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2014年4月23日 (水)

沢田研二 「愛の世界のために」

from『JULIE』、1969

Julie1

1. 君を許す
2. ビロードの風
3. 誰もとめはしない
4. 愛のプレリュード
5. 光と花の思い出
6. バラを捨てて
7. 君をさがして
8. 未知の友へ
9. ひとりぼっちのバラード
10. 雨の日の出来事
11. マイ・ラブ
12. 愛の世界のために

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本日、遂に『ロックジェットVol.56』の発売日です。
みなさま、もうお手にされましたか?僕は大変恐縮ながら、フラゲしまして既に熟読済でございます。
いやぁ、素晴らしい充実の内容です!

昨年から『ロックジェット』は、51号にて気合の入りまくったピー先生の特集を組み、次いで54号はトッポとタローのロング・インタビュー・・・と、世のタイガース・ファンにとって刺激的な発刊を重ねてくれました。
そして今回は『THE TIGERS 2013』ツアーの満載の写真と共に、いよいよ満を持して「ジュリー寄り」なアプローチによる鮮烈な特集内容となっています。
なんたってインタビュー初っ端に登場するのが白井良明さん、次に八島順一さんですからね~。タイガースの話題に留まらず、ジュリーのソロ作品の制作秘話も大いに飛び出したりなんかして。
特に白井さんのお話からは、ジュリー・ナンバーのアレンジ考察のネタをいくつも授かりました。

とは言ってもやはり、ザ・タイガースのステージ・ショットの数々がまず特集の目玉。例えば表紙の写真ひとつとっても、もう見慣れたショットではあるんですが、こうしてキチンと本の表紙になるとね・・・感慨深いものがあります。ピーが笑っている、シローもいる、そしてジュリーとトッポが手を繋いで声援に応えている・・・改めて「あぁ、本当に良かったなぁ」と昨年末の東京ドーム公演が思い出されます。
掲載されているショットで僕が一番好きなのは、「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」でのジャンプするジュリーと、クラッシュ・シンバルを正に強打した直後のピーの2人の呼吸をバシッ!と捉えた1枚・・・いや、これ以上写真のネタバレはやめておきましょう。みなさま、是非現物を購入し、ご覧になってください。

そんなザ・タイガース特集とは別に、お馴染みの佐藤睦さんがまたしてもジュリーについて素晴らしい文章を書いてくださっています。
今回は、新譜『三年想いよ』のレビューだけでなく、音楽劇『悪名 The Badboys Return』のレポートでも熱く語ってくれた佐藤さん。これは絶対に、遅ればせながらDVDでの観劇をせねばならない、と思わせてくれました。
佐藤さんはとにかくそのロックな感性が凄い!
語り口は理路整然と筋道だっていて、『三年想いよ』のレビューでは「そう、そういうコンセプトなんだよなぁ」ということをズバリ文章にしてくれています。
いつの時代も、その時その時で「本物」のロッカーを見分け、メッセージを自然に受け取る感性を持つのは女性だと思います。今、佐藤さんのような”ロック姐さん”がジュリーをこうして語ってくれていることは頼もしい限り。ジュリーファン必読です!

そして、佐藤さんの編集後記には、「ラヴ・アンド・ピース」というキーワードが登場します。今こんな時代だからこそ、(人それぞれが)自分の「根っこ」を考える時ではないか、と佐藤さんは熱く語ります。
今「ジュリー・ラヴソングの旅」シリーズで頑張っている拙ブログでは、はからずも今日、タイガース在籍時リリースのジュリー・ファースト・ソロ・アルバムに「ラヴ・アンド・ピース」というジュリーの「根っこ」を見出せる曲を採り上げることになりました。

アルバム『JULIE』から、ラスト収録の若々しくも壮大なバラード・ナンバーです。
「愛の世界のために」、伝授!

「ラヴ・アンド・ピース」がロックに根づき始めた60年代末。タイガース・ナンバーにしろ、ジュリー達メンバーそれぞれの作品にしろ、それを戦略的に「歌わされてきた」というだけでは済まされない輝きを放っている名曲がたくさんあります。だってそれは、誰にでもできることではないのですから。
「愛の世界のために」もそのひとつだと思います。

今年のお正月コンサートで「ひとりぼっちのバラード」が歌われたのを機に、ジュリーのファースト・アルバムが以前にも増して好きになった、というジュリーファンは多いのでは、と考えています。
無論僕もそうです。本当に何という歌声なのでしょうか。しかも、セカンドアルバム『JULIEⅡ』ともまったく違う・・・少年のようなんだけど、ファーストはむしろ今のジュリーの声と近いようにも感じるのです。

アルバム『JULIE』は、タイガース・ナンバー同様に、収録曲それぞれに本タイトルとは別の英語タイトル表記があります(これは『JULIE Ⅱ』にも引き継がれていますね)。

Julie


↑ CD『JULIE』歌詞カード&帯

「愛の世界のために」は「SONG FOR THE LOVE WORLD」。ちょっと日本語タイトルに新たな意味、フレーズを味つけした感じになっています。他の曲では、「ビロードの風」が「TALE OF WIND」となっていたりするのが似たパターンでしょうか。
「バラを捨てて」が「NO MORE ROSES」、「誰もとめはしない」が「NOBODY CAN MAKE YOU STOP IT」というのは、いかにも英語的なカッコ良さが出ています。
一方で「光と花の思い出」が「MEMORIES」、「雨の日の出来事」が「RAINY DAY」(帯の方は誤植で「RAINY」だけになってる)というのは・・・う~ん、もちろん悪くはないけど、まぁシンプルですよね。「光と花の思い出」あたりは歌詞の内容から「YOUTHFUL」とか頭につけてみても良かったかもしれないと僕は思いますが、ダサいかな?

「LOVE WORLD」・・・「愛の世界」。
「君」によって愛を知り、世界が広がった歌の主人公の人生の覚醒がテーマでしょう。しかし目を惹くのは2番の歌詞。この曲のコンセプトは、一般的な「男女の愛」と共に、「世界に愛を」という壮大な視点がきっとある、と思わせます。

世界を再び みどりと平和に
E♭                         D♭

返してくれた 君こそすべて ♪
Fm                B♭7    E♭

近年のジュリー自作詞において重要なキーワードとなっている「みどり」「平和」というフレーズが、このファーストアルバムの時点で既に、ZUZUの詞で歌われていたのですね。

ちょうどこの頃海の向こうの音楽は、フラワー・ムーヴメント真っ只中。
サリー&シローのアルバムに収録されている「花咲く星」で、「花で戦争がやめられると言ったら・・・あなたは笑うでしょうか」とゲスト参加のジュリーが語るフレーズがありますが、当時フラワー・ムーヴメントを正攻法で「ラヴ・アンド・ピース」に置き換え体現できる日本の歌手は、やはりGSの王者、ザ・タイガースのメンバーだったということでしょう。世間に強く「届く力」(セールスを含みます)というものが必要となるからです。
ジュリーのソロ、サリーとシローのアルバム、そして別の道を選んだとは言えトッポのソロにもそのコンセプトが堂々とあり、もちろんザ・タイガースの「ラヴ・ラヴ・ラヴ」がその最高峰たるナンバーと言えます。

さて、先のお正月LIVE『ひとりぼっちのバラード』のMCでジュリーは、このファーストアルバムの制作秘話を少しだけ話してくれました。
作曲の村井邦彦さんが曲の打ち合わせの際、「(ジュリーのヴォーカルは)タイガースで歌っている曲よりもう少しだけ低い音域が良いと思う」と話していたのだそうです。これが、先に述べた「今のジュリーの声に近い、とすら感じる」理由なのですね。
なるほど、『JULIE』収録曲のヴォーカルは、タイガース・ナンバーよりも声が太いのです。それでいて無垢な、ただひたすらに「歌う」ことに向かっている声。

お正月のセットリストで採り上げられたツアー・タイトル曲「ひとりぼっちのバラード」については、ジュリーとしては当時歌詞の内容に抵抗もあったりしたようですが、「今なら歌の気持ちが分かる」とのことで、新年早々素晴らしい情感に満ちた歌声を聴かせてくれましたよね。
それは、「音域が今の自分に合ってる」ということも大きかったのではないでしょうか。

ちなみに「愛の世界のために」で調べてみますと、メロディー最低音が低い「シ♭」、最高音が高い「ド」。確かにタイガース・ナンバーよりも低い音域です。
さらに言うと村井さんは同時期にトッポのソロも作曲していて、こちらは『JULIE』収録曲と比べてハッキリとキーが高いんですね。曲の音域ひとつとっても、歌い手が一番その力を発揮しやすいように・・・と心を砕いて作曲に取り組んでいたんだなぁ、と改めて村井さんのプロフェッショナルな姿勢を思います。

Songfortheloveworld

『沢田研二のすべて』より
いやぁ、このスコアの採譜はどの曲も大変大らかです。「愛の世界のために」も、何故だかキーが1音上がってるし・・・Aメロの一番おいしいトコのコード進行も明らかに違うし・・・。
でも、そんな叩き台があった上で、ああでもない、こうでもないと時を忘れて熱中し自分なりに修正していると、新たな曲の魅力の発見もあり、とても楽しいです。

ゆったりとした、バラードの王道。
実はタイガース・ナンバーで、洋楽カバー曲を除くとジュリーはこのタイプの長調バラードを数えるほどしか歌っていません。正規にリリースされた曲ですと、後期の「スマイル・フォー・ミー」が最初じゃないかな。意外なほどに例は少ないのです。
当時ジュリーは心の何処かで「バラードはかつみやシローの分野」と考えていたかもしれません。実際、「スマイル・フォー・ミー」のリリース時に「こういう曲は本来シローの担当なんだけど・・・」と語っています。

それがファーストアルバムで本格的な長調バラードを何曲か歌うこととなり、ジュリー自身には違和感があったりしたのかなぁ。ただ、村井さんはじめ周囲のスタッフは、むしろジュリーの歌手としての資質を「愛の世界のために」「ひとりぼっちのバラード」のような曲にこそ見出していたのではないでしょうか。
今では誰も異議を唱えることなどない「バラードのジュリー」を最初に根づかせた作品として、アルバム『JULIE』が大きな意味を持っていたことが、後追いファンの僕は今にして分かるのです。

何にも かえがたい やさしさが
A♭           Gm      A♭      Gm

僕を ひきつける ♪
Fm7  F7         B♭7

「年を重ねたジュリーが歌うことを安井かずみさんが想定していたような曲」だと先輩が仰っていた「ひとりぼっちのバラード」以外に、今ジュリーが「歌ってみようかな」と考える『JULIE』収録曲はあるのでしょうか。「今こそ歌ってみよう」と思えそうな曲は・・・。
僕は、「愛の世界のために」もそんな1曲のような気がするんですけどね。今のジュリーが歌ったら、安井さんの詞も一層沁みると思うのですが・・・。

ところで、アルバム『JULIE』はタイガース・ジュリー初のソロアルバムということで当然ながら話題性もあり、雑誌(『女学生の友』・・・なのかな?)でそれぞれの曲の歌詞と共に若きジュリーのショットを載せた「フォトポエム」(72年から『女学生の友』連載の同シリーズとは別物)なる企画がド~ン!とカラー特集されているんですね。
今、僕の手元にも数枚あります。
Mママ様よりお預かりしている膨大なお宝資料の山の中から発掘されたのは、「ビロードの風」「誰もとめはしない」「バラを捨てて」「君をさがして」「ひとりぼっちのバラード」「マイ・ラブ」の6曲分の「フォトポエム」。ちょうど半分ですね。
これは当然、全12曲分存在するんですよね・・・?

アルバム『JULIE』からの考察記事執筆の際には、もしお題曲の「フォトポエム」があれば添付させて頂いています(「ひとりぼっちのバラード」「バラを捨てて」の各記事参照)が、今回の「愛の世界のために」は残念ながらありません。
どんな写真だったのでしょうか。これ、季節が冬のショット、というのがイイんですよねぇ。ジュリーは皮ジャン着たり、縞々のセーター着たり。
いつか、全曲分を拝んでみたいものです。


では、今日のオマケです。
お題曲とは1年近いタイムラグがある資料なんですけど、北海道の琴似というところにある古書店さんのネット販売で発見、即購入した『明星』付録歌本『YOUNG SONG』です。
年代の違う3冊の『YOUNG SONG』がセットで800円という掘り出し物。現在、雑誌付録の歌本の古書価格は1冊500円が相場ですからね。しかも3冊のうち1冊はジュリーが表紙のものでした。

今回ご紹介するのはジュリーが表紙というわけではありませんが、1970年11月号・・・とにかくこうした歌本は、ジュリーがソロになって以降のものはちょくちょく見かけますが、タイガース時代に発行されたものって、古書市場に出回っていること自体がちょっと珍しいんですよ。

まず巻頭の、読者投票による人気曲・人気歌手ランキング『明星ベスト・ヒット20』のページに、若虎ジュリーの小さな写真を発見。
他掲載の男性歌手の写真と比較すると、当時としては明らかに未来進化系のイケメンです。

Ys70111

ランキングは第1位が藤圭子さんの「命預けます」。ザ・タイガースはと言うと、第10位に新曲(!)の「素晴しい旅行」がラインクイン。
歌本ですから、当然スコアの掲載もありました。

Ys70112

そして想定外の掲載で嬉しかったのが、洋楽ヒット中コーナーで見つけた「イエロー・リバー」のスコア。

Ys70113

偶然今回の『ロックジェット』で、白井さんがタローの「イエロー・リバー」についても語ってくれていて、その話の流れで僕にとってはかなり衝撃のアレンジ秘話が飛び出していました。
いつかこのスコアや白井さんのお話を参考に、「イエロー・リバー」の記事も書きたいと思っています。


それでは次回更新ですが・・・いきなり時代が大きく飛びまして、熟年ラヴ・ソングを採り上げようと思っています。
穏やかな愛の歌が聴き手それぞれの人生に重なってゆく魔法は、何もジュリー・ラヴソングに限ったことではないのでしょうが、やっぱりジュリーのあの声で歌われると、まず「癒される」という感覚があり、自然に我が身に置き換えてしまう・・・そんな名曲。
まだまだ「ジュリー・ラヴ・ソングの旅」は続きます!

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コメント

DY様 おはようございます。

この頃のジュりーという存在がなければ決して生まれなかったアルバムですよね。
ジュリーは「心ごと体ごと」歌に入り込む、とDY様はおっしゃいました。
でも優しさと残酷さ、寛容と潔癖が同時に存在するこのこのアルバムはジュリーという「少年」の「素材」そのもので出来ている気がします。
なにしろこんな「ひよっこ」が普遍的な「愛」を何の気負いもなく歌いあげてしまうのですから。

「ロックジェット」読んでます。
字の小ささがツライ・・・。年ですねぇ。
拡大コピーしようかな。

タイガースのDVDも来ました。どれから見りゃいいのよ~とうれしい悲鳴をあげてます。


投稿: nekomodoki | 2014年4月25日 (金) 06時47分

nekomodoki様

ありがとうございます!

そうなんですよね…まだ「歌わされて」いるような状態で、こんな普遍的な愛を気負いなく歌いあげてしまうジュリー。本人すら気づいていない稀有な才が詰まったファーストアルバムです。まさに「少年の素材」から導かれ世に出されたジュリーの輝く原石がここにあります。

『ロックジェット』、実は僕も文字を追いにくい…老眼進行のスピードのあまりの速さ、恐るべしです

投稿: DYNAMITE | 2014年4月25日 (金) 12時24分

DY様

ロックジェット読みました。

素晴らしい

ROCKヴォーカリストとしてのジュリーが、クラスマガジンで、ROCKとして正当な評価を受けるとともに、こうして語られることを、私は十代の頃から、長い間心待ちにしていました。

読んでいて、ジュリーファンになった十代の頃からの、いろんなことが思い出され、自然と何度も目頭が熱くなりました…感無量です。

当のジュリーは、もう世間の評価に一喜一憂するような次元は、とっくに超越してると理解してますが、ジュリーファンとしては諸手をあげて歓迎します。

あの時、大阪ドームに足を運び、DY様のブログで感動が二次加工されて増幅され、自分が十代の頃から支持していたことに自信を深め、ジュリーファンに戻ってホントに良かったです

私も『悪名』が心底観たくなりました。

追伸
お題の楽曲、聴きなおしてみます(汗)

投稿: Mr.K1968 | 2014年4月26日 (土) 21時22分

Mr.K1968様

ありがとうございます!

『ロックジェット』、本当に素晴らしかったですね。

とにかく、不思議なことですね…ジュリー自身はもう、世の評価とかそういうことはまったく関係無く、とにかく自分の信じるままに歌っていく、というスタンスで何ら問題ない環境に至ったのと時を同じくして、様々な分野のプロフェッショナルからの熱烈な評価を受けるようになったという…。

Mr.K様の仰る通りで、世のそうした動きはジュリーファンとしては大歓迎、本懐ですけどね!

投稿: DYNAMITE | 2014年4月26日 (土) 21時55分

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