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2014年8月

2014年8月30日 (土)

沢田研二 「海に還るべき・だろう」

from『耒タルベキ素敵』、2000

Kitarubeki

disc-1
1. A・C・B
2. ねじれた祈り
3. 世紀の片恋
4. アルシオネ
5. ベンチャー・サーフ
6. ブルーバード ブルーバード
7. 月からの秋波
8. 遠い夜明け
9. 猛毒の蜜
10. 確信
11. マッサラ
12. 無事でありますよう
disc-2
1. 君のキレイのために
2. everyday Joe
3. キューバな女
4. 凡庸がいいな
5. あなたでよかった
6. ゼロになれ
7. 孤高のピアニスト
8. 生きてる実感
9. この空を見てたら
10. 海に還るべき・だろう
11. 耒タルベキ素敵

-----------------------

都心では、先週の酷暑の日々と比べると今週はいきなり涼しくなってきまして、「肌寒いな」とすら思う日もありましたが・・・みなさまお変わりありませんか?

とにかく今週は、続けざまに飛び込んでくる各地の大雨被害のニュース・・・特に広島の大変深刻な土砂災害の様子が伝えられるたびに、胸が痛むばかりです。
本当におかしい、ここ数年の気象は・・・。
「記録的な」とか「何十年に一度の」という表現を最近の報道でよく聞くけれど、実はもうそれが普通になってきてしまってるんじゃないか、と考えるとゾッとします。地球が苦しんでいるんじゃないか、怒っているんじゃないか、とお感じのかたも多いのではないでしょうか。

日本だけでなく、世界中で今・・・現実に進行している戦禍の恐怖、酷いニュースが毎日流れてきて、ほんの数年前まで「なんとかしなきゃ」と皆が考えていた地球温暖化対策、CO2削減の話や情報は「それどころじゃない」と隅に追いやられ、ほとんど目に入ってこないように思われます。
平穏だから考えられることがある、平和だから皆で頑張れることがある・・・そんな当たり前の日常が今はないがしろにされ、僕ら地球上の生き物達は、ハッキリと大きな危機に瀕している、そう感じられてなりません。

今日は、このところ続けていた「夏」をテーマにお題を採り上げるシリーズの締めくくり。
本当は、ここ2年の全国ツアーでジュリーが採用している、「前半・後半でのセットリストの1曲差し替え」のスタイルを受けて、「もし今年も差し替えがあるなら、僕はこの曲に淡い期待を持っています」という主旨で、夏の終わりにふさわしいお題「渚のラブレター」の記事を予定していました。今年はこの曲に関して伊藤銀次さんやスージー鈴木さんのラジオでのお話があったりして、タイムリーな考証ネタもあり、僕なりにシングルとアルバムのヴァージョン比較などを掘り下げてみようかなぁ、と考えていたのです。

でも、急遽お題を変更します。

個人的には、この先ジュリーがLIVEで歌う可能性はかなり低くなっている曲かとは思いますが・・・平穏な、当たり前の日常あればこそ、考えなければならない普遍のテーマを擁した、曲想的にはこれもまた「夏」らしいナンバーだと思います。

アルバム『耒タルベキ素敵』から。
ジュリーは2000年の時点で、こんなメッセージ・ソングをリリースしてくれていたんですね。
「海に還るべき・だろう」伝授です!

まずは、何故僕がこの曲に「夏」を感じるのか、ということから語っていきましょう。
前回執筆の「夜の翼」は、『JULIEⅥ~ある青春』という収録アルバムそのものからして夏を感じる、と書いたんですけど、考察でも触れた通り、情熱的なラテン・ビートが「夏」のイメージを大きくしているんですね。
もちろん、「夏」っぽいロック・ナンバーのリズムと言うと、ラテン・ビート以外にもまだまだあります。ゴキゲンなルンバ調のロックンロール(例「想い出のアニー・ローリー」)、波音が聴こえてきそうなマリン・サウンド(例「A WONDERFUL TIME」)、そして・・・裏ノリ・カッティングの陽気なレゲエ・ビート。
レゲエは、暑い国のリズムということですね。

ジュリー40数年のキャリアでリリースされてきた膨大な名曲群・・・その中には、裏ノリのリズムを強調したナンバーも、数多くあります。ちょっと考えただけでも「愛の逃亡者」「バタフライ・ムーン」「How Many "Good-Bye"」「ボンヴォヤージュ」「EDEN」「BACK DOORから」「Beautiful World」、そして「海に還るべき・だろう」。探せば他にもあるでしょう。
無論、これらに「裏ノリのビート」が共通しているからといって、すべてが同タイプの曲とは言えません。どんな歌詞が載っているのか、どんな演奏なのか、ジュリーがどんなふうに歌っているのか、によって違ってきます。
ただ、少なくとも「バタフライ・ムーン」と「海に還るべき・だろう」の2曲は、制作時でのアレンジの狙いも”真夏のレゲエ・ビート”だったのでは、と僕は捉えています。
ひとことで表現するなら、「風通しの良いアレンジ」と言えましょうか。同じ夏でも、日本の夏とはちょっと違った感じですかね。カラッとしています。

また、「海に還るべき・だろう」のアレンジについては、個人的に推測していることがあります。
『ロックジェット Vol.56』の『ザ・タイガースからの贈り物』巻頭特集インタビューの中で、白井良明さんがこんなことを語っていました。

Img0002

『ロックジェット Vol.56』掲載、白井良明インタビューより抜粋

ここで白井さんが触れている、”当初は「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」(ビートルズの代表曲。ジュリーも好きな『ホワイト・アルバム』に収録)をアレンジ・オマージュとしていた「沢田さんのソロ曲」こそ、ズバリ「海に還るべき・だろう」ではないか、と僕は考えているのです。

結局その曲で白井さんはアレンジを練り直したということなんですけど、元の「かわいすぎる」アレンジ・アイデアの名残りはいくつか引き継がれているはず。
「海に還るべき・だろう」にはそれがあって、まず全体的に「ハッピー・ソング」の雰囲気であること。そして、シンセ・ブラスの音色とフレージング。これは「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」に採り入れられているホーン・セクションととてもよく似ています。
元々、「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」も、裏拍に強いアクセントのある曲です。最終的に白井さんが裏ノリのレゲエ・ビートへとアレンジ変貌させた過程も、自然なアイデアとして容易に想像できるのです。

推測の理由はもうひとつ。
この曲がジュリーの作詞・作曲作品だということです。他の人の作曲作品であれば、ジュリーも作曲者への敬意と配慮から、「そのアレンジはちょっと・・・」とは強く言わないような気がするんですよ。自作曲であればこそ、「少しイメージ違うんだけど・・・」という話が出てきたんじゃないかなぁ。

まぁ、これはあくまで個人的な推測ですから、真実はジュリーや白井さん達レコーディング・スタッフしか知りえないことなんですけどね・・・。

それでは、「海に還るべき・だろう」に込められたジュリーのメッセージについて考えてみましょう。
僕は先に「この曲は今後LIVEで歌われる可能性は低いと思う」といったことを書いたのですが、それはやはり「海に還る」という歌詞表現が、3・11の被災地の方々の辛い記憶を呼び起こし、心を痛めてしまうことがあり得るんじゃないか、と考えるからです。
ただ、ジュリーが同じように考えているかどうかは当然ですが分かりません。
そう、この曲でジュリーが「海に還るべき・だろう」と歌ったのは、悲しい意味を持つものでは全くなく、明るく前向きな「提案」であることが明白です。

月に行くなんて とても行けない
   C                                   E7

すごいなと思うけれども ♪
   F             Dm       G

冒頭でこう歌われるように、ジュリーは「宇宙への憧れ」を完全否定しているわけではないようです。ただ、宇宙開発の動機であったり、意図であったり・・・そこにキナ臭さを感じた時、「地に足をつけて考えれば、他にやること、あるだろう?」という違和感なのでしょう。
ジュリーのメッセージは、いたってシンプル。つまり
「競って宇宙に行くより、まずこの地球を護らないか?」
ということですよね。

海を見ていると 懐かしいのは
   C                                 E7

遠すぎる記憶なんだよ
F              Dm       G

この星に生まれつき 棲み続けて
   C          F                Dm     E7

分け合おう 護ろう ♪
C       F      G7  C

近年のジュリー自作詞で最も重要なフレーズのひとつである「護る」という言葉が、2000年リリースのこの曲で、既に大きな輝きを放っています。
そして

神秘への旅は 海がいいな
E♭                      G7

海に還るべきなんじゃない どうだろう ♪
A♭7                          D7         G7

「みんな、ちょっと考えてみてよ」
といった「問いかけ」を詞に込める手法は、「我が窮状」や、『PRAY FOR EAST JAPAN』をテーマとした最近の3作品収録曲と変わりありません。

僕は少年時代からSF好きでしたから、「宇宙の神秘」への憧れは強いです。「火星の砂」とかいう言葉を現実のニュースとして聞いただけでワクワクしてしまいます(そういうタイトルのSF小説があるのよ~)。
でも・・・最近の世界各国間の緊迫した状況、ここ数年の異常な気象に直面していると、やっぱりジュリーの言う通りだ、と僕には思えます。

20140810

これは今年8月10日付の『東京新聞』の特報面。
内容はどちらかというと「社説」に近く、適切な表現ではないかもしれませんが「ミスリード」的な部分もあるかな、とちょっと警戒しながら読んだ(見出しの最後に「?」がくっついている記事に警戒心を抱く習性は、『東京スポーツ』のプロレスネタで学びました笑)記事ではあるのだけれど、今現在、実際にこういうことが進行しているのだ、と知っておくのは大事だし、それについての警鐘には個人的に共感も覚えます。

「向こうがやるなら、有事に備えてこっちも対処しておかなくちゃいけない」という考え方は、実は僕は分からなくもない・・・。高飛車な言い様ではなく丁寧に説かれると、理解することはできます。それでも

この地球でさえ 手に余ってる
      C                              E7

違うなと思ってるんだ ♪
F          Dm        G

正に僕もそう思うのです。
(この「違うな」の感覚が、昨今は繰り返し起こってきているから、世に不安を感じているわけで)

しかもジュリーは、2000年の時点でこの「海に還るべき・だろう」というメッセージを残しているのですからね。西暦2000年代を迎え、いよいよこれからは宇宙の時代だ、夢よ希望よと世間が思って浮かれていた時期に、こんな歌を歌っていたというのが・・・本当に凄いですよ。
そのさらに10年後ということになりますか・・・2010年にジュリーが同じテーマを提示した「まほろばの地球」が、差し迫った危機を暗示するかのようなハードな曲想で歌われたのに対し、「海に還るべき・だろう」の時点では、詞も曲も楽しいナンバーとなっています。
当然ながら演奏も楽しい!

こうした裏ノリ・ビートは、腕自慢のドラマーにとっての本懐、「是非演奏したいパターン」だと言われます。無論、技術的にも高度なレベルが要求されます。
CDのこの曲で、左サイドから聴こえるクローズ・ハイハット(二重になったシンバルを閉じた状態で打つ奏法)に注目して下さい。通常のエイト・ビートだと「チッチッチッチッ・・・♪」となるところ、「ん、チッ、ん、チッ、ん、チッ・・・♪」と打つのがこのリズムの肝です。これ、聴いた印象以上に相当難しい演奏パターンなんですよ!
レコーディング音源ではカースケさんがゴキゲンに演奏していますね。

この曲のLIVE映像では、DVD『CROQUEMADAME AND HOTCAKES』に収録されているテイクが個人的にはおススメです。
泰輝さんが不在、依知川さんがベースを弾くキーボードレス・スタイルの演奏なんですけど、とにかくメンバーのテンションが高いですし、柴山さんと下山さんの愉快なお散歩シーンも楽しいです。
そして、GRACE姉さん。この難易度の高いドラムスを叩きながら、重要なコーラス・パートまでを笑顔でこなしてしまうという・・・信じられない神技!

今の鉄人バンドだと、どんな演奏になるかなぁ。演奏パートで唯一表拍をリードするベースの不在をどうするか。泰輝さんがベース、オルガン、シンセブラスの3役をこなすか、それとも下山さんが低音部をカバーするか。
鉄人バンドならばどんなスタイルの曲であれ完璧にアレンジを練って臨めるはずですが、今後生で聴く機会は・・・う~ん、どうだろう?

そうそう、コーラスと言えば、この曲のCD音源ではサリーとタローが参加していますね。
右サイドのサリーの声はハッキリ分かりますけど、僕にはタローのパートが判別できない・・・(汗)。
タイガース・ファンの先輩・YOU様が仰っていました。
「タローのコーラスは決して目立ちませんが、ハーモニーの中の一番難しいパートを、他の誰の声も邪魔しないで歌っているのが本当に凄いんです!」
と。
これもまた、プロフェッショナルなスペシャル・ゲストの仕事なのですね。やっぱり楽しい曲なのですよ。

楽しくて、思わず口ずさんでしまう曲の中に、ハッと考えさせられるようなメッセージが託されている・・・それは良質なポップ・ミュージックの、カッコ良いロック・ナンバーの大切な一面だと思っています。



さて、長引いている夏風邪ですが、火曜に「お、治った」と一瞬思ったのもつかの間、ぶり返してしまい往生しております。喉の痛みが右から左に引っ越したようで・・・熱も出てきた(今はもう下がっています)。
まぁこの気温の急激な変化、あとは仕事が決算期で連日ハードだった、ということもあるでしょう。
9月の神戸公演遠征も近づいてきてちょっと焦っていますが、今はまた『三年想いよ』セットリストのおさらいをしつつ、各地公演参加のみなさまのご感想を楽しみながら過ごしています。
決算も無事終わったし、ゆっくり養生しなければ。


それでは次回更新ですが、ちょっとジュリー・ナンバーから離れたお題を考えています。
久々に、メチャクチャ波長の合う邦楽ロック・バンドと出逢ったので、彼等の最新アルバムをご紹介したいと思っているのです(実は彼等の作品はまだその1枚しか聴けていないのですが汗)。
まぁ、ジュリーとまったく関係なくは無い・・・と言いますか、ジュリー堕ちしていなければ出逢えていなかったバンドであることは間違いないんですけどね。

ヒントは、ピー先生!
よろしくおつき合いくださいませ。


追伸①
8月27日は、我らがギター・ヒーロー、柴山和彦さんの62才のお誕生日でした。
お祝いが遅れましたが、おめでとうございます!ジュリーの66才も当然凄いですけど、柴山さん、あのルックスとあの動きで62才とは・・・信じ難い。
いつまでもジュリーの横で、鉄人バンドのバンドマスターとして、ギターを弾き続けてください。

追伸②
8月26日から、吉田Qさんのオフィシャル・サイトがオープンしています(「吉田Q」の文字をクリックすると、コンテンツが出てきます)。Qさん、早く関東圏でLIVEしてくださいよ~。

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2014年8月24日 (日)

沢田研二 「夜の翼」

from『JULIEⅥ ある青春』、1973

Julie6

1. 朝焼けへの道
2. 胸いっぱいの悲しみ
3. 二人の肖像
4. 居酒屋ブルース
5. 悲しき船乗り
6. 船はインドへ
7. 気になるお前
8. 夕映えの海
9. よみがえる愛
10. 夜の翼
11. ある青春
12. ララバイ・フォー・ユー

---------------------

夏風邪が長引いております。
寝込むところまではいってないんですけど、もう1週間も右の喉が痛い~。
来週は仕事がたてこむので、そろそろ完治して欲しいんですけどね・・・。気候、気温の急変がまだしばらくは続くのでしょうか。みなさまもどうぞお気をつけ下さい。


さて、今日も「夏」をテーマにお題を採り上げます。

みなさまはジュリーのどのアルバムに「夏」のイメージをお持ちですか?
『S/T/R/I/P/P/E/R』『A WONDERFUL TIME』『サーモスタットな夏』・・・僕にとってはこのあたりのアルバムにも大いに夏を感じますが、断トツなのは『JULIEⅥ~ある青春』です。やっぱり、歌詞カードに載ってるジュリーの写真のインパクトのせいかな~。

いや、写真のジュリーはGジャン着てますから、絵だけで「真夏」とは言えません。
ただ、僕がこのアルバムで最も愛している大名曲「船はインドへ」が明白に真夏の歌。そして、歌詞カード掲載の中で最も好きな、船の上のジュリーの写真を僕はまるで「船はインドへ」のPVからのショットのように思っているのです。
必然、あのGジャンのジュリーが「真夏」のジュリーになってしまうという・・・あくまで個人的なイメージなのでしょうかね。

これまでこのブログで僕は何度か、『JULIEⅥ~ある青春』は、『JULIEⅡ』の物語の主人公の少年が成長した後の姿を描いたコンセプト・アルバムのように感じる、と書いてきました。
まだ若いけれど、船乗りとしてひとり立ちしいっぱしの「男」となった逞しい青年。若き情熱を纏ったような、ほど良く耳を隠した長髪、経験を積み自信を得て不敵な表情を浮かべる日焼けした顔。
それは正に『JULIEⅥ~ある青春』歌詞カードの、ジュリーのショットそのものです。

そしてそれは、ソロとして完全にひとり立ちした1973年当時の「歌手」としてのジュリーの状況、心境とも重なっているようです。
充実の1972年を経て、いよいよ「歌で大勝負」と位置づけた年。「危険なふたり」の大ヒット。
しかしジュリーはそこで満足せず「今度(次のシングル曲)は特等賞を狙う!」と公言しました。
勇躍ロンドンに乗り込み、新曲を含むニュー・アルバムをレコーディング。そう、『JULIEⅥ~ある青春』のリリース時期は、73年の夏真っ盛りだったのですね。

今日は、そんな名盤『JULIEⅥ~ある青春』から、仕事に燃える「男」を確立させた歌手ジュリーの、情熱と才気ほとばしるロック・ナンバーをお題に採り上げます。
「夜の翼」、伝授!

曲想、アレンジはモロに「真夏」!
エネルギッシュなラテン・ビートに載ったジュリーのヴォーカルには、ただ圧倒されるばかりです。

ちょっと話は逸れるようですけど、実は僕はトッポの「太陽の目の女の子」という曲(こちらの記事で曲の内容に触れています)を初めて聴いた時、「うわ、ジュリーの「夜の翼」みたいだな~」と思いました。
いや、共通しているのは、ラテン・ビート・アレンジの短調のアップテンポ・ナンバーというただそれだけなんですけど、面白いのは、ジュリーもトッポもこういう曲想になると何故かヴォーカルが一歩前に出る・・・かつての「エヴリバディー・ニーズ・サムバディ」の歌と演奏のように「とにかく魅力的に動き回る」ザ・タイガースの血が騒ぎ滾っているような感じがなんですよ。
二人とも結局根っこは同じなのかな、と・・・。ジュリーがNHK『ソングス』でザ・タイガースについて「根を生やして今も青々とある」と語っていたことがありましたけど、その「根」の部分がジュリーの「夜の翼」やトッポの「太陽の目の女の子」というラテン・ビート・ナンバーのヴォーカルに見えるように僕には思われます。

『JULIEⅥ~ある青春』でのジュリーのヴォーカルに関して言えば、ローリング・ストーンズを彷彿とさせる「気になるお前」は当然として、前半と後半で発声表現を大胆に変える「船はインドへ」、そして官能的なブラス・ロック「夜の翼」・・・これら3曲は、リズム&ブルースの泥臭さやアフター・サイケデリックの退廃美すれすれの美しさなど、「ロック」でしかあり得ない魅力を備えているわけで、この名盤が単なるアイドル・アルバムでないことを明白に裏付けるものです。
ジュリーはこれらの曲では特に、音符を正しく追おうとか、上手く聴かせようとかいった装飾の気持ちは微塵もなく(それでもメロディーは正確だし歌も上手いわけですが)、身体ごと楽曲にぶつかる「無心」を感じられてなりません。
そんな無心の境地でのレコーディングに見られる圧倒的な才のほとばしり、「あぁ、この人は普通じゃない」と凡庸な聴き手をしてそう思わせしめる「歌手」の存在感をこそ、本来「ロック・ヴォーカル」と称えるべきだと僕は考えます。

そして、これら3曲がいずれも加瀬さんの作曲作品である、ということも見逃せません。
ジュリーの持つ「普通ではない」才の開花を一番近くで見てきた加瀬さんだからこそ、ジュリーのロック性を引き出す楽曲を作ることができたのではないでしょうか。
例えば『JULIEⅥ~ある青春』にはもう1曲のブラス・ロック、森田公一さん作曲の「悲しき船乗り」が収録されていますが、ジュリーのヴォーカルは「夜の翼」の方が明らかにテンションが高いです(無論、「悲しき船乗り」も僕は大好きな曲で、「夜の翼」とはまた違った魅力があります。その点についてはまたいずれ記事を書こうと思っています)。

「夜の翼」でのジュリー・ヴォーカル最大の特徴は、語尾に吐息を加えたり、ロングトーンでうねうねと粘る官能表現でしょう(ロングトーンの方は、作曲段階から加瀬さんがそういうメロディーを用意していたのでしょうね)。
僕が一番好きな箇所は、1番の2回し目。

誰れにも じゃまされない ふたりが抱き合う時
Am                                F

白い肌に 赤いバラの くちづけ投げながら ♪
G            Am              B7                    E7

まず、よく聴くとジュリーは「抱き合う時、アッ!」と、吐息で言ってますよね。
そして、「投げなが~らぅあぅあ~♪」のエロティックな粘り。この歌い方は、現在の『三年想いよ』ツアー・セットリストの1曲目「そのキスが欲しい」でも楽しむことができますね。
またこれが、Aメロの「2回し目限定」というのが良いんですよ。1番も2番も、1回し目は「夜の翼ひろげ~ぃえぃえ~」ではなく、単に「ひろげ~~♪」と母音をストレートに伸ばします。
2番の「ひろげ~~♪」は1番と比べると声にドスが効いていて、ド迫力です!

次に、安井かずみさんの作詞について。
まず「夜の翼」というタイトル。これはたぶん、ロバート・シルヴァーバーグというSF作家の同タイトルの代表作からアイデアを得ているんじゃないかなぁ。

実は山下達郎さんにも同タイトルの曲があります(名盤『ムーングロウ』1曲目に収録。作詞は達郎さん自身)。収録アルバムは違いますが達郎さんは他にも「夏への扉」というロバート・A・ハインライン作のSF小説からタイトル・アイデアを得た曲もあり(作詞は吉田美奈子さん)、高校生時からSF好きだった僕は、達郎さんのアルバム2枚を「収録曲タイトル買い」したものでした。
その後、このようなタイトル・アイデアを採り入れた曲が邦楽ロックで様々存在することを知っていきました。ジュリーの「夜の翼」もそうした1編ではないでしょうか。
1973年という安井さんの作詞時期(シルヴァーバーグの原作は1969年の作品ですが、翻訳作品『夜の翼』として日本SF文学界の権威である「星雲賞」海外翻訳長編賞を受賞したのは1972年のことです)を考えても、安井さんが「夜の翼」を読んでいた可能性は高いのでは、と考えられます。

安井さんの描いた「夜の翼」とは、昼間(多数の人前)には決して見せない、特定の異性に対する隠された愛欲の解放・・・でしょうか。

今 夜が燃える 胸を焦がすまで
A7        Dm       G7         C

愛につながれて 飛びたつふたり ♪
A7         Dm          Am  E7      Am

愛することに対する迷い、戸惑いなどは微塵も無い疾走の一人称は、男性視点ながらいかにも女性作詞家さんらしいなぁと感じます。
フレーズ使いにはクールな面もありますが、主人公は徹底した肯定志向で、しかも唯我独尊。「奪う」愛のイメージは逆に言うと「ジュリーのような男に奪って欲しい」という女性の感性があればこそ。
で、やっぱり詞も「夏」!だと思います。変な表現になりますが、この詞を歌っているジュリーに、服を着ているイメージが沸いてこないんですよ(笑)。

さらにこの曲は、ブラス・ロックとラテン・ビートが融合した各楽器の演奏テイクも素晴らしいです。
終始グルーヴするベース。ドラムスは、ヴォーカル導入直前のフィルが「鬼」です。そこへ噛み込んでくる情熱のラテン・パーカッション。
これらリズム隊のベーシック・トラックに、左サイドからワーミーなギター・カッティング、右サイドから美しいオルガンが襲いかかります。
オルガンは、2番のサビ部が特に凄いですよ!
仕上げはホーン・セクション。トランペット2本、トロンボーン1本、サックス2本か、或いはトランペット2本、サックス3本か・・・正確に聴きとれない自分の耳がもどかしい。

情熱の詞曲に、ラテン・ビートとホーン・セクションのアレンジが一体となった「夜の翼」。その楽曲としての素晴らしさをさらに凌駕するジュリーのヴォーカル・・・アルバム『JULIEⅥ~ある青春』の中でも、指折りの完成度を誇る名曲ですね。
唯一、個人的に「惜しいな」と思うのはフェイド・アウトですかね~。こういうタイプの曲は、演奏時間の短さも含めて、ビシッ!と終わった方がゾクゾク感があると思うのですが・・・。例えば、イントロに配されたスリリングなキメのフレーズを最後にもう一度登場させる、とか。
でも、70年代前半のジュリー・ナンバーには、ホーン・セクションのキメで演奏を終える短調のブラス・ロックの印象が強いですから(「許されない愛」など)、差別化の意味でもこれで良かったのかな。最後の最後までジュリーの官能的な声が聴けますしね。


それでは、今日のオマケです!
Mママ様からお預かりしている数々の貴重なお宝資料の中から、『沢田研二がスナップしたパリ・ロンドンの町』という雑誌記事をご紹介しましょう。

511011

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511013

僕はこの記事が何年のものなのかすら分からなかったのですが、先輩にお尋ねしたところ、「73年ですよ」と即答くださいました。
とすれば、正に『JULIEⅥ~ある青春』真っ只中のジュリー、ということになります。
言われてみれば確かにこのGジャンは・・・とは改めて思ったりしたものの、いやぁ驚きましたよ。ジュリーはこの時、ロンドンレコーディングだけでなく、パリにも足を伸ばしていたのですね。タイガース時代からずっとそうだったのでしょうが、ジュリーは一体どれほどタイトなスケジュールをこなしていたのでしょうか。

写真には加瀬さんの姿も見えます(と言うか、ほとんど恋人状態のような)。
現在病気療養中と伝えられる加瀬さんの、1日も早い回復をお祈りします・・・。


さて、次回はおそらく8月最後の更新となりますので、「夏」をテーマにしたお題シリーズの締めくくりですね。気温的には、9月に入ったらいきなり秋、とはなかなかいかないんでしょうけど。
とにかく、風邪を早く治します!

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2014年8月20日 (水)

沢田研二 「太陽のひとりごと」

from『Beautiful World』、1992

Beautifulworld

1. alone
2. SOMEBODY'S CRYING
3. 太陽のひとりごと
4. 坂道
5. a long good-bye
6. Beautiful World
7. 懲りないスクリプト
8. SAYONARA
9. 月明かりなら眩しすぎない
10. 約束の地
11. Courage

----------------------

大雨による痛ましい被害のニュースに、ただ声を失うばかりです。本当に、ここ数年の異常な気象状況はどうしてしまったのでしょうか。
こんな時に呑気にブログを書いていて良いのか、という気持ちもありますが、今の僕には遠くから祈ることと、普段通りにするということ以外できそうもありません・・・。

ジュリーの『三年想いよ』ツアーは盛岡、仙台公演を終え、今週末には東京に戻ってきます。
いよいよツアーも後半戦?
そんな中、今日は私的旅日記での更新となります。

お題としてあやかりましたジュリー・ナンバーが、素晴らしい3連バラードの名曲「太陽のひとりごと」ということで、特にこの曲をお好きなファン(YOKO君含)も多いでしょうし、「なんで考察記事じゃないの~?」というクレームも聞こえてきそうですね。ごめんなさい。
旅先では「太陽ギラギラ」という天気ではなかったんですけど、「太陽のひとりごと」には何処か「夏」や「旅」のイメージがあるので記事タイトルとさせて頂きました。

まぁ、この曲って真剣に紐解こうとすると非常に難解、高度な楽曲構成を擁しておりまして・・・どうしても
「何ですか、このとんでもなく美しい転調は!」
という話にならざるをえません。
嬰ヘ長調の曲が、ブリッジ部でロ長調→イ長調→ト長調と、なめらかに下降していきます。
たぶんコード進行を考察するだけで相当な文量になりそう。「一握り人の罪」との作曲共通点とかまで語り出したら、読者のみなさまにとってはほぼ意味不明の大長文となってしまうことでしょう。

と言うことで、今回は軽く逃げました(汗)。
実のところ、夏休みの旅行から帰ったとたんに夏風邪をひいてしまい、真面目な考察記事に取り組むには体調が・・・という理由もあったりします(恥)。
今後、もし生のLIVEでこの名曲「太陽のひとりごと」を体感することができた暁には(可能性は充分あると思います!)、しっかり鉄人バンドの演奏をチェックして、LIVEレポート記事中にて考察の埋め合わせをさせて頂きたいと思っております・・・。


さて、お盆も関係なく働いていらしたかたも決して少なくはないのでしょうが、有り難いことに僕は普通に13日から17日まで会社が大型5連休となり、その間を利用して、1泊2日のプチ旅行に夫婦で出かけてまいりました。
近場で涼しそうな所、ということで今回訪れたのは、栃木県の日光です。今日は、気ままな旅日記にしばしおつき合いくださいませ・・・。


☆    ☆    ☆

今回の日光プチ旅行は、15~16日で行ってまいりました。
カミさんは栃木県を訪れること自体初めて。僕は2度目の日光で、初めて訪れた時には日光東照宮や戦場が原などを会社同僚の車で周りましたが、今回は完全に電車とバスの旅です。
まぁ日光と言っても名所色々ありますけど、僕らは宇都宮、東照宮、中禅寺湖を3本柱に計画を立てました。丸2日で無理なく堪能できるコースですね。

行きは、大宮から宇都宮まで東北新幹線『やまびこ』を利用。
ホームに着くと、先発の『はやぶさ』(青森行)と『こまち』(秋田行)が合体した状態で発車するところでした。

Nikkou01


これが、途中で切り離して東北本線と奥羽本線に分かれるのだと、今回初めて知りました。
僕は大学生時代に東北新幹線の売り子のアルバイトをやっていましたが、その時はまだ『はやぶさ』も『こまち』も無く、『やまびこ』『あおば』しかありませんでしたね・・・。

宇都宮にはすぐに着いて、そこからは在来のJR日光線に乗り換えとなります。
のどかなローカル単線ですが、この日は日光へと向かう観光客で座席は埋めつくされていました。

Nikkou02


僕はいわゆる「乗り鉄」ではありませんが、「路線図鉄」「駅名鉄」の気が大いにございます。
日光線では、「文挟」(ふばさみ)という駅名を覚えました。

1時間弱で終点・日光駅に到着。

Nikkou03


JRの日光駅は、駅周辺の景色は閑散としています。
しかし3分ほどかけて「東武日光駅」まで歩いてくると、いかにも観光地、といった風景が現れました。

Nikkou04


快晴とはいきませんでしたが、心配した雨も酷暑もなく・・・わずかに太陽がのぞく曇り空で、程よい感じで涼しい。観光日和と言って良いでしょう。
前日の天気予報は雨だっただけに、有り難いことです。

とりあえず東武日光駅のコインロッカーに荷物を預け、バスを使って「神橋」という停留所で下車すると、近くを流れる大谷川の美しい流れがお出迎え。

Nikkou05


写真だと分かり辛いんですけど、かなり流れが速く、水は白い飛沫をあげて轟々と音を立てています。

Nikkou06


てっきり「おおたにがわ」と読むものと思い込んでしまいましたが、正しくは「だいやがわ」だそうです。

さて、東照宮に登る前に腹ごしらえを。
昼食には少し早い時間でしたが、バス停留所前の蕎麦処『神橋庵』さんにお邪魔しました。

Nikkou07


「湯葉蕎麦」です。
実は僕は湯葉が苦手で・・・これはカミさんが注文したもの。僕は鳥南蛮蕎麦を頂きました。

お腹を満たしたところで東照宮へ。家康公にお参りです。
先日たまたま観ていたTV番組で、僕は20数年間にわたり参勤交代制度について誤った考えをしていたことが判明し、「イエヤス、すまん!」とお詫び参りのつもりで張り切っていたのですが・・・。

Nikkou08


とにかくエライ人込みだったのですよ~。
10数年前に会社の同僚と訪れた時はこんなに混雑していなかったのですが・・・時期もあるのでしょうね。
あと、400年式年大祭の準備が着々と進められているようで、どこか慌しい雰囲気も。
お墓までへの山道の急な階段をノソノソと長蛇の列にしたがって登っているうち、ふくらはぎはパンパン。翌日は見事な筋肉痛となったのでした。

東照宮から東武日光駅までの帰路はバスは使わず、「ロマンティック街道」に軒を並べているお店を徒歩であれこれ見回りながら戻りました。

途中、『湯沢屋』さんで一服。

Nikkou09


カミさんが楽しみにしていたという、日光の天然氷を使用した「抹茶小豆」のカキ氷です。

その後、再び東武日光駅始発の満員のバスに乗り(外人さんがいっぱい!)、今度は1時間近くかけて、「いろは坂」をクネクネと登ってまいります。
この日は凄い霧でしてね~。前方がまったく見えない状態(視界は真っ白)でバスが坂道を走り、トンネルをくぐり・・・ちょっと怖かったですけど、運転手さんに特別焦った様子もなく・・・こういう天候は地元ではよくあるのでしょうね。

「中禅寺温泉」という停留所で下車しました。
やってきましたよ~、標高1269メートルの中禅寺湖。


Nikkou10


Nikkou11


バス停から湖沿いに15分ほど歩いて、予約してあった宿にひとまず荷物を下ろします。

Nikkou12


シーズンなのでしょうね・・・「満室」の表示がありました。
僕らの事前予約はギリギリ間に合ったという感じで、なんとか1泊朝食付のプランにありつけました。夕食は残念ながら外食ということに。

夕食までの時間、宿から20分ほど歩いたところにある、有名な「華厳の滝」を訪れました。
ところが・・・。

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ご覧の通りの濃霧です。
豪快な水の音は聞こえるんですけど、肝心の滝は霧に覆われてしまっている状態。

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あちこち歩いてポイントを変えているうち・・・。

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なんとか見えました!
エレベーター(有料)で降りると滝を近くから見ることができるというので、せっかくだからと降りてきましたが・・・。

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やや霧がかかっていて、写真だと迫力が伝わりにくいかな。
滝との距離が近いので、細かい水飛沫が降りかかってきて冷たい!飛沫がかからないように傘をさして見学している方々もいらっしゃいましたね。

宿に戻る途中の大衆食堂で夕食にしました。
名物「家康ラーメン」というのがかなり美味しそうだったのですが、あまりに腹が減っていたため普通に「エビフライ定食」とか食べてしまいました。写真は無し・・・。

さて、宿に着いたら当然温泉ですよ!
ちょうど夕食付のプランで宿泊のお客さん達の夕食時間と重なったためか、男湯は思わぬ貸切状態。

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浴場は2つに分かれていて、手前が普通のお風呂、奥の扉の向こう側が露天の源泉となっています。
僕は迷わず露天の方へ!

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硫黄の匂いがかなりキツめとのことですが、僕はその点はまったく気になりません。
有り難く、太陽と大地の恵みを味わいました。

早めに就寝し、翌日早速のお楽しみは部屋食の朝食です。
メニューは、何と朝から釜飯御膳でございました。

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釜飯も鮎も美味しかった!

2日目のこの日はあいにくの雨模様でしたが、不思議と歩いて移動する時間は雨が止んでいて・・・ツイていましたね。

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バス停から見える男体山。雲がかかって風情があります。

日光駅に着き、しばらくカフェした後、再び日光線に乗って宇都宮に戻ってきました。
今度はすぐに乗り換えず、駅を出て宇都宮市内を散策。

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駅すぐ前の不思議なデザインのビル・・・「ララスクエア」って書いてあったけど、「ららぽーと」と関係あるのかな?

僕の故郷の鹿児島とかもそうなんですけど、宇都宮の繁華街は駅周辺ではなく、ちょっと離れたところにあります。これは地方都市特有のことなのかな。

で、宇都宮を経由するからには、お昼は餃子を食べないと!
事前に、地元のJ先輩にオススメの餃子のお店を4位まで教えて頂いておりました。駅ビル内や駅近くにもオススメのお店はあったのですが、「秘密のイチオシ」と仰る穴場のお店が駅から離れたところにあるとのことで、せっかくですから歩いてそちらにお邪魔することにしました。
駅からは20分くらい歩きましたかね~。

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散策途中に通り過ぎたニ荒山神社。
とても趣のある神社でしたが、前日の東照宮参拝で筋肉痛だった僕らは、境内奥に長々と伸びる急勾配の階段に恐れをなし、お参りは断念しました。

この日はカミさんがいたので方向音痴の僕も迷うようなこともなく、ほどなく目的の秘密のお店に到着。

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2人で、焼き餃子二人前とビンビール1本を注文。
量もお値段も手頃な昼食で大満足!〆て1,000円。

ちなみにこのお店は醤油とお酢で頂くスタイルに、特製ラー油が看板だったのですが、それとは別に、宇都宮駅のおみやげ屋で売っていた餃子用の「辛味噌ダレ」ってやつが無性に気になったので自宅用に購入してみました。

Nikkou24

早速帰宅翌日で試してみたのですが・・・これ、超オススメですよ~。ポン酢と混ぜるだけで、いつも家庭で食べている餃子が驚異的に美味しくなります。
まぁ、どんなスタイルで食べるにせよ、本場のお店で頂くのが一番なんでしょうけど。
そう言えばピー先生は浜松の餃子も「推し」なんですよね・・・そちらもいつかは食べてみたいです!

☆    ☆    ☆

ということで、散々遊び回った報いが現在の夏風邪&多忙(仕事の決算期)に至っている次第です。
寝込むほどではないんですけどね・・・喉が痛くて身体もダルダルです。情けない。

お盆前に、『虚弱体質』というロゴ・プリントのTシャツを着て出かけたら、仕事の行く先々で笑われてしまいましたが、まぁ僕のようなキャラがそういうの着るとシャレになってないよ、ということなのでしょう。

と、恥ずかしい話はこのくらいにしまして。
ジュリー界では、今夜は横浜のトークショー、そして週末の『三年想いよ』ツアー八王子公演など話題に事欠かない中、それらに参加されたみなさまの各所ご感想も楽しみにしつつ、拙ブログでは次回から再び通常の楽曲考察記事に戻りたいと思います。
引き続き、「夏」をテーマにお題曲を探します!

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2014年8月13日 (水)

沢田研二 「氷づめのHONEY」

from『A WONDERFUL TIME.』、1982

Wonderfultime

1. ”おまえにチェック・イン”
2. PAPER DREAM
3. STOP WEDDING BELL
4. WHY OH WHY
5. A WONDERFUL TIME
6. WE BEGAN TO START
7. 氷づめのHONEY
8. ZOKKON
9. パフューム
10. 素肌に星を散りばめて

----------------------

あ~つ~い~で~す~な~。

首都圏はなんとか直撃はまぬがれましたが、多くの地方で大変な被害をもたらした台風が過ぎ去ると、再び暑い日々が訪れていますね。
今月初めの酷暑が続いた頃に比べればずいぶん過ごしやすいとはいえ、日によってはぐっすり眠ることさえままならない夜もあります。

今日はこの「暑い夏」をテーマに、楽しいジュリー・ナンバーを採り上げることにしました。いや、単に「暑い」というだけではなく、「涼」も考えてのお題ですよ~。
アルバム『A WONDERFUL TIME』から。
「氷づめのHONEY」、伝授です!

楽曲考察の前に、良い意味で楽しくユル~いこの曲にあやかり、まずはしょ~もないネタ、と言いますか僕の平凡な日常から少し語ってまいりましょう。

とにかく、毎日暑いですよね。
真夏ですからそりゃあ暑いのは当たり前とは言え、ここ数年は「こりゃちょっと異常なんじゃないか」と思ってしまうような、変な暑さになっている気がします。
みなさまは、夜しっかり眠れていますか?
こう暑いとなかなか難しいですよね。クーラーをかけて寝る、というのもね・・・電気料金も値上げしていますし、何より節電の意識は忘れてはいけないし、加えて僕の場合は身体がヤワですから、クーラーをつけた状態で寝ると喉をやられてしまう可能性が高いので、それはしていません。

なんとか快眠を・・・ということでみなさまも各家庭で色々と工夫していらっしゃるかと思いますが、今我が家で大活躍しているのが、ズバリ「氷嚢」です。

Koori01

これ、本来は
風邪などで発熱した時に使うものです。
厚手の布袋の中に氷を10個ほど投入して額を冷やすと心地よい、ということで、実は最初は僕が風邪で寝込んでいた時(たぶん2010年の『秋の大運動会~涙色の空』ツアーの神席を病欠してしまった時だと思う・・・涙)にカミさんが買ってきてくれて、その後普通に発熱対策として常備していたのでした。

で、今年の夏。当初はアイスノンを使って就寝していたんですけど、あれって時間が経つとフニャフニャの生暖かい状態になって、ふと夜中目覚めた時にちょっとガッカリ感、むしろ邪魔!って感覚もあるじゃないですか。
代わりに、ということで試しに氷嚢を使い始めてみましたら、なかなか良い感じ。意外と長時間冷たいまま持ちますしね。ただ、夜中ゴソゴソと起きて中身の氷を取り換えようとした時に「うわ、氷が足りね~!」なんて事態が起こることがあります。
そこでカミさんが開発した技が
「最初に水を入れた状態で氷嚢を凍らせておく」
というアイデア。これが素晴らしい!

例えば、水を注いだ氷嚢を冷凍庫で何か丸いモノの上にドサッと置いておくと、ゆるやかなU字状の形でカチンカチンに凍るわけです。その凍ったカーブを首筋などに当てて眠りにつきますと、まぁ~パラダイスですよ。
複数の氷嚢を用意しておけば、夜中暑くて目覚めたとしてもすぐに交換、対処できます。
ただし、極端に安値の氷嚢は買うのを避けましょう。安物は、中の氷が溶けだすと布が水びたし状態になってしまうことがあるのです。しっかりした厚手の布を使ったモノがお勧めです。

ということで、「氷づめのHONEY」にあやかった、熱帯夜の涼対策の小ネタでございました。
みなさまも是非お試しあれ!

それでは本題の楽曲考察へと移ります。
「氷づめのHONEY」・・・ジュリー自身の作詞・作曲による、能天気なポップ・ロックです。

僕には、深い愛情を込めて敢えてそう呼んでいる「バカロック」なる勝手なカテゴリーの名曲が邦洋問わずたくさんあって、それらの曲には、深く考えずにただただ盛り上がる、癒される、和む、という至福の時間を過ごさせて頂いているのですが・・・もちろんジュリー・ナンバーの中にも、いくつかそんな感じで聴いている曲があります。「俺たちは船乗りだ」「KNOCK TURN」「muda」・・・曲想様々に色々と例はありますが、今日のお題とした「氷づめのHONEY」、或いは同アルバムの「ZOKKON」あたりは僕にとって愛すべき「バカロック」と言えます。
ただ単に「軽快なロック」というのとはまた違った魅力を感じるんですよ。

『A WONDERFUL TIME』収録の2大バカロック「氷づめのHONEY」「ZOKKON」が、いずれもジュリーの作詞・作曲作品というのが興味深い点。
シングルを目指した曲ではなく、アルバム制作にあたって「自分の曲も少しは」と肩肘張らずに伸び伸びと、自分の好きなように作曲したことが、独特の能天気なムードを作り出したのでしょうか。
まぁ、「肩肘張らず」とは言っても、ジュリーの作曲作品というのはどの時代のどの曲も本当に面白い仕上がりになっているんですけどね。

まず歌詞の点でも、「氷づめのHONEY」「ZOKKON」いずれもジュリーが真夏に「あっちぃ~」とマイっていて、半分ヤケクソのように「なんとか涼しくならんものか」と考えながら作っている・・・ように聴こえてしまいます。
「氷づめのHONEY」の場合は、気温も恋も「アッチッチ」状態の主人公が、思い人をひとりじめにするのに、「氷づめ」という手管を使って・・・「こりゃあ涼もとれて一石二鳥だわい」的なジュリーの作詞過程の楽しさが想像できるようです。
その「楽しいヤケンパチ」感が良く出ているのが

気候のせいにするな 熱くなるなそんなに
C                    F      C               F

温度計みたいさ お前言うことすること ♪
C           F             C   G         F    C

「気候のせいにするな」というこの不思議な言い回しが、ジュリーっぽいですよね~。
このような不思議系のフレーズを能天気なロックの自作メロディーに載せるパターンは、この先ジュリーの得意技のひとつとなったようで、最近の作品ですとジュリーwithザ・ワイルドワンズの「熱愛台風」によく似た感覚が見られます。

確信は持てませんが、ジュリーのこの曲の作詞のとっかかりには、ローリング・ストーンズの「氷のように」という曲が一役買っているんじゃないかなぁ。
ストーンズの方は「俺はこんなに熱いのに、彼女は冷たい」という歌なので全体像は異なるんですけど、「cold」と「hot」の対比、「モノにするぜ」的なシチェーションと、邦題の「氷」というフレーズ共通が気になります。
ジュリーの「氷づめのHONEY」は、彼女の温度(態度)が熱くなったり冷たくなったり目まぐるしく変化する分、より手強い感じでもあり、愉快な感じでもあり。
(ちなみにストーンズの「氷のように」は、『エモーショナル・レスキュー』というアルバムに収録されていて、これがまたいかにもジュリーが好きそうなタイプの「ズレ」感が心地よいアルバムなのです)

そして・・・これが重要なことなんですけど、「氷づめのHONEY」「ZOKKON」に共通する、こうした少しふざけたヤケンパチのようなクドキ方って、ジュリーのような「モテる」男にしか許されないと言うか、限定的なアプローチなんですよね。
もちろんジュリーの中に「俺はイイ男だから大丈夫」なんて意識は微塵も無く、等身大に作詞しているはずです。でも、例えば「二枚目なのに面白いことをする」「頭が良いのにバカなことを言う」男子って、学生時代のクラスメートとかを思い起こすと抜群にモテるタイプじゃないですか。ジュリーは歌手のキャラクターとしてデビュー当時からそうした面は確実に持っていたわけですが、30代半ばとなり遂に曲作りの分野においてもそんな才能を確立させたのです。

次に、ジュリーの作曲手法について。
ジュリーは、理屈だけでは編み出せないような斬新なコード進行による作曲を得意とする一方で、過去にプロの作曲家により提供され自らが歌ってきたナンバーで「面白いな」とジュリーなりに感じたであろうちょっとした箇所を、自然に自らの血肉とし、(おそらく無意識のうちに)後の自作曲に反映させることがあります。
「氷づめのHONEY」で言いますと

だからHONEY 氷づめ そうさHONEY ひとりじめ
         F                 C           F                    C

COME ON HONEY 氷づめ I LOVE YOU SO! ♪
               F                 C                       G

というサビ部。
僕はここを聴くたびに、アルバム『いくつかの場面』収録の大瀧詠一さんの作品「あの娘に御用心」のメロディー、コード進行との偶然の共通を思います。
偶数小節に何度も繰り返しトニック・コード(「あの娘に御用心」の場合は「A」)に着地したり、そうかと思えばサビの最後にドミナント・コードでポ~ンとメロディーを浮上させるような感覚。良く似ているんです。
ジュリーの中に、「楽しげなイカレポンチ曲はこんな感じ」という、過去に歌った曲からの無意識の「お手本」があったのではないでしょうか。

その一方、Aメロやサビは「C」「F」「G」というハ長調のスリー・コードで構成されロック・ポップスを意識していますが、Bメロには胸キュンな展開の変化もあって

このままお前
C              Em

放ってはおけないよ僕は ♪
   Am              Dm   G

このあたりでジュリーのヴォーカルに色気が増す感覚があり、聴いていて「クセになる」病みつき度の高さを演出しているように思います。
軽快ながら、一筋縄ではいかない曲なんですよ。

イントロの捻ったコード進行や、全体のリズムがジャングル・ビート(「緑色のKiss Kiss Kiss」記事参照)になっているのは、アレンジ段階での後藤次利さんのアイデアだったのかな。
こうした16ビート感覚のグルーヴは、エキゾティクスの真骨頂ですからね。演奏もジュリーの詞曲に負けず劣らず、とても楽しげです。
あと、左サイドにミックスされている「ハニー!」というサビ部のコーラス・・・声からするとジュリーのオーバーダブではないことは確実。ということはエキゾティクスのメンバーが担当しているのでしょうが、誰なのでしょう。
柴山さん?西平さん?
建さん・・・ではないような気がする・・・。

ジュリーのヴォーカルには、このアルバムや84年リリースの『NON POLICY』で顕著な、隙間隙間でのシャウト、喘ぎ声も大いに盛り込まれ、エンディングのサビのリフレインで「COME ON」の発音をその都度変化させる(「完全に”きゃもな♪”と歌っている箇所もありますね)など、じっくり聴くと細かい部分の気づきも多く、まったく飽きのこない曲ですね。
夏の午後、冷たい飲み物などのお供のナンバーとしていかがでしょうか?


それでは、今日のオマケです!
大分の先輩からお預かりしている、超お宝ツアー・パンフレット、『A WONDERFUL TIME』から、色男・ジュリーの妖美なショットを3枚ほどどうぞ!

Wonderful5

Wonderful11

Wonderful2



あの日から3年と半年が過ぎ、ジュリーの『三年想いよ』ツアーは遂に今年最初の東北ツアー会場2箇所・・・盛岡、仙台公演を迎えます。
今回のセットリストには新曲をはじめ、被災地のお客さんの心が痛むであろう曲もありますが・・・前半の「追憶」~「憎みきれないろくでなし」、後半の「危険なふたり」~「ダーリング」、そしてアンコールの3曲「ス・ト・リ・ッ・パ・-」~「勝手にしやがれ」~「ヤマトより愛をこめて」と、不朽の大ヒット・ナンバーの連なりを本当に頼もしく感じます。

ジュリーの思いが届きますように。
地元のお客さんが大いに楽しまれますように。

祈りの8月は過ぎてゆきます。
僕は今日から仕事がお盆休みに入り、近場ではありますが泊まりがけで旅行に出かける予定です。
ということで・・・次回更新は、久々の私的「旅日記」となってしまう可能性大!

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2014年8月 9日 (土)

沢田研二 「I am I」(俺は俺)

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1980 シングル『TOKIO』B面


Singlecollection1

disc-1
1. 君をのせて
2. 恋から愛へ
disc-2
1. 許されない愛
2. 美しい予感
disc-3
1. あなただけでいい
2. 別れのテーマ
disc-4
1. 死んでもいい
2. 愛はもう偽り
disc-5
1. あなたへの愛
2. 淋しい想い出
disc-6
1. 危険なふたり
2. 青い恋人たち
disc-7
1. 胸いっぱいの悲しみ
2. 気になるお前
disc-8
1. 魅せられた夜
2. 15の時
disc-9
1. 恋は邪魔もの
2. 遠い旅
disc-10
1. 追憶
2. 甘いたわむれ
disc-11
1. THE FUGITIVE~愛の逃亡者
2. I WAS BORN TO LOVE YOU
disc-12
1. 白い部屋
2. 風吹く頃
disc-13
1. 巴里にひとり
2. 明日では遅すぎる
disc-14
1. 時の過ぎゆくままに
2. 旅立つ朝
disc-15
1. 立ちどまるな ふりむくな
2. 流転
disc-16
1. ウィンクでさよなら
2. 薔薇の真心
disc-17
1. コバルトの季節の中で
2. 夕なぎ
disc-18
1. さよならをいう気もない
2. つめたい抱擁
disc-19
1. 勝手にしやがれ
2. 若き日の手紙
disc-20
1. MEMORIES
2. LONG AGO AND FAR AWAY
disc-21
1. 憎みきれないろくでなし
2. 俺とお前
disc-22
1. サムライ
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
disc-23
1. ダーリング
2. お嬢さんお手上げだ
disc-24
1. ヤマトより愛をこめて
2. 酔いどれ関係
disc-25
1. LOVE(抱きしめたい)
2. 真夜中の喝采
disc-26
1. カサブランカ・ダンディ
2. バタフライ革命
disc-27
1. OH!ギャル
2. おまえのハートは札つきだ
disc-28
1. ロンリー・ウルフ
2. アムネジア
disc-29
1. TOKIO
2. I am I(俺は俺)
disc-30
1. 恋のバッド・チューニング
2. 世紀末ブルース
disc-31
1. 酒場でDABADA
2. 嘘はつけない
disc-32
1. おまえがパラダイス
2. クライマックス
disc-33
1. 渚のラブレター
2. バイバイジェラシー
disc-34
1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. ジャンジャンロック
disc-35
1. 麗人
2. 月曜日までお元気で
disc-36
1. ”おまえにチェック・イン”
2. ZOKKON
disc-37
1. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
2. ロマンティックはご一緒に
disc-38
1. 背中まで45分
2. How Many "Good Bye"
disc-39
1. 晴れのちBLUE BOY
2. 出来心でセンチメンタル
disc-40
1. きめてやる今夜
2. 枯葉のように囁いて
disc-41
1. どん底
2. 愛情物語
disc-42
1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection
disc-43
1. AMAPOLA(アマポーラ)
2. CHI SEI(君は誰)
bonus disc
1. 晴れのちBLUE BOY(Disco Version)

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9月のチケットが届きましたね。
僕の次回遠征参加会場である神戸公演のチケットも無事到着。「一度体験してみたいな~」と常々思っていた、他会場でもたまに見かける、中2階のこじんまりしたバルコニー席を頂きました。楽しみです!

そんな中、大雨や台風の被害が心配な週末です。みなさまお住まいの地域はどんな様子でしょうか。
僕は故郷が鹿児島ですから、台風の怖さは身にしみています。とても良い所で愛すべき故郷なんですけど、火山と台風だけはとてもやっかいです・・・。
大自然を畏怖する気持ちがあるなら、「せんちゃん」の再稼働なんてダメダメ!


さて今日は、7月27日の『三年想いよ』大宮公演に参加して帰宅後、真っ先に聴き返したナンバーをお題に採り上げます。
それは、LIVEのセットリスト曲ではなかったんですよ。

あの楽しい楽しい、森本千絵さんの結婚式ドキュメントの長~い大宮MCの中で、ふとジュリーがタイトルを口にした曲。式で同じテーブルにいらした仲畑貴志さんのお話になった時に
「昔作詞をしてくれまして・・・ブルーバードのCMの・・・え~(しばし空白)、I am Iという曲で」
と語ってくれた瞬間、僕は
「うわ、I am I・・・!生で聴きてぇ~!」
と興奮してしまいました。

名曲なんだよなぁ・・・30代の男の色気がほとばしってした頃のジュリー、80年代という新たな時代の扉を先頭きって開こうとしていたジュリーにピッタリの曲。
A面「TOKIO」とはうって変わって、男と男の物語(変な意味ではありませんよ!)をリアルに歌うジュリー。
スーパースター絶頂期のジュリーが、ある意味平凡な「働く男」的なニュアンスをもその歌声に感じさせてくれる素晴らしさ。

そして・・・もし今のジュリーが歌えば、現在のジュリーの音楽活動や物事の考え方を歌に引き寄せて、「僕は僕だから」というスタンスで歌うことになるのでしょう。

リリース当時とはまた違った「名曲」の味わいが、年齢を重ねたジュリーにピュアに返ってきて、さらにとてつもないヴォーカルが聴けるに違いない・・・。
あの歌詞、あのメロディーを66歳のジュリーが歌うシーンを勝手に妄想し、僕は大宮公演の後、ずっと萌えまくっていたのでした。

「ジュリーのシングルB面は名曲の宝庫」・・・そう強く感じさせてくれる傑作のひとつです。
「I am I (俺は俺)」、伝授!

と、まぁそうは言っても、ジュリーが今後この曲を歌うことはさすがに無い・・・かなぁ。
「もし今のジュリーが歌ったら」と妄想に萌える一方で、じゃあリリース当時この名曲は、ジュリー自身やタイムリーなファンの先輩方にとってどういうスタンスの曲だったのか・・・僕は今回そういうことを考えました。
単純に「ブルーバードのCM曲」というだけではなかったでしょうね・・・。

僕は後追いのファンで、「I am I」リリース時のジュリーをとりまくいきさつなどタイムリーではまったく知らないのですが、この曲を聴くと、当時ジュリーと離れ活動することになった井上堯之さんのことをまず思わずにはいられません。
そう、これは堯之さんの作曲作品。

作曲者・堯之さんと作詞者・仲畑さんの間で、曲作りの際に具体的な打ち合わせがあったのかどうかは分かりません。でもこの歌詞は・・・まるで堯之さんがジュリーに語りかけているかのような内容ではありませんか。
歌っているのはジュリーだけど、歌の主人公を堯之さんとして聴いた方がよりグッとくる・・・そんな歌詞のように僕には感じられてならないのです。

ひとはすべて   人生   と         いう名の
      C       Edim   Am  Am(onG) F

舞台に立っているのさ
     C        A7        Dm7  G7

お前はお前を演じてくれよ
    C        Em7  Dm7

俺は                   俺を  生き抜くだけだよ
   G(onB)  G(onA)  G(onF)     E          E7

そうさ 俺は俺 I am I、I'm just I ♪
     F           F#dim   C           Am

月並みな表現しか思い浮かびませんが
「あばよ、沢田。道は分かれてお前と仕事するのはこれが最後だが・・・これから頑張れよ!」
というエールに、どうしても聴こえてしまうんですよ。
まぁ、曲のレコーディングの時期が79年のいつ頃だったのかは分かりませんし、勝手な個人的感想でしかないんですけど、みなさまはどう思われますか?

実際にはこの後に月日を経て、2人は突発的ながらも同じステージに立ったこともあるそうですし、ジュリーへの作曲提供という点でも、堯之さんのペンによる「君が嫁いだ景色」「ベンチャー・サーフ」という名曲が生まれています。
ただ、これまでJ先輩からお話を伺ったりして知った堯之さんの人となりを考えれば、ジュリーのバンドから離れると決めた時点で、堯之さんは一旦「沢田とはこれで最後」と考えていたんじゃないかなぁ、と思ってしまうのです。
互いの思い入れとリスペクトが第三者では知り得ないほど深いが故に・・・堯之さんはそういうタイミングでキチンと区切りをつける人柄のように僕には思えます。
それが「I am I」という曲に反映されている、という思いは聴く側のこじつけではあるんでしょうけど・・・。

「また一緒にやろうな!」と声をかけ合って離れるにはあまりにも濃密な、「時代が望んだ」蜜月の日々。

気がつけば こんなに遠く
Am                    Dm7

駆けてきたん  だね
   G          G7     Cadd9  C  Cadd9  C

まぶた閉じる刹那の うち          に 
      F       E7   Am   Am(onG)  Am(onF#)

季節はめぐる ♪
Fmaj7        G

「I am I」で歌われる物語を考えると、絶妙の年齢なんですよね、ジュリーも堯之さんも。
キャリアも積んで、自信も地位も得て、男としてこれからどういう仕事に取り組んでいくのか、その自らの「道」「人生」を具体的に設計し実現しようとする・・・そんな年齢です。
「I am I」に登場する2人の人物も、ちょうどそのくらいの年齢の男性ではないでしょうか。

歌の主人公(=「俺」)は、かつて同じ目標を持ち肌を合わせて共に働きながらも、人生のターニング・ポントで道を分けてしまった相棒(=「お前」)を、通り過ぎる車(まぁ、映像的にはブルーバードでしょうな~)の後部座席(というイメージ。運転はしていないような気がするなぁ)に偶然見かけます。
その時の「お前」の様子は・・・

固く結んだ    口元に 自信があっ た
   C      Cmaj7  C7          F   B♭ C

少しゆるめた   ネクタイに
   F          Ddim     Em  Em7  A7

疲れが   あった ♪
   Dm7  G     C

これ、僕には完全にジュリーのイメージなんですよ・・・。
新たなステージに打って出て、輝かしい成功の中に身を置きながら忙殺の日々を送る・・・スーパースター・ジュリーが車中でふと見せる素顔が目に浮かびます。

主人公である「俺」は
「奴、忙しそうだけど頑張ってるみたいだな」
と、黙って背中を見送った・・・そんな感じでしょうか。
違う道を進み始めている「俺」は、そんな「お前」の姿を見て闘志を燃やし、「よし!」と静かに気合を入れ背筋を伸ばしていたかもしれません。

確かに作風としては一見、「気障」や「派手」が似合う70年代後半からのジュリーの楽曲世界を踏襲しているようですが、浮かんでくる映像はとてもリアルで、一般人の大人の男性であれば誰しもがそこに擬似体験を見出せるタイプの曲ではないでしょうか。
例えば、アルバム『思いきり気障な人生』の徹底して現実離れした世界(もちろん良い意味で、ですよ!)の中に、スッと「ナイフをとれよ」のような、一般の大人の男性のリアルな共感を呼び起こす曲が収録されていたように、80年代が幕を開けいよいよ華麗に、まるで未来の世界の住人を演ずるように羽ばたくスーパースター・ジュリーが勇躍リリースした『TOKIO』というシングルのB面で、「派手」なイメージとは異質の存在感を放つ名曲・・・それが「I am I」。

それに、この頃のジュリーの私的な「男」としての矜持の中に、スーパースターとしてのセールス戦略とは別のところで「身に合った大人の歌を歌っていきたい」という渇望が生まれていたとしても不思議ではありません。
ジュリーはきっと「I am I」をそんなふうに捉えて歌ったのでは、と僕は想像しています。そこに、堯之さんとの関係をリンクして聴いてしまうと・・・もう、グッと込み上げてくるものがある。大変な名曲だ!と、後追いファンの僕ですら言いたくなるのです。

まったく、何という歌声と情感なのでしょう。
男が男に惚れる、というのは僕は魂だと思ってます。ジュリーは美しい男ですが、ヴィジュアルはとっかかりでしかありませんね。そしてもうひとつ、「圧倒的な才に惚れこむ」ということもあるわけです。「I am I」のヴォーカルは、そのジュリーの「才」が表れた好例。

この曲、メロディー音域にとてつもない高低の幅があります。低い「ラ」の音から、高い「ラ」の音まで。でもジュリーのヴォーカルには、最低音も最高音も、苦しそうな気配は一切ありません。
(後註:改めて調べましたところ、この曲の最低音は、何と低い「ソ」の音でした。加藤様、ご指摘ありがとうございました。正に当時のジュリーの発声音域すべてを網羅したようなメロディーです。堯之さん、素晴らしい!)
「I am I」は、数あるジュリー・ナンバーの中でも歌唱難易度はSランクと位置づけて良い1曲だと思いますが・・・いやぁ本当に凄い!

「I am I」に限らず、堯之さんのジュリーへの提供曲は素晴らしい名曲ばかりです。
その点で僕は「ストイックなバラードの名手」という印象を堯之さんに持っています。「美しい予感」「遠い旅」「DEAR」のように、大胆にしてなめらかで叙情的な転調を擁する曲、いかにもギタリストの作曲といった感じのブルージーな「ヘイ・デイヴ」、そして「君が嫁いだ景色」やこの「I am I」に見られる独特のディミニッシュ・コードの使い方など。
本当に美しくストイックなバラード群です。コード進行が美しいというばかりでなく、メロディーも独創的で美しいんですよね。「少しゆるめたネクタイに♪」のあたりなんて、コードを鳴らしただけではとても凡人には思いつかない素晴らしいメロディーだと思います。
堯之さんは、時間をかけて細部まで練りに練って作曲するタイプなんじゃないかなぁ。

「I am I」はそんな名曲ですから、正直僕程度のレベルでは一から採譜するのが厳しい作品なのですが、マニアックなシングルB面曲にもかかわらず、手元にとても心強い参考資料があったのでした。

Iami


↑ ちょっとトリミングして添付させて頂いております

これは、数年前にメイ様がブログに添付してくださっていたスコアで、拝見した瞬間「うおぉっ!」と大興奮し、即座に「名前をつけて保存」させて頂いたという(笑)貴重なお宝。
何故か、わざわざ1音下げの変ロ長調で表記されているんですが、それはたぶん、「この曲、普通の人はキー高過ぎて歌えないだろ!」という採譜者の優しさだったに違いありません。
「そうさ、俺は俺♪」のトコとか、ごく普通の男声音域の持ち主の僕ですと、オリジナル・キーのハ長調で歌うと全然声が出ませんからね。凄い高音が続くんですよ。
(記事中表記したコードネームは原曲通りのハ長調で、参考資料のスコアを移調しつつ、add9の追加など、全体のアレンジを加味して細部を詰めたものです)

それにしても・・・「いま、このときめきを」などもそうですが、ジュリーのCMソングって意外とスコアが普通に存在するみたいなんですよね。
お題リクエストを頂いているのにまだ執筆できていない「素敵な気分になってくれ」なんかも、ひょっとしたら何処かにあったりするのかな~?


それでは・・・次回も自由お題で更新いたします。
暑い日が続いていますので、「夏」をコンセプトにしたお題を考えてみたり、大宮MCの余韻で執筆意欲に駆られた曲がまだ他にもあったり・・・次に採り上げる曲に迷っているところですが、しばらくは様々な時代のジュリー・ナンバーをランダムに採り上げていこうかな、と考えています。

世間では、もうお盆の長期休暇に入ったかたもいらっしゃるのかな?
僕は普通に13日からのお盆休みで、それまではガンガン働かなければなりませんが・・・みなさま良い休日を!

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2014年8月 5日 (火)

2014.7.27大宮ソニックシティ 沢田研二『三年想いよ』セットリスト&完全レポ


この記事から、拙ブログではジュリーの『三年想いよ』ツアー・セットリストの豪快なネタバレ・モードに突入しております。

ということで大宮公演レポート、いつものように執筆途中で一旦更新した後、日々加筆してゆく形で、本日8月5日に無事完成いたしました。毎度毎度、長々とおつき合い下さいましてありがとうございました。
更新日は執筆終了の8月5日に移動させて頂きました。
次回からはまた普通にジュリーの様々な年代の楽曲についてランダムに考察記事を書いて参りますが、今後の各会場にご参加のみなさまのご感想コメント、引き続きお待ちしております。9月までジュリーに会えない僕を不憫と思い、各地のジュリーの様子を是非教えてくださいね!

☆    ☆    ☆

さぁ、いよいよ拙ブログでも今回の記事から、2014年ジュリー全国ツアー『三年想いよ』セットリストのネタバレ解禁とさせて頂きますよ~!

大阪フェスティバルホール、京都・宇治公演で、多くの関西のジュリーファンのみなさまが「私の初日」を終えることと思います。当然、この先の各会場にご参加予定のみなさまの中には、まだまだネタバレ我慢を続行中、と仰るファンもいらしゃるでしょう。
今回からここもネタバレ全開モードとなりますので、うっかり目を通してしまわないよう充分お気をつけください。

ネタバレ解禁として執筆するのは、7月27日・『三年想いよ』大宮公演のレポートです。数十年来の音楽仲間の友人にして、ある時期からは「J友」となってしまったYOKO君とともに、無事参加してまいりました~。
いやぁ、この日は気温的にもひっじょ~~に暑かったですが、ジュリーのステージはもっと熱かった!

この日は2人並んで1階の13列目、柴山さん側のブロックという良席。渋谷初日とはうって変わりまして、ジュリーやバンドメンバーの表情、動きなどは肉眼でバッチリ見えました。
今回のツアーは、例年以上にジュリーの「華やかさ」を感じます。衣装の力かもしれないし、ジュリーwith鉄人バンドの気持ちがそう感じさせるのかもしれないし、お客さんの側の気持ちもあるかもしれない・・・とにかく、全国どの会場に行っても終演後には「良かった!」と地元のお客さんが思ってくれるようなステージになっていると思います。

僕は、みなさまにご心配をおかけしていたギックリ腰もすっかり良くなり、おかげさまで全曲スタンディングで楽しむことができました。開演前、閉演後にお会いしたみなさま、ヤワな男の腰の状態にお気遣いの言葉をたくさん頂きまして、ありがとうございました。

さて、毎回YOKO君と参加したLIVEのレポはそうなってしまうのですが・・・今回も、当日まで鋼鉄の意志でセットリストのネタバレを我慢してきたYOKO君の、曲ごとのビビッドな反応をメインに書くことになります。
どうぞよろしくおつき合いくださいませ。

それでは、いつものように演奏順にまいります!


☆    ☆    ☆

1曲目「そのキスが欲しい」

Reallyloveya

イントロS.E.一発で「お~~!」と勇んで立ち上がるYOKO君。ほぼ、初日の僕と反応同じだなぁ・・・。
打ち上げでさかんに「ドーム以来ドーム以来、1曲目からドーム以来!」と興奮してまくし立てていたけど、オマエこれ『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーの大宮で、前から3列目で観てるぞ。
あと、この曲で早速せり出してソロを弾きまくっていた下山さんの黒いストラトを、「遠目の角度によっては茶色みたいにも見える。あれは元の色じゃなくて自分で塗ってるでしょ!」とも言ってました。

ジュリーはちょっと声がかすれ気味ではあったけど、声量自体は渋谷の初っ端よりは出ていたように感じました。会場ごとの設定の違いかもしれませんが。

間奏後の「そのキスが欲しい~♪」の箇所では、初日をも凌ぐ凄まじい歓声が。
このお客さんのテンションがツアー中続けば、そのうちジュリーも何処かの会場で突然ひざまずいてくれる・・・かもしれませんよ!

2曲目「彼女はデリケート

Gsiloveyou

上手側から柴山さん、ジュリー、下山さんがステージ前方で横並びになっての”その場駆け足”揃い踏み。
すっかり腰が良くなった僕も初日のリベンジ!とばかりに動きを合わせますが・・・隣の残念男YOKO君は「えっ?この曲何、何?」と焦りまくっております。
気持ちは分からなくもない。僕も『奇跡元年』の時は一瞬「これは?」と迷ったものです。CDとは鳴りが違うんですよね。CD音源の方はミックス含めてとても凝った音に聴こえるのが、LIVEではまずタテノリ全開のビートが直接ガツン!と迫ってくる感じ。
僕はもうすっかりLIVEヴァージョンに身体が馴染んでいますが、この曲はYOKO君については正真正銘の『ジュリー祭り』以来の生音体感となります。

歌が始まってようやく、「お~!」とビビッドな反応で手拍子参加のYOKO君。「Come On!」からの2・1打ちへの切り替えは、即座にできておりました。

サビ部でのジュリーの両腕・両膝フル回転のキュートな”小動物闊歩”は、どうやらこのツアーで初めて繰り出された新技のようです。で、これは初日にやっていたかどうかは見逃しているんですけど、ジュリーは「She's so delicate♪」と歌った直後にその都度マイクを客席に向けて、ファンの「デリケイ、デリケイ♪」コーラスを煽っているんですね。お客さんはコーラス・パートを歌いながら”拳グルグル”をやれば良いわけです。

それにしてもYOKO君の「デリケイ!」レスポンスは凄かった・・・。メロディー無しのドスの効いた低音シャウトなのです。あわわ、相変わらずよく通る声だなぁ。
彼はカラオケでちあきなおみさんの「喝采」を1オクターブ下のド迫力低音で歌ってしまうほど声が低くて太いんですよね。お姉さま方のキレイなメロ付コーラス斉唱の中で、YOKO君の「デリケイ!」(何故か「デ」がアクセント強め)は、あの大音響の中でも周囲数メートルにはハッキリ聴こえていたと思う・・・お近くのお席のみなさま、申し訳ありません・・・。

3曲目「鼓動

Iikazeyofuke

YOKO君には『ひとりぼっちのバラード』のセットリストは当然伝えていて(彼はお正月コンサートは基本的に不参加)、今回の初日直前に「特にバラードは正月からスライド選曲もあるんじゃないの?」とYOKO君なりに予想をしていました。去年の例もありますからね。
「鼓動」は純然たる”バラード”とは言えませんが(オルタナ系パワー・ポップや、ミクスチャー・ロックの要素が強いと思っています)、正月セトリ音源を作成して最近まで聴いていた、というYOKO君も僕と同様に改めて「鼓動」の”好き度”が上がっていたそうです。イントロから鋭く反応していましたね。

この曲は渋谷よりもこの大宮の方が断然ジュリーのヴォーカルは良かったと思いました。声が前に出てくる感触とか、最後の転調にかかる部分の「お」の母音語尾の艶ですとか。

あと、柴山さんのギター・・・ジャズマスターへのチェンジもこの日はようやく確認。
ソロでは身体を激しくグラインドしながらの熱演です。初日の記憶が曖昧でしたが、ここでは柴山さん、前方へのせり出しは無く、定位置で弾いていました。
やっぱり、ギター・ソロが肉眼でハッキリ見える席は良いですねぇ。嬉しい!

歌い終わったジュリーは
「それではこの辺で・・・!」
と言って袖に向かいサッサと数歩進んだかと思うと笑って立ち止まり、「うそだぴょ~ん!」。
これも今ツアーお約束のジョークのようです。

~MC~

「雨の中、暑い中ですが、この日をずっと楽しみにして来てくださってありがとうございます!」
・・・と、細かい言い回しは違っていたかもしれませんが、初日同様にお客さんへの感謝の言葉が。

「お医者さんに、あんまり疲れることはするな、高い声を出すな、飛んだり跳ねたりするな、腰を振るな(笑)と言われておりますが・・・それらをすべて放棄いたしまして、今日も鉄人バンドと共に、張り切ってまいります~!」

4曲目「a.b.c...i love you

Sinpurunaeienn

これもYOKO君は『ジュリー祭り』以来。
しかも彼としては当時のいわゆる「ポカン曲」だったわけですから特に嬉しかろう!分かるなぁ・・・一方の僕はと言うと「Snow Blind」以外の「ポカン曲」リベンジをもう2009年以降の各ツアーで終えてしまっています(厳密には「花・太陽・雨」と「朝に別れのほほえみを」も含むのかな)。
今は逆に、YOKO君の新鮮な感覚がうらやましくもあり。

ただ、これはたぶんYOKO君も同じ感覚を抱いたかもしれないと思うけど、何故か僕はこの曲の”おいっちに体操”には参加しにくいんですよ(汗)。
頭の中に「1、2、3、4・・・」という表拍の刻みが浮かびにくいんです。どうしても裏ノリの16ビートの感覚でノッてしまうんですよね。それを補うためには、ジュリーのように突き出した腕を丸く回転させるようにして身体でグルーヴを出さないといけないんだけど・・・これが思いのほか難しい!(と言うかなんとなく恥ずかしい)
ということで、腰を入れての横揺れで対応。おかげさまで、ギックリ腰後の身体への影響は皆無です。

最後のアドリヴ・シャウト部(僕は情けないことに気づけなかったのですが、「C.C.RIDER!」とシャウトした箇所があったようですね)では下山さんをガン見しました。
見た目としては定位置で黒子に徹して演奏しているんですが・・・いやぁ、凄まじい16分音符のソロを弾きまくっています。ワンフレーズごとに最後の音をダウン・ピッキングで振り下ろす腕のしなやかさ・・・今ツアーの下山さんは絶好調ですね!
YOKO君曰く
「下山さんは、これまで俺が見てきた中で今年が一番血色が良いと思う!」
だそうですよ。ただ
ソロ弾く時に発するオーラが赤みがかってた
という彼独特の感想は、僕にはよく分からない(笑)。普通の人には見えないものが見えてるのかな。
ちなみにYOKO君はルックスとは真逆で「霊」とかオカルトとかは大の苦手で、極度の怖がり屋です。市川昆監督の横溝映画とか、僕が持ってるDVDのパッケージを彼は正視することすらできません。
そんなキャラだからこそ、下山さんが纏っている神聖な霊気が見えちゃうとか?

5曲目「海にむけて」

Rocknrollmarch

恥ずかしながら初日には気づけなかった、「海に向けて」に込められた(と思う)メッセージ。
やっぱりこの曲は「PRAY FOR EAST JAPAN」というコンセプトで今回採り上げられたんだ、とこの日は思えました。「現在」の解釈を加え、歌詞に入り込んで歌うジュリー。Aメロは「むせび泣いて」いるようなヴォーカルだったと思います。
でも、サビでは何処までもその無心の声が美しく伸びていくようで、今の被災地の現実、世の中の現実に際して、こんな純粋なメッセージをステージから送ることのできる曲・・・ジュリーは本当に、過去にそれができる名曲をたくさんリリースしてきた奇跡の歌手なんだなぁ、と。
自らが生み出してきた「歌」が現在のジュリーの気持ちにそのまま返ってくる、鮮度を増して残されている、というのがね・・・つくづく凄い歌手人生なのですね。

さて、この曲はGRACE姉さんの演奏にも注目したかったんですが、実はジュリーがセンターにいる時には、僕の席からは完全にドラムセットが隠れて見えなかったのでした・・・。
ジュリーはこの曲では、一歩も動かず歌います。ですから僕は、耳だけでドラムスの音に集中しました。4拍目で「カ~ン!」と鳴っているのは、リム・ショットではなさそうだと思いました。おそらく、この曲のためにセッティングしているパーカスがあるんじゃないかなぁ。

6曲目「憎みきれないろくでなし

Omoikirikiza

イントロでギターが「ぎゅ~ん♪」と来ただけで「おお~っ!やってくれるんだ?!」と大興奮のYOKO君。彼はこの曲、『ジュリー祭り』以前から「大好物」と推しまくっていましたしね。

同時期の「勝手にしやがれ」や「サムライ」ももちろんそうなんですけど、「憎みきれないろくでなし」はもう、「ジュリー限定!」の代名詞のような名曲です。その意味では抜きん出ています。
そして、こんな曲を大ヒットさせられるのはジュリーだけ。だってこれ、楽曲としては(特に当時の歌謡曲としては)とびっきりの変化球なんですからね!遊び心も満載で、決して「セールス」を意識した曲作りにはなっていないのです。ジュリーには、周囲にこの曲のシングル・カットを英断させるだけの魅力、実力、カリスマ性が既にあったということですね。

間奏では、ちょうど僕らの席の直線上の位置に柴山さんがせり出してきて、真っ赤に染まり情熱のソロをブチかまします。YOKO君と2人揃って「おお~っ!」と釘付けになり、ソロ部が終わり柴山さんが定位置に戻ってジュリーの歌が始まっても、しばらくはその運指に見とれておりました。
リフ部にしても、単に音階通り、って感じじゃないんですよ。本当に「うねっている」「指が脳と連動している」演奏なんです。もちろん、全っ然フレット見てないし!
横移動が少ないこの曲のリフの場合は、柴山さんの安定した「グー」の拳の形がフレットに重なる見栄えが良くて、「グワシ」に見える下山さんの拳とはまた違ったギタリストならではのカッコ良さがあります。

そうそう、初日渋谷では、柴山さんがステージ前方にせり出してソロを弾き、定位置に戻った時などに、ローディーさんが柴山さんのシールドを整えに入ってくるシーンがとても多かったんですよ。そこに何か問題点を見出したのでしょうか、大宮では柴山さんは一転、ワイアレスのセッティングで臨んでいたようです。
もちろん過去の僕が観ている『ジュリー祭り』以降のツアーでは、柴山さんのギターはシールドの時もあれば、ワイアレスの時もありました(ここ最近はシールド有りでした)。でも、ツアーの途中で切り替える、というのは珍しいパターンなのでは・・・?

ジュリーのヴォーカルは初日と比べると多少のガサガサ感も。しかしそれが良い意味でルーズなブルースっぽい空気を出していて、ブルースマン・YOKO君も大喜び。
何とYOKO君、サビではお姉さま方と一緒にポーズを決め、「グリグリ~」までやってました。演奏が終わると、「素晴らしい!」と言いながら拍手していましたね。

7曲目「追憶」

Julie8

これも当然イントロのギターだけで「おお~っ!」と盛り上がるYOKO君。彼にとって『ジュリー祭り』以来この日久々に生で聴く大ヒット曲が続きます。
しかし、次の瞬間YOKO君は思わず
「ジュリー、大丈夫?」
と。

これ、どういう意味だか分かります?

「憎みきれないろくでなし」「追憶」・・・僕もYOKO君も、このあたりのジュリーの大ヒット曲は、「自分でも歌ったことがある」曲なんですよね。単純にカラオケで歌ったこともあるし、楽器片手に何度も自宅で弾き語ってきている曲なのです。ですから、2曲のその「男声にとってはキツ過ぎる」音階の高さも重々頭に入っているわけで・・・。YOKO君は
「こんなキーの高い曲を続けて歌って大丈夫なの?」
と言ったわけですね。

で、そのYOKO君の言葉で、僕はうかつにもここでようやく思い出したのでした・・・そうだ、Nasia様がブログに「憎みきれないろくでなし」と「追憶」はキーを下げてるかもしれない、と書いてくださっていたんだった!と。
残念ながら前曲「憎みきれないろくでなし」ではすっかりそのこと忘れていたので、キー確認はできませんでした。ならば「追憶」だ、「追憶」はどうなんだ?

結論・・・Nasia様の推察通り、1音下げのニ短調でした(オリジナルはホ短調)。柴山さんの「Dm」(ニ短調のトニック・コード)は5フレットのフォームでしたね。
(ちなみにキーを下げているかどうか、はもう1曲確認していています。アンコールでの「ス・ト・リ・ッ・パ・-」については、移調は無く原曲キーで演奏されていました)

例えば『ジュリー祭り』での「追憶」はオリジナル・キーのホ短調(ギターの音色設定も、『ジュリー祭り』では前曲「あなたへの愛」との繋がりの関係でしょうか・・・柔らかな空間系エフェクトが加えられており、ハードな設定の今ツアーの音とは異なります)
で、柴山さんは7フレットのフォームで「Em」を鳴らしていますが、「Em」って、どんなに高い位置のフォームでも、6弦(一番低い音が出る弦)だけは開放音を使うことができます。6弦の開放は、ベースレスの鉄人バンド・スタイルでは特に意識して演奏されるものと考えられます。
しかし今回はキーがニ短調。トニックの「Dm」或いは転調後のトニック「D」を5フレットで押さえる時、柴山さんは5弦までをセーハし、6弦はミュートさせているでしょうね。柴山さんの指の長さだと、たぶんひとさし指の第1関節より上の「指の腹」を使うことになるのかな。
結果今回の「追憶」では、フォーム移動の際にひとさし指で低音弦をすべらせる、という動きが自然に生まれたのではないでしょうか。閉演後にぴょんた様が「追憶で、ぎゅ~ん!ってやってた~(ハート)」と萌えていらしたスライド奏法(ボトルネックを使うスライドではなく、低音弦を指で高い音から低い音へスライドさせるパターン。「涙色の空」の”ちゅくぎゅ~ん”が代表例)が正にそれ。とっても細かいことなんですけどね。

演奏が終わるとYOKO君は
「い~~や~~、ロックだな~~追憶!」
と言っていました。以前よりギター・サウンド色が強くなった、という意味にとってOK?

イントロでGRACE姉さんのタムに注意していましたが、ジュリーに隠れて演奏するお姿はまったく見えず。
音を聴いた感じでは、スネアとミドルのタムを同時に鳴らしてるのかな?
フロアタムではないように感じましたが、自信は無いなぁ。これは9月の神戸でさらにリベンジ!

ジュリーの歌はもちろん素晴らしかったです。
こんなに素晴らしい歌が聴けるなら、絶対音感の無い僕としては、どんどんキーを下げてでも70年代、80年代の高音メロディーの名曲の数々をこの先歌って欲しいところなのですが・・・。

ちなみに、「大宮が私の初日!」というJ先輩、J友さんが後でお2人揃って「追憶で鳩が見えた!」とはしゃいでおられました。その時の僕の「初日から見えてましたよ~」というひとことは今考えればかなり無粋だったと思います・・・。
どうもすみませんでした!

8曲目「そっとくちづけを

Ikitetarasiawase

今ツアーでYOKO君が「初めて生で聴く」曲は、「鼓動」とこの「そっとくちづけを」2曲だけにとどまりました。
毎年「ひょっとしたら自分の知らない曲が来るのではないか」と怯えていたYOKO君、「今回は全曲バッチリ分かった」とのことで、彼なりのジュリーファンとしてのキャリアの積み重ねを実感できたという意味で、「最高!」のセットリストだったと語っていました。

やはりこの曲のヴォーカルは凄いです。渋谷でも凄いと思いましたが、「海に向けて」と同じように、今ツアーで歌う回数を重ねるごとにジュリーのヴォーカルが凄くなっていく曲かもしれません。
ジュリーの全国ツアー・セットリストには、新曲以外にもそういうバラード・ナンバーが必ず何曲かありますよね。特に『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーからは・・・。あの年は、「約束の地」がそんな感じでした。

それはもちろん、鉄人バンドの演奏も同様。
2番から淡々とアルペジオを奏でてバックアップする下山さん。その2番の直前、究極にシンプルであるが故に身を切るような音で静寂を破るGRACE姉さんのフィル、さらには、自らの全力コーラス直後のエンディングで優しく囁くように奏でられる泰輝さんのフレーズ。
そして何と言ってもこの曲は柴山さんです。1番のアルペジオは2番以降の下山さんのバッキング・アルペジオよりも太い音色設定で、そのまま間奏のスライド・ギター・ソロへと移行します。怖いほどの入魂ビフラート・・・その後はボトルネックを装着したまま、下山さんのパートとは別の重厚なアルペジオが挿入される箇所もあります。


こうした鉄人バンドの素晴らしい演奏があっての、ジュリーのヴォーカルです。
ジュリーは単に「凄いヴォーカリスト」というだけではありませんよね。歌詞に、そして演奏にシンクロする能力が桁外れの、「歌」の申し子なのだと思います。

「何度でも生まれ変わるんだ」
「君を忘れない、僕の命だから」

胸に直接突き刺さってくるようなジュリーの歌を聴いていると、どうしてもこの先の東北ツアーの各会場でこの曲が歌われる様子を想像してしまいます。
盛岡公演に参加される先輩のために申し込んだチケットがとても良い席で、本当に良かったなぁ・・・。

9曲目「我が窮状」

Rocknrollmarch_2

この曲はさすがのYOKO君ももう何度か聴いています。歌われるだろう、と予想はしていたみたい。

ジュリーのヴォーカルも泰輝さんのピアノも鉄人バンドのコーラスも、変わらず素晴らしかった・・・ただ、会場の雰囲気ということで言えば、やっぱり初日の渋谷は特別だったと今でも思います。あの自然発生的な熱烈な拍手は、ずっと心に残っていますね。
この日はいつもの「我が窮状」のように1番の後のピアノ・コード伴奏時に拍手があり、コーダ部前のピアノ・ソロ部は静かな中で進行しました。渋谷では、そこでも熱い大きな拍手がありましたからね。あれは震えました。

これから先の各会場ではどうでしょう。
極端なことを言えば、この曲をお客さんが普通に素晴らしいバラードの名曲として自然に聴ける、楽しめる・・・それだけの状況の方が良いわけですよ。それはきっとジュリーにとっても。
初日の熱烈な拍手が、満員のお客さん達のどういう思いを反映したものであるか、を考えるとね・・・感動すればするほど、複雑な気持ちも沸いてきます。
でも僕は今年、ツアーが終わったらこの曲の記事を書こうと決めた・・・ならば自分が参加する会場で歌われたそれぞれの「我が窮状」を、その時々の世情も合わせて胸に刻んでいかなければ。
それだけでも、今年のツアーはひと味違うんだぞ!と気合を入れて臨んでいます。

今年も、祈りの8月がやってきました。
「我が窮状」「届かない花々」・・・”忘れちゃいけない”日は、2011年3月11日だけではありません。
ジュリーが「3・11」を歌う新譜をリリースし、そのツアーを毎年続けることで、僕らはまだまだ他にも祈りの日があることを、改めて思い出すことができるのです。

10曲目「届かない花々

Croquemadame

YOKO君にとって数度目の体感となる曲が続きますが・・・打ち上げで彼が最も熱く感想を語っていたのがこの「届かない花々」だったんです。
「これまで聴いたことのないような、トーキングに近いニュアンスのヴォーカルにシビれた!」と。
おそらくAメロの、16分音符のメロディーが続く箇所のことじゃないかな。僕も「いつもより言葉を畳みかけるように歌ってるなぁ」と感じましたからね。

セットリストに採り上げられる率が高いことで分かるように、ジュリーはこの曲を相当な思いを込めてリリースし、その思いを今も持ち続けているのでしょう。
ジュリーの平和への思いは、当然ながら全世界各地各国に向けられているわけです。「日本だけの平和」を考えていたら、ジュリーのような作詞、メッセージは生まれてきません。
渋谷初日が終わってすぐに、ウクライナやガザのいたたましいニュースがありました。この日のジュリーは渋谷とは違ってMCで社会的な話は一切しなかったけれど、「我が窮状」「届かない花々」・・・歌で熱いメッセージを伝えてくれた、と思えます。

「眠る神々よ、手をつないでみて」
ジュリーのメッセージに合わせ、何度もジュリーと「手を繋ぐ」お客さん。「魂」を感じるシーンですね。

そしてこの曲もまた、鉄人バンドの演奏が素晴らしいですからねぇ・・・。
ちょっと楽器かじってロッカー気取りのド素人
(←自分)がCD音源をパッと聴きで、「あぁ、あのパターンね!」と思い込んでしまっていた演奏にこそ、生で観るとプロフェッショナルの凄味があり、自分の甘い認識を恥じ入るばかり・・・鉄人バンドには、これまでジュリーのLIVEで何度もそんな体験をさせてもらっています。

~MC~

「次は新曲を歌います」
に、大きな拍手が起こります。
「今年もまた、鉄人バンドのメンバーがそれぞれ曲を作り、私がそれに詞を載せて新曲を作りました。すべての被災地に、祈りを込めて歌います」

11曲目「東京五輪ありがとう

Sannenomoiyo

イントロが始まると、「えっ?おっ、おおっ!」と一瞬戸惑いながらもすぐに盛り上がるYOKO君。
僕の初日とまったく同じ反応(笑)。演奏順を知らない状態でジュリーに「新曲を歌います」と言われたら、そりゃあまず「三年想いよ」のイントロを脳内再生しながら待ち構えることになるわけですからね。

さて、この日は開演前にYOKO君が自力で起こしてきた「東京五輪ありがとう」「一握り人の罪」2曲のコード進行を、僕が考察記事を書いた際の採譜と照らし合わせてLIVE前に疑問点を纏めておく、という打ち合わせをしておりました。
何故新曲の中でこの2曲かと言うと、まず「三年想いよ」は採譜自体は簡単なんです。転調もあるけど、「よくある」パターンなので2人共に疑問点は無し。「櫻舗道」については、YOKO君は鍵盤をやらないので、ギターの音が鳴っていないと採譜ができないということで断念したそうです。

で、「東京五輪ありがとう」。
「イントロは、”サージェント・ペッパーズ”(ビートルズ)のヴァリエーションだよね」
と。
「C7→E」という短いイントロを配したのがこの曲の肝だよなぁ、という考えで一致。

反して激論となったのが、Aメロ「東日本の復興には」と歌った直後のコード進行。
以前執筆した考察記事を読んで頂ければお分かりのように、僕はその部分のコード表記を避けています。一応採譜はしましたが、自信が無かったのです(汗)。
そこでは、「じゃ~ん、じゃ~ん、じゃっ!」と、4分音符で3つの和音が鳴っています。最初の2つが突き放し、最後の1つがカッティング→ミュートのスタッカート。僕は、その3つがそれぞれ違う和音だと思いました。
一番考え易いのは「E→E7→F」。ただ、2和音目を「E7」とするにはあまりにハッキリした鳴りなので、何か分数コードを使っているのではないか、とか。
ところがYOKO君は
「少なくともギターについては、1和音目と2和音目はまったく同じ音を弾いてるんじゃないか」
と主張。つまり「E→E→F」だ、と。
僕は「いやいや、だってそこは「ド→シ」とか「ミ→レ」とか単音の音階移動が載るでしょ。ギターだって何かしらのフォームチェンジはあるよ!」と突っぱね、子供同士のような言い合いになりました(笑)。

そんなことがあったものですから、イントロと同時に2人とも首が完全に上手側に向いてしまって。
実はこの日、前半のステージでは「今日はジュリーは下手側への出張が多いな~」と思って見ていました。
下山さんの立ち位置を越えて、下手側へはステージギリギリのところまで進出するのに、なかなかこっち(上手側)には大きく踏み出してやってきてくれない・・・。
まぁこれ幸いというわけではありませんが、そのぶん僕らはここまで柴山さんの勇姿をじっくりと見て楽しんでいた、とも言えます。YOKO君も言っていたけど、柴山さんとは何度か目が合ったりしてました(閉演後、2階席後方でご参加だったしょあ様から「どぉりで、今日はなかなか白い橋がかからないと思った~!」との苦情が笑)。

ところが、「東京五輪ありがとう」が始まると・・・柴山さんガン見の最中に、ススス、という感じで左の視界からジュリーが現れ、柴山さんを隠してしまうシーンが。
何故この曲でのそんなジュリーの姿が強烈に印象に残っているかというと、僕は最初にジュリーが柴山さんの前に陣どった瞬間に、「あれっ、ジュリー上着脱いでる!」と気づいたからです。
「いつ脱いだ?」と記憶を辿って・・・「届かない花々」を歌うジュリーがいつものように胸をトントン、と拳で叩いたシーンを思い出すと、その時ジュリーはまだ上着を着ていたように思うのですよ(確かな自信はありませんが)。
ということは、「新曲やります」のMC時に脱いだのかなぁ。「東京五輪ありがとう」のイントロで脱ぐ、というのはかなりの早業が求められますから、歌い出しがギリギリになっちゃう気がする・・・。

それはさておき、ジュリーが柴山さんを隠してしまうシーンは、後半のステージで急に目立ち始めまして・・・まぁ単に上手側への進出度が高くなってきた、ということに過ぎないのでしょうが、やっぱりジュリーファンの身としては「おおっ、久々の”俺のカズを見るな”攻撃を食らっているのかな?」と嬉しくなったり。
しかし「東京五輪ありがとう」での僕とYOKO君はそれぞれ、「自分の採譜の方が正しい!」という気持ちで必死に柴山さんの手元をチェックするものですから、ジュリーの「カズを見るな!」の心の声をなかなか聞きわけないという(汗)。

結論は・・・YOKO君が正しかった!
問題の箇所で柴山さんの弾いたコードは「E→E→F」でした。「E」は4フレット・セーハのCフォームで、それを2度突き放しで弾き、そのまま5フレットにすべらせて「F」がスタッカートです。

YOKO君には閉演後に「仰る通りでございます!」とひれ伏しておきました。
やっぱりギター単体の音とりについては、彼の方が僕より一枚上のようですね・・・。そのYOKO君、間奏で目の前にせり出してきてソロを弾きまくっている柴山さんに向かって「イエ~!」と声を上げておりました。

GRACE姉さんの”鬼姫ロール”が激しく炸裂したのは1箇所。CDだと細かいロールがもう2箇所ほどあるのですが、その再現までは無かったように聴こえました。
ロールはタムではなくスネアだった・・・かな?

12曲目「一握り人の罪

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この曲の転調部のアコギのコードをYOKO君が執念で書き起こしてきてくれた(ちゃんと紙に清書してきてました。どれだけ気合入ってるんだという話)ので、開演前に確認させてもらいました。
「一握り人の罪」は泰輝さんのオルガン・ソロの音色はもちろんのこと、転調それ自体が美しい曲なんですけど、僕はと言えば、考察記事執筆の際に「うわ、こりゃ手強い!」と転調部の採譜への取り組みを早々にあきらめてしまっていて・・・いざYOKO君の書き起こした進行を見せてもらって、目からウロコ。
本当に「王道」のツー・ファイヴの転調が、幾重にも繰り返されて徐々に下降していく仕組みなのですね。

ちなみにYOKO君は、数年前まではコード採譜も基本的なことしかできなかったんです。ただ、ここ数年でジャズ・ギターの理論書を読んだりして懸命に勉強して、いつの間にかギター・コードの採譜に関してはかなりのレベルに達したみたい。
「昔とった杵柄」に頼りきって進歩していない僕と、現在進行形で勉強しているYOKO君の実力が逆転したのは当然のこと。例えば、ピー先生のアップテンポ・ナンバーでのヴォーカルが以前より格段に上手くなっているのも、積み重ねた日々が実を結んでいるわけで・・・やっぱり努力を続けることが大事ですね。改めて見倣わなければ。

この日もジュリーの「一握りの罪」は渾身も渾身、入魂も入魂の凄まじいヴォーカル。
最後のサビで「原発に狂った未来」の歌詞が一瞬出てこず早口になったりしたけれど、初日のMCにあった通り、「歌詞を見ながらうつむいて歌う」ことなど絶対しないジュリーです。「私くらいになると、お客さんの方が正しく聴いてくれる」なんてことも言っていましたが、僕らからしますと「そう聴かせてくれるのがジュリーだよ」という思いですよね・・・。

アコギは基本、柴山さんがハイコードで下山さんがローコード。柴山さんは下山さんが出していない音階も網羅し、細かく弾きます。対して下山さんは大きなモーションでのストロークで、リズムキープの役割を一手に担っています(この曲は、最後の最後にしかドラムスが登場しませんからね)。
僕が渋谷で見て気になっていた、下山さんが突然高い位置に移動して押さえたコードは、どうやら変ホ長調への転調着地直前に登場する「B♭」を6フレットのローで弾いていたようです。下山さん、「B♭」を6フレットで弾くことが結構多いように思います。

13曲目「櫻舗道

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イントロの直前に、一瞬ストリングス系のシンセサイザーの音が鳴って少しびっくりしました。
泰輝さんが「ごめん」みたいなゼスチャーをしたようにも見えましたが、声が聞こえたわけではないので確かなことは言えません。
設定変更の際に音が出ちゃったのかなぁ。

YOKO君は、ここ2年のツアーでのMCをよく聞いていなかったのか・・・『3月8日の雲』以降の3・11をテーマとした楽曲を、「詞先」だとばかり思いこんでいたようです。
開演前、「鉄人バンド、よくああいう詞にあんなキレイな曲をつけるよな~」と言うので、「いや、曲先だよ」と言ったらひどく驚いていました。
「そうか~。もし詞先で、作曲が大野さんだったらさ・・・」と、「想い出をつくるために愛するのではない」のメロディーで「櫻舗道」を歌ってみたり
(←コラコラコラ)

「誇大でない現実」を歌うためのジュリーの作詞。確かに、詞を先に見せられたらどんな作曲家だって暗いメロディーを頭に浮かべてしまうかもしれません。かといって、職業作曲家がいくら素晴らしい曲を先に作っても、ジュリーがそこに思いのままの、「自分が歌いたいこと」をあまりに赤裸々に歌詞として載せるにも躊躇いが生じるでしょう。
その意味で2012年以降のジュリーの新譜は、ジュリーと鉄人バンドの関係でしか生み出せなかった作品だと言えるのではないでしょうか。

この日も涙まじりに歌われた「櫻舗道」。
初日のような歌詞のアクシデントも無く、美しいメロディーを、少し語尾を途切れさせるような感じで切々と、ただひたすらに歌うジュリー。
どうしてこんなに、美しくて悲しいんだろう。この歌を聴いて何も感じない人なんているんだろうか。

奈良公演の素晴らしいレポートを書いてくださったとも様キングスさんが、文中でこの曲を熱烈に推してくれていたのが、とても嬉しかったです。「櫻舗道」は、若い新しい男性ファンの心にも確実に響いているんだなぁ、それこそがジュリーの力なんだ、歌なんだなぁ、と。

ふと見ると、ステージの照明がひらひらとジュリーの身体に降り注ぐような感じになっていて、胸を揺さぶられました。まるでジュリーが、今歌っている風景の中に実際に立っているみたいで・・・。
でもみなさまのお話によるとこの照明、2階席から見た方が本当に凄くて圧倒されるくらいなんですって。渋谷では気づけなかったなぁ。

初日は歌詞のアクシデントでチェックし忘れていた、「非常線の生まれ故郷」の部分のCD音源の幻想的なコーラスは、LIVEでは再現されていませんでした。
個人的に大好きなアレンジなので残念でしたが、そのぶんジュリーの歌に集中できる、ということかな。

下山さんのソロは空色のストラト。この日はCDとは違うフレーズを弾いていたようでしたね。

14曲目「三年想いよ

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初日に続いて、僕としてはこの日もやはりセットリストの中で一番心に突き刺さった曲です。
とにかくエンディング・・・どうしても泣いてしまう。

柴山さんのリード・ギター・ソロの長い後奏。普通の歌手なら、また普通の曲なら、歌メロの出番が終わり、ヴォーカリストは静かに宙を見つめて佇んでいればよい・・・しかしジュリーは、「三年想いよ」という曲は、そうではないのです。
歌メロがすべて終わると、ジュリーは左手に持っていたマイクをそっとポケットにしまい込み、「鬼迫」の表情で、スローモーションでの疾走を始めます。
最初の転調部でジュリーが何故、「無力な木偶の坊」と歌う時に自分の胸に掌を当てさし示したのか・・・その答が、エンディングの疾走にすべて表現されているようにこの日は感じられました。「あなたと代われなかったこと」を反芻しているようにも感じました。
初日は双眼鏡でジュリーだけを見ていて気づけませんでしたが、この時の照明は、ジュリーただ一人を照らしているんですね。暗いステージに、疾走するジュリーの姿だけが浮かびあがるのです。

この苦しみから逃れたい。
でも、忘れるわけにはいかない。
何故自分は残されたのか。
何故代われなかったのか。

三年後の今、生かされている人の疾走。

そして、完全な闇の中で奏でられる鉄人バンドの演奏もまた・・・ジュリーと同じスローモーションの疾走のようではないですか。
特に、この曲での柴山さんのスロー・ハンドのリード・ギターは本当に凄い。ハッキリと「思い」があるのです。
しょあ様も書いていらっしゃいましたが、エンディングでソロを弾く柴山さんの姿は闇に隠れ、客席からはまったく見えません。その音だけが、疾走するジュリーとリンクします。

よく「泣きのギター」という言葉を耳にしますよね?
でも僕は、今ツアーの「三年想いよ」の柴山さんのソロを生で聴いて、初めてその言葉の真の意味、真の演奏というものが分かったような気がしています。
スロー・ハンドですから、柴山さんは「三年想いよ」ではひと塊のフレーズごとに音を長く伸ばします。しかし柴山さん、この曲では「鳴りっぱなし」で次フレーズに繋げられるほどまでには、サスティンを深く設定していません(鳴った音を永遠に伸ばす設定のサスティンは、後の「危険なふたり」で楽しむことができます)。

必然生じるのが、入魂のフィードバックですよ!

泣いている、叫んでいる、苦しんでいる、もがいている、走っている・・・。
柴山さんのフィードバックが何度も何度も「声を上げる」たび、ジュリーの疾走とその鬼気迫る表情に、どうしようもなく涙が溢れてきます。

CDではフェイド・アウトとなっているこの曲、鉄人バンドは座りの良い8小節の後に「ジャ~ン!」と終わらせるのではなく、2小節(だったと思う)をつけ加えて演奏を終えます。
ジュリーの疾走表現に合わせた、魂のアレンジだと思います。初日にも書きましたが、これこそ『三年想いよ』ツアー・タイトルにふさわしい、素晴らしい圧巻のLIVEヴァージョンです!

ちなみに柴山さんのディレイ・アルペジオが登場するのは、「いもうと おとうと」と歌われるヴァースから。CDとは異なるアレンジ(ある程度曲が進行してから遅れて噛んでくる)ですが、LIVEではこちらのタイミングの方が良いなぁ、と思いました。
あと・・・ぴょんた様が「この曲は鉄人バンドのコーラスも凄かった」と仰っていました。僕は2回も観ているのに、まだそこまでの気づきに至っていません。
次参加の神戸でリベンジ!
(9月は遠いな~)

15曲目「F.A.P.P

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「一握り人の罪」からこの「F.
A.P.P」までの4曲の流れ。今ツアー・セットリストの大きなヤマ場です。
ツアー参加2会場目の今回改めて聴くと、この先の東北各地での公演・・・特にこの曲では、10月8日の南相馬公演のことを思います。

地元の方々が、どんなふうにこれらの曲を受け止めるのだろう、という心配もやはりあります。ジュリーのヴォーカルを実際に聴いて「歌や思いは必ず届く」という確信は持てたけど、やっぱりそれでも被災者の方々の心が痛む、というのは避けられないのかなぁ、と。
「F.
A.P.P」については、リリース当時に色々と考えさせられたこともありましたから・・・。

また、現地へ向かうジュリーと鉄人バンドも、精神的にももちろんですが、移動だけでも相当大変そうです。
南相馬公演って、開演時間が凄く遅いですよね。
3年と数ヶ月前なら、当日都心から南相馬に向かうとすれば、常磐線を使って電車で北上していけば良かったわけです。ところが今は、それはできません。路線が途中で不通になっているからです。何故そんなことになっているかは、みなさまご存知の通りです。
ですからあの開演時間にせざるを得ないのですね。

ただ、目の前で「バイバイ原発」と歌うジュリーに思うのは、ひたすらに清々しいその志。
何度も書きますが、「HAPPINESS LAND」の「HA」は高い「ラ」の音。66歳の男性が何の気なしに出せる高さの音ではありません。その音を出すために、ジュリーは顔を歪ませ、必死に高みに突き抜けようとします。
才能だけでは、経験だけではいかんともし難い・・・「出そう」という必死の心なくしては出せない高音。
これこそがジュリーの気持ちなのです。

初日の記憶は曖昧ですが、大宮では「三年想いよ」と「F.
A.P.P」の2曲は文字通り「間髪入れず」という感じでした。セットリストすべての流れの中で、この2曲が一番「曲間」が短かったんじゃないかな。

16曲目「
世紀の片恋

Kitarubeki

いや~、世間は生腹生腹と大変な騒ぎです。
僕の周囲のJ先輩、J友さんも閉演後はそりゃあ大変な騒ぎで。まず「生腹」を称え萌え合うところからこの日のLIVEの振り返りが始まるという(笑)。
で、僕にしろYOKO君にしろ、それがどの曲の話かすらサッパリ分からないわけです。これはジュリーファンとして恥ずべきことなんでしょうか・・・。

ということでジュリーの大宮生腹祭りはこの曲、「世紀の片恋」ということらしいです。

僕ら男2人はそれぞれ全然違うところを見ておりまして、僕はまずGRACE姉さんのカウベルですね~。あとイントロで柴山さんがカッ飛んでくるシーンとか。
そして何と言っても下山さんのソロ・・・見ましたよ見ましたよ、ボトルネックを左のポケットにササッと落としてから指弾きに切り替えて定位置に戻っていく瞬間を。
・・・って、最後定位置に戻りました・・・よね?
と言うのも、YOKO君曰く
「下山さんがステージ中央でソロ弾きまくって終わった曲があった。最後の〆の一音と決めのポーズがめちゃくちゃはまっててイカしてた。その姿が今も脳裏に焼き付いてる。あれは世紀の片恋だよな?」
と。
え~、この曲、下山さん最後までセンターに残ってたっけなぁ。僕、結構ガン見してたから・・・それは違うと思うけどなぁ。でも、他の曲でそんなシーンがあったっけ?

下山さんのソロは、初日には左手をネックの上からあてがってワイルドに弾く箇所もあったのですが、大宮はセクシーなネチネチ・ヴァージョンでしたね。どちらも下山さんらしい演奏です。

渋谷ではギックリ腰のため断念し、この日も4曲目の「a.b.c...i love you」でジュリーのリズムについていけなかった僕は、この大宮での「世紀の片恋」が、今ツアー初の”おいっちに体操”参加です。久々のこの動きがいきなり結構な長丁場のこの曲だったので、最後はちょっと疲れました(汗)。
YOKO君はここ数年のツアー同様、”おいっちに体操”ではなくボクサースタイルでの参加でしたね。

後でYOKO君は「この曲のアレンジって、ストーンズじゃなくてドクター・ジョンとかじゃないの?」と言ってました。むむ・・・僕はそのあたり、不勉強な分野だなぁ・・・。

17曲目「危険なふたり

Royal

本当に開演直前(着席の後)、YOKO君は突然「最近「危険なふたり」のベースをコピーした」と言い始めまして。
ギターの方は何度かLIVE映像を見ながらコピーしたことがあるらしくって、「危険なふたり」のあの代名詞的なギター・リフについて、「柴山さん、ひょっとしてチョーキングじゃなくてスライドじゃね?」と。
以前、「時の過ぎゆくままに」のギターで「堯之さんはチョーキング、柴山さんはスライド」という箇所があって、それは僕も確認していますし、確かプレプレツアーの頃にブログに書いたこともあったと思います。
でも「いや、危険なふたりはさすがにチョーキングでしょ!」と思った僕は、もう少しで「今日やるから見とき!」と言いそうになるのを耐え、適当に話を合わせていたのでした。

イントロが始まると「お、やるのか!」と盛り上がり、「チョーキングだね」と耳打ちしてくるYOKO君。
彼はこの曲、ジュリワン以来となりますね。

ジュリーの”年上のひと・物色ヴァージョン”も久々のように思います。「美しすぎる~♪」で見せるジュリーのウンザリ顔に、前方席の”物色された”お姉さま方は逆に大盛り上がり・・・のように見えましたが。
僕はこうした”みなさまご存知の大ヒット曲”にちょっとおフザけモード(照れ隠し?)を入れてくるジュリーが大好物なんですけど、せっかく柴山さんがワイアレスにチェンジしたのなら、2005年『greenboy』ツアーで見せてくれた”ジュリーのステージ下手側出張に柴山さんがついて回るヴァージョン”を是非生で観てみたいなぁ。

18曲目「ダーリング

Konndohakareina

これもYOKO君の大好物ヒット曲。『秋の大運動会~涙色の空』には不参加(2択でジュリワンの方に参加)だった彼にとっては、これまた『ジュリー祭り』以来となる曲です。
歌い出し前の唾つけは張り切ってマネしたものの、1回目の「ダ~リン♪チャチャチャチャ!」や「ダ~~~~リン♪」の拳突き上げに全くついて行けず慌てまくるYOKO君。2番からはちゃんとやってましたが。

いや~改めて、不朽の昭和歌謡曲、金字塔のナンバーですよ、これは。

先日、はるか様のブログを拝見しまして、「よくぞ書いてくれました!」と思いました。
『ロックジェットVol.57』の新連載、ジュリー・アルバム・レビューは・・・せっかくここまで佐藤睦さんが書いてくださってきたジュリー評が台無しになるくらい酷い内容だったんですけど、その根底にあるのはね、あまりに安易な「ロック>歌謡曲」という、ジュリーを語る上では最も危険な定義じゃないか、と僕は思っているわけです。
そりゃあ天下の『ロックジェット』が「ロックなジュリー」を推すというスタンスをとるのは当然ですけど、「歌謡曲時代だから」と決めてかかって70年代のアルバム群を軽んじていると、後からとんでもない恥をかくことになりますよ、ロッカー・ジュリーの本質を見逃しますよ、ジュリーが「ロック」の頂点を極めたのは今現在であることも理解できなくなりますよ、と。
それは僕自身が後追いのジュリーファンとして通ってきた道ですからね・・・よく分かるんです。分かるんですけど、ジュリーにとって盟友以上の存在である加瀬邦彦さんを加藤和彦さんと混同するような状態のまま、商業誌上でジュリーのアルバムを語ってはいけません。
このままでは、『ロックジェット』が掲げる「ジュリー=ロック」なる旗印は、単なるファッション標榜に終わりますよ、と。次号、全力で巻き返して頂きたい!
次号では、佐藤睦さんの『三年想いよ』ツアー・レポートにも期待しています。

すみません・・・なんだか熱くなってしまいましたが、今ツアーは「ダーリング」をはじめ、日本が誇る昭和の歌謡曲黄金時代にトップ中のトップであったジュリー・ナンバーが多くセットリスト入りしているからこそ、今のタイミングでの『ロックジェット』の連載には、是非ともその時期のジュリーについてのロック誌ならではの切り口を頑張って欲しいのです・・・。

この日もジュリーは初日同様ハンドマイクで、腹太鼓のアクションも無く正調・ダーリングのヴァージョンでした。「危険なふたり」や「勝手にしやがれ」ではあれだけ遊んだのに・・・曲によってその辺りの気分も違うんでしょうかね。

19曲目「ポラロイドGIRL」

Karehanemurenai

これはYOKO君にとって『ジュリー祭り』以来のナンバーの中でも特にダイブ曲に違いないとは思っていました。
予想は当たり、案の定僕はイントロでボコボコと殴られ、その勢いでYOKO君は「フラッ~シュ!」のシャウトにも張り切って参加(でも後で、「あそこは”フラシッュ”で合ってるんだよな?」と不安げに尋ねられましたが笑)。

ところが・・・その後が残念すぎるYOKO君。
まず「Woooh Woh♪」のお客さん揃っての掌ヒラヒラで「えっ?」と。
後で聞いたら、PVのロボットみたいなジュリーの動きの方が印象が強くて「このフリは何?」と戸惑ってしまったんだとか・・・。
さらに「ダーリン、ダーリン♪」の2・1手拍子への切り替え、続く再度の掌ヒラヒラ、演奏部では”おいっちに体操”と一糸乱れぬ会場のノリにYOKO君はただ圧倒されまくります。
打ち上げではひと言
「ポラロイドGIRLって・・・忙しいんだねぇ・・・」
と、ショゲかえっておりました。
まぁ僕も『奇跡元年』の頃は似たようなもんだったからね。この曲についてはこれから何度もリベンジの機会はあるよ、きっと!

「世紀の片恋」の項で書きました、YOKO君の言っていた「下山さんがセンターで弾きまくって終わった曲」というのは、この「ポラロイドGIRL」のことで間違いないようです。と言っても僕はそのシーンをハッキリ覚えていないんですけどね・・・(泣)。
例のサイド・ギターの見せ場で下山さんが左右からジュリーと柴山さんに指さされたのは観てるんですが。あの瞬間、会場が「キャ~ッ!」って凄かったですものね。
「おお~、下山さんオイシイなぁ!」とその時は思いましたが、今考えますと、ジュリーや柴山さんの指差しポーズに萌える方々も多いってことなのか~。

20曲目「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

Samosutatto

これはYOKO君、常々「何度でも味わいつくしたい」と言うほどのダイブ曲です。
さすがに『3月8日の雲~カガヤケイノチ』の時ほど豪快な反応(あの時はイントロで「これは大好きだ~!」と絶叫してた)ではありませんでしたが、ノッケから完全にシャドー・ボクサーとなってノリノリの様子。
開演前に「夏らしい曲が聴きたい」ということで「サーモスタットな夏」「太陽のひとりごと」を切望ダイブ曲として挙げていたYOKO君ですが、おそらくこの「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」も彼にとっては「夏」真っ盛りな曲だったはず。

この曲でも、柴山さんからのリレーでキレッキレのソロを弾きまくる下山さん(この曲で下山さんはCDとは違うフレーズを弾くんですけど、毎回ビートルズの「ゲット・バック」のヴァリエーションのようなフレーズが登場。そのあたりもYOKO君にとってはツボなのです)にYOKO君は今回いたく感動したのだとか。
後で言うには
「俺、夏の下山さんって初めて観るんだけど(彼はこれまで、全国ツアーの真夏参加経験はジュリワンのみ。大宮公演ってここ数年はツアー後半の秋でしたし、ジュリワン
の時は下山さん、いなかったからねぇ・・・)、下山さんって1年の中で夏が一番体調良いんじゃないの?」
と。
言われてみれば、そんな気もするなぁ。

さて、この曲は1番のサビ直前「自慢の君がいる~♪」の箇所でお客さんが一斉に「自慢のジュリー」を逆指差しするシーンが恒例なんですが、この日はジュリーがそこで2番の歌詞「女神の君がいる~♪」と歌ってしまい、お客さんが「あれぇ~?」みたいな雰囲気になって、それでも揃って指差ししているのが面白かったです。
こういう時ジュリーは、2番で1番の歌詞を歌って帳尻を合わせることが多いので、心得たお姉さま方は2番でも待ち構えていらした様子でしたが、結局ジュリーは2番は正しく歌い、「自慢の君がいる」という僕個人も大好きな歌詞部はこの大宮ではお預けとなりました。

この曲はコーラスとってる時のGRACE姉さんの表情も良いですねぇ・・・ニコニコしながらも次の瞬間にはほっぺた膨らませて、気合のスティック振り下ろしです。

21曲目「いくつかの場面

Ikutuka

ジュリーのヴォーカルという点に絞れば、この「いくつかの場面」が今回の大宮公演のクライマックス、一番の聴きどころだったんじゃないかなぁ。
ここまで20曲をほぼブッ続けで歌ってきて、そこで更にこんなに素晴らしい声で歌えるなんてね・・・。
まぁジュリーは元々、歌っていくうちにどんどん声が良くなってくるタイプではあるんですが、それにしても凄い。この曲はキー確認し忘れた(ひたすら歌に聴き入ってしまった)のですが、原曲通りのキーだとすれば、最高音は「F.
A.P.P」と同じですから。
あと、ここへ来て見た目も開演直後よりスマートと言うのか、ジュリーの身体の切れが増してきている感覚が、じっと定位置で歌われるこのバラードでも分かるというのが・・・不思議なことですね。

初日もそうでしたが、今ツアーの「いくつかの場面」に慟哭のニュアンスはあまり感じません。
淡々と「歌人生」を振り返っているようでもあり、でも決して無感情ではなくて、むしろ気持ちがほとばしっているように聴こえます。それがまたジュリーの特別さを物語っているようでもあり。

最後に両腕で自分を抱きしめるシーンには、「歌」へのいくつしみのような気持ちを感じてしまいます。「歌」=ジュリーの人生とするならば、自らの人生そのものを抱きしめているジュリー、でしょうか。
『Pleasure Pleasure』ツアーでは、両腕で頭を抱きかかえながらそのまま寝たふり→次曲「時の過ぎゆくままに」のイントロでハッと目を覚ます、なんてゼスチャーもあったっけなぁ、と思い出しながら観ていました。

あと、この日の「いくつかの場面」では、「三年想いよ」と同じくらいに柴山さんのフィードバックが効いていました。下山さんとハモっているから、余計にロングトーンの箇所での「キュイ~ン♪」という音が目立つのです。
お正月の『ひとりぼっちのバラード』の時は間奏、エンディングともギタリスト2人が前方にせり出してのソロでしたが、今回のツアーではどうやら定位置での演奏ということで統一しているようですね。

熱烈な拍手に送られ、ここでジュリーと鉄人バンドは一旦退場します。
「何曲やった?」とYOKO君が聞くので「21曲だよ」と言うと、「うわ~、あっという間だなぁ!」と。
本当にそうですよね。信じられないくらいに、素敵な時間は早く過ぎてゆきます。

~MC~

アンコールの拍手を受け、服飾センスの無い僕が珍しく「カッコイイ!」と積極的に思った今ツアー2着目のイエローのスーツに着替えてジュリーが再登場。
「この衣装カッコイイよな!?」
とYOKO君に同意を求めますと、「いや、そりゃもちろんだけど、衣装っつ~よりジュリーがカッコ良ぇ!」とこちらも珍しく乙女モード全開のようです。

そのカッコ良いジュリーがこの日どんなMCを聞かせてくれたかというと・・・。
抱腹絶倒、楽しい楽しい「おじいちゃんジュリー、ドキドキ結婚式出席ドキュメント」でございました。
いやぁそれにしても長かった~!なんか、大宮って毎回MC長めじゃないですか?

登場して最初に「みなさんお疲れでございましょう・・・だって、座ってたじゃない!」と、着席状態でアンコールの拍手を送っていた「どうせまた出てくるだろう」的なノリのお客さんをチクリと皮肉り、その後少しだけしんみりした話もありましたが・・・そこから先は「先日結婚式に出席しまして・・・」と、おめでたいお話が30分くらいずっと続いたという。
こういう、脱線せずにひとつの話題を延々と語ってくれるMCパターンは、最近では珍しい?

結婚された「お嬢ちゃん」(byジュリー)というのは、森本千絵さん。
ジュリーは最後まで個人名は出しませんでしたけど、「『Cocolo Nooto』という作品でデザインをしてくれて・・・」と話してくれた通り、ジュリーファンにとってはお馴染みの、ジュリーの元マネージャー・森本さんの娘さんとしても有名なかたですね。
と言うか、「ジュリーが千絵さんの結婚式で乾杯の音頭をとったらしい」という話は、大宮公演直前にジュリーファンの間で情報が広まっていました。でもまさか、直後の公演のMCがその話オンリーになるとは、想像もしていませんでしたが・・・いやぁ、本当に得をしたと思いますよ、大宮!

千絵さんは、お父さんと一緒に今ツアーの初日・渋谷公演にいらしていたそうで、「2階の後ろの方で」観ていらしたとのことですから、ひょっとしたら僕は席も近かったのかもしれません。
閉演後に楽屋を訪ねてこられて、そこで乾杯の音頭を正式に依頼されたのだそうです。
「ホンマに、僕でエエの?」と言うと、千絵さんは「お父さんの(結婚式の)時も(乾杯の音頭を)やって頂いたので、私も是非」とのことで、「そぅお?」と引き受けていざ行ってみたら、「業界の凄い人がたくさん集まっていてビックリした」そうです。

後で聞くところによりますと、結婚式の会場は椿山荘だったそうですね。
僕個人的には、通っていた大学から徒歩で行ける場所だったこともあり、椿山荘近辺には馴染みがあります。あの静かな景色の中を
「来賓の中には、「アナタが今日の新郎ですか?」みたいな派手な服装の男性もたくさんいましたが、ワタシは普通にダブルの黒いスーツに、夏モノの白ネクタイでした」
という格好のジュリーが嬉しそうに歩いていたのか~、と想像するとなんだか萌えてきます。

あまりにも豪華な登場人物、それぞれのモノマネも繰り出しつつジュリーが語ってくれた楽しい楽しい結婚式ドキュメントMCの内容については、既に様々なブログさんが書いてくださっていますから、参加されなかったみなさまもすっかりご存知でしょう。
遅れて書く僕は、個人的に印象に残った話をいくつかここに記すにとどめることにいたします。

何と言っても印象に残ったのは、山田洋次監督のお話ですね。
新郎さんが、山田監督の仕事関係のかたなのだそうです。ジュリーとは一緒のテーブルだったとのことで・・・ジュリーは真っ先に監督に挨拶に。

「お久しぶりです!沢田です!と挨拶したら、「ん?お?あ?」みたいなことになってる。(山田監督は)ワタシよりもずっとおじいちゃんですから。そしたら倍賞・・・倍賞・・・あれ?(下の名前が出てこないジュリー。すぐ後ろのお姉さま方が「二人いらしゃるからね~」とお話しているのが聞こえました)・・・千恵子さん!倍賞千恵子さんが、「監督!分かってる?聞こえてる?」と助け舟を出してくださって・・・監督は「最初は分からなかった」。倍賞さんも「お髭だからね~」と」

で、式は山田監督の主賓挨拶からスタート。監督はおもむろにマイクを持って、「20年前・・・」と話し始めますが、マイクが入っていない状態で。

「ワタシのテーブルは前の方だったから、声は聞こえちゃってるんですけどね」
とジュリー。

どうやら用意されたマイクというのが、入力スイッチがあるタイプだったようで、ジュリー曰く
「安いマイクですよ~」
と。
まぁ、一般的にはそれが普通のマイクなんですけどね。僕はたまたま自分でも趣味でレコーディングなどやるので知っているのですが、今はそんなタイプのマイクは(業界では)基本的に使用しないんですよ。音質も性能も良い、ハウらないマイクを使うのが当たり前で、ON・OFFのスイッチなんてものは無いんです。
式に集まった面々はそれこそ業界の大物ばかりですから、スイッチのあるマイクに慣れていなかったのでは。

監督は2度目の「20年前・・・」もOFFで語り始めてしまい、「おっかし~なぁ」といった感じで「トントン!」とスイッチ入力を確認し、3度目の正直の時には
「え~、あれは確か20年前・・・」
と、ちょっとだけ枕をつけていたんだとか(笑)。

そんなこんなで長々と入れ替わり立ち代わりで祝辞は続き、いよいよ乾杯の音頭でジュリーの出番!
そしたら、ジュリーもOFFマイクの状態で1度しゃべり始めてしまったのだそうです。
その切り抜け方が、さすがは百戦錬磨のジュリーですよ~。仕切り直しの第1声で

「誰かスイッチ入れとけっちゅうねん!ねぇ監督?」

と言ったら、会場大ウケだったんですって。
いやぁ、ジュリーファンならばそのシーン、まざまざと目に浮かぶようですね~。

さて、錚々たる登場人物との絡みで次に印象に残ったのが、「ゆず」のお2人のお話。
これまた同じテーブルだったそうで。
「アイツらカワイイねぇ!」と絶賛していました。

ジュリー曰く
「この業界は、何故年上年下、先輩後輩、というのを気にするんかなぁ。挨拶は年下の方から、後輩の方から行かないかん、という空気がある。(自分としては)そんなん気にせんと、こっちからどんどん行ったれや、と。こっちから行って、相手を恐縮させとけばエエんですよ」
とのことで、「2曲作ってくれた」松任谷由実さんにも自分から挨拶に行ったそうで(旦那さんの正隆さんは初対面だったそうですが)、ゆずも行ったろ!と思っていたら
「アイツらは向こうから来よった」
と。

「”ゆず”というのをやっております」
と言うので、心ですかさず
「知っとるがな~!」
と思ったそうで
「雨のち~、ハレルヤ~♪」
と、大宮MCで歌ってくれたんですよ!これは貴重!

で、実際の挨拶の場では歌わなかったそうなんですけど、それは何故かというと
「あの歌、歌おうとすると時々「晴れのち~♪」と歌い出してしまう。そうすると「晴れのち~、また晴れ~♪」みたいなことになってしまいますから、その場では歌いませんでした」
とのことです。
でも、「ゆず」のことは、彼等が横浜でストリートやってた頃から知っていた、と。

千絵さんについては
「お父さんの結婚式で乾杯やった時には、まだ生まれてなかったわけですからねぇ」
と、感慨深げでした。
「まだ小さい頃に、一緒に写真撮ったりしてね。(千絵さんは)ワケも分からず怪我してるふうな格好させられて、ワタシはインテリヤクザみたいなふうでね・・・」
と、2着目の衣装のパナマ帽を目深にかぶり直して、当時の写真のポーズを再現。
話は繋がって
「(自分は)昔は写真集なんて出してたんですよ!あの頃は(と自らの身体を指し示し)見せるところだらけだったんです。今はもう、見せるところはひとつも無くなってしまいましたが・・・」
と、ふんぞり返って体格を誇示しての自虐ネタも飛び出し、大宮のお客さんは大爆笑。

結婚式の〆は、何と千絵さんのリクエストで、お父さんの森本元マネージャーが「勝手にしやがれ」を熱唱することに。
イイですねぇ。娘が嫁ぐ日に父が歌う曲が「勝手にしやがれ」ですよ!洒落てるなぁ。

ジュリー曰く「当時のワタシのヒット曲は、別れの歌ばっかりで(笑)、結婚式にふさわしい曲は「君をのせて」くらいなものですが・・・」とのことでしたけどね。
お父さんは、まだ間奏が続いているのに2番を歌い始めてしまって
「そうやって間違うとね、みんながワタシの方を見るわけですよ。「沢田さん、ちょっとだけでも(歌を)お願いします!」と言ってくる人もいましたが、「この曲はワンマンショーやから!」と」

こうして・・・楽しそうに、嬉しそうに延々と語ってくれたジュリー。千絵さんの結婚がジュリーは心の底から嬉しかったみたい・・・関東圏の公演なのに、いつの間にやらMCが関西弁全開となっていったのが、ジュリーの喜びの証ではないでしょうか。
大宮のお客さん全員が、千絵さん、新郎さん、結婚式に出席されたジュリー達の幸せな気持ちのおすそ分けを賜ったような、とても温かなMCでした。

この愉快なドキュメントMC、登場人物が業界の有名人オンパレードということもあって・・・大宮の様子を知った先輩が、こんなことを仰っていました。
「70年代から80年代にかけて・・・ジュリーは毎年レコード大賞に出て、紅白にも出て、年が明けてのお正月コンサートでは、そんなテレビ番組の舞台裏を、それこそ有名な歌手のみなさん豪華キャストのドキュメント風にMCで語ってくれていた・・・大宮のMCの話を聞いて、その頃のことを思い出した」
と。
なるほど・・・いやぁ改めて、今回の大宮公演は歌ももちろんのこと、MCも素晴らしかったんだなぁ、参加できて幸せだったんだなぁ、と感じました。

いつしゃべり終わるんだろう、というくらい長く楽しいMCでしたが、素敵な時間はここでも早く過ぎゆきます。
頃合を見て入場する鉄人バンド・・・ジュリーはいつものように一人ずつメンバーを紹介すると、ふっ、と姿勢を正しギアを入れ替えて

「それでは、オマケです~!」

~アンコール~

22曲目「ス・ト・リ・ッ・パ・-

Stripper

この曲をアンコールの1曲目に配するのは、『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーと同じ構成。
あの年、僕とYOKO君は前から3列目の神席。MCが終わりかけて鉄人バンドが入ってきた時、YOKO君は柴山さんを見て「あっ、ギター変わった」とつぶやいていました。確か、本割はずっとSGで通していたんですっけ?
今回は、全セットリストで柴山さんはここで4曲目のジャズマスターでのスタンバイ。「ス・ト・リ・ッ・パ・-」のイントロが始まると「やっぱりね!」と納得顔のYOKO君です。

しかし、いったん「歌」モードを長いMCで途切れさせ、再度スイッチを切り替えての1曲目が「ス・ト・リ・ッ・パ・-」でヴォーカル全開というのは凄い。初日はさすがにサビで声がひっくり返っていましたけど、この日はそんなこともなく、ゴキゲンな「ス・ト・リ・ッ・パ・-」でした。
先述しましたが、この曲についてはキーは原曲通りでした。確かにこれまでとちょっと違った感触には聴こえる気はするんですよね。なんだろう・・・下山さんが、より低音を強調するセッティングにしているのかな。それともジュリーの歌い方が何処か変化したのか・・・。

オリジナル音源には登場しない泰輝さんのオルガンも、僕は鉄人バンド・スタイルでもうすっかり馴染んでいるのでしょうか、チェックする間もなく曲が終わってしまった・・・「ス・ト・リ・ッ・パ・-」って、意外と演奏時間は短いですよねぇ。

「おまえのすべてを見たい♪」のキメ部の柴山さん、カッコ良かった!
「D」がローコード、「Bm」が2フレットのハイです。普通のことを涼しい顔でやっているだけのに、何故こんなにカッコ良いのかな。たぶん、運指が忙しい箇所も、普通にコード弾きの箇所も同じように「指が勝手に動く」ほどの状態で演奏しているからでしょうね。ヘッドに近いところで演奏すると、そのぶん動きが大きくなるのでしょう。

23曲目「勝手にしやがれ

Omoikirikiza

MCでタイトルの挙がった大ヒット曲の降臨に「おっ!」と反応するYOKO君。彼もこの曲と次の大トリ「ヤマトより愛をこめて」の2曲は僕らと同様に昨年の『Pray』ツアーから連続して聴くことになったわけですが、さすが1年1度の参加に集中しているだけあって、「またか」みたいな感覚はまったく無かったのだそうです。
それが本来、全国ツアーの醍醐味なんですよね。
YOKO君や、年に一度地元にジュリーが来てくれることを楽しみに待っていらしゃる地方のジュリーファンのみなさまと比べると、僕はやっぱり贅沢をしています。かと言って、もはや年に一度の参加で我慢できる身体には戻れなくなっちゃってるんですけど(汗)。

しかし、「またか」なんて僕らが思うのも、ツアー最初の参加会場でのほんの一瞬ではあるわけで・・・やっぱり「勝手にしやがれ」って、大名曲なんですよね。リリースされた年から何十年も経った今、こうして本物のジュリーが生で歌う、全力で歌う、バンドで歌うのを体感できている、というのが本当に凄いこと。
それは初めてのジュリーLIVE・・・あの東京ドームでこの曲を歌うジュリーを観た時から、ずっと持ち続けている感覚です。

この日は後半、かなりのおふざけヴァージョンの壁塗りが見られました。ワイパーのようになったり、パントマイムをやってるようになったり。
ほとんどのお客さんが悠々とジュリーに追従する中、僕とYOKO君は照れて参加できず。まだまだ未熟者です!

余談になりますが(と言うか、この項書いてて突然思い出しました)、この日ジュリーがMCで自らの楽曲のタイトルを口にしたのは、「勝手にしやがれ」以外では「君をのせて」(これはMCの項で書きましたけど)、あと「静かなまぼろし」「ウインクでさよなら」(この2曲は松任谷由実さんのお話をしてくれた時)、そしてもう1曲が・・・何と、「I am I」!
千絵さんの結婚式で、仲畑貴志さんも同じテーブルにいらしたそうで、「ブルーバードのCMの曲を作詞してくださって」と言ってくれたんですよ。

うぅ・・・「I am I」、聴きたい!
ジュリーがタイトル言った瞬間、みなさんそう思ったでしょ?今のジュリーの声で、あの歌詞、あの曲を生で聴けたらどれほど・・・。ジュリー、いつか歌って~!

24曲目「ヤマトより愛をこめて

Konndohakareina

この日は、ちょうど家を出た直後に雲行きが怪しくなってきまして・・・埼玉には雷雨注意報も出てたらしいです。大宮駅でYOKO君と待ち合わせた頃にちょうどドシャ降りになりまして。まぁ、お茶しながら「東京五輪ありがとう」のギターについて激論してたら、いつの間にか収まってたんですけどね。現地に向かうまでは「大丈夫かなぁ」なんて思ってました。

で・・・ふと思い起こしたのが、昨年の『Pray』ツアー高槻公演のことですよ。
もちろん僕は参加していませんが、停電状態でジュリーと鉄人バンドがアンコールで披露してくれたという、完全アンプラグド・ヴァージョンの「ヤマトより愛をこめて」を聴けた高槻のお客さんがうらやましくてうらやましくて。
「この空模様だとひょっとして今日、可能性あるか?」なんて、不謹慎に楽しみにしてしまったり。
でも、後になって思えば停電なんてことにならずに良かったです(←当たり前だ)。
本当に蒸し暑い1日でしたからね・・・。

「ヤマトより愛をこめて」・・・素晴らしい曲ですね。
多くのかたが仰っているように、今年の全国ツアー大トリにふさわしいナンバーだと思います。
各地公演のお客さんでこの曲を知らない人はほぼいないでしょうし、「ス・ト・リ・ッ・パ・-」「勝手にしやがれ」に続いてバラードで〆る、という構成、歌詞にも「護る」(阿久さんの表記は「守る」ですが)という、近年のジュリーが大切にしているフレーズが登場し、同じフレーズを擁するセットリスト中の他の曲とも気持ちがリンクしやすいのです。もちろんそれは歌っているジュリー自身もそうなんだと思います。
なおかつ、最後の最後に額に皺寄せて考えさせられる、という重い余韻は残さない・・・ただ、ジュリーの歌に洗われるという、これが「誰もが知る大ヒット曲」の強みでもあるのでしょう。

どんな時代でも聴く人の心を揺さぶり、ヒット曲特有の懐かしさと、目の前でジュリーが歌うことで生まれるタイムリーな新鮮さがLIVEの清清しいフィナーレをお客さんに感じさせてくれる、不朽の大名曲です。

☆    ☆    ☆

凄く良いLIVEでした。
ジュリーのヴォーカルや鉄人バンドの演奏ももちろんですが、何か「ウキウキ感」をステージから感じたのは、やっぱりMCの印象が強いからなのかなぁ。

YOKO君は年に1度のジュリーLIVE、しかもセットリストを知らずにマッサラな状態で臨んでいるだけに、その都度の「あっ、ここがポイント!」という気づきが毎回鋭いんですが、今回彼が「イチオシ」したいのは、下山さんのテンション、貢献度だったと言います。

実は、ついさっき受け取ったYOKO君からのメールで僕は恥ずかしながら初めて知ったんですけど・・・下山さん、今回の「危険なふたり」では、オリジナル音源のベース・パートをほぼ完コピしたようなギターを弾いていたんですって。
とすれば、これは是非とも自分の目、耳でもチェックしておかなければならない下山さんの進化です。だって、少なくともジュリワンで出演した『Songs』での「危険なふたり」の時には絶対そんなフレーズは弾いてないもの(ベースの島さんにグイグイ絡まれて恥ずかしそうにしてた絵をよく覚えています)。

僕が自然にジュリーのLIVEを見ていてどうしても目がいくのはまずジュリー、そして「危険なふたり」の場合はやっぱりリード・ギターの柴山さんをジュリーの次に注目してしまいます。
その影で、縁の下で、黒子に徹しているところで進化し、自らも楽しみ、大きくサウンド、アレンジに貢献するプロフェッショナル。それはまた、曲によっては柴山さんであったり、泰輝さんであったり、GRACE姉さんであったりするのでしょう。

ジュリーwith鉄人バンド・・・本当にいいバンドだ!

素晴らしいLIVEの後、打ち上げをご一緒してくださったみなさま・・・また、開演前、閉演後にお声がけくださったみなさま、ありがとうございました。お久しぶりのかたもたくさん、そして「はじめまして」のかたもいらっしゃいました。YOKO君と連れ立って歩いていると正体が分かりやすいようで(汗)、今回は多くの方々からお声がけを頂いての「はじめまして」がありました。
本当に嬉しい限りです。

僕はこの後、『三年想いよ』ツアー参加は遠征の神戸公演までお預けです。
しばらくLIVEの間が空いてしまいますが、各地公演のみなさまのご感想などを伺うことで、なんとか乗り切りたいと思います。
神戸では、とりあえず「危険なふたり」の下山さんのギターに注目だ~!考えてみればこの曲で下山さんの演奏を追いかけたことは今まで無かったなぁ。
楽しみです!

最後になりましたが・・・このレポートを書き終えたちょうどその日の『東京新聞』に、目をひかれる記事があったのでここに添付させて頂きます。
「東北復興日記」と題して、被災地の現状を様々な形で伝えてくれている連載の第102回は、南相馬市にスポットがあてられていました。


20140805_2

『のらとも農園』のみなさんは、「私たちはいつまで被災者なのか?」という辛い思いを持ちつつも、「殻を脱がなければ」と前を向いていらっしゃいますが

「実際現場に来ていただいて、自分の目で見て心で感じていただきたい」
「南相馬市の今を知っていただきたい」

「この思いをどうすれば伝えられるでしょうか?私たちにはそのすべが分かりません」
と結んでいらっしゃる・・・また
「復興も、もう終わったこととして捉えられている。日本中の人たちに忘れられている感じがします」
とのお言葉には、本当に胸が痛みます。

僕も逆にお伝えしたい。
沢田研二さんが10月8日に行きます。みなさんのことを「忘れないために」作った歌を歌いに行きます、と。

こんなところに書いて・・・伝わるでしょうか。
いや、僕などが書かなくても大丈夫・・・秋には南相馬のみなさんの間で「あのジュリーのコンサートがあるんだって!」と町の噂になっているはず。

そう想像すると・・・
うん、やっぱり最高のセットリストだ!

☆    ☆    ☆

それでは、神戸公演までには時間もありますし、次回更新からは再び自由お題にて、通常の楽曲考察記事をボチボチ書いていこうと思います。
まだまだ、まだまだ記事にしていないジュリー・ナンバーはたくさんあるのです。このブログで僕は、もう300曲以上書いてるんですよ・・・それでも先は全然見えてこないのです。
何と幸せなことでしょうか。

各地での台風や大雨の被害が心配される日々・・・こちら関東では先週末から凄まじい暑さで、今日など最低気温が29度という事態になっております。
みなさま、体調を崩さないようご自愛くださいませ。

20140727

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