« 沢田研二 「海に還るべき・だろう」 | トップページ | 沢田研二 「HEY!MR.MONKEY」 »

2014年9月 3日 (水)

THE ORAGES(オレンジズ) 『SCORE→』

released on 2014

Score01

1. L・O・V・E
2. BEAT BEAT BEAT
3. ドンマイ
4. 恋のダイアリー
5. いつでもヒール・ユー
6. チェンジ!
7. KOE
8. 宇宙(ソラ)のルーレット
9. KIseKI
10. プレイボール
11. Hit & Run
12. スパイ
13. レモン
14. すき。
15. レコード・ショップへいこう!

-----------------------

今日は、「これは肌が合う!」と久々に感じた邦楽ロック・バンドのアルバムについて書きます。
ジュリーとは直接は関係ありませんが、僕がジュリーファン、タイガース・ファンとなっていなければ出逢えなかった作品であることは確かですし、現在ピー先生と深い関わりがあるメンバーが2人も在籍しているバンドのアルバム、ということで、『ジュリーをとりまくプロフェッショナル』のカテゴリー記事更新とさせて頂きました。

さて。
ジュリーの『三年想いよ』ツアーよりひと足早く始まった、ピー先生の『瞳みのるエンタテイメント2014~歌うぞ!叩くぞ!奏でるぞ!(+踊るぞ!)』ツアーも、ジュリーのツアー同様にいよいよ後半戦に突入。10月31日のフィナーレ、大田区アプリコ公演に向け順調な再スタートが切られたようです。
もちろん全国のピーファンのみなさまは、各地公演にて参加されることでしょうが、ジュリーファンのみなさま、タイガースファンのみなさまの中で「行こうか、どうしようか」とまだ迷っているかたはいらっしゃいませんか?

ここはひとつ、ヒヨッコのDYNAMITEに騙されたと思って、是非ご参加下さい!

僕はツアー初日の6月13日渋谷さくらホール公演に参加し、LIVEレポートも書いたのですが、本当に素晴らしいステージ、内容ですから。正にエンタテイメントです。
参加前は正直、ピーが2012年に1夜限りで開催したタローとスーパースターとのジョイント・コンサート中野サンプラザ公演での体験のように、熱いピーファン、タイガースファンのみなさまの熱気を感じつつ・・・また今回は「ピーの元に集結した若いバンドメンバーのお手並み拝見」などという今にして思えば不遜過ぎる心構えで、リラックスして楽しんでこようか、などと考えて臨んでいました。
ところが蓋を開けてみれば、他でもない僕自身が熱く燃え上がり、ステージ上の全メンバーに手が痛くなるほどの拍手を送っていた・・・そんなLIVEだったのです。

何故僕はそれほどまでに熱狂できたのか。
もちろん、ピー先生の歌と演奏のめざましい進化があり、「常に新しいことにチャレンジしていく」というその姿勢に普段から積極的に共感を持っていた、ということもあります。ただ、それだけではLIVEレポートであんなに大絶賛はしていませんよ。
何と言っても大きかったのは、ピーを完璧にサポートした二十二世紀バンドの出す音や歌が、バッチリ僕の肌に、音楽嗜好に合ったということです。

特に僕は終演後、二十二世紀バンドの頼れる兄貴分、バンドマスターのJEFFさん(その日最前列という畏れ多い席を頂いたおかげで、JEFFさんについては細かい動きや表情まで本当に良く見えました)に大いに興味を持ちました。
これまで、タローやピーの活動の絡みでお名前だけは知っていたJEFFさん。僕は今回のピーのツアーで初めて、ミュージシャンとしてのJEFFさんを目の当たりにしたわけですが・・・ベースの音はもちろん、前半の「ツイスト・アンド・シャウト」で歌声を披露してくれた時点で既に、「おっ、この人の音楽性は相当に僕の好みだぞ」という感覚があったのです。
必然、普段はどんな活動をしている人なのか知りたいな、と思っていました。

さくらホール公演からしばらく経ってふとそんなことを思い出し、ツアー・パンフレットのメンバー紹介の記述をたよりに検索。
「ふ~ん、オレンジズというバンドがあるのか~」と、あれこれ探していると・・・You Tubeで「L・O・V・E」という楽曲のPVがヒットしました。

な、なにこれ!
ストライク!メチャクチャ好みの曲じゃん!

これは完璧に・・・和製ネオ・モッズ・バンドだ!
日本にこんなカッコ良いバンドがいたのか・・・。

さくらホールのレポで僕はJEFFさんについて、「モッズ系のタテノリ・ビートが得意とお見受けしました。普段ベスパとか乗ってそうな感じ」と、その時の印象を正直に書いたわけな
んですけど、とんでもなかった!「得意」どころか「本物」・・・JEFFさんはREAL MODでした!
しかもオレンジズは、メンバーチャンジを経ながらもう随分長い間活動している(今年が20周年のメモリアルイヤー?)ベテランバンドのようです。完全に勉強不足。全然知らなかったなぁ。
(後註:先輩より、JEFFさんの以前のバンド、シャムロックというバンドが完全にモッズだった、という情報を得ました。ありがとうございます!)

幾多の洋楽ネオ・モッズ・バンド・・・僕はその台頭から随分遅れて(10年くらいかな・・・)ようやく彼等の音楽の魅力にハマったのですが、オレンジズの「L・O・V・E」にはそんな僕の好きなバンド達のエッセンスがギュッと凝縮されているように感じられました。
元々僕の場合は、「まだ僕の知らない”ビートルズライク”なバンドはいないかなぁ?」とCD店を歩き回って、ジェットセットというバンドに出逢ったことからネオ・モッズの世界に入っています。ジェットセットが所属するタンジェリン・レコードのコンピレーションを聴き、ダイレクト・ヒッツやスクワイアを知り、そこからさらに広がってシークレット・アフェアー、コーズ等を知っていくという・・・本格的なMODの方々からすれば、「なにそのメチャクチャな順番」と(汗)。
大体、ザ・フーについては代表作アルバムしか知らず、キンクスをすべて聴いている、という時点で僕はモッズ・フォロワーとしては少数派なのかもしれませんが。

ネオ・モッズというのは、まぁ細かくカテゴライズしようとするとパンクとの関わりなど色々あるんですけど、簡単に言えば、1979年に起こった「モッズ回帰」のムーヴメント。映画『さらば青春の光』の大ヒットがその起点とされています。
大元である「モッズ」は一般的には60年代のビート・ロックで、先述のザ・フー(アルバム『四重人格』が映画『さらば青春の光』の原題、モチーフとなっています)やキンクスが代表格とされますが、ネオ・モッズはビートルズやストーンズなどのエッセンスも含めて、「やっぱり60年代のバンドスタイルが最高なんだ!」とシンプルに(と言ってもその手管は一筋縄ではいかない)「肯定」的なロック&ポップスを追求、ハッピーかつヤンチャなティーンエイジの雰囲気を以ってそのジャンルを確立させました。

これ、日本では結局GSがやっていたことなんですよ。
GSの場合は、60年代の海の向こうのビート・ロック&ポップスをタイムリーで吸収しようとして、結果数年遅れのタイムラグで追いかけるところからスタートしたわけで、時代は違えど、ネオ・モッズは10数年経ってからそんな60年代の音やスタイルに回帰しようとしたムーヴメントでした。
ですから、僕が「ネオ・モッズ」なんていう一般的には聞き慣れない言葉を振りかざし、みなさまが知らないバンド名を書き連ねているからといって、これを読んでくださっているタイガース・ファンの方々は、ことさら構えなくとも大丈夫。みなさまはGSを通して、「ネオ・モッズ」のエッセンスを既にお持ちなのです。
バンドメンバーが揃いの衣装を着て、曲に合わせてキメの振り付けをやって・・・「L・O・V・E」のPVをご覧になったみなさまは「あら、なんだか懐かしい感じ」と思われたのではないですか?
ネオ・モッズってそういう音楽だ、とひとまずは考えて頂いて差し支えないと思います。

ただ、GSから10年以上後のネオ・モッズ・ムーヴメントに加えられているのは、「ロック」というジャンル、定義そのものの純粋な復活。これが大きい。
70年代に入って、ロックも色々と難しいことを歌い始め、否定や厭世の概念が芸術性を高めていったことは良しとしても、このままでは「肯定」のメッセージがすべて産業ロックに牛耳られてしまうぞ、というタイミングで一躍ネオ・モッズが立ち上がった・・・僕はそう捉えています。そのあたりの当時の空気感は、シークレット・アフェアーのファースト・アルバムに寄せられた加藤ひさしさんのライナー(僕の手元のCD盤のライナーで、レコードのそれとは同一ではなさそう)を読めばよく分かります。

さて、JEFFさん率いる「現代のネオ・モッズ・バンド」オレンジズに俄然興味を抱いた僕は、リリースされたばかりだという彼等の最新アルバム『SCORE→』を早速購入。
ジャケットのタイトル・ロゴを見ただけで、このアルバムでバンドがどんな音楽を目指しているのか分かる人には分かろうというもの(矢印が重要!)です。

二十二世紀バンドではベースを担当しているJEFFさんは、「L・O・V・E」のPVで事前に分かっていた通り、オレンジズにおいてはリード・ヴォーカル&サイド・ギターを担当。バンドの完全なフロントマンなのです。

僕はこの『SCORE→』を聴くことにより、多才なJEFFさんの3つの「顔」を知るに至りました。
それは

① バンドの土台を担う、ゴキゲンなベーシスト
② いかにもロックバンドらしいリード・ヴォーカリスト
③ 素晴らしくマニアックで、才能溢れる作曲家

①については二十二世紀バンドで生のLIVEを体感しました(②も少しだけ)。また、先にお名前を挙げた加藤ひさしさん(ジュリーファンのみなさまには、「生きてる実感」「PLANET」の作曲者と言えば「あぁ!」と手を打って頂けるかと)率いる和製モッズとして名高いザ・コレクターズ(実はこれまでキチンと聴いたことなかった汗。これから勉強します。でも、加藤さんの携わったキンクス関連本はほぼ読んでます!)で、JEFFさんはベーシストとして名を連ね活躍されているようです。

僕が今回『SCORE→』で新たに知ったのは、JEFFさんの②と③の「顔」。特に・・・バンド・サウンドやヴォーカルが好みに合うだけではなく、その作曲センスには驚きました。本当に素晴らしい才能です。

目眩く「ねじれポップ」職人。
変態転調の鬼!

アルバム収録全15曲のうち、12曲がJEFFさんの作詞・作曲作品でした(「ねじれ」や「変態」というのは、ロック界では最高の褒め言葉です。念のため)。
その変態性にもかかわらず耳馴染みは最高にポップ、という作曲の才能は、ほとんどレイ・デイヴィスとかアンディ・パートリッジ並みのレベル(アンディ・パートリッジ率いるXTCも、ファーストに限っては実は志したのはモッズ回帰と同じじゃないかと僕は踏んでいます。マートン・パーカスと似た曲が多過ぎるぞ!いや、どっちが先とか後とか言うより、目指したところが同じなのではないかと)ではないですか!

さらに、PVを観た時点では見逃していたんですけど、CDのメンバー・クレジットを見てビックリ。
オレンジズのリード・ギターはNELOさん(二十二世紀バンドのギタリスト)だったのです。
こんなに自分の嗜好に合うバンドから2人ものメンバーが参加しているんじゃ、僕が二十二世紀バンドの音に肌が合ったのもごく当然のことだったわけで。

Score02


↑ 左端がJEFFさんで、右端がNELOさんです。

本当はこのアルバムをご紹介するには、「とても良い曲がたくさん入っている、最高にポップなバンドの名盤」とだけ言えばそれで良いのです。
でもここでは、「大長文ブログ」らしく(最近、記事が長すぎて最後まで読めない、というお話をよく聞く汗)あれこれ書かせてくださいね。

収録曲すべて気に入りましたが、「特にどれか1曲」と問われたら、挙げるのはやはり1曲目「L・O・V・E」。
ヴァースごとに目まぐるしく繰り返される転調や、3分に満たない演奏時間まで含めて、完璧なポップ・ロック・チューンだと思います。
いや~、初めてYou Tubeで聴いた時は衝撃だったなぁ。イントロ始まって4小節目でもう転調するんだもの。その転調を受けて最高に突き抜けたベース・ラインが噛んできて、歌メロが始まって・・・最初から最後まで気を抜くところがありません。
「L・O・V・E~♪」から始まるキャッチーなAメロは、何と3小節+4小節で回しているんですよね。そんな変則構成なのに、難しい曲には全然聴こえない、むしろストレートな直球に聴こえるという・・・その秘密は「pa,pa,pa,la♪」のコーラスでしょう。このコーラスの噛みどころがこの曲最大の肝!

次に好きなのは、14曲目「すき。」・・・これはサイケデリック・バラードですよ~。名曲!
実は、アルバム収録全15曲の中で純粋に「バラード」と呼べるのはこの曲のみ(広く考えれば9曲目「KIseKI」もバラードと言えますが)。最初からず~っとビート系でカッ飛ばしてきて、アルバムのラス前に突如バラードを配する曲並びはニクいですね。
何と言ってもエンディングにしか登場しない「大サビ」の印象が強烈。また、Bメロの転調が本当にキレイで・・・JEFFさん、いいメロディー作るなぁ、と。
演奏では、左サイドのキーボードの音色と刻みがビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」だったり・・・細かいところまで趣味性の高いバンドのセンスが溢れています。大サビで噛んでくるNELOさんの武骨なリード・ギターも、このバラードにピッタリ合ってる。
あと、これは詞がとても素敵なのです。フレーズはシンプルだけど、途方もなくピュアな感じ。きっとJEFFさんの真っ正直な言葉なんだろうなぁ。
一番好きなのは、「楽しさくらべたり 悲しさくらべたり 自分の気持ちさえあればそれでいいのにね♪」と歌う箇所。恋をした時には特に、「人と自分を比べてしまう」人間らしい苦悩ってありますよね。JEFFさんの歌は、美しくも凝ったメロディーに違和感なく載せられた言葉で、そんな苦悩を優しく和らげてくれます。

個人的好みの3番手は11曲目「Hit & Run」。初めて聴いた時には、ト長調とイ長調のヴァースが入れ替わる変態転調構成にただただ圧倒されるばかりでした。
Aメロが6小節区切りで2回し目に移行するスピード感。これ、ありきたりのバンドなら8小節で回すところで、細かいながらも重要な工夫なのです。
また、球場応援っぽいフレーズのブレイク部では、何と7拍子のアイデアが導入されています。
こうした細部にまで気の利いた斬新な構成、アレンジは、オレンジズが元々持っていたものなのか、それとも長年かけて編み出されたバンドの進化の表れなのか・・・僕はまだこの『SCORE→』が彼等の通算何枚目のアルバムであるかすら把握していません。1枚ずつ新しいアルバムから遡って聴いていこうかなぁと考えてはいますが・・・オレンジズに詳しい方がこの記事を読んでくださっていたら、おススメのアルバムを伺ってみたいところです。

2曲目「BEAT BEAT BEAT」もポップなメロディーを擁する名曲。でもそれだけじゃないんだなぁ。
サビメロと同じ進行のイントロ・・・普通に作曲するなら歌い出しのコードはイントロをそのまま受けて「D」であるべきところ、瞬時に「F」に移行しています。それぞれ最高にポップなメロディーなのに、ヴァースによってキーが違う、というのがJEFFさん得意の作曲手法のようですね。
リード・ギターとベースのアンサンブルでメロディアスなリフを聴かせるアレンジが、いかにもネオ・モッズです。
そして、エンディングの3連符に思わずニヤリ。JEFFさんほどの人が、ダイレクト・ヒッツの「Modesty Blaise」を知らないはずがありませんから。このアレンジはおそらく作曲段階から狙っていたはずです。

恋の歌、というだけでなく、JEFFさんが音楽仲間やバンドのファンにまで対象を拡げたメッセージ・ソングとも言うべき5曲目「いつでもヒール・ユー」も、カッコ良いリフが印象的な曲。
16ビートのファンキーなカッティング・リフがこの曲の肝なんですが、イントロのそれと、ポップなサビ部が終わった直後の着地地点のそれとでは、演奏フレーズはまったく同じなのにキーが異なる、という「引っかけ」があります(イントロは「E」でサビ直後は「C#」)。
2番の歌メロで何事もなかったかのように「E」に舞い戻る瞬間がスリリング!

このように”変態転調の鬼”であるJEFFさん、ニクイのはアルバム最後の最後の15曲目に、調号変化が登場しないストレートなロック・チューンを持ってきたこと。「レコード・ショップへ行こう!」・・・これまた痛快な名曲です。転調が無い、というだけでメチャクチャ新鮮に聴こえるぞ~(普通は逆です)。
僕も一応レコード世代ですから(ネオ・モッズのバンド達を知ったのはCD時代になった後でしたが・・・)、「帯は捨てんじゃないぜ♪」「指紋つけんじゃないぜ♪」といった歌詞には、「うんうん!」とうなずいてしまいます。
印象的なギター・リフを前面に押し出した構成に、僕はジュリーの「Good good day」を連想しました。

変態変態と人聞きの悪いことを言いまくって、とても失礼なようですが・・・JEFFさんならそれも、「褒め言葉として、ありがたくいただきま~す♪」と言ってくれるはず。
そんな内容の歌詞で、「人の言うことを何でも前向きに考えてみよう」というメッセージ・・・気の持ちようで「歴史まで変えてやるぜ」と「今」を謳歌するビート・ポップス(これぞネオ・モッズの心意気!)が、8曲目「宇宙(ソラ)のルーレット」。
きっとLIVEでは、お客さんが揃っての「ヘイ!」というレスポンスがあるんだろうなぁ。

コール&レスポンスと言えば、ライヴバンドの持つ最強の武器のひとつ。その点で収録曲中最も強力なのが7曲目の「KOE」でしょう。
しかも、「君の声聞かせて♪」とJEFFさんのヴォーカルがお客さんにレスポンスを要求する拍のタイミングが、ビートルズの「イット・ウォント・ビー・ロング」のような感じになっているんですね。
こういう隠しアイデアは、聴いていて本当に盛り上がります。もちろんお客さんはビートルズの曲を知らなくても簡単にレスポンスはできるんですけど、作曲時のJEFFさんのいかにもロック・マニア的な、「これ、ネタ分かる人いるよね?」という遊び心が嬉しいのです。
さらに、途中で演奏が消えてヴォーカルとコーラスが残される構成・・・これはシークレット・アフェアーの看板ナンバー「Time For Action」の狙いと通じるものがあるんじゃないかな。聴き手のエネルギーを取り込もう、巻き込んでいこう、という。
「KOE」=「Time For Yeah!」ということですね。

他、JEFFさんの作品は3曲目「ドンマイ」(間奏の転調の着地を受けて、サビメロを微妙に変化させているのが好き)、4曲目「恋のダイアリー」(ハードな導入部&エンディングと、ゴキゲンなシャッフル・ポップスの主メロの対比が素晴らしい)、9曲目「KIseKI」(NELOさんのカノン風の間奏リード・ギター部で、左右に配された囁き声のコーラス?が効果的な優しいテンポのポップチューン)、12曲目「スパイ」(ちょっとアブナくてキュートな歌詞と、ハード・ロカビリーな曲調との組み合わせが見事)・・・どれもJEFFさんのセンス漲るアイデアに富んだ、聴き応えのあるナンバーです。

残る3曲は、他の3人のメンバーがそれぞれ1曲ずつ作詞・作曲を担当しています。
6曲目「チェンジ!」はいかにもベーシスト好みのランニング・フレーズを採り入れたROBINさん作の軽快なナンバー。メロディーもキャッチーで、サビで登場するファルセット・ヴォーカルが印象に残ります。

NELOさんの作品である10曲目「プレイボール」は、ピーのツアーでの二十二世紀バンドで観たNELOさんの哀愁のあるヴォーカル(「朝日のあたる家」「僕のマリー」を担当)の印象とはまた違った、コミカル・タッチのシャッフル・ナンバー。次曲、同じ野球ネタ・タイトルの「Hit & Run」へ続くという曲並びが楽しいです。
13曲目「レモン」はドラムスのMALさんの作品ですが、これがまた面白い!ドラマーという普段和音に縛られていない人の作曲の為せる技なのかな・・・独創的なメロディー(特にAメロの語尾が斬新)を擁したサイケデリック・ナンバーです。その独特なサイケ解釈は、スクワイアの名曲「No Time
Tomorrow」を彷彿とさせます。

と・・・まぁ転調のこととかモッズのこととか、ちょっとマニアックな話をたくさん書いてきましたけど、とにかく最高にポップ!というのがこのアルバム最大の魅力。
何も難しいことを考えずとも、モッズを知らなくとも、「バンド好き」な人であれば最初から最後まで楽しく聴き通せる名盤です。
ただ僕は、凄くセンスの良い凝った楽曲が並んでいるんですよ、ということをせっかくですからここで書いておきたかったのでした・・・。

まずはみなさま、一度は今回のピー先生のツアーに参加してみてください。そして、二十二世紀バンドの音に興味を持ったら、JEFFさんとNELOさんがいるオレンジズのアルバム『SCORE→』も、この機に是非聴いてみて!
初日のさくらホールでは確認できなかったけど、たぶん会場販売もしてるんじゃないかなぁ。


(追記:オレンジズについて色々検索していたら、ドラゴンゲート(ジュリーファンにはお馴染み、新井健一郎選手が所属しているプロレス団体)について熱い文章を書いていらっしゃるブログさんを発見。JEFFさんのお友達みたいだけど・・・僕もドラゲー大好きなので、ちょっと気になっています)


さて・・・ジュリーの『三年想いよ』ツアーは九州シリーズの第1弾も大成功に終わったようで、いよいよ週末には渋谷公会堂2daysですね。
今年は後半戦からのセットリストの差し替えは無いのでしょうか。もしあるとすれば5日の渋谷公演から、という可能性も考えられますが・・・。

僕は渋谷2daysには参加できませんが、6日に急遽YOKO君の参加可能性が濃厚となっています。
実現すれば、彼にとっては初の同ツアー複数回参加となります。会場で彼を見かけたら、暖かく迎えてあげてください。ただ、前日5日の公演で万一セトリ変更があっても、そこは黙っていてあげてね~。

僕は、みなさまの渋谷のご感想を楽しみに拝見しながら次のお題を考え、神戸遠征前にもう1曲だけ何か考察記事を書こうと思っています!

|

« 沢田研二 「海に還るべき・だろう」 | トップページ | 沢田研二 「HEY!MR.MONKEY」 »

ジュリーをとりまくプロフェッショナル」カテゴリの記事

コメント

DY様

僕の中ではザ・タイガースやジュリーの音楽は、
青春の思い出的な立ち位置なので、
今の音は聴かないのですが、
DYさんの力の入れようが尋常ではないので、
これはオレンジズを聴いてみようかと思い始めています。

職場では自由奔放の僕でも、さすがに音は出せないので、
帰宅したら聴いてみますね。

投稿: YOU | 2014年9月 5日 (金) 13時48分

YOU様

ありがとうございます!

僕はビートルズからロックを聴き始めたせいか、演奏時間が2分台、3分台の曲が目一杯つめこまれているアルバム、というだけで、まず惹かれるものがあります。

60年代ロックのエッセンス溢れるオレンジズの曲は、当然ながらGSをも思わせるものがあり、タイガースファンが聴いて心地よい音だと思いますよ。

あの「美しき愛の掟」をベースを弾きながら歌う、という離れ業をやってのけたJEFFさん…やはり只者ではありませんでした。
是非!

投稿: DYNAMITE | 2014年9月 5日 (金) 18時27分

DYさま

いつもいつもピー先生に温かい言葉をありがとうございます。
またジェフさんとネロさんのバンドも取り上げてくださり、うれしいです。

ジェフさんもネロさんも
勿論他の22世紀バンドのメンバー、みな
張り切って愉しんで、アットホームな中、ツアーが行われています。
皆さん、餃子お好きらしい^^
さすがピー先生譲り~

メンバーとピー先生のアイ(愛)コンタクトを毎回見るのがとても楽しみです。

タイガースからどんどん輪が広がっていきますね。
これからもどんな展開になるのか、タイガースファミリーがどんどん増えて
ますます「老後」が愉しみないなってきた私です^^;

投稿: snowdrop | 2014年9月 5日 (金) 21時02分

DY様 こんばんは。
PV見ました。
もろ正統派ノーテンキGS(笑)
いろいろ言われましたが、GSは日本の音楽シーンを大きく変えたと思います。
それまで、歌手の地方興行には、その土地の生バンド、舞台をおぜん立てし、チケットをさばく興行師が最低必要でした、何しろ情報誌もネットもカラオケもなかったんですから。
むろんお気に入りのバンドマンを指名して連れて行ける歌手などごく限られていたはずです。
GSブームが去ってソロになっても「自分のためのバンドでなきゃイヤ」と突っぱねたジュリーの真剣なわがままがその後の個性的なバンドの数々を生みだすベースになったと思ってます。

投稿: nekomodoki | 2014年9月 5日 (金) 21時15分

snoedrop様

ありがとうございます!

二十二世紀バンドには、昔ながらの「バンド」の良さがありますね。ピー先生という完全なフロントマンがいる…そうした形の方が現代においては「バンドらしい」バンドが生まれるものなのかもしれません。

仰る通りで、タイガースからの広がり...それがピー先生によって今進んでいますね。お芝居をされることもそうでしょうし、僕にとってはやっぱり「バンド」であり「新曲」であります。今年はピーの新曲のリリースが無かったのが少し残念でしたが、来年はどうでしょう?

nekomodoki様

ありがとうございます!

ある意味GSの王道、を感じましたでしょ~?
こういう「肯定的」メッセージがロック界で危機に瀕していた(産業ロック専門メッセージのようになりつつあった)時に起こったモッズ・ムーヴメント。オレンジズはそれを最も純な形で現代に引き継いでいるバンドのように思えます。
アルバムのどの曲もノ~テンキな魅力、ありますよ!

考えて見れば、ジュリーもずっと「バンドマン」なんですよね。ロック志向と言うよりは「ロックバンド志向」なのかな。
「LIVEが好き」とはそういうことですからね~。

投稿: DYNAMITE | 2014年9月 7日 (日) 17時26分

DYさま

バンドらしいバンド、という言葉をありがとうございます。

実は知人が金曜日に、J様渋谷に行きました。
奥さまにお付き合いしたそうで、J様の歌に圧巻され、ファンの皆様の手拍子などにも驚かれていましたが
J様の知っている曲がほとんどなく・・・

瞳先生のライブにも足を運んでくださった方なのですが、こっちはタイガースだらけ^^
知った歌ばっかりで楽しかったって^^;

瞳先生はプロ中のプロのJ様とは違い、ご自身のやりたいことをすることで
アットホームの中、みんなが楽しく心温かく過ごせれば
それでいいのだな、って思っています。

是非、J様ファンの方々も一度、見ていただけたら、って思います。

投稿: snowdop | 2014年9月 7日 (日) 20時02分

snowdrop様

ありがとうございます!

実は僕は今回のピー先生のツアーに、参加前に予想していた「アットホーム」な雰囲気を感じず、スリリングなステージに感動したのです。参加が初日だけなのでそう思ったのでしょうか…。
とにかく二十二世紀バンドのメンバーが歯をくいしばり純粋に「全力」を注ぐ姿…そこに感激し、それがピー先生自身の進化に大きな力をもたらしていた、そんなライブだと思いました。
ですから僕の場合は、「アットホーム」ではないピーと二十二世紀バンドの気迫のステージを観て欲しいなぁ、という気持ちでジュリーファンの方々にも是非、とお勧めしています。
これは僕の個人的な感想かもしれませんが…若いメンバーの身を投げ打つような必死の演奏、取り組みが素晴らしい、という面があるツアーだと考えています。
もちろんその上で彼らの雰囲気が和やかで、和気藹々の雰囲気なのはフロントマンのピー先生の力であることは当然ですね。

いずれにしてましても、参加を迷っていらっしゃるジュリーファン、タイガースファンのみなさまに是非体感して頂きたい、という気持ちです!

投稿: DYNAMITE | 2014年9月 8日 (月) 16時34分

お久しぶりです、Dy 様。
私も5日の渋公に参加致しました。1階中段カズさん側の通路際のお席で、弾けるにはありがたいお席でしたわ。
お隣のご夫妻は、私のお隣の奥様がファンでパートナーを引っ張って来られたのかと思い、伺ってみましたら、これがパートナーに奥様がお供されて、今では仲良くご参加のバターン。
で、もうかなりの長きに渡っておられるとのこと。Julie より1つ年長の「団塊世代」
のお二人でしたが、手拍子やら腕振り上げ等お見事なオーディエンス振りには、ちょっと脱帽致しました。
通路の斜め前辺りには、他ブログ~きんぴらさんのには、お写真等作者情報あり~今回ture でのMC 時にお召しのステージ衣装のJulie 人形とご一緒に参加されたファンの方がいらっしゃり、開演前にはかなりの写真会状態でした。私は、そんな場面を拝見するだけ。勇気が足りず、写メは諦めました。(*_*)
席が違うJ 友か石川県から連チャン参加~と終演後に祝杯を上げましたが、彼女の前の席にサリー他3名が、お行儀よく並んで楽しんでおられたとのこと。翌日のMC で、Julie が嬉しそうにサリーと日本酒&お寿司の宴を持たれたことを、嬉しそうにファンにご報告されちゃったの、とJ 友から嬉し気なメールもありました♪

6日には、現渋公のラスト10/2.3.4.の3連チャンlive で締めると云う方向で調整中とのお話しもあり、嬉しい限りですね。チケットについては・・・熾烈…でしょうね、多分。

最後に、渋谷東急ハンズ前にHMVの中古専門店がオーブンしまして、Julie 渋公live に併せてプチコーナーが作られており、開演前にJ 友さんと訪れました。
スタッフ♀が大変フレンドリーで、コーナーを囲み写メ迄撮って戴きました。
で、私76.8の「For Ever」と云う新録音豪華写真・楽譜付き2枚組LP~基本ベスト盤は買わないタイプです~をゲット。J 友さんは「悪魔のようなあいつ」のシングル盤をゲットしました。(*´-`)

で、昨日は本を取りに、渋谷のジュンク堂書店に行きましたら、音楽関連書籍棚で、「パブ・ロックについて」~題名はちょっと怪しい~と云うパブ・ロックとは?と云う処から始まり、歴史や音楽史の中の立ち位地、Band やCD 紹介等盛り沢山の本を見つけました。出版元は、「Rock Jet」と同じシンコー・ミュージック。
まだ買ってませんが、ザーっと斜め読みしました。初心者だとしても解りやすい構成ですから、ピーのsupport band の音楽的なベースの1つがパブ・ロックなので、お求めになっても損はしない一冊です。
ただし、所謂「洋楽」を扱った本にありがちなのですが、日本への影響やらこちらのミュージシャンとの関わりやら音源等には殆ど触れていないこと。資料としてグローバルな視点が足りないことが、残念ですわ。
唯一が、佐野元春への巻頭インタビューだったので。
確かに名盤「ナポレオン・フィッシュ」はパブ・ロックを意識して、ロンドンで録音してますからね。
私はどちらもファンなので、佐野君を取り上げたんならJulie を取り上げなぁー、アカンてぇ、と一言云いたくなってしまうのですわ。

まぁ、長年の音楽業界的カテゴリー分けと云うか、本当に俯瞰して見たり研究したりしている「評論家」や「音楽史家」やら「研究者」っていないんでしょうか?
今の処、私が参考に出来る人は、この40年間で両手の指で足りちゃってます。

だから、Dy 様に期待してますのよ。
今回の「伝授」で、又Dy 様の好きな音楽傾向が解り、楽しみが増えました。
頑張らないで、頑張って下さいませね。(’-’*)♪

投稿: Lchia | 2014年9月 8日 (月) 21時40分

Lchia様

ありがとうございます!

ご紹介の本は、結構古いものでしょうか。僕、似たようなタイトルの本を大学時代に買って読んだ記憶があります。いつの間にか何処かへ行ってしまいましたが…。
僕は20代からジュリー堕ちまでの長きに渡って、パブロック命!だったんですよ~。
佐野さんの『ナポレオンフィッシュ~』には何故だか嫉妬しちゃったり「いいなぁ、もの凄いメンバーと一緒にレコーディングしてる~」と。

そんな僕ですら、パブロックが最も輝いていた時期に、「あの沢田研二が」ビリー・ブレムナー、ポール・キャラックというパブロックの名手をゲストに迎えてアルバムをリリースしていることは全く知らずにいました。
ですから、Lchia様の「ジュリーを取り上げなぁアカンてぇ」は、まったく仰る通りです!
ホント、日本のパブロックファンにはジュリーとの関わりが知られていませんからね…。

ちなみに僕のそんな「知るのが遅すぎた」衝撃の事実については、以前「DIRTY WORK」の記事にて詳しく書かせて頂いております~。

投稿: DYNAMITE | 2014年9月 9日 (火) 17時08分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: THE ORAGES(オレンジズ) 『SCORE→』:

« 沢田研二 「海に還るべき・だろう」 | トップページ | 沢田研二 「HEY!MR.MONKEY」 »