沢田研二 「ロマンスブルー」
from『ROCK'N ROLL MARCH』、2008
1. ROCK'N ROLL MARCH
2. 風に押されぼくは
3. 神々たちよ護れ
4. 海にむけて
5. Beloved
6. ロマンスブルー
7. やわらかな後悔
8. TOMO=DACHI
9. 我が窮状
10. Long Good-by
11. 護られている I love you
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今日は、ジュリーが還暦を迎えた2008年にリリースされたアルバム『ROCK'N ROLL MARCH』からお題を採り上げます。
先日発売された『ロックジェット Vol.56』掲載インタビューにて、「沢田さんのアルバムでひとつ挙げるとしたら?」と問われた白井良明さんが、「自分の中でエポックだった」と語ってくれた名盤ですね。
僕は2008年の通常のツアーには間に合いませんでしたが、『ジュリー祭り』にて、『ROCK'N ROLL MARCH』全収録曲を生で聴いています。
拙ブログでは、”ジュリーの70越えまでに『ジュリー祭り』セットリストすべての記事を網羅する!”という大きな目標を掲げています。それはそのまま、あと4年ちょっとの間にアルバム『ROCK'N ROLL MARCH』収録曲すべての記事を書き終えなければならないということでもありまして・・・年に1、2曲はこのアルバムから必ず書いていく、と自らにノルマを課しております。
現在「ジュリーの様々な愛の歌を巡る時空の旅」をコンセプトに執筆中の今回は、その中から穏やかなラヴ・ソングをお題に選びました。
「ロマンスブルー」、伝授です!
不思議な、それでいて自然な響きを持つタイトルです。
「ロマンス」と「ブルー」。「ブルー」は、悲しみであったり、憂鬱であったり・・・どちらかと言うと淋しげな気持ちを表す言葉ですが、「ロマンス」は逆に心躍る、楽しい言葉ですよね。
この相反する2つの言葉が繋がると、どんな意味になるのでしょう。使われ方によって様々な解釈ができるフレーズだろうなぁ、とは思いますが・・・。
実は「ロマンスブルー」って、僕にとっては昔から馴染みのあるフレーズではあるのです。
タイトルとしては、ずっと浜田省吾さんの曲のイメージがありました。浜田さんの「ロマンスブルー」は、浜田さんが明確に”反核”を打ち出したアルバム『PROMISED LAND~約束の地』に収録されています。淋しさの中に優しさを見出す意志の強さを持つ曲で、「それぞれのロマンスをとりまくブルー」がテーマといった感じ。
『ROCK'N ROLL MARCH』を初めて手にし曲目を見た時、すぐに浜田さんの曲が浮かび、同タイトルでどんな内容の曲なんだろうと興味をそそられたものでした。
聞かせてよ 僕らは 大人にいつなった?
C F E F
あの頃の 僕らを どんな風に見てた?
C F E F
相変わらず だけど少し 涙 もろい
F C F C F Fm C A7
君に似てきたようだ ♪
D7 G
初めて聴いた当時はそこまで考えが及ばなかったのですが、さすがに今の僕はジュリーが「大人」と歌うと、「きれいな大人」という重要なフレーズを自然に連想するようになりました。
ただ、「ロマンスブルー」の場合は作詞がジュリー自身ではなくGRACE姉さんです(作詞・作曲)。
もちろん「ジュリーが歌う」ことがGRACE姉さんの頭にしっかりとあったはずですし、なにしろジュリーの人生とシンクロするような歌詞を書いてくれることにかけては、それ以前からGRACE姉さんは実績充分。「確信」「未来地図」「明日」など素晴らしい名曲が多数ありますよね。
それらは厳密には、ジュリーが辿ってきた人生その通り、というのとは違います。ジュリーが歌ってジュリー自身の人生に引きつけている・・・そんな感覚が「ロマンスブルー」にもあると思います。
自分はいつ大人になったのか・・・人それぞれに実感できる時期は様々でしょうね。
僕自身に置き換え考えてみるとそれは、身も蓋もない話ですけど「自分で稼いだお金で生活し、欲しいものが自由に買えるようになった時」でしょうか。
例えば、『ジュリー祭り』に感動のあまり、それまで持っていなかったジュリーのアルバムを一気に買い込んでしまう・・・なんてことは「大人」でなきゃできない(笑)。
まぁそれはほんの数年前の話ですけど、じゃあいつからそういうことができるようになったかというと、就職してサラリーマンになった時、ということになるのかな。
対して「あの頃の僕ら」というのは、大人になる前の僕ら、ということですよね。ヤンチャして、親に心配ばかりかけているのに、あれこれ夢ばかりを口にしていた頃・・・僕にも当然覚えがあります。
大人になった自分は、大人になる前の自分をどんなふうに見てた・・・?
つまり、「ロマンスブルー」の主人公は、「大人」になってからもうずいぶん年を重ねている・・・「大人になった」頃の自分を思い起こしている、そんな年齢であると言えそうです。そして、ずっと傍にいてくれる年齢の近い人に対して「僕らは」と語りかけているのです。
これは、友達同士或いは「恋していた頃」という捉え方ももちろんあるでしょうが、ジュリーが歌うとやっぱり熟年の夫婦の歌に聴こえるんですよね。
僕はまだ結婚してたかだか5年目で、その点では新米もいいとこなんですが、この曲で歌われている感覚はなんとなく想像できるような気はします。
「大人」になった自分・・・いつ大人になったのかは分からないけれど、「大人になってから」数十年、考え方とか食べ物の好みとか、基本的な気質は「相変わらず」だよと。相変わらずなんだけど、「君」同様に最近少し涙もろくはなったきたかなぁ、ということでしょうか。
確かに、年齢を重ねてくると涙もろくはなってきますね。
例えば僕は今回の記事を下書きしている間、通勤電車内や仕事での移動中などにアルバム『ROCK'N ROLL MARCH』を繰り返し通して聴いていましたが、「Long Good-by」や「護られているI love you」では知らず知らずのうちに涙ぐんでしまっているわけですよ。
これは、曲の理解度が僕なりに深まってきたこともあるのかもしれない・・・でも、「この2曲の良さが分かる=それなりに年齢を重ねてきた=思わず涙が・・・」という連鎖のようにも思えるなぁ。
「君に似てきたようだ」・・・これはもう、よく世間で言うじゃないですか。「夫婦は似てくる」と。
僕らのような新米の夫婦にさえ、そういう会話は自然に出てくることがあるのです。
「風邪ひいた時の喉の腫れが酷くなった」とか、「物を何処に置いたか忘れるようになった」とか、やれギックリだやれ冷え性だ何だ、と・・・「どうしてそんなトコが似てくるかなぁ」と笑い合っているわけですが、これはよく考えると、「夫婦で似てきた」のではなく単に「お互いにトシをとってきた」ということなんですよね。
そういうことって、おそらく一人で生活していると「もうトシなのかなぁ・・・」と”ブルー”にしょげかえるだけの、「老い」への感傷。ところが夫婦が一緒に生活していると、「似てきちゃったねぇ」という”ロマンスブルー”で和やかに笑って済ませられるという・・・この曲はそんな歌なんじゃないかなぁ。
いや、それはタイトルを都合よく解釈し過ぎで甘い考えなのかな。GRACE姉さんの作詞時点では、歌の主人公は40代の設定だとは思うけど、『ROCK'N ROLL MARCH』のジュリーのヴォーカルで聴くと、60才の歌としか思えない。
そう考えると正直、僕のような若輩にはまだまだ還暦の境地など分かりっこない、とも言えますけど。
ちなみに、考察記事を書く時にはお題の1曲だけを聴き込むよりも、その曲が収録されているアルバムを通して聴く方が新たな発見が多かったりします。その時ジュリーがどんな気持ちで楽曲制作に取り組んでいたのかが伝わってきやすいですし、他収録曲との比較から、先述した「あの頃を振り返って」といったような、歌詞の持つテーマ性にまで考えが及ぶことがあり得るのです。
例えばアルバム『ROCK'N ROLL MARCH』で言いますと、5曲目の「Beloved」から6曲目「ロマンスブルー」、7曲目「やわらかな後悔」とGRACE姉さんの作詞作品が3曲続くじゃないですか。
「あぁ、GRACE姉さんの詞、イイなぁ」と続けざまに聴いていてふと、「ん?3曲全部、過去の人生を振り返っているような詞じゃないか?」と今さらのように(恥)気がつくのです。
現在ジュリーがアルバム制作にあたって鉄人バンドのメンバーに「PRAY FOR EAST JAPAN」をテーマとした作曲、と明確に提示しているように、もしかしたら還暦の年にリリースするアルバム作りに際して、作詞・作曲家陣に「みなさんそれぞれのこれまでの人生をふりかえって」というテーマを与えた作品がいくつかあったのかもしれない、と思いました。
もちろんジュリー自身の作詞作品にもそれがあり、言うまでもなく「Long Good-by」がそうですし、ひょっとしたら「我が窮状」もとっかかりはそんなテーマから導き出されてきた詞なのかもしれない、とも思ったりします。
さて、「ロマンスブルー」はレコーディング面でも興味深い点があります。
この曲はちょうど今の鉄人バンド・スタイル(ギター2本、キーボード、ドラムス)がそれぞれ1人ずつワントラックを受け持てば再現できるような、必要最低限の楽器数で構成、アレンジされています。ところが、2トラックでレコーディング可能なギターを、白井さんはわざわざ3トラックに分けて演奏しているのです。
ミックスで言うと、中央と右サイドの2つのトラック・・・これはどう考えても1本のギターで一気に演奏されるべきアレンジになっているのですが、エフェクト設定を違えて2トラックに分けられ、ミックスも分離されています。
ジュリーのヴォーカルに重なる箇所と重ならない箇所とではギターの鳴りを変えたい、という白井さんの拘りでしょう。
『ロックジェット Vol.56』でのインタビューが示す通り、白井さんにはまずジュリー・ヴォーカルへのリスペクトがあり、それがアレンジにも影響してくるのですね。
またこのアルバムは打ち込みのドラムスが使用されていますが、「ロマンスブルー」で数回登場する「ダダッ」というスネア2打のフィルなどは、生ドラムのような微妙なズレが施されています。
リズムボックスの打ち込みには「STEP」と「REAL」の2通りの方法があって、このフィルは「REAL」の手打ちで入力されているのでしょう。これも「わざわざ手間をかけて」の作業で、そうしたことがアルバムのクオリティーを一段押し上げているのではないでしょうか。
最後に。
ロマンスブルー ふたつの影
C F
にじませ ひとつにする
E F
藍になろう 愛であろう 愛になろう ♪
Fm C Fm C Fm C
このラストの歌詞部、良いですね。
これは、共に年齢を重ねてきた2人が、夕暮れ時に互いの影を重ね合わせる、という単純な構図のことだけではないと思います。
寄り添って生きてきた、辿ってきた、乗り越えてきたものをどれほど共有しているのか・・・ジュリーの歌声からは、そんな確信が伝わってきます。
そこまでの境地に至るのはなかなか大変な道のりなんだろうけど、自分なりに目指してのんびり進んでいこうか、と変に力むことなく思わせてくれる・・・GRACE姉さんの優しい楽曲、ジュリーの暖かなヴォーカル。
「ロマンスブルー」、名曲ですね!
そして・・・改めて、『ジュリー祭り』に感謝。還暦を迎えたジュリーが届けてくれた『ROCK'N ROLL MARCH』という不朽の名盤にも感謝です。
そうそう、数人の先輩から記事のリクエストも頂いているアルバム・タイトルチューンの「ROCK'N ROLL MARCH」について、これまで何度か書こうとして「どうも考察が甘いなぁ」と先送りにしてきたんですが、先日発売の『ロックジェット Vol.56』に掲載されているインタビューで、白井さんがチラリとこの曲の制作コンセプト、アレンジオマージュについて語ってくれているんですよね。「あぁ、なるほど」と思いました。
タイミングが良ければ、今年の12月3日に考察記事を書こうかなぁ、と考えています。
また、実際にジュリーの歌声でもう一度聴いてから記事を書きたい、と思っているのが「護られているI love you」。これは今年のツアー・セットリスト入りを大いに期待しています!
それでは、今日のオマケです。
2008年12月3日(仏滅)の『ジュリー祭り』参加を境に、大ゲサではなく人生まで変わってしまった僕ですが、当日まではそんな予感はまったく無く、ジュリーのツアーについてネットで調べることもせず、メディアの関連記事もアンテナに引っかかることなく・・・まったりと過ごしてしまっていました。
「その日」を迎えるまで、一般世間でも色々なジュリー情報が少なからず発信されていたのにね・・・。
5年ちょっと前の資料ですから、みなさまにとってはまだ「懐かしい」という感覚は無いかもしれませんが・・・2008年の新聞記事をいくつかおさらいしてみましょう。
2008年11月14日付の読売新聞です。
みなさまは、もうこの頃になると「2大ドーム興行待ったなし!」とドキドキされていたでしょう。
対して僕は日々の忙殺に追われるばかり。「ジュリーを観にいくんだ」という現実感もまだまだ沸いてこなかった頃です。チケットはもう手にしていましたけどね。
そしていよいよ東京ドーム公演前日となりまして、12月2日・・・この記事は中日新聞でしたっけ?
さすがにこのヒヨッコも、前夜は興奮していましたよ。全然間に合うわけないのに、「最近の曲をちょっと覚えていくか」とYou Tubeをハシゴしてみたり。
ここまでの2つの新聞切り抜き資料は、後日J先輩から授かったもの。僕はこれらの記事のことは何も知らずに当日を迎えてしまいました。
そして!
東京ドーム公演翌日、12月4日付のサンケイスポーツです。これは、前夜の興奮醒めやらぬ状態で出社した僕が、会社にあったサンスポにセットリストが掲載されているのを見つけ、記念にコピーして(だからモノクロなのです)持ち帰ったもの。
翌5日に、どの曲がどのアルバムに収録されているのか、ウィキでせっせと調べました。
90年代~2000年代の曲をほとんど知らなかったので(「A・C・B」の誤植が辛うじて分かるくらいのレベル)、結構大変な作業でした。画像をご覧頂ければお気づきの通り、紫色のペンで初々しい(笑)覚え書きが残っています。たぶん「買うアルバム候補」として記入したのではないかと・・・。
そんなことをしているうちに、「そうだ、ブログにライヴレポートを書こう!」と突如思い立ったという。
その頃は「下書き」なんてしていなくて、ババ~ッ!と思いつくまま、一気に書きました。さすがに1日では前半部までしか書き終わりませんでしたが。
その日から、このブログは「じゅり風呂」となり、少しずつ世のジュリーファンのみなさまに読んで頂けるようになっていったのでした。当初は先輩方がコメントを下さるだけでえらい興奮して、「またジュリーファンに読んでもらえた!」とYOKO君にその都度電話したものでしたね。
本当に感謝しています・・・。
さて次回更新ですが・・・再び大きく時代を遡ってのお題になります。
先日「LOVE(抱きしめたい)」の記事で、「これは『歌門来福』セットリスト唯一のシングル・ヒット曲」などと書いてしまいましたが、まだあるじゃん!と気がつきまして・・・懺悔執筆です。もちろん、ジュリー珠玉のラヴ・ソングですが、またしてもお題バレバレですな・・・(汗)。
先輩からお預かりしているジュリー関連のお宝資料が一番多い時期のシングル曲ですので、この機会に様々な資料もご紹介したいと思っています。
余談ですが、風邪をひいてしまいました・・・。
気候の急激な変化、みなさまもどうか充分気をつけてお過ごしください。
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