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2015年7月

2015年7月26日 (日)

サリー&シロー 「マザー・ネイチャー」

from『トラ70619』、1970

Sally_and_shiro

1. 自由の哲学
2. 花咲く星
3. YS-11
4. しま模様の空
5. 愛についての一考察
6. 羊大学校歌 1番
7. 愛の意識
8. 羊大学校歌 2番
9. 白い街
10. 羊大学校歌 3番
11. マザー・ネイチャー
12. サンシャイン・フォー・ユア・スマイル
13. どうにかなるさ
14. 自由の哲学・エンディング

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前回記事があまりにオタク感漂うお題でしたので、「早く次の記事でカッコをつけないと!」と数日間焦りまくっていた小心者のDYNAMITEです(笑)。

暑いですな~。
故郷・九州は台風で大変のようですが、こちら関東ではひたすらに猛暑ばかりが続いています。
あまりに暑いのでこの土日は家に引きこもり、さすがにクーラーをつけて過ごしました。
涼しい部屋で記事の下書きを始めますと、先述の「焦りまくる」気持ちを忘れるほどに筆が乗ってしまい、思ったより全然早く考察を纏めることができました。

前回、そして今回と、「ジュリー・ナンバー以外の加瀬さん作曲作品を掘り下げる」というテーマで更新させて頂くわけですが、前回と違い今度は「拙ブログをお読みくださっているみなさまならば、大半のかたがご存知だろう」と考えている曲がお題です。
一般世間では、今まで(僕の知る限り)ほとんど語られることの無かった曲ですし、「加瀬さん作曲作品」の中でも執筆の意義大いにあり!と張り切っています。
採り上げますのは、サリー&シローの岸部兄弟が1970年にリリースした大名盤『トラ70619』に加瀬さんが楽曲提供した隠れた名曲「マザー・ネイチャー」。

この『トラ70619』というアルバム
、当初僕はJ先輩のご好意で音源だけ持っている状態だったのですが、その後2013年、ザ・タイガース奇跡の復活再結成に合わせるよう再発されたCDを即購入。以来、歌詞カードを目で追いながら何度聴いたことか。
あの時代、タイガース関連のこんなアルバムがあったのか!と今さらながら驚くばかりです。

『トラ70619』は、(レコーディングは69年だったのでしょうが)70年代ロックの幕開けを語るにふさわしい歴史的ロック・アルバムです。
みなさまの周囲にもしタイガースにまったく興味を示さないロックな兄ちゃんがいましたら、試しにこのアルバムを聴かせてみてください。ひっくり返ると思いますよ。
60年代を「ロック黄金の時代」とするならば、70年代は「ロック狂乱の時代」。『トラ70619』はどう聴いても狂乱の70年代アンダーグラウンド・ロックなアルバムですが、しかしそれは間違いなくあのザ・タイガースのサリーとシローの作品であるという・・・タイガースファン、GSファンに限らず、もっともっと一般ロック・リスナーの再評価を得るべき1枚ではないでしょうか。
まずは、各収録曲クレジットがね・・・凄いです。


Sallyshiroindex

作詞・作曲・編曲だけとっても、よくぞこれほどのメンツがこの1枚に集結したものだなぁ、と。

そんな豪華なクレジットによる収録曲の中で、現在「加瀬邦彦作曲作品」について書きまくっている拙ブログが着目しなければならない曲は、当然11曲目の「マザー・ネイチャー」ということになります。

作詞・瞳みのる
作曲・加瀬邦彦
編曲・クニ河内
唄・岸部おさみ

・・・って、どれだけ貴重なクレジットですかこれは!

加瀬さんの幾多ある作曲作品の中でも、考察すべき細かな枝が本当に多い名曲と言えますね。
畏れながら、伝授です!


『トラ70619』収録の1曲1曲を注意して聴いていると、このアルバムは「サリーのソロ」と「シローのソロ」をそれぞれフィーチャーした2人のヴォーカリスト・ナンバーによる合体盤であることが分かってきます。
もちろん1曲目にして驚天動地の大作「自由の哲学」のようなサリーとシローのツイン・ヴォーカル体制の曲もあるにはありますが、基本的に収録曲のほとんどは兄弟いずれかのヴォーカリストの「ソロ」ナンバー。
歌入れもサリー、シローそれぞれ単独で行われていた曲が多かったのでしょう。

その中で、お題の「マザー・ネイチャー」は、サリー・ナンバーということになります。
加瀬さんが作曲し、ピーが作詞した曲をサリーが歌う・・・こんな曲がかつて存在したんですね~。

この曲、まず特筆すべきはサリーのヴォーカルです。
サリーはどちらかと言うと「クールな声で淡々と歌う」印象が強いですよね?
サリーがリード・ヴォーカルをとるタイガース・ナンバーには「ハーフ&ハーフ」(明治製菓とのコラボによる作詞一般公募作品の1篇)のようなファンキーな曲想のものも中にはありますが、「マザー・ネイチャー」でのソウルフルな突きぬけ方は、サリー・ヴォーカルとしてはかなり特殊のように思えます。
特にエンディング間際でシャウト気味の「喘ぎ」を乱打してくるサリーの声・・・サリーがこんなふうに官能的に喘ぐ歌い方をしているのは、『トラ70619』収録のこの1曲だけではないでしょうか。

なんとなく「歌うのはちょっと・・・」という「照れ」のオーラを感じることの多いサリーをして、このヴォーカル。サリーのソウル魂(←誤植ではないですよ)に火を点けたものは一体何だったのでしょう?
ひとつには、良く言われている「どうせ『ジュリー』(『トラ70619』に先がけて69年にリリースされたジュリーのファースト・ソロ・アルバム)のようには売れないんだから、好き勝手にブチかましてやろうぜ」という、逆の意味で自由なロック魂を注入しやすい制作状況があった、という面が考えられます。
実際このアルバム、名だたるロック・パーソン好き放題の作品なのですから。
当時はロッカー的野心も充分持っていたサリーは、そんな雰囲気に進んでノッたんじゃないかなぁ。

そして・・・何より「マザー・ネイチャー」はサリーにとっての盟友・ピーの作詞作品なのですからね。そりゃあ特別な思いで歌うでしょう。

サリー&シローのアルバムにピーが詞を提供しているという話は、リリース前・・・制作段階からかなり話題になっていたようです。
ジュリーのファースト・ソロに続いて発売されるこのアルバムには、「タイガースのメンバーはもとより、GS人脈の錚々たるメンバーが参加している」・・・それがまずプロモーション戦略でもあったようですね。

さて、当時のタイガースの空気感を象徴しているようなピーの言葉がチラリと載っている資料がちょうど今、手元にあります。

先日、いつもお世話になっているピーファンの先輩にお借りした貴重なお宝資料の中に、『GS&POPS』という雑誌がいくつかありました。
これはGS全盛期にタイムリーで発刊されていたものではなく、80年代初頭のGS回帰ムーヴメントに合わせ、限定発行されていた雑誌のようです。恥ずかしながら僕は今までまったく知らない雑誌でした。
中でも『Vol.3』はタイガース特集号で、タローの日記をはじめ「話には聞いていたけどじっくり読むのは初めて」という資料が数多く掲載されていました。

さらに、『GS&POPS』には分厚めの別冊もあって、今日ご紹介したいのはそちら。


Gspopsb101

この資料をこのタイミングでお借りしていなければ、僕は「加瀬さんの作曲作品」からこの機会に「マザー・ネイチャー」を採り上げることは無かったと思います。
これまで何度もそうしたことを体験してきていますが、何か特別なテーマに集中して記事を更新し続けている時、「運命的なタイミングで新たな知識を初見の貴重な資料から得る」ことが、僕は本当に多いのです。

この『GS&POPS・別冊/グループ・サウンズの黄金時代 第1巻』は、タイガース、ワイルドワンズの記事を中心に、当時のタイムリーな情報がこれでもか!と詰め込まれている素晴らしい1冊。
当然、サリー&シローの『トラ70619』制作に関する貴重な記事もいくつか掲載があります。その中に、先述のピーの言葉があります。


Gspopsb129

Gspopsb130

拡大してもちょっと読み辛いかもしれませんので、ピーの言葉の部分だけ抜粋しますと・・・。

「僕も作詞や演奏で参加するんだけど、いつも言ってるけどG・S仲間がもっといろんな面でつながりをもつことは大事だと思うんだ。
そしてファンとの連携も強めて、若者の本当の気持ちを代弁する音楽をつくってゆきたいな。
えっ?ぼくがどんな詞をつくるかってそれは内緒になっているんでしょう。
そのかわり、ジュリーのLPの中にすごくイカシタ曲がいっぱい入ってるよ。そっちの方いっぱい書けば・・・」

この後に続いて「・・・と、相変わらず明るいピーだ」とありますが、ピーは「マザー・ネイチャー」の作詞について、はぐらかすような感じで(少なくともこの時には)何も語ろうとしていません。
ただ、今になってこの曲を聴いたタイガースファン、ピーファンのみなさまは、「マザー」という単語に思うところが出てきているでしょうね。僕らは「一枚の写真」という曲を今では聴いているのですから。

ピーが物心つく前にお母さんを亡くしてしまっていたことについては、タイムリーでタイガースのピーを知っていた先輩方も、ピー先生の芸能界復活後の著書『ロング・グッバイのあとで』を読むまで知らなかった、と仰るかたがほとんどです。
と言うより、「以前から知っていた」というお話は今のところ聞いたことがありません。タイガース時代にそうした話は全く公表されていなかった、ということなのかな。

タイトルの「マザー・ネイチャー」というフレーズ・・・僕はビートルズのホワイト・アルバムに収録されているアコースティック小品の名曲「マザー・ネイチャーズ・サン」で以前に学んでいました。「母=大地」「父=天空」という概念があるのだそうですね。
ピーの「マザー・ネイチャー」では

As I walk alone I see the trees
Am          F      G            Em

Reaching to the open skies
F                     C

Mother Nature ♪
Dm      E7

「母なる大地」から伸びた大木が空へと架かっている・・・「あの景色こそが僕の未来なんだ」という非常にパーソナルな、それでいてどこかクールで哲学的に俯瞰したコンセプトがあるようです。

全編の英語詞に難しい単語は使われていませんが、「one way road」「my day」といった、洋楽ロックでよく使用される口語詞らしい言い回しが随所に登場します。
この曲はおそらく加瀬さんの曲が先で、ピーはどちらかと言うと日本語的な発音解釈をもって、詞をメロディーに当てはめたものと考えられます。
例えば

Mother Nature, dear Mother Nature, dear ♪
F                    C      Dm                 E7

のあたりは特にそうですが、英語のメロディーへの載せ方としては大きな違和感もあります。しかしこれは「教科書通り」が狙いの曲ではないんですね。それこそコンセプトは「自由」ですよ。
その点「スマイル・フォー・ミー」や「淋しい雨」或いは「Lovin' Life」のような、完全に洋楽曲のエッセンスにのっとったナンバーではなく、あくまで「作りたい思いで作った」商売っ気抜きの純粋な日本語のロックを英語詞でやった、という感じを受けます。

ただ、もしこれが加瀬さんのメロディーよりピーの作詞の方が先だったとすれば、当時のピーの(自分の歩んでいる道への)切実な閉塞感がモロに歌詞に反映されているのでは、と言わざるを得ません。
そこにはピーの「孤独」すら見えてしまうのですが、さすがに考え過ぎでしょうか・・・。

ピーはどんな思いでこの詞を書いたのでしょう。

Yes I know someday will be my day ♪
        F             G         C  E7  Am

と、一見「将来にひと筋の希望を見た」と前向きに捉えることもできますが、「someday」に対比して「今歩んでいる道が辛い」という苦悩の思いを、この詞の中に僕は強く感じずにはいられません。
当時のタイガースとピー自身をとりまいていた決して「明るい」とは言い難い状況を、後追いファンなりに一気に学んできたせいなのでしょうか。

いずれにしてもこのアルバムへの作詞提供は、主役のサリー&シロー同様に、ピーにとっても「未知」への第1歩。その後のピーの人生を考えると、「マザー・ネイチャー」の詞はとてつもなく重い1歩です。
そして、当時その詞に投影し切望していた「someday」をピーは今、完全に実現させています。
今年も新曲をリリースし、二十二世紀バンドとの全国ツアーも敢行するピーの現在=「my day」に今触れていると、「マザー・ネイチャー」の詞には一層グッとくるものを感じますね・・・。

では、「マザー・ネイチャー」の作曲、編曲など音作りについてはどうでしょうか。
初めてこの曲をパッと聴いた時に僕は、「うわ、加瀬さんにしては珍しく難解な変化球パターンだな~」と思ってしまったものでした。
しかしその後じっくり聴き込むと、「加瀬さん作曲手法の王道」とは言い切れないまでも、メロディーそれ自体はとてもキャッチーでポップ・センス溢れる短調のミディアム・ナンバーだと分かりました。
つまり、いかにも哲学っぽい音のイメージは、クニ河内さんのアレンジによるところが大きいのです。

タイガースの音楽的変遷は大きく3つの時期に分かれると思いますが、それぞれの時期に素晴らしいスーパーバイザーが彼等についています。
まず当然すぎやま先生、続いて村井邦彦さん、そして最後にクニ河内さんです。
三者三様の傑出した魅力がタイガースの音楽を彩ってきた中で、「ロック・ミュージックへの特化」ということで言うと断然クニさん。「怒りの鐘を鳴らせ」や「誓いの明日」などは、「音に哲学を込める」クニさんの特性を大いに感じさせる名曲です。
また、リリースが近いためか、会社が「タイガース・メンバー個別の活動」のプロモートを目指していたのか、『トラ70619』はジュリーのファーストと並べて当時の雑誌記事に紹介されることが多かったようです。僕はジュリーのファーストももちろん大好きですけど、それは音楽、歌としてジュリーの大きな魅力を感じるものであって、「ロック・コンセプト」の枠で語りたいのは圧倒的にサリー&シローの『トラ70619』の方ですね。

『トラ70619』の制作時期は、ちょうどタイガースの音が「村井さんの時代」から「クニさんの時代」へと移行、交差する過渡期とも言えますよね。
加瀬さんの「マザー・ネイチャー」のメロディーにクニさんが施した、良い意味でトリッキーなアレンジには、時代を反映したアフターサイケの尖った音階や、フラワー・ムーヴメントと表裏一体の倦怠感(ロック独特のものです)が織り込まれているようです。

まずはイントロのピアノ・・・不思議な響きですよね。
洒落たジャズとも違うし、ボサノバとも言いきれない。かといってアヴァンギャルドなノイズ系と言うほど奇抜でもなく、暗さは感じるんだけどどこか穏やかな感じで。
これは加瀬さん作曲の時点ではまったく浮かんでいなかった音だと思います。

さらにエンディングのリフレインの前で、それまで淡々とエイト・ビートを刻んでいた曲が突然3連のシャッフルにリズムを切り替えます。これもクニさんの編曲段階で盛り込まれたアイデアではないでしょうか。
アルバム収録の他アレンジャーの曲についても同じことが言えますが、「キャッチーなメロディーの曲から、アレンジ段階で”軽さ”を排除する」という狙いを感じます。むしろリスナーを「立ち止まらせよう」「戸惑わせよう」という・・・。
例えば当時、「ピーが作詞した曲がある!」という情報を先に得ていたタイガースファンが『サリー&シロー』を購入しワクワクしながら「マザー・ネイチャー」を初めて聴いた時、予想とは違い「難しそうな曲だな」と感じてしまった、ということはなかったのでしょうか。

70年代のロックは一部である意味「気難しさ」を全面に押し出す手法を得ていきますが、『トラ70619』は正にその先駆けのような1枚なんですよね。
「日本のロックも凄いじゃないか!」と思いますし、それが他でもない、あのタイガースのサリーとシローのアルバムだったというのが、遅れてきたタイガースファンとしても誇らしく感じられます。
GSの頂点に君臨していたタイガース・・・メンバーの個別の活動がこうも幅広いとは驚くべきことです。
その多岐に渡る音楽的貢献の中に、「瞳みのる作詞、加瀬邦彦作曲」という奇跡的なクレジットの1曲があったことを、改めて噛みしめたいと思います。

あと、この曲のドラム演奏がピーかどうかは、残念ながら僕の耳では判別できないなぁ・・・。ただ、ピーがこのアルバムに「作詞や演奏で参加」と言っているからには、「マザー・ネイチャー」はドラムスもピーの演奏、と考えたいですけどね。
サビでアタックが倍増する感じや、2’29”のスネアのフィルあたりは、「ピーっぽいなぁ」と思えます。
ちょうどこの記事を書いている今、カミさんが隣の部屋でばんばひろふみさんのラジオ番組を聴いていて、それが「ドラマー特集」だったんです。
視聴者から寄せられた「思い入れのあるドラマー」についてのお話をばんばさんが紹介、曲をかけてくれるのですが、ザ・フーのキース・ムーン(曲は「マイ・ジェネレーション」)といった王道洋楽ドラマーに混じって、突然「瞳みのるさん」のリクエストが!
ばんばさんがかけてくれた曲は「シー・シー・シー」。
ちょうどピーのことを書いていたタイミングだったので、ビックリしましたよ~。

アルバム『トラ70619』については今後機を見て他収録曲もお題に採り上げたいと思っています

僕が一番好きな曲はやはり、イントロにジュリーの語りをフィーチャーした2曲目「花咲く星」。シローが美しい声で淡々と平和への願いを歌う素晴らしいバラードで、リリースから45年が経った今再び、多くの人から求められている邪気の無いメッセージ・ソングです。
これは可能なら今年中に書きたいなぁ・・・。


それでは、オマケです!
ピーの歌詞考察に絡んでご紹介した『GS&POPS・別冊/グループ・サウンズの黄金時代 第1巻』の他ページ掲載の記事をたっぷりどうぞ~。

(それでも、全体のほんの一部です。かなり分厚い本なので・・・残るページについてはまたいずれの機会に・・・)

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『ハーイ!ロンドン』が当初『ヤー・ヤー・ロンドン』というタイトルで制作進行していたこと、ワンズの島さんがかつて改名していたこと・・・などなど、僕にとっては初めて知る情報が満載。いつも機会あるごとに貴重な資料を貸してくださる先輩に感謝、感謝です。


では、次回更新は8月頭になると思いますが・・・いよいよ「ジュリーが歌ったKASE SONGS全曲記事執筆」の目標完遂に向け、残る3曲を『こっちの水苦いぞ』ツアー初日までに順次書いていきますよ~。

まずは「二人の肖像」から。
これは、ツアー日程変更を知る前には「書きたいことは纏めてみたけれど、ちょっと暗い内容になってしまったので、またいずれ機を見て考察し直します」と言っていたナンバー。「大好きな曲なので記事を楽しみにしています」という先輩の有り難いお言葉も頂きました。
この度はからずも「KASE SONGS全曲制覇」に充分な時間を授かり、再考察の機会が早々に訪れました。楽しみにしてくださっている先輩からのリクエスト、という形で書かせて頂きたいと思います。

加瀬さんの突然の旅立ちを知らされたあの日以来、僕なりの思いをもって続けてきた加瀬さんの名曲考察期間も、いよいよラストスパートに入ります。
目標達成まで、「持てる力を尽くして」(←ピー先生の名言)頑張ります!

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2015年7月22日 (水)

「超電子バイオマン」「バイオミック・ソルジャー」

いや、記事タイトルで退かないでくださいよ~。
今回も真面目に、心からのリスペクトを込めて「加瀬さん作曲作品」の考察記事を書くのですから・・・。

拙ブログは今、『こっちの水苦いぞ』全国ツアー、8月17日東京国際フォーラムの初日公演までに「ジュリーが歌ったKASE SONGS全曲記事制覇」を目標に真夏を乗り切ろう、と頑張っているところ。
残る該当曲は「二人の肖像」「この炎は燃えつきず」「海に向けて」の3曲となり、時間的余裕は充分ということで・・・今回と次回は特別編として、「ジュリー・ナンバー以外の加瀬邦彦作曲作品」から隠れた名曲を掘り起こそう、との主旨で、(僕の記事にしては)やや短めの文量で書いてみようかな、と。

まず今日は
「相当熱心な加瀬さんのファンでも、この曲はご存知でないかたが多いのでは?」
と考えている、加瀬さんが音楽を担当したスーパー戦隊ヒーロー番組『超電子バイオマン』から、オープニング・テーマ「超電子バイオマン」とエンディング・テーマ「バイオミック・ソルジャー」の2曲を並べ、お題に採り上げることにしました。
当然、2曲とも加瀬さんの作曲作品です。

男ならば(いや、女性でもそうなのかな?)幼少期に、程度の差こそあれテレビで熱中したであろう昭和の特撮ヒーロー番組。内容とともにその音楽もまた、大人になった今でもずっと心に残っているはず。
今日は昭和の良き時代を振り返りつつ、加瀬さんの隠れた名曲を考察してみたいと思います。
ただし、ジュリーともタイガースともGSともまったく関係の無い考察内容となります。
コメント数ゼロは覚悟の上で・・・伝授!


みなさまは、『スーパー戦隊』シリーズなるものをご存知でしょうか?
簡単に説明しますと、正義の志を持つ(基本的に)5人の若者がそれぞれ異なる色を基調としたスーツ姿のヒーローに変身、地球の平和を護るというストーリー。
今では1年に1タイトル(番組)のルーティーンで放映され、その数は累計40作品に迫ってきました。

毎年、超難関のオーディションを経て出演が決まる若手俳優(女優)さんが演じる5人のヒーロー。
いつしか『スーパー戦隊』シリーズは、同じ東映系列の仮面ライダー・シリーズと共に、「若手俳優の登竜門」と呼ばれるようになりました。
有名なところでは、合田雅吏さん(『超力戦隊オーレンジャー』のオーブルー役)、永井大さん(『未来戦隊タイムレンジャー』のタイムレッド役)、照英さん(『星獣戦隊ギンガマン』のギンガブルー役)、松坂桃李さん(『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンレッド役)などの俳優さんが『スーパー戦隊』出身です。

このシリーズ、僕は第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』がジャスト小学生のタイムリー世代。
その後も特に番組主題歌に惹かれ、今でも番組自体は観ることはなくても、いわゆる 「はじめの歌」と「おわりの歌」はすべてチェックしています。
30作目『轟轟戦隊ボウケンジャー』までのすべてのオープニング、エンディング曲については、それらを収録した3枚組のCDも持っていて、タイムリーでテレビでは観ていなかった『超電子バイオマン』の加瀬さん作曲の2曲もそちらで知りました。
しかし、いくら文章だけで僕が名曲だ名曲だと言っても伝わらないと思いますので、とりあえずYou Tubeで音源を探してみました。
まずはみなさまにも「加瀬流ヒーロー・ソング」を聴いていただきましょう。


こちらがオープニング・テーマの「超電子バイオマン」。
リンクさせて頂く段階で気がついたのですが、コメントで加瀬さんへの哀悼を残されているかたがいらっしゃいます。やはり、知っている人は知っていますね・・・。

そして、
こちらの24’55”あたりから始まるのが、エンディング・テーマの「バイオミック・ソルジャー」です(1曲単独のものは見つかりませんでした・・・)。

ヒーローに憧れる子供達にとって分かり易い曲想、なおかつ楽曲としての冒険心を持つ『超電子バイオマン』の2曲には、作曲家・加瀬さんの魅力、男気、そしてヒーロー・スピリットが詰まっています。

ここで・・・ジュリーファン、加瀬さんファンのみなさまにとってはまったく需要の無い話になってしまうかもしれませんが、『超電子バイオマン』という番組の特性について少~しだけご紹介しましょう。

『超電子バイオマン』(以下『バイオマン』)は、放映開始間もなく(やむを得ない緊急の事情があったとは言え)メンバーの1人であったヒロインの殉職が描かれるなど、かなりハードな内容だったようです。
僕は音楽担当が加瀬さんと知った時(厳密には「あっ、加瀬さんなんだ!」と後から気がついた時)、「陽」みなぎるユーモラスな加瀬さんのキャラクターと『バイオマン』のイメージとは合致しにくいものでした。
でもよくよく考えると、制作段階で加瀬さんの起用が決まった時にはまだ脚本で殉職のシーンなどは考えられておらず、意外に明るいタッチの作品を目指していたのかなぁ、と思われる点もあります。

スーパー戦隊シリーズはいくつかの例外を除き、それぞれのヒーローの名前に「色」が当てられます。
ゴレンジャーなら「アカレンジャー」「アオレンジャー」・・・といった感じですね。さらに、オープニング映像のキャッチでは基本的に「赤色」が1番手、「青色」が「赤に次ぐ2番手」の立ち位置となります。
ところが『バイオマン』では「緑色」が2番手。
このパターンはその後のいくつかの作品でも踏襲されますが、「緑色」を2番手と位置づけたのは、『バイオマン』が初めてです。何故そうなったのでしょう。
これは、5人のヒーローの名前と関係しています。『バイオマン』は「色+番号」が変身後の名前になっていて、リーダーの「レッドワン」に始まり、5人目が「ピンクファイブ」というふうに、ネーミングの秩序があります。
鋭いかたは気づかれたでしょう・・・もし従来のように「青色が2番手」の場合は「ブルーツー」「グリーンスリー」と名づけられるのが必然。ただ、そこで「緑色を2番手」とすることにより、ヒーローの名前が「グリーンツー」「ブルースリー」となるのです。
この「ブルースリー」というネーミングのためだけに、『バイオマン』では青色が3番手の立ち位置になったと考えられるのですね。制作サイドの軽妙なノリ、遊び心があったことは想像に難くなく、そう考えれば加瀬さんとの組み合わせも絶好!と思えるのです。

おっと、長々とすみません。そろそろ加瀬さんの曲の話をしなければ・・・(汗)。

まず「オープニング・テーマ=はじめの歌」である「超電子バイオマン」・・・曲想はヒーローものの主題歌王道とも言える、勇ましいアップテンポの短調です。
こちらは手元に市販のスコアもあります。

Tyoudensi


『昭和の特撮&アニメ主題歌ベスト②』より


GS出身の作曲家である加瀬さんらしいエイト・ビートが心地よく、「青空のある限り」などのワイルドワンズ流の尖ったロック性を彷彿とさせる名曲です。

君の心に しるしはあるか?
Gm   F     E♭               D7    D7+5  D7

戦うために選ばれた
Gm          F

戦士(ソルジャー) 戦士(ソルジャー)
Gm                      Cm

バイオマン ♪
Gm          Am7(onD)  D7

Am7の使い方が渋過ぎます!
ト短調で始まり徐々に突き抜けてゆくメロディーは、サビの最後に平行移調して変ロ長調に着地。

超電 子   バイオマン ♪
   B♭ E♭  F7       B♭

着地後はベースが「ラ♭→ソ→ソ♭」とクリシェしてト短調に回帰。加瀬さん貫禄の切れ味です。
「バイオマ~ン♪」と歌う2つの箇所に短調と長調のまったく異なる2つの表情が現れるのは、作詞の康珍化さんが加瀬さんのメロディーに「ノッた」証でしょう。

続いて「エンディング・テーマ=おわりの歌」である「バイオミック・ソルジャー」の方は、ガラリと雰囲気を変えたモータウン・ビートの陽気なイ長調のアップテンポ・ナンバーとなっています。

バイオミック! バイオミック・ソルジャー ♪
A                                     F#m

ヴォーカルとホーン・セクション・アレンジの駆け合いがノリノリです。底抜けに楽しい曲なのです。
毎週番組を観る子供達にとって、「はじめの歌」と「おわりの歌」の印象が180度変わる、というのはとてもスリリングだと思うんですよね。
僕自身もそうでしたが、オープニングとエンディングがどちらも勇ましい短調の曲だと、完全に曲を覚え込んでしまうまでは、「短調」というだけで「似た感じの曲」と感じられ、ゴッチャになることがあるんですよ(それはそれで後々に「区別してゆく」楽しみもありますが)。
多作家の加瀬さんとしては、「違ったタイプの2曲を用意する」ことに意義があったのでしょう。

で、この「バイオミック・ソルジャー」ですが・・・。
加瀬さん、これはビリー・ジョエルの「あの娘にアタック」へのオマージュですよね?
こちら
時期的にもドンピシャです(「あの娘にアタック」は83年。『バイオマン』は84年)。
加瀬さんは「あの娘にアタック」のウキウキと跳ねるビートとメロディーにリスナー年齢の普遍性を見てとり、子供たちに届けようと考えたのではないでしょうか。

また、このビートを短調に置き換えると「ねじれた祈り」やジュリワンの「Oh!Sandy」のようなハード・ロカビリーになります。
アップテンポのシャッフルでビートを押しつつ明快にポップなメロディーをも持つパターンは、2000年提供の「ねじれた祈り」を機に見せてくれた加瀬さんの「ジュリー解釈」としての技のひとつ。
その意味でも、80年代に加瀬さんが作った「バイオミック・ソルジャー」は大変興味深い1曲です。

ということで、簡単な考察ではございましたが・・・。
今日はちょっと特殊なお題でごめんなさいね。恐縮ついでに、「スーパー戦隊」にちなんでジュリー&鉄人バンドをヒーロー色に当てはめて遊んでみましょう(僕は「5人組」と言うとどうしても戦隊式の色分けに例えたくなる世代なんですよ・・・)。

まず主役の「レッド」はジュリー、「ピンク」がGRACE姉さんと、この2人は必然。あと、お茶目なイメージから「イエロー」の泰輝さんも決まりです。
難しいのは、柴山さんと下山さんの配置。
柴山さんは「年長のサブリーダー」としての「ブルー」と、「ヤンチャな童顔でメンバーのいじられ役」」としての「グリーン」のキャラクターを共に兼ね備えています。
一方下山さんは一見どれにも当てはまらないようですが、戦隊モノも長い歴史の中で「色」の種類も広がっており、作品によっては「クールでシビアな一匹狼」的な位置づけをされることが多い「ブラック」がメンバーに在籍することが近年増えてきています。
下山さんはこの「ブラック」でしょう。で、戦隊モノではほんの数例を除いて、「ブラック」と「グリーン」は同居しない、という暗黙の決め事があるそうです。これは、テレビに映った時の色の区別がつき辛い(深い緑は時として黒っぽく映る)からなんですって。
となると、下山さんを「ブラック」と決めたら柴山さんは「ブルー」とするのが王道ですね。

こうしてジュリーと鉄人バンドの5人を「平和のために戦う」ヒーローと例えることが、今現在の憂い多き世の中のこと、そしてジュリーの新譜のコンセプトを考えると僕としては妙にリアルな感じでね・・・。
『こっちの水苦いぞ』ツアー・セットリストでは、新譜の4曲以外にも「weeping swallow」や「希望」をお見舞いして欲しい!という気持ちが正直僕にはあります。
加瀬さんのこともあるし、ジュリーがどんなセットリストを考えているのか今はまだ分かりませんが・・・。

最後に。
この『スーパー戦隊』シリーズではその後、『五星戦隊ダイレンジャー』という作品で、今度は大野さんが音楽を担当することになります。もちろん主題歌も大野さんの作曲。これがまた凄い!
貫禄の名曲ですよ~(
こちら)。

制作順が詞先だったのか曲先だったのかは分かりませんが、大野さんがピアノを弾きながら「転身だぁ~っ!」「気力だぁ~っ!」の箇所を思い切りシャウトしてデモ・トラックを録っている姿を想像すると、なんだか燃えるものがあります!

加瀬さんもそうだったはずですが、こういう「ヒーロー番組」の作曲の仕事では「ヒーローになりきる」くらいの気持ちで曲作りをすべきなのではないでしょうか。
現代では、全然関係の無いコンセプトで作られた「ヒット性の高い曲」をそのまま特撮やアニメ番組との「タイアップ」とする手法も見受けられるようになったけれど(それでも名曲はありますが)、大切なのはやはり番組の内容を踏まえ、「なりきる」ことだと思うんです。

その点スーパー戦隊シリーズは今でもキチンとヒーローの名前やコンセプトを全面に押し出しての作詞・作曲が貫かれていて、僕はとても好感を持っています。
最近の作品では、『烈車戦隊トッキュウジャー』のオープニング・テーマが好きだなぁ(
こちら)。
詞も曲も「列車」がコンセプトのヒーローに則した疾走感のある名篇という感じがしますし、演奏しているバンドのドラムスが女の子なんですけど、フィルとか凄くカッコイイんですよね(特に0’46”あたり)。

こうして、今なお続く『スーパー戦隊』シリーズ。
それぞれの作品からそれぞれの時代の子供達が学ぶことはとても多いと思うし、プロフェッショナルが心血注いで作った主題歌に憧れたことで才能が開花したり、将来の道を志す子供も中にはいるのかもしれません。
「そんな長寿シリーズ・ヒーロー番組の主題歌名曲群の歴史に我らが加瀬邦彦あり!」ということで、今回は短めの考察記事を書かせて頂きました。


それでは、少しだけオマケです!
ザ・タイガース再結成の年に、先輩にお借りしたスクラップ集から、ワイルドワンズとタイガースの「仲良しバンドの比較」みたいな感じの記事を。


Wildones3

Wildones4



さて、次回更新では引き続きジュリー・ナンバー以外の加瀬さんの名曲・・・しかしながら今度は拙ブログを読んでくださっている方々もその多くがご存知であろう曲を採り上げようと思います。
加瀬さんらしい名曲なんですけど、なかなか世間で語られることの少ない曲かなぁ、と感じていますから、そのぶん張り切って書きますよ~。
いつまでも今日の記事がトップにいるとさすがにオタク度が濃過ぎるような気がしますので、なるべく早く仕上げたいところですが・・・そううまくいきますかどうか。

そうそう、GRACE姉さんの緊急入院、手術、一部公演日程の変更の話をYOKO君にしたら、とても驚きGRACE姉さんのことを心配していました。
「鉄人って言っても、みんな生身の人間なんだなぁ」とショックを隠しきれない様子で。
その後「無事に退院したみたい」と話した際には、「退院は本当に良かったけど、これからのリハビリが大変だよ。とにかくこの暑さだからね」と。
その通りですね・・・ファンとしては、1日も早いご快復を願うばかりです・・・。


本格的に厳しい猛暑の季節を迎えました。
みなさまもどうぞお身体には気をつけて・・・僕の場合は、とにかく食欲が落ちないように心がけることでしょうか。肉をガッツリ食べる、というのもそうですけど、暑さを忘れられる食べ物を見つけていきたいです。

最近「おっ、これはいいな!」と新たに発見したのが、食後のコーヒーゼリー。今は市販でも美味しいものがありますよ~。
あと、僕はすべての果物の中で圧倒的に桃が一番好きなんですね。僕にとって、真夏に食べる冷えた桃ほど美味しいものはないのです。
独身の頃は自力で皮を剥くことができずスーパーで売られているのを指をくわえて見ているばかりでしたが、さすがに近年はそんなことはありません。
ところが・・・今年の桃は高い!
昨年までよく食べていた、福島産の安くて美味しい桃が今年は何故か近所の店で見かけないのも気になります。まさか、作るのをやめてしまわれる農家さんが増えているのでは・・・と心配になります。

加えて、気がかりなニュースに心乱されがちなこの頃ではありますが・・・引き続き加瀬さんの曲に元気を貰いながら僕なりに考えることを考え、ツアー初日までの真夏の日々を過ごしたいと思います!

次回記事では、今日の記事ではあまり添付できなかったオマケの画像もモリモリ用意する予定でいます。
お楽しみに~。

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2015年7月14日 (火)

沢田研二 「愛はもう偽り」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1972 シングル『死んでもいい』B面


Sindemoii

disc-4
1. 死んでもいい
2. 愛はもう偽り

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いきなりの猛暑ですね・・・。
今週から、『奇跡元年』タオルに保冷剤をくるんで首に巻いて出勤しているDYNAMITEでございます。
冷えるのは首筋だけですが、これとても良いですよ~(見てくれを気にしない人限定の方法ですが笑)。

みなさま、暑さ対策は万全でしょうか。
まぁ、一昨年あたりは6月の時点でこんな感じでしたからね・・・今年はほぼ暦通りに夏がやってきた、ということでしょう。それにしても暑いです、極端です・・・。
なんとかこの暑い夏を無事に乗り切り、8月17日からのジュリーの『こっちの水苦いぞ』全国ツアーへと張り切って進んでゆきたいものです。
色々と楽しみを見つけながら・・・ね!

そんなわけで・・・今日の時事ネタ枕は当然これ。

Info20150701

今なお増え続けている新しいジュリーファン、中抜けの先輩方にとってはとてつもないビッグニュースです。これまで、拙ブログ記事に頂いたコメントでも「CDが手に入らないんです・・・」と仰っていたかたも多かった、CO-CoLO期そして建さんプロデュース期のアルバム、『架空のオペラ』『HELLO』『A SAINT IN THE NIGHT』など、入手困難だったジュリーのEMI期の名盤の数々がとうとう再発されます。

早速財布とご相談、というみなさまが全国各地にどれほどいらしゃることか。
いやぁ良かった、良かった。不安だらけの憂い多き時代に、素晴らしく明るいニュースです!

Info201507


今回インフォで僕が一番興味深かったのは、再発される各アルバムの「収録曲」明記の選曲です。
収録曲全曲の記載ではなく、それぞれのアルバムから数曲を抜粋しているのですが、単にシングル曲とあとはトラックの若い方から・・・というありがちな書かれ方ではないんですよ。「このアルバムはこの曲が推しです!」という感じになっています。
曲の個人的な好みとはまた別の話ながら、今回のインフォでの選曲・明記はジュリーファンなら大いに納得、「そうだよねぇ」と共感の選曲と言えますね。
ジュリーの歴史、特にステージの積み重ねを本当によく知る人が選ばなければ、こうはなりません。素晴らしいと思いました。


さて、この度の再発CDの中で僕がキチンとした形で所有していないものは、(ロイヤルの白は別として)『架空のオペラ』『CO-CoLO1~夜のみだらな鳥たち』『告白-CONFESSION-』『TRUE BLUE』の4枚。
ぶっちゃけまして「音源だけ」ならすべて持っていますし、『TRUE BLUE』以外は以前先輩にコピーして頂いた歌詞カードも手元にあります。
でもね・・・。

4枚まとめて買いますよ!

当然のことです。
このブログ、CO-CoLO期のアルバムの曲の記事が他の時期の作品に比べて少ないでしょ?
正直、ちゃんとした正規の商品を持っていないのに考察記事を書くのは後ろめたい、という気持ちも多少あったのです。でももうそんなことはなくなります。
購入したら、バリバリ書きますよ~。

いやぁ、『架空のオペラ』をキチンとした形で手元に持つ日が来るとは・・・ほぼあきらめていましたから感慨深いです。後追いファンのじゅり勉・最高到達点とまで言われた大名盤(いや、僕が勝手にそう言ってるんですけど)・・・現物を目にするのが楽しみ!

これらの再発商品、音質がどのくらい向上しているかは聴いてみないと分かりませんが、CO-CoLO期の3枚については低音(ベース)のエッジがかなり鮮明になっているんじゃないか、と期待しています。
「流されて・・・」とかね。

それにしても、あれほどのクオリティーを誇りとてつもない邦楽ロックの金字塔でありながら廃盤状態が長く続いていた建さんプロデュース期の5枚が、ようやく普通に購入できることになるのか~。
僕は『ジュリー祭り』後の3カ月くらいで中古を探しまくって揃えたんだったなぁ。『彼は眠れない』は確か5,000円だったし、『パノラマ』も高かった・・・(遠い目)。
まだお持ちでない新規ファンのみなさま、この機に是非ご購入を。間違いないですから!

続いて、チケットの振替、払戻についてのインフォも別便にて届きましたね。
読むと、手元のチケットをそのまま同会場の指定振替公演へと流用する場合でも、その旨記入し澤會さんへの返信が必須のようです。
指定振替公演の場合はチケットは同封しなくて良い、など細かな取り決めがあり、熟読が必要ですな~。

僕の場合は、カミさんと2人分申し込んだフォーラムのチケットが手元に2枚ありました。
そのうち1枚を僕がそのまま指定振替の8月17日東京公演で使用、カミさんはその日だと仕事の関係上たとえ早退したとしても開演時間には間に合いそうもない、ということで参加を断念・・・払戻を希望させて頂くことになりました(当初はこのブログでカミさんの代わりに僕の隣で参加してくださる奇特なかたを募るつもりでしたが、澤會さんがここまで綿密に手を尽くしてくださったのですから、素直にそのまま対処させて頂くことがベスト、と判断しました)。
つまり記入欄にはまず「A」と「C」2箇所に○印をつけ、1行でフォーラムのチケット2枚分それぞれ「指定振替」「払戻」1枚ずつの希望を記入、チケットはカミさんの1枚分のみを返送する、ということになります。
人によってはもっと複雑かつ複数の会場のチケットについて様々な対処パターンがあるのでしょうから、みなさま慎重に記入して返送しましょう!


それでは本題。
『こっちの水苦いぞ』全国ツアー初日がひと月ほど延びた期間を利用し、拙ブログではGRACE姉さんのご回復を日々祈りつつ、当初はあきらめていた「ジュリーの歌ったKASE SONGS・考察記事全曲制覇」へと方針を改め、猛暑の中頑張ってまいりますよ~。

今日は、72年のヒット・シングル『死んでもいい』のB面「愛はもう偽り」をお題に採り上げます。
非常に語るところの多い、これまた加瀬さんが両面の作曲を手がけた素晴らしい名シングル。今日はB面「愛はもう偽り」はもちろん、既に記事執筆済のA面「死んでもいい」についても再度補足的に触れながらの考察をお届けいたします。
伝授!

『死んでもいい/愛はもう偽り』は、ジュリーの歴史上とても大きな意義を持つ「最初の1枚」。
「許されない愛」でソロ歌手としての地位を不動のものとしたジュリーのシングル・セールス戦略の中、この4枚目のシングルは両面ともに演奏クレジットが「井上堯之グループ」とハッキリ明記されています(手元のポリドール・イヤーズのシングルコレクションBOXより)。
東海林先生のアレンジを、井上バンドが仕上げた最初のシングル、ということになるのですね。

僕は以前ジュリワンのセットリスト予想シリーズで「死んでもいい」の記事を書いた時にはそのクレジットに気づかぬまま演奏考察をしてしまっているのですが、そこで「演奏が尋常ではない!」と書いた通り、このシングルは完全にロック・バンドによる音なんですよ。
そして・・・その「ロック性」はA面「死んでもいい」よりもむしろB面の「愛はもう偽り」の方で強い主張を感じます。これもまた「ジュリーのシングルB面は名曲の宝庫」の一例でもあります。

堯之さん達はおそらく東海林先生が用意した小節割り、コードが明記されたスコアを元にレコーディングを行っていたと想像しますが、そのスコアのコーダ部には「Am→D7」のコード表記と共に

「ad rib...F.O」
(アドリブによるリピート&フェイド)

と書かれていたんじゃないかなぁ。
そうでなければ、この曲のエンディングの演奏はこうはなっていないと思うのです。

また、井上バンドのアンサンブルとブラス・ロックの融合は、僕の音楽嗜好の原点でもある『太陽にほえろ!』サウンドトラックの演奏と完璧に一致。
フィルでオクターブ上のトニックの単音へと弦をすべらせるサリーのベースなどは、正にそのもの。
ギターにしても鍵盤にしてもドラムスにしても、ホーン・セクション(細かいところでは、「愛のきずな♪」の箇所で渋い音階で噛んでくるトロンボーン・パートが素晴らしい!)にしても、聴いていると幼少時に刷りこまれた「音」が血を躍らせる・・・僕にとっては少年期の郷愁とともに、本当に理想の音楽がここにあります。

ただ、『太陽にほえろ!』の初期サントラ(速水さん加入以前)とこのシングルでの井上バンドの演奏を比較した場合に異なる点もあって、サントラの方は演奏のメイン(一番目立つ主旋律)がトランペットやサックスなどのブラス・パートなんですね。
堯之さんのギターや大野さんのキーボードは、アレンジ上の多少のソロ以外はビッグバンドで言うところの「リズム・セクション」の役割を担っています。

ところが・・・これは「死んでもいい」の記事でも書いたことですが、この「ジュリー・シングル最初の井上バンド演奏の1枚」は、豪快なホーン・セクション・アレンジを擁しつつも、堯之さんのギターが完全にブラスを食ってしまっているという・・・。
スタジオ・ミュージシャンによる「許されない愛」のドアーズのようなリード・ギターもとてもカッコイイですが、演奏の主役、とまでは言い切れません。同じ「ブラス・ロック」でも「許されない愛」以上に「死んでもいい」「愛はもう偽り」のロック性が高いのは、この堯之さん入魂のギター・トラックがあればこそ、でしょう。
特に「愛はもう偽り」エンディングの堯之さんのソロは名演中の名演・・・これが、一般的には「アイドル」としか捉えられていなかった頃のジュリー、72年のシングルとはね・・・。畏るべしです。

前シングル「あなただけでいい」より、こちら「死んでもいい」の方が好き!と仰るジュリーファンの先輩方はとても多いようです。そんな先輩方はおそらく、それと気づかぬうちにこのシングルの井上バンドの演奏、そしてその演奏とシンクロしているジュリー・ヴォーカルのテンションの高さを敏感に感じとっていらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん「あなただけでいい」も大変な名曲ですが、よく似た曲想だけに、演奏面は「死んでもいい」の方に軍配が上がるかな、とは僕も思います。
(ただし「あなただけでいい」も、いざLIVE演奏となると豪快な3連ロッカ・バラードへと昇華します)

さてさて、「愛はもう偽り」も、長崎の先輩から長々とお借りしてしまっているお宝本『沢田研二/ビッグ・ヒット・コレクション』にスコアが掲載されています。

Faded1

相変わらず大らかな採譜ではありますが、初心者用としてはこう採譜する以外なかったかもしれません。
「ギターの初級で習うコード群だけ(で弾ける)」とのアドバイスがありますが、それはあくまで簡易伴奏化された採譜形式についての話。
その実はこの曲、細部に渡ってギター1本で伴奏再現しようとすると初心者としてはなかなか難しい・・・いわゆる「分数コード」が肝となっている曲なのです。

加瀬さんらしいポップでキャッチーな短調進行を重視するなら、例えばAメロは

あなたは行くのか  朝もや   の    街を
Am        Am(onG) Am(onF#)  Am(onF) E7

コートの襟立て   僕だけ  を     残し ♪
Am       Am(onG) Am(onF#) Am(onF) E7


このクリシェですね。
「Am」を押さえながら、小指或いは親指を使ったフォームで低音の下降をフォローしますと、ギター1本の伴奏でもグッと原曲の雰囲気に近くなります。
僕としては、「G」音の3フレットを小指、「F#」音の2フレット、「F」音の1フレットを親指で押さえたいところ。そうすれば、「Am」のフォームを逸脱せずにベースラインとリード・ギターまで網羅できますからね。

ちなみに「愛はもう偽り」についてはさすがに今後のLIVEで歌われることは無いと思いますので逆に書いてしまうと、もし鉄人バンドでこの曲が演奏されるとすれば、下山さんは僕と同じフォームでAメロを弾くと思うんだ~。親指でネックをむんず!と掴む感じで。
ずいぶん前に下山さんのブログで指紋が消えかかっている左掌の写真を見た時、指の長さや関節の感じが自分ととても似ているなぁ、と思ったことがあるんですよ~(僕も指は結構長い)。まぁ、ギターの腕前は天と地いやそれ以上の大差がありますが・・・。

あと、上記スコアで採譜されていないコードで最も重要だと思うのは


もう   偽 り ♪
Fmaj7   E7 Am   D7

この「D7」。マイナー・コード進行に挿し込まれた、尖ったロックの主張です。
このコードがあるだけで、まるでクリーム(←クラプトンが在籍したバンド名です。ジュリーファンのみなさまなら、彼等の代表曲「ホワイト・ルーム」はジュリーのカバー・ヴァージョンでよくご存知でしょう)みたいな曲になるんですよねぇ。
最後のギター・ソロ部でも、この「D7」の和音は最大限に生かされています。

A面「死んでもいい」もそうですが、そうした井上バンドの最高にロックな演奏を得て、「愛はもう偽り」のジュリーのヴォーカルは炸裂しまくっています。

僕のもとに すべてを棄て
E7   Am      Dm           Am

来ると言った あの言葉は ♪
E7     Am       D7  F      E7

「すべてを棄て~♪」或いは「あの言葉は~♪」のロングトーン・・・凄まじいです。
しかもそれぞれニュアンスが違う・・・「棄て~♪」は濁音を発声しているかのようなギリギリとした怒りの歯軋りのようでもあり、「言葉は~♪」は究極の嘆き、悲しみにわなわなと語尾を震わせます。
それがまったくあざとく聴こえないのは、ジュリーがバックの音に完全にシンクロしているからでしょう。

山上路夫さんの作詞は、当然ながら「許されない愛」「あなただけでいい」の近作シングルの流れを受けてコンセプト提示を受け作られたものと考えられます。
その上でこのジュリーのヴォーカルを聴くと、これはコンセプト・アルバム『JULIEⅡ』の追加テイクのような作品としても受け取ることができますよね。
ストーリーで言うと、「この愛に命をも賭す」と歌う「愛に死す」と、「忘れられないけど、忘れようあなたを」と歌う「許されない愛」の間のシチュエーション。
船長の長い航海からの帰還を受けて、少年に別れ話を切り出す船長夫人・・・「僕との愛を誓ったはずじゃないか!」と大きなショックを受け感情を剥き出しにする少年(=ジュリー)の姿が浮かびます。
それに

おぼえていないか からだを  寄せ    合い
Am        Am(onG) Am(onF#) Am(onF) E7

港の夜明けを ながめた あの    部屋 ♪
Am  Am(onG) Am(onF#) Am(onF) E7

2番Aメロで歌われているこの回想は、間違いなく「純白の夜明け」(加瀬さん作曲!)で少年と船長夫人が結ばれたシーンを踏まえた描写ですしね。

さらに考えれば、シングルA面の「死んでもいい」はその直後・・・「許されない愛」と同時系列かその前後のワンシーンを描いた作品、と捉えることもできそうです。

Img427

Img444

Img428


「許されない愛」から「あなただけでいい」「死んでもいい」の徹底したコンセプト継承。「ジュリーと言えば・・・」と、当時の雑誌もイメージ・フォットの作りやすい歌手だったでしょうねぇ。


僕がこの世で最も愛するアルバム『JULIEⅡ』の世界をさらに深化させてくれるようなシングル・・・いやぁ今さらながら凄いシングルがあったものです。
そして、当時20代前半のジュリーが「捨て身で愛の激情を歌う」ことにどれほどのインパクトがあったか、と追体験できるシングルでもあるのですね、これは・・・。

「セットリストのことはなるべく考えずに加瀬さんの曲を書き続ける」などとは言っていますが、「愛はもう偽り」は無理としても、正直A面「死んでもいい」には少しだけ今ツアーでのセトリ入りを期待しちゃってます。
リードギターは柴山さんが弾くのかなぁ。それに「死んでもいい」は、下山さんが「僕のパート」を一部新たに作るパターンのアレンジになると思われます。
うぅ、物凄く楽しみになってきた・・・。
イカンイカン、邪念は捨てねば!


それでは、オマケです!
『女学生の友』72年9月号付録、『沢田研二魅力写真集』全ページをどうぞ~。


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それでは今後の更新ですが・・・。
「ジュリーの歌ったすべての加瀬さんの曲」のお題は残すところあと僅か3曲となりました。ツアー初日までには充分日数もありますから、このあたりでジュリー・ナンバー以外の加瀬邦彦・作曲作品をお題に、短い文量で2つほどの記事を書こうかなぁ、と考えております。

まず次回は、「熱心な加瀬さんのファンでもこの曲はご存知ないかたが多いのでは?」と思っている、東映戦隊モノの主題歌およびエンディング・テーマを並べ、この機にみなさまにご紹介いたします。
昭和のヒーローものの主題歌をナメではいけませんよ~。真にプロフェッショナルの作詞家、作曲家が、番組のコンセプトをキチンと踏まえ心血注いで制作した名曲ばかりですから。現代ではまま見受けられる、歌詞中にヒーローの名前すら出てこない安易なタイアップとは、志からして違うのですよ。
当然、我等が加瀬さんもプロの真髄をいかんなく発揮し、格の違いを見せつけています。
多少マニアックな話もすると思いますが(汗)、よろしくおつきあいくださいませ~。

GRACE姉さんが退院されたと聞きました。
姉さんのご快復、そして、ジュリーとジュリーの大切なすべての人達の平穏と今後の無事を祈ります。

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2015年7月 7日 (火)

沢田研二 「甘いたわむれ」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1974 シングル『追憶』B面


Tuioku

disc-10
1. 追憶
2. 甘いたわむれ

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いやぁ参りました。
この間「ようやく治ったか~」と思っていたのにまたまた夏風邪ですよ。たぶん先週金曜の雨でズブ濡れになったのがいけなかったんだなぁ。
もちろん傘はさしていたんですけど、ちょっとシャレになってない大雨でしたからね・・・。着替えを用意して出かけなかったのが失敗でした。
まぁ、仕事しながら治していくしかありません。

ところで、前回記事に頂いたコメントへのお返事でも書いたのですが・・・。
決めました。
これまで、当初は今月14日の予定だった『こっちの水苦いぞ』ツアー初日・東京国際フォーラム公演までに、あと2曲・・・「甘いたわむれ」「海に向けて」の記事を書くことを予定し順調に更新を続けてた拙ブログですが、その予定に、この度のGRACE姉さん急病によるツアーの日程変更を受け、ひと月ほどの日数の余裕が生じました。
(GRACE姉さんのご快復を毎日祈っています)

この機にactの曲を書こうか、それとも加瀬さん作曲作品以外の曲で”全然当たらないセットリスト予想シリーズ”期間を設けようか、としばし悩みました。
しかし結論は。
はからずも初日公演までにこの日数を得たからには、やはり僕はここで、ジュリーが歌った「KASE SONGS」の全曲制覇を目指すべきなのではないか、と。
加瀬さんが天国から、「まだ書いてない曲があるじゃなあい?」とこの貴重な期間を与えてくださったのだ、と勝手に思い込むことにしました。

そこで、みなさまにお願いがあるのです。

僕が今回「またいずれの機会まで記事にするのは後回しにしよう」と考えていた加瀬さん作曲の残すジュリー・ナンバーは3曲。この3曲を新たに近々の執筆予定に加えれば、ジュリーが歌った「KASE SONGS」記事の全曲制覇は成ります。
その3曲とは、「愛はもう偽り」「二人の肖像」、そして「この炎は燃えつきず」。
いったん横に置いた「二人の肖像」の考察をやり直す時間は充分。「愛はもう偽り」についても、書きたいと思っていたポイントはたくさんあります。
残る「この炎は燃えつきず」・・・これが問題で。

間違いなく名曲。『ライヴ・セレクション』の音源も正式な形ではありませんが持っています。
ただ、この曲にまつわる情報が、僕にはほとんど無いのですよ。例えば現段階では、作詞者が誰なのか、とか、76年の音源であることは分かっていますが、どのツアーで歌われた曲なのか・・・お正月なのか、ロックン・ツアー’76なのか。謹慎の前なのか後なのか、とか。
まぁそういった基本的な事柄はこれから自力で検索調査すれば良いだけのこと。
僕が知りたいのは、この曲についてのジュリーファンの空気感です。
この曲が作られた特殊な経緯が当時あったのか。ジュリーはどんな感じで歌っていたのか・・・そして何より、当時タイムリーにジュリーのこの歌を生で体感したり、レコードを買って聴いたりしていたジュリーファンの先輩方のご感想ですね。

あとは、歌詞ですな~。
特に、僕の英語聴き取り能力の低さは、ジュリワンの年の「FRIENDSHIP」で実証済み(泣)。「この炎は燃えつきず」のサビについては「I fell in love♪」と聴こえているけど果たして合っているのかどうか。
このように、僕には「オリジナル・アルバムには収録されていない特殊なジュリー・ナンバー」についての知識があまりに欠けています。考えてみると、僕は今まで一度も「この炎は燃えつきず」について、先輩方とお話させて頂いたことがありません。

拙ブログをお読みくださっているみなさま。
「この炎は燃えつきず」についての個人的な思い出やご感想、時代背景、歌詞のポイントなどを、今からコメントで少しずつ教えて頂けないでしょうか?
みなさまが教えてくださったことを糧として音源を聴き込み、この機になんとかささやかな一考察を纏め上げたいと思っておりますので・・・。
どうぞよろしくお願い申し上げます!

(翌日)
・・・と、ここまで下書きしておいて
「さすがに虫が良過ぎるな~。まずは自分でトコトン調べてみてからだよな~」
と思い、ちょっとネット検索してみたら!
いつもお邪魔しているブログさんの過去記事、最新記事・・・初めて拝見するサイトさん、ブログさんと、まぁ次々に「この炎は燃えつきず」関連の情報やご感想などがヒットするわするわ。
やっぱり凄い・・・本当に頼りになります、ジュリーファンの先輩方は。歌詞も分かったし、加瀬さん自身が作曲背景について語っている音声を織り交ぜた動画も観ることができました。
このことひとつとっても、どれほど長い間ジュリーが愛され続けてきたのか、加瀬さんがリスペクトされてきたのかが証明されようというもの。

あとは僕がささやかながらの考察を提示するのみ。
決算に向けて仕事が忙しくなる時期で更新ペースは落ちるとは思いますが、新たな全国ツアー初日・8月17日のフォーラム公演までに、必ずや「KASE SONGS」記事全曲制覇をやり遂げます!

それに向けて今日は前回の予告通り、名シングル『追憶』のB面曲「甘いたわむれ」を採り上げます。
素晴らしい曲です。しかも、加瀬さん作曲のジュリー・ナンバーの中では一番手がこんでいると言うか、とても繊細。それでいて聴いた印象は大胆かつキュートな、はちきれんばかりの若きジュリーのエネルギーをそのまま体現してくれているかのような名曲です。
僭越ながら、伝授~!


先日食事をご一緒した先輩が、「長年、シングル『追憶』のB面が「気になるお前」だとばかり思い込んでいた」と仰っていてちょっとした笑い話になったのですが、いや、実は僕も「気になるお前」と「甘いたわむれ」って少しイメージがかぶるんですよ。
曲想は全然違うのに・・・何故かなぁ。

ちょっと考えてみて、「加瀬さんの曲」というのは当然あるとして、おそらく「甘いたわむれ」とタイトルを聞いてなんとなく脳裏に思い浮かぶジュリーのステージ・アクションが「気になるお前」のそれとよく似ているのだ、と気づきました。後追いファンの勝手なイメージですけどね。
さすがに”おいっちに体操”は「甘いたわむれ」では無いかもしれないけど、”猫パンチ”や”糸まきまき”のアクションは容易に浮かぶのです。

僕は『ジュリー祭り』がジュリーLIVEデビューですから「甘いたわむれ」を歌うジュリーを生で体感したことはありませんが、この曲の映像はたった1枚ではあるけれどDVDで所有しています。
言うまでもない・・・『ZU ZU SONGS』ですね。

この曲はリリース当時も含めてどのくらいLIVEで採り上げられたことがあるのでしょう?
いずれにしても『ZU ZU SONGS』で歌われた時にはかなりレアな選曲ではあったはずです。この時は前曲「ライラ」を歌い終わった後に間髪入れず、という感じでポンタさんのドラム・ソロ(キックが鬼!)からなだれ込むセットリストだったのですね。
印象的なホーン・セクションのフレーズ(キーボードによる再現)が始まった瞬間、「うわ~、キター!」と熱狂された先輩方が多かったのではないでしょうか。

それにしても94年のジュリー、カッコイイですねぇ。


Zuzusongs1

『ZU ZU SONGS』より、「甘いたわむれ」を熱唱するジュリー。

横顔は『リアリィ~』そのもの(時期が近いですから当たり前ですが)。お腹もチェックし放題(笑)。
ということで、ジュリーの生腹を拝みたいみなさま・・・DVD『ZU ZU SONGS』はマストアイテムですよ~!
(↑みなさまさすがにこれはもうお持ちか~)

それにしても、こんな完成度の高い曲、しかもこれほどキャッチーなヒット性を持つ曲がシングルのB面とは・・・加瀬さんの懐の深さ、恐るべしですよ。
『危険なふたり/青い恋人たち』と並び『追憶/甘いたわむれ』は、加瀬さんが両面とも作曲を手がけたジュリー・シングル屈指の大名盤でしょう。
そう、この曲はA面「追憶」にも負けないほど高度な楽曲構成を擁します。

「追憶」の場合は前回記事で述べたように大胆な同主音移調が特性ですが、「甘いたわむれ」の場合は「譜面表記的には同調号のままの採譜となるのに、転調しているとしか思えないほど変化に富む」曲なのですね。
加瀬さんの作ったジュリー・ナンバーの中では一番凝っているんじゃないかなぁ。この時期、加瀬さんが冴えまくっていたことが分かります。

例えばエンディング。ヴォーカル・メロディーとアウトロの繋がりを聴いてみましょう

お互いはじめて 会った日からもう
E                     G#m

一年過ぎたのは夢みたい
A                    B        E

一年過ぎたのは夢みたい ♪
A                    B        G

最後の「夢みたい♪」の後に重なるホーン・セクションで、ずいぶん歌メロとは表情が変わりますよね。
ホーン・セクション部のコード進行は

ソソソソ、ララ~、シ♭~ラソミ~
G          A         B♭    A G E

レシレシ、レレ#、ミ~ ♪
D              D#     E

となっています。キュートな歌メロから一転、勇ましく縦ノリな感じがしませんか?

実はこれ、「追憶」の同主音移調の応用。
ホ長調の曲に、ホ短調の平行調である「G」のコードを起点に作られた進行のリフを載せています。
にもかかわらず、ホ短調のトニックである「Em」は一切姿を現しません。
後にジュリーが「熱愛台風」(ジュリーwithザ・ワイルドワンズ)の作曲でこのパターンとよく似たニュアンスを採り入れます。「手をつなぐことから始めればいいじゃん♪」と歌う箇所がそれで、「甘いたわむれ」のホーン・セクション部の進行の理屈にとても近いのです。
ジュリーも自宅でギターを鳴らしながら「熱愛台風」を作っていて、「お、これちょっと加瀬さんっぽいか?」なんて考えていたかもしれませんよ~。

さて、「甘いたわむれ」はシングルA面の「追憶」同様、井上バンドではなくケニー・ウッド・オーケストラ名義の演奏クレジットとなっています。

素晴らしい演奏であることはもちろん(左サイドのカウベルが好き!)ですが、それ以外に耳を奪われるのは、不思議な不思議なギターのミックス処理。
キメの出番になると凄まじい大音量で登場し、PANをサイドに振られたと思ったら「ちょっとちょっと、まだ弾き続けてるんですけど~!」という熱演お構いなしに、容赦なくフェード・アウトされるんですよね。
でも最後の最後は「どか~ん!」と爆音(&たぶん後がけのディレイ)を轟かせ、大きな主張を残します。

とても面白く愛すべきミックスですが、狙い、意図まではよく分からないなぁ。
最後の爆音は、主人公が相手の女の子に「勝手なことばかり言わないで!」と強烈なビンタを食らっているシーンを表現しているのかなぁ、などと得意の見当違いな深読み(邪推とも言う)をしてみたり・・・。

同年のアルバム『JWEL JULIE~』に「甘いたわむれ」が収録されていたらどんな感じかな、と想像するとそれはそれで楽しいですけど、「この『追憶』というシングルは井上バンドで作るアルバムとは区別したい」という思いはジュリーにもあったのではないでしょうか(とは言っても結局、アルバムのラスト1曲に「追憶」のヴァージョン違いが収載されることになったわけですが)。
74年のジュリーは、「僕はバンドとして勝負したいんだ!」という渇望が最も強い時期だったと思われます。
少し資料をご紹介しますと


Img391

Img392

Img393

何の雑誌に掲載されていたものかは僕にはちょっと分からないんですけど、74年をグアムでスタートさせた、というジュリーの記事です。

今年はソロ歌手としてより、グループのリードボーカルとして新しい分野に挑みたいと意欲を

とあります。
これは、会社がプロモート用として出した言葉ではなく、ジュリーの口から語られたものでしょうね。

ただ、やはり賞レースを意識した勝負シングルとしての「追憶」についてはまた別の考え方が会社やスタッフにもあったのでしょうし、「甘いたわむれ」のようなハイレベルの楽曲がシングルB面として「隠れた大名曲」となった経緯は、ジュリーの本当に贅沢で充実した、稀有な歴史を物語る上でひとつの材料となるでしょう。
何より、ジュリーのヴォーカルに力みが無く、「あぁ、楽しい歌だな」という良い意味でリラックスした雰囲気が感じられるのもまた、「キュートなジュリー」を無意識に演ずるこの曲の大きな魅力ですよね。

キュート、と言えばこの曲でもやはり安井さんの歌詞に触れないわけにはいきません。
安井さんは凄いですよ。女性の気持ちは当然として、男性の気持ちもよ~くお分かりのようで。

別に既婚でなくとも、異性とおつきあいしたことのある方なら同じように解釈するかとは思いますが、「甘いたわむれ」はちょっとした(可愛らしい、と言ってもいいかな)男女の喧嘩の後のワンシーンを描いた詞なんだと思うんですよね。

さっきまで君が 夢中で話した
E                    G#m

旅の計画 きっと叶えよう ♪
A                     B7

喧嘩の原因は、この「旅の計画」。
人によるかもしれませんが、基本的に男って、ハッキリした旅の目的があって現地でワクワクする、という感じ。一方、女性は具体的な目的があっても無くても、楽しい計画を立てているというその状況だけでワクワクする・・・ものなんじゃないですか?

で、この歌詞の言葉で描かれているシーンの少し前に、女性が楽しい楽しい旅の計画を男に持ちかけるも、男は適当に「ふんふん」と聞いているんだかいないんだか分からない、という状況がまずあったようです(「遠い旅」なんかもそうですが、安井さんは「言葉に書いていない情景までをも聴き手に差し出す」とてつもない才能を持つ作詞家です)。
男のそんな態度にカチン!ときた女性は、ほっぺたをふくらませて急転直下の大不機嫌モードに。
「やばっ!」と慌てた男は事態を収拾しようとします。

約束するから そんな顔しない ♪
   C#m                    G#m

並の男であればそんなことを言っても「今さら何よ!」と火に油を注いでさらなる状況の悪化を招きそうですが、何と言っても歌っているのはジュリーです。
ジュリーのあの声で
「そんな顔しない!」
なんて言われたら、どんな女性だってたちまちゴキゲン直すってものですよ。
僕はその点、間違いなく並以下の男なので
「今度、カミさんが夕食時にでも突然旅の計画を話し始める、なんてことがあったら、とりあえず新聞は横に置いて、ちゃんと聞いてあげなきゃいけないよなぁ」
・・・などと、このキュートな名曲の考察から今回、人生の教訓をひとつ得たのでありました(笑)。


それでは、オマケです!
今日は『ヤング』のバックナンバーから、74年8月号のジュリー関連ページをどうぞ~。


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最初の画像・・・「ロックン・ツアー完走・全員集合!」のショットは、『YOUNG IDOL NOW Vol.8』のものとは微妙に違っていて、見比べてみるのも楽しいです。
これね。


Youngidol7418


それでは、ちょっと更新ペースは鈍くなるとは思いますが、これからツアー初日まで、「なるべくセットリストのことは考えずに、加瀬さんの作った全ジュリー・ナンバーを書き続ける」シリーズ、続行いたします。

GRACE姉さんのご快復、ステージでの素敵な笑顔のツアー初日となるよう祈りつつ・・・。
改めて、よろしくお願い申し上げます。

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2015年7月 1日 (水)

沢田研二 「追憶」

from『JEWEL JULIE -追憶-』、1974

Jeweljulie

1. お前は魔法使い
2. 書きかけのメロディー
3. 親父のように
4. ママとドキドキ
5. 四月の雪
6. ジュリアン
7. 衣裳
8. ヘイ・デイヴ
9. 悲しい戦い
10. バイ・バイ・バイ
11. 追憶

----------------------

from『ROYAL STRAIGHT FLUSH』
original released on 1974、single

Royal

1. カサブランカ・ダンディ
2. ダーリング
3. サムライ
4. 憎みきれないろくでなし
5. 勝手にしやがれ
6. ヤマトより愛をこめて
7. 時の過ぎゆくままに
8. 危険なふたり
9. 追憶
10. 許されない愛
11. あなたに今夜はワインをふりかけ
12. LOVE(抱きしめたい)

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7月となりました。
本来なら、ジュリーの全国ツアー開幕月。あと2週間後に迫った初日をワクワクと待つ・・・はずでしたが。

みなさま、澤會さんのサイトはご覧になりましたか?
『こっちの水苦いぞ』ツアー初日の東京国際フォーラム公演は8月17日に延期となり、その他ツアー前半予定だった各公演会場にも延期、中止が出ています。
たった今知った情報でビックリしていますが、メンバーの身体のことならば仕方ありません。
どうかゆっくり休んで・・・GRACE姉さん。僕らは行儀よく姉さんの回復をお待ちしていますから!


さて、気をとり直しまして・・・今日はまずジュリー関連のごくごく個人的日常のご報告から。
先週土曜日は、ジュリーづくしの1日となりました。

まず午前中。
『こっちの水苦いぞ』ツアー初日、東京国際フォーラム公演のチケットを再配達で無事受け取り座席を確認すると、予想通り・・・1階の最後方近辺でございました。
これは、2011年の老虎ツアー初日公演のチケットがファンの手元に届いた頃に、しょあ様が「あさきゆめみし席」と命名されたあたりのお席で、一部の人達の間では「フォーラムのジュリーLIVEと言えばこの辺」と、恒例の指定席となっている感があります。
僕もその一人で、今回は「ゆめ」のあたり(泣)。
それでも、参加できるだけで幸せですよ。いやいや、これは本心ですから。
みなさまのお席はいかがでしたか?チケットも手元に来て、「いよいよ始まるぞ」という感じですね。

午後にはランチも兼ねて中野に繰り出し、当然、『ジュリー生誕記念』お宝蔵出し期間開催中の『まんだらけ海馬店』さんを訪ねました。
ジュリーファンでごった返しているかな、と予想していましたがお店は意外やすいていて、ゆっくりとお宝を物色できました。みなさまは25日早々に行かれたのかな?

事前に「出品販売予定」の告知をチェックしていた78年の『プレイファイブ』は見つからず。きっとあっという間に売れちゃったんでしょうね~。
その他、レアなお宝についてはショーケース内の陳列で、それなりのお値段がつけられています。
『ライヴ・セレクション』に凄まじい値がついてたなぁ。『ロックン・ツアー’79』『CMソング・コレクション』といったカセットも、入手困難度に比例したお値段でした。

まず僕はショーケース軍団の中から数点、店員さんに鍵を開けてもらって物色。
さすがは店員さんもプロで、ひと目で「これは『架空のオペラ』のパンフレット」「これは『愛まで待てない』のジャケ写違いのレコード」と説明しながら丁寧に手に取って差し出してくれました。
僕はその中で、『架空のオペラ』のパンフレットが3000円というのはお得、と判断し即購入。店員さんによると「角が少し傷んでいるのでこの値段ですが、(相場としては)安いと思いますよ」とのこと。

続いて、通常の陳列コーナーの膨大な在庫から悩みに悩んで、『サーモスタットな夏』のツアー・パンフレット(2000円)を購入しましたが、今思うと、購入を見送った『あんじょうやりや』のツアー・パンフレットが2500円ってのは、かなりお得だったような気がする・・・ケチらず一緒に買っておくべきだったなぁ。
あ、あと同人誌系の珍しい本もいくつか並んでいて、『ブルー・エンジェル』を漫画化した可愛らしい小冊子をパッと見た瞬間に「絵柄買い」。
僕は『ブルー・エンジェル』って当然観たことないですし、以前先輩からパンフをお借りしたものの、あらすじについてはほとんど何も知らなかったものですから、大変勉強になりました。LIVE会場で作者様にお会いすることがあったら、よくお礼を申し上げなければ(笑)。

actのパンフも結構揃って販売されていましたね。『クルト・ワイル』『ボリス・ヴィアン』『サルヴァドール・ダリ』『エディット・ピアフ』『バスター・キートン』『エルヴィス・プレスリー』が販売されているのを確認しました。
こうしたパンフは、特別な期間でなくても普通に店頭で常時販売されていると思われますので、興味のあるかたはお店を訪ねてみてはいかがでしょうか?
そうそう、actと言えば・・・最近になって、『クルト・ワイル』以外の映像はすべて我が家に揃っていたことが発覚。先日いきなりカミさんが『ニーノ・ロータ』を観はじめていたのでビックリ・・・「持ってたの?」と。
でも僕は、今はチラ見程度で耐えています。真剣に鑑賞したら一連の映像に嵌りこむことは明らかですからね。まずCD大全集の方を完璧に血肉とすることを目指し、映像は数年後の楽しみにとっておきます。

夜には、いつもお世話になっているJ先輩お2人と合流して、有名なお蕎麦屋さんで食事会。蕎麦好きの僕は「なす汁せいろ」を早々に頂きましたが、夜メニューでしたから、天ぷらなど一品料理も楽しみました。

会の主旨はもちろん、ジュリーが無事67才の誕生日を迎えたお祝いということもありましたが、今回はやはり加瀬さんを偲ぶ会となってしまいましたね。
おもに70年代のエピソード・・・ジュリーに大きな愛情を注ぎ、いつもジュリーの傍にいた加瀬さんの姿をタイムリーで知っていらっしゃる先輩のお話は、しんみりとしつつもその思い出は楽しいものばかりのようで、加瀬さんへの感謝の泣き笑いが耐えない素敵な時間でした。
同時に、加瀬さんの残してくれた多くの名曲やプロデューサーとしての輝かしい実績・・・もっともっと大きくメディアに採り上げられ評価されて良いはずなのに、という思いも込み上げてきます。
『ロックジェット』さんには是非加瀬さんの特集号を出して欲しいよね、というお話も出ましたね・・・。

で、今日のお題はその食事会でもたびたび話題に上がった、74年の大ヒット・シングル「追憶」。
紛れもなく、ジュリーと加瀬さんの代表曲です。

今年の全国ツアーで、ジュリーが加瀬さんの曲をどのくらい歌うのかはまだ分かりません。
でも、もし「追憶」が採り上げられるとすれば、歌うジュリーにとっても聴いているファンにとっても、加瀬さんへの気持ちを強く歌に重ね、涙を堪えることができるかどうか・・・という1曲になるかもしれませんね。

実は僕はジュリーのポリドール期のCDを大人買いしていた頃(『ジュリー祭り』参加以前)からしばらく、「追憶」というシングル曲とアルバム『JEWEL JULIE~』が今ひとつピンと来なかったんですよ。その後完全ジュリー堕ちを果たし、ジュリーの歴史や時代背景を知るに連れて「特別なシングル」「特別なアルバム」である、と評価を改めていったという経緯があります。
今振り返ると、当然の評価が遅れてしまった原因のひとつに、「ジュリーと加瀬さんの特別な関係をほとんど知らなかった」ことはある、と思っています。

僕には、ジュリーがこれまで歌ってきた幾多の名曲の中で、「超有名曲だから」ということとは別に「自分のような者がこの曲を語るには畏れ多い(荷が重い)」と感じている曲が3曲あります。
これまで数年かけてジュリーを学んでいく中で、タイムリーなジュリーファンの先輩方とお話させて頂いたりコメントを拝見させて頂いたりして、その楽曲に対する「思い」が特別、と感じる曲・・・つまり後追いのファンには分かり得ないその時々の時代の空気やジュリーの有りようまでを含めた強い思いが、先輩方の胸に脈々と残されている(と、僕が感じている)3曲です。

ひとつは、2012年にどうにかこうにか記事に書くことができたタイガースのナンバーで、「散りゆく青春」。
2011~12年のあの奇跡的なツアーが無かったら、未だに書けてはいなかったと思います。

さらに、3曲の中で最もその感覚が強く、どういうふうに考察に臨めば良いのか未だ皆目見当もついていないのが、「時の過ぎゆくままに」です。
これは一応、ジュリー70歳の誕生日に書くことは決めていて(『ジュリー祭り』セットリストお題記事完全制覇の大トリとなる予定)、今から少しずつ準備していかなきゃいけないなぁ、と考えているところ。

そして残る1曲が、今日思いきって採り上げることにした「追憶」なんです。
正直「荷が重い」という感覚は今も大きく僕にのしかかっているのだけれど、最近の記事更新お題の流れで、この曲をスルーするのはあまりに不自然ですからね。意を決して書くことにしました。

でも、「伝授!」などとはとても言えないなぁ。
とにかく僕なりの考察で頑張ります!


Youngidolnow74

『YOUNG IDOL NOW Vol.8』より

「散りゆく青春」「時の過ぎゆくままに」「追憶」の3曲には「短調」という明快な共通点があります。
僕がこれら3曲に、自分には永遠意到達できないほどの先輩方の「思い」を感じる時、そこには「愛情」と同等の「切なさ」をも想像します。その「切なさ」は、まず短調の曲想から感じとっているものでしょう。

6月2日にNHKのお昼の番組で、「風鈴」の文化や職人さんにスポットを当てた回があって、違う音で鳴る複数の風鈴を使い、風鈴をミュージックベルに見立てて「チューリップ」を演奏するシーンがありました。
何気なく観ていて驚いたのは、「ミ」音を受け持つ風鈴だけが、半音フラットしていたんですよ。つまり「ド、レ、ミ♭~、ド、レ、ミ♭~、ソ、ミ♭、レ、ド、レ、ミ♭、レ♪」と鳴っていたわけです。そのメロディーの美しく切ないこと!目からウロコ、新鮮でしたね・・・。
そして、「あぁ、日本の文化だなぁ」と。
「風鈴」が西洋の文化だったら、ミはナチュラルだったはずだと思います。短調のメロディーに特別な郷愁を感じる・・・これは日本人としてもとても自然なことであって、しかも「愛する」ことに「切なさ」はつきものじゃないですか。僕が先述の3曲に「畏れ」を感じるのは、その部分においての未知である、と考えるのです。

その3曲が特別、ということにはそれぞれの曲に絡む大切な要素があって、「散りゆく青春」には当時のザ・タイガースの醸し出していた独特の空気、「時の過ぎゆくままに」にはドラマ『悪魔のようなあいつ』の主人公である可門良のキャラクターとストーリー性などを後追いの僕は考えるわけですが、「追憶」の場合はそれが「加瀬さん」なんですよね。
いつかジュリーが語っていた「忙しい時に、僕にすべてを捧げてくれた」という加瀬さんへの感謝の言葉が決して大げさなものではなかったことを、恥ずかしながら僕は長い間知らずにいました。

実際、タイムリーなファンの先輩方にとって「危険なふたり」「TOKIO」以上にこの曲に「加瀬さん」を思う、ということは確かにあるようです。
昨年の全国ツアー『三年想いよ』初日公演直後、いつもお世話になっている長崎の先輩が、セットリストを知るやいなや「追憶」と「海に向けて」の2曲に強く反応され、当時闘病中だった「加瀬さんへのジュリーの思い」を選曲に見出していらっしゃいました。
僕はそのお話を聞くまでそんなことは思いもつかず・・・「なるほどそうか!」と考えさせられたものです。

そんな低レベルな次元にある僕が「追憶」を語るのは、明らかに10年以上早いでしょう。第一僕は、アントン・チェホーフの『かもめ』もまだ読んでいないんですよ。
ただ、ここ2ケ月加瀬さんの曲ばかりを集中して記事に書いてきて、僕もそれなりに「作曲家・加瀬邦彦」については語る言葉を持ち始めましたから、なんとかそのあたりをたぐって考察してゆくしかなさそうです。

ということで、それではここで、「追憶」での加瀬さんの作曲最大の個性であり挑戦だったと思われる、「同主音による近親移調」の話をさせてください。
ちょっと難しい話になってしまうかもしれませんが、「追憶」という曲の素晴らしさ、ジュリーの歴史の凄さを語る上ではとても重要なことですし、みなさまお聞きになったであろう、つのだ☆ひろさんのラジオ番組へのささやかながらの補足の気持ちも込めまして、ね。

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参考スコアは、『沢田研二/イン・コンサート』より。

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加えてこちらは『HEIBON SONG』75年1月号から。


つのださんが番組内で「追憶」をかけた時、この曲について「昔はサビでメジャーになるのが少し違和感あった」と語っていらっしゃったでしょ?
実は先述の食事会の場で先輩に「あれはどういうこと?」と尋ねられたりしたものですから、あぁ、言われてみればつのださんの言葉を「?」と思われたジュリーファンの方々もきっと多かったんだろうなぁ、と。

つのださんの言った「サビでメジャーになる」というのが、ズバリ同主音移調を指しています。
「追憶」の場合は、ホ短調で始まった曲がサビでいきなりホ長調に転調している、ということです。
で、つのださんが語っていたのは、つのださん自身がその転調に違和感を抱いた、ということよりもむしろ、「ジュリーのような歌手がこんなふうな転調がある曲をシングルとしてリリースして、しかも大ヒットしてしまった」という驚き、当時それがいかに斬新であったか、ということを「違和感」という言葉に置き換えていらしたのだと思われます。

当時のジュリーは圧倒的なトップ・アイドル。「シングルが売れる」ことを宿命づけられていたと言えます。
まだまだ成長途上であった70年代前半の歌謡界ではそういう時、並の歌手であれば、わざわざ作曲段階から冒険はしないんですよ。
プロの作曲家による、「分かりやすい」「(例えばつのださんの言葉を借りれば)ルーティーンの曲」をひたすら作り続ければ良いはずなんですね(もちろんそれはそれで素晴らしいことですが)。その方が安全で、ある程度のセールスは計算できるのですから。

ところが加瀬さんはさらなる次の境地を求めて、当時とすれば「難解過ぎる」と言われても不思議ではない大胆な転調を擁する「追憶」のような曲を「勝負曲」としてシングル・リリースし、見事成功したわけです。
「アイドルのプロデュース術」としては(それまでの)常識を完全に覆すほどの冒険。
加瀬さん作曲のジュリーのシングルに、二番煎じの発想は無いんですよ。「今度はこうしてみよう」「こう変えてみよう」という挑戦(遊び心?)の連続。
何故「危険なふたり」と同じリフ・ロックを指向した「恋は邪魔もの」が短調なのか。何故「追憶」の大成功を受けてなお、「白い部屋」では同主音移調を採り入れなかったのか。
加瀬さんは常に「変化」を志したのですね。「すべてがチェンジ」「チェンジがベスト」・・・ビートルズを敬愛する加瀬さんなら、彼等に倣ってそう考えていたでしょう。

前回記事に頂いた先輩のコメントでのお話によれば、「追憶」は7月のシングル・リリースだったのに、ラジオでは早々に5月からフルコーラスでガンガンかかっていたのだそうです。これは、リスナー(特にジュリーファンではない人達を含む)への刷り込み、耳慣らしの戦略もあったのではないでしょうか。3度4度と聴くうちに、サビの転調がクセになってくるというね・・・。
もしそうなら、フルコーラスかけられていたのは必然だったのですよ。曲を部分的に流したのでは、この転調のインパクトは伝わりませんからね。


小雨降れば ひとり待つ ニーナ
Em                               D

何も聞かず 読みかけの本を
Em                              D

捨てて抱きあった お前の肌
      Am                Em(onG)

ニーナ 素顔がきれいだ ♪
F#7             B7

それまで物悲しいホ短調のAメロで、囁くように「ニーナ」の名を呼んでいたジュリーが

オー!ニーナ! 忘れられない
         E                    F#m

許して 尽くして 側にいて ♪
B7                        E

サビのホ長調への移行とともに華麗にその感情を解放するゾクゾク感。これこそ加瀬さんが「追憶」に込めた冒険心であり素晴らしさなのです。
そしてジュリーが見事この曲を大ヒットさせたことにより、その後「同主音による近親移調」は、日本歌謡界の「売れセン」の手管のひとつとなってゆきます。
ザ・ベストテン世代の僕は、同じ手法による大ヒット曲・・・シャネルズの「街角トワイライト」やトシちゃんの「抱きしめてTonight」を、普通に「いかにも売れそうな転調パターン」として捉えていたわけですけど、後にジュリーファンとなってようやくその根本を「追憶」という名曲にまで辿れているというわけで。

いや、この転調自体は日本のスタンダード・ナンバーにも古くからある手管ではあるんですよ。
代表例は「雪の降る町を」。短調で始まった曲が、サビの「遠い~国か~ら♪」で同主音の長調に変化します。日本人なら誰でも知っている曲ですね。
また、ジュリーのアルバム収録曲ということで言えば、71年の『JULIEⅡ』に「二人の生活」「愛に死す」という2曲でジュリーはこの転調パターンをリリース済。
さらに73年末、海外戦略の流れから生まれたシングル「魅せられた夜」も、ロ短調のメロディーがサビでロ長調に転調します。この「魅せられた夜」は「追憶」の前章のような位置づけのシングルと言ってよく、加瀬さんは、「よし、この手法を日本のヒット曲の王道パターンにまで押し上げてやろう。ジュリーの歌ならそれができる!」という意気で「追憶」を完成させたのではないでしょうか。

「楽曲的にも充分練れている(頭のお固い連中に文句を言わせない)曲」でヒットを狙うなら、当然74年のレコード大賞受賞も加瀬さんの視野にあったはずです。



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『ヤング』74年11月号より
この年の大賞レースは3曲に絞られていたようですね。僕はこの3曲についてタイムリーな記憶が全然無いんですよ・・・。

曲の斬新さ、話題性は申し分なかったと思われますが、ジュリーの「追憶」は残念ながらその年もうひとつのムーヴとなった、森さんによる「演歌の世界にフォーク・ソングの血を採り入れる」という斬新さに一歩及ばず。まぁその苦杯をバネにますますその後のジュリーが新たな境地を次々に開拓していったことを考えれば、それはそれで良かったんじゃないかなぁ。
賞レースを見守っていたジュリーファンの先輩方は、悔しい思いをされたでしょうけどね・・・。

今、後追いファンなりに「追憶」というシングルの特別な意義という点を考えて僕が思うのは、これはジュリーが初めて、「歌謡曲」とも「ロック」とも言えない「沢田研二」という音楽ジャンルを、世間の評価からは隠れたところで確立させた曲だったのではないか、と(もちろん、それを最初に無意識にでも見抜いていたのは、タイムリーなジュリーファンの先輩方だったはずです)。
74年レコード大賞の選考者のみなさんの引き出しには、無いジャンルだものね。

アレンジとしては、「許されない愛」での「ブラス・ロック」を踏襲し、曲想としては、「魅せられた夜」での「同主音による近親移調」を踏襲しているわけですが、ここへ来てその楽曲ジャンルが「沢田研二」の歌として唯一無二のものとなった・・・例えば、「ニーナ」と固有名詞を連呼するジュリーの囁き。「忘れなれない」「そばにいて」と歌い、どこまでも感情を貫き通すようなロングトーン。
歌の「上手さ」だけではないんですよね。「ジュリーが歌っているのだから」という付加価値が絶対の条件としてついてくる曲であり、歌であると。

安井さんと加瀬さんが作り出した稀有なジャンル・・・その後作詞者、作曲者が変わっても引き継がれてゆく正真正銘の「ジュリー・ナンバー」としての最初の1曲。
では、正真正銘のジュリーとは何でしょう。

「中性」
「放っておけなさ」
「(良い意味での)スキの多さ」

色々と考えられますが、ジュリーのそうした魅力をキャラクターでなく音楽的に変換するとどういう言葉になるのか。当時ジュリーのすぐ近くにいた加瀬さんのような音楽人にとって、そんなジュリーの「スキの多さ」という魅力はどんなふうに見えていたのか・・・。
少し誤解を招くかもしれない表現なんですけど、「中途半端」というジュリー自身の言葉を以って、そのあたりの核心に迫った、と思える当時の資料がありますのでご紹介しましょう。74年の『週間TVガイド』です。


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「50年たってもステージで歌っているのはカッコいい。その年齢にふさわしい仕事をやれたらいい」
「僕の歌は歌謡曲でもないロックでもない」
「中途半端さをもっと大きくして確立できたら、それが”沢田研二”そのものになる」

1974年当時、ジュリーという歌手について様々な評が世にあった中、「沢田研二という唯一無二の個人ジャンル」までをもそこに見出すことは、「識者」達から嘲笑されることだったかもしれません。
でも、ジュリー自身や加瀬さんは、真面目にそこを目指していました。

今、2015年。
年齢にふさわしい仕事をし、ステージに立ち続け、歌謡曲でもないロックでもない「沢田研二」というジャンルを本当に確立させたジュリー。そんな現状もまた、1974年の「追憶」というシングルにまで辿ることのできる、ジュリーの歴史の素晴らしさではないでしょうか。
「追憶」は、加瀬さんがジュリーの傍にいた時代の、豊穣の遺産の中でも特別な1曲。
「やっぱり、特別なんだなぁ」と、後追いの僕はとにかくそれだけを分かったつもりになっています。

詞と演奏についても少しだけ。
安井さんの詞は何と言っても、ジュリーに女性の名前を狂おしく連呼させるアイデアが加瀬さんのメロディーとマッチし、凄まじいヒット性を感じさせますね。しかも、西洋の名前ですから日本のファンの女の子誰も得をしない、というのがまたニクイです。
西城さんの名曲「傷だらけのローラ」の詞は、ジュリーの「追憶」が無ければ生まれていなかったような気がするなぁ。ちなみに曲の方は、「許されない愛」が無かったら生まれなかったような気がしてます。

つまり、安井さんの詞も加瀬さんの作曲と同様に、その後の日本のヒット曲の王道パターンを先導していたんじゃないか、と思うわけです。
「追憶」のタイトルは、洋画からとったんじゃないかな。ズバリ『追憶』・・・時期的にも合致しますよね?
僕は映画自体は観たことはありませんが、ハムリッシュの主題歌「追憶」は、映画モノのオムニバス・スコアには必ず収載される曲で、よく知っています。

(註:その後、「傷だらけのローラ」は「追憶」より先だったことが判明。お恥ずかしい。で、「追憶」は最初「ニーナ」というタイトルだったのを「ローラの後にニーナはマズイだろう」ということで「追憶」とつけ直したのが大輪茂男さんだったことも、後のラジオ番組で分かりました)

この曲はどうやら「井上バンド」としてのレコーディングではないようです。
シングル盤のクレジットは「ケニー・ウッド・オーケストラ」。その上でアルバム『JEWEL JULIE~』大トリ収録の別ヴァージョンの方を聴いても、アレンジは大きく異なりますが各バンド・パートはシングルと同じ演奏者によるものと僕には聴きとれます。
少し前にBAT様にコメントでご伝授頂いた、東海林先生繋がりの『ステージ101』専属バンドが、ケニー・ウッド・オーケストラと共演しているのではないでしょうか。

ただ、それを置いても、この「追憶」の演奏で僕が今さらながら強く感じるのは、「これは自分の基本的な音楽嗜好ズバリの音である」ということです。
僕が音楽に目覚めるきっかけとなったのは、小学生時代に聴いていた『太陽にほえろ!』のサウンドトラック。その中で僕は幼心にドラムスの音に憧れ、ブラスバンド入部を志望しドラムを始めました。それは、洋楽を聴いたりギターを覚えたりするよりも数年前のことで、僕の音楽への関わりの原点です。
こうして考えると、僕の中に「井上バンドの音=ジュリーの曲の音」への適性が知らず知らずのうちに育まれ、長い間雄伏していたのだと言えます。
さらに、その時分に僕が特に憧れていたドラムスの音は、ハイハットの刻みと豪快なロール・フィルで、ズバリその「子供心に憧れていた音」を「追憶」のドラムス演奏に今見出すことができるのです。
「追憶」は井上バンドとしてのレコーディングではなかったかもしれませんが、ドラムスは田中清司さんの演奏である可能性が高いんですよね。

「追憶」の東海林先生のアレンジはAメロが1番、2番ともに2段攻撃になっていて、1回し目でクールにハイハットを刻む音、2回し目直前の豪快なロールによるフィル・イン・・・これは正に僕が幼少時代から憧れていたドラムスの音そのものと言えます。

最後に。
アルバム・ヴァージョンのエンディングで、まるでリード・ギターのように「ソロ」っぽいフレーズ展開をするベースライン、また伴奏部で何とも言えない声で「ニーナ!」と囁くジュリーの声・・・「追憶」を通して聴いてシビレる箇所はいくつもある中で、個人的に一番好きなのは、長調のサビで豪快に歌い上げていたジュリーが、再び短調へと舞い戻る瞬間のヴォーカルの、神がかりな表情の変化ですね。
この曲、サビが丸ごとキッチリ長調というわけではなくて、途中から短調に戻っているんですよ。

オー!ニーナ! もし今なら
         E                    F#m

お前を二度とは悲しま せない
B7                     Em  Am  B7susu4  B7

オー!ニーナ! ♪
          Em

歌詞で言うと、この「悲しませない♪」からAメロと同じホ短調となります。
つまり、上記歌詞部の「オー!ニーナ!」には、長調の部と短調の部がある、ということ。
躍動的で明るい歌声から、物悲しく切ないヴォーカルの切り替えは正に神!
いくらメロディーが優れていても、「追憶」はジュリーが歌うから素晴らしいんですよね。

ジュリーをリスペクトし、有名なシングル曲をカバーする歌手は多いけど、「追憶」はそのセールス実績に反してあまりそうしたカバーを聴かないでしょ?
この曲をジュリーのように歌うことは、当たり前ですが本当に難しく畏れ多いということなのでしょう。
「日本のヒット曲」のパターンを塗り替え王道にまで押し上げる礎となった加瀬さん作曲の「追憶」。その斬新さ、レベルの高さは今でも変わりなくプロフェッショナルの心を揺さぶり続けているのです。
つのださんはラジオでそういうことに言及してくださったのだ、と思っています。


それでは、オマケです!
前回の予告通り、1974年お正月コンサート『沢田研二ショー』(日本劇場)のパンフレットからどうぞ~。


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さぁ、これで『ジュリーのツアーが始まるまで、セットリストのことはなるべく考えないようにしながら(と言いつつ、今は考えまくっています汗)加瀬さんの曲を書き続ける』シリーズの更新予定お題は、当初の予定だと残すところあと2曲となっています。
ただ、初日公演の日程が延びたぶん、今後どうしようかなと。この機に”KASE SONGS”をすべて書くか、それとも「セトリのことは考えない!」と自分に言い聞かせる意味で、しばらくactの音源を採り上げるか・・・。

とりあえず次回は、今日のお題『追憶』のシングルB面曲「甘いたわむれ」をお届けしたいと思います。
これまた素晴らしい名曲で、加瀬さん作曲のジュリー・シングルB面としては、「青い恋人たち」と並び先輩方の人気もとても高い曲、と認識しています。
引き続き頑張って書きますよ~。

残念ながらツアーが始まるまでもうあとひと月待たなければならなくなりましたが、「久しぶりに歌う歌が多いから気合入れんと!」と、電車で移動しながら、散歩しながら、床に入って眠る前に目を閉じながら、歌詞のおさらいに日夜励んでいるジュリーの姿を勝手に妄想しつつ、8月17日までの日々を過ごそうと思います。

GRACE姉さん、どうぞお大事になさって、ゆっくり休養されてください・・・。
素敵な笑顔と豪快な演奏に再び逢えることが分かっているなら、僕らは安心して待っていますから!

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