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2014年11月

2014年11月15日 (土)

沢田研二 「ポラロイドGIRL」

from『彼は眠れない』、1989

Karehanemurenai

1. ポラロイドGIRL
2. 彼は眠れない
3. 噂のモニター
4. KI・MA・GU・RE
5. 僕は泣く
6. 堕天使の羽音
7. 静かなまぼろし
8. むくわれない水曜日
9. 君がいる窓
10. Tell Me...blue
11. DOWN
12. DAYS
13. ルナ

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from『ROYAL STRAIGHT FLUSH 1980-1996』
original released on 1989、single


Royal80

disc-1
1. TOKIO
2. 恋のバッド・チューニング
3. 酒場でDABADA
4. おまえがパラダイス
5. 渚のラブレター
6. ス・ト・リ・ッ・パ・-
7. 麗人
8. ”おまえにチェック・イン”
9. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
10. 背中まで45分
11. 晴れのちBLUE BOY
12. きめてやる今夜
13. どん底
14. 渡り鳥 はぐれ鳥
15. AMAPOLA
16. 灰とダイヤモンド
17. アリフ・ライラ・ウィ・ライラ~千夜一夜物語~
disc-2
1. 女神
2. きわどい季節
3. STEPPIN' STONES
4. CHANCE
5. TRUE BLUE
6. Stranger -Only Tonight-
7. muda
8. ポラロイドGIRL
9. DOWN
10. 世界はUp & Fall
11. SPLEEN ~六月の風にゆれて~
12. 太陽のひとりごと
13. そのキスが欲しい
14. HELLO
15. YOKOHAMA BAY BLUES
16. あんじょうやりや
17. 愛まで待てない

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みなさま、元気出てきましたか?
そう簡単にはいかないか~。

僕も「
みなさまに早く元気になってもらって、また楽しいお話ばかりをしていたい」という他力本願的な考えに囚われていたけど、それは甘えだと気づきました。
ですから、まず自分自身が足元をしっかり見て、本当にこれまで何度も書いてきたことだけど、今また気持ちも新たに「日常を粛々と」と思うばかりです。
共にゆっくり、ゆっくり進みましょう。

フォーラム不参加だったYOKO君に今回の件を話したら、彼らしい考え方に元気を貰いました。

曰く、「もちろんLIVEは基本、ハッピーであるべきだとは思うけど」とした上で
「昔はロックにしてもフォークにしても、LIVEでそういうことって、ツキモノだったんだよね」
と(僕は詳しくないですが、フォーク系大御所さんにも、暗黙のルールを越えたお客さんに対してはビシッと一喝する人がいらっしゃるらしい)、彼は言うのです。
「それが最近の行儀の良いアーティストのLIVEだと、そういうことがあった時、その場はスルーで、アーティストも客も後からネットで誹謗中傷とかじゃないの?」
それ考えたら、むしろ健全なことじゃん、と。

これを要するに、「その場でケジメつける昔気質のジュリーが俺は好きだよ」ってことなんだよね~。
いかにもYOKO君らしい考え方です。僕はそこまでカラッとできない性分ではあるんだけど、ス~ッと気持ちが楽になりました。まぁ、YOKO君だって実際フォーラムにいたらどうだったかなぁ、とは思いますけど。

さて、そんなこんなで僕は、フォーラムのレポ以上にエネルギーを使いそうな「我が窮状」の考察記事を、来月『ジュリー祭り』6周年の12月3日になんとかupできるよう執筆予定としております。
今日はその前に1曲、楽しいお題を。
恒例・”セットリストを振り返る”シリーズの第1弾として、今年の全国ツアー『三年想いよ』で歌われた名曲群の中から、ジュリーもファンも心の底から「楽しい」ナンバー・・・非の打ちどころの無い完璧なポップ・ロック・チューンを採り上げます。
今ツアーでも大いに盛り上がりました、この曲。
「ポラロイドGIRL」、伝授です!

今回の『三年想いよ』”セットリストを振り返る”シリーズ・・・「我が窮状」は初日の時点で「書こう!」とすぐに決めましたが、他の曲はどれを採り上げようかなぁ、と最近まで悩んでいました。
「ポラロイドGIRL」に決めたのは他でもありません。先日の「女神」の記事で書きましたが、僕は2ヶ月ほど前に『ROYAL STRAIGHT FLUSH 1980-1996』をようやく購入し、disc-2を鬼のように聴きまくっていました。CO-CoLo期のシングル・ナンバーを新鮮な気持ちで楽しむと共に・・・いやぁ、「ポラロイドGIRL」のシングル・ヴァージョン、衝撃でした。
アルバム・ヴァージョンとは演奏もアレンジも同じでミックスが違うだけなのに、何ですかこの凄まじいLIVE感。アルバムで聴くのとは全然印象違うじゃん!
(『ROYAL STRAIGHT FLUSH 1980-1996』のブックレットで確認しましたら、この曲まではシングル・レコードとしての発売もあったみたいですね。この時期のジュリーのシングルレコード盤って、専門のショップでも見かけたことがない・・・お持ちのかた、70年代のシングル盤よりもむしろ貴重かと思います!)

いや、アルバム・ヴァージョンの方のミックスももちろん素晴らしいんですよ。
ただ、僕はみなさまと違ってこの2つのヴァージョンをじっくり聴き込む機会に数年ものタイムラグがありました。大好きな曲で、それまで何度も聴いて耳に頭に完全にインプットされていた音と全然違うヴァージョンを突然聴いた時の、吐息が漏れるほどの独特の興奮と高揚感なのですね、これは。
このシングル・ヴァージョン、僕もYou TubeのPVは観ていましたから、まったく初めて聴いた、というのとはちょっと違うんですけど、やっぱりPVだと音よりも映像に神経が集中していたみたいで


凛として洗練されたアルバム・ヴァージョン。奔放で肉感的なシングル・ヴァージョン。そんなイメージです。
これ、一般的なリリース手法としては普通は役割が逆なんですが、やっぱり当時の空前のバンド・ブームを踏まえてのことでしょうね・・・「世間の若きバンドマンよ、本物をお見舞いしてやる!」というコンセプトが、アルバム『彼は眠れない』、シングル「ポラロイドGIRL」にはハッキリあったんじゃないかなぁ。

この2つのヴァージョンは、それぞれのステレオ・トラック配置の妙が一番の肝です。そのあたりを紐解くには、究極のロック・パーソンによる各演奏トラックの素晴らしさを同時に語っていくのが良いでしょう。

まず「ポラロイドGIRL」の演奏トラックで僕が圧倒的に惚れこんでいるのが、ポンタさんのドラムスです。
いやぁ本当に凄い!
ハイハットやタムの使い方だけとってもLIVE感を意識しているのが分かりますし、それがシングル・ヴァージョンでは一層際立つミックスとなっています。
次々に繰り出される躍動的なフレーズ、そのひとつひとつが「若造がマネできるモンならやってみな!」と言わんばかりの演奏です。
しかもこのテイクは技術と才能、センスだけで演奏するのは無理。驚嘆すべきはその体力ですよ。ポンタさん、この1曲録るだけで2キロは痩せてるんじゃない?

ギターは計4トラック。エレキが3でアコギが1です。
このアコギがまた凄い。弦も切れよ、とばかりにガッシャンガッシャンと弾き倒しています。
「えっ、ポラGにアコギなんて入ってた?」と仰るかた、いらっしゃいませんか?入ってるんですよ~。その点分かり易いのはアルバム・ヴァージョンの方です。ミックスで最左に振られていますから是非ご確認を。

元々、吉田建さんってビート系のロック・ナンバーにアコギが入っているアレンジが好きなんですよ。
建さんがイカ天の審査員をしていた頃、”THE WEED”というバンドが出演してカッコ良い16ビートのポップ・ロック・ナンバーを披露したんですけど、ヴォーカリストがアコギを豪快なストロークで弾きまくりながら歌ったんです。建さんは「こういう曲にアコギが入ってる、という時点で既にイイ!」みたいな感じのことを言って絶賛していましたね。
EMI期のジュリー・アルバム、最初のプロデュース作品ということもあって、『彼は眠れない』にはそんな建さんの高い趣味性が反映され、アコースティック・ギター・アレンジの手管が極められています。
明快なのは「噂のモニター」あたりですが、僕が一番痺れるのは、タイトルチューン「彼は眠れない」。
いずれ詳しく考察記事で書く機会があると思いますけど、「ちょっと気になる」と仰るみなさまは、試しに「彼は眠れない」のブレイク部を聴き直してみて!アコギ、最高にカッコ良いですから。

さて「ポラロイドGIRL」のアコギですが、シングル・ヴァージョンではセンターにミックスされていて、ほとんど聴こえません。よ~く注意して聴くと、何やらシャカシャカ頑張っている音がするのがお分かりかと思いますが、それがアコギです(笑)。エンディングですべての楽器が「じゃら~~~~ん♪」となる箇所で一歩先んじて鳴り始め、ようやく普通に聴こえます(ここだけアコギ・トラックの音量レベルを上げている可能性も)。
まぁでも、アコギに関しては先述の通りアルバム・ヴァージョンのミックスの方が効いていますね。

では、エレキギターについてはどうでしょうか。
こちらは何と言ってもシングル・ヴァージョンでの鮮明な分離が大きな魅力(左サイド、センター、右サイドと3つのトラックが明確に分かれて配置されています)。
センドリターンのエフェクト処理も、アルバム・ヴァージョンとは異なります。

センターにミックスされたリード・ギターのサスティン、指圧、ビフラートはシングル・ヴァージョンの方がビシビシ伝わってきます。アウトロなどで重厚に「うい~んうい~んうい~ん♪」と言わせているのも、リードギターの音。これはシングルの方が目立ちますね。
また、Aメロのエイトビートのダウン・ピッキング(演奏曲例として、『三年想いよ』ツアーの「ダーリング」での下山さんの演奏を思い出して下さい)・・・「ガッガッガッガッ・・・♪」というパワーコード連打の迫力も、シングル・ヴァージョンのミックスの方に軍配が上がると思います。これは右サイド。
さらに、2番歌メロ直前のあのブレイク部の見せ場を含むパートが左サイドのミックス。で、シングル・ヴァージョンではここでもセンターのリード・ギターが黙っていないんですよ。「ぎゅい~んうい~ん♪」と。
その音がアルバム・ヴァージョンではかき消えている・・・よ~く聴くとその直前に「スパン!」とトラックを切られているのが分かるんです。その瞬間、リードギター・パートには「指差しの権利」が生じます(笑)。
ですから、今の「ポラロイドGIRL」のLIVEアレンジはアルバム・ヴァージョンの方に近い、と言えますね。

あと、忘れちゃならないアレンジの肝がキーボード。ストリングスの音色でブルーノートを弾く、というね。

モザイクの微笑み すずしげ 0.1秒で
        A                 D7           A

胸はやけどさ 次のシーン スルリと誰の手に ♪
      D7                               A

この歌詞部。まず2小節を刻みで弾いて、次の2小節では音を伸ばす。その音階が、ロックにおけるサイドギターのバッキングを見立てているんですよね。
敢えてそれをストリングスの音色でやる、というのがスリリングなのです。

ちなみにこの演奏、泰輝さんは以前はすべてストリングスの音色で弾いていたように思いますが、いつからか刻みの部分をエレクトリック・ピアノっぽい音に変えてきています。『三年想いよ』ツアーもそうでした。
歯切れ良さ重視、ということなのかな。

次に、詞と曲について。
サエキけんぞうさんの詞には気合がほとばしっていますね。「大好きなジュリーが自分の詞を歌ってくれる」ことへの興奮を全力で作品に込めているのが伝わってきます。細部に至るまで、「適当」に嵌め込んだようなヌルいフレーズは一切無し!一句一句入魂の名編です。
作詞の作業としては「曲先」だったと考えられますが、サビのメロディー最後にズバッと楽曲タイトルを配する剛速球のアプローチ。タイトル「ポラロイドGIRL」の語感がジュリー・ヴォーカルにもたらす決定的なスター性まで計算していたのでは、と思うほどです。
ジュリーが「ポラロイドGIRL♪」と歌う時のあのカッコ良過ぎる発音を聴いて、サエキさんは「やった!」と思い、達成感に満たされたのではないでしょうか。

作曲者・奥居香さんのキャリアについては、説明するまでもないでしょう。
ガールズ・ロックの女帝。しかも1989年というこの時期ですからね。ジュリーへの楽曲提供は話題性も抜群だったでしょうし、組み合わせとして刺激的。
奥居さんは、紛れもないロック・パーソンですよ。当然作曲作品もロックです。しかもキャッチー。そして、これが奥居さん最大の個性だと思うのですが・・・最高に「ハッピー」なんですね。
「男のバンドに負けないように」なんて気負いや対抗心は、奥居さんの楽曲からはまったく感じられません。
これがハッピーなんだ、と素直に心の内から沸きだしてきているのかなぁ、と思える・・・この個性をして奥居さんは、「女の子がロックすることの特権」を完全に切り開いた人だと思います。

然るに、奥居さん作曲の「ポラロイドGIRL」の完成度は楽曲段階から凄いです。その魅力は、単に「とっつきやすい」「ポップ」というだけには止まりません。
「ポラロイドGIRL」に織り込まれている、「ロック」で「ハッピー」な部分をいくつか挙げてみましょうか。
まずは

Darling Darling キスの向こうは大変な未来 ♪
D                                       A            F#

この「F#」ね。構成音は「ド#・ファ#・ラ#」。
普通のポップス進行を漫然となぞるだけならば、ここは「F#m」になるところ。「F#m」の構成音は「ド#・ファ#・ラ」で、この場合は「大変な未来♪」のメロディーも、すぐ前に登場した「知らない唇♪」の部分とまったく同じ繰り返しの「ド#ド#レレミド#シラ~♪」とする以外無く、なんだか普通~な感じ。
しかし奥居さんは違います!
「F#」を当ててコード進行を尖らせることにより、メロディーは「ド#ド#レレミド#シラ#~♪」となります。
この最後の「ラ#」・・・たったひとつの音を半音シャープさせるだけで、どれほど曲のロック度が上がることか。聴いていてどれほどウキウキと高揚することか。
ジュリーの歌がまた、この「ラ#」をしっかり表現しているんですよね~。「ポラGのジュリーのヴォーカルでは、この箇所が好き!」と仰るかたも多いのでは?
みなさま、試しにこの部分をちょっと歌ってみて下さい。最後の「みらい」の「い」・・・「ラ#」の音がスッと出たかたは、音感に優れた人。僕などは凡人ですから、うまく着地できずに声がフラフラになります。

そしてサビなんですが、1番と3番を比較してみます。


(1番)
うかれっぱなし     の奴  をおいて
A         A(onC#)  F#m  F#m7(onE)

Woow Wow ポラロイドGIRL ♪
D      E                     A

(3番)
こわれっぱなし     の奴  をおいて
A         A(onC#)  F#m  F#m7(onE)

Woow Wow ポラロイドGIRL ♪
F7     G7                   A

1番(と2番)の「Woow♪」と最後の3番の「Woow♪」は、コード進行がまったく違うのです。
1番は普通にサブ・ドミナント→ドミナントの進行。一方3番の「F7→G7→A」は、和音ごと1音ぶんずつ上昇していってトニックに着地する、という理屈で、最後のサビだけを変化させることにより、曲がビシッ!と引き締まります。最後の最後まで「飽きさせない」構成なのです。

そんな素晴らしい楽曲提供を受け、JAZZ MASTERを率い再出発したジュリーのヴォーカル、完璧ですよね。
声の艶、テンション、躍動感。要所で繰り出されるシャウトに全然無理が無くて。
詞も曲もアレンジも演奏もヴォーカルも、完璧。何故こんな完璧な曲が大ヒットしなかったのでしょう?
後追いの僕が思うに・・・皮肉なことですが、その「完璧」さが却って仇となったのかなぁ、と。

ジュリーって、良い意味で何処か「抜けた」ところがあって、言ってみれば「攻撃力100・防御力30」みたいな魅力が圧倒的な人気を得る一因だったのかな、と僕なりに分析しています。それが「ポラロイドGIRL」、ひいてはアルバム『彼は眠れない』では防御力まで「100」になりました。隙が無くなったのですね。
当時、「あのジュリーが、こんなに完璧でレベルの高い作品をリリースして、何故爆発的ヒットにならないのか」と、レコーディングに関わった人すべてが首をひねったでしょう。でもそれは、必然であったかもしれません。

僕には、本当に「ジュリー道の師」と仰ぐほどの先輩がいて、僕が様々な思い込みや勘違いを修正させながらどうにかこうにか真っ当なジュリーファンの道を進めているのは(と言ってもまだまだ迷いながら、ですが)、その先輩をはじめ、多くのジュリー道の先達のみなさまに色々と教わっている恩恵がとても大きいです。
「師」と仰ぐ先輩には12月に忘年会にもお誘い頂いていて、まぁ軽く3時間くらいはフォーラムのお話を中心に講義を受けることになるだろうなぁ、と楽しみにしているところですが(笑)、その先輩が以前から仰っていることで、「どうしてなんだろう」と常々思っていることがあります。JAZZ MASTER期のLIVEやアルバムに、良いイメージが残っていらっしゃらないみたいなんですよ。
「こんなに凄いのに、こんなに完璧なのに何故だろう?」と僕などはその都度お尋ねして、お話を伺って理解できた部分もあり、まだ分からない部分もあり・・・。

『彼は眠れない』『単純な永遠』『パノラマ』の3枚のアルバムは、とてつもなくハイレベルな「プロデューサー主導」「コンセプト主導」によるロックの大名盤です。
そんな中で、「世間に本物のロックをお見舞いしたい」という制作サイドの狙いが「ジュリー」というブランドを利用していた、という面も無きにしもあらずだったと今は理解しています。その感触に抵抗を感じた人達も少なからずいらっしゃったのかなぁ、と。
「かわいらしさ」「無邪気さ」と言うと語弊がありますが、いわゆる「遊び心」の部分が、ジュリー自身よりも制作サイドに偏っていた時期だったのでしょうか。
先述の先輩は『REALLY LOVE YA !!』で持ち直して、『sur←』で「イイじゃない!」と思ったと仰いますから、それは他でもない、ジュリー本人がセルフ・プロデュースに踏み切るまでに年々考えていたこととシンクロしている感覚なのかもしれません。

それでも、「完璧に作られた」ジュリーは素晴らしいとも思う・・・こんなコンセプトに応えられる日本人歌手は、過去は言うに及ばず、この先も現れないでしょう。
JAZZ MASTER期の5枚のオリジナル・アルバムが途方も無いジュリー・ロックの名盤である、という僕の考えは不変です。ジュリーの”裏・黄金期”とも言えるこの5枚については、何としてもCD再発を実現して欲しい、世の中の再評価を勝ち取りたい。そう思ってしまうのは、ファンの欲目、贅沢でしょうかねぇ・・・。

そしてその一方で思うのです。最近の(「今の」と言っても良いけれど)LIVEで「ポラロイドGIRL」を歌うジュリーの防御力は「30」くらいに下がっています。攻撃力は変わらず「100」。これはとても素敵なことです。
良い意味で「隙」の多いジュリーの魅力が炸裂している「ポラロイドGIRL」・・・先の『三年想いよ』ツアーでも存分に魅せて、聴かせてくれました。。
恰幅のよくなった体躯で(←他意はありません汗)ステージ狭しと暴れ回り、”おいっちに体操”を繰り出し、お尻を突き出し、何度もジャンプするジュリー。
この記事で長々と書いてきた通り、僕はレコーディング作品としての「ポラロイドGIRL」をいくら大絶賛してもし足りないくらいだけれど、それでもやっぱりこの曲はLIVEの方が良い!

すっかり定着した下山さんの見せ場ひとつとっても、あれ、フォームの移動は一切ありませんからね。ただ単に、ルート音のエイトビートと「A」のコードのカッティングを、4小節続けて弾いているだけなんですよ。それであの盛り上がり、説得力・・・「ポラロイドGIRL」のLIVEって本当に楽しい。
曲のヴァースごとに違った振りで会場一体となっての、「お客さん巻き込み型」ジュリーLIVE定番のナンバー。毎回、最高にハッピーな気持ちになります。
この先何度でも、生で聴きたい曲ですよね。


ということで・・・「ジュリーのLIVEは素晴らしい!ジュリーのLIVEは楽しい!」と改めての思いを強くしつつ、「ポラロイドGIRL」考察記事をお届けいたしました。

それでは次回更新は、12月3日です。
僕が本格ジュリー堕ちした忘れられない記念日ということで、この日は毎年、『ジュリー祭り』セットリストから記事のお題を選ぶことに決めています。今年は『三年想いよ』ツアーの”セットリストを振り返る”シリーズも兼ねて、「我が窮状」を採り上げます。
11月は仕事が忙しくなかなか本腰を入れての執筆時間がとれない、ということもあるにはありますが、やはりお題がお題だけにね・・・下書き段階から書いては直し、書いては直しを繰り返すことになりそうで、しばらくお時間を頂くことになってしまいますが、どうか気長にお待ちくださいませ。
そうそう、今年の12月3日は”ザ・タイガース再結成1周年”でもあるんですよね。1年早いですね・・・。


最後に、完全な余談になりますが、もし興味のあるかたがいらっしゃったら・・・。
11月21~23日に、東京ビッグサイトにて『楽器フェア』という楽器・楽譜業界の一大イベントが開催されます(東京ビッグサイトでの開催は史上初。その準備やら何やらで今年の11月は忙しいのよ・・・)。
21日は業界限定開催ですが、22日、23日の土日は一般公開での開催となります。ギターをはじめ、あらゆる楽器が広い会場にズラリとひしめく光景は圧巻ですよ~。僕は毎回、楽譜出版協会ブースのスタッフとしての仕事の合間にコソコソとうろつき回って、エレドラの試し叩きとかやってます。今年もエレドラのコーナーはあるのかなぁ。
楽譜出版協会ブースの目玉は、各メーカー選りすぐりの謝恩価格本コーナー。通常は「絶版」案内となっているスコアの数々を、開催日限りの古書価格で販売します(ジュリーのスコアはさすがに無いだろうけど)。

興味のある方、お時間のある方は是非会場まで遊びにいらしてくださいませ。
タイミングが良ければ(悪ければ?)、スーツ姿の僕にも会えます(笑)。

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2014年11月 6日 (木)

2014.11.3東京国際フォーラムA 沢田研二『三年想いよ』(ちょっと変則のレポ)

今回はさすがにいつも通りのレポ、とはいきませんでした。ごめんなさい。

全力で歌っているジュリー、全力で演奏している鉄人バンド。そのステージへの最大の敬意をもって鑑賞することがまず一番大事だと僕は思っています。

生のLIVEで、あんなに心を晒してくれるステージを40年以上も続けている歌手が他にいますか?
毎回、普通では観られないステージを観ている、普通では聴くことのできない歌声を聴いている、普通では触れられない感動に触れていると思います。
それがジュリーのLIVE。

開演前に、大阪から遠征された同世代の男性ファンのお友達とお話しました。彼は言っていました。
「自分はよく他のアーティストのLIVEにも行くから分かる。2時間あの歌声が続く人は、そうはいないです」
と。
ジュリーは66歳ですよ。信じられません。


11月4日明け方、いつもはカミさんに叩き起こされないと目覚めない僕が、ハッと早くに目を覚ましてしまいました。前夜フォーラムMCの夢を見ていたのです。
ひと晩経って、思いのほか大きなダメージを受けている自分に気がつきビックリ。夢に出てきたMCのシーンでは、言葉よりもジュリーの表情がとにかくリアルで、いやぁさすがに落ち込みました。
これは・・・ある先輩がご指摘くださったんですけど、LIVEを観た僕ら自身が傷つけられてダメージを負っている、というのではなく、素晴らしい全国ツアーの最後の最後にジュリーが辛い思いをしてしまった・・・そのことへの胸の痛みであったり、人さまざまだとは思いますが、ジュリーという歌手について思う、真剣な気持ちで揺れたわけなんですね。

と・・・分かってはいるけど、やっぱり1日ヘヴィーな気持ちで仕事して帰宅。
本当になんとなく、何故それを選んだの自分でも分からないんですが、PYGのベスト盤を聴いたんですよ。
そうしたら「自由に歩いて愛して」で、やんわりと前向きな気持ちになってきましてね。あれっ、この曲・・・悲しくて、落ち込んでいて、そんな時に聴いてゆっくりと元気をくれる曲だったのか!と今さらながら。
不思議な感覚でした。
そこから僕は何と1日で気持ちを立て直してしまい、バリバリとレポの下書きを始めました。単純と言うのか鈍感と言うのか、みなさまはこんなup&fallエレベーターみたいな未熟者のマネはなさいませんように。

フォーラムでジュリーは、すべての言葉を本気で語っていたと思います。
僕らがひとりひとり胸に手を当てて、ジュリーファンとしての自分のことを考えてみる・・・ジュリーの言葉、あの必死の、一生懸命の表情で不器用に思いを伝えてくれたジュリーを見たら、それは当たり前にしなければいけない、と僕などは思ってしまいます。
ただ、これ以上ジュリーに悲しい思いをさせる・・・と言うのはおこがましいかな。これ以上迷惑をかける、気がかりにさせる、ということはやめなければ。
だから、ゆっくりとで良いから元気を出そう。純粋にね・・・お正月にはまた笑顔で、しっかりと敬意をもってジュリーのLIVEを観に行こう、と思いました。今回は、そうしたことを書かせて頂こうと思っています。

僕は最近になって、若き日のジュリーの貴重な資料を何人かの先輩方からお借りして、雑誌のインタビュー記事などを興味深く読んでいます。
特に72年・・・ファンに対してストレートに思いを語った記事、たくさんありますよね。当時、「アイドル歌手が言うべきことじゃない」と叩かれるような内容のことを、ジュリーは本当に真正直に語り、伝えようとしています。「カッコつけて言うとるんやない、不器用に、一生懸命に言うとるんやないか!」と。
それは、先輩方みなさんの方がずっとずっとご存知のことでしょう。ジュリーは今も変わっていないんですよね?あれこそがジュリーなんですよね?

いや、今のジュリーは少し違う・・・のかなぁ。
あの瞬間は怖かった・・・「あっ、ジュリーがキレた!」と思って。でも今考えると、そんなに怖かったかなぁ。そんなに「怒って」いたのかなぁ。
フォーラムでジュリーはとても切なそうに話していました。66歳の姿をすべて晒して、思いを吐露して、怒ると言うよりまるで懇願するように・・・。決して「俺の言うことを聞けい!」という感じではありませんでした。
それはジュリーの言葉使いやその解釈だけじゃなく、実際にその様子を見ていたから言えること。

最初はこのレポも、ジュリーが口にした様々な言葉について色々と書こうと思って下書きをしていました。MC部から書き始めて、その時点で既に大長文です。
でもすぐに、フォーラムに参加していなかったみなさまにジュリーの言葉だけを文字で書いても、あのジュリーの様子は伝えきれないよなぁ、と考え直して・・・。
だから僕はこの記事で、アンコール前のMC内容についてジュリーが使った言葉を一切文字にはしないことにしました。結果、珍しくタイトな文量(と言うにはやっぱり長いですけどね汗)のレポに・・・という次第。

さてあの日、ジュリーが明らかにいつもとは違う雰囲気で、それでも最後に腕時計を確認する仕草をしてくれて退場して、鉄人バンドのメンバーはいつも通り笑顔で手を振ってくれて・・・でも、何処か硬い感じもありつつ、ステージに誰もいなくなってすぐに客席の電気が点いて、ダブルアンコールの拍手が起こることもなく、そのまま帰路につくお客さん。
あんな会場の雰囲気はジュリーLIVEで初めてのことでした。そりゃあ僕だってとても悲しかったし、みなさまと同じような表情をしていたと思います。
帰りの地下鉄に乗るまでに何人もの先輩方とお会いしました。みなさん一様に肩を落とされていて・・・僕はなるべく明るく「ずっと溜まっていたものがあったんでしょう。ジュリーがそれを皆に話してくれた。ジュリーらしいじゃないですか~」と言うのだけれど、僕の言い方にも無理があるのを感じとられたのかな・・・泣いてしまってお話すらできず、ただただ頷くだけのかたもいらっしゃいました。「こんな終わり方になってしまって・・・」と、終わったばかりのLIVEの楽しさ、素晴らしさを忘れてしまったようなかたも。

でもみなさま、思い出してください。
ジュリーも鉄人バンドも素晴らしかったでしょう。ジュリー、最高にカッコ良かったじゃないですか!

いやいや、この日の「我が窮状」「届かない花々」、2曲続けて、凄い歌声じゃなかったですか?4会場参加した今年の全国ツアーの中で、一番気持ちの入ったヴォーカルだったと僕は感じました。

「海に向けて」も、いつもと何処か感じが違いましたよね。いつも以上に美しい、優しいジュリーの表現が、身近な愛情として込められていたように思います。
あれはね・・・最初のMCの時に
「66歳にもなって地元の友達と会うと、○○屋のアイツが亡くなってね、とかいう話ばっかりですよ」
と、少し冗談めかして話してくれたじゃないですか。
「明日は我が身やな~」
「オマエ、どこが悪いの?」
「うん、頭!」
なんて、皆で軽口を言い合っているんだ、と。
その後、「a.b.c...i love you」を挟んで歌ったこの日の「海に向けて」では、その亡くなってしまったお友達のことを思いながら歌ったのではないでしょうか。

最初の3曲の後のMC、楽しかったですよね。
「これまでやってきた会場で、お医者さんにあれはやったらイカン、これをやったらイカン、と止められている、と言ってたのは・・・あれは全部ウソです(笑)。まぁ、疲れないようにしなさい、とは言われましたが・・・そんなん、どないせぇっちゅうねん!」
と。

いやはやそれにしても、いつもお世話になっている先輩はこのお医者さんのくだりのMC時点で、「今日のMCはツアーの総括になるな。ここまでの会場であったことを踏まえて何を言い出しても不思議じゃないな」と何やら予感があったと仰るのですから凄い。本当に、僕などの及ぶところではありません。

ともあれ、「転調のある曲は転調するな」な~んてお医者さんには全く言われてはいなかった、ということで・・・「鼓動」の最後のサビもスパ~ン!と転調してました。神戸公演のレポートで僕がくどくどと書いていたことはまったくの勘違いだったようで、大変お恥ずかしい。

楽しかったと言えば「危険なふたり」ですよ。
恒例の”年上のひと・物色ヴァージョン”では、とうとう歌詞までイジってしまったジュリー。
イヤイヤをしながら
「年上のひと、美しすぎ~ない♪」
さすがにこれでは物色された前方席のお客さんたちが気の毒だなぁ、と思わなくもないですが(笑)・・・でもそれだけジュリーがノリノリだった証。

そう、ジュリーはあのアンコール前のMCまでは、ノリノリでゴキゲンでしたよ。何より素晴らしい歌声でした。
オープニングの「そのキスが欲しい」・・・何と間奏直後の、いつも会場が「きゃあ~」となるあのタイミングで、ジュリーは一瞬歌詞が飛んでしまいました。歌詞ったってそこは「そのキスが欲しい~♪」ですからね。何故そこが飛ぶの?という話。
僕はジュリーが「千秋楽だし、いっちょ久々に座り込みを見せたろか?いやいや、皆を甘やかしてはイカンな。だいだいワシ、そんなカッコつけるトシじゃないし・・・」な~んてあれこれ考えちゃってて、「あれっ?」とサビの出だしが一瞬飛んじゃったのかな~、とか勝手に妄想していました。

彼女はデリケート」のディレイ遊びも長かった~。
最後は「せん!(せん・・・
せん・・・せん・・・)しゅう!(しゅう・・・しゅう・・・しゅう・・・)らく!(らく・・・らく・・・らく・・・)の一人遊び。そして「おあとがよろしいようで」。

憎みきれないろくでなし」は、唯一無二のカッコ良さ。
ダーリング」は、選ばれしスターだけが演ずることのできる的確さ。
マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」は、歩んできた歌人生の潔さと、この先への鼓舞。
「マンジャーレ!・・・」のイントロ・フィルの直前は、「ダーリング」を歌い終わった後あたりから各国語でズラズラとお礼をシャウトしはじめて、その語呂繋がりでタイトル紹介までしてくれました。この「タイトル紹介」スタイルは、確か南相馬公演で始まったんですよね?
間奏で柴山さんに近づいてくる下山さんは、割と普通だったかな。「割と」というのは、やっぱりどこか動きがカックンカックンしてましたから。

鉄人バンドは、すべての曲で最高の演奏、最高の心意気を見せてくれました。
F.A.P.P」で柴山さんが、「いくつかの場面」で下山さんと泰輝さんが、これまでとは違ったフレーズを弾いてくれたことに気づいたかたも多かったのでは?千秋楽ならではの、渾身のアドリヴだったと思います。
「いくつかの場面」のジュリーのヴォーカル、最高音部の声の出し方が1番と2番では全然違いましたね。1番の声は、ファルセットと言うより「息を吸いながら発声している」感じ。その直前一瞬で発声を切り替えたように見えました。

世紀の片恋」のソロ途中で、ポ~ン!とボトルネックを後方に投げ捨てる下山さん。曲が終わった後にローディーさんが拾いに来るのかな、と思って注意して見てたんですが、そんな気配は無かったなぁ。

「追憶」の最後のサビ前のフィルでは、GRACE姉さんの”鬼姫ロール”が炸裂していました。さらには、溜めを効かせたクラッシュを打つ時に、身体ごと真っ直ぐに上手側のシンバルに向かう瞳の可愛らしさ。

そっとくちづけを」・・・みなさん聴きましたよね?最後のリフレイン、泰輝さん気迫のコーラス。お正月『ひとりぼっちのバラード』初日公演以上の熱唱でした。
柴山さんのギターも素晴らしかった。下山さんは、いつもよりコーラス(エフェクターの方ね)深め、音細めの設定だったかなぁ。柴山さんのスライドの太い音をより生かそうということなのかな。

「ポラロイドGIRL」は、もう無条件でステージも会場も一体となります。
恒例・下山さんのサイド・ギターの見せ場は、ジュリーと柴山さんが上手側端でくんずほぐれつ状態になりながら指差し!柴山さんはもう一丁念押しの指差しも。
それを受けて下山さんはローリング・ソバット一閃。
他の会場ではハイキック・ヴァージョンもあったと聞いていますが・・・。

そして新曲。
もう・・・本当に素晴らしい。
みなさん、きっと同じ感想をお持ちだったのに忘れちゃってませんか?「東京五輪ありがとう」は、少なくとも今ツアー僕が参加した4会場の中では、フォーラムが抜きん出て良かったですよ!
これまでよりテンポをちょっと落として、重厚なハード・ロックとして見事に完成された演奏でした。
ジュリーの低音がバシバシ届く!
柴山さんのソロが唸る!
広い会場に照明も映えていましたね。サビでパ~ッ!と明るくなって、視界が広がってね。

一握り人の罪」・・・ファイナルのお客さん、得したと思うんです。下山さんのアコギに何らかのトラブルがあって、たぶんエフェクターの接続だと思うんですけど。
その影響で、ひとまずの設定復旧後も下山さんは普段よりアタックを強くする必要が生じていたようです。転調して、泰輝さんのオルガン・ソロから最後のサビに向かっていく箇所で、凄まじいストロークが炸裂。ニュアンス的には32分音符まで行ってましたよ、あれは!
あと、下山さんのギターが復旧作業で鳴っていない時に柴山さんのアコギの音がハッキリ聴こえたのも、予期せぬ事態のためだったとはいえ、感動。

櫻舗道」・・・聴いて欲しかった人がいます。
ジュリーの歌声がどれほど無心で素晴らしかったか、下山さんの空色のストラトで奏でられるソロがどれほど気高かったか。泰輝さんのピアノ、鉄人バンドのコーラスがどれほど優しかったか。
お元気でしょうか。ずっとずっと気にかけてる・・・。

三年想いよ」・・・閉演後にお会いした先輩の「ジュリーは自分の目で被災地を見ていたんだ、三年ずっと見ていたんだと思う」と仰った言葉が胸を突きます。
初日からずっと、どの会場で聴いても「一番感動した」のは常にこの曲でした。もちろんこの日も。僕はまだジュリーLIVE参加歴はたかだか5、6年とは言え、そんなツアーは史上初めてです。
LIVEという表現の凄さ。それを知り尽くしているジュリーの凄さ。そんなジュリーのレベルとテンションに堂々と応える鉄人バンドの凄さ。
ツアー最後の最後になって、エンディングの鉄人バンドのコーラスが自然に耳に入ってきました。僕の中で、余計な雑念が無くなっていたのだと思います。
柴山さんのスロー・ハンドとフィードバックに合わせて、必死の表情で駆けたジュリーのスローモーションを僕はずっと忘れることは無いでしょう。イコール、被災地への思いを忘れることは無い、ということです。

アンコールの3曲は・・・みなさまそうだったかと思いますが、僕もさすがに心から楽しんで、という感じでは聴けなかったです。それは鉄人バンドも・・・若干だけど普段通りではない感覚が「ス・ト・リ・ッ・パ・-」の時点ではまだあったのかな。
あんなに速い「ス・ト・リ・ッ・パ・-」、初めて聴きました。
いや、今ツアーのこの曲は以前よりテンポアップはさせてるんですけど、それにしても速かったです。
でもね、だからなおさら、凄まじくカッコ良い「ス・ト・リ・ッ・パ・-」でした。サビのジュリーのアクションとか、確かにMCのことも影響していたかもしれないけれど、あの「うぉりゃっ!」ってねじ伏せる感じを出せる歌手って、そうそういない。それが出せる曲というのも、そうそう無い。しかも、ジュリー自身作曲を手がけた大ヒット曲。
GRACE姉さんの3連符連打、そして柴山さんの単音が神技でしたよ。柴山さんレベルになると、テンポが速いが故に逆に運指がスラスラいっちゃうことがあるんだろうなぁ、とただ息を飲んで見つめるばかりでした。なんか、「ドクター・ドクター」の光速ヴァージョンみたいなオブリガートが飛び出したり。

「ス・ト・リ・ッ・パ・-」ももちろんそうだけど、最後に「勝手にしやがれ」「ヤマトより愛をこめて」という大ヒット曲が来る構成で本当に良かったなぁ、と。
ジュリーだってやっぱり、この日のアンコール3曲では心乱れている部分はあったはずなんです。でも、最後の大ヒット曲はジュリーにとって通い慣れた道、歌い慣れた曲。完璧に歌います。
そのヴォーカルと楽曲世界に曇り無し!
こうして、ジュリーが自らの大ヒット曲に助けられたことは、今まで何度もあったのかもしれないなぁ・・・先輩方は、そんなシーンを何度も見てきているのかもしれないなぁ、と思いました。「ヤマトより愛をこめて」なんて、いつも以上に声が伸びているくらいでしたしね。
これからも、幾多の大ヒット曲が色々な場所で、色々な形でジュリーを護ってくれることでしょう。


フォーラムから帰宅したその日はなかなか頭の整理もつかなくて、翌朝はジュリーの夢を見たせいか弱気になって(←乙女かよ、という話なんだけど)、その後あれこれ考えて、LIVEの記憶を辿って落ち着いてきまして・・・いや、ジュリーは素晴らしかったじゃないか、最高にカッコ良かったじゃないか、と。
MCのことも、僕自身が新たな気持ちに立ち返れたのは、個人的には良かったのかなぁと感じています。

この機に、「こういうLIVEの見方はもうやめよう!」と決めたこともいくつかあります。
例えば、僕はどうしてもあれこれ理屈で歌なり演奏なりを聴いてしまう傾向があって、特にツアー参加2会場目などは、前もってセットリストの原曲キーを予習して行って、柴山さん達のギターコードのフォームから歌われている曲の移調を探ろうとしていました。
これはもうやめる!
聴き方として素直じゃないし、目の前で本物のプロフェッショナルが歌い演奏しているのに、ド素人が詮索するような態度は失礼だろう、と思って・・・。
どのみち僕には音だけでそれを判断する能力が無いわけですから、勘違いも多いですしね。だったらもっと自然に、身体に向かってくる音にその場その場で反応すべきなんじゃないかなぁ、と。

あとね、これはどうしても書いておきたいのです。
どうやってジュリー達に敬意を表するのか、感謝を伝えるのか・・・それは当然、LIVE中にステージに向かって喋りかけたりすることでは絶対にありません。
もっと当たり前の、大切なことがあったんだ、と僕自身への自戒も含めて今回改めて気づかされました。

MCで、ジュリーの表情と口調が一変して色々な話が始まった時・・・僕はジュリーが今にも「アンコールも、どうせまた出てくるやろ、と思われてる」と言い出すんじゃないかと思って、怖かった・・・身体を縮めていました。
あの日僕は「いくつかの場面」でセットリスト本割が終わった時、「ちょっと疲れたな~」と思って座ってしまいました。アンコールの拍手も、「一応」という感じでしてしまっていたと思う・・・いえ、決して「どうせまた出てくる」なんて乱暴な言葉では考えていなかったけど、結果としては同じなんですよね。
本割の21曲、素晴らしかったです。でも僕は、その素晴らしいパフォーマンスへの感謝の気持ちを表することを怠った。恥じています・・・僕は間違っていました。

もちろん、疲れているだろうのに、お身体がキツイだろうのに、自然にその感謝を表していた先輩方はたくさんいらしゃいます。そうした先輩方は、それを常に、自然になさっています。
でも残念ながらあの日のフォーラムでは、そんな先輩方は少数派でした。そして今「最後にジュリーを傷つけてしまった」と悲しみに沈んでいるのは、そんな先輩方なのですよ。僕の身近にもいらっしゃいます。

「初めてジュリーのLIVEに来られたお客さんも多いんだから、それは仕方ないんじゃない?」という意見もあるかもしれません。でもそうじゃないと僕は思う。
南相馬公演に参加されたみなさまが口々に「素晴らしいお客さんだった」と仰っていました。それは、その素晴らしいお客さんの空気を作り上げたファンの人の思いが、いつにも増して多かった、熱かったということだと思うんですよ。みなさま方が会場の雰囲気をリードし、作り上げてくださったんですよ、と。
素晴らしいパフォーマンスを目の前で見て、近くの席のあちらこちらでジュリー達の熱演への最大の敬意、感謝を込めてステージに拍手を送っている人が大勢いたら、ジュリーのことを初めて観る人だって、「わたしも!」「俺も!」となります。ジュリーのステージには今、それだけの力が間違いなくあるのですから。

敬意と感謝の気持ちをステージに届けることを怠ってしまった僕は結果的に、フォーラムであのような空気を作ってしまった一人だったのではないだろうか、と今思っています。ジュリー達を、そして当たり前にジュリー達に敬意と感謝を届けていらっしゃる素敵な先輩方を、傷つけてしまいました。
でも、「もう取り返しがつかない」とは思っていません。
またジュリーに教えられました。
人は1夜で変われる。そんなひとりひとりの心がけで、世界すら変わることがある。ジュリーのLIVEの空気だって、より当たり前の、素晴らしいものに何度でもこれから変えられる。そうすれば、ジュリーはきっとこれからも歌い続けてくれる。新しいお客さんも取り込んでね。
「声なき声を集めて」って、そういうことではないでしょうか・・・って、あれ?これは「我が窮状」の記事で書こうとしていたことだなぁ。まぁいいか!

僕は今度こそ、敬愛するジュリーと、敬愛する鉄人バンドと、敬愛する先輩方に最大の感謝をもって、お正月LIVEに臨みます。その気持ちを表します。もちろんキチンとしたタイミングで。
信じられますか?もうあと2ヶ月後にはジュリーのお正月LIVEがあるんですよ。違うセットリストで、ジュリーがまた歌ってくれるのです。これほどの全国ツアーを成し遂げた、そのたった2ヶ月後に。

本当は、2011年の『BALLAD AND ROCK'N ROLL』お正月公演でジュリーがステージ全体の構成を変えてきた時に、こうしたことに気がつくべきでした。
遅い・・・鈍いなぁ僕は。


今回は、こんな感じのレポになってしまい申し訳ありません。個人的な考えばかりを偉そうに書いてしまって、ごめんなさいね。次のお正月LIVEのレポは、いつものスタイルにきっと戻ります。
何と言うのかな・・・いつもは「この素晴らしいLIVEに参加できなかった方々に、ジュリー達の熱演の様子をお伝えしたい、残したい」という気持ちが大きく、まぁそれが却って見るも恐ろしい大長文となり果てて、「なかなかすべてを読みきれないよ~」と言われてしまったりもしていますが・・・今回は、「あの場にいらした、素敵な拍手をステージに送ってくださっていたみなさまに」という気持ちの方が大きいんですよね。もちろんそれだけではないけれど。
だから、相変わらず文章も長いけど、いつものレポほどの怒涛の大長編ではないので、全部読んで頂きたいなぁと。そんなふうに思っています。

それともうひとつ。
今回レポを変則的な形にして早く書き終えたのは・・・実は当初、従来通りいやそれ以上にネチネチじっくりと日々加筆していって、11月中旬くらいにレポを完成させ、次の”セットリストを振り返る”シリーズ第1弾「我が窮状」の記事にさらに時間をかけて集中して取り組み、『ジュリー祭り』6周年の12月3日までしばらく更新のお時間を頂くつもりだったのです。
ただ、さすがに能天気な僕も、今回のフォーラムについて書いたレポの後に続けて「我が窮状」の記事執筆というのは、やっぱり精神的にも大変です。
きっと、お読みくださるみなさまもね。

ですから、”セットリストを振り返る”シリーズ第2弾(今回は2曲を採り上げようと決めていました)として予定していた曲の記事を、先に書くことにしました。
心の底から楽しい曲ですよ。
素晴らしかった、感動した、考えさせられた・・・と同時に、最高に楽しかった今年のジュリーの『三年想いよ』全国ツアーを思い出しましょう!というコンセプトも新たに込められたら良いなぁと考えています。仕事が忙しい時期なので、更新までには1週間から10日ほどかかってしまうかもしれませんが・・・。
「今回のセトリでDYNAMITEがまだ記事を書いていない、心底楽しい曲って言うと・・・はは~んアレだな」と、お題が分かっちゃうかたもいらっしゃるかな?

ジュリーファンでいることって、本当に幸せで楽しいことなのですから。
今回のことでちょっと落ち込んでしまっている、と仰るみなさま・・・とりあえず次の記事で僕についてきて!(←ホント偉そう汗)

20141103

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