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2015年1月

2015年1月29日 (木)

2015.1.20東京国際フォーラムA 沢田研二『昭和90年のVOICE∞』セットリスト&完全レポ

1月29日、無事にレポートを書き終えることができました。
改めて、「あぁ、今年もお正月コンサートが終わってしまったのか~」と寂しい気持ちになりました。
フォーラム当日、開演直前に大変な事件の報道があり、その後も僕らは毎日祈ることしかできません。そんな最中でしたが、不参加だったみなさまにもこの素晴らしかったステージの様子をお伝えしたい、としっかりコンセプトも持って、可能な限り楽しく書けたかなぁと思っています。いや、決して楽しいことばかり書いたわけではないんだけど、そういうこともまた、ジュリーのLIVEに際してこれからもっともっと大切になっていくのかなぁ、と。
例によって更新日付を執筆終了日に移動させて頂いております。長々とおつきあいくださりありがとうございました!

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行ってきました~!
2015年ジュリーお正月LIVE『昭和90年のVOICE∞』が、1月20日東京国際フォーラムでの6公演目をもって無事終了いたしました。

今僕は、今回のフォーラムに参加された多くの敬愛する先輩方や友人達が意外にも、昨年11月ほどではないけれど複雑な思いをもって帰路に着いた、と仰っていることをとても心配しています。
直前に大変な事件の報道があって、確かにジュリーの心は揺れていたに違いありません。「コンサートなんてしてていいのか」は偽らざる本音でしょう。

でも・・・これまで、ジュリーの語ることに意味や理由が無かったことなんてありましたか?
何年か後、いや何十年か後になってようやく「あぁ、あの時ジュリーが言っていたのはこういうことだったんだ」と目からウロコなこと、何度もありましたでしょ?
ファン歴たかだか数年の僕のような者ですら、そういうことはこれまでにあったのですから。

「大人げなく」って、何だと思いますか?
「もう済んだことなんだから」と諭されることなど断じて認めない、そういうことなんじゃないかな?
本来、去年がリミットでした。「大変な年ですよ」と年初めにジュリーが言ったこと。色々と決まってしまって、今年から徐々にそれが形になってゆきます。
「もう決まったこと?もう動き始めたこと?・・・そんなの関係あるかい!NOなものはNOだ!」って・・・見方によってはホント大人げないことかもしれないけど、ジュリーはそれをやりますよね、きっと。

「不言実行」・・・って何だと思いますか?
もうこの国はダメだ・・・今、そう思って諦めや失意に沈んでいる人達。もちろんジュリーファンだけのことではないですよ。多くの、本当に多くのそんな人達に向かって、ジュリーは発信しようと決めたんじゃないかな?
もちろん、「歌」で。

例えばですよ、僕の勝手な夢物語かもしれないけど、また近い将来ドーム級の大きな箱でね、ジュリーが自分達の力だけで、イベンターに頼らず大々的なプロモートも打たず、風刺とかそういうやり方じゃなくてね、真っ向からド直球の志をもって、堂々と平和へのメッセージをコンセプトとしたコンサートをやる、としたらね。
変な野次みたいなかけ声を叱り飛ばすのは、ジュリーにとって正に今、やるべきことだったんじゃないかな。

あ、大それた夢を見過ぎですか。すみません・・・さすがにそれはナイですね(汗)。
でも、ジュリーファンはいつだって、大きな夢を見る力を持っている・・・先輩方、今までずっとずっとそうだったんですよね?
今回、ジュリーが今年のスケジュールを一切語らなかったことを気にされているみなさま、多いですよね。でも、ジュリーがそこに触れなかったからこそ大きな夢を見てしまった僕は、能天気にもホドがある?

まぁ、結局ジュリーがこれからやろうとしていることが何なのかは、僕レベルでは全然分からないというのが正直なところだけれど、下を向いて言葉少なに「俺、やるよ」とお客さんに示してくれたジュリーは、大きな曲がり角を迎えて、限りあるエナジーを静かにチャージしているように僕には見えたけどなぁ。
とにかく、僕らファンはしっかりしなきゃ!

今回のフォーラム当日は、本当に「無事に終了」なのか(失礼極まりない「かけ声」のことを別にして、ということだと思います)・・・と、ジュリーには思うところもあり逡巡もあったようで、最後の1本締め直前の「無事に・・・」という言葉が出るまでに躊躇いの瞬間がありましたが、素晴らしい熱唱と演奏で、大盛況のうちにツアーが幕を閉じたことは間違いありません。
本当に素晴らしいセットリスト、素晴らしいジュリーと鉄人バンドの年明けのステージでした。

渋谷初日より格段に凄い!と思った曲は数知れず。
また、本ツアー2度目の参加となる僕は、事前にセットリスト各曲ごとに「ここを見なければ!」とチェックポイントを自分なりに絞ってこの日に臨みまして、オーラスにして新たな発見もたくさんありました。
一番ビックリしたのはやっぱり4曲目の

青くせめぎあう霊

(と、一部で命名されているようです笑)

かな~。
え?何とことか分からない?・・・まぁ、詳しくはレポ本編をお読みくださいませ~。

あの広いフォーラムAの会場が、ほぼ埋まってましたね。開演前に一般ピーポーのご夫妻と思われるかたが、「沢田研二凄いね、いっぱいだね」とお話されていました。改めて、本当に凄いことなんだなぁ。
久々にお会いする地方在住の先輩方もたくさん駆けつけていらして・・・平日ではあったけど、日付が良かったのかな。むしろ、「年が明けてすぐの渋谷2daysの方が遠征するには厳しかった」というお話も。

フォーラムはとても綺麗な会場ですごく広いんですけど、ステージそれ自体はさほど広い印象を受けなくて、神奈川県民ホールあたりの方がステージは広く見えるけれど・・・錯覚でしょうか。
ステージ左右の巨大なスピーカーの前までギッシリ座席がある感じ。前方端席のお客さんには、柴山さんや下山さんが死角になることもあるんじゃないかな。
僕はと言えば今回のツアー、珍しく渋谷もフォーラムも1階のPAすぐ後方のド真ん中。とても良い席でした。
このあたりのセンターの席って、歌っているジュリーとの差し向かい感覚がありますよね。

さぁ、余計な枕はこのあたりで・・・早速LIVE本編のレポへと進んでまいりましょう。
目に見える1階席のお客さんはもちろん、2階席からも押し寄せるような、降り注ぐような大きな大きな拍手(僕の席の真上が、ちょうど2階席の10列目くらいになるのかな?)をヒシヒシと身体に感じて。
開演です!


1曲目「
LOVE(抱きしめたい)

Love

GRACE姉さんの豪快かつ繊細なフィルから、おそらく将来「いきなりLOVE(抱きしめたい)から始まるセットリストがあったのか!」と、新たなファンにとって垂涎の伝説となるであろう1曲目、真冬のバラードが暖かな歌声で降臨。
この半端ないダメージ・ソングを、今回はとても優しげに、暖かく丁寧に歌うジュリーなのです。

が・・・。
1番でいきなり歌詞が飛んじゃった~。
ジュリーにすれば「ええっ、ここが出てこんのか!」と自分でもビックリしたんじゃないかなぁ、などと僕は思ったんですが、どうやらこれには登場前の控室での出来事からの、明快な伏線があったようです(笑)。詳しくは2曲目後のMCで!

一部の歌詞は飛ばしたまま途中から歌に復帰したジュリー。声はこの段階ではまだ手探りなのでしょうが、良かった!本当に暖かみのある「LOVE(抱きしめたい)」。この曲がこんなふうに歌われる時が来るなんて・・・不思議な感覚です。

この1曲目については、「お客さんを”抱きしめたい”説や、改築前の渋谷公会堂正月コンサートへのお別れ説(←初日の1曲目ってことね)など、みなさまそれぞれに深い考察がありますねぇ。僕なんて、ただホワ~ッと歌声に包まれ呆けるばかりですよ。後から色々と伺って、なるほど~!とね。
ただ、『歌門来福』を思い出して、あの時も「お馴染みのシット曲」が極端に少ないセットリストでしたし(今回もそう言えると思います)、ジュリーの中ではそんな選曲にとり混ぜても違和感の少ない有名シングル曲、というスタンスなのかな、と思ったりはしています。

演奏はまず、「指輪外して♪」からのGRACE姉さんのキックが凄く良かったです。1打1打の存在感がね・・・歌詞世界にも合っていて素晴らしい。
柴山さんのアコギのアルペジオは、渋谷よりハンマリング・オン→プリング・オフのオブリガートが増えていたようです。ヴォーカルに入る前から炸裂してた!
また、渋谷では確認し損ねた下山さんのボリューム・ペダル奏法もしっかりチェック。一番目立つのは、「さよなら♪」の後の「きゅい~~~ん♪」ってヤツね。
新たな発見は泰輝さん。豪快なシンセ・ストリングス以外に、左手でベースを弾いているんですね。GRACE姉さんのキックを耳で追っていて気がつきました。

照明は渋谷初日とは違っていたように思うんですが・・・みなさまどうでした?
渋谷ではね、枯葉っぽい模様の影が会場の左右の壁にパ~ッと映っていたように記憶していたんだけど、フォーラムではそれが無かったような。その代わりに曲の雰囲気が変わる箇所で、それぞれ暗めの赤と青のライトがステージを覆うように切り替わって、素敵でした。
で、この「暗い赤と青のコントラスト」照明ですが・・・後の4曲目でとんでもない使われ方をしますから!

ちなみに、今回はすべて平日公演というスケジュールにより、最初から検討の余地もなく無念の不参加となってしまった失意の盟友・YOKO君から、みなさまへのメッセージがございます。
セットリスト・・・1曲目がいきなり「LOVE(抱きしめたい)」と知るや、驚嘆し無念の涙を堪えて彼が言うには
「新年早々それ観れた人、絶対ご利益あるよ!
だそうですよ。

2曲目「
明日

Ikitetarasiawase

これはフォーラムの前に”セットリストを振り返る”シリーズ第1弾の記事をほぼ書き終えていまして、最終的な詰めとして「間奏リードギター・リレーの小節間隔と、泰輝さんの役割を確認」を自分に課してこの日に臨んでいました。
で、間奏。身を乗り出した瞬間思ったのは

しまった!ここで”おいっちに体操”だったっけ!

道理で初日のこの曲、ギタリスト2人の間奏シーンの記憶が怪しいわけだ・・・。
ということで、僕はこの日、今回のセトリ唯一の”おいっちに体操ナンバー”への参加を断念。

間奏リードギターでは、最後に1小節交代のスリリングな展開がありましたね。何がスリリングって、照明さんがビシッとついていけるか、という(笑)。『秋の大運動会~涙色の空』初日公演みたいなことになったら大変ですから。
その点、フォーラムは完璧でございました(たぶん初日渋谷も完璧だった・・・はず)。
間奏は柴山さんも下山さんも、ずずいとせり出して熱演。一番最後の2小節のフレーズを、定位置に颯爽と駆け戻りながら余裕でブチかます柴山さん・・・神技!
柴山さんはイントロでもせり出していましたね。

そして泰輝さん。イメージではこの曲ではシンセ・ストリングスとピアノを入れ替わり立ち替わりしているのかと思ったんですが、意外やピアノがメイン。ニッキー・ホプキンスみたいでカッコ良かった!

こうして鉄人バンドの演奏に注目していても、ジュリーの歌声と歌詞はビシビシ耳に飛び込んでくるんですよね。くっきりと。本当に凄いです。
「ロックLIVEでは歌詞が聞き取れないもの」と当たり前のように認識していた『ジュリー祭り』以前のあの感覚は、一体何だったんだろう・・・。
「蹴散らした」のキックはステージ上手側で。
うん、やっぱりジュリー、今はかつてない大きなエナジーをチャージ中なんだなぁ。

今回のセットリストは、この2曲目からのオール・スタンディング。周囲のお姉さん達もノリノリでした。
最後の「じゃじゃじゃじゃ~♪」も、みなさんキレイにジュリーと握り拳を揃えていらしゃいましたよ。

~MC~

「まず、紹介します・・・鉄人バンド~!」
「ずっ、じゃ~~~~~~~~ん♪たかどん!」
と、今ツアーお約束の「音だし」アリ。今後、こういう形が定着していくのかなぁ。

さて、今回1着目の衣装。「バーガンディー」って言うんですね・・・僕は渋谷のレポで「赤茶色」と書いてしまいました。つくづく服飾センスも語彙も貧困です。
「紅白初のポップス大トリ」となった時の衣装に色合いが似てる、と仰っていた先輩がいらして。あの時歌われた曲が「LOVE(抱きしめたい)」だったねぇ、と。長いファンのかたは見るところ考えるところが僕などとは全然違います。さすがです!

で、その衣装ですが。
ジュリーの話では、この日出番前に着替えていて、今まで5公演はそんなことはなかったのに、蝶ネクタイがおかしなふうに曲がってしまって1度やり直して、それでもまた曲がってしまって・・・。

「こんなこと(今ツアーで)初めてですよ。その時思いました。あ、今日は間違うな、と」
ここに、「LOVE(抱きしめたい)」のいきなりの歌詞飛びの原因が判明いたしました(笑)。
「こんな日に来てしまったお客様は、運が悪かったのか。それとも良かったのか・・・」
運、良かったですよねぇ。こんなふうにジュリーがお茶目に話してくれるのを聞けたのですから。

お客さんへの感謝を込めて、会場の隅々にまで何度もお辞儀をしてくれたジュリー。
〆は初日と同じく、「みなさまの心の平和が続きますよう、希望!いたします」
からの、「希望」!

3曲目「
希望

Ikitetarasiawase_2

本当に好きだ・・・この曲。
沸き立つなぁ。震えるなぁ。
ジュリーの熱唱。命より重いものなどあるものか!
この先何度でも聴きたい、いやきっと聴ける!と思いながらこの日も「L→V」ポーズにノリノリで参加。

僕はその一方で、演奏面で色々と確認したいこともあったので、暴れまくろうとする心と身体をなだめつつ(笑)、鉄人バンドの様子もじっくりチェックしました。

初日渋谷レポでも書きましたが、この曲のアレンジの肝はAメロ。冒頭の豪快なサビ部から音数がサ~ッと減って(泰輝さんは完全に鍵盤から手を離して、手拍子をしてくれていました)、トリッキーなタイミングでのギター・カッティングが登場するんですよ。
アップ・ピッキングで「じゃっ、じゃっ、じゃっ♪」と、ダウン・ピッキングで「じゃ~♪」と弾きます。

渋谷ではこの曲が歌われたのがあまりに嬉しくて、そのパートを柴山さんと下山さんのどちらが弾いていたのかまったく見ていませんでした。「音のイメージは柴山さんのような・・・」と書いたんですけど。
で、後日DVD『ワイルドボアの平和』(←今こそお勧めの名演映像!)で確認してみたんです。カッティングは下山さんでした。柴山さんの「ガッガッガッ・・・♪」というパワーコードをバックに、下山さんが「じゃっ、じゃっ、じゃっ♪」とキメていました。
そうかぁ下山さんだったのかぁ、と思って楽しみにしつつ、さぁガン見した今回のフォーラム。

あ、あら?逆じゃん!

そう、2人のAメロでのパートが、『ワイルドボアの平和』の時とは丸々入れ替わっていたんですよ!
「じゃっ、じゃっ、じゃっ♪」も「じゃ~♪」も、柴山さんがニコニコしながら弾いていました。

このカッティングって、技術的には何ら難しいことはなくて本当に細かいアレンジの味つけなんですけど、とにかく拍への噛み方が面白いので、演奏者にとってとても気持ちの良い出番なんだと思います。
『ギターマガジン1月号』で、「ギターの担当パートの打ち合わせはほとんどない」と柴山さんが言っていたけど、ジュリーからセットリストが伝えられた時に

「”希望”のあそこ、今回は俺がやるから!」
「分かりました・・・慕ってます!

みたいな、ちょっとしたヒソヒソ話くらいは、もしかしたらあったのかな?
(←ナイナイ)

4曲目「僕がせめぎあう」

Samosutatto

い~~や~~エロい!

その点鈍感な僕ですら圧倒されるくらいに、この日の「僕がせめぎあう」「ねじれた祈り」の2曲は、とてつもなくエロかった・・・と思うけど、みなさまどうでしたか?
どうエロいのか・・・説明し辛いんですが、ジュリーの上下左右の動きがね、神がかってた!

そしてあの声。
実は初日渋谷の記憶に自信が無くなってきていまして・・・レポに書いた通り、渋谷では確か「PAさんのヴォーカル・エフェクトは通常、左右のPAN振りは無し」の設定だったと思うんです。

CD『サーモスタットな夏』を聴いて確認して頂ければ分かるのですが、この曲のミックスは、歌詞に合わせてそれぞれ異なったフェフェクト処理のヴォーカルが左右中央で「せめぎあう」のがポイント。
さらに1997年のアルバム・ツアーでも、PAさんの設定によって、CDのミックスとかなり近いニュアンスでジュリーのヴォーカルがステージ再現されています(DVDでハッキリ確認できます)。
これが今回の渋谷初日では、多少のエフェクトはかけられていたによ、すべてジュリーの地声で歌われていた・・・僕はそう記憶しています。「下手にトリッキーな設定にするより、むしろこちらの方がジュリーの声の表情の変化が駆使されてエロいじゃん、などと思って観ていたんですよ。

ところがフォーラムでは、完璧にCD音源のミックスを再現していたではありませんか。
しかも・・・それがまたエロい。どエロい!
いやぁ参りましたね・・・。

柴山さんとGRACE姉さんの演奏も凄かったです。
僕はこの曲、元々チョコレート・ウォッチ・バンドのようなガレージ感満載の雰囲気だった吉田光さんの作曲作品に、白井さんが遊び心でサーフィン・エレキな趣向を加えてアレンジを完成させたんじゃないかと考えていますが、柴山さんのアプローチは完全にガレージにしてハード・サイケ。しかもジャズマスターで!
いや、「テケテケテケ♪」ももちろんインパクトは強かったんですよ。しか~し!忘れちゃいけないのが「トゥルルルルル♪」(トレモロ)や、「くしゃくしゃくしゃ♪」(ブラッシング)の乱舞。
ギターでしか表現できない破天荒なサウンドが、正にジュリーとせめぎ合います。


GRACE姉さんは、ドッカンドッカンとまるでジュリーを煽るような・・・。この日気がついたのですが、この曲のドラムスのアクセントは、「ジャスト フィット」と同じなんです。こんなところにも、細かいセットリストの「恍惚のリズム」繋がりが見出せるんですねぇ。
女性の演奏ならではの「ジュリーとのせめぎ合い」があったのではないでしょうか。

で、問題は”青くせめぎあう霊”ですよ!

ホント意味不明、いや「狙ってる」としか思えない照明効果。ステージはほぼ暗めの赤系色に染まっていたんですが、何故か下手側端だけ無気味な薄暗い青色がピンスポットで当てられているではありませんか。
真っ赤なステージの下手側僅かのスペースで、そこだけ青く照らされた下山さんがフワリフワリと浮遊するように蠢いています。な、なんなんだこの演出は!

これは・・・「僕がせめぎあう」という良い意味でおどろおどろしい曲想のナンバーを、視覚的に最大表現するために編み出されたアイデアとしか思えませんよ。
だってねぇ・・・それ以外に「敢えて下山さんだけ」青く照らす意味がない。下山さんはこの曲で決して一人だけ特別な演奏をしているわけではないのです。普通にバッキング。リードギターで縦横無尽にかき鳴らすのは柴山さんの担当ですから。

「おどろおどろしい」・・・つまりは「霊」です。
遂にそこまでハッキリ認定されたのか、下山さん!

驚いたのが、僕の知る限りではこの凄まじい光景に気がつき目撃談を語っている人が意外やとても少ない、ということ(saba様はさすがです!)。
う~ん・・・やっぱりアレですかね。見える人にしか見えない、という超常現象だったのかも・・・(違)。

というわけで、歌に演奏に照明に、本当に楽しめた1曲でございました。個人的には、渋谷初日よりかなり良かったように思います。


CD音源とのアレンジ比較で言うと、イントロなどに登場するキメのリフ・・・「じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃ♪」直後の、「ぴ~ぎゃ~!」というラップ音みたいなギターが再現されなかったのは、「一瞬の変な音フェチ」な僕としては少し残念。
パート的にもラップ現象的にも(笑)、この音は下山さんが普通に担当しておかしくないのですが、あまりにも目立って、霊がお客さん全員の目に晒されてしまってはマズいということなのでしょうね(だから違)

註:その後の情報によりますと、正確には「赤くせめぎあうジュリー、橙にせめぎあうカズ、紫にせめぎあうたいき&ぐれ、青くせめぎあう霊」だったらしい、とのことです。細かく色分けしてたのか~。
「下山さんだけ青!」のイメージしか残ってない・・・。

5曲目「YOKOHAMA BAY BLUES

Hello

この曲では、渋谷初日と「違ったなぁ」と思ったのは演奏ではなくジュリーのヴォーカルでした。
サビ最後の「I LOVE YOU♪」の「I」を、溜めを作って粘っこく発音したのです。しかもファルセットを絡めて・・・これはビックリしたなぁ。いかにもJ-POPの「売れてる人」がやるような唱法で、少なくとも僕はジュリーがこういう歌い方をするのを初めて聴きました。
1番の時にはね、「偶然声が裏返ってそんな歌い方になったのかなぁ」と思ったんですけど、ジュリーは2番も3番も同じように歌ったんですよ。

強引に平仮名で表記するとしたら
あは~い、ら~~びゅ~~♪」
ですかね・・・。「あは~」の「は~」が裏声の部分だとお考え頂ければ。

これはおそらく、「おっ、今日はなめらかに声が裏返るぞ!」とジュリーがこの日のファルセット・ヴォーカルに手応えがあって、ノッていたんじゃないかな。
それを実証したのが、後の「生きてる実感」のヴォーカルでした。初日はファルセット部を自由に制御できていなかったけど、この日は違いましたからね。「YOKOHAMA BAY BLUES」では自分の調子の良さに気づいて、ひと足早く試し斬り・・・?

全公演ご覧になっているかたならば、そのあたりの呼吸は分かるかもしれませんが・・・まぁ、僕の場合はあくまでも推測です。ともかく、ジュリーのヴォーカルによって、力感のあるパワフルなロック・バラードに聴こえたこの日の「YOKOHAMA BAY BLUES」なのでした。

CDのアレンジやミックスを聴き直すと、鉄人バンド・スタイルでのLIVE再現は、柴山さんがエレキ、下山さんがアコギを担当する構成がひと目有力に思えます。
でも、実際には下山さんもエレキを弾きました。下山さんはきっとこの曲で、「そのままの君だけ♪」からの曲想の変化を重視したんじゃないかな~。

6曲目「君が嫁いだ景色

Sur

僕は今回のジュリーには、バラードには暖かさを、ロック・ナンバーには冷たさを感じます。「冷たさ」と言うと悪い表現みたいですけど、両方良い意味でね。

ジュリーのヴォーカルの「暖かさ」ということで言えば、渋谷初日もこの日のフォーラムも、「君に嫁いだ景色」がダントツだったように思います。
「し~あわせ~♪」や「い~の~ってる~♪の声の伸ばし方などは本当に優しくて、お客さんにとっても身近な「おじさん」?「お爺ちゃん」?・・・そんな感じがするヴォーカルだったんじゃないかなぁ。

初日の後にこの曲について「千絵さんの結婚がよほど嬉しかったのでは?」と書いて下さった先輩のブロガーさんがいらして、「あぁ、なるほどそうか~!」と、昨年の『三年想いよ』大宮公演での楽しい楽しいジュリーの結婚式出席エピソードMCを思い出しました。
あの時は30分以上おしゃべりしてくれたんじゃなかったかなぁ。ずいぶん昔のように思い出されますが、まだ半年とちょっとしか経っていないんですね。

さて、今回のセットリストで柴山さんがアコギを弾くのが1曲目「LOVE(抱きしめたい)」とこの曲です。
ご存知のみなさまも多いでしょうが、毎回ジュリーのツアーでの泰輝さんとGRACE姉さんの使用楽器とバックステージを紹介してくれているYAMAHAさんのブログ、今回は2人に加えてアコギの柴山さんも登場。
でね、写真を見ると柴山さんのアコギの1フレットにカポタストが着いているんです。渋谷もフォーラムも、僕の席からはそこまで見えなかったな~。
これは、ヘ短調の「LOVE(抱きしめたい)」をホ短調(Em)のフォームで演奏しているか、変ロ長調の「君が嫁いだ景色」をイ長調(A)のフォームで演奏しているか(もしくはその両方)、ということを示しています。
アコギって、「♭」が多いよりも「#」が多いフォームの方が豊かな表現ができるんですよね。

下山さんのスライドギターも当然素晴らしかったですが、間奏では泰輝さんのオルガンも印象に残りました。決して目立たない音だけれど、渋いバックアップでアレンジを支えていたんですね。


7曲目「いい風よ吹け

Iikazeyofuke

前曲「君が嫁いだ景色」は柴山さんがアコギで下山さんがエレキ、続くこの「いい風よ吹け」はその逆。楽曲に応じてそれぞれ適正な役割があるのでしょうね。


この曲のアコギのアルペジオ、僕はFのスケールでしかコピーしたことないんですけど・・・肝は小節の頭のベース音。これをそれぞれの和音の一番高い音(基本的には1弦)と同時弾きする奏法です。
下山さん、その点かなり気を配って演奏していますね。と言うのは・・・多くのファンのみなさまが今回もセットリストのCDを作成して繋げて聴いていらっしゃるかと思いますが、「いい風よ吹け」は他の曲よりベースのミックスが大きいなぁ、と感じませんでしたか?
クリシェする低音は、この曲の美しさ、穏やかさを象徴するパート。下山さんはそれをアコギのアルペジオで最大限に再現しようとしています。

思い出すのは、下山さんがいつかラジオで語った『ジュリー祭り』の思い出。「最後の曲でアコギを弾く指の感覚が無くなっていた」と・・・「最後の曲」と言っていましたがこれは79曲目の「いい風よ吹け」のことですよね(80曲目の「愛まで待てない」はエレキですから)。
今回フォーラムの後に打ち上げをご一緒した先輩に、『ジュリー祭り』京セラドームのお話を少し伺ったのですが、手ぬぐいのセットリストを見るのは我慢してずっと聴いていて、「いい風よ吹け」の後にジュリーが「79曲歌っちゃったか?」と言った時、言葉にならないくらい感動されたのだそうです。
本当に79曲ももう歌い終えたのか、と。

ジュリーはもちろん、鉄人バンドが実際にステージ上で感じる「79曲」の重さが、下山さんの「指の感覚が・・・」という言葉に表れているように思えます。
下山さんは『ジュリー祭り』の後に「いい風よ吹け」のアルペジオを演奏するたび、ドームの79曲目の感覚を思い出しているんじゃないかなぁ、と思ったり・・・。まぁそれは、『ギターマガジン2月号』の下山さんのインタビューを読んですぐに「いい風よ吹け」を生で聴けたことで、自然に思いついたことなんですけどね。

ジュリーのヴォーカルはこの日も素晴らしかったし、優しかったし、切なかった・・・自分だけのことだけではなくて、生ある人すべての身体に赤い血が流れていることの愛おしさを、今こそ感じなければ。

8曲目「嘆きの天使」

Aimadematenai

初日が終わってからフォーラムまでの間(まぁ今もそうですが)、今回のセットリストそれぞれの曲が脳内で流れまくっていて、声に出さずに歌っちゃう、ということが多かった中・・・「嘆きの天使」を歌っているとサビで「さよならを待たせて」に代わり、「さよならを待たせて」を歌っているとサビで「嘆きの天使」に代わってしまう、という情けない状態に(恥)。

オーラスのフォーラムできっちりジュリーに叩き込んでもらう!と勇んでこの曲を待ち構えていました。

いやぁ凄かったなぁ。
下山さんがギターマガジンで「(ジュリーの声は)空間的に違う」と言っていたのが、なんとなくではありますが分かったような気も・・・。

この曲の歌詞に具体的な出来事が関わっていたことを僕はつい最近教えて頂いたばかりですが、今回ジュリーが歌った「嘆きの天使」は、そういう経緯関係なく普遍的な歌として響いてきますよね。

それともうひとつ・・・「音」の面から、「ジュリーが今敢えてこの曲を採り上げた理由」について、個人的に考えていることもありまして。
「嘆きの天使」って、「バンドの生演奏でオリジナル音源のアレンジを完全再現」されたのは、実は今回が初なんですよね。『愛まで待てない』ツアーでは、リズムボックスの打ち込み音とサンプリング演奏をバックに再現する、という手法でしたし、『Love & Peace』ではアレンジが違います。

これは僕の邪推かもしれませんが、ジュリーの中に「かつて、打ち込み音に頼ってステージ再現していたことのあるナンバーを、今の鉄人バンドの素晴らしい再現力で改めて歌っておきたい」という思いがあるのかなぁ、なんて考えています。
ジュリーには”90年代の3大打ち込み曲”というのがあって、その中から昨年お正月に「緑色の部屋」が歌われ、今年はまさかの「嘆きの天使」・・・こりゃ、来年のお正月は遂に「AFTERMATH」来るか~!と、勝手に夢想してニヤニヤしているところ。

ちなみに、「嘆きの天使」のオリジナル音源でのアレンジや打ち込みの特性については、恒例の”セットリストを振り返る”シリーズでたっぷり語る予定です~。

9曲目「ひかり

Ikitetarasiawase

改めて本当に素晴らしい曲・・・名曲です!

ジュリーの歌も、鉄人バンドの演奏も、力強くも瑞々しい。迷いなくこちらに向かってくる感じ。

カミさんに言わせると、この曲こそ柴山さんが「SGとマーシャルでアンガス・ヤングみたいな音を追求している」ことを体現しているんだそうな。

言われてみればそうかなぁ。キュートなルックスと、バリバリ・ゴリゴリ系のギターとのギャップ?
まさかそのうち半ズボンでステージに立ったり・・・なんてことはナイか。たぶん、あまりに似合い過ぎてみんな逆に退くわな~(←AC/DCをよく知らないみなさま、ワケ分かんない話ですみません汗)。

サビの「ひかり射すあの場所へ♪」で、ジュリーは2階席に手をかざしていました。そのあたりにいらしたお客さんは、嬉しかったでしょうね~。

あと、この曲も照明が印象に残っています。
歌詞で言うと、「この空の下のすべては~♪」から続く、泰輝さんのシンセ・ストリングス(オクターブを下げて重々しく弾くのがサイケな肝!)の
「ソ~、ソ~、ファソシ♭ッ・ドシ♭ッソ~♪」
に合わせて、会場がパ~ッと白くなるんですよね。前方席いっぱいのお客さんのおひとりおひとりの背中が確認できてしまうほど、客席も明るくなります。

今回は「どセンター」の席だったこともあって、「この明るさだと、ステージのジュリーからもお客さんの顔がよく見えるんじゃないかなぁ」と妙にドキドキしました。同じように思った人もいらしたのでは・・・?

10曲目「Fridays Voice

Pray

初日も素晴らしかったけれど、この日はよりストレートに響いてきたジュリーのヴォーカル。

低音も高音も、圧倒的な説得力でした。

「何故恐れない?」

「何故感じない?」

初日のレポにも書いたこと・・・ジュリーは今、ギリギリだと思うんです。ギリギリのところで、苦渋の決意をもって、あんなに懸命に、不器用にファンに伝えようとしています。この先自分が行く歌人生を。

初日もそうだったけど、「バラードだから」という理由では(おそらく)なく、この曲が始まるとスッと着席されるお客さんを、何人かお見かけしました。
僕などは、その意図するところを思うと複雑な気持ちはあるのだけれど、そのこと自体は仕方ないかな、とも思うんですよね・・・それもまた「思考している」真剣なファンの姿なのでしょうから。
ジュリーが危ぶんでいるのは、「思考しない」ことについて。それはもうハッキリしています。

今、世の中には、人の社会的思考をストップさせるような音楽ばかりが溢れているように感じます。
テレビの「一億総白痴化」は今さら言い過ぎだと思うけど、明るく華やかな音楽を聴いているはずなのに、心がズッシリ重くなるような、「明るさ」「楽しさ」に潜む空虚のあまり背筋が寒くなるような思いをすることもあって・・・まぁ僕が臆病で過敏なだけかもしれないですけどね。
もちろん音楽とは本来、日々の苦しいことを忘れさせてくれる楽しいものであるべきなのでしょうし、ほとんどの人はそれを求めているわけです。でもジュリーは、違う道をこれから行くんだね・・・。

ジュリーは、人々に「思考させる」音楽をやろうと思っていて(それは当然、ポリティクスでも宗教でもなくて)、今年はいよいよそれをファン以外の大きな「マス」にも拡げて発信しようと決意している・・・僕はジュリーの「不言実行」をそんなふうに捉えましたから、尚更ジュリーが(お正月LIVEで)、何かをグッと堪えているように見えたり、駆けつけたファンに対して「申し訳ない」とすら思っているようにも見えたりします(考え過ぎかな?)。
もしそうなら、ジュリーは今痛いほど感じていると思う・・・「ただ純粋に、楽しいステージを見たいんだ」とLIVEに参加しているファンが実は大半だということ。そんなファンにとって、この先のジュリーのステージがどんどん辛いものになってゆくかもしれない、ということ。ジュリーがやろうと決めたこと・・・それがもしかするとファンに望まれていないかもしれない、ということ。
だからこそジュリーは、少ない言葉でまずファンに真っ先に伝えてくれた・・・「ごめん、でも俺、やるから」と。

「大丈夫だよ!」と応えてあげたい(←偉そう)
これからは、ジュリーが「歌わなきゃ」と思う歌を歌って欲しい。作って欲しい。
ジュリーの歌人生は、ジュリーのものだから。ファンは、そんなジュリーが好きなんだから、と。
「コンサートなんてやってていいのか」と思い迷いながらもジュリーがコンサートをやってくれることが、何より尊いこと。みんなそんなジュリーを応援するし、ジュリーの笑顔が見たい、と思っているはず。

終演後、ご夫婦らしい2人連れのお客さんと階段でお隣になって、(たぶん)旦那さんが奥様に「ジュリーもずいぶん社会派になったんだねぇ・・・」と話しかけていらっしゃいました。今は、お客さんの反応はそれで良いんじゃないかと僕は思うんですよ。
だからジュリーにはこの先、考え方の違いで(?)着席するお客さんに対しても、また初めてジュリーのLIVEに訪れたお客さんに対しても、もちろんジュリーと同じように考え、世界を憂いているお客さんに対しても、何度でも「Fridays Voice」や「希望」や「緑色のkiss kiss kiss」や、(今回は歌われなかったけれど)「我が窮状」を歌っていって欲しいです。
そうやって、ジュリーはこれから自分とは全然違う考え方も含めて、色々な「声」を集めていくんだよね。

『昭和90年のVOICE∞』・・・大きな曲がり角に向かってジュリーが走り始めた、歴史的なLIVE。その曲がり角の先を、きっと見届ける!
「声」はもう既に集まり始めているんじゃないかな。

この日の「Fridays Voice」は、会場が広いフォーラムで、一般のお客さんもたくさんいらっしゃることを考えて事前に打ち合わせがあったのか、最後のサイレント部からGRACE姉さんのフィルまでの間隔が、かなり短くなっていましたね。
それでも一瞬、勇み足の拍手が起こっていたけど、僕はそれはそれで良かったと思っています。

などと、こうして重~い話を書いていても(ごめんなさい)、この後に続く曲が救ってくれるのです。

11曲目「カガヤケイノチ

38

ワルツのリズムが、心を鎮めてくれるのでしょうか。
素晴らしかったなぁ。渋谷より良かった!

今思うと、初日はちょっとテンポ速めだったのかな。
この曲の出だしって、GRACE姉さんはハイハット(クローズ→オープン)とスネアのフィルだけですっけ?その前にカウントもあったのかな?聴き逃しました・・・。

「ぶれ続けても♪」で登場する半端ない最高音をジュリーがあまりに楽々と歌ってくれたので、「キー下げてるのかなぁ」なんて余計なことも一瞬考えてしまった・・・でももういいんだ、そういうことは。
最後のサビでは、上手側に歩きながら指揮をしてくれたジュリー。僕はジュリーと一緒に歌ったけど、みなさまはどうでしたか?後で色々伺うと、歌っている人も多かったようですが、他のお客さんの声まではよく聴き取れませんでした。

ちょっとビックリした再発見は、泰輝さんのベース。
とても小気味よく効いていて、「あれぇ、3年前のツアーでも弾いてたんだっけ?」と思って自分が書いた過去のレポをちょっと読み返してみました。まったく触れてない・・・気づかなかっただけかなぁ。
で、「一応」という感じでCD聴き直してみたら、薄いけど入ってる!ベース音が。
タッチとしては、「一握り人の罪」みたいな感じの音。『3月8日の雲』でシンセベースが入ってるのは「恨まないよ」だけだとこれまで思い込んでいました・・・(恥)。

あと、初日がどうだったか、いや肝心のフォーラムの記憶すらもう怪しいんですが、最後の「トワニトワニト・・・♪」が、ジュリーの声だけじゃなくてギターも小さく鳴ってたように聴こえた・・・と思ったんですけど、どなたか覚えていらっしゃるかな~。
この曲については、ジュリーの最後の声とピンスポットがスッ、と消えてから満を持して万雷の拍手が起こります。3年前のツアーでもそうでしたね。

12曲目「緑色のkiss kiss kiss

Pleasure

未だかつてそんなことは無いしこの先数年もまだ無いだろうと思うけれど、ジュリーのLIVEに毎回参加していたら、いつかは「セットリスト全ての曲の記事を既に書いてしまっている」ツアーを体験する日がやって来るかもしれません。
つまり「”セットリストを振り返る”シリーズで新たに採り上げる未執筆の曲が1曲も無い」状況ね。
そうなったらおそらく、ずいぶん昔に書いた曲で「我ながら考察が浅過ぎる!」と後悔している類の記事を書きなおす、ということをやると思います。毎回ツアーのたびに「あぁ、考察記事書きなおしたいなぁ」と思う曲、たくさんありますから。
今回の『昭和90年のVOICE』では、その筆頭たる曲がこの「緑色のkiss kiss kiss」でしたね(2番手が「遠い夜明け」、3番手が「希望」)。

初日にこの曲を久々に生で聴いてまず大感激したのは、やはりこのところの世界情勢やこの国の状況に自分なりに思うところがあって、それがあまりに「緑色のkiss kiss kiss」という楽曲の内容とリンクしていたからだったのでしょう。

昨年末に「明日は晴れる」の記事を書いた時、たまたま枕でライヴ・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」という曲について触れました。


今僕たちはクリスマスだクリスマスだと浮かれているけど、この地球の何処かに、今日がクリスマスだってことすら知る術もない子供達が暮らしている、地獄のような世界が実際にあるんだ

そんな内容の曲。
20代の僕に大きな影響をもたらしたアーティストの一人、ボブ・ゲルドフ(ブームタウン・ラッツ)の作品です。

ジュリーの「緑色のkiss kiss kiss」は、明るい曲想で高らかに平和のメッセージを歌う中に、「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」に登場するフレーズにも共通するような、ドキリとさせられる表現があります。
今回ジュリーが、「緑色の風のkiss kiss kissを送りたい」と歌った「悲しみの世界」とは何であるのか。
初日渋谷ではそれを突きつけられたように、僕には思えたのでした。

さらにその後、セットリストのCDを作成して曲をじっくり聴き返して・・・歌詞やヴォーカルだけでなく、なんて素晴らしいメロディーなのか、なんて素晴らしい演奏なのか、と今さらながらに。
名曲だとは思っていたけど改めて・・・「とんでもなく好きなジュリー・ナンバー」になりましたね。

フォーラムでも感じたけど、この曲で魅せてくれる泰輝さんのピアノやシンセ・ストリングスは、もう完全にビリー・ジョエルそのものなんだよな~。
ジュリーの「NO!NO!NO NUKES!」を受けて弾きまくる間奏ももちろん、イントロでの裏からジャジーに噛み込んでくるピアノのタイミングとかね。
泰輝さんがリスペクトしているビリー・ジョエルは、僕も大好きなアーティスト。僕が一番好きなアルバム『ナイロン・カーテン』は、ポップにして、ロックにして、凄まじい社会派の大名盤です。「緑色のkiss kiss kiss」のシンセ・ストリングスの音色とアレンジは、まさにこのアルバムの雰囲気!一方ピアノについては、それより少し前のアルバムに収録されている、ジャズっぽい作品群でのビリーの演奏を思わせます。

この日は下山さんのスライドギターもしっかりチェックできたし、改めてジュリーのメッセージと共に、鉄人バンドの演奏もしっかり身体に浴びてきました。
ジュリーの思いと鉄人バンドの演奏は今、揺るぎなく並び立つものですし、こういう曲を聴くと、「考えさせられること」と「楽しいこと」は並び立つものだ、とも思えるんですけどね・・・。とにかく、大名曲です!

13曲目「ROCK'N ROLL MARCH」

Rocknrollmarch

実はこの「ROCK'N ROLL MARCH」、最高音が高い「ソ」の音(「ス・ト・リ・ッ・パ・-」や「カサブランカ・ダンディー」などの曲でジュリーにもここ数年苦心が見られるようになったほどの、中年以上の男声にとっての高音)で、しかもサビのメロディーは高い「レ」から「ソ」までの4音階のみの高音域で構成されています。
それでもジュリー、この曲はガツン!とジャストな高音が出るんですよね~。
これはやはり相性だと思うんですよ。サビの高音部1音1音に適度な長さがあって、ロックな曲想で、身体の動きと声がリンクしやすそうで。
この曲でジュリーは、ススッと横移動しながら歌い出し、ストップしてシャウトへ、というシーンが多いですよね。あの動きに「高い声を出す」秘密がありそう。

ジュリーのヴォーカルも鉄人バンドの演奏も、この曲についてはもう熟しきった境地なのかもしれないけれど、下山さんのギター、単音が毎回変わってる、と聞いて目からウロコ。そうだったのか!
とりあえず今回のフォーラム・ヴァージョンはなんとなく覚えた!(←これを家でヨタヨタ流で再現して弾いていて、歌メロが意外や高音であることに気づいた)
あとは『ジュリー祭り』のヴァージョンをこれから覚えて、この先再び「ROCK'N ROLL MARCH」がセットリストに採り上げられる日に備えたいと思っています。

14曲目「晴れのちBLUE BOY」

Royal3

よくお邪魔するブログさん達の今ツアー関連の記事を拝見して・・・あぁ、みなさん鋭いなぁ、僕は考えもしなかったなぁ、と思ったのが、「晴れのちBLUE BOY」の歌詞「言いたいことはヤシの実の中♪」を引用することで、ジュリーの今の志や佇まいを暗に表していらっしゃる、というね。
なるほど、「ヤシの実の中」かぁ~。

この日のジャンプは横っ飛びもありましたね。
渋谷初日のレポで「センターで前蹴り」としか書かなかったけれど、たぶん僕が自分の見た瞬間だけを覚えていたのでしょう。渋谷でもセンター、左右と縦横にジャンプしてくれていたのかもしれません。
ジュリーがだいたいの統一の動きを決めてツアーに臨んでいる、というのはここ数年で学んだこと。

と言うのも、改めて驚嘆するのは・・・最後のサビのリフレイン部で、ジュリーはリズムをとりながらステージ左右を歩き回るじゃないですか。でも、足取りをまったく乱すことなく、速くもならず遅くもならず、計ったようにキレイに最後の最後にセンターに戻ってきて、「ヤシの実の、ヤシの実の、中♪」と決めてくれるんですよね。
これが、良い意味で「アイドル」でありつつ歌謡曲のトップを張った歌手こそが表現し得る「ロック」なんですよ。ただ「ノッて」いるだけじゃない・・・歩幅の美しさひとつとっても、ステージ上の所作が、僕がジュリー以前に知っていたロックシンガーとは全然違って、完全に一線を画しているのです。
しかも「晴れのちBLUE BOY」は、2008年の『ジュリー祭り』以来歌っていなかった曲ですから・・・尚更です。

下山さんがメチャクチャ細かく縦に動いてノリノリだったなぁ。この曲では特に、GRACE姉さんのドラムスと波長が合うんじゃないかな。
しかし、ベースレスで「晴れのちBLUE BOY」をここまで再現するとは・・・鉄人バンド恐るべし!

15曲目「ねじれた祈り

Kitarubeki

ネタバレ歓迎なファン、ネタバレしたくないのに我慢できずに調べちゃって頭を抱えるファン、鋼鉄の意志で自分の参加公演までネタバレ我慢を貫き通すファン。
ジュリーファンにも色々あるけれど!

今回も、オーラスのフォーラムのみの参加で、その日までじっとネタバレ我慢されていたJ友さんがいらっしゃいました。まぁそれでもやっぱり気がかりで、あちこちチラ見しては「イカンイカン!」みたいな感じの日々だったようで・・・「LOVE(抱きしめたい)」と「ジャスト フィット」の2曲だけは分かっちゃった、と連絡をくださったりして。

でね・・・J友さん、何処かで「ジリィ、ジリィ」という擬音表記をご覧になったらしいのよ。
既に参加している身には一発で分かるその擬音・・・「ねじれた祈り」のサビ直後、ジュリーがお尻を振って歌ってくれるアレのことですな。客席から思わず「ひゃ~っ!」みたいな嬌声が起こる(渋谷でもフォーラムでもあった)、今セットリスト最大の見せ場とも言えるあの重要なシーンのことです。

で、直前になって
「”ジリィ”って何のこと?」
というメールを頂いたわけです。
僕は「こりゃイカン!この曲のネタバレだけは絶対に防がねば!」と思って

「よく分からないけど、”ジュリー”と”ジジィ”が混ざっちゃったんじゃないですか~?」

と、全力でスッとぼけました(笑)。
その甲斐あってJ友さんは無事、「ねじれた祈り」のあの部分にはまったく思い至らないままフォーラムにご参加と相成ったようです。良かった良かった!

にしても・・・何なんでしょうねこの曲のジュリーは。
凄過ぎます。単に「エロい」とかそういうことだけじゃないですよね。しかももう、「ロック」なんて言葉も超越してるような気もしますし・・・これがジュリーなのか!とひれ伏すしかありません。
僕がこれまで参加してきた『ジュリー祭り』以降のLIVEパフォーマンスの中でも、屈指だったと思います。

いつもお世話になっている先輩が、今回のこの曲について、とても面白くて深いことを仰っています。


この曲ではジュリーの歌う空間に私達は入れない。一方的に侵入してくるジュリーに私達は征服されるだけだ。

なるほど・・・いや、本当にそんな感じでした。
ちなみにその先輩はジュリーと同い年。曰く
「今回のジュリーがどれほど凄かったか・・・それはみなさんが66歳になった時に分かるでしょう」
と。
はは~っ!(平伏)

本当にそうなんだろうと思う・・・僕などには、自分がそこまで生きているのかどうかすら想像がつかないような、66歳という年齢。そんな年齢のジュリーがあれほどのパフォーマンス。あれほどの体現力。
いや、そんな絶賛ですら、ジュリーにかかればあまりに安っぽいのかもしれません。


そう・・・ジュリーは安くないんだよ!
日刊ゲンダイよ、ペンを持って生業とする者ならば、たとえ「沢田研二」の名前に頼って記事を「売る」にしてもだ、もっと他に書くべきことがあるだろう?
「面白く纏められた」とでも思ってる?僕はこの記事の「会場の声」は「架空取材」だと思ってるけどね。
スージー鈴木さんが数年前にこう仰った。
「沢田研二はもう、あなた方マスコミが浮き沈みを論ずる地平にいないのだ。勉強して出直して欲しい」
この言葉、よ~く噛みしめて頂きたい!
ジュリーの大なる志を知り、己の小なるを知るべし。


(この場を借りて言わせて頂きました。ちょっとスッとした・・・みなさま、お目汚しごめんなさい汗)

16曲目「生きてる実感」

Kitarubeki_2

これは、名古屋だったか大阪だったか・・・ネットで目にした「ジュリーとは違うタイミングで下山さんもジャンプしてた」というシーンがフォーラムで再現されるのかどうか、が一番の楽しみでした。
見られましたよ~!

解説しますと・・・下山さんのアレは、2小節にまたがるリフの最初の1拍目で跳んでいるのですな~。
それをリフの2回し目からやったので、ジュリーに遅れて呼応し跳んでるように見えるけど、順序としては下山さんの方が先のタイミングでのジャンプとなります。

ちなみにジュリーが跳ぶのは1小節目の4拍目の裏。リフの最後の音階部ですね。
えっ?何故下山さんは、ジュリーと同じ箇所で跳ばないのか、ですって?
説明しましょう。

ギタリストは基本、アップストロークのタイミングでは跳びません!

例えば・・・柴山さんが「TOKIO」のイントロでぴょんぴょん跳びますよね。あれはすべてダウン・ピッキングの箇所でジャンプしているはずなんです(音の無い表拍では空打ちでの振り下ろしかな)。
みなさま試しに、右手を腰のあたりで曲げて、手先をおヘソのあたりに持ってきてください。それが、ギタリストの演奏時の体勢になります。
そのまま右肘から先を思いっきりサッ!と肩くらいまで上に振り上げながらジャンプしてみて。なんだかとっても情けないことになりませんか?高さも出ないでしょ?
で、今度は逆に思いっきり振り下ろしながらジャンプ。おっ、今度はイイ感じで高く跳べる・・・でしょ~?

ジュリーが跳ぶ箇所は、裏拍のアップ・ストローク部。そこでジュリーと同時にあんな広い歩幅のジャンプなんかしたら、下山さん後ろにひっくり返っちゃうよ~。
あぁいや、下山さんほどの腕前ならそれでも跳べるとは思いますけど、直後の
「ん、ジャジャジャジャジャジャジャ♪」
の最初の何打かを空中で弾くことになりますから、見た目的には相当な超常現象系になるのではないかと・・・え?むしろ見たい?そうですか・・・。

で、何とかアップストロークに合わせて自然に跳べる方法は無いものかと、会社の昼休みに色々試してみたところ(←何をやってる)、ありました。上手い体勢のコツが。それは何と・・・
ジュリーのように思いっきり膝を曲げて跳ぶ!
というもの。
ただし、何も持たずにやると平気なのですが、ギター持った状態だと着地が大変。まぁこれは僕の体力とか運動神経に問題があるのでしょう。

あとね・・・下山さんもエレキじゃなくてアコギだから「跳んじゃえ!」となった部分もあると思うんだ~。アコギって、エレキより全然軽いんですよ。

あぁ・・・長々と余計な話を(汗)。

深く解釈しようと思えばいくらでもできる歌詞だけど、本当にハッピーなポップチューン。この曲も”セットリストを振り返る”シリーズで採り上げる予定です。

この日は、周囲のお姉さん達もジュリーと一緒にジャンプしていました。たぶん会場には同じようにジャンプした方がたくさんいらしたのでしょう。
僕は『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーでフォーラム2階最前席の経験があるから分かるけど、きっと2階前方席は揺れまくっていたでしょうね、この曲。

17曲目「A・C・B

Kitarubeki

僕はこの曲のAメロ「新宿は♪」からの1回し目は基本、柴山さんを見ています。
ギターの出番が2回し目からとなる柴山さんは、この時空いた両手で手拍子を煽ってくれるんですよね。時には胸のあたりで、時には両足を思いっきり拡げて、頭上に両手を上げてド派手に。ボディーの軽いSGが「でろ~ん」とネックの方向にずり下がっていくのを、出番直前にササッと掬って演奏を始める、という神技を目撃したこともありました。
手拍子のパターンは2種類。
CD音源アレンジのハンドクラップ音に忠実に「うん・たん、うん・たん、うん・たんたん!」か、普通に裏拍で「うん・たん、うん・たん、うん・たん・・・」とループさせるか。ここ最近は前者はほとんど見かけなくなり、後者のパターンがほとんどです。渋谷初日もフォーラムもそうでした。そろそろ、以前のパターンも見たいなぁ・・・。

で、過去に1度だけ(だと思うけど)、僕が柴山さんをチェックする機会を完全に失った公演がありました。2013年『Pray』ツアー、和光市公演です。
望外の”地元本神席”を賜り、その時「A・C・B」でジュリーは僕の目の前数10センチで「アシベの道案内」をしてくれたんですよね。その時チラッと思ったのが
「あぁ、この曲はジュリーにとって、”気になるお前”と肩を並べつつあるのかなぁ」
と。
ただただ観る者を吸引する、その歌そして動き。難しい理屈抜きに、誰しもがガキッとジュリーから目を離せなくなる1曲。その権利を「A・C・B」という曲は今、持ち始めているかもしれません。

渋谷ではうっかり聴き逃した、「2015年でもくたばってなかった♪」をこの日はバッチリ聴いてきました。
泰輝さんのオルガンもカッコ良かった!

18曲目「さよならを待たせて

Sur

サビの「あぁ♪」とか、カノンっぽい王道進行とか、イントロのキーボードとか・・・初日の後しばらく脳内再生で「嘆きの天使」とゴッチャになってしまうことのあった僕に、キッチリと、ビシッと歌い諭してくれたこの日のジュリーのヴォーカル。
これまた良かった、渋谷よりかなり良かったと思う!

「別れ」?いや「決意」の歌だと思ったなぁ・・・。
今、ジュリーの心は暴れています。悪い意味でなく、それはみなさん感じとっていらっしゃると思う。ジュリーも一生懸命に伝えようとしてくれてる・・・。
だから(cause)マイ・ラヴなんだと、お客さんに言ってくれてるような気がします。

後奏のギター・ソロ部で、ジュリーが一心に見据えているものは何でしょう?
遠い、遠い夜明けかな?
生きにくい、大変な道を選んだよね・・・ジュリーの方から「さよなら」を言えたらきっと楽だよね・・・。でも、まだまだ僕らを待たせてくれていいよ!
なんてふうに、僕もオーラスのフォーラムにてようやく妄想?の歌詞解釈。

毎回毎回、セットリスト各曲の「繋がり」を感じ考えるのは、ファンの身勝手かもしれません。でもジュリーの選曲はいつもそれを感じさせてくれます。
今回は特にそう。
渋谷初日には、去年のフォーラムのことをそこに重ねました。そして今僕は、この先ジュリーが行こうとしている道を、今回のセットリスト22曲に重ねてしまっています・・・思い込みかもしれないですけど。

ジュリーがこれから具体的に何をやろうとしているか、なんてヒヨッコの僕には分かりっこないのです。
ただ、自分がジュリーファンになって初めての、これまで先輩方が何度か目の当たりにしてきた「10数年に1度のジュリーの大きな転機」が訪れようとしていることだけ・・・それだけが今は分かります。「遂に僕もその機に立ち合うのだ」・・・言葉が適切かどうか、とは思いますが、「ドキドキ」していますよ!

「さよならを待たせて」を、「明日」や「遠い夜明け」と並べて思う今の僕の感性が合っているのか的外れなのか。その答が分かる時・・・「ジュリーはあの時こうだったんだ!」と示してくれるステージでジュリーが歌う時、僕は必ず客席にいるんだ!と、楽しみにしています。

~MC~

「MC」と書きつつ・・・すみません!
フォーラム当日からずいぶんと日が経ち、今さら改まって「ジュリーがこんなことを語ってくれた」なんて書き連ねるのも野暮かなぁ、と思いますし、みなさまもうジュリーが語った言葉の情報は得ているとも思いますので、ここではジュリーのこの日のMCも考え踏まえた上で、ここ数日僕があれこれ考えていたことを少しだけ書いてみようと思います。

最初はね・・・このMCの項でまず始めに「楽しくない話をしちゃうけど、ごめんなさい」と書くつもりでした。
でも、今はもうそんなマイナスの気持ちが和らぎ、とても癒されているのです。
すべて、こちらのブログ様のおかげです。

「沢田研二論」~黙っとれ!の窮状~

情報の早いジュリーファンのみなさまですから、もうお読みななったかたがほとんどでしょうが・・・例の26日付の『日刊ゲンダイ』の最低最悪な記事について、本当に胸がすくような文章で、僕らが言いたかったこと、言いたくてもなかなか表せなかったことすべてを書いてくださっています。
あの軽薄な『日刊ゲンダイ』の記事に充満する、愚かなまでな無知と悪意によるミスリードを、ジュリーの歌人生の歴史、その事実を語ることで完璧に論破。
痛快、とは正にこのことです。
こんなジュリーファンがいらっしゃるんですね。なんと、僕と同世代の男性でいらっしゃいます。参りました。感動に打ちのめされました。僕もこれから、こういう人を見倣っていかねばなりません。

あの最低な記事が出た翌日、実は僕も会社で数人の人に「どういうことなの?」と尋ねられました。
皆僕がジュリーファンだと知っていますし、僕は正にあの記事に書かれたLIVE当日、「ジュリー観に行くから!」と言って仕事を早退していましたからね。
丁寧に事実を語って、「ジュリーが悪い」という誤解を解くことはできましたが、口ですべてを説明するのは本当に大変でした。次回からは、「このブログさんを読んで!」とお勧めしたいと思っています。
そして、ブログ様の方にもそうしたコンタクトが殺到したのでしょうね・・・「ご自由にコピーしてください。ただし切り取らずに全文で」との加筆がございました。
この「文章を切り取らずに」と仰っているのがそのまま、『日刊ゲンダイ』の記事への痛烈な皮肉となっているのですね。いやぁ粋です、カッコイイ!

このブログ様が唯一気にしていらっしゃる「自分は不参加だったので、当日フォーラムに参加した人の声が聞きたい」ということ・・・どれほど素晴らしいLIVEだったか、どれほどお客さんが楽しんでいたか、というのは、ここまで僕が拙い文章で書いてきた通りです。
そして、会場が凍りついたシーンというのは確かにあって、それはゲンダイの記事がミスリードしている「ジュリーが怒った」時ではなく、ジュリーの真剣な話を遮った最低の野次(最早「かけ声」とすら書きたくない)・・・その下品な大声に対してのことだったわけです。

とにかく、このブログ様のおかげでサッパリ気持ちが晴れたところで・・・僕が今回書かなきゃ、と考えていたこと(それは『日刊ゲンダイ』の記事が直接の動機になったんですが)を、ここで少し書きます。

今回の『日刊ゲンダイ』の件は、いかに世の「報道」「情報」が事実と異なりねじ曲げられていることがあり得るか、いかにそれと知らずに追従してしまう一般世間の反応を導くことがあり得るか・・・はからずも実感させられることとなりました。
多くのジュリーファンが怒りの捨て場も無く、悔しさ、やるせなさに震えていた中、先のブログ様のように毅然と、実直な認識をもって態度を示すことがいかに大切であるかも教わりました。

無知であり悪意のあった『日刊ゲンダイ』の記事は、そのレベルの低さ、思慮の浅さ故にむしろ今回、ジュリーファンにとって良い経験、教訓になったのでは、と考えることもできます。
もちろん、ジュリー自身はこのような脚色記事は気にかけるだけアホらしい、と考えているでしょう。しかし僕らファンは・・・それぞれの手だてで反論しつつも、あんな滑稽極まりない記事に対して、ある意味「動揺」してしまったことは確かです。

この機に、肝を据えましょう。
これからだ、と思うのですよ。見当違いかもしれないけど、ジュリーの「不言実行」はこの先、一般世間に様々な波紋を呼ぶのではないかと思っています。
『日刊ゲンダイ』は小物でしたが、この先もっと巨大で、明確な意思をもってジュリーの道を阻もうとする報道を目にすることがあるかもしれません。
これまでとはまったく違った形で、ジュリーが「痛いくらいのまなざし」を浴びる時が来たように思います。

ジュリーは誰に何を言われようが屈しないでしょう。
そんな時、僕らファンがへこたれていてはいけません。ジュリーは「何を余計なことを・・・」と苦笑いするでしょうが、僕らファンがそんな報道に動揺せず、毅然とした態度でいることは、必ずジュリーのエネルギーになると思っています。
もちろん、そんな報道や記事など目にすることが無いことを願ってはいますが・・・。

「ひかりさすあの場所へ♪」と客席に手をかざしてくれたジュリーだけど、やっぱり「ひかり」とはジュリー自身です。この先も様々な視線がステージ上の「ひかり」・・・ジュリーその人に1点、注がれます。

MCのジュリーの言葉をひとつだけ。
「みんなそれぞれが、他人事でなく、自分のこととして考える時が来ましたね・・・」

僕もしっかりしなきゃ、と思っています・・・。

それでは(ジュリー、この日はアンコールに行く前の鉄人バンドの紹介を忘れていたみたい)・・・
大寒、寒中見舞いです!

~アンコール~

19曲目「ジャスト フィット

Miscast

で、2着目のスーツですよ。
僕は渋谷初日のレポで「グレイ」と書きましたが、正しくは淡いブルーだったのですね・・・。
にしても、堂々と間違ったことを書いているのにどなたからもツッコミが入らないという・・・「コイツにヴィジュアルの情報を求めたり語ったりしても無駄だ」と、もうその点は諦められているのでしょう(泣)。

さて、とにかく素晴らしい高音の伸びとねじ伏せるような低音、そしてアクション。存分に堪能しましたが、歌詞はちょっと怪しかった・・・ですか?
実は、当日から時間が経って自分の記憶に自信が無くなってきているのです。1番でも「ん?」と思った箇所があったように思いますが、ハッキリ「あれ?」と感じたことを覚えているのは、間奏のシンセ・ソロ(下山さんが官能的なフレーズを弾きまくるのは、間奏ではなく後奏)の直後。
「知らないうちに知りすぎたけれど~♪」
とジュリーがまず歌い出したので、「えっ?」と。
続けて
「いろんな夜を転がり続けて~♪」
と来たので、「あぁ、出だしを間違ったけど咄嗟の機転でひっくり返したんだな」と思いました。

以前先輩が、ジュリーの几帳面な性格を感じるエピソードとして、「1番で間違って2番の歌詞を歌った時、2番で同じことを歌うのではなく、1番の歌詞を入れ替えてくるのを何度も観た」と仰っていました。
今回は瞬時に前後を入れ替えたんだなぁ、と思って観ていた・・・はずなんですけど、今はちょっと記憶に自信が無い・・・(汗)。

ジュリーの前方席チェックは渋谷初日ほどではなかったように思いました。でも、キレッキレなのは変わらず。

そしてこの曲も鉄人バンドの演奏が本当に素晴らしい。とにかくCDアレンジに近いんです。「晴れのちBLUE BOY」と同じく、「ベースレスでここまで完璧に再現するのか!」と、ただただ驚嘆の1曲ですね。

ともあれ、「ジュリーLIVEの定番曲」として有名なのに、『ジュリー祭り』が初LIVEだった僕がまだ生で聴けていなかった「これぞジュリー!」なナンバーを、今回のツアーでようやく体感できて幸せでした。
あと残ってるのは・・・まず「キャンディー」だな!(僕は『きめコン』不参加だったのです涙)

20曲目「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」

Royal3

僕のジュリーのLIVE参加は『ジュリー祭り』がスタートですから、過去のツアー・セットリストについてまだまだ知らない、把握していないことが多いです。
先に紹介したブログさんの記事を拝読して「そうだったのか~」と今さらながら思ったのは、この「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」が、90年代には本当に数えるほどしか歌われていなかった、ということ。
「たまに歌うヒット曲の中では定番」のナンバーとして長年継続して歌われ続けているものとばかり思い込んでいました。『ジュリー祭り』以降のセットリストでは、採り上げられることが多い曲でしたからね。

フォーラムでは、『3月8日の雲~カガヤケイノチ』びわ湖公演で並んで最前列を共にした年若いJ先輩の青年と、終演後に偶然再会。その時彼がセットリストの感想の言葉の中で、「ジュリーは”ここ10年”の人ですから」と語っていました。
なるほど、それは「ここ10年のアルバム収録曲」以外に、採り上げてくれるヒット曲についても言えるのかもしれません。「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」が今、進行形でその10年の中にいる、と。
ってことは、そろそろ「麗人」の10年も来る?と勝手に期待したりして・・・(どうでもいいけど僕のPC、「れい」の漢字変換1番手が「霊」。一瞬「麗」と字面が似てるから、うっかり見逃しがちです)。

いや、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」は何度も生で聴いていますが、やっぱり盛り上がりますね。
僕などは、『ジュリー祭り』の時に、あの足の開き方のカッコ良さに「そう言えばこの曲がヒットしていた時、ジュリーってこんなポーズだったっけなぁ」と改めて思い出した、なんてクチですから。まだまだこの曲の「お楽しみ」もこれからですよ!

「ユウウツだよ~~~~~~~~♪」
と、思いっきり声を伸ばすのは、どうやら今年『昭和90年のVOICE』ヴァージョンのこの曲の大きな特徴みたい。初日に「凄かった!」とレポに書いたけど、その後の名古屋、大阪に参加された先輩方も同じように「印象に残った」と話していらっしゃいましたから。もちろんこの日のフォーラムでもね。

この曲については”セットリストを振り返る”シリーズではなく、全国ツアーに向けた”全然当たらないセットリスト予想”シリーズで記事に採り上げる予定です。
お世話になっている先輩方のおかげで、お宝参考資料がメチャクチャ多い曲なんですよ~。記事1回だけではたぶんご紹介しきれない・・・有り難いことです。

21曲目「君をのせて

Acollection

安心する、と言うのか癒される、と言うのか。
これももう何度も生で聴いている曲だけれど、毎回聴こえ方が違うんですよね。今ツアーだけで言っても、渋谷とフォーラムでは違ったんだよなぁ。
渋谷では「ただいま!」みたいに、フォーラムでは「ここだよ!」みたいに聴こえました。えっ、分かりにくい?

今回のお正月LIVEは、ファンはみんな、ステージに穏やかな笑顔のジュリーをずっと探していた・・・そんな感じじゃなかったですか?
特にオーラスのフォーラムはね・・・。

ここまで、曲が終わるたびに黙って掌を振ってくれていたジュリー(この日は、「ありがと~!ありがと~ね!」も確かありましたけど)。でもそこには優しそうな表情はあっても笑顔とまでは言えなくて・・・。『ジュリー祭り』のDVDを観たりすると、1曲歌い終わるごとに笑顔、笑顔じゃないですか。それとは違う感じでしたよね。
それはジュリーの正直さでもあるんだけれど(「コンサートなんかやってていいのか」と思ったりしてたら、そりゃあねぇ・・・)、ファンはジュリーのあの笑顔が観たくて、探すんですよね、そういう瞬間を。
それを観られたのが、今回のセットリストでは「君をのせて」1曲じゃなかったのかな~。

この曲では特に、「寄り添う」という表現がピッタリの鉄人バンドの演奏。
GRACE姉さんのスネアの音の何と優しいことよ!
腕自慢の男性ドラマーが「君をのせて」を演奏すると、何処かロッカ・バラードの匂いがしてくるものです。それがGRACE姉さんには、良い意味でまったく無いんですよね・・・。お客さんの耳にはあのスネアの音は確実に聴こえているんだけど、それがまるでジュリーの歌を「音もなく」支えているような演奏となるのは、やっぱり女性ドラマーならではだと思います。
あと、「泰輝さん、ここでもピアノ弾いてたのか!」と気づいた箇所が確かにあったんですが、思い出せない・・・。

22曲目「遠い夜明け

Kitarubeki

ジュリーがこの楽曲を大切に思い、愛情を注いで歌っていることは間違いありません。
『ジュリー祭り』・・・の時には僕はあまりにヒヨッコ過ぎて、この曲に深く何かを感じる、というレベルにはなかったんですけど、『秋の大運動会~涙色の空』で歌われた時にそれを実感できました。
過去の歌人生への感謝があって、ジュリーは今その矜持を歌っている・・・と、考えていたのですが。
今回の「遠い夜明け」は、ちょっと違うかなぁ。

「今」も過去の歌人生の一部?
あぁ、言葉がややこしいなぁ。
「今」との決別?
それも的外れ。

とにかく、ジュリーがゆく「これから」の道のことを歌っているように僕には聴こえました。初日の段階では、そこまで考えなかったんですけどね・・・。

ジュリーは今再び、「痛いくらいのまなざし」に身を晒そうとしている・・・僕にはそう思えてなりません。
今度の「痛い」は本当に文字通りに「痛み」として、ジュリーの心に突き刺さってくるようなものかもしれない。そう思うと矢も楯もたまらず心配になりますが、きっとどんな痛みを受けようとも、ジュリーは屈しない・・・そして、言葉で反論などはしない。
ただ黙って示すのみ。歌うのみ。
考え過ぎでしょうかね・・・。

ジュリーは今、手放そうとしているのでしょうか。「山あり谷ありだったけど、今は高原にいます」とつい数年前に語ってくれた、幸せなる地を。
手放して、「誰よりも行きにくいルート」を選ぶのでしょうか。真っ正直に歌うために。

明る過ぎない、暗過ぎない、ジュリーの存在感そのもののような照明の中で、「遠い夜明け」を歌うジュリー。
いや、光がジュリーを照らしているんじゃないなぁ。ジュリーが光なのだ、と思います。
あの声こそが光。ステージに立つ一人の人間が、たくさんの視線の集まる先で、生身で光っている・・・それが今回「遠い夜明け」を歌っているジュリーの、僕にとっての視覚的イメージです。

これまでの歌人生で、ジュリーの光に照らされて様々な色に反射した輝きがジュリーを取り巻いて、大きなまばゆい光の塊となって日本の音楽界を鮮やかに照らしたり、時にはその中からひとつ、ふたつ、反射の輝きが離れてゆきまた別のひとつ、ふたつが寄り添ったり・・・色々な変化があったのでしょう。

ジュリーという光は、今現在どんな空間を進んでいるのでしょうか。僕には、漆黒の中で光っているように見えます。漆黒とは言うまでもなく、この地球を覆っている危機、危うい世界の情勢。
『昭和90年のVOICE∞』でのジュリーの光はさほど大きくもなく、ただ切々と光っているように見えました。
飛翔の前のさりげない光。これから先の「遠い夜明け」へと向かって、エネルギーを蓄えている光。

その光は・・・僕ら(客席)から徐々に離れていく、遠ざかっていく、という感覚も正直あります。これまで参加してきたツアーより距離を感じる、というのかな。
でも、いつもお世話になっている先輩が仰るには、「『ジュリー祭り』以降が近くなり過ぎてたのよ」と。
ただ・・・離れていくように見えても、僕らがその光をそのまま見失ってしまうことはありません。きっとファンの皆それぞれがジュリーへの正直な思いをもって、光を視界に繋ぎとめているはずです。
正直な思い・・・僕の場合それは「祈り」、かなぁ。

「いい風よ吹け」を、「嘆きの天使」を、「ひかり」を、「Fridays Voice」を、「カガヤケイノチ」を、「緑色のkiss kiss kiss」を、「さよならを待たせて」を、「君をのせて」を、「遠い夜明け」を、祈るように歌うジュリー。

ジュリーという光がこの先何処へ行くのか、何を目指して進んでいくのか。それが僕にはまだ分からない。「不言実行」でジュリーがこれからやろうとしていることが僕には想像もついていない。
でも、今ジュリーがどんな気持ちで「祈って」いるのか、だけは分かると思っています。
僕は、ジュリーファンになるのはずいぶん遅れたけれど、ポリティクスでも宗教でもない「LOVE & PEACE」と「NO NUKES」は10代の頃から自分なりにずっと持ち続けている自負があるから・・・。
それをもって、僕にはジュリーの光が見えている、この先も見える、と勝手に確信しています。

そして、光の周りで反射する4つの輝きだけは、僕程度のレベルでも今ハッキリ見えています。
目をこらせば、まだまだ見えるのかも・・・。

なんだか、「遠い夜明け」の話をしているのか何なのか、分からなくなっていますね。すみません。
圧倒される歌でした。本当に、今回のセットリストのトリにふさわしい!(初日、「君をのせて」と演奏順を混同していたことなど、どこかへ捨て去った~汗)

☆    ☆    ☆

「無事に・・・終わりました」と言ったジュリーは終始うつむき気味で、やっぱり当日報じられたあの大変なニュースのこともあったでしょうし、「その先」に加速するであろう、ジュリーにとって歓迎などできないこの国の動きのことも予見していたでしょうし(それは僕もそう)、色々な思いがあってそれが正直に表れてしまったのでしょう。でもね・・・そんな「思い」を受け取れて僕はとても嬉しかった。やっぱりジュリーは違う、と思いました。

改めて鉄人バンドの紹介があって(紹介の仕方はごく普通だったけど、ジュリーが何度もお客さんに手を振っている間、ず~~~~っと深く頭を下げたままだった下山さんの姿に妙に感動したなぁ)、最後はジュリーの音頭で「関東1本締め」です。

無事に終わりました・・・。
初日のように、「もう帰る」と見せかけて上手側端で立ち止まってポーズを作ってくれたジュリー。鉄人バンドのメンバーもにこやかに退場して、会場の電気がついた後にダブルアンコールの拍手も起こりましたが、非情な「公演すべて終了」のアナウンスが。
名残惜しいけれど・・・良かった!本当に素晴らしい歌と演奏、セットリストでした。saba様も書いていらしたけど、もう2度と聴けない曲もあるのでしょうね。


短いMCのでお客さんに伝えられたこと・・・「ジュリーが何かを決意した」と、今はそれしか分かりません。
でも、ジュリーの思うままに、ジュリーのやりたいようにして欲しい。僕らはそれを魅せてもらう、感じさせてもらうだけでいいのです。充分なのです。

ひとつだけ、ジュリーにお願いするとすれば。
この先も、「ジュリー」と呼ぶことを許して欲しい・・・。
僕は(おそらくほとんどのファンも)ジュリーがこの国を、この世界を憂いて唇を噛みしめている姿を見ても大丈夫。むしろ、それこそがジュリーだ!と思う。
でも、ジュリーが渋谷でもフォーラムでも「ジジィでした~!」と自己紹介してくれなかった(ですよね?記憶違いだったりして)ことは、とても気になっています。
人間・沢田研二の「ゆずれない人生」を魅せて欲しいけど、やっぱり僕らにとって貴方は「ジュリー」です


新譜と全国ツアー、楽しみにしています!


20150120

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2015年1月21日 (水)

沢田研二 「明日」

from『生きてたらシアワセ』、2007

Ikitetarasiawase

1. 生きてたらシアワセ
2. そっとくちづけを
3. ひかり
4. GOD BLESS YOU
5. 太陽
6. 天使に涙は似合わない
7. 明日
8. 希望
9. 黒いピエロと黒いマリア

---------------------

「あれっ、フォーラムのレポじゃないの?」
と思われましたか?

今回は、”セットリストを振り返る”シリーズ第1弾の記事が、ツアー・ファイナルのレポに先んじての更新となりました。渋谷初日のレポが思いがけず早く書き終わりまして(と言っても5日かかってるんですけどね)、フォーラム当日までこの記事の下書きをしていたんですよ~。
今回の”セットリストを振り返る”シリーズは5曲を採り上げる予定。今月末から来月は結構忙しいので、早めに1曲でも書いておかないと、という次第。
今年も3月11日に新譜がリリースされると予想していますし、『昭和90年のVOICE』の余韻にどっぷり浸れるのは、おそらく2月いっぱいですからね。



(フォーラム参加後の追記)
3月11日のリリースなのかどうかは現時点ではまだ分かりませんが、今年も新譜がリリースされるとすれば、これまでにないほど痛烈な内容の作品になるはずです。

1月20日、LIVE直前に報じられたニュースに大きく心痛めながらも、最高のパフォーマンスを魅せてくれたジュリー。
おかしなことになった世の中・・・この国のトップに対しての怒りの言葉をすんでのところで押し殺し、可能な限りの柔らかい言い回しで、切々と今その瞬間の自身の考えや気持ちをホロリとお客さんに吐露してくれたジュリー。
そんな話の途中起こった最低のかけ声。あのタイミングであの言葉は、ジュリーにしてみれば「そんな話は私達には関係ない」と言われたも同然なわけで、ジュリーは心底落胆し失望したに違いないのに、セットリストの最後の最後まで、揺るぎない熱唱をもってステージを締めくくってくれました。

男たる者が敢えて顔を上げず、うつむいて言葉少なに「俺はやるよ」と表明した・・・それがどれほど重いことであるのか。
一握りの人よ、何故感じない?

暗い話を挟んでしまって、本当に申し訳ありません。
これから先、僕は僕なりのLOVE&PEACEの精神を持ちつつ、現実も見据えながら、できる限り楽しいジュリー関連の記事を書いていくつもりです。そういう日々が長く長く続くことを願って・・・。
みなさまも、楽しいコメントをこれからもどうぞよろしくお願い申し上げます。身勝手、厚かましいお願いでごめんなさい。


ということで。
『昭和90年のVOICE∞』に向けて6曲ほど記事を書いた”全然当たらないセットリスト予想”シリーズですが、的中結果は新年恒例の全敗に終わりました。
毎回毎回、ジュリーには見事に裏をかかれます。いや、「裏をかかれる」というのは違いますね。ジュリーにとっての「本道、ド真ん中」の感覚に僕がまったく及んでいないということでしょう。
今年もまた、僕の事前の予想など気持ちよく「彼方へと蹴散らした♪」ジュリーならではの選曲から、恒例の”セットリストを振り返る”シリーズを開催いたします。

今日はその第1回。
ジュリーの自作詞曲ではないのに、歌詞の内容はジュリーの歌人生そのもの。そのシンクロ度について言えば、GRACE姉さん作詞のジュリー・ナンバーでは「確信」と双璧の名曲でしょう。
「明日」、伝授です!

本当に良質で、完璧な曲。僕が今回セットリスト入りを切望していた、同じ八島さん作曲の「愛しい勇気」と同じく、前向きに心沸き立つパワー・ポップです。
そして何と言っても歌詞。GRACE姉さんの真っ正直な言葉であると同時に、いつもステージでジュリーの後姿を見ている人でないと書けない詞なのでしょうね。

僕は昨年、苦心を重ねつつ「我が窮状」の考察記事の下書きをしながらふと「愛しい勇気」を聴いて、「お正月にジュリーがこの曲を歌ってくれたら、とてつもなく元気を貰えそうなんだけどなぁ」とセトリ入りを夢想していました。結局「愛しい勇気」のセトリ入りはありませんでしたが、その代わりに、歌われることを予想していなかったこの「明日」で途方もなく元気を貰いました。
しかも、すごく具体的にね・・・。
「明日」は正に「自分の考えていることを正直に言う」ことへの勇気が沸いてくる曲でした。

それは先述の通り、GRACE姉さんの歌詞とジュリーの稀有な歌人生のシンクロによってビシビシと伝わってくるところが大なんですけど、まずはその下地の部分・・・八島さんの作曲と白井さんのアレンジの素晴らしさから語っていきましょう。
”セットリストを振り返る”シリーズは、「生歌、生演奏を聴いた直後」ですから、CD音源とLIVEを比較して、双方それぞれの素晴らしさを探っていく、という考察が特に楽しい作業なのですよ~。

まず、CD音源の演奏トラックを書き出してみましょう。

Lef to Right
・エレキギター
・アコースティックギター
・シンセサイザー(ストリングス)
・ドラムス
・エレキギター
・ピアノ
・アコースティックギター
・エレキギター

目を惹くのは、ギター・トラックがエレキとアコギ合わせて5つもある、ということですね。
エレキは、基本的には最左がサイドギターで最右がリードギター。ただ、間奏で4小節ごとにそれぞれ単音の立ち回りがありまして、最後に僅か1小節で入り乱れる箇所ではセンターのトラックも参戦します。
このセンターのリードギター・トラックはイントロのリフを始め、左右のエレキギターの演奏と出番はまったく被っていないながら、この間奏での繋ぎ目を聴けば、まったく別録りの「3番目のエレキギター・トラック」であることが分かります。

また、この曲のアコースティックギターはパワー・ポップの重要な肝・・・「アップテンポの豪快な曲でガッシャンガッシャンとコードを弾く」お手本のようなアレンジなのですが、白井さんはこれをわざわざ同じように2回演奏して、それをミックスで左右に振り分けているのです。
ベースレスのレコーディングで音の厚みをいかに持たせるか、を考えてのアイデアでしょう。

ちなみにギター演奏トラックの数と言えば、僕は先週、井上バンド時代のジュリーの代表曲のギター・トラック数を片っ端から確認する、という作業で夜更かししてしまいました。
と言うのも、下山さんが『ギターマガジン2月号』で「堯之さん達がやってた頃の昔の曲って、意外とギターが1本で(録音されていて)、僕のパートが無い。結局自分で作った!」といった感じのことを語ってくれていて、僕はもう「ほえ~っ!」と目からウロコ。
実際に聴いてみると本当にそうなんですよ。「許されない愛」とか「危険なふたり」は2本なんですけど、特にあのギター・ポップの代名詞的ナンバーとも言える「TOKIO」が、下山さんの言う通りギター1本のレコーディングだった、と今さらながらにハッキリ確認して大きな衝撃を受けています。
これまで気づきも、考えもしなかったな~。
もう充分知り尽くしている、と思い込んでいた有名シングル曲ですらまだまだ本当に考察不足なのだと実感。
深過ぎます、ジュリー・ナンバー探究道!

ベースレスのレコーディングで、「厚み」を担当するのが2本のアコギ・ストロークとすれば、純粋に「ベースライン」の音階を補っているのが、シンセサイザーによるストリングスの音色のトラックです。
ギター・リフとはユニゾン。Aメロでは「ベースがいたらこの音階を弾いていただろうな」と思われる、美しく下降してゆくルート音を奏でています。

そして・・・決してギターやストリングスほど目立ちませんが、「縁の下の力持ち」的存在がピアノの音。
曲の雰囲気が変化する箇所では必ずピアノがハキハキと鳴っています。正にパワーポップ!

このような演奏が、生のLIVEでどのように変わってくるのか・・・最も異なるのは当然ギターです。CDでは5本使用しているのが、2本になるわけですから。

まずは間奏のリードギター・リレー。
柴山さんから下山さんへ、最初は音源通りに4小節ごとの交代ですが、その後すぐに2人体制での1小節リレーとなり、何より視覚的に盛り上がります。これは生演奏ならではの醍醐味ですね。
『秋の大運動会~涙色の空』ツアー初日では、照明さんがそのリレー間隔に途中からついていけなくなっちゃって、それに気がついた柴山さんが、「今こっちだよ!」と下山さんをビシ~ッ!と指差している姿にピンスポットが当てられたりしてたなぁ。

泰輝さんのキーボードはピアノがメインです。
LIVEでのこの曲の間奏ではほとんどお客さんがギタリスト2人のリレーに釘付けになるでしょうが、その後ろで最高にカッコ良い、ニッキー・ホプキンスのようなフレーズを細かく繰り出しているのが泰輝さん。
ホント、DVDでもCDでも良いのでこの名演をなんとか形に残して欲しいですよね・・・。

それではいよいよ、歌詞について個人的に思うところを書いていきたいと思います。

ジュリーの歌人生とのシンクロは、もちろん2007年のリリース時点でハッキリあったわけですが、今回の『昭和90年のVOICE』で、しかもその2曲目にこの曲が採り上げられたことに、みなさまも何か特別な、感じるものがあったのではないでしょうか。
昨年のフォーラム以来の年明けのLIVEでジュリーが「明日」という曲を選んできたことで、歌詞の内容にジュリーのタイムリーな心境を想像し重ねてしまった・・・そんなファンが多かったことと思います。
もちろん僕もそうでした。

ホンネは言わない しがらみ面倒
A       D          E               A    A(onG#)

だから  愛想笑いもしない
      F#m  B     Bm7     E

誤解は極力 避けたいけれど
A     D     E               A      A(onG#)

理解されるのもごめんだ ♪
   F#m    B      Bm7   E

この歌詞部・・・「あぁ、今のジュリーの気持ちが正にこうなのかな」と、考えてしまいました。

でも、ここは本来(ジュリーが歌えばこそ、ですが)とても清清しい、爽快な一節なんですよね。
「誤解は極力避けたいけれど、理解されるのもごめんだ」・・・文字にするとちょっとキツイ印象です。「(自分のことを)分かってるよ、なんて他人に易々と言われたくないよ!」みたいな感じで。
でもきっとジュリーは、ひたすらに「正直であろう」ということを考えながらこの詞を歌っているんじゃないかなぁ。だからこそ、ジュリーの歌人生とそのままシンクロする曲のように思えます。

そして・・・「生き方」だけじゃない。「明日」という歌詞をジュリーが歌った時、強く聴き手に訴えてくるジュリーの魅力は、その「体力」の素晴らしさであるように個人的には考えているのです。これは、よく似たテーマを持つ「確信」には無い、「明日」の持つ大きな魅力ではないでしょうか。
まぁ、この曲に「体力」のメッセージを感じる、というのは少数派かとは思いますが・・・。

ツアーのたびに思うことではありますが、特に今回『昭和90年のVOICE∞』に参加して強く感じた「ジュリー健在!」のインパクト。それは信じられないほどの充実した体力です。
セットリストの佳境、後半の「晴れのちBLUE BOY」「ねじれた祈り」「生きてる実感」「A・C・B」と続くあの流れでのジュリーのアクションは、とても今年67歳となる人のものとは思えませんでした。

どうすれば、それができるのか。
生き方、考え方などは、自分がトコトン勘違いし舞い上がれば「及ばぬまでもジュリーに倣っている」と思えないこともないでしょう。しかし「体力」は・・・絶対ジュリーには敵わない。真似できない。
ジュリーは普段、どんなふうに「限りあるエナジー」をチャージしているのでしょうね・・・。


GRACE姉さんがこの詞を書いたのは、40代前半ですね。ちょうど「本格ジュリー堕ち」直前の僕くらいの年齢。世代的には「なるほどなぁ」「そうだよなぁ」と共感できるフレーズがたくさんあります。体力、気力共にちょっとくたびれてくる頃ですから。
ただ、ジュリーが歌うとこれがまた、スパ~ン!と年齢的に時空を越えるんですよ。「まだまだ元気」な50代、60代、いやそれ以上?とにかくずっと年上のカッコイイ親父の歌になるのです。

減速は早すぎる  もう少しチャージして
A         A(onG#)  D         Dm

もうひとっ走りしよう
A            D

角を曲がりきる  ま      で my life ♪
E               Bm7 C#m7 D   E    A

走っている先に曲がり角が見えていて、それをひとまずの目標として自らを奮い立たせる・・・これは長距離走の感覚。時間の大河にあって人ひとりの一生はとても短いけれど、生きているその人にとって人生は辛く長い長距離走です。次々に見えてくる曲がり角に、時に嫌気がさすこともあり得ます。
でも、曲がり角が見えた時が「このタイミング」賭ける時なのでしょう。それが気持ち的には分かっていても、体力的に厳しい年齢に僕もさしかかってきました。
ジュリーがあの年齢であれほどのステージを魅せてくれる・・・魂や志が稀有な人であると同時に、やっぱりそれを成せているのは類稀なる体力なのだ、と改めて感動するばかりです。

この先、僕は僕のペースで走るしかありませんが・・・他人からはそれこそ、「歩いてるみたいだけど、本人は走ってるつもり」な状態に見えてしまうのかなぁ。

最後に。
アルバム『生きてたらシアワセ』収録曲を曲想でカテゴライズした時、いわゆる「ノリノリ」系、アップテンポの明快なポップ・チューンって、「明日」「希望」の2曲じゃないですか。全8曲の中の2曲を連続で固めて並べる曲順はどうなのかなぁ、この2曲はもっとバラけて収録されていた方がアルバム全体のバランスも良くなっていたんじゃないかなぁ、などとこのヒヨッコはつい先日まで考えておりました。
それはまったくの浅慮、間違いでした!

『昭和90年のVOICE∞』で、短い挨拶MCを挟んだとは言え矢継ぎ早に歌われた「明日」「希望」の2曲の流れ・・・とてつもない高揚感でした。あらためてCDで聴いてみると、これぞ「ヤマ場」という感じで、やっぱりこの並びが良いんですよ。

渋谷初日、「明日」を聴いた直後の「希望」、本当に燃えました。「僕はこうするんだ」と「明日」で堂々と宣言しておいての、「希望」の「届けよMUSIC♪」。
素晴らしかったです。これがジュリーの音楽、これがジュリーの歌なんだ、とガツンと伝わってきました。やっぱり、届けたい思い、伝えたい思いがハッキリしている今のジュリーの歌声は最強です。
ボ~ッとしていると見逃してしまいそうな、独特の「明快さ」「痛快さ」が今のジュリーには確かにあります。それをしっかりと受け止められる感性をこれからも持ち続けていきたい、と今回の『昭和90年のVOICE∞』に参加し改めて思った次第です。

それにしても、『生きてたらシアワセ』のような傑作が廃盤状態って・・・。今のジュリーを感じれば感じるほどに、ジュリーが「伝えたい」内容の曲を多く収録した重要な1枚だと思うんですけどねぇ。
再版してくれないかなぁ・・・(実はこれ、僕自身がキチンとした形でまだ購入できていないのです汗)。


それでは、次回更新は『昭和90年のVOICE∞』東京国際フォーラム公演のレポートです!
色々と身につまされたり考えさせられたりすることもあったけれど、本当に素晴らしいステージでしたから、楽しいレポートにしたい・・・全力を尽くします。
相変わらず、渋谷のレポで堂々と書いていたことをフォーラムで「あれえっ、見間違ってた、聴き間違ってたんかいな?」と驚いたシーン、ありましたしね(汗)。

毎度のことですが大長文になると思います。どうぞ気長におつきあいくださいますよう・・・。

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2015年1月 7日 (水)

恒例!ネタバレ専門別館side-Bのご案内

今年もまた、ジュリーがお正月から歌ってくれます。

いよいよ2015年お正月LIVE『昭和90年のVOICE∞』、明日渋谷で開幕・・・鉄人バンドも当然準備万端、今頃は腕まくりしていることでしょう。
いつものように拙ブログではしばらくの間

セットリスト・ネタバレ徹底禁止体制

とさせて頂きます。
『昭和90年のVOICE』セットリスト、衣装、ステージングなどのみなさまのご感想、情報は

別館side-B

にてお待ちしています。
(とりあえず、簡単な記事を1本新しく上げています)

もちろん初日のレポートもそちらに執筆します。
セットリストの予習をなさる方、渋谷、名古屋、大阪各会場にご参加で、「あの曲が良かった!」と叫ばずにはいられない方・・・どうぞside-Bをご利用ください。

ネタバレ解禁は、20日のフォーラム終了後です(フォーラムのレポートはこちら本館に執筆いたします)。

名古屋まで、さらには大阪まで、はたまたフォーラムまでネタバレ我慢されるみなさま、頑張ってください。
特にお正月のセットリストはね、ここ数年で考えても、「おおっ!」という曲が採り上げられる率が高いですから。我慢した分だけ感動も大きいはず。
応援していますよ~。

ネタバレ我慢のお供に、お留守番ジュリーの新春画像を1枚置いておきますね。

Paper068

残念ながらご参加が叶わないみなさま、今年も僕は全力でLIVEレポートを書きますよ!
まずは2015年新春ジュリーの歌い初め、『昭和90年のVOICE∞』初日渋谷公演の様子は、side-Bの大長文(たぶん)レポにて、お楽しみくださいませ~。

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2015年1月 5日 (月)

沢田研二 「THE VANITY FACTORY」

from『G. S. I LOVE YOU』、1980

Gsiloveyou

1. HEY!MR.MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFE ビアンカ
7. おまえがパラダイス
8. I'M IN BLUE
9. I'LL BE ON MY WAY
10. SHE SAID……
11. THE VANITY FACTORY
12. G. S. I LOVE YOU

---------------------

2015年も始まりましたね。
あらためまして、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今年の個人的なジュリー関連の一大目標は・・・ズバリ、なんとかCD『ACT大全集』を定価に近い値段で探して購入すること!
昨年末、いつもお世話になっている先輩にACTのパンフレットをズラリと見せて頂いたんですが、パンフには歌詞が載ってるじゃないですか。今までじっくり検証したことが無かったんですけど、ジュリーの作詞作品、或いは作曲作品、たくさんありますよね。特にジュリーの詞がすごくエキセントリックと言いますか、オリジナル・アルバムの詩作とはまた違った魅力を、今さらながら感じています。
そして、加藤直さんの詞も改めて歌詞として読んでみると素晴らしくて・・・。もちろん、Cobaさんの作曲やアレンジについては間違いなし!なわけですし。
現在の鉄人バンドのベースレス・スタイルにジュリーがスッと入っていけた一因として、ACTでの特殊な楽器構成で歌った経験があったのでは、とする柴山さんの貴重な言葉(『ギターマガジン』より)なども「なるほど!」と目からウロコでしたし、畏れ多くも「楽曲考察」を銘うつこのブログで、これまでACTの曲をただの1曲も採り上げていない状況ってどうなの?と日に日に思いを強くした・・・僕にとってはそんな冬休みでもあったのです。

ただねぇ・・・肝心の商品は既に廃盤。ネットで中古盤を探したんですが、アマゾンさんでは5万円以上の値がつけられていたり・・・さすがに手が出せません。
「このお店なら比較的安く売ってるよ!」などの情報がございましたら、是非是非教えてくださいませ~。


それでは本題です。
ジュリーのお正月コンサート『昭和90年のVOICE∞』初日渋谷公演まで、もうあと数日。
僕は長い間、「おめでたい」と同時に「慌ただしい」という感覚を持って新年を迎えてまいりましたが、6年前からそれに加えて「ジュリーに逢える=新年」を実感するようになりました。
基本、毎年のようにお正月にLIVEをやってくれるジュリー。本当に有難く、尊いことだと思っています。

実は、初夢ではなかったんですが、新年明けてからジュリーのお正月(たぶん)LIVEの夢を見ました。
「我が心のラ・セーヌ」をやっていたんですけど、何故かジュリー含めてステージ上の5人全員がアコギを弾いていたという・・・。
GRACE姉さんは肩叩きみたいな巨大なマレットでアコギのボディーを叩いていました。意味不明でしょ?
おそらく、年末に「アコギの弦を代えなきゃ」と思っていたのにすっかり忘れて年を越していたのを潜在意識が覚えていて、そんな夢になったのではないかと。
曲が何故「我が心のラ・セーヌ」だったのかはまったく不明。セットリストの正夢だったりして?

さて、そんなこんなで新たな年を迎え、今日は2015年の楽曲考察記事1発目。
『昭和90年のVOICE∞』初日に向けた”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズ、ラスト1曲。珍しく自信満々、的中予感バリバリのお題です。

昨年、『日劇ウエスタン・カーニバル』(1980年)の完全DVD化が告知され、新年早々の発売予定に多くのジュリーファン、タイガースファンのみなさま同様、僕もとても楽しみにしていましたが、何やら生産中止となってしまったようで・・・。
アルバム『G. S. I LOVE YOU』リリース直後のジュリーとオールウェイズのパフォーマンスの真髄をじっくり観られるのか!と期待していただけに、本当に残念です。新年の楽しみがひとつ無くなってしまいました。
こうなったら、お正月ジュリーに『G. S. I LOVE YOU』から「これぞ」という曲を歌ってもらって、気持ちの帳尻を合わせるしかありませんよ!
「1月」にふさわしい曲があるじゃないですか。いよいよこの曲の記事を書く時が来ました。

高校時代に熱心に聴いていた佐野元春さんの作品の中でも、特に「カッコイイ!」と思っていたロック・ナンバー・・・それが元々「沢田研二のアルバムのために書き下ろされた曲だった」と知った時の衝撃、感動。
「ジュリーが歌った佐野ナンバー」として、僕にとってはまずこの1曲。
『昭和90年のVOICE∞』でセトリ入りを果たせば、僕は『奇跡元年』以来2度目の体感となります。
「THE VANITY FACTORY」、伝授!

僕は高校生の時、佐野さんのファンだったクラスメートに、一度ジュリーのアルバム『G. S. I LOVE YOU』を聴くよう、熱心に勧められたことがありました。
彼曰く、「ヴァニティー・ファクトリー入ってるよ!」とのことで・・・僕も「佐野元春のヴァニティー・ファクトリーにあの沢田研二がコーラスで参加している」ことだけは、佐野さんのアルバム『SOMEDAY』で知っていましたから、「沢田研二も自分でカバーして歌ってるのか~(←真実の順序は逆だったわけですが)」と大いに興味はそそられたんですが、結局その時は手を出さずじまい。
今となってはただただ後悔するばかりです。ビートルズやストーンズが大好きで、しかも「アレンジ」に目覚め始めていた当時の僕が、『G. S. I LOVE YOU』を聴いて、その音作りのセンスに何も感じなかったはずがありませんからね。
特に「THE VANITY FACTORY」は、シングル・カットとなった「おまえがパラダイス」と共に、ジュリーファンはもちろん、マニアック層にも大衆性にも訴える力を持つ、アルバムの目玉曲と言えるでしょう。さらに言うと、佐野さんのヴァージョンを知っていればこそ、「おっ!」と思うところが多い曲なのです。

アルバム『G. S. I LOVE YOU』での「GS回帰」のコンセプトが、元々は70年代末に海の向こうで起こった「モッズ回帰」のムーヴメントと連動して起こり、さらにはそれがザ・タイガース同窓会へと繋がっていった、ということはこれまで何度か他収録曲の記事で書いてきました。
ただ、「GS回帰」と言ってもそれは単なる懐古的なものではなく、古き良きエッセンスを採り入れつつ「過激」で新しい最先端のロック・ミュージックの開拓を狙ったものです。これはネオ・モッズも同じこと。
加瀬さん、木崎さんが「もっと過激に!」とイニシアチブをとり、アレンジャーの銀次さんはじめ現場のスタッフやオールウェイズのメンバー、そしてジュリーが完璧に応える・・・それが『G. S. I LOVE YOU』という稀有な名盤の素晴らしい一面ですが、まずはコンセプトに沿えるだけの優れた楽曲が揃わなければ企画の具体化も無かったわけで、アルバムに3曲を提供した「80年代ロックのキーパーソン」である佐野さんが『G. S. I LOVE YOU』に関わった事実はあまりに大きいです。

新たなサプライズ、新たな才能の出現。
佐野さんはその直後、ジュリーへの提供曲である「THE VANITY FACTORY」「I'M IN BLUE」の2曲のセルフカバーを含んだアルバム『SOMEDAY』で大ブレイクしました。とにかく、(僕もそうでしたが)「洋楽至上主義」に囚われていた日本の多くのロック愛好少年&少女の感性を撃ち抜いた、佐野さんの80年代以降の邦楽ロックへの貢献は計り知れません。
いち早いジュリーへの作曲提供実現は「奇跡的な必然」だったのかな、と思います。

『G. S. I LOVE YOU』はそんな佐野さんのブレイク一歩手前の時期に、「ジュリーからあなたへのX’masプレゼント!」なるキャッチコピーでリリースされています。
年の瀬の発売だったんですねぇ。

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↑ 『ヤング』1980年12月号より。
”三大特典予約”の実物が気になります・・・今もお持ちの先輩方はいらっしゃるかな?

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↑ そしてこちらは『ヤング』1981年1月号より。


先述の通り、僕はみなさまとは違い「THE VANITY FACTORY」の楽曲自体は佐野さんのヴァージョンで先に知りました。数十年経って初めて聴いたジュリー・ヴァージョンは、色々な意味で衝撃でしたよ・・・。
まず、この2人のヴァージョン、聴いた時の印象がそれぞれまるで違うんです。

佐野さんのセルフ・カバー・ヴァージョンは完全なアップ・テンポのエイト・ビート・スタイル。
浜田省吾さんの「愛の世代の前に」などにも通じる、マイナー・コード・スケールの煽動性を生かした、いかにもティーンエイジャーのロック好き少年を惹きつけそうな音作りのギター・ロック・ナンバーです。
対してジュリー・ヴァージョンは、ジャジーで渋い「大人のロック」的な仕上がりとなっています。こちらは20代から30代の女性を虜にしそうな・・・その頃「ナウい」なんて言葉がありましたけど、当時のジュリーファンにとってはそんな感じだったのかなぁ。
メロディー、コード進行はほぼ同じ。つまり、ジュリー・ヴァージョンと佐野さんのセルフカバー・ヴァージョンの違いは、アレンジと演奏によるものなんですね。

では、それぞれのヴァージョンで異なるアレンジを施される前・・・佐野さんが『G. S. I LOVE YOU』のために書き下ろした、作曲したてホヤホヤ剥き出しの「原曲」時点での「THE VANITY FACTORY」がどのような作品だったのか・・・その点については、伊藤銀次さんの発言にヒントがあります。

銀次さんは初めて佐野さんがこの曲を聴かせてくれた時(銀次さんのブログによればそれは『G. S. I LOVE YOU』レコーディング現場ではなく、銀次さんがまだジュリーのアルバム・アレンジのオファーの話を聞く前のことだったそうです)、「ビリー・ジョエルみたいでカッコイイ!」とそのファースト・インプレッションを語っているんですよね。
その銀次さんの言葉を知った時、一瞬僕は「はて・・・この曲のどのあたりがビリー・ジョエルなんだろう?」と思ってしまいました。これが逆に言えば銀次さんのアレンジの魔法の証。自身の持つ様々な引き出しをもって装飾していく銀次さんの手管によって、「最初はビリー・ジョエルっぽかった」曲のイメージが一新されているのでしょう。
で、アレンジを抜きにしてメロディーの起伏、コード進行など基本的な部分だけを素直に検証してみますと・・・「はは~ん、銀次さんが連想したのはたぶんコレだな」と僕が思い当たったビリー・ジョエルのナンバーは、アルバム『ストレンジャー』1曲目収録の「ムーヴィン・アウト」という曲です。

Movinout


↑ 『BILLY JOEL COMPLETE Vol.1』より

ヴォーカル部冒頭、短調のメロディーの載せ方ね。
佐野さんが「THE VANITY FACTORY」のメロディーをシンプルな楽器1本の弾き語りで銀次さん達の前で披露しているのを想像すると・・・なるほど「ビリー・ジョエルみたいでカッコイイ!」と思えてきます。
考えてみれば、佐野さんの曲にはビリー・ジョエルがオマージュ元だろうと思われる曲がいくつか他にあるんですよ。「バルセロナの夜」が「素顔のままで」だったり、「インディヴィジュアリスト」が「ランニング・オン・アイス」だったり・・・(ただし「バルセロナの夜」については、佐野さんの意向とは別にアレンジ段階で似てしまった、というインタビュー記事を読んだことがあります)。

さて、銀次さんはそんな「THE VANITY FACTORY」を、よりジュリーの「過激さ」に近づける・・・つまりアルバム『G. S. I LOVE YOU』のコンセプトに馴染ませるため、新たなアレンジ解釈の刀を抜きます。

Vanity


↑ 『ス・ト・リ・ッ・パ・-/沢田研二楽譜集』より

ストレートなマイナー・コードのメロディーで、ラジカルなフレーズを繰り出すロック・ナンバー・・・と来れば!
そう、これはみなさまご存知、ローリング・ストーンズの「アンダー・マイ・サム」。

Undermythumb


↑ 『ローリング・ストーンズ・ベスト曲集』より

『G. S. I LOVE YOU』のアレンジを任されるにあたって、改めてザ・タイガースの音源考察に取り組んだという銀次さん。当然、「アンダー・マイ・サム」をタイガースのレパートリーとして認識していたはずです。「NOISE」を加瀬流ストーンズとするなら、「THE VANITY FACTORY」は佐野流ストーンズ。
佐野さんというまったく新たな才能と、「GS回帰」アレンジとの合体。なんとも刺激的なアイデアです。こうして「THE VANITY FACTORY」には、「アンダー・マイ・サム」のリフ・オマージュが施されました。
こうなればジュリーのヴォーカルに「あぃやっ!」が加わるのは必然。「これこれ!こういう感じがイイんだよ!」とレコーディング・スタジオで全開モードになるジュリーの姿が目に浮かぶようですね。

『G. S. I LOVE YOU』の大きな魅力として吉野金次さんによるミックスの特殊性が挙げられますが、アルバムのクライマックスとも言える配置の「THE VANITY FACTORY」では、「HEY!MR.MONKEY」や「彼女はデリケート」のように、荒々しいコンプレッサーのセンドリターンを施した演奏トラックを最右、最左に完全に振り分けるようなミックスにはなっていません。基本センターに各楽器を集中させ、オルガンとバッキング・ギターのトラックだけを左右に拡げている感じ。
このことからも、アルバム『G. S. I LOVE YOU』の中で「THE VANITY FACTORY」が「シングル曲」とはまた違った看板ナンバーとして制作スタッフ間に共通の認識があったことが窺えます。

ジュリーは『G. S. I LOVE YOU』収録の佐野さんの作品をとても気に入ったようで、「THE VANITY FACTORY」もその後のLIVEセットリスト入り常連のナンバーとなっていったようですね。
Co-CoLo期にオリジナルとはまったく異なる斬新なアレンジで演奏されていたりもしますが(それはそれで滅茶苦茶カッコ良いです!)、僕が『奇跡元年』でこれまで唯一生で聴いた時は、「アンダー・マイ・サム」のリフ再現ありのヴァージョンでした。
また、1998年お正月LIVE『Royal Straight Flush』では、「アンダー・マイ・サム」「The Vanity Factory」の2曲をブッ続けで歌うという確信犯的なセットリストもありますね(生で体感された先輩が羨ましい!)。

先程、佐野さんの作品はティーンエイジ
ャーに圧倒的に支持された、と書きましたが・・・これは、一昨年末に亡くなられた大滝詠一さんと同じく、10代の少年少女が憧れた「素敵な大人」をその音楽の中に見出していたことがひとつあると思うんですね。
そして佐野さんの場合にはサウンドはもちろんですが、少年達が望む「大人」像の発言としての「歌詞の魅力」がそこにあったと僕は思うわけです。


オフィスの窓にもたれて
Am                  F

ブラインドを少しずらして
  G                     C

水曜日の夕暮れを 静かに吸いこむのさ ♪
Am           F            G                   Am   


佐野さんの『SOMEDAY』で初めて聴いた時には、まずは深く考えず「なんだか語呂がカッコイイ」というだけでその歌詞に惹かれたものでした。
ただその後、佐野さんの発する言葉のひとつひとつを考えるに連れ、聞き手の少年達は覚醒します。
社会に従事する「働く大人」でありながら、世の不条理への違和感を隠さない。おかしいことはおかしいと、虚構は虚構だと言う。
「子供は易々と大人の欺瞞を看破するもの」とよく言われますが、その中で数少ない(と少年達には感じられていた)「少年の感性を持つ大人」が、世にはびこる虚構にどう向き合ってゆくのか・・・。

1月の夜が 静かに 降りてくる ♪
Dm  Em    Fmaj7  E7-9

(注:『ストリッパー』楽譜集では、この部分の最後は「E7」の採譜。でも「E7-9」の方が僕はしっくりきます)

多くの佐野さんの楽曲のメッセージは「思考することをやめない」ことだと僕は思っています。
昨年よりもさらに「大変な年」・・・2015年が始まったこの1月に、改めてよく「考えて」みたいことも多いです。ジュリーの『昭和90年のVOICE∞』も、そんなセットリストになるのではないでしょうか。

僕は佐野さんの『SOMEDAY』では、レコードB面の「真夜中に清めて」「ヴァニティー・ファクトリー」「Rock'n Roll Night」の3曲の流れが好きでした。そのせいでしょうか、「THE VANITY FACTORY」には「B面のヤマ場」というイメージを持っていて、それは『G. S. I LOVE YOU』でも(聴いたのはCDでしたが)感じとることができました。
さらに、生涯2度目のジュリーLIVE『奇跡元年』で初めてこの曲を生で体感した時、「アンコールでのセットリスト入り」がふさわしい曲だなぁと思ったものです。
僕にとって「THE VANITY FACTORY」は「佳境」のナンバーなんですよ。

『昭和90年のVOICE∞』初日渋谷公演・・・僕はこの「THE VANITY FACTORY」が『奇跡元年』と同じく、アンコール・ナンバーで採り上げられると予想します!
さて、実際はどうなりますか。


それでは、オマケです~。
『ヤング』1981年2月号の巻頭特集ページから、アルバム『G. S. I LOVE YOU』全曲を歌った、という81年新春コンサートのフォトをどうぞ~。


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810202

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さぁ、これにて今回のセトリ予想シリーズは終了。
近日中に簡単な「ネタバレ禁止」のお願い記事を更新しまして、こちら本館は20日フォーラム公演のレポート執筆(僕は初日とオーラスに参加します!)まで、しばらくの間お休みします。
その間はいつものように、別館side-Bにてどっぷりと『昭和90年のVOICE∞』セットリストに浸る予定。

どんな曲が歌われるのでしょうか。僕のセトリ予想は少しは当たるのか・・・本当に楽しみです。
もし、アンコールで「THE VANITY FACTORY」のイントロが流れたら、予想的中とかそういうことに関係なく、とんでもなく盛り上がってしまうだろうなぁ・・・。

まずは、逸る心を抑えて仕事に邁進いたします。
昨年末から寒い日が続いていますから、みなさまもどうぞお身体には気をつけて!

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2015年1月 1日 (木)

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

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2015年が平和な年でありますように。
大自然が穏やかでありますように。

添付しましたおめでたい画像は、1982年新春コンサートのパンフレットからです。

いや~これが素晴らしいお宝パンフレットです。せっかくなので、他ページからもいくつかの眼福ショットをオマケで追加しておきましょう。

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ということで!
もうあと1週間後は、ジュリーのお正月LIVE『昭和90年のVOICE∞』初日でございますよ~。

それまでになんとかあと1曲、セットリスト予想記事を書く予定です。
自信あり!の1曲です。新年・・・と言うか、「1月」にふさわしいお題です(←もうこれだけで90%のジュリーファンのみなさまにはお題バレバレ)。
さすがにバタバタの日程で下書き時間もほとんど無く、突っ込んだ考察にまで踏み込めるかどうか・・・まぁ色男・ジュリーの資料がふんだんに添付できる時代のナンバーですので、新春ならではのおめでたい記事にできれば、と思います。

2015年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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