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2013年10月

2013年10月30日 (水)

2013.10.19大宮ソニックシティ 沢田研二『Pray』セットリスト&完全レポ

註:10月30日、ようやく執筆を終え、例によって更新日付の移動を行いました。
今回も長々とおつき合いくださりありがとうございました!)

☆    ☆    ☆

隣席のYOKO君のビビッドな反応とともに、無事『Pray』大宮公演に参加してまいりました。
今回も張り切ってレポを書きますが・・・その前にちょっと今後の執筆予定変更のお知らせから。

先輩方の情報によりますと、11月上旬から随時発送されるザ・タイガース再結成公演パンフレットに年末のセットリストが掲載されることは確実なのだそうです。
僕も今回澤會さんに先行販売の申し込みをしつつも、なんとか武道館まで封を開けずにネタバレ我慢しようとは思っていますが・・・果たして我慢がききますかどうか。それに、僕だけネタバレ我慢していても、事前にセットリストを把握なさるファンも多くいらっしゃるはず。そんな中で”セットリスト予想”記事を書くというのもねぇ。「的中自信度」とかつけても恥さらしてるようなものですから・・・。

ですのでこの大宮レポを書き終えたら、自信度「星5つ」のナンバーをあと1曲だけ書いて、ザ・タイガース再結成・セットリスト予想シリーズを〆たいと思います(それでパンフレットにその曲の記載が無かったら、生暖かく笑ってやってください)。
ちなみに他に執筆予定だった曲は「ルート66」(タローの誕生日を更新日にしようと考えていたのですが・・・)「時が窓をあけて」「タイガースのホワイト・クリスマス」。
今回はあきらめましたが、これらの曲もいつか改めて書く機会がきっとあるでしょう。

タイガースのお題をひとまず〆たら、続いて”『Pray』セットリストを振り返る”シリーズとして2曲を書き、その後はジュリーのお正月ソロ・コンサート『ひとりぼっちのバラード』へ向けて”恒例・全然当たらないセットリスト予想”へ突入しようかと(アンタが予想するとやって欲しい曲もやってくれないんだから!というブーイングが聞こえてきそうですが汗)。
ジュリーの『Pray』ツアーと並行してタイガースのセットリスト予想をし、いよいよタイガース再結成カウントダウンという頃にジュリーのお正月LIVEのセトリを予想する、という何だかよく分からないことになってしまう拙ブログ。それだけジュリーのスケジュールが凄まじい、ということでもあるんですけどね・・・。
11月は仕事も忙しくなるしポール・マッカートニーのLIVEにも参加するしで、どのくらいブログ執筆に時間がとれるか分かりませんが、そんな感じで予定を組み直しました。

ということで。
さぁ本題、大宮公演レポートです!

僕はここまで初日フォーラム、8月和光市、9月渋谷と3会場で『Pray』ツアーに参加してきましたが、大宮はこれまでとはかなりジュリー・ヴォーカル、鉄人バンドの演奏ともに印象の異なる、独特のステージでした。何と言うか・・・パンクっぽかったんです。
荒々しさがあり、冒険心があり、自由度の非常に高い公演でした。お客さんの反応も(後方席だったからでしょうか)、これまでとは違ったように感じました。翌日の座間公演もじかなり良かったと聞いていますが、大宮も貴重な空間が味わえて、素晴らしかったですよ~。

先述の通り執筆スケジュールもタイトになっておりますので、できるだけサクサクと書き進めたいと思います。
レポの目玉となるのはやはり、この日が初のツアー参加となった隣席・YOKO君のビビッドな反応と、打ち上げでたっぷり聞かせてもらった彼なりの感想。
開演直前、YOKO君は探りを入れるように
「everyday Joe・・・everyday Joe・・・」
と連呼しながら僕の顔色を念入りに窺ってきたので
「やんねぇよ!」
と、たまらず宣言してしまいました。
『燃えろ!東京スワローズ』のセットリストを聞いて、彼は相当”1曲目「
everyday Joe」”のインパクトをうらやましそうにしていていましたからねぇ・・・。
ただ、「お正月のセトリの半分は、今日また楽しめるよ!」という言葉は、すんでのところで飲み込みました。
ある意味僕よりも「音」に敏感なYOKO君は、『Pray』ツアーをどのように堪能したのでしょうか。

それでは、開演です!

1曲目「
あなたに今夜はワインをふりかけ

Omoikirikiza

『Pleasure Pleasure』以来の体感、という条件は、その後のツアー皆勤の僕らと同じYOKO君。
しかしそこはツアー初参加・・・約4ケ月に渡るネタバレ我慢という偉業をたやすく成し遂げこの日を迎えた彼です。リピーターとはひと味反応が違いましたね。
打ち上げで曰く
「何で1曲目いきなりのあのイントロで、皆冷静でいられるんだ!」
と。

YOKO君からすると「おお~っ!来た来た!」という感じで立ち上がり隣の僕の横腹をいきなり殴りつけてくるほどテンション上がったのに、僕も含めた周囲のお客さんの「さ~て始まったか」という余裕の反応が信じられなかった、とのことでした。
う~む、一理も二理もあるなぁ・・・。ジュリーが「初めて観に来た」お客さんを望む気持ちが分かります。YOKO君の反応が正しい!

後で冷静な先輩に伺ったところによれば、この日のジュリーはセットリスト総じて下手側を重点的に攻めていたそうですね。
偶然、僕らの席は後方ながら下手側で、YOKO君にとってもかなり良い感じのジュリーの動きではなかったか、と思います。この曲では、「愛の言葉を♪」に続く握り拳をほぼ直線で観ることができました。

ジュリーの声は時折掠れ気味になるけど、高音の伸びに曇りなし。
あと、柴山さんのギター・ソロ、復音部をグシャッ!と撫で斬るように弾いてきた(音量も大きかった)ので、「ん?今日はなんかパンク風?」と感じました。

2曲目「Rock 黄 Wind」

Asuhahareru

イントロで「えっ?何だっけこれ?」とYOKO君が焦っているのが分かります。
素知らぬ顔で「エイ!」「エイエイ!」とやっておりますと、ワケも分からずYOKO君もシャドウ・ボクシングのスタイルで遅れて合わせてきました。彼に限らず、「初めてかな?」というビビッドな反応をしている男性のお客さんって、拳振り上げが前方突き出し型になる人、多いですよね~。
歌が始まり、「あぁ!」とようやく合点の声を出すYOKO君。曲は知ってるけど、セットリストの想定はまったく無かったようです。

打ち上げで、ツアー前半はここで「つづくシアワセ」だったことを教えると、「聴きたかった」と無念そうにしていました。「つづくシアワセ」は僕にとってもそうでしたが、YOKO君にとっても、あの思い出の『ジュリー祭り』リベンジ・ナンバーですから・・・。

あ、阪神の方のタイガースは残念なクライマックス・シリーズとなってしまいました。
ジュリーの応援を受けて「ひょっとしたら」と日本一を期待しましたが・・・僕がこの「Rock 黄 Wind」の楽曲考察記事を書く日は、まだ先のことになりそうです。
ちなみに、ジュリーがトークショーで触れたという「3代目・代打の神様」桧山選手は、負けゲームではありましたが最後の最後にホームランを打ち、自ら花道を作って現役生活に別れを告げました。指導者としてタイガースに戻ってくる日を心待ちにしています!

阪神は残念でしたが、日本一を賭けて戦うことになった巨人・原監督、楽天・星野監督・・・この二人の対戦というのは、阪神ファンにとっては感慨深い組み合わせです。
先日執筆した「
恋はうたかた」の記事で僕は、第1次原監督無念の退任の顛末(2003年)について語りました。
ブッちぎりで優勝した星野タイガース。志半ばで退任する(させられる)ことになったジャイアンツ・原監督。明暗はクッキリと分かれ、球団上層部の不条理とも思える言動もあった中、球団主催の勇退セレモニーの場さえ用意されることなく寂しくグラウンドを去ろうとしていた原さん・・・そのシーズン最後の試合となった甲子園球場・阪神×巨人戦。
そこで、阪神フランチャイズのゲームであったにもかかわらず、試合後に原監督勇退の花道が用意されたのです。虎党ひしめく甲子園球場で、宿敵・巨人の監督の労がねぎらわれ、万雷の拍手に包まれるという不思議な光景が、テレビで多くのプロ野球ファンを釘付けにしました。
退任報道の中でシーズン後半の悔しさに耐えつつ、最後まで果敢に指揮をとった原さんの元に星野さんが歩み寄り、原さんの肩を抱きかかえて何か話しかけながら花束を渡しました。報道によるとその時の星野さんの言葉は
「勉強せえよ、戻ってこいよ」
だったと言われています。
思わず涙を流す原さん・・・窮地にあっても孤高の男らしさを貫いてきた原さんがグラウンドで初めて見せた、「弟キャラ」でした。

星野さんのかけた言葉の通り、2年後に原さんは再び巨人監督として戻ってきて、今度こそ最強のチームを作り上げました。
今年は、その原監督率いる巨人に、星野楽天が怒涛の勢いで挑む、という構図となった日本シリーズ。アンチ巨人の僕が応援するのは当然、星野イーグルス。でもそれは、相手が強い強い原ジャイアンツだからこその醍醐味なのです。
阪神ファンとしての楽しみは終わりましたが、一プロ野球ファンとして楽しみなシリーズになりそうです。
この大宮レポを書き終える頃に、さてどのような結果が出ているでしょうか。

おっと・・・話が大きく逸れました。
間奏ラストのジュリーのシャウトは、これまで通り「さぁ、和田・・・さぁ和田・・・さわだ~!!」。
来期は和田監督も本当に勝負の年ですね・・・。


(後註:10月30日付デイリースポーツ・ネット、北村泰介さんによる座間公演レポートが、信じられないくらいに素晴らしいです。デイリーと言えばまず阪神タイガースですが、もちろんそんなデイリーらしい記事でありながら、ジュリーLIVEのメディア・レポートとしては過去最高の素晴らしさと思える記事になっています。今後、機を見てジュリーを語るジャーナリストになってくださるだろう、と惚れ込みました。お名前、しかと覚えておきます)

3曲目「
ハートの青さなら 空にさえ負けない

Atarasiiomoide

この曲はYOKO君の大好物だと知っているので、いつ鉄拳が襲ってくるかと身構えていましたら・・・意外や肩を「トントン」とされまして、小声で
「ジュリー、これ?」
と、口の周りをワサワサと身振りで示すYOKO君。
そうか・・・彼はお正月LIVEに参加してないから、お髭のジュリーは初めてか!この3曲目でようやくそのお髭に気づいたようです(まぁ、そのくらいの後方席だったということですかね・・・僕らは二人とも双眼鏡使わないし)。

後で聴いたら、この曲はなんとなく予想してたみたい。事前に聴きまくっていたそうです。ちなみにYOKO君はジュリーの3連バラードはすべて好物。いつか「渚のラブレター」や「きわどい季節」も聴いてみたいそうです。

あと、大宮の音響の良さについても打ち上げで語りました。歌メロに絡む柴山さんの単音の響きとか、ス~ッと馴染んで聴こえてくるんですよね。
YOKO君は渋谷ジュリーは未経験なのですが、僕のイメージでは、お客さんの盛り上がりは渋谷、音響は大宮、という感じ。ただ、彼は渋谷のジュリー公演も1度体験してみたいとのことなので、来年彼と同行する会場は渋谷にするかもしれません。・・・って、渋谷公会堂、いつ建て直すんでしたっけ?

エンディングの柴山さんのコーラスが爆音でした。この日は若干ですが音がずれてましたか?
YOKO君に言わせると、「あんな高け~声、よく出るな~」だそうです。柴山さん、改めて相当なハイトーンの持ち主なのですね。

~MC~

いつも通り、元気な挨拶の後に「前期高齢者」のお話。
今年65才になって、もう2回も年金を頂きました、でも稼ぎが多いため残念ながら厚生年金の方は受け取れません、と。

今日もいっぱいのお客さん・・・このような(老人の?)コンサートにようこそお越しくださいまして、ありがとうございます。
鉄人バンド共々、張り切って歌います!

4曲目「カサブランカ・ダンディ」

Acollection

YOKO君は『ジュリー祭り』以来となるこの曲。イントロで早速「おっ!」というビビッドな反応が。

豪快な霧吹きの後、ペットボトルをキレイにクルクルと空中で回してから、歌い始める寸前にサッとポケットにすべりこませるジュリーの仕草がカッコイイです。
間奏でせり出してきた柴山さんの横揺れも、いつになく激しかったですね。

今ツアーのセットリストで唯一かな・・・苦労しているこの曲の高音については、「あんたの時代は♪」の「じだい」の「い」のところが一番気合が必要のようで、目を閉じて顎を上げ、くっきりと「い」の口の形を作って歌っているようでした。その瞬間は、血が脳に逆流している感じでしょうね~。
「ボギ~♪」の連呼の部分は、初日と比較するともう全然大丈夫。「あんたの時代はよかった♪」の「た」を息を吸うようにして発声するのも、ツアー中に辿り着いたジュリーの高音対策のように思いましたがいかがでしょうか。

5曲目「
勝手にしやがれ

Omoikirikiza_2

大宮ではこのあたりで、下山さんに何かスイッチが入ったようでした。
この曲も決して歌うのに楽な高音域ではなく、少し前に山下○久さんがカヴァーしていた際には1音下げてト短調で歌っていたり・・・そんなこともあり、「ひょっとしたらジュリーも今はキーを下げてたりするのかな?」と考えて、この日はバッキング・コードを弾く下山さん(僕の席からは、距離こそあるけど真正面)をガン見。キーはオリジナル通りでした(イ短調)。

で、イ短調ですとこの曲には頻繁に「Am→G→F→E7」という王道の進行が登場するんですけど、この場合はAmを5フレット、Gを3フレット、Fを1フレット、E7をローコード、という、音が徐々に下がっていくようなフォーム移動が適してして、もちろん下山さんもそうしています。
ところがふと気づくと、最後の「E7」の箇所で下山さんが完全に左手をフレットから離して「がっしゃ~ん!」と開放で演奏している時があったのです。おそらく6弦の「ミ」の音(ギターで表現できる最も低い音)を強調しているのでしょうが、開放演奏だとそこに5弦の「ラ」の音のニュアンスが加わって、より激しいパンキッシュな和音になるんですよ。

この「勝手にしやがれ」をはじめ、大宮ではいくつかの曲で「いつもとはひと味違う」演奏が随所に見られ、楽しかったです。

さて壁塗り。YOKO君やるかな?と思いチラッと見ましたら、彼はエアギターに徹しておりました・・・。

6曲目「
”おまえにチェック・イン”

Wonderfultime

今回、地方から大宮遠征の先輩とゆっくりジュリートークさせて頂く機会があったのですが
「もし、過去のジュリーLIVEをもう1度見られるとしたらどのツアーか」と問われたら圧倒的に『A WONDERFUL TIME』ツアー」
というお話をしてくださいました。それはその先輩だけではなく、先輩のお友達もそうなんですって。
で、今でもセットリストに「”おまえにチェック・イン”」が入っていると、30数年前の『A WONDERFUL TIME』ツアーを思い出して血が沸き立つのだそうです。僕のような後追いファンにとっては、ただただうらやましいお話です・・・。
ちなみに僕、次のお正月コンサート『ひとりぼっちのバラード』では、「WE BEGAN TO START」あたりかなり有力なセットリスト候補だ、と勝手に予想していますから(もちろん「素肌」もドンと来い!)。

この日のジュリーの「ほみたい、うん!」は控え目だったかな。翌日、DVD『greenboy』の「”おまえにチェックイン”」を観直しましたけど、やっぱり凄かった。いつか、この時のようなテンションでキバリ拳闊歩しながらこの曲を歌うジュリーも見てみたいのですが・・・。

『秋の大運動会~涙色の空』も『燃えろ!東京スワローズ』も不参加のYOKO君、この曲も『ジュリー祭り』以来です。盛り上がっていましたよ!

7曲目「
サムライ

Acollection_3

細かいことですが・・・今までここに『思いきり気障な人生』のジャケを添付してきましたけど、当然ながらジュリーがツアーで歌っている「サムライ」はシングル・ヴァージョンの方です。今回はその点配慮し、収載CD画像は『A面コレクション』としました。
『Pray』ツアーでジュリー堕ちなさった方々がもしもこのブログをご覧になっていましたら、まずは基本中の基本『A面コレクション』を是非ともご購入頂き、改めてジュリーの素晴らしさを堪能なされてから、その後怒涛のアルバム大人買いへと繋がってゆくことを期待いたします!

さて、これまたYOKO君は『ジュリー祭り』以来となる曲。打ち上げで、演奏に関しては「サムライ」が一番良かった、との感想でした。特にGRACE姉さんのキックが良かった、と。
分かるなぁ・・・要は「歌心」。曲へのシンクロ度なんですよね。
その入魂度の高さの理由のひとつに、この曲でのGRACE姉さんには重要なコーラス・パートの役割がある、ということをYOKO君の「演奏が良かった」感想につけ加えておきたいです。
『Pleasure Pleasure』ツアーで聴いた「
探偵~哀しきチェイサー」しかり。何十年も前にリリースされたオリジナル音源の段階で既に用意され、もはや「これ無しでは曲が成立しない」という印象すらある女声コーラス。GRACE姉さんはそれを、何の違和感もなく再現してくれます。
「ジェニー♪」であったり、「Hoo、Woo♪」のハミングであったり。ジュリーのヴォーカルをまったく邪魔しない、それでいてふと気がつくと途方もなく存在感を放っているコーラス。GRACE姉さんが、「サムライ」の曲世界に心ごと入り込んでいる証拠です。だからこそ、ドラムスの演奏も素晴らしいのですよ!

この日はまた、「サムライ」サビ部での照明の美しさをツアー通して初めて意識しました。
「片手にピストル♪」が真紅。「心に花束♪」がバイオレット。「唇に火の酒♪」がオレンジ。「背中に人生を♪」がエメラルドグリーン。ジュリーのアクションに呼応して切り替わり、とてもキレイでしたね・・・。

もちろんジュリーのヴォーカルも最高。
ラストの「あぁ♪」のロングトーンは何処までも清らかに伸び、初日、和光市、渋谷に続いて大宮でも、7曲目「サムライ」は新譜4曲を目前にして突如ハッと「ジュリーの声の素晴らしさ」に改めて気づかされる・・・そんなセットリスト配置だと感じました。

~MC~

「みなさまにも多少は耳馴染みのある、シット曲をお送りいたしました。まだまだございますが、今日はこのへんで勘弁しておきます」

最近お馴染みのジュリーのユーモラスなMCに、声を上げて笑い大ウケのYOKO君。「毎年1公演参加」の彼ならではのビビッドな反応ですね。

続いて、いつものように新曲の説明。
残念だったのは、「すべての被災地に、祈りをこめて歌います」というジュリーの言葉に「頑張れ」の声を重ねたお客さんがいらしたこと。故意ではないのかもしれないけど、あれは良くないと思う・・・。

ともあれ、YOKO君も「楽しみなのは新曲」と言っていた入魂のヴォーカル4曲が、大宮でもいよいよ始まります。

8曲目「
Uncle Donald

Pray

まずは『Pray』ツアーレポ恒例、東京新聞連載中の『ドナルド・キーンの東京下町日記』より、今月の”ドナルドおじさんの続きの言葉”をどうぞ!


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残念ながら僕の『Pray』ツアー参加は大宮が最後。それに、来年以降のジュリーLIVEで「Uncle Donald」がどのくらいの頻度で歌われていくのかも分からないんですけど、東京新聞でのキーンさんの連載はまだまだ続きそうですので、今後も折を見て、このブログで”ドナルドおじさんの続きの言葉”をご紹介していければと考えています。

大宮の「Uncle Donald」では、やはり下山さんのアレについてのYOKO君の感想が楽しみでした。
YOKO君も僕と同様に、個人的に新譜4曲のコード起こしをしていて、「あの曲のあのコードは何でとった、あそこはこうだ、いや違うでしょ」みたいな話を開演前にもずっとしていました。
僕が「Uncle Donaldの肝は、やっぱりあのクリシェでしょ!」と言ったこともあり、YOKO君はこの曲が始まると下山さんのフォームをガン見していたみたい。

僕の指摘したクリシェが登場するのは、サビ部。
さぁサビだ、と下山さんの手元を見ながら待ち構えていたYOKO君・・・打ち上げで曰く
「いきなりギターが黒くなってブッたまげた!あんなの初めて生で観た。この曲のアレンジのためにそこまでやろう、と考える時点でまず凄い。あのルースターズの下山が、今はもうそこまでジュリーに惚れてるんだな・・・」
だそうです。

ちなみにYOKO君は下山さんの切りそろえられた髪型を見て、「ロッカーは自分で髪を切るんだよ、あれは自分で切ってる!」と強硬に主張していましたが・・・それについては、僕はイマイチ意味が分かりません。
まぁ、「あれ、下山さんずいぶん印象が変わったな」とは思いましたけどね。saba様のブログを拝見しますと、城陽公演ではもう切っていたみたいです。

9曲目「
Fridays Voice

Pray_2

大宮で初めて気がついたのは、僕が楽曲考察記事の段階で暑苦しく語った、間奏及びエンディングでの、柴山さんのリードギターと泰輝さんのピアノのユニゾン演奏。どうやらLIVEではそこで泰輝さんが和音のバッキングに徹し、完全な柴山さんのソロとなっているようです。
「Deep Love」と「Pray~神の与え賜いし」が凄過ぎるので目立ちませんが、「Fridays Voice」の柴山さんのソロも素晴らしいですよ!オリジナル音源への思い、ジュリーへのリスペクト・・・1音1音を大切に弾くという、ジュリーの横で何故柴山さんがこんなに長くギターを弾き続けているのかが分かるような演奏です。

「この曲もクリシェだよね?」とYOKO君。「この国を」からの半音移動の和音部のことですね。ちょうどそこからGRACE姉さんのオープン・ハイハットが炸裂します。楽曲、アレンジとしても説得力充分の構成・・・改めて名曲です。

ジュリーは「危険すぎる、手に負えぬ未来」以降の歌詞が一瞬飛んでしまいましたが、初日のように1番を歌ってしまうことはなくすぐに立て直し、早口で追いかけ「止めるしか原発」までをしっかりと歌いきりました。
ジュリーのヴォーカルの圧倒的な存在感、安定感・・・やはりこの「Fridays Voice」は今回のセットリストの中でも特に、高音、低音ともに今のジュリーの声にピッタリの曲だと思います。ジュリーと鉄人バンドの代表曲、という風格を感じます。僕は、お正月もこの曲が聴きたいなぁ・・・。

10曲目「
Deep Love

Pray_3

打ち上げでYOKO君が
「Deep Loveって、ジュリー毎回あのテンションなの?」
と、これまでのツアー各会場の様子を尋ねてきました。「帰らぬ君を理解すれば」の歌詞部でグッと声が詰まり、嗚咽しながら歌ったジュリーの様子を指してのことです。YOKO君、ちょっとビックリしたみたいですね。

彼も同じことを言っていたけど、僕はこの「Deep Love」の歌詞、メロディー、そしてジュリーの込めた思いというのは、ギリギリの感情を抑えながらジュリーの地の声で伸びやかに歌う方が、より聴き手に深く伝わるのではないか、という考えでいます。
これは実は、音楽劇で歌われた「
雨だれの挽歌」についても僕が強く感じたことです。

ただ、この日の「Deep Love」でジュリーが感情を抑えきれなくなり慟哭してしまったのは、やっぱり先日の痛ましい大島町の被害があったからだと思うのです。ジュリーが無関心でいられるはずがありませんから。

「髪の毛1本を見つけたい」
「涙を壜に集めたい」

それは東日本大震災被災地で、今なお続いていることです。同じことが、大島でも起こってしまった・・・そんな思いが大宮での「Deep Love」のヴォーカルに表れたのではないでしょうか。

今週末(この項は10月23日に書いています)、『Pray』ツアー新潟公演がありますよね。
この日程は偶然でしょうか。
僕にはこれがジュリーからの
「東日本大震災だけじゃない。僕は新潟のことも覚えているよ。風化させないよ」
というメッセージのように思えてきます。
新潟での「Deep Love」を、ジュリーはどんなふうに歌うのでしょうか・・・今、そんなことを考えています。

11曲目「
Pray~神の与え賜いし

Pray

新譜の演奏曲順については、YOKO君曰く「よく考えれば、あぁするしかないよね」と。

この日印象に残ったのは、最初のアカペラ部が終わって各楽器が噛み込む間奏。先月の渋谷では柴山さんのソロが凄かったんですけど、この日は下山さんが掻きむしるような荒ぶるストロークで魅せてくれました。
YOKO君も言っていました。GRACE姉さんのドラムスとユニゾンで弾くのが凄まじい、のだそうです。あと、下山さんのストロークの振りかぶる軌道の大きさについても「凄いよね」と話しましたね。

ヴォーカルも素晴らしいけれど、改めてジュリーの歌詞に震えました。大宮の後、いつもお世話になっている先輩とも話したのです。「もし”被災地への祈りをテーマに”と職業作詞家に依頼しても、『3月8日の雲』『Pray』収録の8曲のような詞はまず出来ない。ジュリーだからこそこの歌詞が出来たんだ」と。
本当に皮肉なことです・・・あの震災は、ジュリーがいかに凄い作詞家であるか、いかに鋭い感性を持ち、それを表現しうる才を持っているか、ということを証明してしまいました。

エンディング近く、これまで「何度もキュンとさせておくれ」と歌っていたこともあったジュリーでしたが、この日はCD通り「キュンとさせて欲しい」と歌いました。やっぱりこちらの方がしっくり来ますね。

12曲目「溢れる涙」


Hello

”『Pray』セットリストを振り返る”シリーズで採り上げようと思っている曲。YOKO君は終演後に「これは意外な選曲だった」と語っていましたが、僕はその点、何度かのツアー参加を経て、この曲の歌詞を噛みしめ「なるほどなぁ」という思いに至っています。
楽曲構成や演奏のレベルの高さ以上に、大切なのはこの曲のジュリーの詞をしっかり受け止めること・・・。

初日のレポートでは浅はかにも、「ジュリー、猛暑対策で涼しげなクリスマス・ソングを2曲抜擢したのかな(もう1曲は「さよならを待たせて」)」などと冗談っぽく書いてしまいましたが、もちろんそんな理由でジュリーがこの曲を採り上げたはずがありません。
詳しい考察は楽曲お題の記事で書きますけど、「さよならを待たせて」と併せ、「今はいない人のことを歌っている」歌詞が重要な鍵ではないでしょうか。しかも「溢れる涙」は新譜4曲の直後、「さよならを待たせて」はアンコール大トリ。ジュリーが何かの思いを持ってこの2曲に臨んでいることは確実ですよね・・・。

ギタリスト2人のハーモニー・リードも相変わらず素晴らしく、90年代のジュリー・ナンバーの中でも特に、現在の鉄人バンド向きの曲だと改めて感じました。

13曲目「
greenboy

Greenboy
さて、実は大宮で僕とYOKO君は、「Uncle Donald」からこの曲までを座って観ました。やっぱりね・・・男2人が並んじゃうと、後方の席のお姉さん達にどんな迷惑がかかっているかもしれませんから。僕は171cmですから(←ジュリーと同じです!)まぁ後方のお客さんにとっても想定内かもしれませんが、なにせYOKO君は180cm近い身長ですからねぇ・・・。「できるだけ、静かな曲では座ろう」と事前から考えてのことです。

そのためか、ジュリーのヴォーカルやバンドの演奏に集中して聴けていたように思います。「溢れる涙」~「greenboy」の流れは、4度目の体感となる僕も新鮮に感じました。
YOKO君にとってこれは、『ジュリー祭り』リベンジ曲です。「イントロで一瞬、何だっけ・・・と思ったけど、いいねぇgreenboy!」だそうですよ。

いや、本当にイイ・・・というかどんどん良くなってる!今ツアー、公演を重ねる中で最もヴォーカルと演奏が進化しているのは、この「greenboy」ではないでしょうか。
Aメロは猛々しく、サビは凛々しく、エンディングは美しく。
鉄人バンドの演奏だけでなく、エンディングのコーラスが素晴らしいんですよね。このあたりは初日とは全然印象が違うなぁ。

ジュリーのヴォーカル、一番凄かったのはやっぱり「空から墜ちるように歳をとる」の絶唱でしょう。
終演後に先輩方が
「空から墜ちるように・・・のトコでさ~」
とお話しているのが耳に入ったので、「凄いっすよね~あそこのヴォーカルは高音からの急降下が・・・」と話に割って入ったら、「いや、お腹の話です」とキッパリ言われてしまいました(笑)。
ヴォーカルも凄いけど、何でもあの部分はジュリーの透き通った生腹を拝めるビッグチャンスの箇所なのだそうですよ・・・。

14曲目「
若者よ

Namidairo

イントロが始まるや、「え~とこれは・・・?」と迷うYOKO君に「ほら、ここからは立って立って!」とどやしつけました。
YOKO君はCD『涙色の空』を持っていないのです。ツアーも不参加(同年彼はジュリワンに参加)でした。昨年のツアーでも、「
涙色の空」が歌われた時に「知らない曲が来た!」と焦ったのだそうです。
ただ、僕は今年のお正月セットリストをすべてYOKO君にメールで教えた際、彼が音源を持っていない「若者よ」のファイルを一緒に送っていたんですよね。「サビのキメ部の歌詞が当時エライ話題になってさ・・・」と解説つけて。
ですからYOKO君、この曲は最近になって知っていたわけです。ジュリーが「叫んでも 叫んでも♪」と歌い始めると、ハッとしたように

おおっ、「老人」か~!

と声を上げました。
曲のタイトルが、咄嗟に間違って出てきたようですね・・・。まぁ気持ちは分からんでもない。

ブリッジ部の「栄え給えよ、若者♪」直後の「叫んでも 叫んでも」で、バンドが小節の頭にシンコペ気味に噛み込む頭打ちの演奏になりますよね。あそこで下山さんが「うりゃっ!」とダウン・ピッキングをキメならが首を振って悶えていました。
たぶん、シンコペで全員の音が揃う瞬間が気持ちいいんでしょうね・・・。

15曲目「ROCK'N ROLL MARCH」


Rocknrollmarch

終演後にYOKO君が真っ先に口にした感想は、ここから「愛まで待てない」の3曲怒涛のロック繋がりについて・・・「ジュリー、大丈夫なのか。凄過ぎる」と。

『燃えろ!東京スワローズ』に参加していた僕としては、初日の段階で「お正月コンサートとまったく同じ曲順」に戸惑いもあったわけですが、やっぱり65歳のジュリーにしてこのロック・コーナーはとんでもなく凄いんですよ。
前半のヒット曲連発で引きつけられ、新譜4曲に戦慄し、後半怒涛のロックで驚嘆し、最後にバラードに酔いしれる・・・長いファンの先輩方にとっても、初めて参加するお客さんにとっても、完璧な構成。僕と同じく後追いのじゅり勉詰め込み組のYOKO君は、たった1度の今ツアー参加で自然にその真髄を掴んだようで・・・さすがです!

イントロが始まり、つい裏拍のみの手拍子をして、泰輝さんの4つ打ち頭上手拍子に煽られさらに盛り上がる・・・何度体感してもスリリングな瞬間です。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅるっちゅ♪」のコーラス部は、これまでの会場では柴山さんを見ていましたが、この日は偶然泰輝さんに目が行きました。右手でコーラスと同音階のフレーズを弾き、途中から左手での豪快なシンセ・ストリングスが加わります。泰輝さんの”神の両手”はこの曲でも炸裂していたのでした。

エンディングは下山さんの自由度が高かったですね。ピックの振り下ろしが激しかったです(←片方の足を畳むようにして内股気味に見えるなるのがポイント)。
ジュリーもちょっと「おっ!」と反応していたみたい。

16曲目「A・C・B」

Kitarubeki

これは『ジュリー祭り』以降、YOKO君がことあるごとに「聴きたい、聴きたい」と言っていた曲。
僕はドーム以後何度か生で体感できていますが、彼にとっては5年ぶりの『ジュリー祭り』リベンジ・筆頭曲です。イントロが始まるとYOKO君は
「おおっ、アシベ!」
と叫び、僕の横腹を拳で思いっきり突きます。
・・・・・・痛い、やめれ。

恒例・ジュリーの道案内は下手側で。てっきりこれは上手ブロックでやるとジュリーが決めているんじゃないか、思っていたのでちょっと意表を突かれました。
どうやら会場ごとにその時のノリで位置を決めているようですね。先輩のお話によると、「最前列におじさんを見つけて道案内している」確率が高いんだとか・・・。ならば僕としては、「自分もすっかりおじさんで良かった~!」と和光市公演を思い出し、変な喜びを噛みしめたいところです。

その地図案内の箇所(Aメロ1回し目)といえば、リード・ギターのパートがお休みになり、柴山さんが物凄いテンションで手拍子を煽るのもまた、大きな見所です。
何故あんなにオーバーアクションなのか・・・ひょっとして、あの激しい動きでSGが「でろ~ん」と傾いてしまうのを防いでいるんじゃないだろうか・・・。
「A・C・B」の柴山さんの手拍子煽りと言えば、ボディーの軽いSGのヘッドが徐々に垂れてきて、演奏に戻る瞬間にそれを左膝ですくい上げるシーンが過去DVDなどで楽しめるのですが、今ツアーはあんまりギターが傾かないんですよね。これには何か秘密があるはずで、一番考えられるのは柴山さんのあの動きです。
バンド仲間の友人がSGを持っているので、いつか借りて試してみよう・・・。

YOKO君、この曲では下山さんにも釘付けになるシーンが何度もあったそうで
「下山さんの三連、キレッキレ!」
とひれ伏しておりました。

「A・C・B」では最後の最後にジュリーがアドリブのハミングを入れるんですってね。
僕も後になって「そう言えば、何かの曲のラストでジュリーがそんなことをやってたなぁ」とは思ったのですが詳しい記憶は無し・・・もうリベンジの機会もありません。残念です・・・。

17曲目「愛まで待てない」

Aimadematenai

間髪入れず続くロック・ナンバーにビックリのYOKO君。彼はこの曲も『ジュリー祭り』以来のリベンジ・ナンバーということになります。イントロでは
「俺が待てねぇよ!」
と叫んでました。意味不明。

その場駆け足も、フルスロットル加速アクションもこれまで以上に激しく素晴らしかったのですが、エンディングのサビのリフレインでジュリーが1小節遅れて歌に入ってしまい、演奏と歌がバラバラになるアクシデントが。
これはどういうことかと言うと・・・。

この曲はサビ部の最後「僕は灰になる♪」の後に基本、「ファソラシ♭ドレミ♭」というギター・フレーズがくっついてくるんですけど、一番最後はそれが割愛され(最加速を表現する白井さんのアレンジによる譜割と考えられます)、1小節ぶん早く歌が繰り返されます。譜割が奇数になるその「突っ込む」感覚がこの曲に用意された最後の仕掛けですが、大宮でジュリーはそこをうっかりして、偶数の譜割のままで歌ったので、結果バンドの演奏に1小節遅れることになったというわけです。
無理もないことですよ。それまでジュリーは全速でステージを何度も駆け回っていましたから・・・。

バンドと歌がズレていることに気づいたジュリーは、柴山さんたちの「ハッ!」のシャウトのタイミングをはかって立て直したようでした。
にしても・・・あの状況で顔色ひとつ変えずに正しい譜割で演奏を続行し、コーラスまで。
鉄人バンドの結束とプロフェッショナル・スピリット、改めて恐るべしです。

18曲目「TOKIO

Acollection

7曲目「サムライ」同様、ここで添付する収録CD画像を『A面コレクション』としました。「TOKIO」もアルバムとシングルではヴァージョンが違い、ジュリーがステージで歌っているのは、シングル・ヴァージョンの方です。「サムライ」ほどには2つのヴァージョンが大きく異なってはいないんですけどね。

YOKO君、この「TOKIO」と「気になるお前」の2曲についてだけは、「しょっちゅう生で聴いてるなぁ」という感覚を持てているそうです。彼は『ジュリー祭り』『PLEASURE PLEASURE』『僕達ほとんどいいんじゃあない』に続いて4度目の「TOKIO」ということになります。
昨年の『3月8日の雲~カガヤケイノチ』大宮公演では、3列目という至近距離でジュリーに念押しされた(?)ため、あのYOKO君が正調の”おいっちに体操”を敢行する貴重な状況がありました(「ラジカル ヒストリー」)
が・・・今年は後方席ということで、YOKO君は遠慮がちな正拳突きでの参加でした。

正拳突きと言えば、最後のサビ前の「わちゃあ~~!」はすっかり恒例になったのですね。
至近距離のジュリーが突然オフマイクで叫んだあの和光市公演が、もはや遠い昔のことのようです。

19曲目「君をのせて

Acollection


(註:何ということでしょう・・・今日(10月28日)まさに、この「君をのせて」の項からレポの続きを書こうとしていたら、矢継ぎ早に3人の先輩から悲しいお知らせを伝え聞きました。
岩谷時子さんの訃報。
25日に、97歳で天国へ旅立たれたとのこと・・・。

昨年は映画も大きな話題となった『レ・ミゼラブル』挿入曲の訳詩など、岩谷さんの日本音楽界への功績は計り知れません。
「歌」に込めて、女性の感性の尊さを教えてくださいました。

そして、ジュリーファンにとっては変えがたい宝物・・・素晴らしい歌を残してくださいましたね。
まず「君をのせて」。ジュリーが40年以上歌い続け、これからも歌っていくであろう、デビューシングル。
また、年末の再結成で歌われるかもしれないザ・タイガースの名曲「風は知らない」や、アルバム『第六感』から、ギター1本弾き語りの別ヴァージョンとしてシングル・リリースされた「永遠に」。
いずれも分かり易いフレーズでありながら奥深い、普遍の名編たちを届けてくださった岩谷さん。
心よりご冥福をお祈り申し上げます・・・)

地方にお住まいのジュリーファンのみなさまは、もちろん遠征して都心のお正月コンサートに参加なさる方々も多いとは思いますが、全国ツアーでジュリーが年に一度地元にやってくるのを楽しみにしていらっしゃる、という方々もいらっしゃいます。ジュリーは、そういうファンをすごく大切に思っているのではないでしょうか。年に一度のLIVEを待っているファンがいる、ということが、65歳にしてあの過酷なスケジュールのツアーを乗り切る体力、精神力の源になっているように思えます。

YOKO君は『ジュリー祭り』以後、そんな「年1回のジュリーLIVE」の醍醐味を都心に住んでいながら味わっています。
今回のセットリストは、お正月の『燃えろ!東京スワローズ』との重複こそ多かったものの、昨年の全国ツアー『3月8日の雲~カガヤケイノチ』との重複は、この「君をのせて」ただ1曲なんですよね。

「締めくくりにバラードを連発していたのは新鮮だった」
とは終演後のYOKO君の第1声。彼は「君をのせて」から「さよならを待たせて」までのバラード4曲はすべて大好物とのことで、怒涛のロック・コーナー直後の1年ぶりの「君をのせて」も、大きな感動を持って聴いたようです。

大宮では1箇所「えっ?」というところで歌詞飛びがあり(サビのリフレイン部)少しハラハラしましたけど・・・指揮をするような感じで腕を揺らしたジュリー、貴重なシーンを観ることができました。僕にはそんなジュリーの動きが、「何だっけ?みんなちょっと歌って教えて!」とお客さんに歌詞を尋ねているかのようなゼスチャーに見えてしまいました。

それにしても・・・あれだけ走り回り全力で暴れていたというのに、いざ「君をのせて」を歌い始めると、息も乱さず伸びやかな声を聴かせてくれるジュリー。
70年代頃の貴重な資料などを読んでも、ジュリーが後半になれななるほど声が良くなるというのは多くの人が口を揃えて驚嘆まじりに言っていたことなのですね。
ロック・ナンバー連発で大いに弾けた直後の「君をのせて」。40年以上前にリリースされたこのバラードこそ、「ジュリー65才にしてなお健在!」を、多くの一般のお客さんにも知らしめている歌なのではないでしょうか。
時代が進めば進むほどに、普遍の輝きを放ち存在感を増し、聴く人それぞれが持つ大切な思い出を「歌」の中にどんどん積み重ねていってくれる「君をのせて」。

岩谷さん、どうぞ安らかに。
数々の素晴らしい作品をありがとうございました・・・。

~MC~

LIVE当日から日も経ってしまいましたし、この項は簡潔にまいります。
大宮でもジュリーは、長い長いMCで楽しませてくれました。YOKO君も「相変わらず長いね~」と言っていましたね。

内容自体は、”ザ・タイガース再結成準備珍道中”的なお話が中心で、これまで聞いたことのあるものをアレンジして詳しく、といった感じでしたのでここに書き起こすことはしませんが、ジュリーの楽しそうな様子や話し方から察せられること・・・それは

「何も心配ありません。メンバー皆、再結成のステージを楽しみにしているし、早く全員で稽古したいと待ち構えているし、僕もトッポと仲良くやっていますよ!」

と、要約しますとそんな感じです。
トッポ絡みの話は最早、「ザ・タイガース、順調です!」を裏付けるようなネタになっていますね~。

僕は今回の再結成ステージでは、トッポがどれくらいの存在感を放ってくれるのか、というのを一番の楽しみにしています。それはジュリーもそうなのでは?
それに僕としては、生では初めて聴くギター、初めて聴くヴォーカルなのですからね。

MCで僕が初めて聞いたネタとしてひとつだけ書きますと・・・インパクトがあったのはやはり「サインを断るドSなジュリー」のお話(笑)ですね。
『ジュリー祭り』を機に何故かまた人気が出てきて顔を知られてきて、ある時新幹線(だったかな?)に乗っていると
「大きな紙袋を提げた、見るからにオタクっぽい青年が”サイン下さい”と言ってきて・・・思いっきり無視したった!!」
と笑わせつつも
「もしかすると、その青年のその後の人生にずっと残る傷を負わせてしまったのでは・・・」
と心配げにしていました。
結局ジュリーが何を言いたいかというと
「自分はそういうことがあっても絶対に無視するんだから、お互いのためにそういう行為は控えてください」
ということでしょうね・・・。

ただ、話としてそれはまぁお客さん爆笑となったんですが・・・後日、そのくだりをNasia様がブログで素晴らしいイラストを添えて書いてくださっていてですね、その「紙袋を提げたいかにもオタクっぽい青年」のイラストが、思わず自分に見えてしまったという・・・。
拝見した瞬間、この先僕が万が一どこかでジュリーに遭遇しても、近づかないように気をつけよう・・・と決意させて頂いた次第です(笑)。どうしたってファンオーラは隠しきれるものではないと思いますしね・・・。

ともあれ、「可能な限り歌い続けたい」という最後の言葉がやはり嬉しかったです。
鉄人バンドの紹介にも大きな拍手があり、「オマケ、です!」(この日のジュリーは区切るような感じで言いました)から、いよいよアンコールに突入します。

20曲目「あなたへの愛

Acollection

これはYOKO君も僕と同じで、『ジュリー祭り』『僕達ほとんどいいんじゃあない』に続いて3度目のツアー体感。
ただ、この曲をこよなく愛するYOKO君としては、ジュリワンの時のアレンジに違和感もあったようで「やってくれて嬉しかったんだけど、やっぱり俺はこの曲のイントロはオリジナルのあのギター・フレーズと音が好き」と言っていました。
今ツアー、柴山さんはオリジナルに忠実な音作りで、丁寧にソロを弾いてくれますね。YOKO君も大満足だったようです。

打ち上げで「今回は1音キー下げてFでやってるんだよ」と教えてあげたら、「そりゃそうだよね」と。
「だって、俺等が歌ったら1音下げたくらいじゃ無理じゃん」
だそうです。
最後に転調がありますし、とにかく高音がキツイんです、この曲。ジュリーとしては1音キーを下げることによって(YOKO君の言う通りそれでも常人には高いんですけど)、70年代の頃の歌い方に近くなったんじゃないかなぁ。僕は当然当時の歌を生で聴いていないのであくまでCDで聴いた印象と比べての感覚なのですが・・・。いずれにしても、『ジュリー祭り』と今回では歌い方はかなり違いますよね。

歌い終わったジュリーが、にこやかに手を振ってサツサと退場しようとします。期待に応えて「えっ?!」と見事に引っかかるYOKO君・・・泰輝さんのピアノが始まってジュリーがハタと立ち止まり「え、まだやるの?」と恒例のお芝居を打つと、今度は
声を上げてのバカウケでした。

21曲目「ヤマトより愛をこめて

Konndohakareina

この日初めて気がついたのは、下山さんがギターを変えるタイミングでした。
「あなたへの愛」がアコギで「ヤマトより愛をこめて」はエレキなのですが・・・ローディーさんがエレキを持って下山さんに手渡すのは、ジュリーが歌い始めてから後のことだったのです。

まぁ、この曲で下山さんは2番までお休みですからそれは自然なことと言えばそうなんですけど、ひょっとしたらこれは・・・ジュリーの「一度引っ込む」小芝居を明確にするために、ギター・チェンジのタイミングをずらしているのではなかろうか・・・?
考えてみれば、例えば「あなたへの愛」が終わってすぐに下山さんがギターを変えていたら、目ざといYOKO君はそれに気づいたでしょう。ジュリーの小芝居に大ウケすることもなかったかもしれないのです。
何と緻密な演出でしょうか!(←違)

そんなユーモラスな演出がありつつも、いざ歌が始まってしまえばひたすら感動するばかり。
YOKO君は『ジュリー祭り』以来久々のこの曲ですから尚更だったでしょう。

大宮公演が終わって数日後でしたか、いつもお世話になっている先輩から教えて頂いたのですが・・・最近斉藤和義さんがジュリーについて語ったことがあったそうで、その中で、「切ない気持ちに浸りたい時に聴く」ということで、この「ヤマトより愛をこめて」のタイトルを挙げていらっしゃったとか。
斉藤さん、やっぱり今のジュリーのことが気になるのかなぁ、なんてまず感じてしまいました。
しかしそれ以上に・・・なるほど、「切ない気持ちに浸りたい」なんて、僕のような凡人にはなかなか言葉にするところまではいかないけど、確かに人間誰しもそういう時があります。

「ヤマトより愛をこめて」は確かに、超有名アニメとのコラボレーションという側面が強いです。でも実は「君をのせて」同様に、純粋に、どうしようもなく「歌」なんですよね。
「ジュリーの歌」と表現するにふさわしい・・・テーマ性もヴォーカルもジュリーの歌声も全然古くならず、むしろその中にある大切なものがどんどんクローズアップされ再確認されるべき時代がやってきています。
正に普遍の名曲です!
それをこうしてじっくり生で味わえることに、感謝。大宮の「ヤマトより愛をこめて」も素晴らしいヴォーカルと演奏でしたよ。

22曲目「さよならを待たせて

Sur

またしてもジュリーの小芝居に引っかかるYOKO君。再びのフェイントから次曲のイントロが始まると、「むむむ・・・これは?」と一瞬ではありましたが迷ったみたい。
彼にとっても『PLEASURE PLEASURE』以来となる曲。もちろん『ジュリー祭り』の時は「知らん曲だなぁ・・・」とポカ~ンと聴いてしまっていた曲ですね。彼にとって今年改めてのリベンジとなりました。

「溢れる涙」の項にも書いた通り、今回ジュリーがセットリストに抜擢した2つのクリスマス・ソング。僕は遅まきながらようやくそこに「今はいない人のことを歌った曲」という共通点に気がつき、今年の『Pray』という被災地への祈りをテーマとしたツアーでこのバラードが採り上げられた意味を、改めて考えさせられた次第です。
2曲とも、ただ「切ない」では終わっていません。そこには「時間を厭わない」明日への思いもある、と僕は受け取っています。

この日も素晴らしかったジュリーのヴォーカルと鉄人バンドの演奏。バラードが続いていますが、歌の表情はそれぞれすべて違います。
間奏・・・これまでは柴山さんのことばかり書いてきましたけど、その前に泰輝さんにピンスポットが当てられ、美しいソロを弾いているんですよね・・・。

☆    ☆    ☆

ということで、今年も無事にYOKO君はジュリーLIVEに参加することができました。
とにかく何につけても直前になるまでハッキリとした予定の立たない男ですので、毎年チケットを申し込む段階では彼が参加できるのかどうか分からない状況なんですが、また来年もこれまで同様にチャレンジします。
来年は渋谷にする可能性も。一番安パイなのは、「月の中頃の休日の川口公演」なんですけどね。

会場でお会いしたみなさま、男2人を快く打ち上げに加えてくださったみなさま、どうもありがとうございました。
YOKO君からは翌日
「ジュリーの直後は、ポール(マッカートニー)聴いてもうまく入っていけない。生ジュリーの圧力ってすげぇんだな・・・」
とメールがありました。ポールの新譜が出たばかりで、開演前は2人でその話ばかりしていた大宮公演でしたが、やはりジュリーLIVEは格別の印象、爪痕を彼の生活にしばらくの間残していったようです。

☆    ☆    ☆

僕の『Pray』ツアーも、この大宮を以て終わりました。

冒頭にも書きました通り、次回更新であと1曲だけタイガース・ナンバーの記事を書き、”ザ・タイガース再結成セットリスト予想”シリーズを〆にしたいと思います。
なんとかパンフレットの発送前に書き上げたいと考えていますが、週末なかなか忙しい(渋谷にも参加できず)ので厳しいかも・・・。
お題はバレバレかと思いますが、例によってJ先輩所有の貴重なお宝画像の添付候補を選びつつ、記事の構想を早めに練りたいと思います~。

20131019

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2013年10月17日 (木)

ザ・タイガース 「都会」

from『THE TIGERS SINGLE COLLECTION』
original released on 1970、single
セットリスト的中自信度 ★★☆☆☆


Tigerssingle

disc-1
1. 僕のマリー
2. こっちを向いて
3. シーサイド・バウンド
4. 星のプリンス
5. モナリザの微笑
6. 真赤なジャケット
7. 君だけに愛を
8. 落葉の物語
9. 銀河のロマンス
10. 花の首飾り
11. シー・シー・シー
12. 白夜の騎士
13. 廃虚の鳩
14. 光ある世界
15. 青い鳥
16. ジンジン・バンバン
disc-2
1. 美しき愛の掟
2. 風は知らない
3. 嘆き
4. はだしで
5. スマイル・フォー・ミー
6. 淋しい雨
7. ラヴ・ラヴ・ラヴ
8. 君を許す
9. 都会
10. 怒りの鐘を鳴らせ
11. 素晴しい旅行
12. 散りゆく青春
13. 誓いの明日
14. 出発のほかに何がある

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セットリスト的中自信度
5段階内訳

★★★★★・・・絶対やります!
★★★★☆・・・おそらくやると思います。これからタイガースの勉強を始めようという方々は、ここまでは予習必須です。
★★★☆☆・・・かなりの有力候補ではありますが、全体の曲数や演奏形態の特殊性などの事情により、オミットされる可能性もあるナンバー達です。
★★☆☆☆・・・個人的にやって欲しいと考えている、渋い選曲群です。セットリストのサプライズとして、密かに期待しています。
★☆☆☆☆・・・おそらくやりません。この機に僕が個人的に記事に書いておきたい、というナンバー達です。

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さて今週は、色々とタイガースやジュリーをとりまく新情報がありましたね~。

まず、ザ・タイガース。
再結成記念Tシャツとパンフレットがオフィシャルサイトにアップされ、申し込み用紙も届きました。
ちょっと気になっているのは・・・確かパンフレットには年末のセットリストを載せる、という話があったんでしたっけ?そうだとすればネタバレ厳禁派の僕としては、中身を見るのは初日武道館が終わってからということになるなぁ・・・。
2013年版のTシャツは、「中井さんへの感謝」がコンセプトなのかな。僕はたぶん、着て外を歩けますよ(笑)。


(あ、別の「タイガース」の話題については、積極的なコメントを差し控えさせて頂きます・・・涙涙。こうなったらファイナルステージはなんとかカープに頑張って欲しいですけど、追い込まれてしまいましたねぇ・・・。
タイガースについては、終わってしまったものは仕方ない。僕もやっぱり「Rock 黄 Wind」の考察記事は、キチンとリーグ優勝を果たした時にドカ~ン!とお祝い的に書きたいですし。
そう言えば・・・90年代の阪神低迷暗黒期にあって、一人”陽”の気を放っていた愛すべき助っ人・オマリーの来季コーチ就任の噂は明るいニュース。是非実現を!)

そして、ジュリーのお正月コンサートのツアー・タイトルが明らかになりました。何と『ひとりぼっちのバラード』!
これはテンションが上がります。
タイガース再結成のステージすぐ後に「ひとりぼっち」というのはジュリーらしいセンス・・・なのでしょうか。
でも来年になっても、メンバーとの友情が終わるわけではないのですから。
いつ何時、トッポから「ちょっと相談があるんだけどさ~、プハ~、カランカラン」と、直接ジュリーに無理難題打診の電話がかかってくるやもしれません。むしろそういう話があることに期待してしまいます・・・。

ともあれ、年が明けての次のソロコンは、ジュリーの歌人生総仕上げへの第1歩・・・「これからは自分の好きな歌を好きなように歌っていく」という気持ちをツアータイトルとして宣言しているようで、とても嬉しい!
このタイトルなら、あの大名曲「
ひとりぼっちのバラード」はやっぱり歌いますよね?アルバム『JULIE』の中でジュリーはこの曲が一番好き、と言っていたくらいですしね。
『ジュリー祭り』が初ジュリーLIVEだった僕は、「ひとりぼっちのバラード」を生で聴いたことがありません。「いつか聴きたい」と切望しつつも「もうこの先はナイかな・・・」とあきらめの気持ちも実はあった珠玉のバラードとの邂逅へ、今から期待に胸が高鳴っています。

ただジュリーの場合、「必ずこの曲は歌うと思わせておいて実は」・・・というパターンも考えられますが、いずれにしても「タイガースの反動で、こんなことになってしまいました」的な、『歌門来福』級のイントロ当てクイズ状態・・・そんなセットリストの匂いがプンプンしますね。これは何としても初日に参加しないと~!
今度のお正月コンサートについては、おそらくブログでセットリスト予想をする時間は無いと思うんですよ。スケジュールが詰まりまくっていますからね。東京ドームのレポを書き終えたら、もうソロの初日目前!みたいな感じになってる気がする・・・。

そう、ソロコン前の年末に控えし一大イベント、ザ・タイガース再結成。
今回お題に採り上げるのは、後期のシングル曲。ジュリーのソロっぽいメロディーのイメージがありながらも、コーラスそして演奏・・・実はどうしようもなく、終わりに向かう「ザ・タイガース」の音であり歌であるという、不思議な悲しみの雰囲気をたたえた、音楽性も高い美しいナンバーです。
「都会」、僭越ながら伝授!

予想としては「星2つ」。
これは妥当な線でしょう。トッポを加えた5人のオリジナル・メンバーでの演奏となるとまぁやらないかな、とは思いますが何と言ってもタイガースらしい演奏構成を持つシングル曲。油断はできません。
僕などは、「叫んで~みても♪」の箇所にトッポのコーラスが入るのを実際に生で聴いたらどんな感じなんだろう、とか・・・あれこれ夢想してしまいます。

実は僕は、2009年初めてタイガースのシングル・コレクションを聴いた時点で、漠然と「後期の曲の方が好みかな」とは思いつつも、この「都会」の印象はかなり薄かったのです。タイトルから歌の出だしをソラでは連想できないくらい。
もちろん今ではそんなことはありませんよ!まぁ、当時聴き込みが足りなかったということです。その頃は「風は知らない」「はだしで」「淋しい雨」「怒りの鐘を鳴らせ」の4曲だけを抜き出して聴いたりしていましたね・・・。

「都会」という曲の存在が自分の中で大きくなったのは、先輩が「是非聴いて」と焼いてくださった『サウンズ・イン・コロシアム』を聴いた時(無論、その後キチンとCDを買い直しています)です。

2枚組CDの後半1曲目がこの曲なんですよね。
ピーがドラムセットに座って、「どん!」と一発音を鳴らし(フロアタムかな?)、悲鳴のような歓声へと連なってから始まる「都会」のイントロは、後追いファンからしても独特の説得力がありました。

そういえばコロシアムLIVEって、CD通りの完全2部構成と考えてもよろしいのでしょうか。休憩とかがあって、後半第2部で改めて「都会」からスタートしたということでいいのかな・・・。

以前、実際にこのライヴに参加された先輩に感想を伺ったことがあります。
「ステージが進んで、だんだんと陽が落ちて、風が吹いてきて・・・楽しいんだけれどもどこか淋しいような、何とも言えない気持ちだった」
と仰っていました。
その先輩のお言葉が強く印象に残っているからでしょうか・・・僕は『サウンズ・イン・コロシアム』のdisc-2にはちょっと切ないイメージがつきまとっています。
「散りゆく青春」の大合唱も、タイガース・オリジナル・メドレーの曲並び(すべて短調のナンバー!)も。
そしてdisc-2の幕開け「都会」のイントロもそんなイメージなんです。先述したピーの一打と歓声も含めて・・・。「だんだん陽が傾いていく」ような曲だと思っています。

それはひょっとしたら、コロシアムLIVE前後のタイガースの状況そのもの、のイメージなのではないでしょうか。
コロシアムLIVEはタイガースにとっても大きな企画。もちろんメンバーの気合は充分で、実際の演奏、ジュリーのヴォーカルも素晴らしい。でもそれでいて何処か切ない影が射しているような・・・。

手元に、当時の貴重な資料があります。
P様所有の会報誌『ヤング』・・・コロシアムLIVEを軸としたメンバーの動きや心境を、何となくではありますが把握できる素晴らしいお宝です。
コロシアム前後のタイガース特集ページを、3号分続けてご紹介しましょう。

Young700801

Young700802


以上、『ヤング』1970年8月号より

Young701001

Young701002

Young701003


以上、『ヤング』1970年10月号より

Young19701201

Young19701202


以上、『ヤング』1970年12月号より


何かね、偶然とは言え「都会」の歌詞に象徴されるような感じ・・・。ピーの「反抗と順応がミックスしている」という言葉は、その時の本当に正直な気持ちかと思えますし。
かと言って淋しさ一辺倒でももちろんなく、「向うところは見えている」雰囲気もありながら、シングル『素晴しい旅行/散りゆく青春』や、アルバム『自由と憧れと友情』へこうして繋がっていったんだなぁ、と後追いファンとしては彼等の辿った道が無理なく整理することができます。


晩期タイガースが、多くの曲で「旅立ち」をコンセプトにしていたことを考えると、その「旅立ち」をメンバー全員が積極的に決意したターニング・ポイント・・・それが「都会」というシングル曲のように僕は感じるのですがいかがでしょうか。

ただ、それは歌詞のみならずやはりメロディーやアレンジからもそう思わせるものがあるのです。
作曲・クニ河内さん。
クニさんが素晴らしい作曲家であることに、恥ずかしながら僕はタイガース・ナンバーを聴き込んで初めて意識するに至りました(アルバム『サリー&シロー/トラ70619』収録のクニさんの曲も、改めて聴くと本当に素晴らしかった!)。

過去に他の曲の記事で書いたように、クニさんは自作曲に哲学を込めるタイプの作曲家のようです。「怒りの鐘を鳴らせ」の断崖を駆け降りるような転調や、「誓いの明日」でドミナント・コードを一切登場させない構成など、不思議なほどに詞の内容や当時のタイガースをとりまく状況に合致するアイデアが、1曲入魂で注入されています。
「都会」であればそのコンセプトは、「孤独」或いは「決断」といったところでしょうか。

「都会」のスコアは手元に3種類あります。


Tokai1

『沢田研二のすばらしい世界』より

Tokai2


『60年代グループ・サウンズ・ファイル』より


Tokai3


『沢田研二/ビッグヒット・コレクション』より

『ビッグヒット・コレクション』は相変わらずの独創的なコード進行(笑)になっていますが、他2冊はほぼ同じコードで採譜されています。すなわち「都会」は、和音を拾うことがさほど難しい曲ではないということです。

あなたが消えた この街を歩けば
G                Cm D7

今日もたそがれ さみしくせまる
G             C            Cm      G

だからと言って「都会」が単調な曲かと言うとそうではなく、まずAメロ冒頭の「G→Cm」から意表を突く展開。通常のポップスなら、ここは「G→C」となるところです。
イントロでは素直に「G→C」、歌メロに入ると「G→Cm」。
ジュリーのヴォーカルの「消えた♪」の箇所でどことなく不安感をかきたてられませんか?それは和音の当て方からくるものなのです。

途中に転調もあって

いつもあなたは  愛してくれた
Bm              Em   C            D7  F#7

それがなぜ 今はひとり
Bm        G               Bm

帰ってと 帰ってと 叫んでみても
  F#7        Bm             Em      A7  D7


(註:「帰ってと♪」の箇所の「F#7」は、ギター1本の弾き語りの場合は「F#m7」の方が良いかもしれません)

「愛してくれた♪」の「F#7」を境に、ト長調からロ短調に転調。普通なら「B7」を使ってホ短調に移行すべきところです。こうした変則的な転調も、歌詞やジュリーのヴォーカルと併せ、「心の乱れ」を表現しているかのように聴こえますね。
ただし、ジュリーのヴォーカルは「嘆き」から繋がる和製歌謡曲寄りの艶っぽい歌い方になっていますが、クニ河内さんの作曲そのものはいかにも洋楽的でクール。「はだしで」のようなアメリカン・ロックの感覚があると思います。

後追いファンの僕は、トッポ脱退→シロー加入後の後期タイガースに、常に解散の噂がつきまとっていたことすら知らずタイガースを聴き始めたのですが、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の次のシングルがこの「都会」・・・メロディーの面からしても、タイムリーなファンのみなさまにとってはそのあたりの心配をかきたてるような新曲だったのかもしれません。
それは次シングルB面「散りゆく青春」へとそのまま雰囲気として繋がっているようにも思えます。

いずれにしても、短い間ではあったにせよ、「後期」いや「第3期」タイガースのロックな音作りを支えていたのはクニ河内さん。『都会/怒りの鐘を鳴らせ』というシングル盤は2曲ともクニさん作曲ということもあり、第3期タイガースを代表する刺激的な1枚と言えるのではないでしょうか。
その点ではむしろアルバム作品である『自由と憧れと友情』よりも「タイガース」のイメージが徹底されていると言えそうです。

では、アレンジ、演奏についてはどうでしょうか。
ドラムス、ベース、ギターのタイガース・サウンドの上からストリングス装飾が施されています。そこへ、キメ部のみ登場するサイケデリックなオルガン(左サイドのミックス)が噛んでくるのが大きなポイントかなぁ「都会」の淋しげ雰囲気によく合っています。
いかにもこの時代のオルガンの音です。
「都会」のオルガン・トラックを聴いて僕が想起するのは、ドアーズのレイ・マンザレク(今年5月に天国へ旅立たれました。心よりご冥福をお祈り申し上げます)が得意としていた音色。特に「ヒヤシンスの家」(1971年リリース)という曲では、タッチといい音色といい「都会」にそっくりな音色のオルガン・テイクが聴けますよ。

バンド・サウンド・パートについては、タイガース・メンバー自身の演奏のように聴こえます。
まず、ドラムスは間違いなくピーですね。「はだしで」「怒りの鐘を鳴らせ」ほど豪快ではありませんが、要所で炸裂するフィルのロールが特徴的。
ベースとギターはハッキリ自信は持てないけど・・・左サイドのギターはタローっぽいです。この曲、全体的には1番と2番でキーが違うんですよ。1番がGで、間奏から2番が半音上がりのA♭。単音のスケール的には、2番の方が難しい。
で、基本コード・カッティングのギターが1番のBメロ「孤独なぼくを♪」「いつもあなたは♪」のトコで、カッコイイ単音に切り替えますよね。それが、2番では割愛されているのです。こんなことで「タローっぽい」などと考察するのも甚だ失礼な話なんですけど、僕としては何とか「タイガースの音」らしさを探し求めて聴いてしまう、ということなのですよ・・・。
もちろん2番で単音を弾いていないのは、僕ごときの想像が及ばぬ理由である方が、可能性は高いです。

さて、今回「都会」の記事を書いて・・・いよいよ『THE TIGERS SINGLE COLLECTION』収録曲で未執筆のナンバーは、残すところ「花の首飾り」ただ1曲、となりました。
このブログが2008年の東京ドーム公演レポートを機にじゅり風呂へと変貌して以来、ジュリー関連のお題を地道に1曲ずつ書いてきて、いつからか「CD収録曲を一番最初に完全網羅するのはどの作品かな?」なんて自分自身で楽しみにしていたんですけど、どうやらそれはジュリーのソロ・アルバムではなく、何とタイガースのシングル・コレクションということになりそうです。
年末、トッポが歌う「花の首飾り」を生で聴いてから、年明けに”セットリストを振り返る”コーナーのお題に採り上げるのはもう規定路線。

我ながら信じられないことです。
だって、僕がタイガースの曲をまともに聴き始めたのは、2009年になってからのことなんですよ。そんなヒヨッコがいつの間にやら、ザ・タイガース4年間の全シングル盤AB面すべての曲について、考察記事を書き終えようとしているのですから・・・。

あとは、ジュリーとトッポがほどほどにケンカし、ほどほどに仲良くしながら12月を乗り切り、ザ・タイガース再結成ツアーを無事大成功のうちに終えるのを見届ける・・・その日を待つのみです。
最後の最後に一番有名な「花の首飾り」でシメ、ってのがなんだか出来すぎのような気もしますが・・・それもこれも、僕一人の力でこれを達成するわけではない、ということの表れでしょう。「伝授」と言いながら実はまったく逆・・・先輩方に逆伝授されっ放しで今に至っていますからね・・・。
改めて、いつも色々と教えてくださるみなさまに感謝の思いです。

それでは、恒例のオマケです!
Mママ様所有のお宝切り抜き資料から、田園コロシアム関連のショットをどうぞ~。

Beautiful01

Beautiful02


ここまでの2枚は見開きの記事になってます。

Img269


ジュリーが抱えている楽器は何・・・?


ということで、いよいよ週末はジュリーの『Pray』大宮公演です。僕は9月の渋谷以来、共に参加の友人YOKO君は、昨年の『3月8日の雲~カガヤケイノチ』大宮公演以来1年ぶりのジュリーLIVEとなります。
もちろんステージが一番の楽しみですが、隣のYOKO君のビビッドな反応(約4ケ月間のネタバレ我慢を敢行する超人)にも期待しています。要注意曲は、「ハートの青さなら空にさえ負けない」「A.C.B」「あなたへの愛」あたりかな~。もちろん新譜4曲については言うまでもありません。

次回更新はその大宮レポートになります。
その後は、”『Pray』セットリストを振り返る”シリーズでジュリーのソロのお題を2曲書き、11月後半に再びタイガースのセトリ予想で2、3曲を採り上げて、12月3日を迎えようと考えています。
うまく予定通りに進むでしょうか。タイトなスケジュールもまた、ジュリーファンとしての喜びです。頑張ります!

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2013年10月12日 (土)

ザ・タイガース 「真赤なジャケット」

from『レア&モア・コレクションII』
セットリスト的中自信度★★☆☆☆


disc-1
1. 君だけに愛を
2. モナリザの微笑
3. 花の首飾り
4. 真赤なジャケット
5. 星のプリンス
6. こっちを向いて
7. シーサイド・バウンド
8. 銀河のロマンス
9. シー・シー・シー
10. 君だけに愛を
disc-2
1. リラの祭り
2. ジンジン・バンバン
3. 光ある世界
4. 廃虚の鳩
5. 青い鳥
6. 真赤なジャケット
7. 美しき愛の掟
8. はだしで
9. Lovin' Life
10. 風は知らない
11. はだしで
12. 嘆き

from『世界はボクらを待っている』、1968
original released on 1967、single『モナリザの微笑』B面


Sekaihabokura

1. 君だけに愛を
2. 銀河のロマンス(インストゥルメンタル)
3. モナリザの微笑
4. 花の首飾り
5. 僕のマリー
6. 落葉の物語
7. 真赤なジャケット
8. イエロー・キャッツ
9. 星のプリンス
10. こっちを向いて
11. シーサイド・バウンド
12. 銀河のロマンス

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セットリスト的中自信度
5段階内訳

★★★★★・・・絶対やります!
★★★★☆・・・おそらくやると思います。これからタイガースの勉強を始めようという方々は、ここまでは予習必須です。
★★★☆☆・・・かなりの有力候補ではありますが、全体の曲数や演奏形態の特殊性などの事情により、オミットされる可能性もあるナンバー達です。
★★☆☆☆・・・個人的にやって欲しいと考えている、渋い選曲群です。セットリストのサプライズとして、密かに期待しています。
★☆☆☆☆・・・おそらくやりません。この機に僕が個人的に記事に書いておきたい、というナンバー達です。

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さて、一般発売のチケットが完売続出の報を受け、そろそろ12月のザ・タイガース再結成本番ステージに向けてCDなどを聴き、みなさまそれぞれの思いで予習を始めていらっしゃることかと思います。

みなさま、どの作品を重点的に予習されていますか?

まず、『THE TIGERS SINGLE COLLECTION』。
特に後追いファンにとってこれは外せないですね。この2枚組さえ聴いていれば、年末セットリストの半分以上は確実に網羅できるでしょう。文字通り「完全無欠」のシングル集は、基本中の基本。

一方で、「いや、今なら『赤盤』『青盤』でしょう!」と仰るかたも多いでしょうね。
ピー先生監修、究極のザ・タイガース・レパートリー。「ラヴ・ラヴ・ラヴ」と両A面扱いのシングル曲「君を許す」が容赦なくオミットされている(笑)ことに象徴されるように、この2枚こそが「真のザ・タイガース・ベスト盤」と言えるのかも。
12月いっぱい、という年末再結成のツアー・スケジュールから考えますと、『青盤』収録「あわて者のサンタ」あたりは意外と要注意ナンバーではないでしょうか。僕はこの曲、セトリ入り「星3つ」と予想していますよ~。

或いは、2012年の武道館DVD。
トッポ以外の老虎4人の現在の姿・・・ヴォーカル、演奏をあますところなく楽しく予習できてしまう必聴、必見盤。「あの頃と変わらない体型を保っているのは、ピーだけです!」とのジュリーの言葉も、40年という時の流れを経て実現した奇跡のステージの証として、謹んで今一度受け止め胸に刻んでおこうではありませんか。

レコーディング・アルバムだと、やはりトッポ在籍時の大名盤、『ヒューマン・ルネッサンス』は押さえておかねばなりません。
個人的には今回「星5つ」の鉄板予想としている「忘れかけた子守唄」をはじめ、「朝に別れのほほえみを」「生命のカンタータ」などのアルバム収録曲もセットリストの有力候補だと思います。

さらに・・・先日のオールナイトニッポン・ゴールドの放映を機に、「オリジナル・メンバー5人だけの演奏」による真・タイガースへの期待に完全にスイッチが入った僕としては・・・。
老虎ツアーで実際に生で体感した、ピーのドラムス、サリーのベース、タローのギター。最後に残った1ピース・・・僕がまだ生で耳にしたことのない、トッポのギターに大いに期待を高めています。
タイガースのステージ演奏を予習するならば、オリジナルLIVE盤は『ザ・タイガース・オン・ステージ』『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』『フィナーレ』と3枚ありますが、僕としてはトッポのギターを重視して、『ザ・タイガース・オン・ステージ』を聴き込むことが肝要。オールナイトニッポン・ゴールドでピーが「僕らはライヴバンド」とハッキリ語っていたのは、やっぱりトッポ在籍時のLIVE演奏の感覚を持っての発言だったように感じるんですよ。

ただここで、今回のお題曲「真赤なジャケット」について・・・「オリジナル・タイガースの演奏」という観点から考えた時、ちょっと盲点のようになっている絶好の予習音源があります。
それはズバリ・・・『世界はボクらを待っている』の挿入楽曲演奏音源です!
LIVE音源ではないとは言え、これは正しく「タイガースの音」。シングル・レコード音源とはまったく別の魅力、ライヴ感、ガレージ感漲る好演です。特に当時のトッポのギターに着目するなら、必聴の音源と言ってよいのではないでしょうか。
演奏自由度の高さ、一発レコーディングの荒々しくハイテンションな雰囲気を感じさせてくれるゴキゲンなロック・ナンバー・・・改めて聴いて、「うわ、これLIVEでやって欲しい!」と個人的に盛り上がっているところです。

ということで本題。
「真赤なジャケット」、僭越ながら伝授です!

予想的中自信度は、控え目に「星2つ」としました。
有名曲をひと通りやるとしたら、なかなか「真赤なジャケット」までは手が回らないのかなぁ、と・・・。
でも、もしメンバーがこれから稽古を重ねていき、予定していたセットリスト候補の中で「ちょっとこの曲はうまくいかないね。他の曲に差し替える?」という話が出るようなことがあったとすれば、代替案として「真赤なジャケット」は相当有力なナンバーではないか、と僕は思っています。
パッ、といきなり音を合わせることができるタイプの曲なんですよ、これは。

まず僕はこの記事を書くにあたり、「真赤なジャケット」の映画ヴァージョンをじっくりおさらいしようと考え、アルバム『世界はボクらを待っている』を仕事の移動BGM用に持参し、「あ、あれっ?!」と基本的なミスを犯していたことに気づきました。このアルバム、映画タイトルのサウンドトラックを謳っているにもかかわらず、収録されているのは、単に正規のレコード音源に劇中の音声をオーヴァーダブしたものなんですよね。現代ではちょっと考えられない商売です・・・。
まぁでもこのアルバム、「イエロー・キャッツ」1曲のためだけにでも持っておく価値はありますけどね!
(ちなみに「イエロー・キャッツ」は年末のセットリストとして要注意ですよ~。ピーが『赤盤』に採り上げているということもありますし、おそらくタローは、この曲の人気の高さを充分心得ているはず)

で、肝心の映画挿入音源ですが・・・CDで楽しむ、ということになると少なくとも「真赤なジャケット」については、『レア・モア・コレクションII』を聴くしかないです。
ただ、『レア・モア・コレクションII』をお持ちでない方々でも、『世界はボクらを待っている』DVDは持っているよ、と仰るかたはかなり多いでしょう。実は僕もその一人。『レア・モア~』については音源しか持っていません。
ここはひとつ映画を観返しながら、純粋な「タイガース5人だけの音」で演奏される「真赤なジャケット」に着目し、年末に密かな期待を持っていざ予習と行こうではありませんか!

Sekai01

真赤なジャケットが 僕は好きなんだ
C7

真赤なジャケットが 恋を結ぶ
C7

あの娘をさそって 町へくり出そう
F7

真赤なジャケットは 踊りたいのさ
C7

このAメロの歌詞部、1行1行にトッポのオブリガート(細かい単音)が噛んでくるのが、「真赤なジャケット」映画ヴァージョン最大の聴きどころ。
荒々しいフレージングは、ロックそのもの・・・上手いとか下手とかではないんですよ。とにかく血が沸き立つようなカッコ良さなんです!
これがオリジナル音源ですと、トッポの単音該当箇所にティンバレスが入ってきます。それはそれで味があり、曲想にも合っているんですけど、やっぱり「シーサイド・バウンド」とイメージがダブってしまいますよね。

元々「真赤なジャケット」はいかにもB面的な作りと言うのか、当時多忙を極めていたすぎやま先生とタイガースが、シングルB面用に「シーサイド・バウンドみたいなスリー・コード基調のノリの良いヤツを」と狙いを絞ってササッと用意した曲、という印象です。
実際Aメロ途中までは、それぞれの演奏に合わせて「シーサイド・バウンド」「真赤なジャケット」いずれも入れ替えて歌えてしまうという・・・。キーは違いますけどね(「シーサイド・バウンド」はホ長調、「真赤なジャケット」はハ長調)。
ただ、そういう曲こそがLIVE向き。ザ・タイガースがライヴ・バンドである、ということを是非「真赤なジャケット」で年末、このヒヨッコに思い知らせて欲しいなぁ、と考えているのですが・・・どうなりますか。

さて、映画『世界はボクらを待っている』挿入曲の使用手法には、大きく分けますと3つのパターンがあったようです。

・オリジナル音源をそのまま映像に当てはめて使われているもの(例・「君だけに愛を」)。
・根底からすべてのトラックをレコーディングし直しているもの(例・「モナリザの微笑」)。
・演奏トラックはオリジナル音源で、ヴォーカルとコーラスのみを差し替えているもの(例・「星のプリンス」)。

で、お題の「真赤なジャケット」ですが・・・これは僕が聴いた感じですとちょっと変則のパターン。
まず、ベーシック・トラックについてはオリジナル音源そのままのものを、再編集及びピッチを上げて採用しているのではないでしょうか。
オリジナル音源のレコーディングでは後録りの別トラックであったと思われるティンバレスのパートを割愛し、映画のためにジュリーのヴォーカルとトッポのギターをオーヴァーダブしたんじゃないかなぁ。
聴けばお分かりの通り、オリジナル音源の歌声、コーラスが残っていますでしょ?ジュリーの新たなヴォーカル・テイクとの分別は容易に聴き取り可能です(音量レベルとエフェクトのかかり具合が全然違います)。

ともあれ、分刻みのスケジュールの中でのこうした作業、メンバーはさぞ大変だっただろうなぁと思います。
しかもどうやらそれらのレコーディングは、たった1日で敢行されたようなのです。

参考資料としまして、P様所有の超絶お宝『第35回ウエスタン・カーニバル』パンフレット巻末の『世界はボクらを待っている』撮影特集記事から、メンバーの日記をここでご紹介しましょう。

(考察の参照とするのはトッポの日記ですが、せっかくですから5人分すべてをどうぞお楽しみください!)

Sekaij

Sekais

Sekaita

Sekaip

Sekaito

楽しそうですね~。
ジュリーの「おさみさん♪」発言に(一瞬)萌えた人、手を上げて!
あと、ピーが入れたのは「ちゃち」ではなく「ちゃちゃ」でしょうけど・・・。

新規ファンとしては、タローの言葉にビックリ。
老虎ツアーで魅せたピー先生の「投げキッス」「お茶目」は、この頃から既に馴染んでいたキャラだったのか!
いやいや、勉強になります・・・。

さて、トッポの日記について。
1日で11曲のレコーディングですか・・・それは大変だ~。まるでビートルズのファースト・アルバム並みじゃあないですか。
映画で使われている「花の首飾り」はシングル音源と同一ですから、少なくとも「花の首飾り」についてはこの日・・・つまり映画撮影の合間に行われていた、ということになるのでしょう。
ジュリーとトッポの二人は、特に疲れたでしょうね・・・。
そりゃあ、毎朝の早起きは辛かったでしょう。はからずも今日のお題曲「真赤なジャケット」が流れるバスのシーンで、トッポが半分寝てしまっている、というのはファンの間では有名なお話のようですね。

劇中、サリーがメンバーを叩き起こして回るシーンが、偶然ながら何やら象徴的。
起こす順番にも気を遣う心優しきリーダー、サリー・・・考えてみますと、今はもう世間で知らない人はいない、というくらいの人気俳優・岸部一徳の原点がここにあるんですねぇ。
完全な棒読みで「そうだろ、ジュリー?」とたどたどしくセリフをこなしていたサリーが、今や国民的大俳優です!

・・・と、話を「真赤なジャケット」に戻します。
年末にこの曲が歌われるなら・・・と考えるなら、上記の通り予習すべきはこちらの映画挿入音源で間違いないところですが、正規シングル・ヴァージョンも当然ながら素晴らしいものです。

Aメロで、歌メロをストリングスが追いかける箇所がありますよね。スリーコードのバンド・サウンドのロックンロール進行に、ブルー・ノート音階のストリングスを絡ませるアレンジって・・・ひょっとしたら世界初なのでは?
サイケっぽいロック・ナンバーであれば、ビートルズなどに先例がありますけど。

すぎやま先生と言えば、この曲ではシンプルなロックンロール構成の作曲に留まらず、コード進行にフックがあったり。
例えば

あの娘の笑顔が一番 さ
G                        F   B♭  G7

の「B♭」とかね。
きっと特急でサ~ッと作曲した感じなんでしょうけど、この辺りはさすがすぎやま先生です。

最後に。
『世界はボクらを待っている』の挿入音源それぞれについて、僕はまだすべてを細かく分析できているわけではありません。
例えば「シーサイド・バウンド」は、トッポのリードギター・トラックがシングル・ヴァージョンと違うことは明らかですが、ベースやドラムスなどについてどうなのかは、更にじっくり聴き込む必要があります。

トッポの日記にある「11曲」という具体的な数字も気になっていて・・・これは挿入歌の曲数と合致する数なんですけど、トッポが言っているのは純粋に新たに吹き込んだ曲数なのかな、「銀河のロマンス」は何曲分のカウントかな(映画中盤に披露される制作途上設定のヴァージョンがなかなか良い!対して、一番最初に披露されるインスト・ヴァージョンは、タイガースの音ではないような気も・・・)とか、色々とね。
また、挿入曲には歌無しのインスト・ジャムセッションもあり、それら含め今後ゆっくり検証していきたいと考えていますが、現段階でこれらの中から「聴くべし!」と強く推しておきたい曲は、今日のお題「真赤なジャケット」以外ですとやはり「モナリザの微笑」「星のプリンス」の2曲でしょう。

「モナリザの微笑」はすべての楽器についてまったくの新録ヴァージョン。リードギターとハーモニカが美しく絡むアレンジが最高です。
また、1箇所ピーが勢い余って「ばこ~ん!」とクラッシュ・シンバルを強打している所があります。こういう演奏は「レコード」としては録り直しの対象かと想像しますが、「ザ・タイガースの音」としてはむしろこの方が素晴らしい、と思います。相当目立ってますから、じっくり聴けば分かりますよ~。
僕としてはこの強打部は、サビ後のコーラス部の一転して今度はシンバルを撫でるように演奏する”剣舞”箇所と合わせ、2011~2012年で実際に生で体感したピーのドラムス・・・その姿がありありと目に浮かんできます。
「モナリザの微笑」は今年末も必ずセットリスト入りするでしょうから、そこで実際に聴くことになる演奏に近い音源として、この映画ヴァージョンは予習には最適じゃないかなぁ。

「星のプリンス」は、みなさま映画のストーリーは完全に頭に入っているでしょうから、この曲が流れるシーンに合わせてジュリーが一部歌詞を変えたり、最後にいきなりトッポのソロ・ヴォーカル・パートが登場したり・・・という聴きどころは僕などが言うまでもないでしょう。

ちなみに今回の記事執筆にあたり改めて鑑賞してみて・・・映画自体で僕が一番印象に残った、と言うか「ウケた」シーンは

「今度は音波もたいしたことはない!」

のトコ。
シルヴィの円盤は、元々タイガースの歌・音楽が発する途方もないパワーの音波に引き寄せられて地球に落下してきたワケですよね。
で、いざシルヴィ達がジュリーを攫って地球から飛び立とうとする時に、ちょうどジュリー以外の4人によるコンサートが始まっていて、それを聴きながら従者ヘラクレスが言い放ったセリフです。
要は、タイガースは5人全員揃っていないとそのパワーも格段に落ちる、ということなんでしょうけど・・・なんだか「こっちを向いて」を歌うサリーのヴォーカル音波が「たいしたことない」と言われているように僕は一瞬錯覚してしまい、思わず笑ってしまったのでした
(←失礼にもホドがあります汗)

結局その後、円盤内のジュリー、それに会場のお客さんも加わってのタイガース・フルパワー音波で、敢えなく円盤は地球に吸い寄せされていくんですけど、まぁそのあたりのストーリーはみなさま当然ご存知ですか・・・。

DVDをお持ちでないみなさま、底抜けに楽しいタイガース・ムービー・・・ただ曲を聴くだけとしてもこんなに楽しめるんですから、これは購入しておきましょうね!

それでは、恒例のオマケです!
まずはMママ様所有のお宝切り抜きから1枚。

Img313


ジュリーの色は「赤」系なんですよね。『ゴレンジャー』に始まる東映戦隊シリーズでも、「真ん中に立つ主役の色は赤!」と決まっていますが・・・。
「真赤なジャケット」の歌詞は、ジュリーのキャラクターを想定したものなのかなぁ。

続きまして、先にメンバー5人の日記でご紹介した、P様所有の『第35回ウエスタンカーニバル
』パンフレット掲載のショットを3枚!

Wc35th02

Wc35th03

Wc35th10

トドメに、同じくP様所有のお宝切り抜きから2枚!

Img1942

Img1943

↑「撮影所ならではみられない光景だ」ってのはちょっと日本語としておかしいですが…。撮影時には、パジャマ衣装でウロウロしたりすることもあったんですねぇ。


さて次回更新では、今回の”セットリスト予想”シリーズに臨むにあたって秘かに目指していたある目標・・・それが達成の運びとなります。まぁ特に大したことではないんですが・・・。
予想としてはまた「星2つ」になるかなぁ。

次回更新が終わったら、その次は『Pray』大宮公演のレポ執筆が控えています。
タイガース・ナンバーの考察とジュリーのソロ・ツアー・レポートの同時進行は、切り替えもなかなかに大変。

ともかく全力で頑張るのみです!

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2013年10月 4日 (金)

ザ・タイガース 「君を許す」

from『THE TIGERS SINGLE COLLECTION』
original released on 1969、single
セットリスト的中自信度 ★☆☆☆☆


Tigerssingle

disc-1
1. 僕のマリー
2. こっちを向いて
3. シーサイド・バウンド
4. 星のプリンス
5. モナリザの微笑
6. 真赤なジャケット
7. 君だけに愛を
8. 落葉の物語
9. 銀河のロマンス
10. 花の首飾り
11. シー・シー・シー
12. 白夜の騎士
13. 廃虚の鳩
14. 光ある世界
15. 青い鳥
16. ジンジン・バンバン
disc-2
1. 美しき愛の掟
2. 風は知らない
3. 嘆き
4. はだしで
5. スマイル・フォー・ミー
6. 淋しい雨
7. ラヴ・ラヴ・ラヴ
8. 君を許す
9. 都会
10. 怒りの鐘を鳴らせ
11. 素晴しい旅行
12. 散りゆく青春
13. 誓いの明日
14. 出発のほかに何がある

from『JULIE』、1969

Julie1

1. 君を許す
2. ビロードの風
3. 誰もとめはしない
4. 愛のプレリュード
5. 光と花の思い出
6. バラを捨てて
7. 君をさがして
8. 未知の友へ
9. ひとりぼっちのバラード
10. 雨の日の出来事
11. マイ・ラヴ
12. 愛の世界のために

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セットリスト的中自信度
5段階内訳

★★★★★・・・絶対やります!
★★★★☆・・・おそらくやると思います。これからタイガースの勉強を始めようという方々は、ここまでは予習必須です。
★★★☆☆・・・かなりの有力候補ではありますが、全体の曲数や演奏形態の特殊性などの事情により、オミットされる可能性もあるナンバー達です。
★★☆☆☆・・・個人的にやって欲しいと考えている、渋い選曲群です。セットリストのサプライズとして、密かに期待しています。
★☆☆☆☆・・・おそらくやりません。この機に僕が個人的に記事に書いておきたい、というナンバー達です。

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みなさま、ジュリーのお正月LIVEチケットの申し込みはお済みですか?締め切り日(音楽劇のチケットとは期日が異なっています)が迫っていますよ~。

僕は悩みまくった結果、カミさんと共に初日のみを申し込みました。どうしても第2希望を千秋楽しか選べなくて・・・。中日渋谷が日程的に無理、遠征は経済的にキツいものですから。
とにかく僕は、会場の誰一人セットリストを知らない状態で幕を開ける「ツアー初日」に何としても行きたい派なのですよ。
無事に初日が当選したら、最後方の壁際席だろうがもうそれで大感謝・大満足。落選した場合は、もちろん第2希望の会場には参加しますが、あきらめきれずに初日のチケットを探しまくるだろうなぁ。

みなさまも、締め切り日をお忘れなきよう・・・。

さて、拙ブログでは現在、ザ・タイガース再結成のセットリスト予想シリーズということで更新を続けておりますが・・・今回は「これはさすがにやらないだろう」という、個人的に予想的中自信度「星1つ」しかつけられない曲を採り上げます。

ジュリーのソロLIVEと違い、タイガースのセットリスト予想については僕の的中自信度もそれなりに信憑性・・・と言いますか、先輩方もある程度は「まぁ、そうだよね」と賛同してくださることかと思います。
2011年の老虎ツアー・セットリスト予想の時も、「星5つ」とした曲はすべて採り上げられ、「星2つ」「星1つ」とした曲はセットリスト入りを見送られました。

ただ・・・2011年、予想記事を書いていなかった「割れた地球」(すぐ後に、ピーのドラムスをはじめとする演奏の素晴らしさをお伝えしたくて、ツアーが終わるのを待てずに”セットリストを振り返る”シリーズにて執筆しました)のことを考えますとね・・・。
僕はおそらく「割れた地球」の記事を老虎ツアー前に書いていたとしたら、セトリ入り自信度「星1つ」の最下評価に止めていたと思います。
3・11のことがありましたからね。歌詞の内容から「まさか」と思っていました。
ところがジュリーはこの曲を、「怒りの鐘を鳴らせ」と繋げるという大納得の曲順で採り上げ、僕の浅い考えを一蹴したのでした。

ですからいくら僕が今回「星1つ」の予想をしても、曲によっては全然違う予想をしている先輩方もいらっしゃるでしょうし、やっぱりね、今回の年末のセットリストにも「おお~っ!」とお客さんを驚かせるサプライズ的なナンバーを1、2曲は期待したいところ。
この先も僕は「星1つ」「星2つ」の曲を書いていくつもりですが、みなさま是非そんな期待感を持ちつつお読み頂ければ、と・・・。

ということで今日のお題は、タイガース・ナンバーとして渋い輝きを放ち、この曲を特に好きだと仰る先輩方もいらっしゃる・・・しかし事実上はジュリーのソロ・ナンバーと言って差し支えない、微妙な位置にあるシングル曲です。
例によりまして、考察文よりもお宝資料のご紹介がメインのような記事が続きますが・・・。「君を許す」、僭越ながら伝授です!

この曲は、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」と両A面扱いでタイガースのシングルとしてリリースされつつ、ジュリーのファースト・アルバム『JULIE』の冒頭1曲目という、ジュリーのソロとしても重要な位置づけにある珍しいナンバーですね。

アルバム『JULIE』の収録曲で言うと、3曲目の「誰もとめはしない」もタイガース・ヴァージョンが存在します。
しかしこちらが、シローのコーラスをフィーチャーし、演奏、アレンジもジュリーのアルバム収録ヴァージョンとは大きく異なっているのに対し(ただし演奏者は同一のようです)、「君を許す」の方はじっくり聴き比べると・・・これ、トラック自体も同じのようですね(マスタリングは微妙に違うようですが)。
つまり「君を許す」は、ジュリー以外のタイガースのメンバーがレコーディングにまったく噛んでいない曲、ということになりそうです。

今でこそシングル盤としては「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の方がA面色が強く、特に僕のような後追いでタイガースを勉強していったファンは、『シングル・コレクション』の曲順から、普通に「ラヴ・ラヴ・ラヴ」をA面、「君を許す」をB面とまずは認識してしまうのです。
(同様の理由で、「銀河のロマンス」がA面、「花の首飾り」がB面という認識もあります。でもこれは結局その認識で正しいのかな?)

しかし色々と当時のことを勉強していくと、当初レコード会社はこの”ジュリーのソロ”である「君を許す」の方をシングルA面とすることで、リリース企画を推し進めていたらしいことが分かってきました。
その点についての参考資料としまして、Mママ様からお預かりしている雑誌記事切り抜きをここでご紹介したいと思います。
メンバーそれぞれの活動が多極化してきた時期の、タイガースへの質問形式のインタビュー記事。参照して頂きたいのはジュリーへの質問の項ですが、せっかくの機会ですからメンバー全員の項も網羅して添付しておきますね。

(註:画像中の黄色い部分は僕が貼った付箋です。当時の雑誌は投稿読者の本名、住所などが普通に掲載されてしまっていますから、付箋でそれらの部分を伏せてスキャンしております)

Forgiveyou2

Forgiveyou3

Forgiveyou4

サリー、本当にマージャンが強かったみたいですね。
今でも卓を囲むことがあったりするのかな。『ドクターK』での、「ロンじゃ~ん♪ 中(チュン)ドラドラじゃ~ん♪」というセリフのシーンは最高でした・・・。

で、ジュリーの言葉・・・ちょっと困っているようなニュアンスを感じなくもないですが、基本的に「ジュリーらしい前向き」な発言で、『ジュリー祭り』以降に「ジュリーらしさ」を知っていった後追いファンから見ても、違和感の無い受け答えだなぁと思いました。
アルバム『ジュリー』についてのジュリーの心構えや「むずかしい感じ」という独特の表現などについては、この先執筆する別のアルバム曲のお題記事に考察を譲るとしまして、”次のタイガースのシングル”について・・・ジュリーはハッキリと、A面「君を許す」、B面「ラヴ・ラヴ・ラヴ」と位置づけていますね。そういうふうに会社から話を聞いていたのでしょう。

「A面はぼくのソロ」はジュリーのニュアンス的にはあくまでリード・ヴォーカリストとして、ということで・・・ジュリーに何より「ザ・タイガース」としての自分、タイガースあっての自分に強い思いがあることは、言葉の端々から窺えます。
ソロ・デビューにあたっての複雑な思いも当時はあったのかな。PYG期になるとその辺りのニュアンスが変わってきて、1971年末の日生リサイタル以降は、「バンドとソロの両立」への積極的な言葉も多くなってくるんですけど・・・。

いずれにせよ、「君を許す」は”タイガース・サウンド”からは逸脱している印象を受けるナンバーです。
同じ「歌謡曲寄り」のメロディーを擁するシングル曲として「嘆き」が挙げられますが、こちらは演奏面・・・特にベースやドラムスにロック的なグルーブがあります。「君を許す」はその点おとなしめですよね。左サイドにミックスされているトランペットなどは、いかにも「歌謡曲的」なアレンジになっています(もちろん、それが悪いというわけではありません)。
正直、僕はタイガースがこの曲を演奏しているシーンをイメージすると、CD音源との乖離を生じてしまいます。
「ただよう小舟」でトッポが「どこへゆく~♪」とサビメロを歌う部分のような演奏を妄想しちゃうんですよね~。

しかしながら、「君を許す」という楽曲自体はとても素晴らしい作品です。
確かに「ロック」とは言えないかも知れないけれど

やっと捜した 白い指より
Cm               Fm

その心がほしいのに
Cm                 Fm

愛が欲しいの   に
G7            Bdim   Cm

のキメ部でのジュリーのヴォーカルには、後に完全覚醒する3連符の「ロッカ・バラード」スタイルが見てとれますし、何よりこの曲、タイトルがまずカッコイイじゃないですか。「君を許す」ですよ!

『JULIE』収録全12曲は、安井かずみさん作詞・村井邦彦さん作曲で統一され、ZUZUの詞はジュリーの言うようにすべて「愛」がテーマ(その意味では「誰もとめはしない」1曲だけが異端のように思えますが、タイガース・ヴァージョンとの比較も含め、いずれキチンとその辺りについてお題曲記事の際に語ります)となっています。
ただ、「愛」がテーマと言ってもそれは「愛の素晴らしさ」ばかりではなく、曲によっては「愛の裏切り」について書かれた歌詞のインパクトもまた強く、「君を許す」はその中でも強烈な1編と言えるのではないでしょうか。だからこそZUZUの「君を許す」というタイトルや歌詞アプローチのセンスが光るのです。

村井さんの作曲は、「シングル」を意識してメロディーを練っているように思えます。ただ、ベクトルは「ジュリーのソロ」を向いている感じですけど。
この辺りは、アルバム『JULIE』からシングル・カット曲が無いということ、代わりにタイガース・ナンバーとしてのシングル・リリースに企画がシフトしていった経緯を想像させられますね。

さて、少し前まで僕の手元には、この「君を許す」のスコアとして、長崎の先輩からお借りしている『沢田研二のすべて』収載のの1種しか持っていませんでした。



Forgiveyou1

ハ短調の曲をイ短調に移調しているのは、「やさしく弾ける」というコンセプトでしょう。
このスコア集・・・「君を許す」の採譜については、他の収載曲と比較すると音的に怪しい箇所は少ないとはいえ、これは完全に超・初心者専用。
弾き語って一人悦に入るためには、これを叩き台として自力で細部の和音構成を煮詰めていかなければなりません。そのぶん考察にも時間がかかります。

しかし今夏、Mママ様からお預かりした大量のお宝資料の中から、おそらく雑誌の切り抜きでしょうか・・・「君を許す」の素晴らしいスコアを発掘したのです。


Forgiveyou6

2箇所ほど「Fm」であるべきところがが「Em」と表記されてしまっていますが(添付画像の中にも1箇所あります)、これは採譜ミスではなく、活字誤植。「F」が「E」に化けるパターンの誤植は、この時代のスコアにはとても多いのです。やむを得ないところですね。
何と言っても、当時のスコアとしては珍しく、ディミニッシュ・コードやナインス・コードを丁寧に拾った採譜は大変勉強になりました。
Mママ様、よくぞ保管されていらっしゃいました。まぁ、Mママ様が大切にとっておかれたのはスコアではなく、この切り抜きと裏表になっている、こちらのショットでございましょうが・・・。


Forgiveyou5

ジュリーの天性の「陽」の表情や、はちきれんばかりの躍動感、観る者を引き込む力から考えれば、「君を許す」よりは「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の方がやはり当時はしっくりきますか。その魅力は「イコール・ザ・タイガース」ということでもあったのでしょう。
ただ、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」と同時期にジュリーが「ソロなりの」歌い方を模索していたことを踏まえて、新規ファンは「君を許す」という曲の存在意義、個性、輝きを見逃してはいけませんね・・・。

それでは、ダメ押しオマケです!
今回もたくさん貼りますよ~。
ジュリーが現在、『Pray』ツアーで北海道を旅しているのにあやかりまして、お題曲とは時期が異なりますが、前期タイガースが公演遠征で北海道を訪れていた時の、貴重なショットの数々をどうぞ。
(こちらはP様所有のお宝資料となります)

Hokkaido14

Hokkaido13

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ジュリーとトッポは歌のはなしをしたり
サリーとタローは、ひとつの袋からお菓子を食べたり
ピーは雲とはなしをしたり…
青空の下で、草原の上で、タイガースのメンバーは1週間の北海道の公演旅行を、有意義にすごしました
(原文まま)

とのことで・・・いやぁ、楽しそうですよね~、ザ・タイガースin北海道。

って・・・え?
「ジュリーとトッポは歌のはなしをしたり」・・・ですと?
な、なんでこの二人がペアになってるの?

ということで最後に、僕が初めて見た瞬間に、思わず座っていた椅子からすべり落ちそうになったショットをご紹介して、〆にしたいと思います。
こちら↓

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なんですか、この・・・


「小学校の同じクラスの男の子と女の子が、いつもケンカばかりしているけど本当はお互い好き合っていて、運動会のフォークダンスでペアを組むことになって、つまんなそうな顔をしているけど心の中ではときめくまくりながら腕を互いの腰に回してぎこちなく歩いてる、の図」

みたいな感じの衝撃のショットは!(全然違)
この構図をリクエストしたスタッフ、カメラマンさんGJ!ですが、2人とも完全に顔がひきつってるなぁ・・・。

ともあれ、このショットから40数年が経ちました。
2人は今度こそ仲良く歌の話をしています・・・よね?


それでは次回更新は・・・すみません、「星1つ」予想のお題が続きます。
「ザ・タイガース、隠れた名曲多過ぎ!」ということで・・・厳密にはセットリスト予想記事とは言い難いですが、また頑張って書きます~。

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