご指摘頂いたりして、これはいよいよ頃合かな、と。
この機に、『ジュリー祭り』以前にupしていた記事は削除させて頂くことにしました(コメントを頂いている記事もありますので、バックアップはしておきます)。

ただし、「バイバイジェラシー」と「デイ・アフター・デイ」(ジュリーもカバーしたことのあるバッドフィンガーの名曲)の2つの記事だけは、完全にジュリー絡みのお題ということでそのまま残し、不本意ながら恥を晒し続ける所存です・・・。「できればこっちの改稿の方を読んでください」と加筆の注釈をつけて、ね(汗)。

それでは本題。

Byebyejealousy1


↑ 今日の参考スコアはご存知、『ス・ト・リ・ッ・パ・-/沢田研二楽譜集』。スコアのページの左見開きに2枚並んでいるショットが、あまりにも有名なコレです! ↓

Stripper01

Stripper02

去年の大宮公演のMCを思い出すなぁ・・・。


さて、過去記事の執筆時点で僕にはジュリーや加瀬さん、銀次さん達への愛情とリスペクトがまったく足りず、その意味で大変恥ずかしく思ってはいますが、「ロックパイルへのオマージュ」という分析においては、今も変わらず重要な楽曲考察の軸だと考えています。
加瀬さんの作品に限らずジュリー・ナンバーの多くには洋楽ロックへのオマージュがあり、「バイバイジェラシー」はその中でも特に明快な1曲です。

オマージュ元であるロックパイル(デイヴ・エドモンズ、ニック・ロウ、ビリー・ブレムナー、テリー・ウィリアムスの4人編成。彼等については以前「DIRTY WORK」の記事で詳しく書いています)のナンバーは、アルバム『セカンズ・オヴ・プレジャー』収録の「ハート」。
モータウン・ビートのアレンジ(特にドラムス)や、AメロからBメロに至るまでのコード進行はハッキリと「バイバイジェラシー」で忠実過ぎるほどに踏襲されています。


Byebyejealousy2

↑ 「ハート」も「バイバイジェラシー」もいかにもロックなビート・ナンバーでありながら、このマイナー・コード起点のクリシェ進行でポップス色を強め、聴き手を胸キュンさせてくれます。

ロンドンでのレコーディングに現地のゲスト・プレイヤーとして招かれ、収録曲数曲で間奏リード・ギターを弾くことになったビリー・ブレムナーが、最初に「バイバイジェラシー」のプレイバックを聴いて「あれっ、これは俺達の曲を日本語でカバーしてるのかな?」と一瞬勘違いしてしまったとしても不思議は無いほどこの2曲は似通っていますが、当然ながら違う部分もあります。
まず何といっても加瀬さんの「バイバイジェラシー」が、「ハート」には無い3番目のヴァース=強力なサビを擁している、という点です。

Bye Bye ジェラシー 朝までお泣きよ
            Dm                   Am

Bye Bye ジェラシー 僕のためならば
            Dm                   C7

真夏の夜空に光る 星屑 集めてさ ♪
    Dm        Am          B♭ A7     Dm   C7

これは加瀬さんが70年代から得意技としていた平行移調の泣きメロをロックパイルのシンプルなロック解釈にぶつけてきたもので、良い意味での和洋折衷アイデアと言えます。

そして・・・『こっちの水苦いぞ』ツアーで生で体感したからこそ言える、この2曲の違い。
「ハート」はパブ・ロックの伝説的な名曲ではあるんだけど、今現在、ニック・ロウ(作詞・作曲者)にしろビリー・ブレムナー(リード・ヴォーカルを担当)にしろ、残念ながらリリース当時と同じテンションとアレンジを以ってこの曲を歌い続ける、というところにはありません。
彼等の中ですら、「懐かしの名曲」というスタンスになってしまっているんじゃないかなぁ。
ところが、2015年に歌われた「バイバイジェラシー」は、正に1981年リリース音源そのままの緊張感、演奏で再現されたが故に、「どうだ、30年以上も前の曲だが今でもバリバリに新鮮なロック・ナンバーだろ?」という説得力に満ちていたのです。

今ツアーで初めてこの曲を聴いた新しいジュリーファンは、「こんなカッコイイ曲があるのか!」と帰宅して速攻で曲目検索し、最低な考察記事をヒットさせても(恥)めげることなく、収録アルバムの情報を仕入れるやいなや早速『S/T/R/I/P/P/E/R』を買い求めたことでしょう。

さぁそこで、です。
あの酷い記事で決定的に欠落していた大切な考察ポイントをこれから書かねばなりません。
アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』で「バイバイジェラシー」を聴くことにもちろん問題はありませんが、今回のツアーでこの曲はシングル『渚のラブレター』のB面曲としてセットリスト入りを果たしています。
ヴァージョンが違うのですよ!
ジュリーは「夕なぎ」「甘いたわむれ」「バイバイジェラシー」の3曲を「加瀬さんが作ってくれたシングルB面の名曲」として採り上げたのですね(厳密には「気になるお前」もそうですが、こちらはLIVEセットリストの定番曲ですのでちょっと意味合いは違うでしょうか)。

では、アルバムとシングルの「バイバイジェラシー」、どのように異なっているのでしょうか。
いずれのヴァージョンもご存知の先輩方は、「ずいぶん違うよね~」と日頃からお考えでしょう。

ズバリ書きますよ。
演奏は、間奏のリード・ギター以外すべて同じです!

みなさま、「え~~っ?!」とお思いでしょうね。
本当にこの2つのヴァージョン、受ける印象がまったく違いますからね。

何故そんなに違って聴こえるのか・・・これは基本的に、「ミックス違い」の別ヴァージョンなのですよ。
以前「渚のラブレター」の記事でも書いたことですが、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』からの先行シングル両面の「渚でラブレター」「バイバイジェラシー」の2曲は、アルバム『G. S. I LOVE YOU』のサウンドにおける最大の個性「擬似・擬似ステレオ」のミックス手法をそのまま踏襲しているのです。
例えばドラムス・トラック。完全に左サイドに振られ、しかも極端なコンプレッサー処理が施されています。
その音作りは、例えば『G. S. I LOVE YOU』冒頭収録の「HEY!MR.MONKEY」のドラムスと比較して頂ければ一目かと思います。そっくりでしょ?
それがアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』のヴァージョンではセンターに配置され、コンプレッサーも外れて「生音」を重視した新たな処理が施されているのですね。
こうした作業は、他トラックについても同様です。

あと、絶対の確信までは持てないけど、ジュリーのヴォーカルも同一のトラックなんじゃないかなぁ。
語尾の切り方や、微妙にメロディーがフラットする箇所をそれぞれのヴァージョンで比較するとそう聴こえますし、ジュリーは当時「エキゾティクスの演奏との一発録り」を志向していたと先輩方に教わっていますから、リード・ギターの1トラックを入れ替えた「オケ」をバックに改めて歌入れだけレコーディングする、という制作手法は考え辛いのです。

それでもジュリーの声が2つのヴァージョンでまるで違って聴こえるのは、こちらもやはりミックス作業での後がけエフェクター処理によるもの。
シングルの「バイバイジェラシー」のジュリー・ヴォーカルには、A面「渚のラブレター」にも比するほどのブ厚いディレイが施されています。そうすることで、「ネオ・モッズ」的な各演奏トラックのミックス処理も強調され、歌が浮き上がるのですね。
ジュリーの声だからこそ、こうした装飾処理がバックの音を殺さない、と言うこともできるでしょう。

そして最後に語るべきが、唯一根本から差し替えられた間奏リード・ギター・・・シングルの柴山さんとアルバムのビリー・ブレムナーの比較です。
双方「職人」タイプのギタリスト。
いずれも申し分のない資質とセンスから考え、どちらがより「バイバイジェラシー」でその実力を発揮しているかと言うと・・・これが柴山さんの圧勝です!

これまで何度も書いていますが、ビリー・ブレムナーは僕がこの世で最も敬愛するギタリストです。その僕をしても、この曲については柴山さんの弾く間奏の方が全然良いな、と思うのですよ。
そして、その素晴らしいシングル・ヴァージョンのリード・ギター・テイクよりも、『こっちの水苦いぞ』ツアーで魅せてくれた2015年LIVEヴァージョンのギターの方がさらに素晴らしいのです。本当に凄いことです。
これが今回の「バイバイジェラシー」改稿記事に臨んで、僕が一番書きたかったことかな~。
もちろんそれは、ジュリーの歌についても同じことが言えるんですけどね。

ビリー・ブレムナーを少し擁護するなら、数曲のリード・ギターのオーヴァーダブ、加えてポール・キャラックとのコーラス録りは1日数時間のみの作業、しかもその場でのぶっつけ本番だったと思われます。
ただでさえ抜群の一体感を誇るエキゾティクスのアンサンブルの上から、時間を置いての後録り作業というのはハードルが高いだろうに・・・それを思えば、やっぱりビリーも凄いギタリストなんだよなぁ。

それにしても、「バイバイジェラシー」を生のLIVEで体感できる日が来るとは思ってもいませんでした。
そして、これほどファンに支持されている曲なんだ、と実感できたこと・・・。今回のツアー・セットリスト入りが無ければ、あの酷い記事は執筆者本人の僕が見て見ぬふりをしながら、放置され続けていたでしょう。
改稿の機会を得たことに感謝したいと思います。


それでは次回更新は、来週29日にいよいよ開幕するピー先生と二十二世紀バンドの2015年全国ツアー『Let's Go”カキツバタ”』初日、くにたち市民芸術小ホール公演のLIVEレポートをお届けする予定です。
執筆途中の更新はせず、すべて書き終えてのupとしますので、ジュリー界が渋谷3daysの余韻覚めやらず、という状況下での更新となるでしょう。渋谷に不参加となってしまった僕は、みなさまの渋谷公会堂ファイナルのご感想も首を長くしてお待ちしていますからね~。
ピー先生のLIVEについては、発売されたばかりの新曲も充分聴き込むことができていますし、何と言っても昨年に引き続きとても良いお席に恵まれましたので、気合の入ったレポートが書けると思います。

あと、シルバーウィーク前くらいまでは
「ピー先生のLIVEレポートの下書きを中断してでも、「Rock 黄 Wind」の記事を急遽仕上げなければならなくなるかもしれない!」
と、阪神タイガースのセ・リーグ制覇を本気で期待していましたが、どうやら儚い夢と散ったようです(涙)。
阪神って、何故シーズン終盤にヤクルト、巨人と競る展開になると毎回ダメなんでしょうね・・・?

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2015年9月21日 (月)

沢田研二 「ビロードの風」

from『JULIE』、1969

Julie1

1. 君を許す
2. ビロードの風
3. 誰もとめはしない
4. 愛のプレリュード
5. 光と花の思い出
6. バラを捨てて
7. 君をさがして
8. 未知の友へ
9. ひとりぼっちのバラード
10. 雨の日の出来事
11. マイ・ラブ
12. 愛の世界のために

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長らく更新が滞ってしまいました。
12、13日の東北旅行の後にちょっと体調を崩してしまったからなのですが、僕の体調はともかく、この2週間ほどの間、色々なことがありましたね。
また大変な水害が起ってしまいました。ちょうど旅行前のことだったものですから、こんな時に呑気に観光なんて良いんだろうか、とも考えてしまったものでした。

19日には、安全保障関連法案の成立。
僕は、あの時国会前にいた前向きな若者達に惚れこんでしまったようです。だから、法案が成立してもふさぎこんだりはしていません。
ジュリーブログである限り、このことについてはこの先もここで色々と書く機会があるかと思います。
来年から数年が正念場となるでしょうから、ジュリーが次のお正月LIVEでさらに気合を入れ直してくることは必至。「若者よ」を歌ってくれるんじゃないかな?


さて、今日は楽曲考察記事ではなく、旅行後恒例の(汗)旅日記です。
「初秋の東北を満喫してきましたよ~」ということで、ジュリーのファースト・アルバムから、秋の風の匂いのする名曲「ビロードの風」をタイトルにお借りしました。
しょうもない個人的な忘備録日記ですが、よろしければおつき合いくださいませ。



☆    ☆    ☆

僕にとっては、新幹線の車内販売アルバイトをしていた大学生時代以来となった東北の地。
懐かしい思い出の一方で、あの震災からずっと「行かなければ」と思いつつ長々と延びてしまっていた悔恨、さらに今回の大雨の被害直後ということで複雑な思い入り乱れる出発となりましたが、「行くからには楽しんでこよう」と自分に言い聞かせました。

今回利用の新幹線は、行きは『やまびこ』、帰りは『はやぶさ』を選びました。
僕のアルバイト時代、東北新幹線で最も速かったのが『やまびこ』で、あの頃はそれ以外に上野-仙台間を各駅で走る『あおば』というのがありました。東海道新幹線になぞらえると『ひかり』が『やまびこ』で『こだま』が『あおば』となります。今はもう『あおば』は無いのかなぁ?たまたま見かけなかっただけかな?
東海道新幹線に『のぞみ』が登場したように、東北新幹線も今では『はやぶさ』『はやて』といった超特急があり、僕が今回乗った『やまびこ』は、仙台駅以北は各駅停車となっています。
往路はそれら駅の風景を20代の思い出と共にゆっくり楽しみたいと考え、『やまびこ』を利用することにしたのです。

郡山駅を過ぎるとすぐに、アルバイトで日々見ていた頃の印象深い記憶の風景・・・懐かしい思い出に出逢えました。
とにかく山、山、山です。僕の故郷である九州・鹿児島本線の車窓も山並みは多いんですけど、東北の山々はそれがひとまわりもふたまわりも大きい!そして広い!
懐かしさ、自然の素晴らしさに癒されます。
ただ、いくつも横切る川がことごとく水位を増していて濁流となり、轟々と流れているのも目にしました。改めて、この度の大変な被害の大きさ、自然の怖さを感じずにはいられません。

福島、仙台、一関・・・2011年のあの大震災の爪跡は、新幹線の車窓からでは確認できません。
やはり、それぞれの地に降り立ってみないと分からないことは多いのでしょう。またいつか必ず、と思うばかりです。

さて、『やまびこ』は無事に盛岡に到着。
で、すぐに乗り換え・・・秋田新幹線『こまち』に初乗車します!
実は今回の盛岡行きを決めてチケットも購入した後に、じゃあどの辺りをうろつこうか、と話していて、僕が「ローカル線に乗り換えて角館まで行く時間はあるのかな?」と言い出したんです。
歴史好き(ほとんど戦国専門ですが)の僕は、角館が武家屋敷で有名なことは知っていましたし、だいたいの位置(内陸部で岩手県に近い)ことも分かっていましたから。ただ、肝心のことを知らなかった・・・まさか、秋田新幹線が盛岡駅からローカル単線の田沢湖線に乗り入れて延びていたとは!
これまで僕は、秋田新幹線って普通に山形から奥羽本線を北上しているものとばかり思い込んでいました・・・(恥)。

秋田新幹線『こまち』は基本『はやぶさ』と合体した状態で盛岡まで行き、そこで西の秋田方面と北の青森方面に分かれているのですね。つまり、東京から直で角館まで行く新幹線があったのです。
それを今回の旅では、わざわざ盛岡で新幹線同士を乗り換えざるを得ない事態に(汗)。
まぁやらかしてしまったことは仕方ない、ということで結局盛岡駅構内で乗り換えの角館行きの特急券と乗車券を購入したんですけど、そこでまた驚愕。なんと、全席指定の新幹線にもかかわらず、指定席をとる必要が無い!という・・・。
駅員さんも普通に「空いてるお席に自由にお座りくだされば」と。
実際乗車すると
「指定席のお客様がいらっしゃいましたら、席をお譲りください」
との車内アナウンス・・・まるで「そんなことはないと思うけどさ~」みたいな感じの大らかな雰囲気です。
れっきとした新幹線なのに・・・いやぁ素晴らしい!これが田舎(失礼)旅の醍醐味です。

盛岡に着いたのがちょうどお昼どきでしたから、『こまち』車内で駅弁ランチとなりました。
もちろん僕もカミさんも、地元っぽいお弁当を選びましたよ~。

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↑ 僕が選んだのは、『岩手のおべんとう』

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↑ カミさんは『鶏めし弁当』

それにしても、田沢湖線ののどかな景色の中を、普通に信号を越え、小さな無人駅を通過して「新幹線」が埼京線くらいのスピードで走っていくというのは、不思議な感覚でした。

そんなこんなでさぁ角館に到着!
僕はこれが「人生初・秋田県」でございます(これで未踏の都道府県は石川、富山、島根、鳥取の4県になりました)。

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↑ 駅校内で頂いた小冊子

いやぁ歩きました・・・この地図丸々歩いた感じです。

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角館で2時間ほど過ごし、『こまち』で盛岡にUターン。ホテルのチェック・インを済ませて市内に繰り出しました。

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↑ 地元のゆるキャラたち
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盛岡ではこの日は偶然『材木町よ市』という市が開催されていて、歩行者天国の通りに露店がひきめきとても賑わっていました。普通のお母さん達がグビグビとビールを飲みながら野菜や精肉などを選んだりしていましたね~。

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↑ 最初「ぶ市」と読んでしまいました。「よ市」です!

さらにあちこち歩き回って夕方6時頃に、盛岡城址近くの『ハタゴ屋』さんで早めの夕食。
カミさんが食べログで下調べしていた小さなお店で、本当に路地裏にひっそりとあって見つけるのに苦労しましたが、若いお兄さんが2人で調理、接客している素敵な雰囲気の小料理屋さんでした。

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おでんが美味しいとの評判で、大根、竹輪、玉子などを頂きました。他にカツオ刺身、豚のほほ肉焼きなども美味しかった!
料理の写真を撮り損ねたのですが、1枚だけ、壁に貼ってあったポスターに目が留まり撮影させて頂いたのがこれです。

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宮古、久慈などの地域はこうした多くの人達の努力で少しずつ復興の道を歩んでいます。
まだまだ道半ば・・・しかし「前よりも良い町に」と今も頑張っている地元の人達がいらっしゃることを、あれから4年経とうと、またこの先何年経とうと僕らは忘れてはなりません。


しばらくしてホテルに戻り・・・昼寝ならぬ夕寝(笑)。起きたのが午後9時過ぎで、「まだ閉店には間に合う!」ということで、こちらは僕が食べロクでチェックしていたラーメン店『柳家』さんへ!
僕はお店イチオシの「キムチ納豆」を注文したんですけど、カミさんが注文した「はやぶさ」というのが抜群に美味しくて、途中で交換してもらって結局そちらばかり食べました(笑)。

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↑ 「キムチ納豆」

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↑ 「はやぶさ」

いずれも中太麺のストレート、バリカタです。
「はやぶさ」は一見モヤシソバのようですが、濃厚な醤油味のスープが絶品。東京の有名店で例えると、『野方ホープ』さんのスープをちょっと甘めにしたような感じかな~。
とにかく「歩いて、食べて」の初日でしたね・・・。

翌日。宿泊したホテルでは、朝食バイキングがついていました。

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カミさんが少し体調を崩したので、予定していた小岩井農場訪問とランチのわんこそば体験はまた次の機会にと断念し(実は、わんこそばの男性平均が30杯~40杯と聞いて、普段から小食の僕は若干ビビっていたのでちょっと安堵したという汗)、これまた偶然開催されていた市内のお祭り(厳密にはその前日祭)を見学。

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盛岡は、このお祭りを機に「秋が来る」のだとか。

午後3時前の帰りの新幹線『はやぶさ』に乗る直前には、地元に住んでおられる先輩(昨年、ジュリーの『三年想いよ』盛岡公演の申し込みを代行させて頂いたかたです。あの時は何とかギリギリ1桁席に恵まれてホッとしました・・・)がわざわざ見送りに来てくださり、イクラとホヤのお土産まで頂いてしまいました。ありがとうございます!

自分で自分用のお土産はそれほど買わなかったんですが、個人的に気に入っているのがこれ。

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↑ 八戸産「一味にんにく」


1泊2日の慌しい日程ではありましたが、東北の地・・・まずは盛岡の空気を堪能できました。
また機を見て仙台、福島と訪れてみたいものです。
ジュリーのLIVE日程と僕らのスケジュールが合えばそれが一番いいんですけどね・・・。

楽しい旅でしたし、お祭りの雰囲気もあってか盛岡はとても元気な街だという印象を持ちましたが、やはりあの震災について、その後の復興の道のりについて、関東に住んでいる僕らとは比較にならない強い思いというものが地元の人々の心の中にはハッキリとあるようです。
『ハタゴ屋』さんにあったポスターにもそれを感じましたし、駅構内の本屋さんにはこんな手作りポップのコーナーも。

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(許可を頂き撮影しております)

僕が目にしたのはこれらほんの少しだったかもしれませんが、改めて思うのは、地元のみなさんが今最も恐れているのはやはり「風化」なのだと。忘れられてしまうことなのだ、と。
ジュリーは「襲い来る風化」と歌っています。それだけは防がなければなりません。
僕らひとりひとりが、いかに「当事者」として物事を考えられるか。今、それがつきつけられているような気がします。

☆    ☆    ☆

最後に、今回の旅日記のタイトルを借りたジュリーの「ビロードの風」について少しだけ。
フォトポエムでのジュリーは完全に冬の格好ですね。


Taleofwind

でも

通りすぎて    ゆくものは 人生
A          Bm7(onA)  A           D(onA)

風の  ささやき はかない夏のうた ♪
Bm7(onE)  E7           A            E7

安井さんのこの詞は、ちょうど今くらいの季節のことを描いているんじゃないかなぁ。
「TALE OF WIND」の英タイトルも渋いです。

トニック、add9、sus4が入れ替わるギターコード・カッティングで導入するあたりは、アルバム5曲目収録の「光と花の思い出」と同じアレンジ手法。
今、ジュリーファンは全国ツアーと共にZUZU=KASE作品にシビレっ放しの日々を送っていますが、安井さんと村井邦彦さんのコンビもまた素敵ですよね・・・。


それでは、次回更新は”『こっちの水苦いぞ』ツアー・セットリストを振り返る”シリーズ。
今回のセットリストは全曲記事としては書き終わっているのですが、中にひとつ「あまりに酷い」内容のものがありますので、懺悔改稿したいと思います~(汗)。

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2015年9月 8日 (火)

2015.8.29大宮ソニックシティー 沢田研二『こっちの水苦いぞ』セットリスト&完全レポ

それでは、満を持して!
多くのみなさまにとりましては、もう完全に「夏の思い出」状態でありましょうが・・・8月29日大宮公演のレポートをお届けいたします~。

今回は、恒例の「執筆途中でupしてから日々ネチネチと加筆していく」スタイルではなく、全文書き終えてからの一気更新としました。
これを下書きしている間に、ジュリーと鉄人バンドのツアーは西へ西へと・・・大阪フェス、広島、長崎と、それぞれの会場参加までネタバレ我慢、と仰る先輩方を何人か知っておりましたので、頃合や良し、でしょうか(長崎ご参加のみなさま、おかえりなさいませ~)。
中には名古屋公演までネタバレ我慢!という猛者のかたもいらっしゃるのでしょうが、拙ブログでは今日の大宮レポートをもちまして、『こっちの水苦いぞ』ツアー・セットリストのネタバレ解禁とさせて頂きます。

いやぁ、一気更新という書き方は久々(ほとんど初めてか?)だったんですが、いつもの書き方と比べそれぞれの曲やMCについて思い出すことが多かったです。
執筆途中の更新だと、セットリストの進行順に書いていきますでしょ?そうすると、基本書き終えた曲についてはその後振り返ることはしないんですよ。
ところが今回は最初から「全部書き終えた後にupする」と決めていたので、曲をランダムに書いていったのね(一番最初に書いたのは「きわどい季節」)。
で、曲順をあちこちさまよいながら書いているうちに、すでに書いた曲でのジュリーや鉄人バンドの様子を後から思い出すんです。それはMCも然り。
結果、いつもよりしっかりした内容のレポになったかも。

side-Bの方に書く「ツアー初日」のレポは速報的な意味合いもあるので、あのスタイルで良いとは思うけど、今後はこういうやり方でレポを書いた方がいいのかなぁ、と思いました。タイムリーなツアーの流れに乗り遅れた感じにはなりますけどね。

さて、今年の大宮も例年通り、この日まで鋼鉄の意志でセットリストのネタバレを我慢していた盟友・YOKO君と並んでの参加となりました。
彼は毎回、自分の大好きな曲や想定外のレア曲などのイントロが始まるとエキサイトして隣の僕を殴ってくるんですけど、例年であれば完全に「無」の状態で、事前にジュリーの曲を改めて聴き返すということも特別せずにその日を迎える彼が、今年はどうやら世間の「今年のセトリは特別」という雰囲気を察したのでしょうね・・・1週間くらい前から妙にソワソワしていて。
いきなり「無になれ俺!」とメールを寄越してきた(笑)かと思えば、2日前には
「ジュリーのDVD見ながら袈裟斬りチョップの練習中!」
などという、(僕にとっては)脅迫メールが。

「袈裟斬りチョップ」というのは、若くして亡くなってしまったトップ・プロレスラー、故・橋本真也選手の代名詞でもある痛め技です。
橋本選手は僕らにとっては同世代のスーパースターだった人で(ちなみに、橋本選手はジュリーファンとしても有名でした。 そのあたりについては以前、「
勝手にしやがれ」の記事で書いています)、YOKO君は加瀬さんのあまりに早過ぎる旅立ちを、橋本選手の思い出と重ねてしまったみたいですね。
当日大宮で会うなりYOKO君は
「俺、今日は橋本で行くから!」
と宣言。どうやら今年の僕は、グーではなく手刀で殴られる運命らしい・・・。

開演前、そごうの山野楽器さんに寄った後お茶したんですけど、聞けばYOKO君は2日前からずっとジュリワンのDVDを観まくって過ごしていたそうです。
と言うのは・・・。

さすがの彼も今年のツアーではまず加瀬さんのことを考えて、加瀬さんへの個人的な心残りとして
「俺・・・ジュリワンのツアー(彼とは川口公演に共に参加)で”渚でシャララ”をやった時、みんな踊ってんのに1人だけポケットに手を突っ込んでスカし気味で観てたんだよね。今さらながら加瀬さんに申し訳なくてさ・・・」
ということで、何とYOKO君、「2日がかりでシャララ・ダンスの練習をしていた」ことを告白!
でね。
最初、鳥のかぶりものしてるあのPVを観て練習、完全にマスターしたみたいで「さて、おさらいするか」とジュリワンのDVD観たら
踊り、違うじゃね~か?!
と(笑)。

結果、彼は2パターンのシャララ・ダンスを覚えてこの日に臨んでいたという・・・。
結局セトリにYOKO君期待の「渚でシャララ」は無かったわけだけど(その代わり、ダンスは打ち上げで披露してくれました笑)、曰く
「あのYOKOがダンスまで覚えてきやがったんだな、と加瀬さんも思ってくれたと思う」
とのことで、「加瀬さんを送るLIVE」と臨んだ彼の気持ちは、終演後も変わりはなかったようです。

入場後、2人ともテンションが上がり過ぎていたせいか、座席番号を10コ間違えて座るという大変恥ずかしい失態もありましたが、そのおかげで記事にコメントを頂いていた先輩との「はじめまして」もできましたから、まぁ結果オーライということにしましょう(汗)。
で、仕切り直して着席した正しい席が、何とコンソールの真後ろだったのです。
ミックス&音量設定丸見え、ついでにセットリストも何処かにメモがあるはず・・・ということで、YOKO君は興味深々ながらも薄目状態です。
この席に恵まれたおかげで、「ねじれた祈り」では大いに得をしましたが、それはまた後ほど詳しく。

橋本選手モードのYOKO君、セットリストへの期待が一気に膨らんできたようで
「今日(のセトリは)、雪崩式まで行く?」
と。
これは、橋本選手最大の決め技である「雪崩式ブレーンバスター」のこと。「袈裟斬りチョップ」「重爆キック」「DDT」で相手を痛めつけた後の、勝負を決する大技として有名で、つまりYOKO君は
「俺がそこまで大技を繰り出さなきゃならないほどの素晴らしいセットリストなのか?」
と聞いているわけです。
僕は「たぶん行くんじゃない?」と炊きつけておきました。実際は「それ以上」まで行っちゃうんですが・・・。

開演前のBGMは「FRIENDSHIP」でした。
初日にかかった「僕達ほとんどいいんじゃあない」と同じく、新しく短めにミックスし直されたテイクで、曲が進むにに連れて場内の灯りが暗くなってゆく、という演出。
フェスのMC情報によれば、ジュリーは今ツアーのBGMとしてこの2曲を用意し、会場、日程によって使い分けているようです。
僕は早くも2パターンを体験できたことになるけど、いやぁ改めての感激・・・「FRIENDSHIP」はヤバいですよ。初日以上に泣けてきます。
加瀬さんの旅立ちを知った時、2010年のジュリワン八王子公演でのこの曲の加瀬さんの笑顔を何度思い出したことか・・・あの日の「FRIENDSHIP」はこれまで僕の体感してきたジュリーLIVE、それぞれの会場、それぞれの楽曲の中で一番強く思い出に残っています。
1曲だけのLIVEレポートを本編とは別に書いちゃったくらいですからね(こちら)。

でも、「僕達ほとんどいいんじゃあない」が流れた時のYOKO君の反応も見たかったな~。
何と言っても彼はジュリワンのアルバムの中であの曲が一番好き!という珍しい(?)ジュリーファンですから(この件についての詳しい記事がこちら)。
ジュリワン川口公演の打ち上げで、「ジュリワンは紅白に出るんじゃないか?」みたいな話になった時、「渚でシャララ」で出るのか、いや「涙がこぼれちゃう」で出て欲しい、などと皆が話していたらYOKO君が

「僕達ほとんどいいんじゃあない、で出て欲しい」
と言い出して、「ええ~~っ?」とその場にいる全員に退かれていたっけ・・・。

場内に流れる「FRIENDSHIP」を聴きながらYOKO君は
「この曲がかかる、ってことは1曲目はシャララだね?」
とワケの分からないことを言いながら、張り切ってダンス・スタンバイです(笑)。
開演!

1曲目「危険なふたり

Royal

イントロ、早くもYOKO君から激しいアタック。練習してきたシャララ・ダンスこそ叶わなかったものの、いきなり
イエ~!
とか叫んでます。
彼曰く「試合開始早々に袈裟斬りチョップの連打」となった1曲目・・・これは「レアな曲が来てエキサイトした」のでは当然なく(さすがのYOKO君もこの曲は何度も生で聴いてます)、「初っ端からコレかよ!」という喜びの表現だったのですな~。
オープニングBGMが流れた時点で「加瀬さんを送るステージになる」ということはファンなら誰しも分かりますから、1曲目が「危険なふたり」と来れば説得力抜群。
「始まったぞ!」感が凄いですものね。

YOKO君とは常々、「柴山さんは「危険なふたり」のリフの1音目をチョーキングしているかどうか」で議論することがあるんですけど、音だけ聴けば僕には完全にチョーキングに聴こえます。
でもYOKO君は、実際に映像を観たりして「それがどうもチョーキングじゃないみたいなんだよ」と(DVDを観る、と言っても、このリフ部で柴山さんの手元のアップを抜いている映像は現時点では2人とも見つけられていないので、画面の端の小さな1点を凝視する、という粘り強い集中力が必要になります)。
で、ジュリワンのDVDで確認した時もそう見えた、ということで・・・彼はこの日まず柴山さんの手元を注意して見ていたんだって。
「やっぱりチョーキングじゃないよ」
だそうです。
じゃあ、あの「きゃっ、きゃら、きゃらら、きゃらら~♪」というあのリフの最初の「きゃっ♪」はスライド或いはビフラートだけの表現ってこと?
一体どれほどの指圧なんだ、柴山さん・・・。

最後のリフ部でYOKO君が興奮した様子で下手側を指差すので何かと思ったら、下山さんが完全にベースのパートを弾いてる!
この「鉄人バンドがギターでベースラインを弾く」パターンについては、先程少し触れた「コンソールの真後ろ」という今回の座席でしか確認できなかったであろう手法を19曲目「ねじれた祈り」で目の当たりにしましたので、そちらで詳しく書きたいと思います。
いずれにしても、ジュリーに「無理してベースやらなくてもいいよ」と言われたこともあるという鉄人バンドですが、今でも曲によっては「擬似ベース」の手法を泰輝さんのキーボードのみならず柴山さん、下山さんいずれかが受け持つことがあるのだ、ということが今ツアーでハッキリ分かりました。

お馴染み、ジュリーの「年上のひと・物色ヴァージョン」は大宮でも激しく炸裂。
「今日のお客さんは特にアカンわ~」
といった感じで「美し過ぎる♪」と歌いつつ大きなゼスチャーで歌詞を完全否定するジュリー(笑)。
ああいう時、実際にジュリーに物色された前方席のお姉さん達って、「何よ!」と怒っちゃうものですか?
それとも、「それでも愛している」?

2曲目「恋は邪魔もの

Acollection

イントロでは案の定、YOKO君の袈裟斬りチョップが来ました。小声で「そういうことね?」と。
「加瀬さんの曲ばかりをやるってことね」と早くも確信した、と言うのでしょう。鈍感で飲み込みの遅い僕とは、さすがに感性が違います。

さて、この日僕はこの曲でエンディングの「あっはぁ~ん♪」に注目しました。
え、今さら何言ってるのかって?
恥ずかしながらDYNAMITE、「恋は邪魔もの」でのジュリー・ヴォーカル最大の魅力が「あっはぁ~ん♪」にあり!というおそらく全ジュリーファン共通の認識に、つい先日までまったく気づけていなかったというたわけ者なのです(その証拠に、楽曲考察記事ではあれほどの大長文にもかかわらず、「あっはぁ~ん♪」にはひと言も触れていない恥)。

いや、きっかけはね・・・saba様が「この曲をカラオケで歌おうなんて考える男性がいるのかな?」みたいな感じのことを書いていらして、「へ?」と。
僕、これまでに何回も歌ってます。
「あっはぁ~ん♪」も普通にハミング・メロディーとして歌っていて、何の意識もしていませんでした。これがどれほどたわけたことであったか、saba様のお言葉でようやく気づかされたという次第・・・。

「ジュリーほど、雰囲気で歌っているように見えて”歌”を歌っている人はいない」というのは尊敬するJ先輩の名言なんですけど、プロの歌自慢の歌手ですらジュリーの曲をカバーすると「あら?」みたいな感じになるのは、どうもその辺りに起因するんじゃないかと。
ましてや素人のカラオケなんてねぇ・・・(汗)。自分がどんなふうに「あっはぁ~ん♪」を歌っていたのかと思うと、今さらながら青ざめるばかりです。

よくよく考えると、「恋は邪魔もの」がシングル・リリースされるやいなや、目利きの女性ファンや由緒正しいアイドル・メディアが瞬時に「あっはぁ~ん♪」に着目し「この曲はこのジュリーの声がなければ!」と共通の認識を持ったことは、多くの先輩方が残していらっしゃるであろうお宝資料が証明してくれているんですよね。

まずシングル盤の歌詞・・・僕はレコードは持っていませんが、『シングル・コレクション・ボックス』で当時のレイアウトを確認できます。


Koihajamamono1

ハミング部に歌詞表記はありませんね。
これはまぁ当然です。普通に考えればこの「あっはぁ~ん♪」は「歌のノリ」の手管としてハミングであり、特に安井さんの歌詞として書かれてはいないのですから。
明記しようと誰かが考えたとしても、せいぜい英文字で「Ah...Ah...」とする程度に留まったでしょう。

ところが、テレビやラジオで実際に多くの人がこの曲を聴いた後では、ジュリーへの愛が深ければ深いほど、そうはいかなくなってきた・・・らしいのですよ。


Koihajamamono2

↑ 『YOUNG SONG』76年6月号

Koihajamamono4


↑ こちらは出典不明の切り抜き

このように、「あっはぁ~ん」とまでは書かないにせよ、「これはちゃんと明記しないとダメ!」というジュリーファンの念の為せるところでしょうか、いずれの資料も

ああー ああー あはー あはー

という明確な表記があります。

ジュリーは当時このエンディングで、最初の2回を「あっあ~♪」、次の2回を「あっはぁ~ん♪」と歌っていたパターンが多かった・・・ということなのかな?
いずれにせよこれは、ジュリーの魅力を正当に評価できていたメディアやファンの「当然」のジュリー・ヴォーカルへの敬意として、「あっはぁ~ん♪」が市民権を得た、ということだったのではないでしょうか。

ということで、これまでは「何となく」という曲の流れの感じで聴いていた「あっはぁ~ん♪」を大宮では改めて生のジュリー・ヴォーカルで堪能。
やっぱり凄いね~。
初日は気づきませんでしたが、ジュリーが「あっはぁ~ん♪」をキメるごとに、「きゃあ~」と喚声も起こっていました。勉強になります(←ホント気づくの遅過ぎ)。

~MC~

アンコール前のMCは結構色々と思い出せたんですが、この最初のMCの記憶があやふやです。
「少し涼しくなると聞いていたのに・・・蒸し暑い!」と言っていたのはこの時だったのかなぁ。

(ツアーの日程変更を受けて)「この大宮は、なんとか予定通りに行うことができました」と。
大阪フェスの情報なども合わせ考えるとジュリーはどうやら、当初の予定通りに行われた会場と指定振替公演となった会場とで、最初のMCの内容を丁寧に変えているようです。
几帳面で律儀なジュリーらしいですね。

「GRACEも無事復活しました」には会場も大拍手。
僕が覚えてるのはこのくらい(汗)。
他にも何か面白いことを少し喋ってくれていたはずなんですけど・・・すみません~。

3曲目「許されない愛

Julie2

ひょっとしたら3曲連続で袈裟斬りチョップ来るかな?と身構えていましたが、YOKO君はこの曲のイントロで地蔵のように固まっています。
ここから7曲目「あなたへの愛」まで、YOKO君からの激しいアタックはありませんでした。
確か6曲目「追憶」のイントロだったと思うけど
「瀬戸口さんごめん、殴ってる余裕無いわ・・・」
と、ため息みたいな声で彼が言ったんですよ。
いや、分かるなぁ・・・思えば僕も初日はそうでした。
加瀬さん作曲のシングルA面ナンバーが次々に繰り出され、ただただ圧倒されるしかない、という状態。彼もそんな感じだったんじゃないかな。

いやぁ、それにしてもこの曲の下山さんの粘っこいリードギターは良い!正にゴリゴリ系!
一方の柴山さんはルートで低音をカバーしつつ
「じゃ~つく、じゃ~つく♪」
とコードを弾いています。
この「つく♪」が「ブラッシング」というギター弾きにとって基本中の基本テクニックなんですけど、柴山さんがやると味わいが違うと言うのか、金属の擦れるような音までもが何か語りかけているような感じで、これまた素晴らしいですね~。

サビのジュリーの躍動を見ていると(掌をバッ!と前方に突き出す動きとか)、僕は世代的に(「許されない愛」のタイムリーな記憶が無い世代です)西城さんの「ロ~ラ!」のアクションを思い出すのです。
「許されない愛」が無ければこの世に誕生しなかった、ジュリーのこの曲を踏襲した70年代の名曲・名演というのは、本当にたくさんの例があるのでしょう。
そう言えば、西城さんはデビュー当時、「広島のジュリー」と呼ばれていたそうですね。

4曲目「死んでもいい

Acollection_2

終演後のYOKO君曰く、「このあたりはもう、立ち尽くすしかなかったよね」と。
やはりツアー初参加の彼にとって、「初めて生で聴く曲」が降臨した時の感動、戦慄は凄いということなんですね。この曲は特に歌詞も演奏も強烈ですし。
ただしYOKO君
「一瞬、”愛に死す”ってタイトルが頭をよぎった」
とも告白。全然違う曲じゃん・・・と言いたいところだけど何となく分かる気はするなぁ。

初日にはチェックできなかった下山さんの演奏は、割とスタンダードなコード弾きだったなぁ。ということは泰輝さんが左手でベースを弾いているんだろうか・・・。
「死んでもいい」のオリジナル音源にはサイド・ギターのトラックはありませんから、下山さんが「僕のパート」を新しく作っていることは確実。ならばコード・ストローク以外にもっと色々と細かいことをひっそりとやっているかもしれません。次回再度チェックします。

柴山さんのリード・ギターも初日に劣らず凄まじかったです。ただ「凄い」というだけでなく、井上バンド演奏による初のジュリー・シングルであるこの曲のオリジナル音源への、並々ならぬリスペクトを感じました。
今回のこの曲での柴山さんのギターは、60年代後半から70年代前半にかけて確立された、ファズ・ギターを意識した音作りになっていると思うんです。それは井上バンドの時代の音、とも言えますよね。
そのせいか、時々『太陽にほえろ!』のサントラっぽい雰囲気も感じさせたり。

また、オリジナル音源へのリスペクトということで言えばGRACE姉さんのドラムスも。
YOKO君も「とても病み上がりとは思えない」と言っていたように、バシバシと「打つ」ドラムスです。
今回のセットリストで「70年代ロック」を最も感じさせるのは、この曲の演奏ではないでしょうか。

エンディングのリード・ギター部は柴山さんにピンスポットが当たって、その狂おしい表情や腰振りのアクションもバッチリ観てきました。
最後の「じゃっ、じゃ~ん♪」でパッ!と照明がジュリーメインに切り替わる演出も素晴らしい!

ジュリーの「んはぁあいの、はぁあいの、はぁあいの!」は、初日ほど激しくはありませんでしたが、声自体は大宮の方が艶っぽかったですね~。

5曲目「白い部屋

Acollection_3

前日の鎌倉公演でもそうだった、と後になって知りましたが・・・。この日はラストの「海にむけて」でも涙を見せることなく、全体を通して爽やかに明るく加瀬さんの曲を歌い続けていたジュリーが、ただ1曲途中で嗚咽し涙声になってしまったのが、この「白い部屋」。
2番、Aメロの歌いだし部分でした。
ジュリーが歌詞から加瀬さんを思い出してしまったことは明らかですよね・・・。

ジュリーはこの日アンコール前のMCで、加瀬さんの家に遊びにいった思い出話をしてくれたんですけど・・・たぶん「白い部屋」2番の歌詞はジュリーにとって「思い出そのまま」だったのではないでしょうか。
きっと2人で(加瀬さんは椅子に座って)、買ったばかりのレコードを聴きながら、楽しい時間を過ごしていたのでは・・・。そんなふうに想像すると、やっぱりジュリーの歌を聴いていてこちらも泣けてくるんです。
仕方ないよね、加瀬さん。
ただ、加瀬さんの曲はどんなに切ない短調のバラードでも、清潔で爽やかな感じがします。この曲などは正にそうですよね。

僕は今回のセットリストの中で、「生で体感してそれまでとは比べものにならないほど好きになった曲」を挙げるなら、まずこの「白い部屋」です。
下山さんのアコギも素敵でしたから、初日が終わってからよくこの曲を自分でもアコギで弾いています。決して派手ではありませんが、しみじみ名曲です!

6曲目「追憶

Jeweljulie

本当に、何なんでしょうね・・・この曲でのジュリーの神々しいヴォーカルは。
間奏で囁かれる「ニーナ・・・!」も、エンディングのロングトーンによる「ニ~~ナ~~~♪」も・・・どの「ニーナ」も、どうしようもなく「歌」なんですよね。

これもまたジュリーにとっては加瀬さんの思い出と強く結びついている曲に違いありませんが、ここではジュリーは何かが降りてきたように、良い意味で「加瀬さんが作ってくれた大切なヒット曲」を披露する、という感じで無心に歌います。
ツアー前に書いた考察記事で僕は「もしこの曲がツアーで歌われたら、ジュリーもお客さんも泣いてしまうのでは?」と書きましたが、どうやら少し違うようですね。
ジュリーにも長いファンの先輩方にも、「偉大な曲」へのリスペクトがまず大きくあるのでしょう。もちろんそこに加瀬さんへの感謝があることは前提として。
きっと、加瀬さんへの感謝の気持ちがジュリーの悲しみをくるんでくれているんじゃないかなぁ。
それが「誰もが知る大ヒット曲」の醍醐味であり、ある意味宿命なのかもしれません。

YOKO君は「白い部屋」と「追憶」が続いている曲順が興味深かった、と言っていました。
彼も僕ほどではありませんがスコア好きで、よく似た短調の曲想でありながら、「白い部屋」は最後まで短調で通し、「追憶」はサビで長調に転調する、という比較の面白さを堪能したようです。

恥ずかしながらこの日初めて気がついたのが、泰輝さんのキーボード(右手のパート)が完全に「ストリングス」の音色で統一されていたんだなぁ、と。
オリジナル音源で登場するホーン・セクションの音や全体の厚みは、柴山さんか下山さんのギターが複音でフォローしているみたい。これは次回参加の川越公演(渋谷は残念ながら不参加となりました涙)でのチェック・ポイントとなりました。

あと、間奏の「じゃっ、じゃっ♪」では、コード進行に合わせて照明も切り替わっているんですね。

7曲目「あなたへの愛

Royal3

僕が『ROYAL STRAIGHT FLUSH』3枚のリマスター盤を聴いたのを機にジュリーに嵌り(いわゆる、第1次ジュリー堕ち期)、長年の友人であるYOKO君も実はジュリーが好きだった、と初めて知り・・・すっかりジュリー談義が日常となっていった最初の頃に、彼が「イチオシ」と言っていたのがこの「あなたへの愛」。

当時、YOKO君が「『ロイヤル~』に入ってないシングルもイイ曲たくさんあるよ!」と言ってくれて、僕は彼が持っていた『A面コレクション』を借りることになるんですが、受け渡し前にこの「あなたへの愛」だけはメールに添付して先に送ってきてくれて。
僕が、「いや、これロイヤルの『3』に入ってるから知ってるよ」と電話をかけたら、「えっ、なんでこれが『3』なの?」みたいな話になったっけ・・・。

当時僕はヒヨッコもヒヨッコですから、『ロイヤル』の歌詞カードの作曲者クレジットのとんでもない誤植をそのまま鵜呑みにしていて、「あなたへの愛」をジュリーの作曲作品として喋っていて、YOKO君と全然話が噛みあわなかったりしたこともあったなぁ・・・。
あの誤植は、今は(再版などで)修正されているのでしょうか。非常に気になります。

File0507


↑ これです。ちょっと酷いよねぇ・・・加瀬さん?

さて、YOKO君もやはりこの曲での柴山さんの演奏に加瀬さんを感じたそうです。
ちなみに彼は僕と違ってギターモデルにはすぐ目が行くようで、開演前のセッティング段階から「おっ、柴山さんSGじゃないね!暗くてよく見えね~けど、あれ何?」と目ざとく尋ねてきて。
彼がSGVから加瀬さんを連想できることは確信していたので、「始まってのお楽しみ」とその時は言うにとどめました。予想通り、開演早々に「加瀬さんのためのギターだ!」と感激したみたい。

で、打ち上げで僕がしきりに
「作曲家・加瀬邦彦への世間の評価は低過ぎる!」
と力説していたら
「もちろんそれもあるけど、ギタリストとしての加瀬さんの凄さを世間は分かってない。ジュリワンのDVD観ててつくづくそう思った」
のだそうです。
「柴山さんは今回SGVで、まず偉大な先輩ギタリストへの敬意を表したかったんじゃないのかね・・・」
と、しんみり顔のYOKO君なのでした。

またYOKO君は「キー下げてた?この曲(あなたへの愛)はいくらジュリーでももうオリジナル・キーで歌うのは厳しいんじゃない?」とも尋ねてきました。
僕は最近そういうことはなるべく気にしないように心がけてLIVEを楽しむようにしてるんだけど、「あなたへの愛」は下山さんがアコギのコード・ストロークですからね・・・どうしてもフォームが目に入っちゃう。

結論から言えば、下山さんは転調後のサビをGで弾いていましたから、1音ぶん下げての演奏です。
ただね、1音下げただけではメロディーの最高音は高い「ソ」の音なので、67才の男声でこれが楽々歌えるジュリーはそれでもとんでもなく凄いんですよ。
全然無理してる感じを受けません。同じ「ソ」の最高音の曲でも、例えば最近の「カサブランカ・ダンディー」あたりでは苦しげに聴こえる時もあるし、要は「あなたへの愛」のメロディーの流れが、ジュリーの声にピタリと合っているということなのでしょうね。

1番Aメロでの柴山さんのフレット・スクラッチは大宮でも健在。あと、意外とここ、細かい単音の演奏が歌メロの裏で挿し込まれていました。
初日はほとんど気づかずスクラッチにばかり気をとられていましたが、これは今回柴山さんの編み出した新たなアレンジじゃないですか?
そっと、決して出すぎずジュリーのヴォーカルを縫うように弾いているところに、柴山さんの人格を感じさせた、名曲中の名曲での隠れた名演でした。

8曲目「胸いっぱいの悲しみ

Julie6

「あなたへの愛」まではひたすら圧倒されて立ちつくしている状態が続いていたYOKO君、この曲のイントロで反撃の袈裟斬りチョップ復活!
僕は『歌門来福』で体感していたけど、彼は初めて生で聴く曲。大興奮したそうですよ。

ただ初日のレポにも書いたように、『A面コレクション』を借りた頃、彼はこの曲について「俺はこの曲イマイチ・・・演歌みたいでさ」と言っていたんですよね。
打ち上げでそのあたりを突っ込むと
「いや、もちろん(そう言っていたことは)覚えてるよ。でもその後アンタと一緒になってアルバム聴き始めて、『JULIEⅥ』聴いた瞬間にこの曲も大好きになったんだよね・・・「朝焼けへの道」の次にあのイントロが来ると「素晴らしい!」ってなってさ」
だそうです。
その感覚は分かる!それは僕にとっての「許されない愛」のパターンだな~。
『ロイヤル~』や『Aコレ』で聴いてた時には特別な衝撃は無かったのが、『JULIEⅡ』というコンセプト・アルバム・ストーリーの中の1曲として聴いているうちに「凄い!」と思って大好きになったというね。

参考までにご紹介しておきますと、YOKO君のジュリー・アルバムの好みは『Ⅱ』はさほどでもなく、『Ⅵ』『いくつかの場面』『チャコール・グレイの肖像』『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』『BAD TUNING』といったあたりがフェイバリットです。
そうそう、アルバム『ジュリーⅥ ある青春』と言えば・・・打ち上げでは
「”船はインドへ”はこの先歌うことはないのかねぇ、今回無かったからもう無理だよね~」
と語り合いました。これはその場にご一緒したメンバー全員が同じように思っているようでした。

この日の「胸いっぱいの悲しみ」では、ジュリーのしなやか?なめらか?なAメロ冒頭の腕のアクションも一層冴え渡り、ただ見とれるばかりでした。
このアクション、73年当時からやってたんですか?
これは曲中で合計4回も見られますからね~。間違いなく今ツアーでのジュリーのアクションの中、ひときわ目を奪われる大きな見どころのひとつです。
腕を上げる瞬間の仕草もヴォーカルと連動していてカッコイイけど、直後に「スッ」と振り下ろす動きが、なんとも言えず豪快かつ気品がありますね。
ヴォーカルも、この先どんどん凄くなると思う!

9曲目「おまえがパラダイス

Gsiloveyou

ガンガン!と肩にアタックしてくるYOKO君。
橋本選手になり代わった攻撃は、この彼の大好物ナンバーの降臨により「袈裟斬りチョップ」から「重爆キック」へと移行していた、のだそうです。知るか!

いや~、2人で参加した『ジュリー祭り』の東京ドーム2階バルコニー席で殴り合いしてから早7年目・・・ようやくもう一度この曲を生で聴くツアーが来たよね~。
まぁこの曲はこの先LIVEに参加し続けていればいつかはまた聴ける、とは2人とも確信していたけど、今回の加瀬さんを送る特別なセットリストで体感できるというのがまた、格別嬉しいのです。

ジュリーのヴォーカル、圧倒的です。ジュリーが歌うために生まれたようなロッカ・バラード。どんな上手い歌手がカバーしても、ジュリーのようには歌えない曲。
きっと他の人が歌うと余計な力が入っちゃうんだよね。
この曲を歌うジュリーは、無の境地でリズムに入り込んでいて相当情熱的に見えますが、実は凄まじく自然体です。自らの資質を正直に晒しています。
その持って生まれた声とロッカ・バラードへの適性で、一見凄く力んで熱唱しているように感じるんだけど、実は違って・・・それがあの素晴らしいヴォーカルになって、加瀬さんのメロディーに魔法がかかります。

アルバム『G.S.I LOVE YOU』が完成した時、加瀬さんは「シングルはこの曲で間違いない!」と自作曲の「おまえがパラダイス」を推したのだそうですね。
ジュリーの歌で、完全に手応えを得たのでしょう。
こんなジュリーの凄味をすぐ近くで、しかも自作曲でまざまざと体感するってどんな感覚なのかなぁ。

サビの盛り上がりも素晴らしかったですが、「千里を~飛んだ♪」の自然な情感・・・これぞ男・ジュリーのカッコ良さ。メロディーへサラリと同化する声も素敵だなぁ、と思いながら聴いていました。
気がつくと、ジュリーの歌の後ろで鳴っている泰輝さんのオルガンがすごく効いていて。目立たないですが完璧なバックアップです。さすがは音の料理人!

10曲目「夕なぎ

Singlecollection1

YOKO君としては、前曲とこの「夕なぎ」までが「重爆キック」タイムだったみたい。
イントロのコーラスの瞬間、「うわ!」と素早く反応し、バシバシと横腹を突いてきました。

初日のレポで「この曲はYOKO君は即座に反応できないだろう」と失礼なことを書きましたが、直前にジュリワンのDVD観てればねぇ・・・あの時の「セシリア」は柴山さんのソロなどかなり魅力的な演奏を堪能できますから印象は強いですし、当然「ジュリーのソロだと、これ”夕なぎ”なんだよな~」と考え、音源をおさらいしたりもするでしょう。
あと、彼は小学生の頃によく遊びに行っていた叔母さんの部屋で『コバルトの季節の中で』のシングルレコードを何度も聴かせてもらった思い出があり(叔母さんは”みつこ”さんっていう名前らしいですよ)、それで「コバルトの季節の中で」が今でも大好きな曲なのだそうですが、終演後にしみじみと
「よく覚えてないんだけどさ、絶対B面の「夕なぎ」も聴かせてもらったことはあるはずなんだよね・・・」
と。

鎌倉ではこの曲でジュリーが歌い終わった後に、まるで「加瀬さん、どこにいるの?」といった感じで会場を隅々まで見渡すシーンがあった、と聞きました。
ある意味、今回のセットリストの中で一番「加瀬さんのメロディー」のイメージを象徴している(とジュリーが考えている)曲は、この「夕なぎ」かもしれません。

初日、イントロで下山さんがアコギに持ち替えたのを見た記憶があるのに肝心の演奏している姿の記憶が無くて・・・「あれえっ、エレキだったかなぁ」とレポを書きながら自信が無くなっていたんですが、この日はしっかりチェック。やはりアコギでした。
やわらかなストロークで、爽やかモードの下山さんでしたね。でも下山さんって、怪しげモードの曲の演奏の方が記憶には残りやすいですよね・・・。

~MC~

「ちょっと待ってね」
と言ってペットボトルの水を飲むジュリー。

「本当は水分だけでなく塩分もとらなきゃいけない」ということで、色々な人が「あれがいいよ」「これがいいよ」と教えてくれるんだけど、結局
「ワタシは水が一番いい」
とのことです。
「こういうホールではお客さんは飲食禁止ということになってますが・・・みなさんよく我慢できますね?」
と。
いえいえ、ステージ上のジュリー達に比べれば楽過ぎて申し訳ないくらいなのです・・・。

ちゃんとキャップをはめておかないと、ライトに当てられたりとかして化学反応が起こって(?)不純物が混じる、など結構長々と水分の話をしてくれたんですが、最後いつの間にかマイクの左手ではなくペットボトルを持つ右手でしゃべっていたという(笑)。
気づいたジュリーは
「今・・・水に向かって喋っとった!」
とかなり本気の自分ツッコミがあって、場内は大爆笑でございました。その後、この「ペットボトルで喋る」ネタは定番化(?)した模様です(大阪フェス情報)。

いつものように「次は新曲を歌います」と制作経緯を紹介してくれて、「被災地すべてに祈りを込めて歌います!」・・・これ、毎回言ってくれていますが、決して「型通りの挨拶」ではありませんよね。
本気も本気、大本気ですものね。
「祈り」「怒り」「悲しみ」もすべて本気で歌うジュリー。

で、水分の話が面白かったのでついうっかり「新曲前のMCで一瞬姿を消す」と言われている下山さんの動向をチェックし忘れました。気がついたら普通に立っていらっしゃいましたが・・・どうだったのでしょう?
姿を消してる雰囲気は感じなかったんだけどなぁ・・・。

11曲目「泣きべそなブラッド・ムーン

Kottinomizunigaizo

新曲4曲については、YOKO君のネタバレに気を遣うことなく開演前に話ができました(鉄人バンドの具体的な演奏分担についてはさすがに黙っていたけど)。

YOKO君曰く、とにかく「泣きべそなブラッド・ムーン」の採譜は大変だった、と。
僕は右サイドのギターのテンション・コードを教えて欲しくて彼に採譜を頼ったわけなんですが、鍵盤をやらないYOKO君としては、「ピアノだけの箇所はお手上げなんだよね・・・」だそうで、最後に「AonG#」なんて分数コードをひねり出したりしてて。
残念ながら今回も泰輝さんの鍵盤についてはまったく見えず、確認はできませんでした。鍵盤だけは、2階から双眼鏡で見るしかないものね~。

初日の僕はジュリーの歌に圧倒されていたぶん、大宮ではじっくり鉄人バンドの音を聴きました。
この曲、CDではエレキギターだけで4つのトラックがあるんです(おそらく柴山さんと下山さんが2トラックずつを録ったのではないでしょうか)。
考察記事では
「右サイドから聴こえる空間系のエフェクトのサイドギターが、ステージの立ち位置とは逆で下山さんの演奏に聴こえる」
と書いたのですが、LIVEでの再現を踏まえるとどうやらそれは合っていたようです。
Aメロの「優しさじゃ違うから」の箇所でハッキリするのが、柴山さんはパワー・コード、下山さんはテンション・コードという分担。これはどちらもCDで右サイドに振られているトラックの音なのです。
ステージでは、ハーフ・ディミニッシュもシャープ・ナインスも下山さんの演奏でした。きっとCDでもその通りだったのでしょう。

ラストの泰輝さんのピアノの和音は、YOKO君の採譜だと「G#m7(11)」。
最初に見せてもらった時は「ええっ?」と思いましたが、これは音源を聴き直して、合っていると思いました。ギターで弾こうとするととても人間の指では押さえられないようなフォームになりますが、ピアノだと自然に出せる音なんですね。

ジュリーのヴォーカルから受けた印象は、初日と同じでした。確かにジュリーは怒りを歌っている・・・被災地の苦痛を軽んじる人達に、実際に自分の見た南相馬の全部を花束にし手渡したい、と。
それでも僕はジュリーの声に癒される・・・その優しい声に、ジュリーの花束を受け取りたい、と思う。
CDで最初に聴いた時には正体の分からなかった感覚が、生のジュリーの歌声を聴いたことで、徐々に僕のこの鈍感な胸にも降りてきてくれたようです。

12曲目「涙まみれFIRE FIGHTER

Kottinomizunigaizo_2

下山さんがいぶし銀の捌きで一瞬を斬り裂く「振り飛車」とすれば、柴山さんは大局感で厚みを築き押し出す重厚な「本格居飛車」。
・・・って、将棋の戦型に例えてもほとんどのみなさまにはよく分からないかと思いますが、鉄人バンドのギタリスト2人はかなりスタイルが違うんですよね。
そんな2人が同じバンド内で、しかもジュリーのバックバンドとしてここまで磐石にキャリアを継続している不思議な奇跡。でも、タイプが違うからこそお互いの演奏へのリスペクトが、長く続ければ続けるほど強まっていくものなのかな。

「涙まみれFIRE FIGHTER」の柴山さんのリード・ギターでは、もちろん顔を歪めて弾きまくる間奏も素晴らしいけど、僕はイントロなどに登場する「レ#~ド#~シ~ソ#~、レ#~ド#~シ~ソ#~♪」のスローハンドが特にグッときます。
これは譜面表記すると1小節に4分音符が均等に4つ並ぶだけ。でも実際に柴山さんが弾いている4分音符はすべて同じ長さではないわけです。
微妙にシンコペしていたり、遅れて鳴らしたり。
1小節の中に、譜面では表せない起承転結がある感じで、当然ビフラートも1音1音違います。

「最も機械音による再現が困難な楽器」と言われていたギターも、最近はリアルな音色と装飾で打ち込むことができるようになっているけど、今ツアーの「涙まみれFIRE FIGHTER」でのこの4音のリフレインに象徴されるように、打ち込みでは絶対に表現できない、「人の演奏」に限る感動的な演奏というのは断固あるのです。
それと同様に僕は、どんなにコンピューターが強くなろうと、「人間が指す将棋」が見たいよ!・・・ということで先程強引に将棋に例えたわけなんですけど。

柴山さんはこの曲で最後の最後に、「ジェット・サウンド」も披露してくれます。
これこそが、ジュリーの歌う「襲い来る風化」をフランジャーで表現した演奏。ジュリーの歌声だけではない・・・柴山さんのギターも叫んでいます。

あと、この曲は今年の新譜4曲の中で最もヘヴィーな曲想だと思いますが、「涙まみれFIRE FIGHTER~♪」とタイトル・フレーズを歌う箇所でほんの一瞬だけ、明るいブルースのニュアンスが登場します。
この時のジュリーの声が良い!
語尾の「たぁあ~♪」の揺るぎなさは天性です。メロディーにコーラスがかぶってくることで、余計にジュリーの表現が際立っているように感じました。

エンディングでは、この世のすべての欺瞞を切り裂くようなジュリーの咆哮。これもまた正に「人間の声」でしかあり得ない歌であり、感動ではないでしょうか。

13曲目「こっちの水苦いぞ

Kottinomizunigaizo_3

さぁこの曲です。開演前にお茶していた時にこの曲の話になり、YOKO君は
「最後、下山さんはエフェクター踏むと俺は思ってる!」
と言っていました。
もちろん僕はそれ以上話を深めずスルーしましたが、「コイツもこの曲の演奏についてはエンディングが見せ場だと思ってるようだな・・・よしよし」と。

つまりYOKO君は(初日前の僕と同様に)「下山さんは最後までエレキで通す」と当然のように予想していて、コーダ部に入る瞬間にアコギ系のエフェクトをかけるんだろう、と考えているのです。
今ではエレキギターでアコギっぽい音を出すエフェクターは数多くあります。さすがにアコギそのものの音にはなりませんが、結構それっぽい音は出せます。
ですからYOKO君の予想は至極当たり前かつ(それでも)演奏者として難易度の高いもの。
「下山さんならそのくらいやってくれる」
というYOKO君の期待、分かります。
ただ、さすがの彼もそれを凌ぐ神技が用意されているとは夢想だにしていなかったようです。

こりゃ楽しみだ!というので、すみません・・・大宮でも僕は”おいっちに体操”には参加せず、じっとYOKO君の反応を窺っておりました(あ、確かにこれ、「TOKIO」「気になるお前」のような正調の”おいっちに体操”ではなかったですね。ジュリーの気持ちとしてはファイティング・スタイルなのかな、と思いました)。
途中、アコギスタンドのセッティングに気がつくや、案の定激しく僕の肩を揺さぶり、ステージ下手のローディーさんを必死に指差すYOKO君。いや、僕は初日に見てるんだから・・・知ってるって。

で、エンディング。
打ち上げで聞くところによると、下山さんがリフを弾きながらゆっくりとスタンドに向かうのを見てYOKO君は、初日の僕とまったく同じく
「いや・・・それは無理でしょ!」
と思ったんだって。

この曲のリフは4小節でひと塊になっています。
その最後の1小節(塊の中の4分の1)だけを柴山さんが弾くわけですが、その間僅か3秒(YOKO君も「3秒だよね」と後で言ってました)の間隙を縫って、下山さんはアコギをスタンバイ・・・リフのひと塊ぶんならともかく、繋がっているフレーズの途中でいつの間にか演奏者が変わっている、という超絶の手法。
とは言え、みなさまも気をつけてさえいれば、この”慕ってますフォーメーション”は絶対に聴きとることはできます。下山さんと柴山さんのギターの音色設定は、まったく同じではないのですから。
柴山さんとしては最後の2小節を
「がっがっがっがっ、ちゃ~ららら~ら~、らら~♪」
と弾くことになるわけで(「がっ」の箇所は「G7」のダウン・ストローク)、単音に移行した後も音色の設定はそのまま。下山さんの音と比べると空間系のエフェクトが強めで、やや細い鳴りになっていますよ~。

YOKO君は、とにかく唖然としてこのエンディングの一部始終を見ていまして・・・下山さんの美しいアコギのコーダが終わると熱烈な拍手と共に、ひと言。
「まいりました・・・」

ただ、打ち上げではその時の僕の様子について
「俺は下山さんと柴山さんに参っただけで、その場でなんでアンタに”どや顔”されなきゃいけないのかが分かんないよね・・・」
と言ってました。
彼の中ではその時点で、僕はもう重爆キックでヨレヨレになってる設定だったみたいです・・・。

14曲目「限 界 臨 界

Kottinomizunigaizo_4

いつもお世話になっている長野の先輩から有難いお申し出を頂き、日程変更により初日に参加できなかったカミさんも、この日急遽別席で参加していました。
その感想がね・・・。
「とにかく新曲を歌うジュリーが怖いくらいだった、特に「限界臨界」は怖かった」
と。
確かに大宮でのこの曲の最後のシャウトは、初日とは比較にならないほど凄かったんです。YOKO君も「強烈過ぎて言葉にならない」と言っていたくらいで。
終演後カミさんは
「新曲を聴いた後の”光り輝いていた頃”の曲達に気持ちが入っていけなかった。日本もいつか戦争するんやろな、ジュリーがこんな楽しい曲(「ウィンクでさよなら」や「バイバイジェラシー」)を歌ってた平和な時代は二度と来んのかな・・・」
と考えて気が沈んでしまった、と泣きそうになってて。
ちょっとビックリしたけど、その感性は「誠」だと僕は思う・・・あまりに浮かれてLIVE中にそういうことは僕自身は忘れてしまっていたんだけど。

今回のセットリストは、真ん中の新曲4曲が「現実」で、あとは加瀬さんとの思い出、なんですよね。
加瀬さんの曲を乱暴に「過去」「夢」とは言えないけど、そうした構成であることは真実。
でも、帰宅してから色々と話しました。
「ひどい時代にならないように、戦争なんかしないように、と気合を入れてジュリーは今年も新曲を歌ってくれてるんだから」
と。

それに、今はジュリーの歌だけじゃない・・・正直僕は今年の新曲の考察記事を書いていた頃には「どのみち、もう止められない」という諦めの気持ちもありました。
実際止まらないかもしれない。でも「何度でも作り直せばいいんだ」というポジティヴで粘り強い、頼もしい若者達が登場して、今は凄く励まされています。
「馬鹿にした」上から目線の物言いを怖れない彼等の「未熟」こそ、大きな魅力。ジュリー、凄いよ・・・「未熟」は褒め言葉なんですね。
「未熟でも若い者」だからこそ、未来があり可能性があり希望がある、と今は思えます。

2010年(ジュリワンの年なんだよね・・・)にジュリーが歌っていたことが予言であったかのように、2015年、若者は目覚めました。
「君達がボスを選べよ!」
「見護り支えて行くのが、俺達老人!」
・・・って、さすがに僕はまだ老人ではないけど、最近ジュリーの「若者よ」の歌詞が沁みています。
ジュリーも今、「限界臨界」の歌詞を書いていた頃よりずっと前向きな気持ちになっていると思う・・・来年のお正月コンサートでは、「限界臨界」「若者よ」の2曲を続けて聴きたいな~。

15曲目「ウィンクでさよなら

Royal2

初日はここで「新曲から間髪入れずKASESONGSへ」という流れに戸惑いましたが、ツアー2度目の参加で僕は早くも慣れたようです。ステージ上のジュリー達の切り替えが見事過ぎる、というのもあるでしょう。

ただ、ツアー初参加のYOKO君はやっぱり「ええっ?」と思ったみたい。イントロでは暴れることなく一瞬困ったように薄く笑っていましたね。
「新曲の後にすぐにコレ?マジですかジュリー!」
みたいな感覚だったのではないでしょうか。
今までのツアーでは、新曲と続けて歌っても違和感のないテーマであったり、内容の曲が配されてきましたから・・・「溢れる涙」とか「F.A.P.P」とかね。

やっぱりこの「限界臨界」→「ウィンクでさよなら」の流れには、最初は誰でも驚きますか・・・YOKO君、手拍子参加までには少し時間がかかっていたようでした。

さてサビの「求愛ポーズ」ですが、ステージを小走りに駆けて前方に進出し、その場で手を差し出し片膝を立てる、というスタイルに変わっていました。
いや、片膝立ての最終形は変わらないんですけど、初日は完全に「ズズ~」と膝でスライディングしていたんですよ。衣装が痛んじゃったのでやめたのかなぁ?
いずれにせよ今回の「ウィンクでさよなら」は、神席のみなさまにとっては至福の1曲でしょうね・・・。

前日にセットリストのおさらいをしながらチェック・ポイントを頭に入れていた時には覚えていたのに、鉄人バンドがどんな演奏をしているのか確認するのをすっかり忘れていました。泰輝さんがどんなアレンジで臨んでいるのか、リフは誰が弾いているのか・・・。
『ジュリー祭り』と同じである、とは言えないのが鉄人バンドの醍醐味なのでね~。
でも、ピアノの音が鳴っていたのは覚えています。Aメロ直前のグリッサンドが強く印象に残りました。

16曲目「バイバイジェラシー

Stripper

やはりイントロでは隣から激しいアタックが(笑)。
この曲と次の「甘いたわむれ」で僕は「DDT」という大技を食らっている設定だったようです。橋本選手になりきったYOKO君、予想外のレア曲の降臨に興奮し、いよいよ仕上げにかかりました。

初日からそうでしたが、やっぱりジュリーがダメ押しで大暴れする曲後半の盛り上がりが凄いです。会場全体が「きゃあ~っ!」となります。
「バイバイ、ジェラシ~♪」のトコでは、ジュリーに合わせてステージに向かって「バイバイ」のアクションを繰り出すお姉さん達も多数。
で、しょあ様も書いていらしたけど、正にジュリーが大暴れしている時の柴山さんのギターが、とんでもなくカッコイイんですよ~。かなり難易度の高いピッキング&運指をしているはずなんですけど、ほっとんどフレット見ないで笑いながら弾いてますからね。
柴山さんはきっと、モータウン・ビートの演奏が大好きなんだと思います。いつか「Tell Me...blue」も鉄人バンドの演奏で生で聴いてみたいなぁ。
一方で間奏ソロでの柴山さんの動きはね、あれはすごく理に適ってるんですよ。
ネックを胸くらいまで持ち上げる動きとか。これは、「A・C・B」で似た感じのアクションが見られます。
ちなみにビリー・ブレムナー(ロックパイル)もまったく同じ動きしますよ~。

あと、この曲はGRACE姉さんのドラムスも素晴らしい!
みんなが「きゃあ~っ!」と言っている中、タムでドッカンドッカン音量上げる箇所が特に好きです。

17曲目「甘いたわむれ

Singlecollection1_2

YOKO君(=橋本選手)の「おお~~っ!」という雄叫びと共に、「DDT」曲が続きます。これは、まだツアー初日まで日数があった頃に加瀬さんのことを色々と2人で話していた時よく話題に上がっていた曲。
「こんな完璧な曲がシングルのB面なんだもんなぁ」と。
YOKO君も「ひょっとしたら歌ってくれるのでは?」くらいの小さな期待はあったようですが、いざ実現!となれば彼の興奮状態もMAXに。

イントロのGRACE姉さんのエイトの刻みは、やっぱりカウベルではなくウッドブロックの音色のようでした(初日のレポ・・・「ウッドストック」って書いてある汗。そのうちこっそり修正します・・・恥)。

ジュリーはノッケから指笛を鳴らそうとしますが、「ス~」とか「ほぴ~」みたいな抜けた音が多くて、「ありゃっ?」みたいな顔をしながら何度も何度もトライ。
この指笛、最新の広島情報では最後の最後に「やるぞ、やるぞ」とスタンバイしておいて、見事にスカッ!とやらかしてしまい、地団太を踏んでいたとか?
そう考えると、『ワイルドボアの平和』の「俺たち最高」あたりはとんでもない神技が炸裂していたんですねぇ。ちなみに僕は指笛はまったくできません。確かYOKO君は何とか鳴らすくらいはできたはず。この日はそれどころじゃなかったみたいで、やってませんでしたが・・・。

リードギターは柴山さんだったはずだけど、下山さんがどんな演奏をしていたのか初日に引き続きまたしてもチェックし損ねています。
この曲も「死んでもいい」同様に下山さんは「僕のパート」を新たに作っているはずですから、次回はしっかり確認しないと・・・。
ただ、ホーンセクションのパートがキーボードではなくギターだったような記憶があるんですよ。もしかすると柴山さんと下山さんの2人がコード・プレイでバリバリにリフを弾いていたのかもしれないなぁ。

18曲目「恋のバッド・チューニング

Badtuning

YOKO君が橋本選手になりきっているならば、この曲で僕は垂直落下式ブレーン・バスターを食らう覚悟でいたわけですが・・・YOKO君、イントロでいきなりにこやかに握手を求めてきた!(笑)。
後で聴いたら、「期待はしていたけど本当に聴けた」という感動が大きかったとのこと。
もちろん『ジュリー祭り』がLIVEデビューの彼はこの日が初体感となる大ヒット・ナンバーです。

いつもお世話になっている先輩は、初日「はじめから♪」の箇所で無意識に指立て腕上げしちゃって焦ったらしいですが、ステージを見たらジュリーも「あの頃と変わらず」やっていたので嬉しかったと。
そこから「ちょっとずれてる周波数♪」へのあの流れるような掌アクションは、やっぱりカッコイイのひと言です。ジュリーは本当に自然にこういうハッチャけた動きができるんですよね~。

柴山さんがバッキングで、オブリガートの単音は下山さんが担当していたことを確認しました。
初日はそこまで見る余裕が無かったので、すっかり逆だと思い込んでたなぁ・・・。あの単音を弾くがために、下山さんのアクションが激しくなっているようです。
今ツアーは例年にもまして下山さんがゴキゲンに見えるんですけど、「さもありなん」なニュースが飛び込んできました。下山さんもかな~り好きそうな伝説のバンド、テレヴィジョンが来年1月20日の来日公演決定!
その日付、ジュリーのお正月コンサートとバッティングしそうじゃない?とみなさま思われるでしょ?ところがジュリーとのバッティングはあり得ません。
何と何と、日本を代表して彼等と対バン張るのが、あのルースターズですよ!
もちろん下山さんも出演します。下山さん、今から大いに張り切っていると思います。
僕も参加したいけどなぁ・・・ど真ん中の平日か~。

「バッド・チューニング」の話に戻りまして・・・どうやら今ツアーのジュリーはあくまで「ばっ、ちゅにん!ばっ、ちゅにん!」のコーラス部を歌うことに決めてるみたい。
「ばっ、ちゅ~に~~ん♪」の主旋律は、次にこの曲が採り上げられるツアーまでお預けかな~。
この曲は今後これっきり、ということは無いと個人的には思います。いきなり来年のお正月でもう一度聴けるかも、その時には・・・と期待してみます。

19曲目「ねじれた祈り

Kitarubeki

そしてこれです!
何気なくミキシング・コンソールを見ていたら、「恋のバッド・チューニング」が終わった後、ミキサーさんがパッとひとつのトラック出力を切り替えたんですよ。
音量レベル表示から、切り替えられたそのトラックが柴山さんのギターであることは分かりました。それを、まったく別の設定のトラックに切り替えたということは・・・そうか!と。

初日のレポートを書いた後、頂いたコメントをはじめ何人かの先輩方が「”ねじれた祈り”のベース音は柴山さんが弾いてましたよ」と教えてくださったのですが、僕は「それはちょっとあり得ないなぁ」と決めてかかっていたんです。
どんなエフェクターを使ったって、あそこまで「擬似ウッドベース」みたいな音はギターだけでは出せない・・・だから、おそらくイントロなどに登場するベースは泰輝さんのシンセで(お正月からずっと、この曲のレポートではウッドベースは泰輝さんの演奏、と何の疑いもなく書いていました恥)、柴山さんはウッドベース独特のスラップ音をギターで再現していたんだろう、と考えたのでした。
とんでもなかった!

ステージ上の5人以外に、目の前にもう1人のプロフェッショナルがいるんだ、と悟った大宮。

柴山さんのベース(今ツアー・セットリストで今のところ確実に分かっているのは、「ねじれた祈り」の一部と「きわどい季節」全編です)演奏は、ステージ上で鳴っている音を、ミキサーを通して再構築されたものだったのです。
あらかじめベースに近い音色になるようミキサーさんが設定したトラックに、瞬時に柴山さんのギターの出力を切り替えているんですね。

ミキシングによる「音作り」は、ステージ上のエフェクターによるそれとは異なります。
例えば、エコーをどのくらいかけるか、とか、お正月に披露された「僕がせめぎあう」でのジュリー・ヴォーカルの出力を左右に振り分ける(「PAN設定」と言います)等々の役割があります。
そして「ねじれた祈り」の場合は、「音質」の設定。「イコライジング」という作業で、基本的に「HIGH」「MID」「LOW」の3種のEQ(イコライザー)を使って音質のバランスを決定し、ミックス出力します。
ここでは、「HIGH」をほぼ最低まで絞って「LOW」を最大限まで上げる、という設定のトラックを用意していた、ということでしょうね。

加えて、柴山さんのSGVが威力を発揮します。
SGが「ズンズン」な音とすればSGVは「パンパン」な音。SGVを弾くことで、ベース用にミックス設定されたトラックに「パンパンパン!」という反響音が強調され、それがウッドベースさながらのスラップ音に聴こえるという・・・YOKO君の「こっちの水苦いぞ」での感想ではありませんが、本当に参りました。驚きました。

大宮ソニックシティーのミキサーさん(ジュリーのスタッフさん?)は最初から最後までキビキビとした動きで真剣に立ち回っていらして、正しくプロだなぁ、と。
基本右側のモニターで周波数をチェックしつつ、時にはフェーダーを手動で微調整、素早いマーキング。
僕も自分でミキシングやる人ではあるんだけど(そういうことができるのでYOKO君のようなアーティスト肌の男がなついてくれてる)、とてもマネできない・・・。

翌日、YOKO君に出したメールの返信で彼曰く
「ミキサーってさ、どんなに見た目が地味でも瞳の奥に鬼が宿ってるんだよね」
まぁ僕も彼に昔「ミックスの鬼」と呼ばれたことがありますが、当然ながらプロはレベルが違います。
ジュリーのヴォーカルも素晴らしかったし初日に増してお客さんも盛り上がっていましたが、僕はとにかく柴山さんとミキサーさんの連携に感動させられっ放しの大宮の「ねじれた祈り」でした。

あ、イントロではこの日一番の激しいアタックをYOKO君に食らいました(彼もミキサーさんのトラック切り替え作業には気づいていて、「おっ?」と思ったそうですが、それ以上に「ねじれた祈り」の初体感でエキサイトしまくっていたようです)。
打ち上げで彼が言うには
「ここで垂直落下式ブレーンバスターが決まったよね」
と。
まぁ確かにあのベース音の驚愕の手法には、垂直落下級の衝撃を受けたけどね~。

20曲目「きわどい季節

Royal80

コンソールのあたりの席って、やっぱり「ステージ全体を見渡せる」位置みたいで、「ねじれた祈り」が終わってから柴山さんと下山さんが2人ともギターをチェンジする様子が、自然に目に入ってきました。
初日、下山さんがアコギに替えたことは覚えてる・・・でも、ここで柴山さんがギターを替えていたことにはまったく気づいていませんでした。
「万が一記憶違いだったら」と思って、終演後にぴょんた姉さんに「きわどい季節で柴山さん、ギター替えてますよね?」と念のためお尋ねしましたら、さすがですね~「SGに替えてるよ」と即答でございました。

ということで、ここでは前曲に引き続いて柴山さんの演奏を中心に語らなければなりません。
ズバリ言いますと、この曲で柴山さんはベース弾いてます!ええ、ハッキリとベースラインです。

ただし、「ねじれた祈り」とは響きが違います。
これがSGを使った理由でしょう。
音質については、「ねじれた祈り」同様にベース音に限りなく近い設定にイコライジングされたトラックがあり、ミキサーさんがそこから出力しているはずです。
そこで、サスティンが深いため、ロングトーンを多用するバラードのベースラインに適したSGに切り替えた・・・これが僕の辿り着いた結論。
こうなってくると、じゃあお正月の「ねじれた祈り」はどうだったのか、スラップ音があったとしても今回とはずいぶん聴こえ方も違ったんじゃないか?(SGVではなかった・・・ですよね?)という疑問も沸いてきますが、残念ながら映像も音源も残されていませんから、確認の術はありません。
ホント、特に今ツアーなどは何らかの形で作品に残して欲しいんだけどな・・・。

とにかく、今回の「きわどい季節」での柴山さんの演奏は、完全にベースそのものの音とまでは言えませんが、アレンジ・パートとしては普通にベースなんですよ。
初日はまったく気づいていませんでしたし、そもそも柴山さんがこんな役割をしていることがあるなんて、僕は今まで考えたこともありませんでした。驚きました。
楽曲に応じて色々と役割分担のヴァリエーションや進化があるんだなぁ、と改めて鉄人バンドのストイックかつ自然な取り組みに感激します。

今の鉄人バンドのメンバーによるベースレス・スタイル最初期のツアーである『greenboy』(2005年)のDVDでこの曲をおさらいしますと、下山さんのアコギ・ストロークに対して、柴山さんはアルペジオで新たな(原曲とは違う)アレンジを施しているんですよね。
10年後、同じメンバーで、さらに新たなアレンジに練り直された「きわどい季節」・・・本当に新鮮でした。

僕が見逃しているだけで、最近のLIVEでも柴山さんがベースを演奏する曲はあったのでしょう。
例えば、2013年お正月の「静かなまぼろし」は?
あの時、柴山さんがどんな音を出していたのか僕は結局分からずじまいでした。「静かなまぼろし」のオリジナル音源にはエレキギターのパートがありませんから、今回の「きわどい季節」と同じ手法で柴山さんがベース・パートを弾いていた可能性は大きいのです。
これまた、振り返って確認することは叶いませんが・・・。

さて、「きわどい季節」はYOKO君の大好物です。
さすがに泰輝さんの華麗なストリングスの最中に暴れることはありませんでしたが、イントロのほんの一瞬で「ハハッ」と小さく笑ったYOKO君。
これは、『ジュリー祭り』で「コバルトの季節の中で」が始まった時とまったく同じ反応。「嬉しい」時のそれなんですよ。後で聞いたら
「ねじれた祈りの垂直落下式ブレーンバスターでスリーカウントはとれてたけど、きわどい季節がきちゃったら、三角絞めまでいってギブアップとるしかないよね」
と。
この日のYOKO×DYNAMITEの大宮対決は、東京ドームの「橋本-中野戦」(名勝負!)にそっくりだった、とのこと。分かる人、どのくらいいらっしゃるかな(汗)。
でも、この日がセットリスト初体感、ジュリーのヴォーカル、鉄人バンドの演奏に「参った」したのはYOKO君の方なわけで、何故僕が三角絞めでギブアップしたことに話が落ち着いているのかが分からん・・・。

大宮のジュリーのヴォーカルは、この「きわどい季節」が一番素晴らしかったように思いました。
この曲と「胸いっぱいの悲しみ」の「3連バラードの隠れた名曲」(いや、ファンにとっては全然隠れてはいないんだけど)2曲は、ツアー後半には神レベルにまで進化したヴォーカルが聴けるような予感がします。

あと、最後の転調部からGRACE姉さんがハイハットでとても繊細な8分の6の刻みを入れていることに気がつきました。1番、2番のサビでは聴こえていなかった音のように思うのですが、次回要チェックです。


~MC~

アンコールの拍手に応えてジュリーが着替えて登場。
2着目の衣装、1着目と比べて足が長く見えませんか?

ジュリーは、座ってアンコールをしていたお客さんが多かったのを「見てたで~」と言わんばかりに、再登場と同時にお客さんが一斉に立ち上がろうとするのを
「あぁいや、そのまま、そのまま!」
と(笑)。
楽屋でアンコールの拍手を聞きながら衣装替えをしていると、揃ったアンコールの拍手のリズムと着替えの動作が合ってきちゃったんだとか。
「サッ、サッ、サッ」と声を出しながら拍手のリズムでボタンをはめる仕草に続いて、最後に
「サッ!」
と言いながらチャックを上げる仕草を披露した時には、お姉さん達の悲鳴も起こったりして(笑)。

ところどころ寄り道しながらも、やはり加瀬さんの思い出話がメインのMCでした。
「本当はもっと別のもの(セットリスト)を考えていたんですが、今回は新曲4曲以外は全部加瀬さんの曲で行こう!と・・・みなさまには押しつけがましいようですが、なにとぞご容赦頂きたいと思います」
と頭を下げるジュリーに大きな拍手。
みんな同じ気持ちですよね。こんな素敵なセットリストにしてくれて、みんなで加瀬さんを思い出しながらの今ツアー、決して忘れられないものになるでしょう。

「加瀬さんには本当にお世話になってね・・・ワイルドワンズの活動を夏限定にしてまでワタシについてくださって、色々と新しいやり方を考えてくれて、面白いと思ったことは、やっちゃえやっちゃえ!と。まぁワタシも他の人とは違うことをやりたい、という思いは持っていましたから、そういう意味で加瀬さんとは気が合ったんでしょうね」と・・・細かい言い回しなどは違うと思いますが、そんな感じのお話をしてくれました。
加瀬さんのお母さんが食堂(だったかな?)をやっていて、食べにいくと
「今日は邦彦ウチにいるよ!おいでよ!」
と言ってくれて、加瀬さんの家に行くと加瀬さんがいて、「明日は仕事なの?」と聞いてくる。「休みです」と言うと「俺も休み~♪」と。
「じゃあ、どっか遊びに行こうか!ということで釣りに連れていってくれたりしてね・・・」

「ワタシは昔から誰かについていくということが多くて、例えば親父が「研二行くか?」と言ったら「行く~!」と、バイクの後ろにチョコンと座って待ってたりして。
この時「出張り」だか「出べり」だか覚えていないんですけど、地元の方言っぽい言葉で「研二は”出たがり”やな」という意味のことを言われた、と話してくれて、その方言の語感からオヤジギャグを展開。
「出べそ、じゃないですよ。いや、昔はワタシも出べそみたいなモンでした。細かったから!(笑)」
「今は(おへそは)地中深くに埋もれて・・・地中ってことはないか、脂質に埋もれております(笑)」
みたいな感じで脱線もしながら・・・他にもまだまだ加瀬さんのことを話してくれました。

年賀状が来たので返事に「今度飲みましょう!」と書いて送ったんだけど、ずっと連絡が無く(ジュリーは基本、年賀状は”後出し”なんですって)・・・。
「ベッドで横になっている姿を見られたくなかったのか・・・それともワタシのことが嫌いだったのか・・・いや、好きだったと思いますけど!」
と、ユーモラスに話してくれたのが逆に切なかったなぁ。
家族以外で、「この人は自分のことが好きだ!」と躊躇なく言える知人を、みなさまどのくらいお持ちですか?
そうそういないですよね。そう考えると、ジュリーと加瀬さんの関係というのはね・・・本当に特別で、兄と弟のようであり、同志のようでもあり・・・。

訃報は鳥塚さんの電話で。
「その場で2人とも泣いてしまった」
と・・・このことは他の会場でもお話してくれているみたいですね。母親が亡くなった時も泣かなかったのに、年齢のせいでしょうか、と。
例年の大宮と同じくかなり長めのMCではあったのですが、後で前日の鎌倉公演の様子を聞いたりすると、この日は比較的真面目と言うか淡々とした感じの話しっぷりだったのでは、と思われます。

あとどのくらい歌っていられるかな・・・という話も。
残り少ない時間、キチンと計画を立ててやっていかなきゃいけない。でも、計画を立ててもその通りにはいかなくなってくるのが、ワタシの年齢なんですよ、と。
加瀬さんが亡くなった年齢を数えて
「そのトシにはまだ自分、生きてるよな?」「10年後は?今67やから、10年後は喜寿や!」
と、指折り確認。

最後はお客さんの健康も祈ってくれて、いつものように鉄人バンドのメンバー紹介へ。
それぞれ大きな拍手があり
「それではみなさま、よろしゅうございますか?」
「オマケでっす~!」

~アンコール~

21曲目「TOKIO

Tokio

YOKO君が今年の大宮公演で例年よりはるかに盛り上がり、我を忘れるほどのテンションが爆発していたことを具体的に証明したのが、この「TOKIO」でした。

ジュリーの「オマケです~!」に続いて柴山さんのリフが始まり、5小節目の頭でジュリーがジャンプ(一緒にジャンプするお姉さん達も多くて、会場の床が「どん!」と言いました)、さらに4小節経つと・・・おぉ、隣でYOKO君の”おいっちに体操”が炸裂しています。
去年までのYOKO君は、この動きをとても恥ずかしがっていたんですよね。「みんながやってるからしょうがない、一応」という感じでやることはやるんですけど、僕に見られているのを意識しちゃうのか、正調の”おいっちに体操”ではなく、ボクサーのワンツー・ストレートみたいなアクションになってることが多くて(で、照れ隠しにそのまま僕を殴る、というパターンもしばしば)。
ところがこの日は僕の存在などお構いなしに腕を上げ下げするわ、「そ~らを飛ぶ♪」が来たら躊躇なく「チャ、チャ!」とやってましたね。

一方僕はと言うと・・・ブレイク部直前のリフの箇所だったと思いますが、ステージからパ~ッと何やら光がちょうど僕らの席くらいに向かってきて、通り過ぎた、と思ったら光はそのまま2階に駆け登り、左右2つの幾何学模様に形を変えて天井に張りついたのね。
「へぇ~、TOKIOでこんな照明やってたのか~」と見上げていました。最初に光がこちらに真っ直ぐ向かってくる感覚は、傾斜が大きい大宮ソニックど真ん中センター1階後方席ならではだったんじゃないかな~。

ブレイク部ではジュリーがず~~っと左足1本で立ち続けて、時々よろめきながら(わざとかな?)再びリフが来るまでその姿勢を保っていました。
で、そこのリフでもまた先程と同じ光がやってくるという。
コンソールのこともあるし、どんな会場のどんな席でも、それぞれの楽しみ方というのはきっとあるんだろうなぁ、と改めて感じたのでした。

22曲目「気になるお前

Julie6_2

開演前に寄った山野楽器さんでは、YOKO君がギター弦を購入したのを良いことに、図々しく店頭販売用のアコギを試奏させてもらいました(←楽器店あるある)。
そこでYOKO君、いきなり
「じゃっ(A)、じゃっ(Asus4)、じゃ~(A)、じゃっ、ちゃっちゃ(G)、ら~(E)♪」
と、「気になるお前」のコード・リフを弾いてみせ
「これは(今日)やるよね?」
と。
いやまぁ、やるけど・・・答えていいんかい?
で、黙っていると、「何なのその薄ら笑いは?」。

経験あり、のかたも大勢いらっしゃるでしょうけど、みなさまも一度「自分はもうセトリを知ってる、相方はネタバレ我慢してる」という状況で連れ立ってジュリーのLIVEに行ってみましょう。ビフォーとアフター、それぞれに違った楽しい会話ができますよ~。

ジュリワンのDVDでギターを完コピした、というYOKO君、「A」「Asus4」を5フレット、「G」を3フレット、そして「E」を6弦開放のローコードで弾いて得意顔です。
この「E」だけローで弾くコード・リフは、柴山さんだけでなく下山さんも同じフレットで弾くんですよね。

それにしても・・・昨年のツアーまではあれほど”おいっちに体操”を可能な限り拒否っていたYOKO君が、この日は「TOKIO」に引き続いて躊躇することなく腕を上げ下げしているというのは・・・よほど、ですよ。
「想像以上のステージとセットリストだった」と翌日のメールにも書いていましたが、もう無心だったのでしょう。最後の「じゃらっ、ちゃ、ちゃ、どぅるるん!」までジュリーと一緒にやってましたからね。

間奏・・・今のところ下山さんの動きは普通です(笑)。
ただ、オルガン・ソロでジュリーと柴山さんが泰輝さんのキーボードの前に出張している間、自身のソロ時に前方にせり出していた位置にそのまま陣どって、首を激しく振りながらリフを弾き続けていました(その箇所で、下山さんのリフのフォームが柴山さんとまったく同じであることを確認しました)。

あとね、柴山さんのソロ部では、ジュリーと柴山さんが差し向かいになり、ジュリーはヘドバン&エアギター、柴山さんはジュリーを見つめてニッコニコしながらの演奏でした。これは初日には無かったシーンです!

23曲目「海にむけて

Rocknrollmarch

「ジュリーはね、1番で間違って2番の歌詞を歌ってしまった時、2番で律儀に1番の歌詞を入れ替えて歌ってくれることが多いのよ」・・・以前、そんなお話を先輩から伺ったことがあります。
完全に入れ替えてはいなかったけど、大宮の「海にむけて」がそうでした。

この詞は1番では旅立つ人の側から、2番で見送る人の側から、という形になっていて、それが一部入れ替わったことで、セットリスト締めくくりの曲の最後の最後に、加瀬さんが僕らに語りかけてきているような感覚がありました。「僕が満足するまで泣いて欲しい」・・・今、加瀬さんはそう思っているのかなぁ?
でも、この日この曲を歌うジュリーに涙は無くて(表情は席が遠くてハッキリ見えませんから歌声だけでの判断ですが)、初日と同じように爽やかに美しいメロディーを歌ってくれました。

初日の後、いくつかの会場ではジュリーもこの曲を泣きながら歌っていたみたいだけど、何処かで気持ちがまた切り替わったのか・・・ひょっとしたら前日の鎌倉で会場のどこかに加瀬さんの存在を感じたのかもしれない、それで安心しちゃったとか?
・・・などと、ファンとしては勝手にそんなことを考えるわけですが、大宮も初日と変わらぬ素晴らしい歌声、素晴らしい演奏の「海にむけて」でした。
下山さんのアコギは音色は柔らかいんだけど、2拍目の裏に強いアクセントがあって、それで全体のリズムに芯が通る感じがします。

つくづく、不思議な曲だと思います。今自分が立っている場所が曖昧になって、広い野にひとり立ちどまっているような、そうかと思えば海を泳いでいるような。
今はすっかり歌詞に加瀬さんを重ねてこの曲を聴くようになってしまっているけど、詞曲とも普遍性の高い名曲と言えるのではないでしょうか。
喜寿のジュリーが歌っても、しっくりくるんじゃないかな。

「すぐに会おう」・・・ジュリーは加瀬さんに向かって歌っていたと思います。
MCで「残り少ない時間」とジュリーは何度か言ったんですけど、同時に「まだまだ歌う」とも言ってくれました。加瀬さんは今「大きな時間が巡る」世界にいますから、ジュリーが加瀬さんと再会するのがたとえ50年後であっても、それは加瀬さんからすれば「すぐに」なのではないでしょうか・・・。

☆    ☆    ☆

初日以上に素晴らしいステージでした。

YOKO君も大満足の様子で・・・翌日のメールでは
「予想をはるかに超えた素晴らしいLIVEだった。加瀬さんを笑顔で送ることもできたし、ジュリーはもちろん、鉄人バンドは相変わらず凄かった。グレースも元気そうだったし、というか病み上がりとは思えないパフォーマンス!あと、下山さんのエレキからアコギへのチェンジは猿之助の早変わりのようだった
と。
「異常に忙しくしかもアツ~い8月だったけど、最高の夏のシメがジュリーLIVEで言うことなしだね!と夏休みの絵日記に書いておくよ」・・・だそうです。
さらに、「あらためて、音楽やってる男連中に観てもらいたい」と思ったそうで、スケジュールさえ合えば音楽仲間でルースターズ好きの友人(ドラムとベースをやってる奴)を誘って今ツアー2度目の参加も視野に入れてるみたい(その友人の地元である松戸公演が有力とか。僕は前日の川越に行くので一緒には行けないけど)。

つくづく、こういう構成のセットリストはもう二度と無いと思いますし、多くの一般ピープルの方々にも観て欲しいツアーです。YOKO君も言っていました。「半ズボンの俺に最初にジュリーを伝授してくれた叔母さんに是非体感して欲しいLIVE」だと。
ジュリーの現役の凄さは初めてLIVEを観た人にも必ず伝わるでしょうし、楽器をやる人は、鉄人バンドの凄まじさにも驚くと思うしね~。

とにかく、大宮もやっぱりこのひと言。
加瀬さん、ありがとう!


さて、僕は諸事情により残念ながら渋谷公演への参加を断念し、次回の参加は川越です。
かなり間が空くことになりましたが、たっぷり余韻に浸るため、週一でやっているYOKO君とのスコア研究の課題曲を、しばらく今ツアーのセットリストから選ぼうと思っています。先週は「おまえがパラダイス」のスコア(『ス・ト・リ・ッ・パ・-楽譜集』)を採り上げました。「柴山さんのコーラス・パートの高音が出せるものなら出してみろ!」と(原キーだととても無理)。

澤會さんから頂いていた10月3日の渋谷チケットはあまり良い席ではなかったので、代わりに行ってくださるかたが見つかるか不安だったんですけど、SNSで呼びかけてみましたら、あっという間に決まりました。
3日を落選されていた先輩で、本当に喜んで頂けました。良い人に行って頂けることになった、と安心すると同時に、先輩方の今年の渋谷公演への特別な思いというものを強く感じた次第です。
渋谷、きっと素晴らしいステージになるでしょう。参加されるみなさまのご感想が楽しみです。

また、渋谷不参加となった僕はそのぶん、同じ週の火曜日に幕を開けるピー先生のツアー・レポート(初日に参加します)にじっくり取り組むことができそうです。
昨年はポール・マッカートニーの来日公演中止、今年はジュリーの渋谷公演参加断念、というちょっと落ち込んでしまった時期の前後に手元にやってきたピー先生のチケット・・・2年連続で「元気出せよ!」とピー先生が励ましてくれているかのような素晴らしい良席に恵まれてしまいました。
長いピーファン、タイガースファンの先輩方には本当に申し訳ないくらいなのですが、気合の入ったレポートをお届けするお約束はできそうです。

ピー先生については9月22日に発売となる新譜『三日月/時よ行かないで』の予約も完了しました。
ツアーが始まって以降になるとは思いますが、こちら2曲の考察記事ももちろん書くつもりです。
頑張りたいと思います!

それでは次回更新は・・・すみません、おそらくゆる~い旅日記になります(汗)。
かねてより夫婦で話し合っていた東北旅行の第1弾・・・今週末、1泊2日で盛岡近辺を旅してきます~。

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