ザ・タイガース 「あなたの世界」
from『THE TIGERS CD-BOX』
disc-5『LEGEND OF THE TIGERS』
1. タイガースのテーマ
2. スキニー・ミニー
3. 白いブーツの女の子
4. 愛するアニタ
5. 南の国のカーニバル
6. 涙のシャポー
7. 涙のシャポー(別テイク)
8. 傷だらけの心
9. 730日目の朝
10. 坊や祈っておくれ
11. Lovin' Life
12. 誰もとめはしない
13. 夢のファンタジア
14. ハーフ&ハーフ
15. 遠い旅人
16. タイガースの子守唄
17. あなたの世界
18. ビートルズ・メドレー(ヘイ・ジュード~レット・イット・ビー)
19. 明治チョコレートのテーマ
20. あわて者のサンタ
21. 聖夜
22. デイ・トリッパー
23. アイム・ダウン
24. 雨のレクイエム
25. ギミー・シェルター
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久々にザ・タイガースのお題にて更新ですよ!
先日、いつもお世話になっているピーファンの先輩が一週間ほど入院されることになってしまって(大事には至らず、ということでホッとしました)、病室で過ごされる回復のお時間のささやかなお供になれば・・・と、昨日から集中して考察に取り組みました。
以前から、「近いうちに書こう」と準備していたタイガースの曲があったのです。
そしてこれがまた、加瀬さんの作曲作品です。
加瀬さん作曲のタイガーズ・ナンバーと言えば、当時未発表のテイクながら後にファンも音源を聴けるようになった「愛するアニタ」のタイガース・ヴァージョンまで含めると、3曲ありますね。
残る2曲は、まずシングルA面として超有名曲で、ジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアー・セットリストではオープニングを飾った「シー・シー・シー」。
もう1曲は、一般公募選出の作詞作品5篇に名うての作曲家5人がそれぞれ曲をつける、という『明治チョコレート』とのコラボレーション企画としてリリースされた5曲のうちのひとつ、「あなたの世界」。
今日のお題は、この「あなたの世界」です。本当に加瀬さんらしい曲なんですよね。
とあるきっかけで、「近々の執筆」に大いに意欲を持っていた曲・・・そんな折に加瀬さんの突然の旅立ちがあり、今回悲しいタイミングで採り上げることになってしまいましたが、詞曲とも爽やか、涼やかで邪気が無く、タイガースにピッタリのポップスであると同時に、「愛する人の平穏を願う=世界平和」という当時のフラワー・ムーヴメントを反映するかのようなメッセージをも思わせるような・・・。「さりげなさ」と「普遍さ」を併せ持つ素晴らしいナンバーです。
僭越ながら、伝授!
「タイガースの曲の作詞者について僕らが何も知らないのはおかしい」というピー先生の探究心により、一般公募作詞作品である「花の首飾り」の菅原房子さん、「白夜の騎士」の有川正子さんについては、長年のタイガースファンですら「初めて知る」事実を、僕らは今ピー先生の著書などで学ぶことができています。
加えて、明治製菓とのコラボレーションによる5曲。計7曲が「ザ・タイガースの一般公募作詞作品」ということで間違いないのかな?
僕は明治製菓とのコラボ5曲を冒頭にジャケット写真を添付したCD『LEGEND OF THE
TIGERS』で音源所有しています。歌詞カードもあります。
最近は、「作詞採用された5人の方々はその後どのような人生を歩まれたのだろうか、2013年のあの奇跡のステージをご覧になられのだろうか」と、そんなことを考えながらこの5曲を聴いていたものでした。
そんな中、「あなたの世界」の記事を書きたい、と考えたのは今年の3月のことです。
3月15日・・・ずっと以前に執筆を終えていた「シー・シー・シー」の記事(2010年のジュリーwithザ・ワイルドワンズのツアー・セットリスト予想シリーズ、大トリとしての更新でした)に、思いもかけず頂いたコメント。投稿してくださったのは、「あなたの世界」の一般公募作詞者である伊藤栄知子さんをよくご存知の方でした。
「シー・シー・シー」が加瀬さんの作曲作品ということで、僕は記事中に伊藤さん作詞・加瀬さん作曲の「あなたの世界」に少しだけ触れていて、その記述についてのコメントだったのですが・・・コメントをくださった方のお話では、投稿日の3月15日は、47才の若さで亡くなられた伊藤さんの17年目の命日だった、とのこと・・・。
伊藤さんの命日に、故人を偲ばれながらネット検索され、たまたま僕の記事を見つけてくださったのでしょうか。亡くなられた伊藤さんは、「最期の時まで詩人だった」そうです。
ショックでした。47才での旅立ちは、あまりに早過ぎます。今の僕よりもお若い・・・。
伊藤さんが歩まれた「人生」がまざまざと見えてくるようなコメントに、胸が熱くなりました。
「よし、近いうちにこの曲を記事に書くぞ」と思った矢先、今度は作曲者である加瀬さんの悲報が・・・。
なんと皮肉な巡り合わせでしょう。この「純粋」と言うにはあまりにも邪気の無い爽やかな名曲が、いざ記事に書こうとする段になって、二重の悲しみに包まれてしまったように僕には感じられました。
でも。
こんな素敵な詞を書く人、こんな素敵な曲を書く人の魂が今、安らかでないはずはありません。
僕はとにかく、「あなたの世界」という名曲を自分なりに紐解き、読んでくださるみなさまに改めてこの曲を聴いて頂き様々な教えを乞う・・・そのために頑張るのみ。
ここで書くのは僕の個人的な楽曲解釈によるもので、それがどの程度まで合っているのか分かりませんが、素直な気持ちのままにベストを尽くします。
早速、考察に入りましょう!
SNSでこの曲の話題になった時、先述したピーファンの先輩がお手持ちのものを写メして添付してくださった画像です。
僕は「夢のファンタジア」と「タイガースの子守唄」の2枚についてはJ先輩からお借りしている実物が手元にあるんですけど、「あなたの世界」は持っていません。ですので、レコードについている貴重なスコアも目にしたことがなく、今回のお題曲は自力での採譜作業となっております。
「あなたの世界」の魅力は、まず伊藤さんの詞です。
なかにし礼さんの補作詞も含めて、幾多のタイガース・ナンバーの中で圧倒的に「ピュア」だと感じます。
明治チョコレートとのコラボレーションによって生まれた一般公募作詞による5曲はどれも名曲で、それぞれの詞が信じられないほど素晴らしい作品ばかり。その中にあって、「無垢」の魅力を感じるのが「タイガースの子守唄」、そして「あなたの世界」の2篇です。
ただこの2曲は「ピュアな少女の感性」という共通点を持ちながら、作者のスタンスは大きく違っているのかもしれません。その点で僕が常々考えるのは
「タイガースの子守唄」には
ザ・タイガースにこんなふうに語りかけられたいな
「あなたの世界」には
いつまでもそのままのザ・タイガースでいてね
・・・というそれぞれ異なった作詞の出発点(=動機)があるのでは、ということです。
「あなたの世界」には、タイガースのメンバーとファンである自分とは暮らす「世界」が違う、と踏まえた上での無償の愛情を感じます。ひたすらに彼等の平穏、無事、友情、成功を祈る、今の魅力的な彼等の永遠を願う、というテーマがまずあると思うのです。
伊藤さんのこの詞は、安井かずみさんのような「女性である自分の思いをそのまま書いて、そこから一人称の性別を入れ替えて全体を纏めてゆく」手法で書かれたのではないでしょうか。
伊藤さんがタイガースのメンバーの中で特に思いを向けたのは、やはりジュリーかなぁと僕は想像します。
あなたは虹より美しい
C Em F C
光を集めて 歌う 愛の プリズム ♪
F C Am Dm B♭ G7 C
後追いファンの僕ですら、この歌詞部にはジュリーを重ねずにはいられません。当時のジュリーは本当に「光を集めて歌っている」ように見えたのでしょうから。
・・・と言うと先輩方に「いやいや、ザ・タイガースというバンドそのものが、光を集めて歌っているように見えていたんですよ」とご指摘を受けそうですね。
歌詞中で僕が最も惹かれるのは、サビ部に「平和」というフレーズが登場することです。
当時の洋楽ロック界は、フラワー・ムーヴメント全盛期。当然、邦楽にもその影響は大ですが、「ラヴ&ピース」のコンセプトを堂々と発信し、なおかつセールスにも反映させることのできる日本のバンドはやはりザ・タイガースを置いて他に無かったと想像します。
頭の固い識者(?)達から「不良」のレッテルを貼られていた彼等が、正攻法で以ってそれを為し得たのですから、歴史は「ラヴ・ラヴ・ラヴ」を支持したタイガース・ファンの目利きを証明しています。識者や学校の先生方、形無しですね。
ただ、「あなたの世界」には「ラヴ&ピース」以前にまず「ザ・タイガースへの親身の愛」があり、時代に厳しく当たられたこともあった彼等の心の平穏、変わらぬ活動継続を願った強い思いが感じられます。
その視点が、実際にタイガースがこの詞を歌うことによって普遍的なラヴ・ソング、メッセージ・ソングへと昇華した・・・職業作詞家であればそこまで狙って詞を書くものかもしれませんが、「あなたの世界」ではタイガース・ファンの少女の無垢な思いがはからずも彼等に「ラヴ&ピース」曲のコンセプトを与えた、という流れがあり、そこに一般公募作詞作品ならではの魔法を見る思いがします。
この歌詞が素晴らしいのは、そんな純粋な「タイガース愛」が何のてらいもなく言葉に託されているからです。
やさしい微笑み そのままに
C Em F C
悲しい恋 の涙 知らずにいてね ♪
F C Am B♭ G7 C
少女が憧れのタイガースに、「辛い恋を知らずにいて」「誰のものにもならないで」と願う純粋さ。
特に、伊藤さんのこの詞と同じ思いを持ってジュリーを見つめていた少女達が世に数えきれないほどいらしたことは、僕がこの数年ジュリーファンとして学んできたことでもあります。もちろん、他のメンバーに対して同じ思いを持っていたかたもたくさんいらしたはず。
「あなたの世界」に僕は、そんな当時のザ・タイガースと彼等を愛する少女達の純情、双方の美しいバランスを見る思いがし、感動させられます。
そして、少女がタイガースに語りかけたこの歌詞部は、彼等が歌うことによって「タイガースからファンへのラヴ・ソング」としても逆に成立しているのですね。
このように、「あなたの世界」は伊藤さんの詞によって「ザ・タイガースによるザ・タイガースらしい名曲」となっていると思うのですが、加瀬さんの楽曲構成に耳を向けると、そこにワイルドワンズっぽさ・・・つまり「加瀬さんらしさ」も見えてくるような気がします。
「無垢」「純情」ということなら、加瀬さんも相当です!
イントロのギター・ソロなんて、聴いていて頭に浮かんでくるのはジュリワン・ツアーでの加瀬さんの、12弦ギターをピッ、ピッとはじくようなピッキングで弾いている姿・・・CDで鳴っているのは加瀬さんの音ではないはずなのに、ギターが奏でるメロディーはどうしようもなく加瀬さんを思わせるのです。
曲想に逆らわない素直なフレーズは、加瀬さんのギター最大の個性。それが「あなたの世界」イントロのギターのメロディーに踏襲されているように思います。
しかも歌メロは明快なハ長調のポップス。この詞にしてこの曲、これぞ加瀬さんですよね。
邪気の無い作詞と、邪気の無い作曲。
この世にただ1曲、伊藤さんと加瀬さんの奇跡的な組み合わせがタイガースの曲で起こったこと、それを今僕らがCDで聴けていること・・・素晴らしいことです。
最後に。
明治チョコレートとのコラボ企画による5曲は、一般公募の作詞、名だたる作曲家によるメロディー、アレンジとも素晴らしい作品ばかりですが、おそらく相当限られたタイトなスケジュールでリリ
ースされていたのでしょう・・・楽曲的な「プロデュース」に費やす時間があまりなく、完成度として惜しい部分が5曲いずれもも残されている、と個人的には考えるところがあります。
以前「タイガースの子守唄」の記事では、メロディーがジュリーのキーとしては低い設定で、細部を詰める時間があれば移調して再度演奏してのレコーディングになったのではないか、と(今なら既存の音源の移調はひと手間でできることなのですが、当時はテンポの上げ下げくらいしか方法がありませんでした)書きました。
その点、「あなたの世界」ではどんなことが考えられるかというと・・・。
この曲、全編タイガース・メンバーの重唱になっているじゃないですか。それ自体はとても良いと思うんですけど、1番、2番それぞれのサビの箇所
いつでも僕は祈っている
Am G7 F G7
あなたの世界が平和である ように ♪
Am G7 C Bm7-5 E7 G7
この「いつでも僕は♪」から「あなたの世界が♪」までをジュリーのソロにした方が(「平和であるように♪」から再び重唱となる)、歌詞もメロディーも説得力を増していたんじゃないかなぁ、と思うのです。
また、1’26”直後にAメロのヴァースでミドル・エイトの間奏(ギターソロ)を挿し込んでも良かったのではないでしょうか。一気に突っ走る構成も魅力的ですが、この曲ではイントロとエンディングのコーラスに歌メロには登場しない進行が配されて形よく纏まっているので、間奏があるとさらに引き締まったのでは・・・?
まぁ、所詮それは僕のアレンジの好みの問題。詞曲の純粋さを生かすには間奏無し一気の演奏の方が良い、とする制作側の狙いがあったのかもしれません。
加えて、完成音源ではなんと言ってもストリングスが効いていて、詞曲の「爽やかさ」を演出しています。
僕があれこれ考えるのはリリースから40年以上経っての「後づけ」に過ぎず、やはり当時仕上げられたこのアレンジが「ベスト」ということなのでしょう。
ちなみに、この明治チョコレート企画の5曲って、演奏はタイガースなのでしょうか。
僕の耳ではどうにも判断がつかないのです。
「あなたの世界」では、1’43”あたりで炸裂しているイイ感じで突っ込むドラムスのフィルを聴くと、「ピー先生かな?」とも思うのですが・・・。
それでは、オマケです!
今日は、Mママ様所有のお宝切り抜き資料から、タイガース関連のものをお届けいたします。
余談ながら、今日の記事も含め拙ブログでのタイガース・ナンバーの記事は『タイガース復活祈願草の根伝授!』というカテゴリーになっています。
これは、2009年に初めてタイガースの曲を採り上げた際(「淋しい雨」)につけたもので、その後あれよあれよという間にザ・タイガース完全復活の奇跡は現実となり・・・本来ならそろそろカテゴリー・タイトルを変えるべきなのでしょうが、複数記事のカテゴリーを一気に変更する方法が分からないんですよ・・・(涙)。
仕方ないので、このまま行かせてくださいね。
それにしても、タイガースが本当に再結成して、メンバーだけの演奏で武道館のみならず東西二大ドーム公演を大成功させるとは・・・ブログでこのカテゴリーを始めた頃には、想像もできないことでした。
伊藤さんもきっと、天国の特等席からあの奇跡のステージをご覧になっていたのではないでしょうか。
「愛する人の心(=世界)の平穏を願う」・・・何十年の時が経とうと、それは人として最も大切な気持ちです。今回、タイガースの名曲「あなたの世界」から改めてその大切さを噛みしめることができました。
伊藤さん、加瀬さん、ありがとうございます。
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