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2015年8月

2015年8月16日 (日)

ヒットソング・フォト・ストーリー「許されない愛」

それでは、ジュリーの全国ツアー『こっちの水苦いぞ』それぞれの初日会場に向け、セットリストの情報を強靭な意志でシャットアウトされる各地のみなさまのために、ネタバレ我慢の日々のささやかなお供となりますよう、『お宝ですか?』カテゴリー記事を久々に更新しておきたいと思います。

ご紹介するのは、Mママ様からお預かりしているお宝切り抜きの中から、1972年の資料です。

『ヒットソング・フォト・ストーリー』と題して、当時の旬なヒット曲とそれを歌う歌手をモチーフに、自由な(笑)楽曲解釈をフォト・ストーリーにしてみよう、という企画。
当然我らがジュリーは絵になる男ですから、企画者の自由な妄想もトコトン広がろうというもの・・・「許されない愛」は、メチャクチャなストーリーになっています。

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これはかなり有名な資料のようで、これまで他の先輩方のブログでもご紹介がありましたし、既にご存知のかたも多いかとは思うのですが、是非改めて目を通して頂き、「今年のツアーで”許されない愛”は歌われるのかなぁ」と、セトリに思いを馳せてくださいませ。

まぁ、明日17日の夜には僕はもうその答を知っちゃってるわけですけどね~。へっへっへ(←ドS)。
「もう辛抱たまらん、ネタバレしたる!」と、決心がくじけてしまったかたは、side-Bへどうぞ~(笑)。

こちら本館は、大宮公演のレポートからネタバレ解禁となります(9月第2週くらいのup予定)。
よろしくお願い申し上げます!

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2015年8月15日 (土)

恒例・ネタバレ専用別館side-Bのご案内

今年もまた、恒例のこの日がやってまいりました。
拙ブログではこれからしばらくの間、ジュリーの『こっちの水苦いぞ』ツアー・セットリストの完全ネタバレ禁止体制とさせて頂きます。


17日の東京国際フォーラム公演のLIVEレポートは、いつものようにネタバレ専用別館ブログの

dynamite-encyclopedia(side-B)
に執筆いたします。

もちろんそちらのside-Bではセットリスト、衣裳のネタバレは全開・・・みなさまからの各地公演のご感想なども、コメント欄にてお待ちしております。
例によりまして、前もって簡単な記事をひとつupしましたので、17日の初日終演間もない段階でのみなさまのフンコ~コメントも、受け入れ態勢は万全です。


こちら本館では、8月末の大宮公演のLIVEレポートからネタバレ解禁とさせて頂きますが、さすがに大宮が終わった直後にネタバレしてしまうのはちょっと時期的にも早いかな、と思いますので、大宮のレポートに関しては、いつものように執筆途中で更新してネチネチと加筆するスタイルではなく、全文書き終えてからのupにしようと思います。
どのみち長文になりますから、すべて書き終えるには1週間以上かかるでしょう。実質的には、9月第2週くらいにネタバレ解禁、という感じになりますね。

今年もまた、side-Bの方もよろしくおつき合いくださいますよう(毎年、新年と夏近辺だけ局地的に繁盛するという不思議なブログです・・・)。

また、それぞれの初日までネタバレ我慢を貫かれるみなさまを、心より応援しております。
今回は、ネタバレ禁止期間のお留守番記事も早々にupしておく予定です。頑張ってくださいね!

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2015年8月14日 (金)

沢田研二 「海にむけて」

from『ROCK'N ROLL MARCH』、2008

Rocknrollmarch

1. ROCK'N ROLL MARCH
2. 風に押されぼくは
3. 神々たちよ護れ
4. 海にむけて
5. Beloved
6. ロマンスブルー
7. やわらかな後悔
8. TOMO=DACHI
9. 我が窮状
10. Long Good-by
11. 護られているI love you

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(註:『こっちの水苦いぞ』ツアー初日が目前に迫っております。セットリスト等ネタバレ防止のため、今日の記事よりしばらくの間コメント欄を閉じて更新させて頂きます。よろしくお願い申し上げます)

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加瀬さん。
今日の「海にむけて」の記事更新で、僕はジュリーが歌った加瀬さんの曲をすべて書き終えることになります。
最後の曲が、「海にむけて」となったことは必然でした。
だって、4月に加瀬さんの突然の旅立ちを知らされてから、僕にはこの曲がそれ以前とはまったく違う意味合いを持って聴こえてしまうようになっていましたから・・・。

本当は、ジュリーの思い、加瀬さんの思い・・・それぞれいっぱい詰まっている歌なんですよね?
それが僕は今、加瀬さんへのレクイエムにしか聴こえなくなってしまった・・・困ったファンの身勝手です。

更新お題は「海にむけて」としましたが、今日の記事は楽曲考察の内容にはなりません。加瀬さんの旅立ちで、特に詞についての「考察」というものができなくなってしまいました。
代わりに、今まで書いてきた他の曲の記事では抑えていた、個人的な加瀬さんへの思い、感謝をここで書こうと思います。
僕は遅れてきた新米の1ジュリーファンに過ぎませんので、大したことは書けません。新しいファンなりに、加瀬さんにお尋ねしてみたかったことなど、思いつくままに書いていくしかないかなぁ・・・。


加瀬さんの素晴らしいお人柄については、僕はとうとう直接触れる機会がなく先輩方から伝え聞くばかりですが・・・その中に、いつもお世話になっている先輩から伺ったこんなお話があります。
ジュリーファンでいらっしゃるその先輩は2009年、『きめてやる今夜』ご参加の勢いのままにワイルドワンズのコンサートにも足を運び、閉演後幸運にも加瀬さんとお話する機会に恵まれたそうです。先輩は「きめコンをやってくれてありがとう、本当に楽しかった」と加瀬さんに感謝をお伝えしたのですが、帰路途中ふと「ワンズのコンサートだったのに”きめコン”の話ばかりして、加瀬さんに失礼だったのでは・・・」と後悔されたのだとか。
ところがその後すぐに加瀬さんがブログを更新、その日のことを書いてくださった、というのです。そこには「僕は、みんなが楽しんで、喜んでくれるのが一番嬉しい」と綴られていて、先輩は大変感激された、とのこと。
先輩は仰っていました。
「加瀬さんこそ、”きれいな大人”だった」と・・・。

加瀬さん。
僕がもし加瀬さんとお話する機会に恵まれていたとしても、何も気のきいたことは言えなかったでしょう。ひたすら恐縮し、「加瀬さんとジュリーの名曲をいつも聴いています」くらいのことしか話せなかったと思います。
でも今になって、「もし加瀬さんとお話することができていたら、是非お尋ねしたかった」ある疑問が、グルグルと頭を巡っています。
それは・・・。

冒頭、僕は「ジュリーの歌った加瀬さん(作曲)の曲を今日ですべて記事に書き終える」と言いました。それは間違いないことなのですが、ただ、ジュリーの歌った「KASE SONGS」は全部で何曲あるのか、と改めて整理した時
「この曲はKASE SONGSなのか、そうでないのか」
と未だ判断できない曲がひとつだけあるのです。
アルバム『JULIE with THE WILD ONES』の中で僕が一番好きな曲・・・「プロフィール」です。

「作詞・作曲・SUNSET-OIL」のクレジット・・・一般のファンはまだ誰も、このクレジットの詳細を知らないままなのではないでしょうか。

この曲のリリース当時僕はまず、木崎賢治さん人脈の、パワー・ポップ系の若いアーティストの作品ではないかと考えましたが、ファンそれぞれに「なるほど」という推測も伺っています。
例えば、いつもお世話になっているJ先輩のおひとりは、「吉田拓郎さんだったらいいな」と仰っています。確かにAメロの音階の雰囲気は拓郎さんっぽいなぁ、とも思えます。
さらに、僕が長い間気に留めているのが、その頃バリバリとブログ更新されていたジュリーファンの先輩、いわみさんが書かれていた「複数の人の共作だったとして、少なくともその中に加瀬さんは噛んでいるだろう」という説です。
いわみさんはその根拠を
「加瀬さんは夕陽がとても好きなんです。”SUNSET”というフレーズからは加瀬さんを連想せざるを得ません」
としていらっしゃいました。

どうなのでしょう・・・加瀬さん?
僕も「プロフィール」の作詞或いは作曲に加瀬さんが関わっていたとしたらとても嬉しいけれど、この先も「謎は謎のまま」・・・なのでしょうか。

そういえば、「海にむけて」のジュリーの詞にも、「夕陽」ではないけれど「夕焼け」というフレーズが出てきますね。
「夕焼け」が登場する「海にむけて」のジュリーの詞や歌を今聴くと、僕は(おそらく多くのジュリーファンの先輩方も)どうしてもそこに加瀬さんの旅立ちを重ねてしまい、悲しい気持ちになりがちです。
そんな時は、音源に合わせて1小節の頭ごとに小さな音量でアコギを鳴らしてみます。すると、加瀬さんが作った穏やかで美しいコード進行に救われ、心が穏やかになります。

「Fm」の箇所は加瀬さんの得意技ですね。4月以降にブログで採り上げた「明日では遅すぎる」「二人の肖像」「バラの恋人」にも登場する、加瀬さんの中の無邪気な少年の心が表れたコード。
一方「F#dim」は、収録アルバムである『ROCK'N ROLL MARCH』で、大野さんが作った「我が窮状」と同じ使い方・・・偶然とは言え、ジュリーの還暦という節目の年、加瀬さんと大野さんの気脈に通じるものがあったのでしょうか。

加瀬さんの幅広い作曲手法が凝縮されたような「海にむけて」。
加瀬さん自身は、ジュリーの詞が載るまでは今ひとつ手応えを感じていなかった、というお話をどこかで読んだように記憶しています。「ジュリーの還暦記念アルバム」への楽曲提供ということで、「生涯最高の傑作を」と加瀬さんは自らハードルを思いっきり上げて意気込んでいらしたのかなぁ、と想像していますが、ジュリーの詞が完成して、いつくしみ深いジュリーの言葉と、優しい加瀬さんのメロディーが一体となり、結果本当に素晴らしい曲となったのですね。


さぁ、加瀬さん。今年もジュリーの全国ツアーが始まります。
今こんな時代ですから、今年のジュリーの新曲は特に鋭く、強く世に問いかける、様々な考えを持つ人それぞれの心を揺さぶる、そんなツアーになるのでしょう。加えて、タイトなスケジュール・・・ジュリーは大丈夫だろうか、と心配が無いと言えば嘘になります。
全国のツアー会場の中には、先日再稼働してしまった川内原発のある僕の故郷、鹿児島公演もあり、ジュリーは正にその地に「一体誰のための再稼働なんだ?」と歌いに行きます。
どうか無事にツアーを終えてほしい、と願うばかりです。
でも、大きな時間が巡る世界で空駆ける力を手にされた加瀬さんが、すべての会場でジュリーを見護ってくださるので、きっとツアーは無事に、大成功に終わるでしょう。

加瀬さんはもうジュリーと鉄人バンドのリハーサルも覗き見されて、セットリストをご存知でしょうね。
ツアー初日を目前にして、たくさんのジュリーファンが「加瀬さんの曲をどのくらい歌ってくれるのかな?」と楽しみにしています。


僕の悲しみが 青空に迷う日は
Am        Em    Fm       C

君とこの世で さよならの日
E7     Am       F             G

女々しくても良いんだ むせび泣いて泣くよ
Am            Em           Fm              C

君が困惑 笑うくらい
E7     Am  F  G     C

セレモニーは いらないね
     C                   C7

僕の心の奥 輝きとなって 生きつづけるさ
F        F#dim    C      Am   Dm              G

夕焼けの綺麗な日 海にむけて君を
   C            C7       F              F#dim

誰にも知られず 舞わせてあげる ♪
      C       Am    Dm  G          C


「海にむけて」より

作詞/沢田研二
作曲/加瀬邦彦


「加瀬さんのメロディーも、ジュリーの詞も歌も、なんて美しいんだ、なんて儚いんだ」と、かつてないほどに「海にむけて」に過敏になってしまうのは、ファンの勝手な感傷なのでしょうか。

僕は少し前まで
「さすがのジュリーも、加瀬さんのことを想えば今はまだこの歌を歌う気持ちにはなれないだろう」
と、この曲の今回のツアー・セットリスト入りについては考えられずにいましたが、ブログを読んでくださっているみなさまに頂いたコメント等を拝見しているうちに、この名曲を爽やかに歌うジュリーの姿というのも想像できるようになってきました。
今回ジュリーが「海にむけて」を歌ってくれるのかどうか分からないけれど、聴くのが楽しみのような、胸が詰まるような・・・。
加瀬さん自身は、どうなのかな?


僕らは、加瀬さんの笑顔と、加瀬さんの作ってくれた数々の名曲たちを絶対に忘れません。
ツアー初日の東京国際フォーラム公演には僕も参加します。
少しだけ高いところで腕組みをしながら、微笑んでステージを観ていらっしゃる加瀬さんを感じながら、僕もきっと笑顔で楽しんできたい、と思っています。

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2015年8月 8日 (土)

沢田研二 「この炎は燃えつきず」

from LP『沢田研二大全集』、1977

LP-5th
side-A
1. ヘイ・ジュテーム
2. 気になるお前
3. ウィザウト・ユー
4. 叫び
5. アイ・ビリーヴ・イン・ミュージック
side-B
1. 夜汽車の中で
2. この炎は燃えつきず
3. 熱いまなざし
4. マイ・ラヴ・イズ・ユア・ラヴ
5. いくつかの場面

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from 『ライヴ・セレクション 1976-1994』

1. マイ・ラヴ・イズ・ユア・ラヴ
2. 熱いまなざし
3. この炎は燃えつきず
4. 夜汽車の中で
5. 愛の出帆
6. WE ALL FALL DOWN
7. 美しすぎて
8. ウィザウト・ユー
9. ヘイ・ジュテーム
10. ジェラス・ガイ
11. ユア・レディ
12. 悪い予感
13. アモール・ミオ

(2枚とも、ジャケ画像が手元にありません・・・)

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平和への祈りの8月。
敬愛するJ先輩も書いていらしたけれど、そんな祈りの8月に入って早々に、怒りを通り越えて底知れぬ恐怖を感じるほどの某与党政治家の発言のニュースが飛び込んできて、せっかくのジュリーのツアー初日へのワクワク感に水を差された思いです。
普通の、当たり前の思いからの若者の行動すら、権力者によって弾圧される時代が来たのか、と。

でも大丈夫・・・と、すぐに思い直します。
志ある若者達は、あんな恫喝まがいの上から目線の発言で怯んだり、心折れたりはしないでしょう。

ジュリーが「君達がボスを選べよ」「目覚めろ、若者!」と歌ったのは、2010年。
特に2000年以降のジュリー・ナンバーには、まるで「ジュリーには10数年後の今の世の中が見えていたんじゃないか」と思わせるような曲(歌詞)が多くて今さらのように驚くばかりですが、確かに不安な世の中は今現実にやってきてしまったけど、ジュリーはそんな時代を見越して「嘆く」「憂う」一辺倒ではなかった・・・頼れる若者達の出現をも予感して歌っていた、ということなのかな。
「若者よ」・・・ツアーで是非聴きたい1曲になりました!


それでは本題です。
「ジュリーの歌ったKASE SONGS全曲記事制覇」も、遂にラスト2曲となっています。今日はいよいよ「この炎は燃えつきず」を採り上げますよ~。

この度のツアー日程変更により、はからずも充分な時間ができたことで大それた目標を掲げてしまった際、僕自身が一番書くのを「ビビっていた」名曲。
アルバム収録曲でもなく、音源はLP『沢田研二大全集』と限定販売CD『ライヴ・セレクション』にしか収録されていないという「この炎は燃えつきず」の考察記事執筆は、新規ファンである僕にとってはとにかく情報も少なく敷居が高い、と感じていました。

こんな状態で記事なんて書けるかなぁ・・・と心配でしたが、いざネット検索してみますと多くのブログさん、サイトさんがこの曲と収録作品の詳細、時代背景から当時の逸話まで書いてくださっていて、結局僕はただ楽しく拝見して勉強すれば良いだけでした。
加えて拙ブログに頂いたコメント、また数人の先輩方に色々とお話を伺ったり資料を紹介して頂いたりしたことなども併せ、どうにかこうにか今回「考察記事」の体を為すことができそうです。
名曲を残してくれた加瀬さんと、偉大なジュリーの歴史を知りつくした先達のみなさまに感謝しつつ・・・。
「この炎は燃えつきず」、僭越ながら伝授です!


考察対象音源は、76年日本武道館のライヴ・テイク。
最初に音源化されたのは、先述の『沢田研二大全集』(77年リリース、5枚組)だったそうです。

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Img_201508082


早速今回も、記事更新直後に長崎の先輩がお手持ちのブツの写メを送ってくださいました。いつもありがとうございます!


改めてLPの曲目クレジットを見てみると、いやはや凄い。『大全集』の看板に誇張はありませんね。
「この炎は燃えつきず」はその中の5枚目のレコード盤、裏面2曲目の収録となっています。

僕が先輩のご好意で音源を耳にしたのはこの『沢田研二大全集』ではなく、ずっと後に限定制作された『ライヴ・セレクション』。こちらではCD3曲目の収載。

Img_201508083

Img_201508084


こちらも長崎の先輩が送ってくださった写メです!


当初僕は各収録曲の演奏年月日データも持っておらず、例えば「ユア・レディ」が94年のツアー・テイクであることすら把握していませんでした。
様々な年代の至高のライヴ・テイクを収載したオムニバス盤・・・こちらも贅沢な1枚ですね。
ちなみにこの『ライヴ・セレクション』、先の『まんだらけ海馬店』さん開催の「ジュリー生誕記念」庫出し販売期間に訪れた時、僕が目にした商品の中では一番お高い値段がつけられていました。

さて、『ライヴ・セレクション』の音源だけでしかこの曲を知らない僕がどこまでジュリーの歌、加瀬さんのメロディーの素晴らしさを理解できているのか分かりませんが・・・僕が「この炎は燃えつきず」をひとことで言い表すとしたら、「崇高なバラード」。
ジュリーが歌う多くのバラードにみなさまも崇高なイメージをお持ちかと思いますが、「この炎は燃えつきず」はその点、頭抜けているような気がします。

何と言ってもジュリーのヴォーカルがね・・・竜真知子さんによる「悲しみ」のフレーズをも超越した、ある意味喜怒哀楽を越えた普遍的な崇高さ、ただジュリーの存在そのものを感じさせる「歌」です。
もちろん、詞の悲壮感を素晴らしいと感じた上で。
「負」のフレーズ、シチュエーションをジュリーの歌がねじ伏せてしまっている、切実な愛の悲しみさえも、この時のジュリーの前ではひれ伏してしまう・・・う~ん、うまい言葉が見つからないなぁ。

「愛のダメージ・ソング」はジュリーの必殺パターンですが、「この炎は燃えつきず」は「許されない愛」「死んでもいい」のような72年のKASE SONGSとも、また阿久=大野コンビの作品群とも違い、ジュリーの歌に「主人公のダメージへのシンクロ」を感じません。
表現者としてあまりにも自然に物語を「歌って」いるジュリーの声に、歌の主人公への感情移入を見出せないことはとても不思議な感覚ですが・・・そう感じているのは僕の聴き方が甘いのかな?

72年、同様のテーマ(禁断の愛)を歌うジュリーには、「あきらめるのは嫌だ!あなたは僕のものだ!」という少年の幼さ故の激情を思わせますが、「この炎は燃えつきず」になると、主人公が年齢的にも対象女性と対等になっているイメージがあります。
これは詞の違い、と言うより歌い手であるジュリーの変化(色々な経験で大人の男になった)が歌に表れてきているように僕には思えるのですが・・・。
少なくとも、この曲を歌うジュリーにはもう「少年」の脆さは無いですよね。
76年というのは、実際の人間・ジュリーにとっても変化の年だったのかもしれません。よく先輩方が70年代のジュリーの魅力を語る時、「ガラスのジュリー」という表現をされます。もしかするとそれは、76年にはいったん打ち破られているのではないですか?

いずれにしても「この炎は燃えつきず」は、ジュリーはLIVEだなぁ、と真の意味で思わせてくれる1曲。
今さらのように音源をじっくり聴いただけの僕がそう思ってしまうということは、実際ステージをご覧になった先輩方はいかばかりだったか・・・想像を絶します。

この曲は武道館公演だけでなく76年の全国縦断コンサート・ツアーのセットリストとしての1曲だったようで、僕がお話を伺った先輩は、地方の神席で生の「この炎は燃えつきず」を体感し感激され、後に武道館の音源を聴いて「ずいぶん印象が違うな」と感じたのだそうです。もちろん、武道館の歌も素晴らしいと感じた上で、会場によって異なるジュリーの歌を実感されたわけですね。
うらやましい限りです・・・。

先輩方のサイトなどでこの曲についての加瀬さん自身のコメントなどを勉強していますと、どうやら加瀬さんは「悲しみを超越して歌う」ジュリーの崇高な姿を、「この炎は燃えつきず」を作曲しながら既にそのメロディーに重ねていたのかなぁと思えてきます。
演奏時間にして6分を超える大作。
曲想は、はからずも前回記事で採り上げた「二人の肖像」と同じ短調のバラードです。
しかし、受けるイメージはまったく異なります。

何がどのように違うのでしょうか。その点僕が感じていることを、ここでお話していきましょう。

まずは(当たり前ですが)ライヴ音源とスタジオ・レコーディングの違い。
「この炎は燃えつきず」での、良い意味で隙の多い(無心で身を晒している)ジュリーのヴォーカルは、LIVEテイクならではの圧倒的な魅力で耳に迫ってきます。
次に曲想ですが、同じ「短調のバラード」でもこの曲が「二人の肖像」或いは「燃えつきた二人」と決定的に異なるのは、サビのメロディーが平行移調により完全な長調として作られていることです(上記2曲のサビにも長調のニュアンスは登場しますが、着地点はマイナー・キーのトニック・コードです)。
悲しく切ない愛の痛みを歌っているはずのジュリーのヴォーカルに、むしろ「明るさ」すら感じてしまっている僕は、間違いなく加瀬さんのメロディーにしてやられていると思います。

あの人は坂道を  ゆっくり降りてゆく
Fm         D♭maj7  C7            Fm  F7

窓越に追いかけて 今日も暮れてゆく
B♭m  Fm(onC)     D♭                C7

あの人に近づけば それだけあの人  を
Fm        D♭maj7    C7               Fm  F7

苦しめてしまうのは わかっているのに ♪
B♭m    Fm(onC)    D♭                 E♭7

Aメロは明快な短調(ヘ短調)です。
この段階ではジュリーの歌に「大きな悲しみ」を予感させられます(ジュリーが直後の転調の種明かしをしないまま聴き手を焦らしている、とも言えます)。
ところが

I fell in love I fell in love ♪
  A♭            C7

サビはハッキリとした長調(変イ長調)。
しかも、長調へと平行移調してすぐに「万国共通・泣き進行の伝家の宝刀」であるコード進行が登場する完璧な構成。この点は、前年の大野さん作曲による大ヒット曲「時の過ぎゆくままに」と共通しています。

時の過ぎゆくままに ♪
    A♭         C7

(註:ひと目で分かり易いように、オリジナルキーを変イ長調へと移調して表記しています)

ね?
「時の過ぎゆくままに」のサビ冒頭と同じ理屈なのです。
加瀬さんは「明日では遅すぎる」で先にこの進行を採り入れていることは6月6日の記事で書きましたが、現地の歌手に提供した「I
Fell In Love」が作曲されたのは、それよりもさらに前だったのかもしれません。
どなたか、海外での原曲リリースの時期や歌手についてご存知ないでしょうか・・・。

人知れずあふれる いとしさにふるえて
Fm         A♭7       D♭         A♭    F7

長い午後はすぎてく ♪
B♭m7         E♭   E♭7

サビが進行して「あふれる♪」のA♭あたりになると、本当に明るい感じがしてきませんか?
歌詞はこんなに悲しいのに・・・それを超えて僕らを惹きつける「陽」のメロディー。もしかすると加瀬さん、「世界で通用する曲を」ということで、シャンソンやカンツォーネの要素を採り入れたのかなぁ。

今回色々と調べて初めて学んだ(恥)こと・・・73年末からのジュリーの海外戦略に同行していた加瀬さんは、単にジュリーのプロデュース統括の役割だけでなく、現地のアーティストへの楽曲提供という重要な仕事も任されていたのですね。
改めて『ヤング』バックナンバーなどで勉強しますと、海外進出はナベプロさん上げての一大プロジェクトで、当然メインはジュリーだったのでしょうが、他歌手や各部門の精鋭それぞれが才をつぎ込み取り組んだグローバルな戦略だった、ということが分かってきました。
例えば、世界進出の足がかりの時期では、『ヤング』74年3月号に、このような記事があります。


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ジュリーが「歌」で世界に羽ばたいたように、加瀬さんは「作曲家」として世界へ挑戦し、音楽的貢献を果たされていたのですね。

「この炎は燃えつきず」は元々、加瀬さんが現地の歌手に提供した曲の中のひとつだったとのこと。
加瀬さんはこの曲を作りながら「これは沢田っぽいなぁ。沢田が歌ったら素晴らしいんじゃないかなぁ」と考えていたそうで、それが76年に竜真知子さんの切なくも叙情的な愛の葛藤をテーマとした訳詞(作詞?)を得て、日本語の曲としてジュリーが全国ツアー・セットリストの1曲としてカバーする運びとなった・・・そうした経緯もまた、僕は今回先達の方の愛情溢れるサイトさんなどを通じて初めて把握したのでした。

では次に、76年武道館公演音源での井上バンドの演奏についても語りたいと思いますが・・・これこそ時を経た今、鉄人バンドでの演奏再現が想像しやすい曲ではないかと個人的には思うんですよね。
井上バンド期のLIVEテイクでここまで鉄人バンドの音とシンクロする曲は、他に無いんじゃないかな?
メンバーの配置の違いはベースの有無のみ、といっても過言ではありません。

僕は以前から『ライヴ・セレクション』の音源だけは持っていて、当然この曲も聴いてはいましたが、今回じっくり聴きこんで改めて認識したのは、これは完全にバンド・サウンドによるバラードなんだなぁ、と。
何となく、ストリングスがバリバリに入っている豪華なアレンジ、との印象を抱いてしまっている人もひょっとしたら多いかもしれないけれど(すごく高尚な感じに聴こえますからね)、実は楽器編成はいたってシンプルなロック・バンド・スタイル。
鳴っている音は、音源のミックス左から

・ピアノ
・シンセサイザー(ウィンド系の音色設定)
・アコースティック・ギター
・ベース
・ドラムス
・エレキギター

ベース以外のパートは、そのまま鉄人バンドへとスライドできそうな編成です。

この曲での井上バンドの素晴らしい演奏の中でも僕が特に推しておきたいのが、アコースティック・ギターです。これは堯之さんなのかなぁ?
技術的にも気持ち的にも、真の名演。
Aメロがアルペジオでサビ手前からストロークへと移行しますが、まずこのアルペジオが素晴らしい!
単にコード・アルペジオではありません。まるで「チェンバロ或いはハープを導入したオーケストラ・アレンジだったらこうなるだろうな」と思わせるような緻密な音階移動を聴かせてくれます。
また、2番サビ直前のストロークは正に鬼。
3連符のフィルを弦も切れよとばかりにかき鳴らしています。これは新しいファンにとっては、鉄人バンドの演奏で何度か体感しているバラード「涙色の空」のブレイク部、やはりサビ直前で下山さんが魅せてくれる狂乱のストロークを連想させてくれます。

一方、エレキギター(速水さんかな?)の聴きどころは、やはり間奏。
中でも2’49”近辺の音ですね。ジャストのピッチにほんの少しだけ届かない、微妙に低い音までの上昇に止めたチョーキング・・・これが最高に痺れます。
こうしたチョーキングもまた、鉄人バンドで柴山さん、下山さん2人ともに得意とするロック・ギタリスト独特のセンスであり技術でもあります(「Pleasure
Pleasure」の間奏などが分かりやすいかな?)

後註:この曲では、正しくは堯之さんがエレキ、速水さんがアコギを演奏されていたようです。

細部までストイックに凝った音階によるギター・アンサンブルは、井上バンドの強烈な個性であり、それはそのまま当時のジュリーLIVEの真髄とも言えるのでしょう。

さらには、竜真知子さん・・・ビッグネームの素敵な女流作詞家さんですよね。
今回の記事執筆に向け、頼れるJ先輩が『沢田研二大全集』の歌詞カードを写メしてくださいまして、竜さんの詞もバッチリ頭に叩きこむことができました。

先に、この曲ではジュリーのヴォーカルが詞の世界を超えてしまっている、と書きましたが、それは「素晴らしい詞をジュリーが歌う」からこそ起こり得たこと。
僕の世代ですと、竜さん作詞の「Mr.サマータイム」「すみれ September Love」は誰もが知っている曲だと思いますし、個人的には浜田省吾さんへの作詞提供を知った時、衝撃を受けたものでした。
竜さんは旦那さんがNOBODYの相沢さんですから、ジュリーへの作詞提供が見当たらないのは意外だなぁと常々感じるところではありましたが、いやいや70年代にこんな名篇があったんですね・・・。

タイプとしては、自らの個人体験を作品に昇華すると言うよりも、理知的で俯瞰力の高い、それでいて女性らしい鋭い感性で「ワンシーン」の刺激を切り取る作詞家さんなのかな、と思っています。
ジュリーとの組み合わせは、良い意味で「ガチンコ勝負」という感じですね。

さて、これほどの曲をジュリーが忘れているはずはないのですが、この先(特に今年のツアー)再びLIVEで採り上げられることは、あるのかどうか・・・。
と言うか、僕は今回例外的に「セットリスト予想」というものをせずにツアー直前まで来てしまったので、頭の中が今ゴチャゴチャになっているんです。冷静な考え方ができなくなり、「何でもアリ!」なセットリストを夢想することに終始してしまうのですね。

先週の日曜日に久しぶりに音楽仲間で集まって、最後にカラオケにも行ったんですが、YOKO君に
「ジュリーのツアーの前に、まずはアンタが今ここで歌っとくべきでしょ!」
と、強引に「恋のバッド・チューニング」を歌わされました。すると・・・キー高っけぇ!
「こんなに高かったんだっけ?」とビックリしました(男と~女~♪のトコ、最後は息も絶え絶え)。

加瀬さんはこの曲をリリース音源通りのホ長調で作曲していると思いますから(同キー、そして部分的に同進行が登場するビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」が隠れたオマージュ元だと考えています)、加瀬さん自身もハイトーンの持ち主だったのでしょう。
もちろん他の曲もね・・・4月から、なるべくツアー・セットリストのことは考えずに、ということで加瀬さんの曲だけを書き続けてきましたが、書いているとやっぱりどの曲も生で聴きたくなってしまいます。

本当に今だから思えること・・・「この炎は燃えつきず」という日本語タイトルって、もちろんジュリーにピッタリなんですけど、作曲者である加瀬さんにもピッタリのフレーズなんですよね。
誰もが知る「想い出の渚」や「危険なふたり」から、マニアに愛される隠れた名曲まで、加瀬さんの作ったメロディー、冒険心、音楽への愛情は不朽不滅です。

今なお激しく美しく燃え続けている加瀬さんの輝かしい名曲達・・・17日からいよいよ始まる『こっちの水苦いぞ』全国ツアーでは、たくさん聴けるのかな?
「この炎は燃えつきず」は・・・?
万一歌ってくれたら、会場のお客さん全員がウットリ状態になるのは間違いないんだけどな~。


それでは、オマケです!
今日は、先日「マザー・ネイチャー」の記事でご紹介した『GS&POPS』等と一緒に、ピーファンの先輩からお借りしている資料の中から、76年『沢田研二ショー』(1月8~13日、日本劇場)のパンフレットをどうぞ~。


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「外は吹雪」「U.F.O.」の生歌・・・うらやましい!


最後に。
あと1曲残っているので少し気が早いんですけど、今回の拙ブログでの「ジュリーが歌ったKASE SONGS全曲記事制覇」がなんとか達成できそうな見込みとなり、これまでコメントやお言葉を頂いていたみなさまに、この場を借りまして心からの御礼を申し上げます。

その大トリとなる次回更新の「海にむけて」の記事では、コメント欄は閉じる予定です。
それは、記事の内容が楽曲考察とは言えない、個人的な思いを綴った加瀬さんを送る文章になりそうだ、ということももちろんあるにはあるのですが、実は更新が本当にツアー開始ギリギリになりそうで・・・そうしますと、お読みくださったかたからコメントを頂いた時には既にツアーが始まっていて、初日に参加する僕は「海にむけて」がセットリスト入りしたかどうかを知っている状況にある、ということが考えられるのです。

いつものように拙ブログではしばらくの期間ネタバレ禁止体制としますので、僕はその事実を隠しながらお返事しないといけません。他の曲ならいざ知らず、「海にむけて」という曲だけは、今ツアーで歌われたにしろ歌われなかったにしろ、その意味はとんでもなく深いと思うんです。
僕個人は、「ジュリーはまだこの曲だけは歌う気持ちになれないのではないか。もう少し時間が必要なのではないか」と「海にむけて」のセットリスト入りは今回は見送られる、と予想していますが、あくまで勝手な予想ですし実際どうなるかは分かりません。
今回「海にむけて」がセットリスト入りした、或いはセットリストから外れた、というのは、初日参加後に僕が個人的に一番考え込む点だと思っています。
そう考えると、「海にむけて」の記事に頂いたみなさまのコメントに、ネタバレしないようにと表面だけのお返事をすることができそうもないのですよ・・・。
と言うか、僕のことですからボロが出て、あっけなくネタバレしてしまう可能性が大ですからね。

ということで・・・経験、知識豊富なみなさまからのコメントがあってこそ完成する「考察記事」としては、今日の「この炎は燃えつきず」をもって、「KASE SONGS」執筆をやり遂げた、という思いです。
次回はただひたすら加瀬さんへの感謝を綴るのみの記事となりますので、ひと足先に今日の記事でみなさまに感謝をお伝えしておかねば、と・・・。

4月末からの拙ブログの一連の加瀬さん作曲作品のお題記事におつきあいくださり、時に激励、声援まで頂き本当にありがとうございました。

ほんの5年前にお元気な笑顔を何度も見たばかりだった加瀬さんの突然の旅立ちを知らされた時、僕は大変なショックを受けました。
その時ちょうど加瀬さん作曲の「SHE SAID・・・・・・」の考察記事の下書きを終えていたところで、何とかその記事は更新したものの、すぐに「次に僕はどうすれば良いのか?」という悩みに直面することに。
加瀬さんにまるで関係ないことを書く気持ちにはなれなかったし、その一方で「僕のような新しいファンが、加瀬さんのことをあれこれ書く資格があるのか」と畏れも感じました。カミさんにも「先輩方は(加瀬さんについて)あなたとは比べものにならないほどの思いを持っていて、私達が想像もできないほどショックを受けているのだから、あなたはでしゃばったことだけは書いちゃダメだ」と言われました。

どうすれば良いのか数日悩んで出した結論は、「個人的な悲しみや、つたない思いは文章ではできるだけ封印して、しばらくはこのブログらしく純粋に加瀬さんの曲の素晴らしさについて書いていこう」というもの。
恒例の”全然当たらないセットリスト予想”シリーズ(加瀬さんのことがある前に、既に「書こう」と決めていた5曲があったのだけれど)も今年はやめて、ジュリーのツアーが始まるまで、ひたすら加瀬さんの曲だけを書き続けていこう、と決めました。

まず「許されない愛」を書いて、「このままいっそ(ジュリーが歌った)加瀬さんの曲をツアー初日までに全曲書いてしまおうか?」との考えがよぎりましたが、「スケジュール的にちょっと時間が足りなそうなのでそこまでは無理だろう」と(その時点で、「自分が書くには知識が足りなさ過ぎる」と自覚していた今日のお題「この炎は燃えつきず」は執筆構想から外していました)。
5月、6月、7月と加瀬さんの名曲を書き続けているうち、僕自身の加瀬さんを送る気持ちに変化があったり、何より(あくまで短期間でのことではありますが)加瀬さん作曲の名曲群への理解度、加瀬さんへの尊敬の念が一層深まっていきました。

特に、ジュリーと共にあった70年代、80年代の加瀬さんの活動を考えることで、歌手・ジュリーの本質的な部分にジュリーファンとして立ち返れたことがすごく良かった、と今思っています。
最近の僕はジュリーの社会観への大きな傾倒があり、見る人から見れば、少し偏ったファンになりつつあったのかもしれない、とも気づかされました。
もちろん僕はこの先も「ジュリーの社会観への共感」の姿勢は断固持ち続けるでしょうけど、今回、加瀬さんの作った幾多の名曲を通じて「歌手・ジュリー」の魅力の基本にスッと立ち戻った、という感じかな?

「KASE SONGS」全曲制覇、なんて言うとずいぶんな大風呂敷ですけど、実は僕はまったく大したことはできていません。色々な偶然も機会も重なって、たまたま記事を積み重ねることができただけのこと。
当たり前ですが、凄いのは僕などではなくて、加瀬さんでありジュリーであるわけですからね。
それに、コメントやメッセージで応援してくださるかたがいなかったら、7月の時点で力尽きていたと思うんですよね・・・。中でも今日の「この炎は燃えつきず」の記事執筆にまでこぎつけられたのは、本当にみなさまのおかげです。僕一人の力では絶対に無理でした。
ありがとうございました。


17日の東京国際フォーラム公演、迫ってきましたね。
みなさま、暑さでバテていませんか?
僕は今週水曜日、仕事中の夕方頃から身体に熱がこもっているような嫌な感じになってきて、帰宅して強引に夕食をとった後、そのままダウンして朝まで寝てしまったということがありました。
軽い熱中症だったのでしょうか。朝起きたら何ともなくなっていたんですけどね。
もし、ジュリーのLIVE当日にそんなことになったら大変です。気をつけないとなぁ。

次回お題「海にむけて」の更新は、お盆の終わりくらいになると思います。
世間では、今日から9連休という方も多いようですね。僕はカレンダー通りで13日からの4連休です。
我が家は今年のお盆の連休ではとりあえず遠出はしないつもりでいますが、みなさまはどう過ごされるのでしょうか。まぁ、ツアー初日参加予定のジュリーファンの方々は「お盆が終わったらいよいよ・・・」との思いで、何事にも身が入らないかもしれませんね。

それでは、よい連休を!

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2015年8月 1日 (土)

沢田研二 「二人の肖像」

from『JULIEⅥ ある青春』、1973

Julie6

1. 朝焼けへの道
2. 胸いっぱいの悲しみ
3. 二人の肖像
4. 居酒屋ブルース
5. 悲しき船乗り
6. 船はインドへ
7. 気になるお前
8. 夕映えの海
9. よみがえる愛
10. 夜の翼
11. ある青春
12. ララバイ・フォー・ユー

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暑中お見舞い申し上げます。

関東では、水曜、木曜といくらか気温が下がった(とは言えそれでも充分暑かった)のですが、週末にはまたまた過酷なまでの暑さが戻ってきたようです。
熱中症など、本当に気をつけないといけませんね。
どうしても長く外を歩かざるをえない場合は、試しに『奇跡元年タオル』に保冷剤をくるんで首に巻きつけてみてください。首筋が冷えるだけでも全然違いますよ~。
いや、別にタオルの種類は『奇跡元年』でなくても何でも良いんですけど(笑)。

今週後半は暑い中、郵便屋さんが大活躍。澤會さんからツアー・チケットが各地に届いたようです。
会場振替希望の申込が21日の締切だったことを考えると、7月中のチケット発送というのは澤會さんにとって相当大変な作業だったはずです。ファンにとって最高の暑中お見舞いに、感謝しかありませんね・・・。
今回僕が受け取ったのは、YOKO君と参加予定の大宮公演のチケット。今年の僕はポール・マッカートニーの来日公演で席運をすべて使い果たしておりますので、大宮も初日フォーラムと似たような感じのお席を頂くこととなりましたが・・・全然オッケ~、楽しみです!

澤會さんと言えば、再発されることになったEMI期のアルバム、僕は先日申し込みを済ませました。
今週ずっとうっかりしていて、木曜の朝になって突然思い出し出勤前に払込書を記入していたという(汗)。締切ギリギリの申込となってしまいました。
もちろん普通のCD再発ですから締切を過ぎても一般のショップさんで購入することは可能なんですけど(アマゾンさんなどでも予約受付が始まっているようですね)、今回は色々と感謝の気持ちもあって、澤會さんから購入したいと思っていたのです。
澤會さんでは今回、5枚以上の申し込みで特典グッズがついてくるとのことでしたが、僕が購入するのは『架空のオペラ』を含むCO-CoLO期の4枚ということで残念ながら1枚分足りず。まぁ、仕方ありませんね・・・。

さて。
暦は8月となり、『こっちの水苦いぞ』ツアー初日まであと2週間ちょっと、というところまで来ました。

拙ブログでは、4月末から一貫して加瀬さんの作曲作品のお題で更新を続けてきました。ツアー日程の延期を受けて改めて目標として掲げた「ジュリーが歌ったKASE SONGS全曲考察記事制覇」・・・残すは今日のお題含め3曲となっています。
17日の東京国際フォーラムまでに、必ず目標を達成したいと思います。

本日採り上げる曲は、アルバム『JULIEⅥ ある青春』から、「二人の肖像」。
6月半ばの段階でほぼ記事の下書きを終えていたのですが、加瀬さんが作った切ないメロディーに合わせてしまったかのような暗い考察内容で、その直後に僕の気持ちが「心から加瀬さんの曲を楽しみ、笑顔で加瀬さんを送りたい」と変化したこともあり、「いずれの機会に再考察を」といったん横に置いていた曲です。
今回、改めて新しい角度から色々と紐解いてみた結果、その時の下書きを全面的に書き直すほどの考察記事となったのは嬉しい誤算でした。

この曲が大好きで「記事を楽しみにしています」と仰ってくださったナタリー様はじめ数人の先輩方に感謝を込めて、みなさまからのリクエストという形で今日は記事更新させて頂こうと思います。
伝授!

「二人の肖像」・・・アルバムの中でも大好きな曲ですが、一方で「異色作」のイメージも持っています。
まずは何故僕がこの曲を「異色」と感じているのかを語っていきましょう。

これまで何度か他収録曲の記事で書いたことがあるのですが、僕は『JULIEⅥ ある青春』というアルバムを、『JULIEⅡ』(僕がこの世で最も愛するアルバム)で描かれた物語の主人公の少年が成長した数年後の物語・・・「ジュリー=船乗り」のコンセプトを持つ続編作品のようにして聴いています。
「許されない愛」を断ち切り港町を離れ、文字通り人生の大海へと踏み出した『JULIEⅡ』主人公の少年は、『JULIEⅥ ある青春』では日焼けした逞しい船乗りの男へと成長していて、自らの船を持ち仲間達と楽しい航海の日々を送っている・・・立ち寄った港ごとに気ままに恋をし、時にはちょっとだけ傷ついたり、時には仲間の恋路にも介入したり(笑)。
収録曲それぞれに「船」「海」「港」などのイメージを得て、僕はこの『JULIEⅥ ある青春』を『JULIEⅡ』に続くコンセプト・アルバムとして楽しんでいるわけです。

しかしながらただ1曲、そんなイメージに当てはめることのできない、「都会の日常の中のラヴ・ソング」としか捉えられない曲・・・それこそがこの「二人の肖像」。
ちょっとしたことで諍いとなり、別れ話をしてしまう恋人同士。でもいざ腰を据えてひとり考えてみると、相手の存在は一層愛おしく、どちらからともなく再び言葉をかわしている・・・これはさすがに「自由気ままな船乗り」のストーリーとは解釈しようがありませんよね。

もう1つの「異色」は、季節のイメージ。
これは以前「夜の翼」の記事で書いたんですけど、僕が『JULIEⅥ ある青春』に勝手に抱いている季節は「真夏」(レコーディングは「初夏」あたりなのでしょうが)。
他のすべての収録曲が真夏の灼熱の太陽と海を連想させる中、「二人の肖像」だけは「秋」から「冬」にかけての雑踏のイメージなんですよね・・・。
これは、初めてこの曲を聴いた時に「短調のバラード」であること、或いは楽曲タイトルに「二人」というフレーズがある、という共通点から『いくつかの場面』収録の「燃えつきた二人」を連想したことが大きいと思います(僕はポリドール時代のアルバムも後追いで大人買いしていて、『JULIEⅥ ある青春』より先に『いくつかの場面』を聴いていました)。
ただ、この2曲が共に加瀬さんの作曲作品である、と気づいたのはずっと後のことで(汗)、僕はある時期まで「二人の肖像」を山上路夫さん作詞、森田公一さん作曲のナンバーだと思い込んでいたのですからお恥ずかしい限りです。『JULIEⅥ
ある青春』について、「山上=森田作品が7曲でZUZU=加瀬作品が5曲」だと何かの曲の記事の時に書いてしまっている記憶も(汗汗)。

これは本当に楽曲の雰囲気から勝手に決めてかかっていた思い込みによるもの。
というのは、「二人の肖像」はアルバム・タイトルチューンの「ある青春」(山上=森田作品)と曲想がとても似ているのですよ。もの悲しいピアノ伴奏から導入して、ジュリーが切々と歌う感じがね・・・。

多くのジュリーファンのみなさまは「短調のバラード」というと、阿久さん=大野さんコンビによる情念に濡れた独特の世界観を持つ幾多の名曲をまず想起するかもしれません。「時の過ぎゆくままに」がそうですし、加瀬さん作曲のナンバーをその類にカテゴライズするなら、先日執筆した「愛はもう偽り」などがそうでしょう(まぁ、「愛はもう偽り」の場合は井上バンドの演奏により「バラード度」よりも「ロック度」の方がずいぶん高くはなっているけれど)。
でも、「燃えつきた二人」と「二人の肖像」は短調のバラードでもタイプが違いますね。
どこか渇いている、それでいて寂寥感溢れる加瀬さんならではのメロディーとコード進行。
あの天真爛漫な加瀬さんが、「重いバラード」を追求し短調のメロディーをジュリーのキャラクターに重ねた結果、曲にかけられた魔法・・・「二人の肖像」はそんな名曲だと思います。

ここで、加瀬さんがかつてジュリーへの楽曲提供について語った言葉が掲載されている資料をご紹介しましょう。Mママ様からお預かりしているお宝切り抜き資料のひとつで、73年の『沢田研二新聞』です。


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「ヒットを狙うばかりでなく重みのある作品を心がける」・・・加瀬さんのこの言葉には、「俺はジュリーを安売りさせない!」という気魄を感じます。
「重みのある作品」とは別に曲想に限ったことではなくもっと根本的なコンセプトを指すものと思いますが、「重み」という言葉から単純に連想するメロディーはやはり「二人の肖像」のような短調の曲です。

また、「重み」は「深み」でもあり「広がり」でもあるでしょう。ジュリーという特別な存在は、その活動のひとつひとつが互いに関わり合いを持ち、結果大きなイメージへと収束することこそ望ましい、と加瀬さんは考えていたのではないでしょうか。


ここで、「広がり」「ひとつひとつの活動それぞれの関わり合い」の観点から、今度は「二人の肖像」での安井さんの作詞について考えてみましょう。
淡々と、恋人達のやりとりを描いているこの詞こそ、僕が「船乗り」の物語を勝手に抱いている『JULIEⅥ ある青春』の世界観の中では異色作。
アルバム全体を考えればもっと大陸的なイメージの詞で重い短調に合わせた方が自然ですし、安井さんならそれは容易くできたはず。安井さんは何故この曲で、都会の片隅で育まれるさりげない恋人同士の物語を描いたのでしょう?

数週間前の僕ならこの疑問にはお手上げ、「たまたまそういう歌詞が生まれたのだろう」程度で片付けていたかと思いますが、幸いにも今は一考察ありますよ~。
キーとなるのはアルバム・リリースの「1973年」。
この年のジュリーの歌以外の活動と言えば・・・そう、ドラマ『同棲時代』があります。

安井さんは、『同棲時代』を演じた俳優・ジュリーに触発されて「二人の肖像」の物語を書いたのでは?
物語的にも時期的にも、リンクしますよね?

ヒヨッコの後追いファンが、単に「同年の作品だ!」と今さら発見しフンコーしているだけという怖れもありましたので、いつもお世話になっている先輩に、「二人の肖像」と『同棲時代』に共通するイメージが当時あったのかどうか尋ねてみました。
「自分も含めて、そう考えていたジュリーファンは多いと思うし、実際そうしたことをネットに書いているかたもいらっしゃる」
と、教えて頂きまして・・・まぁ実際のところは安井さん本人にしか分からないこととは言え、「やっぱりそうか!」と思うと同時に、73年当時のジュリーをとりまく空気感も、少しだけ分かったような気がしました。

僕が「二人の肖像」と『同棲時代』との関連の可能性に思い当たったのは、ほんの先日のこと。
改めての考察に向け各地の先輩方からお預かりしている73年のお宝資料をあれこれと読みながらネタ探しをしていて、「あっ!」と目に止まったのが、『Letter』という小冊子に掲載されていた『同棲時代』についての素敵な文章でした。
これまた岐阜のJ先輩であるMママ様にお借りしているこの小冊子『Letter』は、『ロックセクション名古屋』さんの製作。(おそらく、ですが)商業誌ではなく、あくまでジュリーファン手作りの冊子ということで、このようなブログでその誌面をご紹介してしまうことは、心血注いで編集に打ち込んだその道の大先輩の方々に大変な失礼に当たると考えますから内容画像の添付は控えたいと思いますが(いつの日か、制作に携わった先輩方とのご縁を頂き、その一部でもブログへの掲載を直接お願いする日が叶うことを夢見ています)、本当に丁寧な編集作業とジュリーへの愛情が伝わってくる素晴らしい1冊です(まず、『Letter』というタイトルが素敵じゃないですか!)。
特に、当時ジュリーファンの間で最高に旬な話題だってであろう『同棲時代』への感想を綴った文章には、ただただその感性に打ちのめされるばかりで・・・「なるほど、ジュリーファンはきっとみなさんそんな気持ちだったんだろうなぁ」と思わせてくれました。

「二人の肖像」の歌詞で最も目を惹くのは

幾度 ふたりが   別れ話しを・・・ ♪
Dm             Am7   Dm        Am7

と、詞の最初と最後にまったく同じフレーズを配した構成。「別れ話しを・・・」と、物語を途中経過状態で放り投げた(結論が出ない)ような印象を受けます。
これが『同棲時代』の、「壊れそうで壊れない恋人同士の生活」を示している、
ともとれるんですよ。

ひと月ほど前に一度この曲の最初の考察に取り組んでいた時の下書きで、僕はこんなことを書いていました。


「二人の肖像」に登場する若い男女の行く末に、僕はどうしてもハッピーエンドを感じないんですよ・・・

これは僕が加瀬さんの「短調のバラード」に惹き込まれている、憑りつかれている証でもありました。当然、そうした思いは今でも持ち続けています。
この曲は確かにサビの

帰った後で気がつく 嫌いじゃないのさ むしろ♪
F       A7      Dm      F          A7         Dm

の箇所から、
明るい長調のニュアンスへの変化も見せてくれます(平行移調)。でもサビの最後の着地点は物悲しい短調のトニック・コードなのです。この点は「燃えつきた二人」ととてもよく似ています。

僕はそんな点からいったんは、「悲劇的結末」に拘ってこの曲を考察していました。
きっとタイムリーで『同棲時代』を観ていらした先輩方の「二人の肖像」への思いは、曲想やアレンジに感想を左右されがちだった僕とは全然違って
「何故この人と一緒にいるんだろう?」
と、お互いに疑問を持つ「二人の肖像」に登場する男女のその後に、「それは、好き合っているから!」というシンプルな答を自然に見出していらしたのでは・・・?
先輩方には「二人の肖像」のハッピー・エンドが見えているのかも、と今回僕の思考もそこまで進みました。いかがでしょうか?

このように、73年というあの時代の若い男女が互いに強く惹かれつつも「何故つきあっているんだろう」「何故一緒にいたいんだろう」とふと立ち止まるシーンを描いた「二人の肖像」は、『同棲時代』と色々な意味でイメージが重なります。
現代においては、「愛することの責任」「頼り頼られることの意味」は若者の間で希薄となり、すべてがヴァーチャル体験の延長のようになっている、と見る向きもありますが、「二人の肖像」や『同棲時代』のような物語は現代でも若い人達の日常で普通に起こっていて、それぞれが相手のことを見つめ、自分の在り方を自問しながら生きているのではないでしょうか。

若い時期に「真剣に打ち込む」対象が「恋愛」で何も悪かろうはずがない・・・そうした経験はきっと「考える」力を育てるのでしょう。
そんな力を持つ若者よ、俺達は信じてるぜ!

さてさて、この曲も(これまた長崎の先輩から長々とお借りしてしまっている)手元のお宝本『沢田研二のすべて』にスコアが掲載されています。


Futarinosyouzou

これがね~、大らかさでは掲載曲中1、2を争う採譜になっておりまして、表記通りに演奏すると、何やら落ち着きのない、愉快な歌になります。コードがお分かりになるかた、試しにちょっと弾いてみて(笑)。

しかしながら、それを叩き台にしてあれこれ修正していくのがまた曲の真髄に迫る作業でもあるので、このスコアはやっぱりとてつもなく貴重な資料なのです。
ほぼ全面的な修正が必要となる中で、「特にここは!」と語りたい箇所・・・スコアでは採譜されていないコード進行で最も大切な、加瀬さん渾身の作曲手法が堪能できる部分は2箇所あると僕は考えます。
まずは何と言っても

特別   理由もないのに アア ♪
   B♭maj7     B♭       C     Caug

この「あ~あ♪」の「Caug」です!

これまで何度も書いていますが、加瀬さんはジュリーのファースト・ソロ・シングル「君をのせて」について、「あ~あ♪と歌うところが沢田らしくてイイ!」と絶賛、ジュリー曰く「その後ワタシは、あ~あ♪と歌う曲が多くなりました」とのこと。
「二人の肖像」もそんな1曲なのですね。
この曲の記事を「楽しみ」と仰ってくださった先輩も、この「あ~あ♪」は特に好きな箇所とのこと。ジュリー必殺の「あ~あ♪」に、「二人の肖像」の進行の中で一番おいしいオーギュメント・コードのアイデアをあてた加瀬さん、確信犯だと思います。

当時のZUZU=加瀬さんコンビのジュリー・ナンバー制作は、加瀬さんの曲が先にあって後から安井さんが詞を載せる、という作業順序であったことが、最近いくつかの資料から分かってきました。
おそらく加瀬さんは作曲のデモ・テイクでは、メロディーにでたらめな英語やハミングを載せて録っていたものと思いますが、きっと「二人の肖像」のこの部分についてはデモ録音の段階から既に「あ~あ♪」と歌っていたんじゃないかな?
安井さんは加瀬さんの「あ~あ♪」への渇望(?)を暗黙のうちに汲み取り、そのまま歌詞に使用した・・・そんな推測はいかがでしょうか。

オーギュメント・コードを使った進行には様々なパターンがありますが、「二人の肖像」での加瀬さんによる上記進行は、ビートルズ「イッツ・オンリー・ラヴ」の「my oh my♪」の部分と理屈は同じ(ビートルズの中では有名な曲ではないので分かり辛いかな・・・)。
ちなみに加瀬さんはジュリワンの「渚でシャララ」で「二人の肖像」とはまったく違ったオーギュメント進行を採り入れていて、こちらは2012年のジュリーのマキシ・シングル『Pray』収録「Fridays
Voice」の「この国が♪」から始まるBメロ部の進行が同じ理屈です。

もうひとつ僕が惹かれるコードを挙げると

お前を 好きだよ ただひとり ♪
    Gm7       B♭m      Dm

この「B♭m」。
これは少し前に記事を書いたワイルドワンズ「バラの恋人」のサビで「すねてるような♪」と歌われる箇所と理屈は同じで、「揺れる」気持ちをメロディーに注入し「少年性」を感じさせる進行となっています。

演奏については、いかにもロンドン・レコーディングの『JULIEⅥ ある青春』収録のバラードらしく、華麗なオーケストラ・アレンジがまず耳を惹きますが、僕が注目したいのは右サイドにミックスされている渋いストロークのアコースティック・ギター。
1番Aメロは最初ピアノ1本の伴奏からスタートするんですけど、「2回し目から噛む」のではなく、1回し目の「特別♪」「理由も♪」から、歌メロとユニゾンのリズムで、ジュリーのヴォーカルを追いかけるように切り込んでくるんですよね・・・。
豪快で奔放なロック・アレンジの曲も良いけれど、「二人の肖像」のアコースティック・ギターに象徴されるような、緻密な編曲による「譜面通り」の演奏もまた、若いジュリーの美声を存分に生かすプロフェッショナルの素晴らしさと言えるのではないでしょうか。

それにしても・・・6月の段階で「二人の肖像」の記事を下書きしていた時には、「果たしてこの歌に登場する恋人同士はその後幸せになり得ただろうか?」という考察がメインで、「燃えつきた二人」と併せ加瀬さん独特の「短調のバラード」に詞を寄せた安井さんと松本隆さんが、共に加瀬さんのメロディーとシンクロし「若い恋人同士の破局を、男性視点から淡々と描こうとしたのでは?」といった内容になっていました。
そもそも、『同棲時代』についてはまったく思い至っていなかったのですよ。

こうして、一度仕上げかけた記事をいったん置いて「別の角度から何かネタを見つけてみよう」と再考するのって、実は大切なことなのでしょうね。
まぁ拙ブログの場合は甘すぎる考察のまま仕上げた記事でも、みなさまから頂くコメントで大いに助けられていますが・・・(最近では、「泣きべそなブラッド・ムーン」などがそうでした)。
今回この「二人の肖像」の記事(下書き)を短期間のうちに2度書いたこと・・・貴重な経験になりました。改めて「ZUZU=加瀬」コンビの作品は懐が深いなぁ、と。



それでは、オマケです!
今日は、文中で触れた『Letter』はじめ数々のお宝をお貸しくださっているMママ様が、73年当時にせっせと切り抜いていらした『同棲時代』関連の資料をどうぞ~。

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ちなみに僕は『同棲時代』主演の梶芽衣子さんは個人的に好きな女優さんのひとり。
もちろん、73年当時僕はこのドラマを観ていなくて、女優としての梶さんを知ったのはずいぶん後になってからです。テレビドラマをほとんど観ていなかった大学時代、珍しく毎週楽しみにしていた『教師びんびん物語Ⅱ』(毎週号泣していた汗)・・・梶さんは、田○俊彦さん演じる主人公の敵役であると同時に実は・・・というとても重要な役どころで、美しさと知性に憧れたものでしたね~。
つい先日久しぶりに、安住アナと一緒に街を散策しておられる番組をたまたま観まして、その様子が(素敵な意味で)天然で、「あぁ、普段はこんな感じのかたなのか~」と思いました。


さて、先輩の情報によりますと、GRACE姉さんはいよいよドラムセットに就いて徐々に身体を慣らしてゆく段階にまで快復されているようです。
8月に入り、そろそろツアー・セットリストのリハーサルも始まるのでしょう。とにかく毎日のこの暑さです。GRACE姉さん、どうか無理だけはなさらず・・・。

今回のツアーで「二人の肖像」がセットリスト入りすることはまず無いでしょうけど、この曲のドラムスだと僕は3’13”からの3連符のニュアンスを持ったフィルが好きで・・・このフィルをGRACE姉さんの生の音で聴いてみたいなぁ、と思ったり。
『PREASURE PREASURE』ツアーの時の「探偵~哀しきチェイサー」などがそうでしたが、ずっと昔の70年代のジュリー・ナンバーでも、「これ!」という重要なフィルをGRACE姉さんはオリジナル完コピで再現してくれます。そうすると、フィルから続くジュリーの歌がス~ッと聴いているこちらの身体に入ってくるんですよね。
これ、特にバラードではとても大切なことだと思う・・・GRACE姉さんは歌心があるから、自然にそういう演奏ができるのかなぁ。もちろん、ロック・ナンバーでの豪快なアドリブも素晴らしいですけどね!


といったところで。
拙ブログの「ジュリーが歌ったKASE SONGS」全曲記事制覇まで、残すは僅か2曲となりました。
次回は「この炎は燃えつきず」を採り上げます。
正直、新米の僕が記事を書くにはまだまだ荷が重いナンバーだとは今でも思っていますが、ここまで来たら臆せず全力で考察に取り組みますよ~。

本当に暑い日が続きます。
みなさまそれぞれのツアー初日を楽しみに、共に猛暑の日々を乗り切ってゆきましょう!

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