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2013年12月

2013年12月29日 (日)

ザ・タイガース 「花の首飾り」

from『THE TIGERS SINGLE COLLECTION』
original released on 1968、single


Tigerssingle

disc-1
1. 僕のマリー
2. こっちを向いて
3. シーサイド・バウンド
4. 星のプリンス
5. モナリザの微笑
6. 真赤なジャケット
7. 君だけに愛を
8. 落葉の物語
9. 銀河のロマンス
10. 花の首飾り
11. シー・シー・シー
12. 白夜の騎士
13. 廃虚の鳩
14. 光ある世界
15. 青い鳥
16. ジンジン・バンバン
disc-2
1. 美しき愛の掟
2. 風は知らない
3. 嘆き
4. はだしで
5. スマイル・フォー・ミー
6. 淋しい雨
7. ラヴ・ラヴ・ラヴ
8. 君を許す
9. 都会
10. 怒りの鐘を鳴らせ
11. 素晴しい旅行
12. 散りゆく青春
13. 誓いの明日
14. 出発のほかに何がある

--------------------

『THE TIGERS 2013』は、ファイナル・東京ドームの素晴らしいステージを以て無事終了いたしました。
いや、本当に素晴らしかった。何よりステージの空気が良かった・・・激しい曲でも、何か暖かい空気感がありました。
僕が選ぶMVPは、やっぱりジュリーかな。演奏陣だと間違いなくピー先生でしょう。

この先ザ・タイガースが全員揃って何らかの音楽活動をする機会があるのかどうか・・・それは分かりませんが、今回の2013年のツアー大成功を経て、やっぱりこれまで以上のメンバー同士の人間関係が互いに築かれたのではないでしょうか。音楽的にも、プライヴェートにおいても。
還暦をとうに超えて、昔の仲間誰ひとり欠けることなくそれができる、というのは本当に奇跡です。シロー登場直前、東京ドームでのタローの感極まりながらも爽やかなMCには、そんな気持ちが込められていたんじゃないかなぁ・・・。

さて、そんな東京ドーム公演の詳しい様子については、年明けに執筆を開始するLIVEレポートをお待ち頂くとしまして・・・今日はひと足先に”『THE TIGERS 2013』セットリストを振り返る”シリーズにて楽曲考察記事を書きます。これが拙ブログ2013年最後の更新です。

今回の”振り返る”シリーズは、ずっと以前から「この1曲!」と決めていました。
はからずも、拙ブログ2013年最後の更新にこのお題。ザ・タイガース復活のメモリアル・イヤーの締めくくりとしてふさわしい曲かと思います。
「花の首飾り」、僭越ながら伝授!

ザ・タイガース最大のヒット曲であり有名曲。
「ファンが選ぶザ・タイガースこの1曲」という観点ならば、おそらく「君だけに愛を」にその座を譲るでしょうが、世間一般の認知度、或いはタイガースの音楽性を浸透させた貢献度、そして何より素晴らしい詞曲の良い意味での大衆性において「花の首飾り」は群を抜いています。
例えば、『懐かしの歌謡○○』とか『R45指定の○○』といった感じのオムニバスの楽譜なんかには、ザ・タイガースから必ずこの「花の首飾り」がセレクトされるわけです。どんな楽器を嗜む人にも、敷居高くなく受け入れられるというのは「花の首飾り」の持つ、他のタイガース・ナンバーには無い傑出した魅力なのですね。
過去・現在・未来・・・世のヒット曲の流行り廃りに左右されないタイプの名曲と言えます。

Hananokubikazari03

さて、この曲についてはピー先生の新著『花の首飾り物語』で、これまでファンが正確な情報を持ち得なかったレコーディング当時の状況や、すぎやま先生の作曲秘話、そして原作詞者である菅原房子さんについてなど、様々なことが分かってきました。
特に「タイガース屈指の大ヒット曲であり、これだけ多くのカバー・ヴァージョンを生んでいる有名な曲なのに、誰も原作詞者の菅原さんについて知らないのはおかしい」という当然の疑念が、ピー先生の探究心と努力、自身の足を使っての取材で紐解かれた意義は、とてつもなく大きいと思います。僕はこうしたいかにも先生らしい研究意欲を持つピーの姿勢、キャラクターはとても好きです。
(また、ピーはその後「白夜の騎士」原作詞者である有川正子さんとも遂に対面を果たしたようで、12月24日付の『北海道新聞』記事がピーのオフィシャル・サイトにて紹介されています。有川さんは、タイガースのメンバーよりお姉さんでした。「白夜の騎士」の詞を思うとそれも、なるほどお姉さん視点の詞なのかなぁという感じがします。ともあれ、ピーの探究心と行動力がザ・タイガースの歴史を次々と検証し光を当てていきます。素晴らしい・・・さすがは先生です!)

詳しいことは、みなさまにも是非『花の首飾り物語』を購入して実際に読んで頂きたいので、ここでは簡単な引用に止めつつ、僕なりの楽曲考察に取り組んでいきたいと思います。

新著にてまずピーは、残念ながら2011~12年のツアーには不参加となってしまったトッポのライヴハウス演奏を訪ねるところからプロローグ導入し(この冒頭のシーンはとても良いです。ステージでは無心に暴れ回りハジけまくるピーですが、物書きとしては「熱いハートをクールに俯瞰する」素晴らしい一面を魅せてくれます。これは先の日記形式で書かれた『老虎再来』では後追いファンには感じるまでに至らなかったピー先生の新たな魅力で、その点も『花の首飾り物語』を僕がみなさまに強く一読をお勧めする理由のひとつです)、そこから「当時の回想」という形で本篇が始まります。


ピーはレコーディング当時を振り返るにあたり、雑誌『明星』の記事を引用してくれているのですが、これが偶然、今回のツアーが始まる直前に、僕がいつもお世話になっているJ先輩のP様からお借りした貴重な切り抜き資料集にあったもので、「あっ、これはついこの間読んだ資料だ!」と興奮したものでした。
スキャンさせて頂いたものをご紹介しましょう。

Hananokubikazari01

Hananokubikazari02

ピー先生によりますと、メンバーの会話などの記述については正確さを欠く(まぁそうでしょうね笑)・・・のだそうですが、これは初めてリード・ヴォーカルの重責を担うトッポが何度もテイクを重ね、ジュリー達が時にアドバイスしながら盛り立てた、という様子が伝わる貴重な資料なのですね。
ピーはレコーディングの場所や環境まで自分の足で現地に赴くなどして『花の首飾り物語』にて検証してくれています。

こうしてレコーディングされた「花の首飾り」は、当初はシングル『銀河のロマンス』のB面曲に過ぎなかったものが、あれよあれよという間に好評を博し、タイガース最大のヒット曲となってしまったのです。すぎやま先生達制作スタッフや、ヴォーカルのトッポはじめタイガースのメンバーに手応えはあったにせよ、これはリリース時の制作サイドの予測を遥かに超えるセールス実績となったのではないでしょうか。

では何故、「花の首飾り」というナンバーがそこまで世間の支持を得たのでしょう?

それは、すぎやま先生の作曲が素晴らしかったことは当然としても、やはり「一般公募」の期待想定を大きく凌ぐ菅原さんの原作詞にある物語世界と、耳新しい個性的なトッポのリード・ヴォーカルをフィーチャーしたことが、いわゆる「それまでのザ・タイガース」とは異なる新たなイメージを鮮烈に生み出したからでしょうね・・・。

ここで、僕が先程使った「それまでのザ・タイガース」という言葉について語らねばなりません。これはまったく後追いファンの想像に過ぎないにせよ、いつもお世話になっている先輩も同じ思いをお持ちのようですから、安心して書かせて頂くのですが・・・。

「花の首飾り」以前・・・ザ・タイガースは圧倒的な人気を誇りながらも、一方では「やっかみ」的に彼等の成功に疑念を持つ大人達、一部の教育者、知識人という「敵」も大きな存在としてあったと思われます。
まったく的外れな評価・・・「騒音」「なんの深みも無い」「あんなのは音楽ではない」などといった、「未知の脅威」に怯えるに等しい不当な言葉の数々。そのターゲットとなっていたのが、あの5人がロック・ナンバー演奏時に醸し出していた途方もないエネルギーであり、動きであり、「花の首飾り」リリース直前で言えばそれはジュリーの「君だけに愛を」における「指差し」アクションに集約されていたかもしれない・・・世の中の少女達を惑わす、たぶらかす「不良の振る舞い」という強引な理屈だったのでしょう。

ところが、「花の首飾り」には、そうした大人達のあらさがしのような攻撃を受ける要素が無かったわけです。
クラシカルなアレンジ、切ないメロディー、幻想的な歌詞。
これは、なかなかビートルズを正当に評価しようとしなかった有識者(?)達が、「イエスタデイ」を聴いて掌を返した状況とよく似ています。

「あぁ、今度のタイガースの曲はマトモな音楽じゃないか」と・・・その程度の認識ではあったにせよ、また一部に根強い社会の反発を残していたにせよ(レコード大賞とか紅白とかね)、「君だけに愛を」では到底納得しなかった頭の固い連中をして、おおむねザ・タイガースが「音楽」として普通に語られ始めた・・・そんな状況の第一歩が「花の首飾り」によって踏み出されたと言えるのではないでしょうか。

つまり、本来正当な評価であったはずの「君だけに愛を」までのザ・タイガースへの少女達の熱狂が、「花の首飾り」でようやく一般的市民権を得た・・・と、言い方は微妙かもしれませんが、そんな感じのことが起こったんじゃないかなぁ。
・・・いや、そこまでは行ってないのか。学校の先生あたりが「タイガースは認めん。でも花の首飾りは良い曲だ」くらいの反応に留まっていたのかも・・・後追いの勝手な憶測で、タイムリーなタイガース・ファンのみなさまに、かえって辛い思い出を呼び起こさせてしまったのであれば申し訳ありません・・・。

しかしそんなふうに考えていくと、世間のジェラシーを一身に浴びていたジュリーが「花の首飾り」を歌っていたら、この曲は「シングルB面の隠れた名曲」というファンの間だけの評価に留まっていたかもしれません。それまではあまり社会の不当な攻撃に晒されにくいスタンスにあった、芸術思考の強いトッポが一躍「主を張る」ことで、頑なだった受け入れる側のスイッチが切り替えやすかったことも、「花の首飾り」の大ヒットに繋がったのではないかと思います。

ある程度は「いける!」と踏んでいた制作側にとっても、ここまでの大ヒットは考えていなかったでしょうね。もしかすると、「花の首飾り」の驚異的なセールスに一番ビックリしていたのは、原作詞者の菅原さんだったかもしれません。

それではここで、「花の首飾り」で菅原さんが描いている情景について、トッポのヴォーカルと合わせて考えてみましょう。

後追いファンの僕もようやく生で聴くことのできた、トッポの「花の首飾り」。やっぱり唯一無二なんですよ。この曲はもう、トッポそのもの。
トッポ自身はクールに「一度歌になってしまえば、歌は聴き手のものだから」と語っていますが、この曲をトッポの歌と切り離して考えることはできないですね。

もちろん、2011~12年のツアーでのジュリーのヴォーカルにも、違った素晴らしさがありました。ジュリーがこの曲を歌うのを何度も生で聴き、DVDにも残されたこと・・・ファンとしてはとても嬉しいことでした。
でも


やっぱりいい歌だよね。
切ないよね。好きだとか、愛しているということは言わなくても、気持ちはよくわかるよね。歌い方も、かつみもそうだろうけど、感情をそんなに乗せなくても、感情が伝わる歌だよね。

ジュリーがピーの取材に対しこう語ったのは、正にそのツアー、トッポの代理で「花の首飾り」を歌っていた時期だそうですが・・・ジュリーはまた

ずっとかつみを意識しながら歌ってる。かつみほどじゃないな、と思いながら。

とも語っているように、「トッポが僕らをバックにして歌うのが一番いい」という考えはそのまま、ジュリーが「感情をのせなくても感情が伝わる」という、リリース当時のトッポの歌い方をリスペクトし、「自分もそう歌わなきゃ」と心を砕いていたことの表れだと思います。

トッポもジュリーも、余分な感情は載せずに、「花の首飾り」という素晴らしい歌をそのまま「歌」として歌っています。だからこそ、世の幾多のカヴァー・ヴァージョンと違い「ザ・タイガース」の「花の首飾り」になります。
ただ、そうした素直でてらいの無い歌い方は、極端なまでに違う2人の個性をキラキラと映し出します。
僕が感じるのは、端的に言うなら”ジュリーの「陽」とトッポの「暗」”。いずれも魅力的ですが、原作詞者の菅原さんが描いた本来の情景を表現しているな、と思うのはトッポの方です。これはピーの『花の首飾り物語』を読んで、なおさらそう思いました。

もともとこの曲は短調のバラードなのですから、曲想自体が切ないわけで、それをトッポが歌うと「白鳥(しらとり)の嘆き」が強調されます。これはトッポのキャラクターもあるけれど、まずは「声」でしょうね。
この要素はジュリーをしても持ち得ないもの。トッポのあの声で「素晴らしい歌をそのままの歌として歌った」時に醸し出される切なさ。ジュリーの語った「切ないよね。好ききだとか、愛しているということは言わなくても、気持ちはよくわかるよね」という「花の首飾り」の本質が最も発揮される・・・「かつみの花の首飾りが一番」とのジュリーの評価は、正にこのトッポの声が持つ天性の「切なさ」を指してのことではないでしょうか。

菅原さんは一般公募の際、ジュリーをイメージしてこの原詞を書いたそうです。それは何よりも「凛とした美しさ」であったでしょう。2011~12年のジュリーの「花の首飾り」のヴォーカルには、確かにそれがありました。
ただ、原詞の魅力としてあった「切なさ」・・・それは北の大地の「冷たさ」や「寒さ」の情景でもあり、すぎやま先生の短調のメロディーも相俟って曲の核となりました。
その冷たい湖の情景、白鳥に姿を変えた娘の切なさに、すぎやま先生はじめ制作スタッフは、トッポの声を求めたのですね。

さぁ、そんな菅原さんの素晴らしい着想を得てなかにし礼さんが本格的に歌詞の形を整えた「花の首飾り」。歌詞もさることながら・・・やはり僕のようなブログでは、すぎやま先生の作曲について及ばずながらも紐解く努力をしてみるべきでしょう。
『花の首飾り物語』、そして先に発売された『ロックジェットVol.54』でのトッポのインタビューによれば、最初のひらめきから非常な短時間ですぎやま先生は曲を完成させた、とのこと。
そしてどうやら、トッポがLIVEでビージーズの「ホリデイ」を歌っているのを観たすぎやま先生がメロディーのインスピレーションを得たことが、「花の首飾り」の作曲と密接に関係しているらしいのです。

そこで僕は「花の首飾り」の考察にあたり「ホリデイ」の伴奏和音を習得すべく、ビージーズのベスト版コード・ブックを購入。

Kubikazari02

僕はこういう時、安価で求めやすい洋書をネットで買うんですけど、届いた商品を見てビックリ。「ホリデイ」も「ジョーク」も載ってなかった!
僕、この2曲はビージーズの「外せない」有名曲なんだと考えていたんですが、どうもそこまでではないようですね。有名シングルなんだけど、20曲のセレクトには入らない、みたいな位置づけのようです。

まぁ載ってないモノは仕方ない。スコアは他の名曲の勉強に役立てることにして、「ホリデイ」は自力でコード起こしをしよう・・・。幸い、そんなに難易度は高くないし、東京ドームでこの曲を弾き語るトッポのフォーム移動が割と頻繁にスクリーンに映っていましたから、だいたいの進行はもう把握できています。

Oh you're a holiday、  such a holiday
Am                       G   F             Am

イントロ2小節では、ニ長調(!)へミスリードするコード進行の仕掛けがあったりしますが、歌が始まってしまえばこの曲は明快なイ短調。
スクリーンでアップになったこの部分のトッポの左手・・・気がついたのは経過音として登場する「G」のコード・フォームが、鉄人バンドの下山さんと同じ(ちなみに僕とも同じ)ということで、薬指が1弦に配されるスタイルでした。

一方「花の首飾り」の出だしは


Kubikazari03

『グループ・サウンズ・コレクション』より

花咲く 娘たちは 花咲く野辺 で
      Am Em    Am             Em Am

こちらも明快なイ短調。
「ホリデイ」(原曲)がオルガンの和音伴奏がメインであるのに対し、「花の首飾り」は単音アルペジオのギターが伴奏のメイン。ただし、両者ともストリングスがヴォーカルの裏メロとして噛んでくるという、聴き手の印象面としては大きな共通点があります。
すぎやま先生は『花の首飾り物語』でのピーとのインタビュー対談で洋楽ロック、ポップスの対位法について言及されていて、この「花の首飾り」のストリングスによる裏メロアレンジは、すぎやま先生のポップス解釈が表れた例だと考えられます。
ちなみにこの裏メロは2013年、タロー渾身のリード・ギターで演奏されることにより新たな「花の首飾り」の魅力として、進化を遂げることになります。

展開部にも共通点があって、かなりハッキリとしたニュアンスでハ長調への移調が登場します。
「ホリデイ」は

It's something I think so worthwhile
     C                                  G

If the puppet makes you smile
        Am                     Em

If not then you're throwing stones
   F                                C

throwing stones, throwing stones
            G7                    C

と、最後は主張強くハ長調に着地。
一方「花の首飾り」は

私の首に かけておくれよ
G7   C      E7         Am

あなたの腕が
   F         Fm

からみ    つ くように
      Csus4  C   E7    Am

ハ長調への並行移調を提示しつつも、着地はAmのイ短調。この曲でまず「悲しみ」「切なさ」が強調され、トッポの声にマッチするのはそのためです。
「Csus4→C→E7」の部分は、ギター・コードを弾いた時「ファ→ミ→レ♪」という下降の音階が目立つよう配慮された進行と考えられます。

あと、この曲の演奏についてですが・・・今はやはりCDの楽器パートについて書くより、ザ・タイガースの生演奏を語りまくりたいところですよね。このタイミングでは、どうしてもそちらに気持ちが行ってしまいます。
でもそれは、年明けの東京ドーム・レポートで語る方がふさわしいと思いますから、もうしばらくお待ち頂きましょう。東京ドームはとにかく、「君だけに愛を」「モナリザの微笑」「青い鳥」「廃虚の鳩」「ラヴ・ラヴ・ラヴ」、そして「花の首飾り」といった、「誰もが知る名曲」の演奏がとても良かったのですよ。
先述したように「花の首飾り」では、トッポのヴォーカルを追いかけるタローのリード・ギターが素晴らしかったなぁ・・・。

ともあれ、2012年1月24日の日本武道館公演の時点では、ジュリーが「近い将来」を約束してくれただけでまだ何も具体的なことは見えていなかった、「実際にトッポの”宇宙一”のヴォーカルを聴いてからこの曲の記事を書く」という拙ブログのひとつの目標は、2013年末に無事達せられました。
これで何と、『THE TIGERS SINGLE COLLECTION』という、僕がザ・タイガースの勉強に際し最初に聴き込んだ、基本中の基本とも言えるCD収録の全30曲をお題に採り上げ、楽曲考察記事として完全網羅することとなりました。
2009年に執筆した「淋しい雨」からおよそ4年半ですか・・・まったく予想外のスピード達成でしたが、これはその間ザ・タイガースに2度の大きな節目が訪れ、遅れてきたファンである僕が何とかそこに立ち合えたことの証しでもあります。
本当にありがたいことです。

そうそう、先輩に指摘されて気がついたんですけど、ありがたいことに拙ブログは間もなく閲覧200万ヒットの大台を迎えます(たぶん明日到達)。
実は100万ヒットが2011年、老虎ツアーの年で僕がタイガース・モードの只中・・・そんな状況下での到達でした。どうも拙ブログの大台キリ番は、ザ・タイガースの動きと縁があるようですね。
うっかりキリ番踏んじゃった方、よろしければキリ番ヒット記念の楽曲お題リクエストをお待ちしていますよ~。

それではみなさま。
今年もこんな所に遊びにきてくださりありがとうございました。大変大変お世話になりました。来年もどうそよろしくお願い申し上げます。
よいお年をお迎えくださいませ!

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2013年12月26日 (木)

明日は東京ドーム!

いよいよ明日『THE TIGERS 2013』の大トリ、東京ドーム公演を迎えます。
この日を目前に記事更新が無いのも淋しいので、ちょっとだけファイナル前夜のひとりごとを記しておきます。

僕は武道館のレポートで
「この5人のバンドサウンドの進化の集大成、それが結実するのはちょうどファイナルの東京ドームの頃なのではないか」
と書きました。
その予想自体に変わりはありませんが、ここ数日でファイナルに臨む僕の気持ちの方に変化が起きています。

ついこの間までは、京セラ公演の評判が良かったこともあって、「なんとか京セラと同じくらいの演奏で、大きなミスも無く東京ドーム公演の録画をつつがなく・・・」などと考えていました。
しかし今は違います。
極端に言えば、ミスだらけでもいい。とにかく2013年のザ・タイガースそのままの歌と音を記録に残して欲しい・・・そう願っているのです。

武道館公演参加から明日の東京ドームまで・・・ちょっと日の空いた僕はその間、この度リリースされたDVD-BOXを観て過ごしていました。
先日書いた通り、最も衝撃を受けたのはDisc-5の「エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」の映像でしたが、その他にも色々な発見や、改めて深く感じるところがこのDVDの中には多々ありました。
その中で・・・ちょっと1982年の同窓会コンサートの映像についてここで触れさせてください。

僕がJ先輩のご好意により初めてこの映像を鑑賞したのは、たしか2009年。その時からずっと、この映像が好きでした。
もちろん今でも「好き」という気持ちに変わりはありません。しかし、今回の武道館参加後に改めてDVD作品として鑑賞して、見方がずいぶん変わったのです。
1曲目の「十年ロマンス」は普通に盛り上がって観ていました。ところが次の「僕のマリー」のイントロでいきなり「???」と・・・。後追いファンのヒヨッコが生意気ですが、「これ、タイガースっぽくないなぁ?」と戸惑ったのです。
これは何だろう・・・この変な気持ちは。
「ずっ、ちゃ~ん、どこどこどこ♪」の時点でもう既に、大きな違和感。曲は確かに「僕のマリー」、素晴らしい演奏・・・ではあるんだけど、どこか何か違うような。
今までいつこの映像を観ても、そんなことは感じなかったのに。

僕の受け取り方の突然の変化・・・その変化をもたらしたものとは?
そう、2013年12月3日の日本武道館公演を自分のこの目で見、この耳で聴いたこと。それ以外の原因は考えられません。
丁寧に、几帳面に演奏される1982年の「僕のマリー」。もちろんこれはこれで良い、でも正直僕は
「もっとドッタンバッタンして欲しい!(おかしな表現かもしれませんが、偽らざる感想です)」
と思ったのです。

同窓会映像の、続く幾多の曲で同じように感じました。
「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」「アンダー・マイ・サム」「テル・ミー」のストーンズ・カバーが特に。もちろん「銀河のロマンス」や「廃虚の鳩」などのオリジナル曲も。

もっと・・・もっと熱烈なんだよ、タイガースは!

もちろん、これは今だからこそ言えること。
僕がもしもタイムリーなタイガース・ファンで、1971年の武道館も観ていて、その上で10年ぶりに同窓会コンサートを実際に生で観ていたら、とても感動したと思います。それは間違いない・・・同窓会の演奏も歌も、素晴らしいとは思うんです。
でも、2013年の武道館の方が熱く感じる!

何が違うのかな・・・ピーのドラムス?
いや、それだけじゃないんだろうなぁ。うまく説明できないし、僕には永遠に分からないことなんだろうけど、メンバーの身体の内からグッと出ているものが、1982年と2013年では全然違うんじゃないかな。
これが、ジュリーの言ってた「積み重ねてきた年輪が武器になる」ということなのかな。「つつみ隠さず」と言っていた、真の意味なのかな。

突っ走るピーや、果敢なサリーや、鈍感力バリバリのトッポや、凛々しいタローや、張り切ってバンドを歌声でリードするジュリーを、もう一度東京ドームで観たい!
そう願っています。

あとは、シローですね。
来てくれるかなぁ・・・でも、絶対無理はして欲しくない。本当に難しい病気と闘っているようですし、万が一ステージで具合が悪くなったりしたら大変。
でも・・・もしもシローが必死の頑張りで東京ドームまで来てくれたら、力一杯の拍手をして、精一杯の声援を送ろう・・・それがほんの少しでも、シローの力になると信じよう。

僕も今週ずっと頑張ってきて、明日は突発的なアクシデントさえ無ければ何とか開演に間に合う時間までに仕事を切り上げられる段取りはしました。
人事は尽くしました。

みなさま、明日は共にザ・タイガースの2013年、大きな奇跡をしっかり見届けましょう。
無念のお留守番組のみなさま、年明けから執筆するレポ、頑張りますので待っていてくださいね。

それでは、いざ!

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2013年12月20日 (金)

沢田研二 「銀の骨」

from『sur←』、1995

Sur

1. sur←
2. 緑色の部屋
3. ZA ZA ZA
4. 恋がしたいな
5. 時計/夏がいく
6. さよならを待たせて
7. あんじょうやりや
8. 君が嫁いだ景色
9. 泥棒
10. 銀の骨

---------------------

いやぁ・・・京セラドームにご参加のみなさまから続々と届けられる、大絶賛・感動の声また声。
武道館のはるか倍以上のお客さんの前で、「ザ・タイガース健在!」と知らしめるにふさわしい大熱演、大成功の素晴らしいステージだったようで・・・一部始終を目のあたりにされた京セラ組のみなさまがうらやましい!

僕としては、ぞんなザ・タイガース期待通りの大進化の集大成を、ファイナル東京ドーム公演でしっかり体感するのみ。
どんなステージを魅せてくれるのでしょうか。

というわけで・・・『THE TIGERS 2013』ファイナル東京ドーム公演まであと1週間ほどとなり盛り上がっておりますが、今日はジュリーのソロ・モードに切り替えての記事更新です(今年はとにかく秋から色々と切り替えが大変)。

拙ブログでは毎年12月20日、”自分の誕生日を自分で勝手に祝う”コーナーとして、「自分と同い年の時にジュリーがどんな曲をリリースしていたか」をテーマに、楽曲考察記事を書いております。
僕は今日で47歳となりました。ジュリー47歳と言えば・・・いよいよ「自分の歌いたい歌を歌っていこう」ということで、勇躍セルフ・プロデュース時代に突入する重要なアルバム『sur←』をリリースしています。
収録曲には「時計/夏がいく」「さよならを待たせて」をはじめ、現在のLIVEでも頻繁にセットリスト入りする名曲が多く入っていますね。

今日はこのアルバムの中から、年明けのお正月コンサート『ひとりぼっちのバラード』に向けて、”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズの第1弾も兼ね、「銀の骨」を採り上げたいと思います。

お正月のセトリ予想は、今回の第1弾で終わってしまうかも・・・。タイガースの東京ドーム・レポートがありますからねぇ。
武道館レポは書き終えるまでに2週間かかりましたから、今回もそれくらいかかるとして、書き終わったらもうお正月コンサートの初日目前!みたいなスケジュールになるんじゃないかなぁ。
まぁ、僕が余計な予想を立てない方が、レア曲のセットリスト入りの可能性も上がるのではないかと。時間があれば直前にもう1曲書きたい曲もありますが、そちらは有名シングル曲ですので・・・。

「銀の骨」については、以前ちこ様よりドラム演奏解説のリクエストを頂いておりますので、ポンタさんの名演についても今回できる限り書いてみたいと思います。
伝授~!

ジュリーがいよいよセルフ・プロデュースのアルバム・リリースを始めるにあたって、何がそれ以前と一番変化したのか・・・と言えばこれはもう「歌詞だ」と僕は思うんですね。それはジュリー自身の作詞作品で特に顕著だと思うんですけど。
「作詞・沢田研二」作品への渇望は、アルバム『パノラマ』に収録された「Don't be afraid to LOVE」から次第に強まっていった、というのが僕の見方ですが、他作家陣の作詞作品について・・・実はこの『sur←』と前作『HELLO』を比較するとその違いも明らか。「1年でガラリと変わった」と言っても過言ではありません。

『HELLO』では、ヒットメーカーの秋元康さんをはじめ男性作家の作詞、対して『sur←』は、覚和歌子さんを中心とした女性作家の作詞作品が並びます。
ジュリーは女性作家の作詞について2008年放送の『ジュリー三昧』の中で、「女性の書く詞の方が男らしい、と言ったら変だけど・・・」と語っていました。
これはたぶん「潔さ」を指した言葉じゃないのかなぁ。ある意味「てらいなく言い切ってしまう」感覚が、特にジュリーへ作品提供する女性作家さんの特徴のように感じるんですよね・・・。

また、セルフ・プロデュースへの移行について・・・吉田建さんや後藤次利さんのような超一流のプロデューサーが作った”ジュリー像”を演ずることも、ジュリーとしては楽しい仕事だったとは思いますが、年齢を重ね、この先の歌手人生を考えた時、「歌をできる限り生身の自分に引き寄せたい」とジュリーは考えたのではないでしょうか。
「演ずる」より「心をさらして歌う」ことを選んだのです。
ジュリーが望んだ「歌いたい歌」というのは、ジュリー自身の考え方や生き方と乖離しない歌詞を重視したものであることは確かで、その点覚さんや後に登場するGRACE姉さんは、本当に生身のジュリーとシンクロしたような詞を書いてくれます。

「銀の骨」の場合は・・・詞を依頼するにあたってジュリーがどの程度のリクエストを出したのかは分かりませんが、これ、覚さんかなりの確信犯じゃないですか~?

そうさ僕は いい人なんかじゃない
D                                      Bm

或いは

そうさ君も 聖母(マドンナ)なんかじゃない
D                                                 Bm

つまり、歌詞中に登場する2人の男女は、最初に「いい人」と「マドンナ」として出逢っているんだけど、それは2人が仮に「演じて」いた姿であって、人間としての生身の姿は全然違うんだ、と。

だけど だから 君がいいのさ
      Em7     A7     F#m7     Bm

いやこれは、セルフプロデュースに踏み切ったジュリーが、このタイミングで間違いなく「歌いたかった歌」だったことでしょう。

さて、ジュリーが以前「覚さんの詞がイイのよ!」と語っていたことがある、と先輩から教えて頂きました。それがどの曲についてなのかは僕は特定できていないのですが・・・「銀の骨」は覚さんの詞とジュリーとのシンクロ度が特に高いナンバーのひとつですし、ジュリーがこの詞に惹かれているとしたらそれは具体的にどのあたりの箇所なのか、ということを僕なりに推察してみましょう。

先ほどの「いい人」「マドンナ」のくだりはあまりにリアルなので、ちょっとここでは置いとくとして(笑)。まずは、覚さん独特のエロい表現に注目。
ジュリーは本当に、女性が書くエロい詞が好きみたいですね。後の「オリーブ・オイル」の作詞依頼にまつわる逸話は有名ですし。
アルバム『sur←』収録曲では、朝水彼方さんの「ZA ZA ZA」もその点相当キテいますが、「銀の骨」も実は負けてはいませんよ~。

抱きしめても 抱きしめても
F#7    Bm               Gmaj7

愛は極めるたびに答が逃げる
   A        A7            D       F#7

エロだけには留まらない、素晴らしい表現。「愛は極めるたびに答が逃げる」って・・・とても凡人には思いつきません、こんなフレーズ。と言うかこれは完全に女性の視点ならでは。
しかもメロディーが曲中で最も狂おしくなる箇所にこの詞が載っているという・・・ジュリーとしては、たまらないものがあったでしょうね。

あと、ジュリーは「銀の骨」の中でこの箇所が一番気に入っただろうな、と僕が考えるのは、「女性の詞の方が男らしい」というジュリーの言葉を象徴するような、エンディングのこのフレーズ。

僕は しあわせ恐れない
   C#m7-5    F#7       Bm

この「言い切り」方は凄い。そしてそれを「我が意」に置き換えるように歌ってしまえるジュリーも、本当に凄いです。
凡人にとっては、「幸せ」と「恐れ」は紙一重。「幸せ」を得ることで臆病になる・・・もちろんこれは「それでいいんだ」ということも言えるかもしれませんし、ジュリーにもそういう面はあるでしょう。
しかしそこで「恐れない」と断言する意味。それこそがジュリーにとって「歌を歌う」ことなのではないでしょうか。歌い手だからこそ言えること・・・ジュリーはそう考えているのでは・・・?

それでは、本日もうひとつの考察テーマ・・・「銀の骨」のドラムス・テイクの素晴らしさについても語っていきましょう。
2011~12年の老虎再来ツアー、そして今年のザ・タイガース復活でピーのドラムスに注目が集まったこともあり、結構多くのジュリーファンの方々が、それまでCD鑑賞の際にあまり注意して聴いていなかった「ドラムの音」を耳で追うことが増えてきているかと思います。ここは是非、「銀の骨」を今一度、ドラムに注意して聴き直してみてください。
「あれっ、静かな感じの曲なのに、ドラムは何か細かいことをたくさんやってる!」とお気づきになるでしょう。
この曲含め、アルバム『sur←』のドラムス・テイクは、ポンタさんの名演の宝庫なのです。

「銀の骨」のドラムスの特徴は、何と言ってもヴァースごとのアタックの変化です。
AメロとBメロには、スネアドラムが登場しません。リム・ショットと各種シンバル、そして2種のタム。これらを複雑に組み合わせつつ、優しいタッチながらまるでリード楽器のように忙しく動きまわります。
またこの箇所は、1番と2番でまったくフレージングが異なっている点にも注目。2番では「つくつん、ちゃかちゃか♪」といった感じで、1番のフレーズをさらに細かく分解して演奏されています。

で・・・自信はないんですけど、少なくともこのAメロ、Bメロについてはポンタさん、スティックではなくてブラシで叩いているんじゃないかなぁ。ジャズとかボサノバ的な演奏だと思うんですよ(ただし、ポンタさん自身はこうしたジャンル・カテゴライズには否定的。まず「魂」ありきのドラマーです)。
ポンタさんと言えば、ジュリーファン、泉谷ファンとして僕はすぐにパワフルでハードなドラミングを想起しますが、もちろんポンタさんはジャジーなブラシの名手でもあります。
ポンタさんは以前イカ天でゲスト審査員をしていた時、同番組で頭角を現したBEGINの歌と演奏に魂を揺さぶられ高く評価していて、彼等はギター2本とキーボードという変則スタイルだったこともあって
「この先ドラムが必要になったら、俺に声をかけてくれ。俺がブラシをやるから!」
とメンバーに熱っぽく語りかけていました。
「さっき(BEGINのヴォーカルの比嘉さんに)電話番号渡したから!」との発言に、司会の三宅裕司さんから「別の目的じゃないでしょうね~?」とツッコまれていたっけ・・・(笑)。

一方で、パワフルかつハードなポンタさんの演奏は、同じ「銀の骨」・・・今度はサビ部に見られます。
サビで初めてスネアが登場するのですが、そのアタックが鋭く重い!しかもアクセントがトリッキーで、ドラムに注意して聴いていると「あれっ、あれっ?」という間に曲が終わってしまうほどです。
所々にシンバルで「裏のそのまた裏」を刻むフィルを差し込むなど、パッと聴いた「銀の骨」の穏やかなイメージとはまったく違うシリアスで突き詰めた激しい雰囲気が、ポンタさんのドラムスから浮かび上がってくるのです。

「穏やかさ」と「激しさ」。
この二面性もまた「銀の骨」という名曲の魅力であり、それはポンタさんの演奏によるところが大きいと思います。

ということで、この「銀の骨」・・・近年では『ジュリー祭り』はもちろん、2009年の『PLEASURE PLEASURE』ツアーで採り上げられていますし、ジュリーお気に入りナンバーのひとつであることは間違いありません。
お正月コンサート『ひとりぼっちのバラード』では、ちょっと久しぶりのセットリスト入りが有力と考えますがいかがでしょうか。
もしセットリスト入りすることになったら、鉄人バンドの演奏・・・特に泰輝さんの”神の両手”にも要注目。
ピアノ、トランペット、ストリングスの音色が瞬時に追いかけ合い噛み合う素晴らしい演奏を、じっくり堪能したいですね。


さて、今後の更新予定ですが。
タイガースの東京ドーム公演のレポは、年が明けてからじっくりネチネチと書いていくことにして、年内にあと1本だけ、楽曲考察記事を書きたいと思います。
ドームレポと前後してしまいますが、『THE TIGERS 2013』”セットリストを振り返る”コーナーとして、以前からの予告通り「花の首飾り」をひと足先に採り上げます。若輩が畏れ多いことながら、「タイガースが完全復活した年」として語り継がれるであろう奇跡の2013年の〆としては、ふさわしいお題ではないかと。

東京ドームで、もう一度トッポの歌う”宇宙一”の「花の首飾り」を聴いてから記事を纏めたいと思いますので、年末ギリギリの更新になってしまいますが・・・。

あと、27日に全国から万難排して奇跡のツアー・ファイナルにご参加のタイガース・ファンのみなさま・・・東京ドームのコンサート公演に慣れていない方々のために、ささやかなアドバイスをひとつだけ。
季節がら、帽子を着用してお越しのかたも多いと思いますが、終演後外に出る際には必ず手で帽子を押さえておくか、脱いでしっかり持っておくことをお勧めします。
内外の気温差のせいなのか気圧の関係なのか、外に出た瞬間にものすごい突風が吹きつけるんですよ。僕も先日のポール・マッカートニーのLIVEで、危うく帽子を飛ばされそうになったばかりです。

それにしても、1年のうちに2度も、しかも僅か2ケ月の間に東京ドームでLIVEを観ることになるとは・・・先日の武道館もあったし、ジュリーのソロでフォーラムもあった。
大会場のLIVEを何度も体感したことを振り返ると、いやぁ怒涛の1年でした。

その締めくくり・・・ザ・タイガース復活ツアー・ファイナルの東京ドーム。しっかりと目に焼きつけたいと思います。
それでは27日、共にこの奇跡を見届けましょう!

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2013年12月16日 (月)

2013.12.3日本武道館 『THE TIGERS 2013』セットリスト&完全レポ

公演から早2週間が経ちましたが、ようやく『THE TIGERS 2013』ツアー初日・日本武道館のレポートを書き終えました。
例によりまして、記事更新日を執筆終了した本日付に移動させて頂きます。記憶に曖昧な箇所もあり、一部記述に不備もあるかと思われます。ごめんなさい。
また毎度のことながら、小刻みの加筆で進む大長文におつき合いくださり恐縮です。ありがとうございました!

☆    ☆    ☆

行ってまいりました。
『THE TIGERS 2013』ツアー初日、日本武道館。

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僕はタイムリーなファンではないけれど、開場前の武道館周辺のお客さんの雰囲気の凄さだけで、「いよいよか~」と、しみじみとした感慨に浸れました。
やっぱり何か違う、特別な感じがしますよね、武道館という会場は。僕の場合、この会場でLIVEを観るのは2回目で、1回目が2012年の1月24日だったわけですから、今回で完全に「武道館=ザ・タイガース」というイメージで固まってしまいましたね。

ザ・タイガース。
1966年、京都の友人同士でバンドを結成していた若者が、人気が出て、認められて上京して、翌年颯爽とデビューして・・・。「あの頃」、オリジナル・メンバーの5人でどんな音を出していたのか、どんなふうにお客さんに投げかけ演奏し歌っていたのかを、40数年後の2013年、日本武道館のステージ上で5人が声と歌をぶつけ合いながら現場で再確認していく。ザ・タイガースの新たなる第1歩。
そんなLIVEだったと感じました。

ジュリーの本気は当然として、何より演奏に立ち向かう4人の楽器陣のメンバーが誰ひとりとして守勢ではなかったことが、今回のザ・タイガース再結成の幕開けとして一番の素晴らしさ、カッコ良さだったと思います。

演奏の出来自体はね・・・ハッキリ言って大いに乱れた箇所が何度もありましたよ。トッポ不在で鉄人バンドのサポートを得た2011~12年の安定した演奏とは、まるで違います。でも、それはザ・タイガースのLIVEで問題にはなり得ません。

演奏パート別のことで言うなら、各業界著名な方や僕の仕事関連の周囲の洋楽に詳しいおじさま方・・・そんな方々がギター演奏に注文つけている発言を今回いくつかお見かけしたり聞いたりした中、僕の見方はまるで逆。
5人だけの演奏、その初日という緊張もあってか、さすがに要のピー先生に大きな力みがあり、テンポが走り、それが同じリズム隊であるサリーに影響していた・・・これがセットリスト前半部にしばしば訪れた演奏の乱れの実際の原因でしょう。ただ、繰り返しますが、それは今回のザ・タイガース再結成LIVEでは何ら問題にはならないのです。

僕が見聞きした今回のギター演奏についてのおじさま方の発言のほとんどは、単にテクニックの観点のみから語っているわけであって、ザ・タイガースについて語っているものではないと思っていますから。タイガースの素晴らしさとはまったく関係の無い話です。
例えば、超速で弾く技術とか論理的な運指とか、そんなのタイガースの曲には必要ないし!その辺りは、レポ本編の「青い鳥」の項でたっぷりと語ります。

加えて、ピー&サリーのタイガース・リズム隊がこの先のツアー各会場でいよいよ本領を発揮となれば、その上でギターの聴こえ方なんて全然変わってきますよ。
バンド・アンサンブルとは、そういうものです。


僕としては、先の2011~12年のツアーを体験したことでピーのドラムスとサリーのベースには全幅の信頼があって、その上でさて今回ギター2人がどうだろう、と考えていました。
いざ武道館参加を終えての、ザ・タイガース・メンバー個々の演奏についての正直な感想・・・僕の個人的な感想になるんでしょうけど、タローのギター(とハーモニカ)が1番良かったのです。
(リスペクトする年長の男性ファンの先輩・YOU様も「タローの本気を見た!」と同じように仰っていて、彼もミュージシャン畑のかたですから、少なくとも完全に僕のひとりよがりな感想ではない、と思っています)
それはこの初日のステージ、メンバーの中で圧倒的だった、とも言っていい・・・大変大変失礼ながら、これはまったく予想外のことで驚きました。
僕が楽しみにしていた「寝る間を惜しんで積み重ねてきた稽古が音に出る」状態。正にそんな演奏でしたね。
つい先日のタローのTACTでの言葉・・・「トッポが凄く練習している」というのは先輩から伝え聞いていて、僕はその時、「タロー自身はどうなんだろう?」と・・・。
再結成が本決まりになった当初、タローは「サポートあり」の編成を希望していたと聞いていましたし、ジュリーが『Pray』ツアー福岡公演で「5人だけでやる。キーボードは排して2人ギター体制でやる」と最終宣言したことを知ってから、その後お会いした多くの先輩方に「タローさんは大丈夫なんでしょうか」とことあるごとに話し、呆れられていました。
まったく、ヒヨッコの分際で余計な心配をしたものです。
今回のセットリストでのタローの幾多の見せ場については、レポ中可能な限り書いていきたいと思っています。

トッポのギターも良かった・・・こちらは「普段やっていることが力み無く自然に出ていた」という感じなのかな。それに、多くの先輩が「タイガースの音だった」と仰っていました。
トッポは初めから、ジュリーの「5人だけでやろう」という打診に対して「そんなの当たり前だよ」と言ったそうですから、「覚悟があるんだな」と僕は考えていましたが・・・それは微妙に違う解釈だったようです。
初めて生で観たトッポの演奏、歌を体感し、「あぁ、トッポは本来そういう人だったんだな」と感じました。
普通に考えれば、この5人の中で唯一、先の2011~12年のツアーを共にしていないトッポが、再結成いきなりの大舞台・日本武道館のステージにビビってしまうのではないか、と心配してしまいます。
しかしトッポは・・・まぁ色々な意味で常人の範疇を超えて独特の感性を持っているというのか、良い意味で変わり者というのか、何と・・・まったくビビってる気配無し!メンバーの中で一番余裕が感じられました。これにはビックリしたなぁ。
これはね、トッポが愛し、今もLIVEで歌っている邦洋の、おもに60年代の名曲達のエッセンス・・・その魅力にトッポが完全に信頼・確信を持っていて、その良さをそのまま自分で表現してやればいいんだ、という唯我の境地(褒めていますよ!)によるものだと思います。それが、ギターにもハッキリ表れてる・・・このあたりについても、レポ本文で大いに触れたいと思います。
佇まいや動きも含め、噂通りの個性派ですね。

反して、ピーとサリーは絶好調時のまだまだ手前。
もちろんカッコイイ。しかし、彼等本来の最高のテンションには届いていなかったでしょう。
この2人は、これから回る会場でもっともっと聴く者を唸らせる演奏ができます。
特にピーは、早速週末の九州シリーズに向け、爆発的な巻き返しを図ってくるでしょうね。「俺はまだこんなモンじゃないぞ」というのは、初日のステージを終えた今のピー自身が一番強く思っているはずですから。
考えてみればピーは、2011年の老虎ツアーもそんな感じでスタートしました。

これをして、バンドの一体感、完成度のピークはちょうど年末の東京ドーム公演にピタリと合わせられるのではないだろうか・・・僕はそんなふうに考えているところです。

いや、しかし「タイガースの音」というのを初めて知りましたよ(当たり前ですけど)。
僕が語っているのは、技術の巧拙の話ではないのです。タローがメチャクチャ流暢なソロを披露した、とか、すべての曲を完璧に間違えずに弾いた、とかそういう話ではまったくないのですよ。
「タイガースである」ことにメンバーが集中して取り組んだ中、一番その結果を残し感動をくれたのが僕にとってはタローだったということです。
他メンバーも、これからどんどん進化していくでしょう。

実際、演奏技術の観点からは、早速数人の各界著名な方々が発信されていますね。言わんとすることは分かるけれど、中には「う~ん、それでタイガースのLIVEが語れるだろうか」、と考えてしまうものもあります。
では、普段そういった技術的観点も含めてこのブログで語っている(末端からですが)僕は、今回何から書くべきでしょうか。
迷うところです。

こういう時とても頼りになる、いつもお世話になっている先輩がいらっしゃいます。
公演翌日、素直な感想のメールのやりとりをさせて頂きましたが、強く心に響いたその先輩の言葉を、まず自戒の意味も込めてご紹介しましょう。

「40数年ぶりのステージを、日本武道館という場所で自然に自分たちのスタイルで見せられるバンドの実力を、テクニック面だけをとって色々言う人には、ザ・タイガースが持っている、今も変わらなかった稀有な部分(度胸も含めて)は伝わらない、と思います」

なるほど、「度胸」かぁ・・・。
この言葉は自力ではとても思いつかない・・・よし、まずはそこから語っていこう。

全員が65歳を超えて、ザ・タイガースは今回、40数年ぶりにオリジナル・メンバーが揃って復活のコンサートをやることになりました。
かつて絶大な人気、支持を誇り、頂点に君臨した伝説のバンド。そのネーム・ヴァリューたるや半端ではありません。
それだからこそ、普通なら「恥はかけない」というところにまず頭が行くと思います。腕自慢のサポート・ミュージシャンで後ろ盾を固め、曲によっては豪快なホーン・セクション、ストリングス部隊をも呼び寄せ、豪華な演出とプロモートで「イベント」の成功に万全を期す。
ザ・タイガースの名前なら、それは可能だったでしょう。

しかし、日本武道館のステージに立ったのは。
ヴォーカル、ギター2人、ベース、ドラムスという「ザ・タイガース」のメンバー5人きり。
高齢、ブランク、最低限の機材。ごまかしは一切効かない、裸のロックバンド、究極のスタイル。
そのスタイルであの大きなステージに立ち、剥き出しの音を出し、やり遂げる。そんな「度胸」は何処から来るのでしょうか。

例えば、少年時代の自分を思い出してみましょう。
何か困難に立ち向かう時、試練の先に大きな喜びが待ち受けていて、そこに向っていかなければばらない、となった時。
仲の良い友人が5人も集まってさえいれば、どんな大変なことにでも、全員揃って躊躇なく足を踏み出すことができたではないか・・・それが名も無い少年達の平凡な奇跡だとしても、そんな奇跡をいくつもいくつも難なく実現できてきたではないか・・・ならば、40数年の時を経て、ザ・タイガースのメンバーは、伝説的な大きなスケールの奇跡を、「少年時代の友人」に戻ることで、その境地でこの場所に帰ってきたのだ、と考えたらどうでしょうか。

「タイガースをやる条件」としてトッポがまず最初に掲げたという言葉、それを見たジュリーの「すべて分かった」という言葉「仲の良かった友達に戻ること」は、必然「5人だけの音」へと繋がったのでしょう。
「サポート無しでやろう」と決め、5人一丸で腹を括ってガムシャラになった時。メンバーの中に既に、「再結成」の答は出ていて・・・やり遂げる、やり遂げられることは、当たり前だったのです。
遂にこの5人が「その気で」揃ったのですから。

2013年12月3日、日本武道館。僕は間違いなく、ザ・タイガースを見せてもらいました。

おそらく、僕の知らない「あの頃」と同じように・・・

ピーは、ヤンチャでした。突っ込んで、走って、走って。
文字通り、走り出したら止まりません。技術的にどうあれ、ピーが叩くドラムスが「タイガースの音」を引っ張り、メンバーそれぞれのキャラクターを引き出していたことはハッキリしています。

サリーは、果敢でした。
ピーのペースアップで信じられないくらいに速弾きとなってしまったフレージングにも、必死に食いついていきました。
この日のサリーとピーの演奏は、『フィナーレ』のそれに近かったなぁ、というのが僕の印象です。

トッポは、まったく自然体でした。
突っ走るピーのドラムスに、「う~ん・・・ボク的にはこのくらいのテンポかな~」と、慌てず騒がず悠然とわが道を行く演奏は、トッポがやっと帰ってきた場所の居心地の良さを思わせました。

タローは、凛々しかった。ちょっと音が乱れた際に「俺に合わせて!」という自信も感じました。
この初日、僕が期待していた「稽古充分の音」をメンバーの中で最も感じさせてくれたのがタローだったことは、迷いなくそう言えます。
2011~12年のツアーと今回の武道館を両方その目にし、個人的にもギターを嗜む者であれば、「青い鳥」のイントロのタローの指の動き、そのなめらかさ、自然さ、無心さに驚くほどの大きな違いがあったことに何も感じないのは、どうかしておりますぞ!

そしてジュリーは、神々しかった・・・素晴らしい歌声でした。迷いなど何もありません。見栄もてらいもない、あるのは喜び、立ち向かう勇気。
個人的には、『フィナーレ』の音源と同じく、バンド全体を纏め取り仕切っていたのはジュリーのヴォーカルだったと感じました。たとえジュリー本人が無意識であろうと・・・それは「タイガースのジュリー」にかけられる魔法のひとつです。
あの歌を聴かせられたら、もうすべて納得ですよ。

なるほど・・・「度胸」か。
仲間一丸となった時の、少年時代の男の子ならば誰しもが持っていたはずの「度胸」です。65歳を超えたザ・タイガースのメンバーは、途方もないスケールで以って、それを今なお持っている。これですね、これがザ・タイガースなのですね。
また、40数年前のタイガースが社会から不当な批判を浴びていた頃のジュリーの「度胸」については、違った形で色々な先輩方から当時のお話を伺っています。ジュリー、きっと変わっていないんですね。

それでは・・・レポ執筆に向けての自分の気持ちのスタンスが見えてきたところで、いよいよ本編に参ります。
最初に言っておきますと、僕のようなレポの書き方は、ザ・タイガースを語る上ではまったくふさわしくありません。正しい感想、というのはやはりタイガースを最初に支持した当時の乙女達の、40数年ぶりの奇跡を目撃した歓喜のお言葉を以って知るべきです。それが正しい見方なのです。
例えば、このお方。

http://ameblo.jp/eri-watanabe/entry-11717209257.html

渡辺えりさん。喜びが溢れ出ていらっしゃいますね。
アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』への特別な思いを綴った上で、「生命のカンタータ」と「忘れかけた子守唄」が嬉しかった、と仰っているのがまた泣かせます。

僕のレポについてはあくまで幾多の乙女達の正しい感想のサブの末端資料として、力及ばずながら後世に書き残しておこう、というものです。
そこのところを御了承頂きまして、さぁ始めますよ~!


澤會さんから授かった席は、北スタンド2階。
ドラムスを真上から見下ろす、という見え方はまったく初めて。双眼鏡でメンバーの立ち位置を確認していたら(ポールの東京ドーム公演でとうとう双眼鏡デビューを果たしてしまいました)、タローとトッポのマイクスタンドの左横に何やら置いてある・・・あっイカン、セトリだ!と気がつき、すんでのところで目を逸らしました。

ゆっくり、ゆっくりと席が埋まってきて・・・「まもなく開演いたします」のアナウンスの頃には完全フルハウス状態。
唐突にパッ、と場内の電気が消えると物凄い歓声が。
ステージが照明で浮き上がり、本当に、あの5人が登場。スタンバイするやクルリと後方席を振り返って手を振ってくれたのはトッポでした。

さぁ、1曲目は何か。真後ろ2階の音の聴こえ方は・・・?
開演です!


1曲目「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」

おぉ、これでスタートか!
先の老虎ツアーではセットリスト2曲目に配置された、デイヴ・クラーク・ファイヴのロックンロール・ナンバー。再結成1曲目からいきなり炸裂する官房長の「Watch me now!」に盛り上がりまくる武道館です。
アリーナはもちろん、2階スタンドもほぼ総立ち。1階スタンドは割と着席率も高かったように見えたけど、全体としてはどうだったのかな。

「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」は、先の老虎ツアーのセットリストの中でもジュリーのヴォーカルが特に素晴らしかった曲です。もちろんジュリー、今回は初っ端からドスの効いた無我のシャウト連発!
これを1曲目に配したセットリストは大正解でしょう。

僕の位置に聴こえてくる音響については、2012年の北東スタンド1階のようにはいきませんでした。でも、ピーのドラムスは素の音が聴こえたし、特に悪くはなかったかな。
客席正面で聴こえる正規の音は、会場こそ違えど東京ドーム公演のDVDで確認すれば良いですしね。今回武道館のこういう位置のお席で聴く音も、貴重な体験ということです。

僕はなんとかこの日までパンフレットの開封を我慢し、セットリストのネタバレをすることなく迎えました。ですから「1曲目から変更があった!」というのは終演後になってから知ったことです。
パンフによれば、当初の1曲目予定は「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」。これは実際には後の10曲目に歌われることになります。ではパンフ記載のどの曲と入れ替わったかと言うと、「ツイスト・アンド・シャウト」(11曲目として予定)だったようですね。
「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」と「ツイスト・アンド・シャウト」は楽曲構成が似ています。基本、ロックンロールのスリーコードの循環。そこに楽しい追っかけコーラスが絡む、というね。

僕の推測では、「ツイスト・アンド・シャウト」は当初トッポのリクエストだったんじゃないかなぁ。
リハの段階で「1曲目にどの曲を持ってくるか」ということが再度練られた時、「トッポ以外の4人についてはこの前のツアーで手応えがあるから。間違いないから!」ということで予定には無かった「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」が浮上し、曲想の似通った「ツイスト・アンド・シャウト」をカットした・・・そんな流れだったのではないでしょうか。

いやぁしかしピーは相当緊張していたのかな。或いは気合が入りまくっていたのか・・・曲が進むに連れてどんどんテンポが上がっていきました。
最後の「だかだかだかだかだかだか♪」のフィルは、ロールでもないのに”鬼連打”になっていましたね~。背筋がグ~ッと伸びて、肩が盛り上がってね(←真後ろからだからその辺りはよく見えた)。
これ、もしリハーサル演奏だったら「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」と叫ぶところでしょう。

ピーの疾走に煽られながらも、マイクを両手でガッチリ握り潰してしまわんばかりの迫力で、全開で歌うジュリー。
でも、ドラムフィルのキメ部でピーの方を振り返った際には「どうどう!」みたいなアクションも。
あと、タイガースでお髭での登場とは予想外でございました。でも僕はジュリーのお髭は全然平気。むしろ、潔い感じで好き!

サリーは、1曲目から早速重要なコーラス・パートの出番があるし、テンポが加速するしで「おやおや、これはハナから大変じゃわい」といった感じに見えました。必死なんだけど、何処か泰然とした雰囲気も感じさせる・・・サリーのキャラクターならでは、なのでしょう。
僕の位置からだとサリーの姿は自然に視界に入らないので、セットリストすべての曲目で、サリーを見る時は意識して下手側に視線を向けていました。

タローは、老虎ツアーの時にはピーのテンポが乱れるとすぐに振り返ってアイコンタクトをとっていました。しかしこの「ドゥ・ユー・ラブ・ミー」では、いくらピーが走ってもタローにそんな様子がありません。
この時点ではまだ僕は「あぁ、サポートがいないしタローもさすがに緊張して、余裕が無いのかな」と考えました。
しかし実際は
「思いっきり叩け、ピー!走れ走れピー!俺は全然ついていける、大丈夫!」
という状態だったのでしょう。
稽古充分の演奏者にとって、ステージ本番で何が一番違ってくるかというと、不測の事態が起こった時です。例えばこの曲のようにテンポが加速する、ということもあれば、或いは他のメンバーが大胆に間違ってしまった、とか、自分がちょっと照明に気をとられてフレットを見失った、とかいう際の対処ですね。稽古を積んでいれば、瞬時に身体が正しい反応をするのです。
タローがそういう状態でこの日のステージに臨んでいることに僕が気づくのは、もう少しだけ先の曲のお話になります。

そしてトッポ。僕は今回初めて観ることになった、ステージ上の生トッポです。
見えるのが後ろ姿だったから余計に・・・だったのでしょうね。これまで過去の映像や写真で見てきた、トッポ独特の立ち姿。足を開いて軽く膝を曲げ、斜めの重心でギターを抱え込むようにして演奏するトッポは・・・何と、全ッ然若い頃と変わってないじゃん!
さらに・・・ピーの加速に対して、トッポだけが他メンバーよりもギアチェンジが遅れるんですけど、これは「ついていけない」のではないのです。先に書いたように
「う~ん、ボク的にはちょっとそれは速いかな~」
という、トッポ独特の感性によるものなのでは・・・。こうしたトッポの動き、佇まいがこの日は実に安心感をもたらしてくれたんですよね。

今回の「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」は、老虎ヴァージョンよりは同窓会ヴァージョンに近くなっているかな。
「Tell me~♪」のリフレインは各シーンでそれぞれ3回。まずジュリーのヴォーカル、次にサリー、最後にトッポでしたか。その都度歌い手にピンスポットが当てられていました。


~MC(ジュリー)~

え~と、一番最初のMCはこのタイミングで良かったですっけ・・・もはや記憶が(汗)。

こんばんは~!

ザ・タイガースです!!

「ザ」までをジュリーが言って、「タイガースです!!」を全員で言ったように記憶しています。
これはメンバー、完全に承知ですね。この全員声を揃えての「タイガースです!!」が、タイムリーなファンにとってどれほどの言葉であるか、ということを。
『オールナイトニッポン・ゴールド』で、5人が「ザ・タイガースです!」と言ってくれただけで涙が・・・と仰っていた先輩がお二人。後追いファンの僕には同じ反応はできないけれど、言葉の重さは学びました。

「今年の1月に(再結成を)発表して・・・瞬く間に1年が経ち、とうとうこの日を迎えました。ザ・タイガースです!」

言葉の重さと言えば、ジュリーが
「皆、これから生きていくのが辛い・・・そんな不安な時代なのに、タイガースに光を当ててくれてありがとう・・・」
と、言い回しは正確ではないかもしれませんが、そんな感じのことをここで言ったのです。
で、そう話すジュリーは、もう半分泣き声でした。心の底からの言葉なのでしょうね・・・。

「僕らに力をくれてありがとう。愛をくれてありがとう。今日は一緒に楽しんでください!」

天井までビッシリ満員のお客さん、凄い拍手でした。


2曲目「サティスファクション

矢継ぎ早にこの曲が降臨。先の老虎ツアーでは、前半ラス前に配置され、ファイナルのみアンコールの締めくくりとなった(シローの歌う「若葉のころ」とサリーの歌う「テル・ミー」2曲のセトリ飛び入りが前半部に組みこまれたため)、言うまでもないローリング・ストーンズのナンバー。もちろんタイガース・ファンとしては必須のレパートリーですね。それが早くも2曲目とは!

「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」同様に、ドラムスにキメのフレーズがあってピー主役のシーンが登場する曲がまず2曲続いたことになります。
ピー先生、ここでも疾走また疾走。

「'coz I try・・・♪」から続くジュリーの「I can get no!」の連呼部では、「get no!」の2拍に合わせて照明が客席にビートで当てられ、お客さんの盛り上がりをサポート。
もちろん広い武道館には、突き上がる無数の拳でうねりが起こります。天井に近いところから見ていると、これは壮観です。絶景です。

さてこの曲、リード・ギターがトッポでバッキングがタロー。
僕はこの役割分担が今回の再結成ステージの基本形なんだろうなぁ、とここでは考えていました。実際は、この後トッポとタローでリード・パートが入れ替わり立ち替わりとなります。今ツアーのセットリストの曲順は、そのあたりがうまくシャッフルするように練られているんですよ。

で・・・トッポの単音、イイじゃないですか!
正に「サティスファクション」。これが「サティスファクション」のギターですよ。

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シンコー・ミュージック刊 『ローリング・ストーンズ・ベスト曲集』より

実は、本家ストーンズも80年代以降のLIVEでの「サティスファクション」は、リードギターにサスティンが強調され、特に音圧が変わってきています。もちろんそれはそれで素晴らしいですし、2011~12年の老虎ツアーで披露された「サティスファクション」もそれに近かった・・・でも、60年代のストーンズのLIVEやアルバム『アウト・オヴ・アワー・ヘッズ』などでレコーディング・テイクをご存知の方ならお分りの通り、この日トッポが弾いたギターが、本来の「サティスファクション」という曲のギターの音、フレージングなのですよ。

ビートルズにしろストーンズにしろ、60年代に登場し脚光を浴びたロック・バンドには総じて、「音の隙間の魅力」があったわけです。それがいつの間にか、隙間を埋めよう埋めようという音作りに世の中が変わっていきました。
それ自体は否定などしません。むしろ当然の進化でしょう。
しかしながら僕は幸いなことに少年期からビートルズ、ストーンズの洗礼を受けていたので、「隙間の魅力」が身体に染みこんでいます。それはつまり、若輩ながら僕もザ・タイガース適性を持っている、ということに他ならないのです。

例えば今回のトッポのギターで言うと、あの印象的なリフよりも、Aメロの「I~can get no~」や「sa~tisfa~ction」に続く「じゃらららん♪」の4単音に注目すれば分かり易いでしょう。余分なサスティンが無いので全体の音圧に隙間ができます。これが味わい深いのです。
さらに・・・そうやって演奏すると、トッポには「手が空く」瞬間が訪れることになります。
その瞬間に、クルリと振り返って後方席に手を振るトッポ・・・余裕シャクシャクとは正にこのこと!

トッポにとって本当に久々の日本武道館のこの大きなステージ、しかしそれは、緊張で足がすくむ、とか、感慨が大き過ぎて怯むといった場ではありえない・・・ザ・タイガースに帰ってきた自分がひたすら楽しむ場となっているようです。普通に自らの喜びを解放する舞台となっている・・・まったく、まったく物怖じなどしていません。
な、なんなんだこの人・・・(褒めてます!)

「鈍感力」という言葉がありますね。今回武道館のステージ上のトッポについては、その稀有なまでの鈍感力(しつこいようですが、褒めてます!)が、途方もなくプラスに働いていたと思います。
誰もがマネできることではありません。ちょっと凄いキャラクターですよ、トッポは。昔からそうでしたか?

老虎ツアーでは、サリーとタローがステージを闊歩して立ち位置を入れ替わったり、ジュリーのマイクに寄ってたかってサビを連呼するシーンがありましたが、この日は無かった・・・ような記憶が。
この先の会場ではどうなるでしょうか。

ジュリーが「ワン・モア・タイム!」とシャウトしてピーの最後のドラム・ソロに流れるエンディングは、2011~12年のツアーのアレンジ構成と同じでした。


3曲目「ひとりぼっちのあいつ」

ジュリーの「それでは・・・(台詞を覚えてない汗)」という言葉の後に一瞬の静寂があり、トッポかタローかは分からなかったけど、「じゃら~ん♪」というギターコードが。
「あっ、次の曲の出だしの音合わせだ」と思いました。つまり、イントロ無しでいきなりヴォーカルからスタートする曲が来る、ということです。
となれば思い出されるのは、同様の音合わせのオープニングから始まった、先の老虎ツアーでの「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」。僕はすっかり「タイガース定番のストーンズ・ナンバーが2曲続く!」と身構えました。

ところが歌いだしは
「He~s a ri~al no~where ma~n♪」

おおお!「ひとりぼっちのあいつ」!

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シンコー・ミュージック刊 『ビートルズ/ラバー・ソウル』より

ジュリーはこの曲の演奏後に、「Nowhere Man」と原題で紹介してくれたけど、僕にとっては「ひとりぼっちのあいつ」という邦題が完全に刷り込まれているんだよなぁ・・・。
タイムリーな話をしますと、ただいま世のジュリーファンは「あいつ」まみれになっているわけですが・・・とにかく!
大好きなアルバム『ラバー・ソウル』からのビートルズ・ナンバー。冒頭、演奏無しのコーラス・ワークから始まるのがこの名曲最大のポイント。
タイガース・ハーモニー健在!を世に示す、格好の曲がここに配されました。ジュリーがジョン、トッポがポール、タローがジョージの役割でしょうね。サリーもコーラスに参加していて、ポールのパートをオクターブ下で歌っているように感じたけど、自信はありません。東京ドームでも、そこまで聴き分けられるかどうか・・・DVDで復習がてらじっくり確認ですかね~。

原曲のすべての楽器パート、歌詞まで完璧に頭に入っている曲ですから、タイガースはどんなアプローチでカバーするのかな、と楽しく演奏を追いかけます。
いやいや忠実なカバーです。タイガースのスタイルにはとても合っている曲ではないでしょうか。
「ひとりぼっちのあいつ」のキーは「E」(ホ長調)なんですけど、ビートルズはバッキング・パートのギターを2カポの「D」で演奏しています(2台のギターの音の響きがぶつからないための工夫ではないかと言われています)。その点が違ったくらいかな。

で、この曲は比較的早めに間奏リード・ギターが挿入します(1番→間奏→2番→3番という構成)。
いざ間奏、と視線をステージから大型スクリーンに移すと、トッポが大写しに。さぁどんなソロを弾いてくれるか。

・・・あ、あら?
凄まじく大きなアクションでローコードを突き放すトッポ。これはバッキング・パートじゃん?

スクリーンが「ああっ違った!」という感じですぐにタローの大写しに移行。おぉ、この曲ではタローがリードなのか!
素晴らしい・・・完璧だ!
ちょっとピーのテンポが速くなってきているんだけど、タローに動ずる気配はありません。ジョージ・ハリスン特有の、和音のフォームから単音を組み合わせていく独特の間奏パート。見ている思わずこちらもエア・ギター状態に。
間奏の一番最後には、6弦突き放しからの「ピ~ン♪」というピッキング・ハーモニックス。一番低い音から一番高い音へ。
痺れたよ、タロー!
タメを作る時に、フレットから目を離して下手側の様子を窺う余裕もありましたね。

この先セットリストが進むに従って、幾多のシーンで同様の感動をタローは僕に与えてくれました。
準備万端、稽古充分。そんなタローを待っていた!

そして・・・ピーのドラムスもとても良かった。
ピーのフィル・インの見せ場は何と言ってもロールですが、この日最初にロールが炸裂したのはこの曲。
ただこの場合のロールは、僕が2011年のツアーで勝手に名付けた”鬼神ロール”とは趣が違います。リンゴ・スターのプレイに忠実な、ビートルズの原曲通りの正調のロールなのです。

登場箇所は、1番で言うと「nowhere ma~n please listen♪」と歌われるBメロ直前の1小節のフィル。
リードギターのオブリガート最後の1音に合わせた1拍目のキック部から続いて1小節を丸々使う、スネアロール。これもまた、「サティスファクション」のリードギターと同じく「隙間の魅力」溢れる演奏と言えます。


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これですよ、このシンプルなフィルあっての「ひとりぼっちのあいつ」です。ここで派手に「シャンシュルルタタン!」とか超絶テクニックを駆使されたら、名曲が台無しです。
なるほど、なるほど・・・僕がビートルズ・ナンバーに持っているそんな拘りは、そのままタイムリーなファンのみなさまが全てのタイガース・ナンバーに対して持っているものなのでしょう。
今回「5人だけの音」をジュリーが切望、決断したのには、そんな理由もあったのかなぁ。

「your command♪」のカッコイイ発音ですとか、もちろんジュリーのヴォーカルは最高だったけど、この日はひたすら4人の演奏音に感じ入ってしまった「ひとりぼっちのあいつ」でした。


~MC(ジュリー)~

「ビートルズのNowhere Manをお届けしました」
と、まずは曲タイトルを紹介してくれました。

「(今回は)5人が力を合わせて作り上げたコンサートです」
この言葉から続いて、ステージ上手順にメンバーそれぞれの役割を説明してくれるジュリー。その都度、客席からは大きな拍手がありました。
細かい言い回しにまでは自信がありませんが、記憶を振り絞って書き出してみましょう。

「タローは音楽的な全体のことを纏めてくれて、譜面を書いたり(CDには無い「廃虚の鳩」や「忘れかけた子守唄」のギター・フレーズのことでしょうか)、コーラスも優しく(と強調する口調だったということは、厳しかったのかな?)教えてくれました」

「かつみは(やっぱり「トッポ」とは言わないんだね。この日最後までトッポのことは「かつみ」で通していたジュリーです)、衣装と(と、自らの身体を指し示し)、Tシャツのデザインをしてくれました。この人の高い声が無ければ、タイガースではありません!」

「ピーは、長い間ドラムを取り上げられていて、2年前にこの世界に帰ってきてくれました。激しいリズムを一手に担って大変です(「倒れそう」というニュアンス)。なんとか今年いっぱい元気でいてくれれば・・・(笑)」

「ワタシは、パンフレットを担当しました(大きな拍手。当然ですよね・・・僕も武道館公演翌日満を持して開封しましたが、本当に素晴らしい!)。『ホワイト・クリスマス』のトラックダウン(トラックダウンというのは、各トラックの音量やイコライジングなどを設定する最終作業です。あのCDの各メンバーの歌の音量バランスは、ジュリーが決めたということですね)も。あとは各地の飲み屋、レストランを調査中です(笑)。コンサートが終わった後の大切な仕切りです・・・沢田幹事とお呼びください!」

「サリーは・・・何もしていません(笑)。サリーは、いてくれるだけでいいんです。サリーはタイガースの重石です!」

こんな感じでしたか。

「それでは次は、かつみが歌います」


4曲目「ジョーク」

初めて生で聴くトッポの歌声・・・やはりタイガースの2大ヴォーカリスト。ジュリーとは全然違う声ですが、どちらも「タイガース」です。
訥々した歌い方の中に、楽曲そのものへのリスペクトも感じました。

タイムリーなファンのみなさまは、タイガースのカバーから洋楽の原曲を知っていく、ということが多々あったかと思います。僕はそれを、最近になってから体験しました。ビージーズの真髄を初めて知るきっかけが、タイガースだったんです。
それまでは、「甘いメロディーが売りのバンドなんだろうな」とよく聴きもしないで決めつけていたビージーズが、内省的で社会性の高い歌詞をその大きな魅力として持っていたこと・・・タイガースを聴いていなければ、ずっと知らないままだったでしょう。


僕がいなくなったら、世界は活気を取り戻した
何故気づけなかったんだ
あの冗談は僕のことだったんだ、と ♪

トッポがビージーズ・ナンバーを得意とするのは、声の適性だけではなく、歌詞に対する共鳴あればこそ、ではないでしょうか。

武道館のステージに立ったトッポは、まずこの日1曲目のビージーズ・ナンバー「ジョーク」をゆったりとしたギターのダウン・ピッキングと共に、じっくりと歌い上げました。

ビージーズはドラムスをパーカッション装飾のような手法で仕上げている曲が多く、「ニューヨーク炭鉱の悲劇」「メロディー・フェア」と並び、この「ジョーク」もそんな曲のひとつです。メロディーに絡むスネア・ドラムが、アレンジ楽器のように聴こえるんですね。
ここでもピーは、そんな曲想に沿った演奏を聴かせてくれたと思います。

~MC(トッポ)~

「たぶん・・・このメンバーでのステージは45年ぶりになると思います。(長い時が経って)僕らもそれなりに・・・(と、ジュリーやサリーの方にいたずらっぽく冷ややかな視線を投げます)、そしてお客さんもそれなりに・・・(笑)年を召されました。でも、ここから先がいいんじゃないかな、と思います」

お客さんに対して、「年を重ねていくことを楽しみに」というメッセージを送るのは・・・おや、トッポって実はそんなところはジュリーと似ているんじゃないですか?

(註:「メンバーの中で一番考え方が似ていたんじゃないかな。違い過ぎればケンカはしないでしょうから・・・」と、これは40年前の『沢田研二新聞』で、トッポがジュリーについて寄せた言葉です)

「じゃあ、次はピーが歌います」


5曲目「悲しみはぶっとばせ」

あれっ、ピーがドラムセットから離れない・・・。
何と何とピーのヴォーカル担当曲、1曲目はドラム叩き語りで披露されました。そしてその曲は。

「え~~っ!「悲しみはぶっとばせ」ですか!」

アルバム『4人はアイドル』から、またまた大好きなビートルズ・ナンバーが、今度は意外な形の登場で僕を驚かせました。
いや、この曲をタイガースがカバーすること・・・それ自体は容易に想像できますし自然なことだと思いますけど、そうですか、これはピーの持ち歌だったんですか。ビックリ!

この曲は映画『HELP!』に使われていたりする名曲で、曲自体もそうですが映像シーンもファンの間では有名です。画面手前にヌ~ッと陣どったリンゴ・スターが、「かしゃこ~ん!」と無表情かつコミカルにタンバリンを打ち続けるんですね。何と気づけば、そのシーンさながらに、目の前でジュリーがタンバリンを担当しているではありませんか!
ピーのドラム叩き語りももちろん貴重だけど、僕はこの曲でジュリーがタンバリンを叩く、という光景に興奮したなぁ・・・思い入れの強い曲ですから、余計に。

ピーのヴォーカルは声質が細いですが独特の抑揚を持っていて、「悲しみはぶっとばせ」の原曲ヴォーカル(ジョン・レノン)にもそれがあるんです。ですからピーがこの曲を歌うのは合っているかもしれない。当時誰が「ピーに歌わせよう」と決めたんだろう・・・中井さんかな、タローかな。
サビの「ヘイ!」は、ジュリーも結構大きな声で合わせていましたね。

わざとしゃがれ気味の声で、抑揚を強調して歌われるメロディーは、当時ジョンがボブ・ディランに影響を受けたことによるヴォーカル・テイクであると言われています。歌詞のアプローチもそうなんですけどね。僕は邦題フェチですから「悲しみはぶっとばせ」で通していますが、これは歌詞の内容とはちょっと乖離した邦題と言えるでしょうか。

「Dsus4→D→Dadd9→D」の印象的なギターの演奏は、トッポだったのかタローだったのか・・・残念ながら確認できませんでした(スクリーンには映らなかったんです。この辺りはバックステージ席の辛さ)。
このクリシェ・コード進行については、伊藤銀次さんがジュリーの名曲「G. S. I LOVE YOU」のアレンジの際に「これしかない!」とオマージュとして採用した、と以前ブログで書いてくださっています。

そしてエンディング。原曲には、リリース当時としては相当斬新なアレンジ・アイデアだった、と語り継がれているフルート・ソロが登場します。

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シンコー・ミュージック刊 『ビートルズ/4人はアイドル』より

このフルート・パートを、武道館ではタローがハーモニカで再現してくれたのです!
この編成は当時からそうだったのでしょうか。とにかく見事でした。素晴らしかった。
「今回のタローは本当にひと味違うぞ!」と確信を持ったことは、言うまでもありません。

さて、ピーがこの時かぶっていた帽子は、ファンからのプレゼント。当時からこんな感じの帽子が、ピーのトレードマークと言われていたそうですね。
メチャクチャ似合いますからね・・・当時の写真を見ても、今回の武道館を見ても。
プレゼントされた時にピーは「年末のLIVEでかぶります!」と宣言してくれたそうで・・・ツアー初日の武道館で早速それが実現しました。

さらに後で聞いたのですが、装着していたグローブもファンからのプレゼント(YOU様、感激で泣いちゃったんじゃないですか~?)。

ちなみに、ちょうどこんな感じの帽子をよくジョン・レノンも愛用していて、それがこの「悲しみはぶっとばせ」を歌っていた前後の頃なんです。
ピーは当然それを知っていたでしょう。「ジョンみたいな帽子」と当時から考えていたんじゃないかなぁ・・・。

~MC(ピー)~

「あっという間にこの日が来てしまって、緊張のあまり昨夜はほとんど寝ていません(2011年のツアー初日には、自らの緊張状態をして「キンチョーの夏」とギャグを飛ばしてくれたピーですが、この日はマジメモードでしたか)」

「今日は頑張ります。それでは次はタローの歌で、コウガ(黄河)・・・イエロー・リバー!」


6曲目「イエロー・リバー」

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今回タローが歌う曲は何か・・・僕はまず「ルート66」を第1候補に挙げていました。「イエロー・リバー」は2番手予想。
サプライズで「今日の誓い」にも期待していたんですけどね(ポール・マッカートニーの来日公演では日によってセットリストの一部変更があり、その中で「夢の人」が「今日の誓い」に差し替えられていたらしいのです。僕の参加日は残念ながら「今日の誓い」は歌われなかったので・・・タローの持ち歌であるこの曲をタイガース再結成で聴いて補完、というシナリオを勝手に妄想していました)。
今回は、タローが歌に集中しやすい(ギター演奏がコードのみ)「イエロー・リバー」が選ばれた、ということでしょうか。サポートありの編成だったら「ルート66」だったかもしれないなぁ。

実は「イエロー・リバー」という曲については、僕はまだ勉強不足。もちろんタイガースのカバー・ヴァージョンは何度も音源で聴いていますが、原曲をまったく知らないのです(汗)。タイガースがどんなアプローチでカバーしているのか、について書けないんですよね・・・。

たぶんピーのドラムスが一番走ったのはこの曲だったんじゃないかな。一度リード・ヴォーカルの曲を歌い終えて身体がほぐれてきたのか、逆に疾走に拍車が(笑)。思わずジュリーが後ろを振り返って「どう、どう!」と手でリズムを刻んでおりました。

タローはそんな状況にも動じず落ち着いて歌っていたようでしたが、大変だったのはサリーです。ベース、もの凄い高速フレーズになっていました。
さすがにサリーの演奏もこの曲では相当乱れましたね。聴く側のファンとしてはまったく問題無いですけどね!こういうのもまた奇跡の再結成ステージ初日ならではのシーンです。


~MC(タロー)~

「ピーも緊張していますが、僕も緊張しています。でもさっき、かつみに”緊張してる?”と聞いたら、”いや、全然”と・・・ほんっと、ニクたらしい!」
と、トッポを指差すタロー。
トッポは「はあ?」みたいなリアクション(笑)。

「今日は僕らもみんなも少年少女に戻って・・・(戻ったまま)帰りたくないよね。帰ったら現実が待ってるから(笑)、オールナイトでずっとやっていたいんだけど(拍手)」

「さっきジュリーが、サリーは何もしてない、って言ったけど、(サリーは当初)歌も歌わなくていい、と。いやいやそれは、と言うと・・・”じゃあこの前(2012年の武道館)歌った曲なら”、ということで・・・次はサリーの「テル・ミー」です!」


7曲目「テル・ミー」

後の休憩の項で少し触れますが・・・みなさま『ロックジェットVol54』はご購入されましたか?
僕は例によってフラゲして読みました・・・すみません。

巻頭のトッポのインタビューの中で、タイガースの原点である洋楽カバーについてトッポが色々と語ってくれていて、「(ビートルズと比べて)ストーンズの曲は演奏が割と簡単だった」と言っていますね。

まぁそれは曲によりけりなんですけど(例えば「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」はそう簡単とは言えません)、「テル・ミー」は確かに簡単です。特にベースを弾きながら歌う、ということに関しては。
ただ、キーが「B」(ロ長調)だからちょっと面倒な部分もあるんだよなぁ・・・とは思っていて(手持ちのスコアがそうですからね。ちなみにオリジナル音源はピッチが特定し辛い)。

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シンコー・ミュージック刊『ローリング・ストーンズ・ベスト曲集』より
ご覧の通り、#5つのロ長調での採譜です。

2012年武道館公演のレポでもこのロ長調には触れたんですけど、後にDVDで確認したら、あの時は「C」(ハ長調)で演奏されていたことが分かったんです。
これにて、より簡単な演奏に。

僕には絶対音感が無いのでハッキリとは言えませんが、今回もタイガースは「C」でこの曲を演奏したのではないでしょうか。時々チラッとスクリーンに映るトッポやタローのギターの手元も、ローコードがメインのように見えましたしね。

真上から見下ろすピーのタムの叩き方がカッコイイので(振り下ろすような感じでした。この曲はタムの出番が多いのです)、僕はドラムスをメインに観ていました。
曲が終わってから「ああっ、ジュリーはタンバリン(「テル・ミー」の原曲には欠かせないパート)持ってたかな?」と。・・・どうでしたか?

間奏はタローだったと思います。
「思います」・・・とイマイチ歯切れが悪いのは、ギタリスト2人のスクリーンの大写しだけではそこまで確認できなかったから。「テル・ミー」の間奏リードギター・ソロは、基本コードフォームだけで弾けちゃうんですよ。単音ソロと言うより、アルペジオのヴァリエーションなのです。タローのピッキングはアルペジオっぽかったように見えたのですが・・・。いずれにせよ、音は素晴らしかったですよ。
ちなみに東京ドームのチケットも到着しましたが、ここでもギターの細かい演奏の確認は巨大スクリーンに頼るしかなさそうですね。1階スタンドです。何と何と、ついこの間参加したポールの東京ドームの時とすぐ近くのお席を賜りました。ドームって、いざ入場してみないとステージがどんなふうに見えるのか分からないんですが、今回はもう丸分かりというわけです。

サリーの歌は今回もとても良かったですね。喋る時とはまたひと味違ったいい声です。
でもサリー自身は歌は苦手、と思っているみたい・・・長崎公演では、「歌うのはキツい・・・。沢田は凄い!」といった感じのMCがあったそうですよ~。

~MC(サリー)~

「この曲は京都(ファニーズ時代)の頃によく歌っていたローリング・ストーンズの曲です。あの頃は確か1日10回やってたかな?」

「京都は4回や」と、ジュリーがすかさず答えます。
「10回は東京やね」・・・相変わらずの素晴らしい記憶力!
アシベ、ドラムで計10回、みたいな感じだったらしいですね・・・なんちゅうハードな時代でしょうか。信じられません。今だったらあり得ない話ですね。

「当時は他のメンバーと張り合う気持ちもあったけど、今はすっかりそんなことも無くなって・・・」
と訥々と語るサリー。

このように、4曲目「ジョーク」から順番に、メンバー一人一人がMCを受け持ち、次の曲とヴォーカル担当を紹介する、という演出でした。
「順に喋っていこうよ!」と5人が事前に打ち合わせている様子を想像すると、それだけで何か萌えますね~。

「次は、かつみが歌います」


8曲目「ホリデイ」

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そうか、洋楽カバー・コーナーはトッポとピーが2曲ずつでしたね。これはジュリーの『Pray』ツアーのMCなどで既に明らかになっていたこと。
1曲目が「タイガースのテーマ」という予想は外れたものの、どうやら僕が直前に考えていたように、セットリスト前半が洋楽カバー、後半がオリジナル中心、というステージになりそうです。これも「あの頃」を思い出させ、タイムリーなファンのみなさまにとっては嬉しい構成だったのではないでしょうか。

さて、トッポの「ホリデイ」。
良いですね~。これ、原曲は全然バンド・サウンドではないんですよ。オルガンとオーケストレーションが演奏のメインでね。ドラムスは装飾のスネア・ドラムが噛んでくるハミング部限定の登場。ギターに至っては一切姿を現しません。
それをタイガースは、ギター、ベースとドラムスのロック・バンド基本スタイルでカバーするわけです。

歌詞も、「君はまるでホリデイ(休日)そのもの」と歌うからには明るい内容かと言うとそうではなく、閉塞的・・・とまではいかなくとも、主人公の思弁的世界を暗示させるものです。
これを以て「トッポに似合っている」と言うと問題発言のようですが、そう感じさせることがトッポのヴォーカルの大きな魅力だと思っています。

先述の『ロックジェットVol.54』、そしてピー先生の新著『花の首飾り物語』(こちらについても後の休憩の項で少し触れる予定です)を読んで、この「ホリデイ」が「花の首飾り」の誕生と密接に関係していることがすごくよく分かりました。
すぎやま先生がトッポの歌う「ホリデイ」を生で聴いてイメージを喚起しすぐに作り上げた曲が「花の首飾り」だったそうです。「ホリデイ」原曲の持つストリングスの美しさ。タイガースのカバーによるバンド・サウンドとトッポの個性的なヴォーカル。これらの要素すべてを、すぎやま先生が1曲の中に凝縮させた名曲・・・それが「花の首飾り」だったのですね。

僕は「実際にトッポのヴォーカルを聴いてから記事を書く」ということで、今回のツアーが終了するまで「花の首飾り」の考察記事執筆を保留していましたが、ここへ来て考察資料が増え、嬉しい悲鳴です。
早速ビージーズのスコアをアマゾンさんに注文、「ホリデイ」の和音構成などもしっかり勉強し、張り切って比較考察させて頂くつもりです。

「ビ~ピピ、ビ~ビ~ビ」のハミングの「P」の部分では(ほとんど「B」ではあるんですが)、どうしても「Long Good-by」のエンディングを思い起こしてしまうのは、僕だけなのかな。
ジュリーがあの曲の歌録りをした時、「ホリデイ」を歌うトッポの独特の歌声が頭に浮かんでいて、「トッポの思いも」と含んでいたとしたら嬉しいけど、さすがにトッポの「ホリデイ」と「Long Good-by」を繋げて考えてしまうのは無理があるのでしょうね・・・。


9曲目「ヘンリー8世君」

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さぁ、「イッツ・ア・ピー・タイム」の始まりです。
曲は「ヘンリー8世君」でした。僕は「ルーキー・ルーキー」を予想していましたが、今回はセットリスト入りを見送られました。その点は少し残念ですね。予想は自信あったんだけどなぁ・・・。

颯爽とマイクスタンドに駆け寄るピー先生。さすがに今度はヴォーカルに専念するようです。
昨年の中野サンプラザ公演では、「ヘンリー8世君」をドラム叩き語りで披露してくれたピー・・・とここまで書いて思い出しましたが、あの時ピーは確か「ドラム叩きながら歌うのは初めて」と言っていましたよね?ということは、「悲しみはぶっとばせ」は以前、ジュリーがドラムスを担当していたということなのでしょうか。それともタローかな?(あの曲はギター1本の編成でも成立します)

いやいやしかし、ジュリーがおもむろにドラムセットにスタンバイしただけで、武道館はもの凄い歓声に包まれましたね~。
当然僕はジュリーの本格的なドラムス演奏を聴くのは初めて。ドキドキします・・・これが世に言う「オカン状態」というヤツでしょうか。僕は男なんだけれども。

演奏が始まりました。
基本パターンは「ズッ、チャ、ズッ、チャ」頭拍打ちで通すジュリーのドラムス。ハイハットとスネアを使うんですけど、ハイハットのみの奇数拍と、ハイハットとスネア同時打ちの偶数拍で全然力の入れ方が違う・・・それは結果的にとても疲れる演奏だ・・・キックの方は大丈夫だろうか・・・思わず脳内に禁句が流れてしまいます。
「ジュリー、頑張れ・・・!」

曲は進み、いよいよお約束のコール&レスポンス・コーナーへ。
何が来るかと思ったらいきなり
「ヘンリー8世君の楽曲ルーツを探る」
といった感じの、ピー先生による緊急課外授業が始まってしまいました・・・。
ひと言正直に感想を申しますれば

「な、長い・・・(汗)」

すみませんすみません!
でも・・・そう思っていた人がステージ上にもいらっしゃったようで。
ピー以外のメンバーが時々スクリーンに映ったんですけど、完全にギターから手を離して立ち尽くしているトッポの姿がバッチリ大写し状態に(笑)。それはまるで
「う~ん、ボク的にはちょっと長いかな~」
という気持ちが顔に出ているようで・・・いやはや大変失礼ながら、楽しい、楽し過ぎるぞ、ピーとトッポのこの温度差!

その一方で、ミュート気味に5弦と6弦で8分音符を連打しながらピーの講義をバックアップするタローの姿もスクリーンにて確認。優しい!さすがは友情注入ロッカー、竹馬の友。
さらにジュリーはスティックで、「今ココがアタマやろ!」といったアクセントをつけてリズムをフォロー(ジュリーのそんな様子がスクリーンに映し出されると、お客さんの手拍子が改めて揃います)。僕なんて、もはや拍の表裏さえ見失っているというのに・・・この辺りは、たとえ本職ではなくても長年のステージ・キャリアがモノを言う、といったところでしょうか。

先輩に伺ったお話では、長崎公演ではピー先生による講義は無く、普通にコール&レスポンスだけになっていたとか。緊急授業ヴァージョンは、武道館限定だったのでしょうか。ちょっと聞き取り辛かったので、もし東京ドームでもやってくれたら、DVDで講義内容を復習できるのですが・・・。

その後ピーは、タイガース・メンバーの名前を出して「風邪ひいた、クシュン!」「ゴホン!」をお客さんと掛け合いし、2011~12年のツアーで魅せてくれたいつものピーらしくなってきました。お客さんも、元気にレスポンスしていましたね。
ステージを縦横無尽に走り回ったピー先生、いざヴォーカル部に戻ろうとした際、スタンドマイクをジュリーのものととり違えて「おっとっと!」というご愛嬌も・・・。

そんな中、ただ1点・・・本当に今回の武道館公演全体でただ1点だけ、不肖このヒヨッコが
「それは東京ドームのDVD録りまでに修正して欲しい・・・」
と切に願ったシーン(笑)が、この日の「ヘンリー8世君」には登場しました。もしも(そんなことはしませんが)お茶を飲みながら観ていたとしたら、「ブ~~~ッ!」と豪快に吹いてしまったかもしれない、そのシーンとは・・・。

ピーが「3・3・7拍子」をお客さんと一緒になってやった時。
「ア~・ユ~・レディ?あ、ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」というピーのシャウトに引き続いて
「だだだん、だだだん、だだだだだだだん!」
と、ジュリーが右手1本で3つのタムを順番に1打ずつ叩いていったのです。昔、そんな”動くぬいぐるみ”があったような気が・・・(滝汗)。
ハイ、不肖DYNAMITE、その瞬間こう思いました。

「ジュリー・・・これは笑うトコ・・・なのですか?」

うわぁ、すみませんすみません!
いや、でもこれは実際にドラム叩く人が見たら・・・。
さすがにこのままの演奏シーンはDVD映像には残さない方が・・・と考えてしまったのは僕だけなのでしょうか。
う~ん、それとも真上から見下ろす形だったから、無用に滑稽に見えてしまっただけなのか・・・。
いすれにしても!
え~と、できればそこはですね、両手のスティックを交互に使って、まず1個のタムで「だだだん!」、次にセカンドタム1個で「だだだん!」、最後にフロアタムで「だだだだだだだん!」という演奏に変えてみてはいかがでしょう?

などと、いくらこんな場所で提議してもジュリーに届くはずがありません。嗚呼、神よ・・・願わくばこの曲のこの箇所での東京ドームの撮影カメラを、主役のピー先生だけに集中させ給え・・・。

とまぁ、今回の武道館公演での演奏、誰もジュリーのこのドラム演奏のシーンに突っ込んでないなぁ。やっぱり一番愛されてるなぁ、ジュリー。でもさぁ・・・という、これはヒヨッコならではのお話でございました。
いや、大変失礼いたしました。

面白おかしく、ある意味正直に感想を書きましたけど・・・基本的には、まったく問題は無いんですけどね。実は。
もちろんジュリーは全力でプレイしていましたし、真上から見下ろす後方席ならではの愉快なシーン・・・それも含めて楽しかったですから!

ちなみに、休憩時間に再会した27年ロマンス様にそのあたりのお話をしたところ
「あぁ、やってましたねぇ」
とニヤリ。やっぱり、見る人は見ていますね・・・。


10曲目「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」

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ジュリーがヴォーカルに戻ると、安心安心。2011~2012年のツアーももちろん良かったけど、いやぁ今回の「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」も素晴らしい声とシャウト(サビの「あ、せっ!」とか)、そしてジャンプ。
さらには、「ヘンリー8世君」で最高の汗をかきノッてきたのでしょうか、ピーのドラムスに安定感と切れ味が戻ってきました。2011~12年のツアーを思い起こしてみても、どうやらピーはこの曲のようなドラム・パターンが得意のようですね。
トップ・シンバルを刻み、ハイハットを踏み込みながらの3連符鬼連打、健在です。

さて、満を持しての間奏リード・ギターはトッポです。
音のひとつひとつが硬派、縦にフレットを裂くように奏でられるアドリブ・フレーズ・・・実は嬉しいことに、トッポはこのソロを結構長い時間、後方席を向いて演奏してくれたんですよ。肉眼で指の動きまでバッチリ見えました。
確かに流暢な指さばきではありません・・・でも、すごくイイんですよ。
この良さは、最小限のバンド編成も影響していると思います。ストーンズ・ヴァージョンをご存知の方には言うまでもありませんが、この間奏部には実は主役が2人いて、リード・ギターと、「Go ahead and light up the town・・・」と叩きつけるようなトーキング・ヴォーカルです。ですから、この2人(タイガースならばトッポとジュリー)の絡みを堪能するのであれば、他の楽器の音数は少ないアレンジの方が、曲の伝え方としては正解かもしれないのです。
トッポのカジノの音は、その点で曲にハマリまくっていましたね。ギターのフレーズの隙間から、ジュリーの声が覗いて聴こえてくる、という感じで・・・。

ちなみに、秋くらいでしたか、トッポがモズライトのギターを手にしたらしいという情報を先輩より拙ブログのコメントにて頂きまして、「トッポ、まさか再結成ステージはモズライトで・・・?」なんて考えたりもしましたが、『ロックジェットVol.54』のインタビューでトッポはインタビュアーの同様の質問に対し
「まさか。僕がカジノを持たなかったら、”どうしたの?”って話になるでしょう?」
と語っていました。
僕は、”サリー=ヘフナー”とか”トッポ=カジノ”ということすら知らずにタイガースファンになってしまったわけですが、なるほど、拘り以上の思いがあるんですねぇ・・・。

一方の雄、タローは同誌のインタビューで「ロックはストラトでしょ!」と断言しているにも関わらず、武道館にはギブソンSGでの登場でした。
これについては公演翌日YOU様が、「タローのSGと言えば、”タイガースのリード・ギター時代”というイメージがある」と教えてくださいました。「勝負パンツ」ならぬ、「勝負ギター」ということですね。
また、タローがSGを使用していた時期、その理由については27年ロマンス様がブログ記事で考察してくださっています。拝見し、「なるほど」と納得しました。

それにしてもタロー、レスポールを使わない理由が「重いから」って・・・。「アレは碁盤を持っているようなもの」と『ロックジェット』で語っていたのにはウケました。
その点、SGは軽めですからね。

いずれにせよ、トッポ拘りのカジノ、「音の重さ」に着目して選んだと思われるタローのSG。ストーンズ・カバーでは特に、ギター2人の活躍が頼もしかったですよね。
ということで、セットリスト前半を締めくくる次の曲・・・これまたローリング・ストーンズの大名曲が続きます!


11曲目「アンダー・マイ・サム」

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イントロ一瞬で「えっ、何でVANITY FACTORY?」と考えてしまったジュリーファンのかたはいらっしゃいませんか~?
それは冗談として、ザ・タイガースによるストーンズ・カバーの大名曲がいよいよ始まりました。まさかタイガースのカバーでこの曲を生で聴く日が来ようとは・・・。

ピーのドラムス、サリーのベースがここへ来てキレッキレになってきました。セットリスト前半の洋楽カバーの中では屈指の演奏だったと思います。
ジュリーのヴォーカルのハジけっぷりは言うまでもありません。この曲、詞の内容が相当エロいんですよ。「反社会的」と言われることもあるけれど、基本、性衝動を晒したエロい男の物語です。ほら、ジュリーってそういうタイプの詞、好きだから・・・。
そのノリノリぶりは、今にも”おいっちに体操”が始まってしまうのでは、と危惧されるほどでしたが(いや、やってくれたら個人的には大喜びですけど)、さすがにタイガースのステージでそれは無かった・・・。

あと・・・本家ストーンズ、そしてもちろんザ・タイガース含め、様々なアーティストの演奏でこの曲のLIVEを体験したことのある方、LIVE音源を聴いたことのある方にとって、何と言ってもイントロから続くあの印象的なギター・リフが心に残っていらっしゃるでしょうね。もちろん今回の武道館でも。
ところがストーンズのオリジナル・レコーディング音源では、このリフはギターではなく何とマリンバで演奏されています。

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シンコー・ミュージック刊『ローリング・ストーンズ・ベスト曲集』より

しかもバッキングのメインはアコースティック・ギターのストローク。エレキは控え目なカッティングとオブリガート。
全体的にはスッカスカのアレンジです。もちろん、それが良い。でもさらにこの曲の場合は、LIVEで最高にカッコ良いハードなギター・ロックに化ける・・・そのマジックが大きな魅力と言えるでしょう。タイガースのメンバーも当然それを狙ってカバーしているわけです。
嬉しかったのは、この日のお客さんの手拍子。ストーンズのレコーディング・ヴァージョンには左サイドに反響音のあるハンド・クラップが入っているんですね。武道館の自然な音響を伴った1万3千人の手拍子が、「アンダー・マイ・サム」原曲のアレンジの魅力と、LIVEならではのハードな魅力を融合させているような・・・これまた、シンプルなロック・バンド編成の賜物ではなかったかと思っています。

ジュリーの「change has come♪」の叩き斬るような発音のカッコイイこと。また、演奏が一瞬ストップする箇所でのピーのしなやかなアクション。
そして一番の見せ場は、フロントの4人がずずい、と足並みを揃えて右に左に、ステージ前方まで進み出る、というあのシーンです。後方から見ていると、「そこを一番重点的に稽古したんじゃなかろうか」と思えるほど、4人の足運びが揃って見えたという・・・。この日、最もカッコ良かったシーンなのでは?

演奏が終わると、それぞれが手を振って退場していきました。なんだかあっという間でしたね・・・。

このように、セットリスト前半は予想通りの洋楽カバー・コーナーでした。ここまでオリジナル曲がまだ歌われていないこともあり、この時点ではまだ「夢なのか現実なのか」という気持ちだった先輩もいらっしゃったようです。
ジュリー、ソロコンと比べるとまだまだ汗をかき足りない状況・・・?いやいや普段とは別の緊張、別の体力や喉も使ったのかな?

ともあれ、後半に連発されるであろうオリジナル曲、サプライズ・ナンバーはあるのか?とそれぞれが思い思いに期待を高めつつ、ひとまず武道館は休憩タイムに入りました。


~休憩~

レポもしばしの休憩コーナーということで。
まずはこの奇跡の1日の記念に、武道館公演翌日の新聞記事を2つほど残しておきたいと思います。

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↑ 我が家で購読している『東京新聞』


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↑ 会社でとっているサンケイスポーツ。

1枚でスキャンしきれず2枚に分けました。サンスポはセットリストの記載が丁寧だったで目を惹きました。

これ以外ですと、購入はしませんでしたがデイリースポーツの写真が良かったです。なんせ、阪神タイガースの『勝ちたいんや!』タオルがバッチリと・・・さすがはデイリー(笑)。
あと、日は遅れましたがドド~ン!と素晴らしい記事を届けてくれたのが毎日新聞。ちなみにその中にスタジオショットらしき掲載写真がありましたが、そこでトッポはローリング・ストーンズのギタリストだった故・ブライアン・ジョーンズのTシャツを着ているように見えます。


続きまして、まぁこれはこちらに来てくださる方々ほとんどがもう既にお読みかと思いますが・・・武道館公演前後に読んだタイガース関連本2冊をご紹介しておきます。

まずは、ピー先生の新著『花の首飾り物語』。

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2011~12年のツアーでは不参加となったトッポ・・・そんなトッポのLIVEにフラリと訪れたエピソードからプロローグ導入するなど、全体の構成も凝っていて、当然ながら読み物として素晴らしいばかりでなく、タイガースファンにとっては貴重なレコーディング秘話、さらには今まで知りえなかった事実がピー自身の取材で裏打ちされるという、本当に完成度の高い研究書とも言えます。

しかし・・・こんな精度の高いタイガース研究書を読ませて頂いたからには、一昨年に拙ブログで執筆した「白夜の騎士」の楽曲考察記事をいずれ大幅に書き直す必要が出てきたなぁ・・・。
『花の首飾り物語』を読んだ方なら、それが何のことかはお分かりですね・・・。もう少しお時間を頂けないでしょうか。

さらに続いて、『ロックジェットVol.54』。

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ご存知の通り、巻頭特集はトッポとタローへのロング・インタビューです。
個人的には、タイガースのギタリスト2人がそれぞれの愛器への思いを語っている点が興味深く、楽しく読みました。
ちょっと漢字の誤植が多いですけどね(3つ見つけた)。
他には、ローリング・ストーンズの記事も充実。
また、ジュリーの2014年前半の活動スケジュール紹介に1ページが割かれています。
編集後記では、51号での読者の熱烈な反響があって今回の54号の企画が実現した、といった内容の記述があり、今回さらなる読者の声が集まれば、タイガース特集第3弾や、ジュリー特集の実現も夢ではないかも!


そして最後は完全な余談となりますが・・・僕はこの日1日完全有給休暇をとり、武道館に向う前に、ポール・マッカートニー来日記念として虎ノ門で期間限定オープンしている『エイト・デイズ・カフェ』に足を運びました。

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残念なことに、下調べをせずに到着したら「ランチタイム閉店まであと30分」とのことで・・・食事は断念せざるを得ませんでしたが、お店の人は快く店内見学と写真撮影を許可してくださったのでした。

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僕はビートルズが来日した1966年の生まれです。その日本公演は演奏が相当荒かったそうですね。
でも、「そんなラフな演奏だったのなら、時代に間に合わなくて観れなかったこともあきらめがつく」と考えている後追いのビートルズ・ファンがいますか?そんな人は一人としていませんよ。観たかった、この目と耳で体感したかった・・・そう思っているに決まっています。
今回のタイガース再結成は、そんな意味から考えても凄いことなのです。後追いのファンが奇跡的に実体験の機会を得たと同時に、かつてタイガースを体験したタイムリーなファンがどれほどの思いの中にいらっしゃるか、ということですよね。

『エイト・デイズ・カフェ』店内の写真を撮りながら、数時間後には最低でも1曲はタイガースの演奏でビートルズ・ナンバーを聴けるだろうなぁ、とは思っていましたが・・・それが「ひとりぼっちのあいつ」と「悲しみはぶっとばせ」になろうとは。
この若輩にはまったく予想できておらず、だからこそ嬉しいサプライズでもありました。


それでは、セットリスト後半のレポに戻ります!


12曲目「十年ロマンス

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休憩時間に再会した27年ロマンス様も僕と同様に、パンフレット記載のセットリストは見ずにこの武道館に参加なさっていました。
そこで、後半の選曲について「同窓会のナンバーをやるのかどうか、もポイントのひとつですね」とお話していました。僕ら2人は同世代で、同窓会のタイガースについては、少年時代のテレビでの鮮明な記憶を共有できるのです。
ただし、そこでタイガースの大きな魅力に素早く気がつき、時代を遡って本格的なタイガース・ファンとなられたのが27年ロマンス様で、普通に「色つきの女でいてくれよ」を”ジュリーのいたタイガース”の復活記念ヒット曲として楽しむだけで済ませていたのが僕。
この差は何処でついてしまったのでしょうか・・・う~む。

さて、同窓会ナンバーですが、「色つきの女でいてくれよ」は間違いなくやってくれるだろう、と予想していました。ただ、他の曲はどうかなぁ、というのが正直なところでした。

それが後半スタートでいきなり、ですよ。
僕が事前のセットリスト予想記事でまったく自信なさげに書いた、ギターコード「Em→D→Em」を使っての「5人だけの演奏ヴァージョンのイントロ」が、何と実現してしまいました!
いやぁ僕としては、この後半1曲目の「十年ロマンス」だけでも、ネタバレ我慢の甲斐がありましたよ。おそらく27年ロマンス様は僕以上に感激が大きかったでしょう。強烈なイントロ・インパクトでした。

そして・・・伸びやかなAメロから、のハイトーンBメロへ。このヒヨッコが遂に生で体感する、タイガース2大ヴォーカリストのリレー。素晴らしい!
ジュリーのヴォーカルが凄いことはヒヨッコなりに知っていますが、いやいやトッポ、出るじゃないですか出るじゃないですか、「十年ロマンス」のあの高音部が。
「あの~誓い~の夜の~♪」
澄みわたる高音、トッポだけの声質。ジュリーはトッポの声を想定して作曲したんだなぁ、と実感できました。

そして、この曲のピーのドラムス・・・いいじゃないですか!
同窓会ナンバーには今ひとつ思い入れが・・・と仰るタイムリーなタイガース・ファンの先輩は数多くいらっしゃいます。ただ、今回のセットリストで演奏された2曲の同窓会ナンバーは、ファンの前でピーがドラムを叩いた、という厳然たる事実によって真にタイガース・ナンバーへと昇華した・・・僕はそう考えたいところです。
「十年ロマンス」で言うなら、サビ直前のキメのフィル・インが何とピーに似合っていることか。
そりゃそうですよ・・・この曲は、ジュリーが「ザ・タイガース」を思って作曲したのですから。曲作りに取り組む中で、頭の中で鳴っているドラムスは、ピーの音であったはずです。

ジュリーはかねてからタイガースの再結成について、「かつみがいれば、十年ロマンスの高音も歌える」と語っていたと聞いています。
ジュリーの念願が遂に叶ったのですね・・・。


13曲目「僕のマリー

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実は僕は当日、セットリストを事前に2曲だけネタバレしてしまいました。
某SNSで、早くから武道館周辺にいらしていたYOU様が、会場中から漏れてきたリハーサルの音を聴き、大興奮して曲タイトルを絶叫されているつぶやきを、うっかり読んでしまったのです(爆)。
まぁ、「僕のマリー」のネタバレについては全然問題無かったですけどね。必ずやるに決まっていますから。
ただ、もう1曲の方・・・「美しき愛の掟」のネタバレはちょっと痛恨でした(笑)。

「僕のマリー」・・・後半1曲目かな、という漠然と休憩時間に頭に浮かんでいた予想は外れましたが、やはりタイガース・オリジナル曲コーナーにあって、このファースト・シングルは早めの披露となりましたね。当然でしょう。この曲こそザ・タイガースの原点。

イントロはお馴染み、サリーのベース・フィル。
ピーのタム連打と、タメを効かせたクラッシュ・シンバル。
シンプルかつ贅沢なクリシェのコード進行、甘やかなメロディー。
無垢で、てらいのないジュリーのヴォーカル。

そして・・・2011~12年のツアーでは、タローが間奏リード・ギターを担当しました。今回は・・・?
トッポです!
正調「僕のマリー」です。”あの頃”にはこうして、今目の前で演奏されているのとまったく同じ編成で少女達をウットリさせていた、これが「僕のマリー」の最基本スタイルなのでしょうね。
スクリーンにバッチリ映るトッポの指先とフレット。細かいビフラートの様子までハッキリと見えました。

ハーモニーも美しかったですね。
いや、ハーモニーばかりではありません。可愛らしさが前面に出ている、と思っていた曲だけど、”簡単には触れられない美しさ”をこの日は感じました。ザ・タイガースの等身大の演奏だったからでしょうか。それとも、何人かの先輩が仰っていたように、ジュリーのヴォーカルが”あの頃”の声だったからなのでしょうか・・・。


14曲目「落葉の物語

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2011~12年の老虎ツアーではアンコールのコーナーで披露され、「待ってました!」とばかりに、お客さんの大きな拍手と万感の横揺れで迎えられていた名曲。
それでも、多くのタイムリーなタイガースファンのみなさまの「これでトッポの声があったら・・・」という声をよく聞きました。後追いの僕には「そういうものかなぁ」としか思えなかった、というのが正直なところではありました。

僕がこの曲を初めて生で聴いたのは、ジュリーの2010年お正月コンサート『歌門来福』。次に2011~12年のツアー。
だんだんと「タイガースの音」に近づいていって、そしていよいよ今回。
実際に聴いてみて、本家は何が一番違うかというと、やっぱりトッポがいる、ということなんですよね。後方席のハンデなのか、トッポの声はあまり大きくは聴こえなかったんですけど、それでもこれまでとはイメージが全然違うように思えます。サビ最後の「あ~、あ~♪」のところは、特にそう。
東京ドームでは、明瞭な音量バランスでエンディングのトッポのコーラスを聴きたいなぁ・・・。

その一方で、泰輝さんのキーボード装飾が恋しい瞬間もあったかな~。この曲のレコーディング・ヴァージョンのアレンジは、本当に素晴らしいですから。

2番だったかな・・・「す~て~きな、す~て~きな♪」のジュリーのソロ・ヴォーカル部で、後方席から見えるアリーナの横揺れを見渡していたら、タローが一瞬何とも言えない笑顔でトッポに何か目くばせしているのが目に入りました。トッポがコーラス・パートの歌詞を間違ったりしたのかな。それともひたすら今この瞬間が嬉しかっただけ?
とてもいいシーンで印象に残りました。

あと、この曲って・・・「冬なんだけど、外を出歩くにはちょうど心地よい」くらいの季節に聴くのが良いんでしょうね。この日は正にそんな感じのお天気だったでしょう?
え・・・?熱気で暑いくらいだった・・・?
いや、確かにそうでしたね(笑)。


15曲目「生命のカンタータ

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これは嬉しかった!
またまた、セットリスト・ネタバレ我慢の甲斐あり・・・『ヒューマン・ルネッサンス』から何か1曲は渋い選曲があるだろうとは思っていたけど、今回メンバーが選んだのは、これですか!

結果として今回は「光ある世界」「朝に別れのほほえみを」といったナンバーは見送られましたが、僕はこの「生命のカンタータ」で充分満足しました。さらに、この曲から『ヒューマン・ルネッサンス』収録曲が3曲続くというセットリスト構成も、とても良かったと思っています。

この日、ピーのドラムスが2番目に素晴らしかったのがこの曲だと僕は感じました(1番は、問答無用で「美しき愛の掟」!)。
「生命のカンタータ」のドラムスは、手数やテクニック的に難しい点はありません。しかし、シンプルな刻みのフレージングが続くので、とても走りやすい演奏なんです。ところが、セットリスト前半あれだけ走りまくっていたピーが、この曲では本当にクールにキメてくれました。
おそらく、相当サリーに気を遣っていて、「この曲は俺がしっかりしなきゃ!」という気合がそうさせたんだと思うんですよね・・・。また、今回のセットリストの中で、全体、個人含めてメンバーが稽古を重点的に積み重ねてきたのがこの曲ではなかったか、とも考えます。

と言うのも、この曲は演奏もコーラスも、”タイガースの重石”サリーにかかる負担がとても大きいのです。

コーラスについては言うまでもありませんね。
演奏に気をとられてマイクに近づけず聴き取りにくいシーンもあったけど、あのサリーの低音追っかけコーラスが武道館に響き渡ったことは、何より「生命のカンタータ」が生で聴けた!という感激をより大きくしていました。

さて語りたいのはベースです。この曲のサリーのベースラインはとにかく最高!技術的にも、響き的にも非の打ちどころがないベースなのです。
フレージングは、「まるで生き物のように動き回る」と絶賛された、ビートルズの「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」でのポール・マッカートニーの演奏がオマージュされています。まず低音をスタッカートで1音、そこからとんでもなく高音、ネックの根元近くまで音階が跳ね上がり、下降していく・・・シャッフル・リズムならではの「跳ねる」フレージングなのですね。朴訥な味わいのある穏やかな曲ですが、ベースだけはメチャクチャ激しいのです。

サリー、果敢に弾きまくっていましたよ~。
これから各会場にご参加のみなさま、是非この曲ではサリーのベースに注目してみてください。

かく言う僕は、サリーのベースとピーのドラムスを中心に観ていたため、ジュリーのヴォーカルや、ギターの記憶がほとんど無いという・・・(泣)。
間奏はリード・ギターで奏でられたはずですが、トッポとタロー、どちらの演奏だったのかな。東京ドームではその辺りもしっかり確認しなければ!


~MC(ジュリー)~

「アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』から、「生命のカンタータ」をお届けいいたしました」
と曲紹介をするジュリー。
シングル曲ではないので、ジュリーとしてもきちんとタイトルを伝えたかった、ということなのでしょうか。会場のほぼ全員、知ってる曲だとは思いますけどね・・・。

「次の曲も、『ヒューマン・ルネッサンス』からです。「忘れかけた子守唄」・・・」


16曲目「忘れかけた子守唄

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いやいや、ジュリーがタイトルを紹介した一瞬で、猛烈なお客さんの拍手が起こりました。
ファン全員が「完全タイガースならきっとやってくれる」「この曲を待っていた!」という雰囲気。

ジュリーとトッポが並び立たなければ成立しない名曲。不思議なことに、『ロックジェット』でトッポが『ヒューマン・ルネッサンス』に託していた思いと、近年のジュリーが取り組んでいる社会性の高いアプローチによる楽曲リリースの姿勢は、細かな部分では色々違いはあるけれど、ザ・タイガースとして並び立った時にはピッタリとシンクロするようにも思えます。

おそらくは「ジョニーが帰ってくるとき」というスタンダード・ナンバーのタイトルをオマージュ元とする、兵士・ジョニーとその母親の悲劇の物語。
「昔、こんな悲しい出来事が実際にあったんだ。聞いてくれよ」と、しっとりと語りかけるような長調のAメロをジュリーが歌い、「ジョニーのお母さんは、こんな気持ちだったんだ」と切実に訴える短調のBメロをトッポが歌う・・・これぞザ・タイガース、これぞ『ヒューマン・ルネッサンス』。やはり素晴らしい、ジュリー→トッポのヴォーカル・リレー。
ホント、声はこんなに相性抜群なのにねぇ・・・(笑)。
いや、今は仲良くやってるのか。『Pray』ツアーでのジュリーの宣言通りに、移動の新幹線ではこの二人が並んで座っているのかな?

演奏も良かったですね・・・ピーの、これまた”鬼神ロール”とは趣を違えた、撫でるようなロールも炸裂。レコーディング音源の「チャッ、チャ、チャ~、チャッ、チャ、チャ~♪」とは異なり、「チャ~、チャッチャ、チャ~、チャッチャ♪」と叩いていました。

ですがみなさま、今回のツアーではこの曲のタローのリード・ギター(でしたよね?汗)にも是非注目しましょう!
トランペットとストリングスのパートを単音で弾いているだけ・・・指さばきが難しいわけではありません。しかし、曲中3度登場するこのパートは、すべて異なるキーで演奏されているのです。当然、押さえるフレットがその都度ずれていきます。
連続して弾くならば楽。単純運動ですからね。でもこの曲の場合は、イントロ、間奏、エンディングとそれぞれ独立して登場しますから、頭の中でフレットの位置が混同してくるわけです。それを本番でミスなく弾くにはどうすればよいか・・・反復稽古以外ありません。
いざ武道館本番・・・楽々と演奏されていました。稽古充分の証です。

タローの「な~んも心配いらん!」というギターが、ジュリーとトッポの歌声にも良い影響を与えていた・・・僕はこの日の「忘れかけた子守唄」をそんなふうに聴いたのですが、みなさまはいかがでしたか?
(註:なんか、読んだ方から「リードギターはトッポだったと思うよ」との情報多し。東京ドームで確認しますが、それまでタロー、トッポいずれもシャッフルで通用するお話ということで・・・滝汗)


17曲目「廃虚の鳩

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ギタリスト・タローの話が続きますが、終演直後にタローと遭遇したというYOU様から頂いたコメントによりますと、タローは「酷かったね~」と謙遜していたとか。
僕はまったく「酷い」なんて思わなかったけれど、ひょっとしたらタローの中で少し悔いの残った演奏がこの日あったとすれば、この「廃虚の鳩」かなぁ、とは思いました。

今回のこの曲では、イントロ、間奏前、エンディングと、トッポとタローが単音をハーモニーで弾く箇所が3度登場します。レコーディング音源では、ストリングスによるキメのフレーズ。鳩が空に飛び立つ時の「パタパタパタ」という羽根の音を象徴しているような音階・・・曲中でとても大事なフレーズですよね。
この日はそこで、2人のギタリストの音がキレイに揃う、とまではいかなかったのです。イントロは「おっとっと!」といった感じで済んでいましたが、エンディングでは「あらあらどうしましょ」みたいな(汗)。
ハッキリ聴き分けはできなかったのですが、この日の2人のステージ全体を通しての雰囲気から推し量れば、「タローが逸って、トッポが遅れて」という状況になっていたんじゃないかな~。

もちろん僕としては、そんな演奏を聴いていて何ら問題は無かったのです。むしろ、あぁ、2人で事前に打ち合わせた(タローが譜面を書いた、というのはこの曲のことですよね?)ギター・アレンジを苦心して弾いているなぁ、と微笑ましいような気持ちでした。
ただ
「スコアを書いて、トッポとも何度も合わせて稽古してきたのに・・・もっとうまく出来たはずだ!」
と、タローは後で思ったのかもしれません。

おそらく武道館公演の後、ギタリスト2人の間で再度の打ち合わせがあり、「今度はバッチリやろうな!」とタローはもちろん、トッポも気合が入りまくっていた・・・そのあまりの気合が、噂で聞いた福岡公演での”順番の全然違う曲で「廃虚の鳩」のイントロを弾いてしまった事件”へと繋がったのではないでしょうか。
そう推測すると、そんなアクシデントもまた楽し!ではありませんか。ジュリーの言う通り、福岡のお客さんは大いに得をしたのでは?

武道館の「廃虚の鳩」でのトッポのヴォーカルは素晴らしかったですが、僕はサビ部でジュリーが下のパートでコーラスに噛んでくる声に感じ入りました。
ジュリー、遠慮なく声を出してましたよね。これがサリーやタロー、ピーのリード・ヴォーカル曲だと、バランスに気を遣ったジュリーの声量が控え目になるんです。
「かつみの歌なら俺も思いっきり声出しても大丈夫や!」
そんなジュリーの心の動きを想像すると、萌えます。
ほんっと、声の相性は最高なんですけどねぇ・・・
(←しつこい)


18曲目「モナリザの微笑

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これはイントロが始まる前に、何の曲か分かってしまいました。
タローがおもむろにハーモニカを取り出し、「プッ、プ~♪」と2度、試し吹きをしたんです。もちろんオフマイクでしたから、ひょっとしたら距離が遠い客席までは聴こえなかったかもしれませんね。北スタンド天井近くには、かなりハッキリ聴こえました。

2011~12年のツアーでも何度も見た光景・・・タローのハーモニカの最初の2音にメンバーが合わせて始まるイントロ。緊張の一瞬でしたが・・・。
ブラボー!
タローのハーモニカ、パーフェクトでした。まずオクターブ上で吹き、リフレインを下げる(逆パターンが常套ですが、タローは稽古の過程でこちらの方が馴染む、と決めたのでしょうね)というキー移動もスムーズ。
これは相当吹き込んでいるな、きっとツアー通してこの素晴らしいハーモニカのイントロが聴けるんだろう・・・とこの日僕は思ったわけですが、先日の福岡公演では数回の仕切り直しがあったとか・・・。
いや、本当に武道館では完璧だったんですよ?

トッポのギター・カッティング、サリーのコーラスも印象に残りましたけど、2011~12年のツアーで見所を知り尽くしたピーのドラム演奏にやはり今回も目が行ってしまいましたね。
最大の見せ場である「心がほしい♪」直後のシンバル剣舞は、6つ打ちでした。
この箇所は7つ打ちのパターンもあって、ピーがその日のノリによって使い分けているようです。老虎ツアーでずっと見てきた感じだと、「慎重に」と気を配っている時は6つ打ち、無心で曲の世界に入り込み我を忘れている時は7つ打ち、というのが僕の見立てです。
7つ打ちの場合は、そのすぐ後の「ダタッ」というフィル・インが相当忙しくなるんですよね。
今ツアー初日・武道館ではピー先生、まずは無難に試し斬りの剣舞だったということでしょうか。

最後の「待って~い~る♪」のジュリーのロングトーンに絡む激しいフィル・インも先のツアーと変わっていませんでした。あとは、『世界はボクらを待っている』のサウンドトラック・ヴァージョンのような、「ドカシャ~ン!」と豪快に叩きつけるクラッシュ・シンバルの強打が、東京ドームで観られるかどうか。
楽しみにしたいと思います。


19曲目「銀河のロマンス

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ジュリーが『Pray』ツアーのMCで、年末のタイガース再結成のバンド編成について
「キーボードを使用せず、ギター2本体制ですべての曲をやる!」
と宣言した時、「廃虚の鳩」と共に例に挙げられていた曲が、この「銀河のロマンス」だったそうです。

いざ武道館、イントロのストリングスはトッポのリード・ギター(だった、と思う
←オイオイ大丈夫か)でした。
いや、リード・ギター=トッポであったはずなんですよ。と言うのは・・・実は「銀河のロマンス」のトッポのギターについては、昨年の『3月8日の雲~カガヤケイノチ』びわ湖公演のMCでジュリーが少し語ってくれていたのです。
「5人でスタジオ入った!」というお話・・・当時はまだファンも「タイガース再結成はどうなるんだろう?」といった感じの時期だったこともあり、一応「ここだけの話」として色々と話してくれたのでした。その時唯一、スタジオで合わせてみた曲としてタイトルが挙がっていたのが「銀河のロマンス」。

その頃は、まだまだトッポのリード・ギターも怪しかったみたいですが、ジュリーは「(ギターの音で)ガックンガックン」とおどけつつ、とても楽しそうに話してくれて。
その、5人で久々に合わせた「銀河のロマンス」で、ジュリーは3番の歌詞をちょっと間違ったんだそうです。
「まぁ稽古やし」ということでジュリーとしては流していたらしいのですが、すぐ後にトッポがススス、とジュリーの元に寄ってきて

あそこはね、流れるようなバラのかおり!

と言ったんだとか(もちろんトッポの声真似でした)。
「かつみに言われてもた、クヤスイ~!」とはジュリーは言いませんでしたが
「何が流れるようなバラのかおりや!」とは言ってた笑)、そんな感じで面白おかしく話してくれました。
考えてみるとここ数年に限って言えば、ジュリーよりトッポの方がLIVEで「銀河のロマンス」を歌っている回数は多そうなんですよね。
いや、ジュリーの曲なんだけどね!

そのびわ湖公演でのタイガース話は、聞いていて本当に身体が折れ曲がるくらいの抱腹絶倒MCだったのですが、それはともかく!再結成初日武道館でのジュリーのヴォーカルは素晴らしいものでした。「僕のマリー」「落葉の物語」「銀河のロマンス」の3曲は、ジュリーの声が「タイガース時代に戻る」ような感覚が特に強いと思われます。
もちろん、「流れるようなバラのかおり♪」もちゃんと歌っていましたよ~。

ただ今回は、「シャララララララ~♪」の女声コーラスが無かったんですよね。あのコーラスはもう、条件反射のように脳内に流れちゃうから・・・。2011~12年のツアーではGRACE姉さんが歌ってくれていたのですが。
代わりにリード・ギターでコーラス部を演奏していたけど、こうなったら今後の会場では、リード・ギターに加えてお姉さま方のコーラス参加を希望します。東京ドームのDVD録りにも是非みなさまの美しき女声コーラスを残してください!
あれは男がやると台無しなので、僕はおとなしく聴くだけにしておきます・・・。



20曲目「青い鳥

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さぁ、この曲です。
僕の「今日はタローが一番良かった!」という思いを決定的にしたのが、この「青い鳥」のイントロ。
今回の僕のタロー絶賛モードにおいて語りたいことは、すべてこの「青い鳥」1曲の演奏についての感想でまず集約できる、と言っても過言ではありません。
タローの自作曲であり、タイガースの代表曲でもある「青い鳥」で、やっぱり本家、オンリーワンのタローのギターを魅せてもらいました。

何故そんなに感動したかというと・・・これは実際ギターを弾く人でないとなかなか分かりにくいとは思うのですが、とにかく2011~12年のツアーでの「青い鳥」とは、イントロのタローの指運びに歴然とした違いがあった、ということに尽きます。
2011~12年のツアーでは、タローは「間違えないように、間違えないように」と目一杯配慮して、フレット移動を目で逐一確かめるようにして弾いていました。
僕が参加した会場では、ファイナルの1・24武道館が一番良かったのですが、今回はさらに、いや、比べられないほどに素晴らしかったのです。

「青い鳥」のギターは、いわゆるギュンギュン言わせるアドリブ全開のギター・ソロではありません。
アレンジされた音階を、決まったメロディー、お馴染みのメロディーとして弾くことがまず肝要で(1音でも違う音を出したらファンに気づかれてしまいます。どんな超絶テクニックであろうと、「それは違う!」と思われてしまう・・・”誰もが知る”名曲の宿命でもありますね)、弾き手としても大いに気を遣う演奏となります。
前回ツアーのタローもそれは充分に承知、まず「間違えないこと」を第一に重視しての演奏でしたが、今回は”イントロのメロディーが完全に自分の身体と同化している”状態で初日・日本武道館を迎えたようです。

タローの「青い鳥」のイントロは、複音のメロディーを大きなフレット横移動に統一して奏でられます。この演奏スタイルは確かに難しい・・・いや、難しくしてしまっている、とも言えます。あくまでも一般的に、という意味で言うと、運指としては論理的ではないのです。

ギターというのは、左手をある位置に固定した状態で指を縦に移動させて弾く方が理にかなっています。何故なら、その方が素早く指を運ぶことができ、より多くの細かい音を続けて鳴らせるからです。
ジュリーファンのみなさまであれば、例えば「愛まで待てない」の柴山さんの速弾きのシーンを思い出してください。「きゅるりらりらりら♪」と目まぐるしく音が鳴っている時、柴山さんの指は高速で動いていますが、左手そのものはフレーズフレーズである程度固定されているはずです。それが「速く弾く」ためのスタイルです。
当然ですが、これは素晴らしい技術で、本当に道を極めたギタリストの真髄です。

「青い鳥」のイントロも、同様の理屈で縦移動の指運びで弾くことが可能です。そうして弾けば、もっと細かい16分音符の高速フレーズに差し替えることもできるでしょう。
しかし「青い鳥」のあの音は、ああでなければならない、と決まっているのですよ。運指移動を練り直して音数を多くしてテクニカルなフレーズにしてみよう、という選択肢はありません。
それでも、横移動よりは縦移動の方がミスは減ります。同じ音階がより楽な動きで出せます。ただし、鳴り方は違ってきますけどね。
タローにとってはその「鳴り方」が大事なのでしょう。いつでも頑ななまでに大きな横移動を駆使してこのイントロを弾きます。それが自分の中での「青い鳥」の音なのだ、と・・・。

論理的な運指を度外視したとも言える、タローの「青い鳥」の横移動演奏。そのハンデをどうやって乗り越えるか・・・稽古しかありません。
「その指運び、キツイんじゃない?」と言われたとしても、「そうか~?」とばかりに、身体が自然に反応するまで弾き込んでいれば、どんな腕利きのギタリストを前にしようとも、「青い鳥」はタローのギターが最高峰。結果、ああやって横移動で弾くことを、他ギタリストが理を曲げてでもカバーすることとなります。

そんなタローのギターが、武道館に帰ってきました。
感動の「青い鳥」のイントロでした。

え、間奏ですか?こちらは、2011~12年のツアーと変わっていません。
この日はもちろん完璧な演奏でしたが、タローが事前に弾き込んで、自らに叩き込んで繰り返し稽古していたのはイントロ(とエンディング)のあのフレーズの方だっただろう、と僕は考えます。

2011~12年のツアー各会場でジュリーは「青い鳥」を、「名曲中の名曲!」と紹介していました。
今回のツアーでは特に詳しい曲紹介のMCは無いけれど、『オールナイトニッポン・ゴールド』でもジュリーは「青い鳥」を選曲していましたし、リリース当時どちらかと言うとメンバー内では地味な存在であったタローが作曲家として大きな一歩を踏み出し、またザ・タイガースとしてもメンバーのオリジナル曲で大ヒットをカッ飛ばす実績を残したこと・・・ジュリーの中でも嬉しいタイガース時代の思い出と直結した曲なのだと思います。

名曲中の名曲「青い鳥」・・・本家・タローのギターを東京ドームで再び味わえることを楽しみにしています。


21曲目「花の首飾り」

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「青い鳥」がタローならば、「花の首飾り」はトッポ。
初めて生で体感する、トッポが歌う「宇宙一」(byジュリー)の「花の首飾り」が満を持してこの配置に!

思えば2012年1月24日の日本武道館。ひょっとしたら最後の最後にトッポが来てくれるんじゃないか、と期待していましたがそれは叶わず。結局ツアーを通して「花の首飾り」は、代役・ジュリーによって歌われました。
でもこうしてトッポも加わった再結成が実現した今となっては、ジュリーの歌う「花の首飾り」がDVDとして記録に残ったことは良かったのだ、と思えます。

僕はジュリーファンとしてまだまだキャリアは浅いけれど、あの2011~12年の「花の首飾り」ほど、歌詞を絶対に間違わないように、メロディーが自己流にならないように、と気を遣ってヴォーカルに対峙するジュリーは観たことがありません。それがジュリーのトッポへの最大限の礼儀であり、トッポが歌う「花の首飾り」へのリスペクトであったことは間違いないと思っています。

今回、トッポの「花の首飾り」を体感して・・・やっぱり本家だなぁと思うと同時に、「歌い方」という点においてはジュリーもトッポも同じだったことに、驚きとも納得ともつかない不思議な感想を持ちました。
つまり、「素晴らしい曲なのだから、変に感情や技術を持ち込まず、そのままの歌として歌うのが良い」というスタンス。これはトッポもジュリーも同じでした。

ピーの新著『花の首飾り物語』では、ピーがちょうど2011~12年のツアーでこの曲をジュリーが歌っていた時に、メンバーそれぞれにこの曲についての感想を取材しています。
その中でジュリーは、こう言っています。


やっぱりいい歌だよね。
切ないよね。好きだとか、愛しているということは言わなくても、気持ちはよくわかるよね。歌い方も、かつみもそうだろうけど、感情をそんなに乗せなくても、感情が伝わる歌だよね。

ジュリーは、トッポが「花の首飾り」を歌うのをずっと横で見てきて、「どう歌えば良いのか」を肌で分かっていたのでしょう。
「ずっとかつみを意識して歌ってる。”かつみほどじゃないな”と思いながら」
とも言っています。

そう考えると、確かに世の幾多の「花の首飾り」カヴァー・ヴァージョンには、歌い手それぞれの解釈・・・感情が過剰に「乗せられて」いるのかもしれません。
トッポ、ジュリーの「花の首飾り」には、いずれもそれがありませんでした。

優れた歌をただ「歌」として歌う・・・だからこそ、トッポとジュリー、それぞれのキャラクターが「花の首飾り」という曲に反映されるのではないでしょうか。
2人の、まったく異なった天性の「声」によって。

ここから先は僕の個人的な感想になりますが・・・。
ジュリーの「花の首飾り」には、今も何処かで生きている「人間」の希望を感じました。「白鳥」(「しらとり」と読んでね~)=「娘」が、喜びへの道を踏み出していく瞬間を歌っているように思えたのです。

一方、本家トッポの「花の首飾り」には、前から拙ブログのあちこちで書いていた自分の予想が的中し、「白鳥」と「人間」の狭間を彷徨う娘の弱さ、脆さ、儚さを感じました。これは決してマイナス要素などではなく、「宇宙一」の「花の首飾り」の真髄だと思います。
この「弱さ、脆さ、儚さ」というのは、1973年の『沢田研二新聞』にてトッポがジュリーの歌手としての魅力について寄せた言葉の中にあるもので、トッポがジュリーの中に見ていた魅力が、実はトッポ自身が持つ大きな魅力であり、トッポのジュリー評はある意味鏡を見ているようなものだったのだ、と僕は考えています。

トッポの「花の首飾り」での弱さ、脆さ、儚さの魅力については、東京ドームのレポートを書き終えた後に、恒例の”セットリストを振り返る”コーナーにて採り上げ、深く掘り下げるつもりです。
とにかくここでは、やっぱりトッポの「花の首飾り」はこれまたオンリーワンのザ・タイガースの名曲だった、と実感できた喜びを書くに留めておきます。

しかし・・・ここまでトッポのヴォーカルだけに耳を澄まし集中して聴くことになるとは。ジュリーのコーラスや、バンド演奏の記憶がほとんどありません。
東京ドームでは、もう少し俯瞰して全体を聴くことができるかな・・・?



22曲目「君だけに愛を

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さぁさぁ、このセットリストの流れなら、次の曲はもう多くのお客さんが待ち構えていたんじゃないでしょうか。
三大タイガース・ナンバー・・・タローここにあり!を見せた「青い鳥」、宇宙一の「花の首飾り」に続いては、ザ・タイガースと言えばこの曲、トドメの一撃、否、トドメの指差しで1万3千人を昇天させるべく、「君だけに愛を」が降臨です!

「きゅい~ん♪」とギターの音が鳴っただけで、心得たお客さんの割れんばかりの大歓声。
導入部「オ~、プリ~ズ♪」のジュリーの甘い歌声にさらに歓声が上がり、ピーのお約束のスネア強打に嬌声が飛びます。

そして、ドラムス・フィルを合図にアップテンポの本編が始まるやいなや、ジュリーの指差し大乱舞です。
あっちで「キャ~!」、こっちで「キャ~!」。

どのタイミングだったかはハッキリ覚えていませんが、北スタンド2階には2度の指差しが来ました。そのたびに僕の周辺では、「キャ~!」と言うよりは「ゴォ~ッ!」という感じのリアクションが(笑)。
なにせ、みなさん飛び上がったり足を踏み鳴らしたりするんですよ。これは後方席ならでは、の反応でしょう。常に背中を見ているので、たまにジュリーが振り返った時の強烈な刺激、エキサイト・メーターの振り幅の大きさが、正面席とは桁違いなんでしょうね。

さて間奏リード・ギターは・・・?
トッポだ~
(←これはさすがに間違いない)

当然ながら、2011~12年のツアーの時の柴山さんのように、1拍ごとにきっちり3連符、とはいきません。荒いです。4小節の大きな枠の中に3連符が16回ある、という感じ。しかし・・・良いんですそれが。
ゴリゴリ系ですね。華麗に伴奏の上を流れていくのではなく、ベタ~!と他の音に貼り付くようなソロです。この「ベタ~!」というのは、ロックにおいては褒め言葉です(ストーンズ好きの人が、彼等の音をよくそう評します)。
チョーキング連発部で、余分な力と無用の動作が入りまくっている(褒めてますから!)のもイイですねぇ・・・この間奏こそがおそらく、僕の知らない「タイガースの音」の象徴たるシーンだったのでしょうね。

「タッチしたい~♪」の箇所も・・・あぁ、なるほどこうなるのが「君だけに愛を」なのか、と。
トッポがいると、ジュリーはハーモニーのキメ部で自らも思いっきり声を出せるみたい。ジュリーの声量は凄いですからね。ハーモニーの相方がトッポでなければ、自分だけが突出してしまわないようにセーブすることが必要になってくる・・・しかし今回、その心配はありません。

なるほど「君だけに愛を」は”ザ・タイガースこの1曲”なんだなぁ、
と改めて感じたのでした。

~MC(ジュリー)~

大歓声に包まれ、ここでMCタイム。
息つく暇も無いほどの有名曲攻勢を振り返り、ジュリーが「どうだ!タイガースのヒット曲コーナーは!」と誇らしげに曲タイトルを紹介。

「廃虚の鳩!」
「モナリザの微笑!」
「銀河のロマンス!」
「・・・え~、あ~
(ジュリー、イチオシの名曲中の名曲のタイトルが出てきません。またもや禁句が頭をよぎります。頑張れジュリー!)う~・・・・・・青い鳥!(笑)」
そして、「君だけに愛を」でした!」

僕はこの時、ジュリーがアップになったスクリーンの方を見ていたので気がついていなかったんですが、このMCの間にスタッフさんがティンバレスをセッティングしていたのですね(その段取りが福岡公演ではすっ飛ばされ、仕切り直しがあったとか・・・)。それだけで、多くのお客さんには次の曲が分かったはず。

ジュリー、セッティングが終わると「行くぞ~!」とか「盛り上がるぞ~!」とか言ったんでしたっけ?
これまたお待ちかねの曲へと、セットリストは怒涛に続いていきます。


23曲目「シーサイド・バウンド

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ジュリーがティンバレスを叩きながら歌う、というだけでここまでステージが華やかになるものですかね・・・。いやいや想像以上に、音よりもまず見た目に凄まじい効果があったのには畏れ入りました。

ただ、このスタイルはジュリーもそれなりにいっぱいいっぱいな感じに忙しくなるようで・・・。
例の間奏のステップなんですが、まぁ1度目は普通に正面向いてやりますわな。僕のような2012年武道館参加組は、そこで余裕かましていられるわけです。「2度目の間奏では、全員こっち(後方)向くことになってるはずだから・・・」と。
ところが!
いざ2度目の間奏が始まっても、ティンバレスのパートを終えた直後のジュリーが振り向かず、正面向いたまま。他メンバーは「あれっ?」といった雰囲気に。
ここで、真っ先に後ろを向いてスタンバイしていたトッポが、ジュリーに「こっち!」と後方席を指差しながら声をかけたのです。いや、もちろん声が聞こえたわけではありませんが、そう口が動くのが見えました。ジュリー、「おっと!」と振り返って無事に背面ヴァージョンのステップ・コーナーへ移行。良かった良かった。

それにしてもトッポ、この曲の間奏はリード・ギターでしょ?なのに一瞬でジュリーの態勢を立て直すこの落ち着きぶりは・・・色々な意味で只者ではありません。

ピーの「ひゃあ~~~!」は聴こえませんでした。残念。たぶんやってくれてたと思うけど。
ちなみに2012年の武道館レポで、僕はこの曲のピーの間奏直前のシャウトについて書いていますが、後にDVDで確認したら、そこで叫んでたのはGRACE姉さんでした・・・。


24曲目「アイ・アンダスタンド」

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僕がまだまだザ・タイガースについては自分なりの突っ込んだ考察を持てず、ジュリーの曲ばかりをブログに書きまくっていた頃、ある先輩がコメントでこの「アイ・アンダスタンド」を記事リクエストしてくださったことがあります。

その時僕は
「アイ・アンダスタンド・・・?あぁ、タイガースのLIVE盤に入ってる蛍の光かぁ・・・」
と、そのくらいの印象しか持っていなかったのですが、その先輩の
「大好きなんだけど、聴きたくない曲」
というお言葉は、強く胸に残りました。
これはつまり、タイガースがこの曲の演奏を始めたら、それは「そろそろLIVEが終わるよ」ということを意味するわけです。ファンをして「(まだ)聴きたくない」という気持ちにさせるのですね。

僕としても今回のセットリスト入りを予想していた曲だけど、なるほど「終わっちゃう」感に会場が包まれてしまう・・・そんな曲なんですね。
でも・・・1971年のビューティフル・コンサートのような悲しみの涙はもう誰の目にもありません。
曲の途中で、ジュリーの語りが入ります。

「ずっと今日まで生きてきました。今日も生きています。明日からも生きていきます」
そして
「今日のこのステージの、みなさんの一番好きな部分をお持ち帰りください」

このジュリー言葉は、多くの先輩方が「ジュリーはビューティフル・コンサートの言葉の続きを、40数年後に引き継いで語ってくれた」と仰っています。
ビューティフル・コンサートで、「悲しい思い出はここに置いていってください」と語った、その日本武道館。42年後に今度は「楽しかったシーンを持ちかえって」とそんな素敵過ぎる言葉を思いつくジュリー・・・これまで一体どれだけタイガースのことを考えていたんだ!ってことですよね。ジュリー自身、そんな言葉を口にできる状況、少し前までは夢のまた夢だったのでしょうけど。

一番好きな部分・・・みなさまはどのシーンを持ちかえりましたか?
終演後、僕が一番に「持ち帰りたい」と思ったのは、次の曲の歌い出しのシーンでした・・・。


25曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ

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前半では走り気味だったピーのドラムスも落ち着きを取り戻し、緊張も解けてきたサリーのベースとのコンビネーション。
この2人が本格的にノッてくれば大丈夫、ということでセットリスト後半は演奏の乱れをさほど気にせずここまで来ましたが・・・意外やこの本割〆の「ラヴ・ラヴ・ラヴ」に大きなアクシデントが待っていました。

演奏は、「アイ・アンダスタンド」から間髪入れずに噛み込むピーのフィル・インから。
僕は「アイ・アンダスタンド」~「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の流れはセトリ予想していて、ただその場合は『フィナーレ』のようなショート・ヴァージョンの可能性も考えていましたが、フルコーラスでしたね。

で、イントロ。
誰がどう間違ったのかは分からない・・・ピーは問題無かったとして、サリー、トッポ、タローの3人のうちの誰か1人が、他の2人とは全然違う音を出していました。
ここまで大胆に間違えれば、たぶん会場のお客さんの半分以上の人が音の不協に気がつき、「ああっ!」と固唾を飲んだでしょう。

サリーは不安げに上手側をキョロキョロ。
タローは大きなモーションで「ほら、ほら!」と何とか纏めようと意志表示していたように見えました。
そして、ここまでどんなシーンでもまったく慌てた様子など見せなかったトッポが、初めて取り乱したのです。
ウロウロと動き回り、後方を振り返ってピーに「どうする?一度止める?」みたいなゼスチャーと表情を見せました。

楽器陣が音を不協させたまま演奏を進めるに連れ、次第にヨレヨレになりながら、所定のイントロの小節数までを奏で終わった時・・・。

まるで何事もなかったかのように、ジュリーが真っ直ぐに前を向いて
「時はあまりにも・・・早く過ぎゆく♪」
と、あまりに素晴らしい声で歌い始めたんです!
ジュリーがあの演奏のアクシデントに気づいていないはずがありません。しかし本当に、何事もなかったような・・・毅然とした、素直で自然な歌い出し。澄み渡る、万感の思いを乗せた「ラヴ・ラヴ・ラヴ」。

そのジュリー・ヴォーカルの歌い出しにパッと勇気づけられるようにしてトッポが正面に向き直ってギターを弾き始める時、チラリとジュリーの方を見たんですよ。
「さすがだな、沢田!」
そんなトッポの心の声が聞こえてくるようでした。

僕はこの「ラヴ・ラヴ・ラヴ」・・・武道館のお客さん、素晴らしく得をしたと思います。
これまでも僕は何度か、アクシデントが逆に途方もない感動にとって代わるLIVEを観たことがありますが、そういうのって、例え後にDVDの映像などに残ったとしても、その場にいないと絶対に分からない、伝わらない感動なんですよ。

ジュリーは結構最初のあたりから「L」の字で腕を揺らしてくれましたね。

演奏面では、残念ながらピーの”鬼のキック200連打”は割愛されたアレンジでした。さすがにこの編成では無理だったのかな。
それでも、サリーのブイブイ言わすベースとピーの跳ねるワルツ・リズムの絡みは、これぞザ・タイガース。

客席と一体となって「L」の字を掲げたエンディング・リフレインで、ジュリーは一度だけ「愛ある限り」のところを「愛こそすべて♪」と歌っちゃったりしたけれど、高みに突き抜けるメロディーは乱れることなく、イントロのアクシデントなど忘れ去ったかのようなバンドの統一感は、セットリスト本割フィナーレにふさわしいものでした。

ということで僕がジュリーに言われたことを思い出して、厳選の上、武道館から持って帰った「一番好きな部分」は、この「ラヴ・ラヴ・ラヴ」です!


~アンコール~

「ラヴ・ラヴィ・ラヴ」の演奏が終わりメンバーが退場しても、当たり前ですが誰もこれでLIVEが終わりなどとは思っていません。
スタンディングのまま続く、アンコールを求める手拍子。スクリーンには色々な角度からそんな客席の様子が映し出され、北スタンド2階も2度ほどアップになりました。

この間僕は
「アンコールは3曲として
(←曲数だけは結果として当たった)・・・ひとつはネタバレした「美しき愛の掟」、あとの2曲は「スマイル・フォー・ミー」と「シー・シー・シー」で決まりだな」
などとズレまくった予想を立てていました。
事前に鉄板予想して記事執筆していた「タイガースのテーマ」や、同窓会ナンバーでこれは外せない!と考えていた「色つきの女でいてくれよ」の2曲の存在が、この時点ではすっかり脳内から抜け落ちていたという・・・情けない。

改めて5人が登場すると、ひときわ大きな声援が飛びます。特にMCも無く、5人はすぐに所定の位置にスタンバイ。
歓声を切り裂くようにピーの3連符フィル・インが鳴り響き、いよいよアンコールが始まりました。僕はようやくここでハッと
「そうだ、この曲があったじゃん!」



26曲目「タイガースのテーマ

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まず、少し話が逸れるようですけど・・・この度
発売された『THE TIGERS FOREVER DVD-BOX』について。
僕が最も衝撃を受けたのは、disc-5に収録されていた「エヴリバディー・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」の2テイクでした。特に、フルテイクで収録されている方。
なるほど、確かにこれは音源だけ聴くのと、音と映像を合わせて観るのとでは全然迫って来るものが違う・・・「動き回るタイガース」、彼等のこの陽気なアクションがまずとんでもなく魅力的だということ。それに付随して、ピーがラジオで語った「僕らはLIVEバンド」というその真髄もこのスタジオ・ライヴの映像で垣間見ることができます。これは最高にカッコイイですよ!
この「エヴリバディー・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」の映像をひとたび観れば、タイガースの人気が突如爆発したのも当然だと思いますし、一方で頭の固い大人達に彼等が受け入れられなかったことも納得できます。既成観念に囚われていては、あの5人が放っている途方もないエネルギーは理解不能、未知なる脅威に感じるだけだったしょうから。

残念ながら今回のセットリストに「エヴリバディー・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」は入っていません。
しかし、「陽気に動き回るタイガース」の魅力を知らしめるナンバーが、アンコール1曲目に披露されることになりましたね。
「タイガースのテーマ」・・・後で知りましたが、この曲はパンフレットのセットリスト予定には記載が無く、この日武道館に駆けつけたお客さん全員にとって、嬉しいサプライズだったようです。

僕は事前に自信満々の「星5つ」鉄板予想としてこの曲の記事を書いて、その中で
「もしパンフレットにこの曲が記載されていなかったら、笑ってやって下さい」
とか書いちゃったんですが・・・いやぁ危ない危ない。まさか本当に載ってなかったとは(汗)。
演奏とアレンジ構成は、記事でも書いた予想通りの間奏無しショート・ヴァージョンでしたね。でもこれは自慢にも何もならない・・・タイムリーなタイガース・ファンのみなさまにとっては当然のことだったのかな。
『THE TIGERS ON STAGE』では間奏がありますが、先述したDVD、disc-5収録のこの曲もショート・ヴァージョンでしたからね。このスタイルの方が演奏するタイガース自身にも、ファンにも馴染んでいるのでしょう。

まず演奏では、ピーのドラムスの躍動感が印象に残りました。
パンフのセトリ記載が無かったということは、比較的最近のミーティングで「やろうよ!」ということになったのでしょうから、ピーも本番直前に重点的にこの曲を稽古したのでは?

そして稽古と言えば・・・何と何とやってくれました。65歳以上のフロント4人が、あの足上げダンスを。
これは・・・4人でみっちり稽古も積んだのでしょうね。スタジオで、鏡見ながら(笑)。

絵として見ても凄かったけど、その瞬間のお客さんの盛り上がりが半端ではなかったです。
4人の必死の足上げに、観ている側は拍手しつつも思わずニコニコと笑ってしまう・・・ステージ上で激しい動きを頑張ってくれた4人には申し訳ないようにも思うんですけど、とにかく頬が緩んでしまう・・・その暖かさは、正にザ・タイガースとタイムリーなファンのお客さんとの、熟した関係あってこそ。
「タイガースってどんなバンド?」と問われ、当時の少女達が「理屈はよく解らないけど、とにかく楽しい!」と答えてきたことは、まったく正しかったのだと証明されました。素晴らしい!

演奏が終わると、ジュリーはまず下手側を見て
「サリー、大丈夫?」
と。
サリーとタローの2人は、かがみ気味に膝に手を当ててバテていましたっけ?1968年の映像では、サリーが一番身体が動いてますけどねぇ~。

ジュリーは続けて
「かつみは全然平気そうやね!普段から走ってるみたいですから。ワタシは走ってはいませんが、歩いています!・・・ピーは(足上げは関係ないかから)特に大丈夫やね!」
「うんうん」とうなずくピー先生。ピーのキャラからすると、「自分もやりたい!」と考えてるだろうな~。

2011~12年のツアーでは、決して最後まで「タイガース」を名乗ることなくお預けとなっていた「タイガースのテーマ」が、今ツアーではアンコール1発目の配置でセットリスト入り。
正真正銘のタイガースのLIVEで、2013年にこの曲が時を超えて演奏された意義は大きいです。
とにかくめでたい!


27曲目「美しき愛の掟

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ここで来ました、ネタバレ曲「美しき愛の掟」!
後追いファンの僕は以前この曲の考察記事を書いた時、「後期タイガース最初のシングル」という先入観から、リード・ギターについて素っ頓狂な解説をしてしまいました。
その際コメントで先輩方にご指摘頂いた通り、この曲はまだトッポが在籍していた頃にレコーディングされているわけで、音源についても当然リード・ギターはトッポが弾いている可能性が高いのですね。

この日体感した「5人だけの音」によるタイガース・ナンバーでは、「なるほど、CDとは違うLIVEのザ・タイガースの演奏なんだな」と感じた曲(「銀河のロマンス」「廃虚の鳩」「花の首飾り」など)があった一方で、「おおっ、正しくCDの音だ!」と感じた曲もあり、その筆頭が「美しき愛の掟」でした。
ガレージ感溢れる間奏リード・ギター。そのゴツゴツしたチョーキング。
チョーキングの音は、まるで「弦を指で引っ張って鳴らしてるんじゃないの?」と思うくらいに「パキ~ン♪」としたタッチで、直後に反動で腕が大きく跳ね上がります。これがトッポのギターなのですね。

さて・・・前曲「タイガースのテーマ」の足上げダンスがどれほどキツイのか・・・後日実際に自分でもやってみた、と仰る先輩方もいらっしゃいますね。
「笑ってみていたけど・・・これはキツイ。無理!」ということで、あれは相当なモンらしいです。
「美学を持っているので、見苦しいところは絶対に見せないトッポ(byピー先生)」は涼しい顔をしていましたが、実はかなり足にキテいたはず。
演奏についてしたり顔で語っている(汗)僕としてはここで

「タイガースのテーマ」の足上げをやった直後に、ワウペダルを踏む動作が果たして普通にできるものか

という深遠なテーマに取り組み、自分の身体で検証したいところではありましたが、足上げの段階でひっくり返って1週間ほど寝込んでしまう可能性が高いので、自重させて頂きました(恥)。

そんなワケで、どのくらいキツイのかは分かりませんが・・・あのシンドイ足上げ直後にトッポは「美しき愛の掟」のイントロで、ワウペダルをエッサエッサと踏み込まなければなりません。
想像するだけでも、これは相当大変!

いざイントロ、ピーのキックとオープン・ハイハットのフィルから始まった演奏で・・・2拍ほどでしたか、トッポのギターがうまく鳴りませんでした。
その原因として、「ふくらはぎが震えてしまっていた」に僕は1票入れときます~。

そんなトッポのミスタッチも、この名曲にとってはまったく些細な、問題にもならないことでした。何故なら「美しき愛の掟」は、ザ・タイガースが誇るリズム隊・・・ピーのドラムスとサリーのベースが最高にカッコ良く、この2人が完全に全体の演奏を支配しているからです!

この日、まずピーのベスト・プレイはこの曲で決まり。
実は2011年の老虎ツアーの初日(東京国際フォーラムA)、ピーはこの曲でGRACE姉さんとのツイン・ドラムで演奏したのですがうまく呼吸が合わず、テンポが乱れがちでした(その日はロールのフィルもありませんでした)。
ところがその後、ピーはこの曲のシングル演奏スタイルに踏み切り、会場を重ねるごとにめざましい進化を遂げ、最終的にはセットリスト中1、2とも言える素晴らしいドラムスを魅せてくれたのです。
ツアー中、相当反復稽古をしたのでしょう。完璧に、演奏が身体に馴染んでいる状態・・・それが今回の再結成ステージにも引き継がれていました。

もちろん、”鬼神ロール”も豪快に炸裂。
この日は1箇所でしたが、たぶん東京ドームでは3箇所くらいに増えるのでは・・・?と大いに期待しています。

そして、DVDはもちろん、来年1月24日放送(予定)のTVでも是非カメラさんにアップで抜いて欲しい、サリー怒涛のベース演奏。
スキップどころではない、フレーズも身体も大きく躍動する、「美しき愛の掟」演奏の最大の見所・・・歌メロ2番以降のうねるベースには、一般の視聴者もさぞド肝を抜かれることでしょう。
このフレーズ、低い音はネックを寝せて、高い音はネックを立てて演奏しなければなりません。その高低がワンフレーズの中に凝縮されていて、しかも何度も繰り返されます。サリーのあの動きは、ネックを操る動作なのです。もちろんネックの上下に連れて、身体も激しく揺れることになるわけです。

この曲はジュリーのヴォーカルも凄すぎますから、実際に参加した会場ではサリーやピーの動きにまで目が行き届かないかもしれません(僕も実はそうです)。
その辺りを映像で改めて堪能できるカメラワークに、是非期待したいと思います!


28曲目「色つきの女でいてくれよ

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「あぁ、この曲も残ってた!」
と、「タイガースのテーマ」に続いてまたしても意表を突かれるDYNAMITE。いやいや、こういう感覚こそ、セットリスト・ネタバレ我慢の醍醐味なのですよ。

今ツアー・セットリストのトリはこの同窓会ナンバーでした。ちょっと意外な感じもしましたが、最後の曲にトッポのリード・ヴォーカル曲を配したこと・・・なるほど、と思いました。2011~12年の目玉がピーの復活だったとすれば、今回の主役はある意味トッポ。ジュリーも『Pray』ツアーのMCで度々そう語っていましたしね。「今回はかつみやろ!」と。

トッポがヴォーカルで大活躍する一方で、リード・ギターはこの曲の作曲者でもあるタローでしたね。
オリジナル音源では間奏にフラメンコ調のアコースティック・ギターのソロがあり、エレキ2本体制でそれをどうするのかな、と思って観ていましたが、間奏もイントロと同じフレーズを弾くアレンジに変更されていました。
なるほど、疾走感のあるLIVEではその方がしっくりきます。このアイデアも「5人だけの音」効果かな。

疾走と言えばピー先生のドラムス。最後の最後にまたしても力が入りまくったのでしょうか・・・キメのオカズ部が、物凄い走りっぷり。
ピーのアクションとしては曲中で一番カッコ良いシーンですから、「最後の見せ場だ!」ということで気持ちが逸ったのかもしれませんね。
そんな疾走にちょっとヒヤリとする瞬間こそありましたけど、昨年の中野サンプラザに続いて、今回の再結成ツアーでピーがこの曲のドラムスをノリノリで演奏してくれた意義は、とてつもなく大きい・・・これで「色つきの女でいてくれよ」も完全にタイガース・ナンバーになったと思います。
また、ピーのドラムスはきっと東京ドームまでに格段の進化を遂げていることでしょう。

ジュリーのタンバリン・アクションも嬉しかったですよね。お尻の横に叩きつけるのがベース、手打ちがアクセントのスタイル。「色つきの~女で♪」直後のキメの「チャ、チャ、チャン!」の3つ打ちは、少年時代にテレビで観たままの、カッコ良い1982年のジュリーそのものです。

そして忘れちゃいけない、ワンフレーズ入魂の「いつまでも~、いつま~でも~♪」のヴォーカル・パートの素晴らしさ。
トッポも嬉しかったと思います。普段のタイムスリップ・コンサートなどのLIVEでは、そこも自分で歌わなきゃいけないけど、「やっぱ、ココは沢田の声だな~」と感じたのではないでしょうか。


☆    ☆    ☆

すべての曲の演奏が終わり、メンバーは一旦退場。
場内の照明がまだつかないので、お客さんは必死にメンバーの再登場を信じて拍手を続けます。

しばらくして、5人が何とトッポデザインのツアーTシャツを着て再登場。ジュリーとサリーが老虎ヴァージョン、他の3人が若虎ヴァージョンでしたか?
最後の挨拶の後、ジュリーが阪神タイガースの『勝ちたいんや!』タオルを裏返しの状態で高々と掲げる姿が、スクリーンに大写しに(笑)。すかさず横からピーが「そのタイガースちゃうやろ!」みたいな感じでツッコミを入れるシーンが楽しかった・・・。

ジュリーはステージ裏に姿を消す直前、お腹を誇示していったとか・・・これは見逃してしまいました。
また、みなさまの情報によれば、長崎公演以降は最後に5人がステージに横並びになって一斉に手を上げて声援に応えてくれているのだそうです。名古屋公演では、右手にジュリー、左手にタローの手を握りしめたままの状態でトッポが「バイバイ」していたそうで・・・いやぁ良かったなぁ、と。本当に良かった、トッポもザ・タイガースに帰ってきてくれて・・・。
「仲の良かった友達に戻ること」・・・ある意味、ここに辿り着く、いや帰ってくるまでにトッポは、ピーよりも長い時間がかかったのかな。
この日、最後の挨拶でも一番後方席を振り返って、何度も何度も手を振ってくれたのはトッポでした。クールなトッポの、それが最大限の喜びの表現だったのではないでしょうか。


Tgpic02_2

↑ P様所有のお宝ブロマイド。
5人の雰囲気はこんなショットの頃まで戻ってる・・・?


ツアー初日からいきなり日本武道館という大舞台でのステージだったので、「これで大団円」みたいな雰囲気すらありましたけど、何とこれはまだまだ序の口です。2013年12月、ザ・タイガース再結成ツアーは続きます。
僕がネチネチと時間をかけてレポを仕上げている間に、長崎、福岡、名古屋と公演は大盛況のうちに進み、いよいよ明日は京セラドームというところまで来ました。
ドーム会場のLIVEにしっかりと手応えを掴んで、後の仙台、札幌・・・そして大トリ東京ドームを最高のコンディションで5人が迎えられることを、願ってやみません。
東京ドームには、シローも駆けつけてくれるかな・・・?

メンバーが仲良く、新たな真の友情とまぎれもないタイガース・モードで以ってこのツアーを日本武道館で始められたこと・・・本当に奇跡です。
後追いファンの僕も、立ち合えた、間に合った・・・『ジュリー祭り』から5年、まさかこんな経験をさせてもらえるとはねぇ・・・ジュリーには感謝してもしきれません。

最後にやはり、この一言。
ザ・タイガース、完全復活おめでとう!
奇跡をありがとう!


ファイナル・東京ドームにも、僕は文字通り万難排して(仕事納め汗)駆けつけます!
また、京セラドーム、仙台、札幌各公演に参加されたみなさまのご感想もお待ちしていますよ~。

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2013年12月 3日 (火)

沢田研二 「A・C・B」

(はじめに)
本日、12月3日の日本武道館公演を皮切りにいよいよスタートする『THE TIGERS 2013』ツアーについてですが、セットリストのネタバレを、本日更新のこの記事のコメント欄を以て解禁とさせて頂きます。
また、(こちらは更新までには数日かかるかと思いますが)武道館のレポートも、いつものように別館side-Bではなく、こちら本館に執筆いたします。
ご自身参加の公演会場当日までネタバレを我慢なさっているみなさま、ごめんなさい。どうぞうっかりここでネタバレしてしまわぬよう、ご注意ください。
武道館に参加され興奮醒めやらぬみなさま、レポート記事のupまで、こちら「A・C・B」の記事にてご感想などお待ちしております。
よろしくお願い申し上げます。

☆    ☆    ☆


from『耒タルベキ素敵』、2000

Kitarubeki

disc-1
1. A・C・B
2. ねじれた祈り
3. 世紀の片恋
4. アルシオネ
5. ベンチャー・サーフ
6. ブルーバード ブルーバード
7. 月からの秋波
8. 遠い夜明け
9. 猛毒の蜜
10. 確信
11. マッサラ
12. 無事でありますよう
disc-2
1. 君のキレイのために
2. everyday Joe
3. キューバな女
4. 凡庸がいいな
5. あなたでよかった
6. ゼロになれ
7. 孤高のピアニスト
8. 生きてる実感
9. この空を見てたら
10. 海に還るべき・だろう
11. 耒タルベキ素敵

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毎年恒例、『ジュリー祭り』記念日更新の12月3日(僕が本格的にジュリー堕ちをした日、とハッキリ断言できる大切な記念日です)が今年もやってまいりました。

拙ブログではこの日は毎年、あの忘れがたき『ジュリー祭り』セットリストの中からお題を採り上げ記事を書くことにしています。
ところが今年はさらに特別。何とあのザ・タイガースのオリジナル・メンバーが揃った「再結成」が四十余年ぶりに遂に実現、12月3日という日が記念すべきそのツアー・スタートとなりました。
正に本日、これからです。

末席からではありますが歴史の証人となる僕としましては、さすがに今日はそんなこんなで詳しい楽曲考察の記事までは書く時間がありません。
ですので、先日の『オールナイト・ニッポン・ゴールド』でピーが「ライヴ・バンドとしての手ごたえを感じていた」という新宿A・C・Bでの演奏・・・その40年ぶりの奇跡の再現を期待しつつ、同時に、先に無事終わったジュリーの”『Pray』セットリストを振り返る”シリーズの3曲目として、一応お題に「A・C・B」を指名しての更新となりました。
突っ込んだ考察ができないのは残念ですが、「A・C・B」はこの先もジュリーのLIVEで何度も歌われることのある曲だと思いますから、その都度のレポートでこの曲の擁する音楽性について語る機会はあると考えています。

とにかく今日は・・・いよいよです。遂に、ですよ!

祝・ザ・タイガース再結成!

思えば、僕が初めて本格的にタイガース・ナンバーを単独の楽曲考察のお題としてこのブログに執筆したのは、2009年6月2日に採り上げた「淋しい雨」の記事でした。
その時『タイガース復活祈願草の根伝授!』なんて言うカテゴリーを設定したわけですが・・・まさか本当にタイガース完全再結成の日が実現するなんて、思ってもみませんでしたよ。本格ジュリー堕ちしたばかりのヒヨッコとしては、それがどれほどのことなのか、というのも実感すら無い状態でしたしね・・・。

ジュリー、本当に凄いぞ!有言実行の、男の中の男!
僕は後追いファンだけど、『ジュリー祭り』になんとか間に合って、それから5年かぁ・・・。必死にジュリーの勉強を積み重ねてきて5年・・・今回のザ・タイガース再結成に立ち合えるのには、ちょうどいい長さの期間だったと思えます。
いや、ホント冷静になって考えれば、僕は「初タイガース!」なんだなぁと思うワケですよ。当たり前ですが。
5年前にはほとんど何も知らないに等しかったバンド・・・しかし僕が何も知らずとも、世間では40数年間輝きを保ったまま忘れられずにいたバンドです。
僕なりに、不思議な感慨に浸っています。

今日は記事としてはとり急ぎ、という感じで畏れ入りますが・・・一応のお題としました2000年の作品「A・C・B」当時のジュリーを知る格好の資料としまして、大分の先輩より授かりました、『音楽倶楽部』のインタビュー記事をご紹介いたしましょう。
タイガースの話も少しだけ登場しますよ。


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『ジュリー祭り』のセットリストを採り上げた過去記事を改めてカウントだけしてみましたら、鉄人バンドのインスト2曲を含めた全82曲中、この「A・C・B」のお題記事で52曲目の執筆となっていました。
”ジュリー70超えまでに『ジュリー祭り』セットリストを記事網羅する!”という、数年前からの大きな目標に、あと5年で、残すところ30曲・・・と、地道に近づいてきています。

そして何と言っても本日、ザ・タイガース再結成。
40数年間この日を待っていらした先輩方が、何故「同窓会」では満ち足りなかったのか、何故2011~12年のツアーで、大きな喜びの中に一片の心の曇りをお持ちだったのか・・・それが後追いファンの僕にも分かる日になることでしょう。
僕は「この場」に同席できることに、まず感謝しなければなりません。奇跡を観ることに間に合った自分の不思議な運命を、謙虚に感謝の気持ちで受け入れるべきでしょうね。

さぁ、それでは。
後々にまで語られるであろう記念すべき『THE TIGERS 2013』ツアー初日、参加されるみなさま、日本武道館で奇跡の時間を共にいたしましょう。
お留守番のみなさま・・・頑張ってレポを書きますので、楽しみにしていてください。
行ってきます!

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