« 2013年4月 | トップページ | 2013年6月 »

2013年5月

2013年5月30日 (木)

沢田研二 「ジュリアーナ」

from『KENJI SAWADA』、1976

Kenjisawadafrance

1. モナ・ムール・ジュ・ヴィアン・ドゥ・ブ・モンド(巴里にひとり)
2. ジュリアーナ
3. スール・アヴェク・マ・ミュージック
4. ゴー・スージー・ゴー
5. 追憶
6. 時の過ぎゆくままに
7. フ・ドゥ・トワ
8. マ・ゲイシャ・ドゥ・フランス
9. いづみ
10. ラン・ウィズ・ザ・デビル
11. アテン・モワ
12. 白い部屋

--------------------

え~、まずはジュリー界の時事ネタを少しだけ。
『鴨川ロマンス』からの情報で僕が一番萌えたのは、サリーの「デビュー曲は20テイクくらい演った」というお話でした。「僕のマリー」のことですね(それともB面「こっちを向いて」も含めてそういう感じだったのかな?)。
バンドが一発録りだったので、誰かが間違うとまた最初からやり直し、ということだったようです。

1967年初めと言えば、まだまだ4トラック・レコーディングの時代。そりゃあ、少なくともベーシック・トラックは一発録りのはずです。
おそらくバンド演奏とジュリーのヴォーカルをPANで2トラックに振ってまず1発。残りの2トラックがコーラスかなぁ・・・。あくまで想像ですけど。
年末が近づいたら、そのあたりにも気をつけて初期のタイガース・ナンバーをじっくり腰を据えて聴き返してみたいものです。

それでは本題。
拙ブログでは現在、「みなさまからのリクエストにお応えする週間」ということで頑張っております。
今日は、昨年執筆した「巴里にひとり」の記事へのコメントで頂いたリクエスト曲(nekorin様ありがとうございます!)を採り上げましょう。
「ジュリアーナ」、伝授!

このアルバムのフランス語ナンバーは、全7曲中5曲までもが転調構成を採り入れています。
しっとりとしたいかにも「シャンソン風」の曲想から転調のアイデアを多用しているのかと思いきや、「ジュリアーナ」のような軽快なポップ・ロック・チューンでもそれが見られるのは少し意外のようですが、これがまたカッコイイ転調なのです。

ちなみにこのアルバム、収録曲のいくつかについてはキーの特定ができません(テープのピッチが演奏通りではなくマスタリングの段階で上下されているため。60~80年代のレコード音源には、ジュリーに限らずこうした例が数多くあります)。
「ジュリアーナ」の場合も、「A♭」(=変イ長調)と「A」(=イ長調)の間のピッチとなっています。
マスタリングされたピッチはどちらかと言うと変イ長調のキーに近いのですが、イントロでフィーチャーされるアコースティック・ギターの「トニック→add9→sus4→トニック→add9→トニック」のリフがロー・コードでの演奏になっていますから、僕はイ長調でこの曲を採譜することにしました(変イ長調だと、このアコギ・リフはチューニングを半音移動させない限りロー・コードでの演奏が不可能なのです)。
イ長調の採譜ですと、転調移行部含め、いかにもギターで作曲したんだなぁ、という感じもしますしね。

転調の繋ぎ目を見ていきますと

♪ sur toutes les routes de la vie
  A                           C#m7

  j'etais seul et je n'ai rien appris
  F#m                       D

  Aujourd'hui Juli Juliana
             B7

  Je Voudrais revenir chez toi ♪
           E

Aメロ2回し目のここまでがイ長調。王道の進行です。
続いて

♪ Juliana J'ai besoin de ton amour
  C                 E7

  Juliana sans toi je compte les jours ♪
  Am                 F                  G

ここはハ長調。
イ長調からハ長調、という転調の理屈は、移調比較しますとこのアルバムの他のフランス語ナンバーと同じなのです。違いは「Dm7」「F」といったサブ・ドミナントの和音を経過せずにいきなり「C」に跳んでいること。穏やかに流れていくような転調ではなく、豪快な力強い転調と言えます。

そしてサビ部の最後

♪ Juli Juli Juliana   Juli Juli Juliana
  C              F      C               G7

  Juli Juli Julia    na ♪
  C              E7  A

の「na~♪」でイ長調へ帰還。
そのまま、イントロと同じ「A→Aadd9→Asus4→A→Aadd9→A」のリフへ。

で、このコード・リフなんですが、イントロは完全なアコースティック・ギター・ソロであるのに対し、1番と2番の間、その後のエンディング部はいずれもエレキ・ギターとオーケストラが左サイドから助っ人に入ります。
このエレキのミックス音量が、うっかりすると聴き逃してしまうくらい小さいんですよね(ピアノはさらに小さいですけど)・・・。アコギの方はリフ部になると「えいっ!」とフェーダー上げてるっぽいんですけど。
ともあれ、バラード調の「巴里にひとり」ではアコギが不在で、ロック調の「ジュリアーナ」がアコギ強め、というアレンジにはとても好感が持てます。

アレンジと言えば、これはおそらくレコーディング本番での咄嗟のアドリヴなんでしょうけど・・・2’21”あたりから突如炸裂するドラムスのフィル・インが素晴らしい!
同じ演奏部は曲中に4度登場しますが、このフィル・インが入るのはたった1回きりです。是非注意して聴いてみてください。

さて、「ピュア」という言葉がピッタリのフランス語ジュリー・ヴォーカル・・・この「ジュリアーナ」での一番の聴き所は、ジュリー自身が「じゅり、じゅり」と惜しげもなく連呼している、ということに尽きると思いますが・・・ここではその他に、ちょっと専門的なヴォーカル考察もしてみたいと思います。

この曲のヴォーカルは、ダブル・トラックです。
1曲目「巴里にひとり」のシングル・トラックと比較すれば歴然。ジュリーの声が二重になっているのは、みなさまもすぐに聴きとれるでしょう。
特筆すべきは、これが当時流行の機械による複製トラックによるもの(「バイ・バイ・バイ」記事参照)ではなく、ジュリーが2回歌ったトラックを重ねている(「人待ち顔」記事参照)、ということです。
何が凄いって、この曲の2つのヴォーカル・トラックにはほとんどズレが無いんです!

「同じ人が2度歌ったトラックを重ねる」手法の場合、どうしても細部に声の出し方やブレス、音の伸ばし具合に違いが出ることが当たり前です。それが逆にダブル・トラックならではの味わいになったりもするんですが、「ジュリアーナ」のダブル・トラックはそうしたヴォーカル・ニュアンスの違いを見つけることが非常に難しい。
2番Aメロになってようやく微妙な違いを辛うじて確認することができますが、これは僕が素人ながら長年のレコーディング経験があるから気づけることで、普通のリスナーが普通に聴いていたらまず聴き分けることはできないと思います。ジュリーのヴォーカルはそれほど細にまで行き届いているのですよ。

ジュリーのフランス語ナンバーの大きな魅力は、その無防備なまでの素直さ、純粋さです。

これは若き日のジュリーの特性・・・実際は全然そんなことはないのに「まだまだ自分は歌が下手だ」と思っていて、ならば、と「歌う」ことに一心になる。ジュリーは決して「自分の渾身の歌の表現でフランスの人達に気持ちを届けよう」などとは微塵も考えていません(と、僕は感じます)。
プロが作った素晴らしい楽曲を、音程に気を配り、徹底的に発音を練習し、ただただ素直に「歌」として歌う・・・余計な過信や自己主張はまるで無く、無心に歌うのです。至らぬ(と本人は思っている)歌唱力を何とか努力で補おうと全力を尽くした結果、寸分違わぬヴォーカル・テイクを何度でも繰り返し歌えるまでに身体に叩き込んだのではないでしょうか。

そうして歌われた曲は、たとえネイティヴな発音でなくともフランス人のリスナーにビシビシと伝わるものがあったでしょう。
「なんだか、東洋のカワイイ男の子が一生懸命フランス語の曲を歌っていて、凄く良い!」
という現地の感覚が、ジュリーのフランスでの成功の要因だったのかな、と僕は思います。

僕はこれまで、外国人ヴォーカルの邦楽で逆のパターンを何度も感じたことがあります。日本語の歌詞そのものを完全に理解しているとは思えないんだけど、下手に日本人が情感を込めて歌うより自然に歌詞の内容が伝わってくるなぁ、と感じる曲が結構あるのです(代表例は何と言っても「私だけの十字架」)。
ジュリーのフランス語ナンバーって、彼の地の人達にそんなことを感じさせる力があったんじゃないかなぁ。

持って生まれた美貌、アイドル的人気に胡坐をかくことなく、溺れずに「歌うこと」に対して常に真摯に立ち向かう・・・若い頃から積み重ねてきたそんな努力あっての今のジュリーなのだ、と改めて思います。
『サーモスタットな夏』ツアーDVDでのMCなどで聞かれる「これもひとえにワタシの努力!」というおどけたようにして笑いを誘うジュリーの言葉は、実は間違いなく本当のことなんですよね。だからこそ僕のような新しいファンが世代を問わず増え続けているのです。


最後に。
いつもブログで考察記事を書く際、歌詞カードを改めて熟読したりすると、それまでずっと見逃していた再発見があったり、思いもよらぬ誤植とかに気がついたりするものですが・・・今回もありましたよ~。

まず、自分の無学ぶりを思い知った細かい再発見がありました。
アルバム『KENJI SAWADA』って、フランス語曲と英語曲の収録曲については歌詞カードに日本語訳も載っていますよね。
「ジュリアーナ」の訳詞を、「いかにもこの時代ならではの日本語訳だなぁ」とか考えながら読み進めていき、ふと

(ルフラン)
ジュリアーナ ぼくはきみの愛が必要だ
ジュリアーナ きみなしでぼくは 何日もすごしてきた

という表記に気がつき、「そうか!」と。
いやぁ、日頃から仕事で知ったJ-POPのタイトルや歌詞で「ルフラン」ってフレーズを結構頻繁に見かけたりしていたのですが、意味については深く考えたことなかったなぁ。言われてみれば、これはフランス語独特のフレーズです。
「リフレイン」のことなんですね。

日本語で「くり返し」と書かずにカタカナで「ルフラン」なんて表記するあたり、ちょっと気どった歌詞カードにしたかったのかな?
ともあれ、今さらながら勉強になりました。

もうひとつ、ちょっと酷い誤植を発見。
歌詞カード冒頭・・・収録曲クレジット一覧のページです。

Juliana1

何処が間違っているか、お分かりになります?

日本人の作詞・作曲クレジットがローマ字になっているのは良いのですが・・・「追憶」と「白い部屋」の作詞者が逆!
単に間違っているのではなく入れ替わっている、というのは珍しいパターンかな~。
最初にクレジット作成した方が何か思い違いをして、それが校正段階もすり抜けてしまったのでしょうか。
僕などはかつて、『ROYAL STRAIGHT FLUSH 3』歌詞カードの「あなたへの愛」の作曲者表記が誤ってジュリーになっていたのをしばらくの間信じきっていたことがありましたし・・・こういうクレジット表記のミスは、再版の際にマメに修正して欲しいなぁと切に思いますね・・・。

あと、1番Aメロの最初の歌詞なんですけどね。これは誤植・・・なのか僕が無知なだけなのか。

J'ai Clhouru arres ma liberte

(訳詞は「ぼくはぼくの自由を追いかけた」となっています)

と書いてあるように僕には読めるんですけど、太字で表記した単語・・・「Clhouru」ってのはかなり不自然なスペルだと思うんですよね。子音が3つ続いてる・・・しかも最初の「C」が大文字になってるのもワケ分かりません。
ただねぇ・・・僕の手持ちの歌詞カード、ちょっとこの部分の印刷が擦れているんですよ。「Clh」という並び自体が僕の読み違いかもしれません。
何と言っても、ここ2年で急激に進行してしまった老眼(泣)。
メガネ外さないと歌詞カードが読めず、歌詞を書き写そうとすれば今度はメガネかけないとPC画面が見えず・・・という情けない状況。普段はまぁ、大体の歌詞は把握していますから、歌詞カードが見にくくてもほんの数箇所の確認だけで事足りていたのでさほど苦労は感じなかったのですが・・・今回はなにせフランス語でしょ?
スペルを1コ1コ確かめながらの書き写しでしたから、本当に往生いたしました。

そんなこんなで、「Clhouru」の謎を伝授してくださる方を切望しております(高校で英語ではなくフランス語を履修なさったと仰っていたしょあ様に期待!)。
たぶん「追いかける」という意味の過去分詞か形容動詞が来るべき箇所のはずなんですけど・・・。

それでは、次回更新からいよいよ”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズへと突入いたします。
今年の6月は仕事がバタバタしそうなので、4~5月と比べると執筆速度はかなり落ちてしまうかと思いますが、なんとか週に1回の更新をメドに4、5曲ほど書いておきたい(お題はもうだいたい決めています)。
ちょうど今、みなさまからのリクエストお題ということで3曲続けて書いてきています。せっかくですからしばらくそれは継続して、みなさまからリクエストを頂いていた多くの曲の中から、今回の僕のセットリスト予想として「これは!」と思うお題を採り上げてみることから始めていきたいと考えています。

と言いつつノッケから、「それを予想曲に挙げるとは・・・」という、みなさまア然な変化球をご用意させて頂く予定。
どうぞお楽しみに!

| | コメント (14) | トラックバック (0)

2013年5月26日 (日)

沢田研二 「別れのテーマ」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』収録
original released on 1972 
シングル「あなただけでいい」B面

Singlecollection1

disc-1
1. 君をのせて
2. 恋から愛へ
disc-2
1. 許されない愛
2. 美しい予感
disc-3
1. あなただけでいい
2. 別れのテーマ
disc-4
1. 死んでもいい
2. 愛はもう偽り
disc-5
1. あなたへの愛
2. 淋しい想い出
disc-6
1. 危険なふたり
2. 青い恋人たち
disc-7
1. 胸いっぱいの悲しみ
2. 気になるお前
disc-8
1. 魅せられた夜
2. 15の時
disc-9
1. 恋は邪魔もの
2. 遠い旅
disc-10
1. 追憶
2. 甘いたわむれ
disc-11
1. THE FUGITIVE~愛の逃亡者
2. I WAS BORN TO LOVE YOU
disc-12
1. 白い部屋
2. 風吹く頃
disc-13
1. 巴里にひとり
2. 明日では遅すぎる
disc-14
1. 時の過ぎゆくままに
2. 旅立つ朝
disc-15
1. 立ちどまるな ふりむくな
2. 流転
disc-16
1. ウィンクでさよなら
2. 薔薇の真心
disc-17
1. コバルトの季節の中で
2. 夕なぎ
disc-18
1. さよならをいう気もない
2. つめたい抱擁
disc-19
1. 勝手にしやがれ
2. 若き日の手紙
disc-20
1. MEMORIES
2. LONG AGO AND FAR AWAY
disc-21
1. 憎みきれないろくでなし
2. 俺とお前
disc-22
1. サムライ
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
disc-23
1. ダーリング
2. お嬢さんお手上げだ
disc-24
1. ヤマトより愛をこめて
2. 酔いどれ関係
disc-25
1. LOVE(抱きしめたい)
2. 真夜中の喝采
disc-26
1. カサブランカ・ダンディ
2. バタフライ革命
disc-27
1. OH!ギャル
2. おまえのハートは札つきだ
disc-28
1. ロンリー・ウルフ
2. アムネジア
disc-29
1. TOKIO
2. I am I(俺は俺)
disc-30
1. 恋のバッド・チューニング
2. 世紀末ブルース
disc-31
1. 酒場でDABADA
2. 嘘はつけない
disc-32
1. おまえがパラダイス
2. クライマックス
disc-33
1. 渚のラブレター
2. バイバイジェラシー
disc-34
1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. ジャンジャンロック
disc-35
1. 麗人
2. 月曜日までお元気で
disc-36
1. ”おまえにチェック・イン”
2. ZOKKON
disc-37
1. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
2. ロマンティックはご一緒に
disc-38
1. 背中まで45分
2. How Many "Good Bye"
disc-39
1. 晴れのちBLUE BOY
2. 出来心でセンチメンタル
disc-40
1. きめてやる今夜
2. 枯葉のように囁いて
disc-41
1. どん底
2. 愛情物語
disc-42
1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection
disc-43
1. AMAPOLA(アマポーラ)
2. CHI SEI(君は誰)
bonus disc
1. 晴れのちBLUE BOY(Disco Version)

---------------------

世間は『同棲時代』の話題で持ちきりです。
が、我が家では視聴することができませんので、完全に話に乗り遅れております・・・。

さらに・・・時間的に関西のみなさまはこれから『鴨川ロマンス~ぼくらのザ・タイガース』をお聴きになる、と。いいなぁ・・・。
とにかく、年末のザ・タイガース再結成はまだまだ広い世間に浸透しきってはいないようですので、このような番組が今後も次々と企画されることを望みます。

さて。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、サイドバー表示のリンクのコーナーに、J先輩のaiju様のブログを先日追加登録させて頂きました。
aiju様のブログではしばらく前から拙ブログをリンクしてくださっていて、僕は自分のブログをリンクしてくださっているサイト様について、お礼を込めて相互リンクとさせて頂く方針をとっています。遅れましたが、この度ようやくお礼ができました。

リンクを貼らせて頂く際、僕はいつも相手のサイト様に(勝手に汗)キャッチをつけさせて頂いています。”『○○ジュリー』なサイト様”ということで、自分なりのリクペクトを表すべくウンウン言いながらキャッチを考えます。
例えばいわみ先輩・・・もとい、いわみ先生の時は、年長で僕などより遥か格上の男性ジュリーファンのブログ様ということで、自分のハンドルネームと掛け合わせ、「いくらダイナマイトを投げつけてもビクともしない大怪獣」という意味を込め(汗)、「ビースト・ジュリー」とひねり出しました。

そしてこの度のaiju様へのリスペクトは、考え抜いたのち「パッセージ・ジュリー」というキャッチに託しました。
「パッセージ」と言えば「通過」あるいは「一節」といった意味合いの英語を想起するのが一般的かと思いますが、僕が使用したのはその意ではなく、音楽用語としての「パッセージ」です。
ロックでは主にギターについて語られることの多い用語で、フレーズからフレーズ、その変化の狭間に採り入れられる、目立ちませんがとても重要なテクニックのこと。
これを、長い歌人生でめまぐるしく変化するジュリー、その変化のひとつひとつの瞬間をいつも変わらないスタンスで、しかし臨機応変に暖かく見つめているジュリーファンの先輩が多くいらっしゃる・・・僕はaiju様のブログにも勝手にそんなイメージを持っていたものですから・・・。

ちなみに僕は、拙ブログをリンクしてくださっているサイト様を完全に把握しているわけではありません。
もし、僕が相互リンクをしていないそうしたサイト様がありましたら、それは僕自身が気づいていないだけなのです。申し訳ありません・・・。お知らせ頂ければありがたいです(汗)。

さて。
今日はaiju様のブログリンク記念お題の考察記事です。
曲の内容としましては、前回に引き続いて歌詞が悲しいテーマのお題となりますが・・・やはり前回同様、ジュリーの素晴らしいヴォーカルや素晴らしいアレンジが楽しめる”隠れた名曲”だと思っています。
「別れのテーマ」、伝授です!

aiju様には、アルバム『sur←』から「緑色の部屋」のリクエストを頂いているのですが、これはなかなか特殊な構成の曲で・・・採譜、考察に時間がかかりそうです。
ただ、そのリクエストを頂く少し前にaiju様は「別れのテーマ」についてブログに書いていらして、そこで僕の名前を出してくださったことがあります。
この曲のホーンがトランペットなのかどうか、と「まだ記事を書いていないようだったらいつか解説して欲しい」と僕に宛てて書いてくださったのでした。
以来、この珠玉のジュリー・シングルB面曲について是非書かねば、と考えつつ時間が過ぎてしまっていました。今日はせっかくの機会・・・遅ればせながら書かせて頂きますね。
(5月30日註:上記の「トランペットかな?」の記事を書いていらしたのがaiju様ではなくもじもじそわそわ様だったことが発覚・・・エクセルのリクエスト一覧に書き込んだ昨年の時点で既に僕が勘違いしていたことが分かり、青ざめ卒倒しそうになりました。本来なら切腹モノの大変に失礼な勘違いでしたが、おふたりがお友達同士だったこともあり、それぞれ優しい言葉をかけてくださいました。ホント、今後このようなことが無いように気をつけなければ・・・)

「別れのテーマ」のホーン・セクションでひときわ目立つ印象的なフレーズを吹いている楽器は、トランペットで間違いありません。
ホーン・セクションの構成はおそらくトランペット2本とトロンボーン2本でしょうか。右サイドの「ドレミラ~、シドレシ~、ソラシド♪」というテーマ・フレーズがファースト・トランペットですね(このフレーズがリード・ギターとトランペットで追いかけっこをするのは、同じ楽器で「ド」の音が続くのを避けたからだと思うのですが・・・深読みかな~)。
擬似音で説明しますと、右サイドの「ぱぱ~♪」という高い音がトランペットで、左サイドの「ぶ~~♪」というやや低めの音がトロンボーンです。ホーン・セクションにおいて、この2つの楽器は「勇ましい系」なのだと中学校のブラスバンドで教わりました。

このアレンジには、前シングル「許されない愛」の大ヒットを受け、その雰囲気を受け継ぐ狙いがあったのではないでしょうか。
確かジュリーも「許されない愛」について、「こういうブラスロックを歌うのは自分に合ってる気がする」と、何処かで語っていましたよね。ジュリー自身も周囲のスタッフも手応えを感じていた、ブラスロック・アレンジによる、男女の情愛を描いた短調の激しいナンバー・・・掘り当てられたその鉱脈を皆で大事に育んでいきたかったのでは、と僕は想像します。

「別れのテーマ」は、いわゆる”歌謡曲”だと感じます。なにせ作曲がかの平尾昌晃さんですし、プロフェッショナルによる王道の歌謡曲と言って良いと思います。
僕はよくジュリーのことをロックだロックだと言いますけど、一般的にジュリーが”歌謡曲”や”アイドル”として語られることには実は何の抵抗もありません。それは紛れもなくその通りなのですし、とても素晴らしいことなんです。
ただ、それをして「ロックではない」と言う人がいれば反論する・・・要は、歌謡曲であれロックであれ、ジュリーはジャンルを超越した歌手だということ。ジュリーが歌えばそれはジュリーの歌である、と。
もちろん僕などはジュリーにロックな面を大いに感じていて、「アイドル歌謡曲・・・確かにそうだけど、ジュリーってそれだけじゃあないんだなぁ」という思いを常に持っているだけのことなんですね。

だから僕は、”歌謡曲のジュリー”も大好物。
しかもこの「別れのテーマ」の頃のジュリーの歌謡曲って、後の阿久=大野時代とはまた全然違うじゃないですか。
時代によって表情を変えるジュリーの魅力。それを味わうことが後追いファンとして大きな楽しみであり、時代時代で変化してきたジュリーをタイムリーで見つめてこられた先輩方へのリスペクトにも繋がるのです。

さて、「別れのテーマ」のヴォーカルが示すように、この頃からジュリーが、いわゆる”歌謡曲的な”オーケストラ・アレンジであっても、ミックスでブラスが強調されているトラックに歌入れすると、豪快なトランペットに呼応するようにプラス・アルファの表現を心がけて(或いはジュリーの持つ資質が自然にそうさせるのかもしれませんが)いたことは確かです。
例えば、メロディー部以外のシャウト、吐息などがヴォーカルに加わってくることが挙げられます。「別れのテーマ」ですと、サビ部最後のロングトーンには必ずシャウトでのシメの表現がついてきます。

♪ 抱けない  明日から~~~ぁあっ!
  Dm     Am  E7       Am

というやつですね。
「トランペットの音が鳴っているなら、それは勇ましさ、激しさを持つ歌である」という解釈が、「許されない愛」を起点にジュリーの中で目覚めていたのではないでしょうか。
(このヴォーカル・パターンは次第に、ブラスの有無に関係なく、ハードな曲想のナンバーで積極的に採り入れられるようになります。「外は吹雪」「若き日の手紙」・・・大胆に進化していきますよね)

また、1’15”と2’31”で炸裂するのが、ジュリー必殺の吐息攻撃です。
これも曲がブラス・アレンジであるが故の表現だと思われます。と言うのは、ジュリーは金管楽器のフレーズの合間を完璧に縫って、自分の声がブラス・アレンジの妨げにならないないばかりか、相乗効果を生むジャストのタイミングでキチンと喘いでいるからです(「キチンと喘ぐ」というのも変な言い方ですが、ヴォーカリスト・ジュリーの繊細さ、几帳面さを僕は強調したいのです)。
特にエンディングの方は、かなり難しいタイミングでの吐息挿入です。若きジュリーの「演奏とのバランスをとる」非凡なヴォーカル・センスを改めて感じます。

レコーディング後、ヴォーカルの入った完成テイクを聴いたトランペット奏者も、「おお、キッチリこっちの休符に合わせてきてるな!」と、嬉しく思っんじゃないかなぁ・・・。

で、いきなり話は逸れるんですけど。
ここで、僕にとって”勇ましさの象徴”たる楽器・・・トランペットにまつわる個人的な話をさせてください。

僕は元々、『太陽にほえろ!』などの刑事ドラマのサウンドトラックに憧れてブラスバンドを志したのですが、当時は「一番カッコイイのはドラムだ」と考え、部でもスネアドラムを選択志望してしまったのですね。
もちろんドラムスのカッコ良さというのは今に至るまでずっと心にあるのですが、ド田舎の中学校の吹奏楽部で演奏される曲のスネアドラムって・・・パートとして凄く地味なんですよ・・・入部前に想像していたのとは全然違いました。
トランペットなどの金管楽器が豪快なメロディーを演奏する影で、延々と「ん・た、ん・た、ん・た、ん・た・・・」と裏拍を刻み続けるわけです。さすがに飽きて、「ん・たかたかたか♪」などと勝手にフィル・インをつけると、当然ながら怒られてしまいます。
今考えるとそれはそれで演奏の楽しみもあったはずですが、目立ちたがりのガキだった僕はテンション下がりまくり・・・「どうして自分は金管楽器を志望しなかったのか」と後悔ばかりしていたものでした。

それから20年ほど経ちまして。
たまたまテレビで映画『スウィング・ガールズ』の放映を観た僕は、「これは面白い」と感動してすぐにDVDを購入。
楽器未経験だったメインの女優さん(黒1点の俳優さん含む)達が、映画撮影と並行して厳しい練習の末、配役上での担当楽器を見事マスターし映画内では吹き替え無しで実際に演奏している、ということを特典ディスクで知りました。

『スウィング・ガールズ』キャストのメイン女優さん達は、当時まだブレイク前の方々でしたが、今思えばとても豪華なメンバーです。
テナー・サックスの上野○里さん、トランペットの貫○谷しほりさん、トロンボーンの本○屋ユイカさん。みなさん現在大活躍の女優さんですね。
また、”黒一点”として劇中ではピアノを担当した俳優の平岡裕太さんは最近、僕にとって思い入れの深い刑事ドラマのリメイク『特捜最前線2012』で主演されています。

そんな女優さん達が、多忙極まる撮影の間を縫って、一から金管楽器を勉強しマスターした・・・必死になってやればできるんだ、自分も今から始めても遅くないんじゃないか、とその気にさせられた僕はいきなりトランペットを衝動買いし、教則本などを読みながら独学で勉強を始めたのでした。

Wakare2

室内で吹くには大音量過ぎる楽器ですが、幸い勤務先の環境に恵まれていたので、毎日昼休みに30分程度の練習。
まず普通に「ぱ~ん♪」と音が出るようになるまで2日かかったりしてから、曲の実践練習に移行。好きな刑事ドラマの曲を自分なりに易しく採譜して、1ケ月ほど経つ頃にはそれなりに曲の格好をつけられるようになりました。

ただ、僕には所詮格別の才能があるわけでもなく、独学の限界か・・・やがて大きな壁にブチ当たります。

3本ピストンのトランペットは基本、6つのフォームですべての音階を網羅します。同じフォームでも、マウスピースに当てた唇の形を変えることで、何種類もの違う音を出せるのですね。
イメージとしては、高い音は「ぴゅ~!」、低い音は「ぼ~」といった発声の際の唇の形で対応します。
そんな中僕はどうしても、極端に高い音と、極端に低い音がうまく出せなかったのです。

まぁファースト・トランペット(一番オイシイ旋律を受け持つパート)の場合、極端に低い音というのは楽曲において登場頻度が少なく(それはセカンド以降のパート或いはトロンボーンなど他金管楽器の役割ですしね)、悩む機会もあまり無いのですが、カッコイイ雄叫びのような高音は間違いなくトランペット演奏の醍醐味。それが自由に表現できない、という状況は困ったものです。

実は映画『スィング・ガールズ』の物語中でも、トランペット役の貫○谷しほりさんが同じ壁に遭遇します(そしてそれは実際の練習においてもそうだったようです)。
劇中で貫○谷さんは、なんとか「ハイB」という高い音を出そうと雪景色の中一人練習に励んでいたところ、トランペットの中に潜んでいたネズミ(楽器が格安の中古、という設定なのです)が突如鼻先に顔を出し、ビックリして思わず出した音がハイBの唇の形だった、というメチャクチャに痛快な方法で壁を克服するのです。
その後、「高い音が出せるおまじない」ということで、彼女はネズミのぬいぐるみをトランペットに装着して物語のフィナーレであるステージ本番に臨み、見事成功するのですが・・・それにちなんで、『スウィング・ガールズ』のDVDにオマケグッズとしてネズミのぬいぐるみがついていました。

Wakare3

僕も何とかあやかろう、とコレをつけて懸命に練習したんですけどねぇ・・・結局任意の演奏曲中で最高音部を「うまく出せる確率」は、5割にも満たないままでした・・・。

話を戻しまして、当然ながら「別れのテーマ」のトランペットには、僕が到底出しえないような高音がバシバシ登場します。
こういったことは、自分が実際に金管楽器を扱ってみるまではまるで見えていなかったことで、その点で言うとまだ記事未執筆の「許されない愛」は凄まじいことになっています。
また、”ホーン・アレンジをフィーチャーしたB面曲”を引き継いだ形となった次作「愛はもう偽り」では、確かに曲想やブラスの噛み方は「別れのテーマ」を踏襲したような作りですが、アレンジとミックスで強調されているのはロック色の強いバンド演奏。
このように、同じ曲想を引き継いでいる間にも、ジュリーの音楽は目まぐるしいスピードで細かな変化を遂げていくわけですが・・・それらについてはまたいずれの機会に。

最後に。
「別れのテーマ」は、先輩からお借りしている貴重なスコアが手元にあります。

Wakare1


シンコー・ミュージック刊
『沢田研二/ビッグヒット・コレクション』より

以前「青い恋人たち」記事などで紹介させて頂いたように、何と言ってもこの本はシングルB面の宝庫。素晴らしい選曲です。
ただ、「別れのテーマ」については相当に大らかな採譜になっていますねぇ・・・。
例えばサビの

♪ もう引き返せない道 一人ずつ行く道
  Am                   G                      F

  あなたをこの胸に ♪
                     E7

ここでの「F」がスコアでは抜けているのです。
さすがに4小節ずっと「G」で押し通すというのは、ちょっと・・・。

それでは、次回更新もみなさまから頂いているリクエストにお応えしてのお題です。
拙ブログでは6月に入ったらツアー・セットリストの予想記事へと移りますから、5月最後の更新となる予定の次回記事では、「とても今後のLIVEで聴けそうもない曲」の極みのようなナンバーを採り上げたいと思っています!

| | コメント (10) | トラックバック (0)

2013年5月22日 (水)

沢田研二 「裏切り者と朝食を」

from 『JULIE SONG CALENDAR』、1983

Juliesongcalender

1. 裏切り者と朝食を
2. ボンヴォワヤージュ
3. 目抜き通りの6月
4. ウィークエンド・サンバ
5. Sweet Surrender
6. CHI SEI(君は誰)
7. YOU'RE THE ONLY GIRL
8. ラスト・スパーク
9. 一人ぼっちのパーティー
10. SCANDAL !!
11. す・て・き・にかん違い
12. Free Free Night
13. BURNING SEXY SILENT NIGHT

---------------------

前回記事の「CAFE ビアンカ」など正にそうですが、このところ僕の記事はまたまた大長文傾向にあるようです。
思うところあって、最近は定期的に矢継ぎ早の更新を心がけております。息切れしてしまわないように、ほどほどにコンパクトな文量を心がけないと・・・。

しばらくの間、拙ブログではみなさまからのリクエストにお応えする形でお題を採り上げていこうと思います。
現状、本当に多くの曲のリクエストを頂いていて、その都度エクセルファイルにメモしているのですが、お待たせしまくっています(汗)。少しづつでも書いていかないと、ということで頑張ります!
今日は、かつて里中満智子さんのファンだった、と仰る先輩からリクエストを頂いていた曲を採り上げます。

アルバム『JULIE SONG CALENDER』から。
「裏切り者と朝食を」、伝授!

まず最初に、お題とは関係の無い話なのですが・・・。
僕はいつも楽曲考察記事の冒頭に収録アルバムの曲目を添え、過去に執筆済の楽曲お題記事へのリンクを貼らせて頂いています。
今回その中に「SCANDAL !!」の記事へのリンクがあります。
僕は自分の書いた過去記事を振り返る機会が普段は少なく、こうしてリンクを貼る際に「あぁ、こんなことを書いていたんだなぁ」と軽く目を通し、みなさまからのコメントを懐かしく読み返すことがあるのですが・・・「SCANDAL !!」の記事を振り返って、複雑な思いに襲われました。
あの東日本大震災・・・それはこの、恥ずかしげもなく脳天気でおちゃらけた「SCANDAL !!」の記事を更新した直後のことだったんですよね・・・。

コメントでのみなさまとの当時のやりとりを読み返し、何とも言えないいたたまれない気持ちになってしまいましたが(しかも、「ロックンロール・マーチ」の記事を今年中に書く、とかお返事してしまっているし・・・ぬこ様すみません。あの曲は僕の世代にとっては超・スーパースターのアントニオ猪木さんの「DA~!」の歴史を詳しく勉強してから書かせて頂きます汗)、少なくとも「あの日のことを決して忘れていない」と確かに今言えることだけが、自分にとっては救いです。
ジュリーのおかげです。
きっと6月からのツアーでは、再びそれを強く実感することになるでしょうね・・・。

それでは本題・・・アルバム冒頭1曲目という配置が示す通り、『JULIE SONG CALENDAR』収録曲中で楽曲全体の完成度も随一の名曲、「裏切り者と朝食を」について詳しく語ってまいりましょう。

この曲、80年代における「作曲家・ジュリー」の観点からとても重要なナンバーではないか、と僕は考えています。
80年代前半は、ジュリーが自らの作曲作品でシングル・ヒットを連発した時期。その中でジュリーが開眼した作曲スタイル・・・特に目立って確立したのは、マイナーコードのハードなアプローチによる作曲術でした。
「十年ロマンス」「麗人」と続いたあたりで完全覚醒した、ジュリーのそのスタイルでの作曲術。それが1985年の「灰とダイヤモンド」で結実し完成形となった、というのが僕の考えですが、「麗人」から「灰とダイヤモンド」へと至る期間に、世間的にはあまり知られていない同スタイルでのジュリー作曲のナンバーが2曲存在します。
シングル『6番目のユ・ウ・ウ・ツ』B面曲「ロマンティックはご一緒に」と、本日のお題「裏切り者と朝食を」がそれです。

ハードなマイナーコードのメロディーにエキセントリックな歌詞が載り、耽美的な、ことによると退廃的なジュリーの熟した魅力が溢れるナンバー達。
「十年ロマンス」「麗人」でこの作曲術に手応えを得たジュリーがさらに高みを目指して突き詰めていく過程が、「灰とダイヤモンド」へと繋がっていくこの2曲にはよく表れています。

特に興味深いのは、「ロマンティックはご一緒に」→「裏切り者と朝食を」→「灰とダイヤモンド」と、継続的に導入されているバイオリン・アレンジです(ちなみに「ロマンティックはご一緒に」はシンセサイザーの音でしょうかね?)。
この3曲は、曲想ばかりかアレンジ・アプローチも共通しているということなのです。アレンジャーはそれぞれ白井良明さん、吉田建さん、大野さんと異なっているにも関わらずこの類似は、ジュリーの尖った作曲手法に、アレンジスタッフがバイオリンの音色を喚起させる、なにがしかの特殊な力があったということなのでしょうか。
まぁ、残念ながら僕にバイオリン演奏の詳しい解説はできないのですが・・・。

さて、「裏切り者と朝食を」の作詞は漫画家として超・ビッグネームの里中満智子さん。里中さんの詞は、ジュリーが自身のマイナーコードのハードな作曲作品に求めている耽美・退廃の雰囲気にバッチリ合っています。
このアルバムの収録曲は基本、豪華作詞陣の詞が先にありそれにジュリーが曲をつける、という流れだったようですから、ジュリーは里中さんの詞に当時自らが最も得意とし求めていた作曲パターンを敏感に見出した、ということなのでしょう。

これは・・・おそらく男の方が浮気をして、夫婦或いは恋人の日常に重い空気が漂っている、というシチュエーションでしょうか。

♪ さよならのきっかけを 女はさがし
  Am                             Fmaj7

  ひきとめるポーズを 男はつくる ♪
          Em(onB)     Em        Am

ありきたりな「沈黙の夜」ではなく「日常としての朝食」の情景にそれを描くあたり、さすがは里中さん。
もう別れは避けられない、という互いの重苦しい精神状態の中、平静を装う男女のかもし出す倦怠感、そして何より張りつめた緊張感がヒシヒシと伝わってきます。
2番の

♪ こおりついた指さき くもり空にかざしながら ♪
  E7                           Am

ここで、歌の季節が厳しい真冬であることがハッキリします。アルバム『JULIE SONG CALENDAR』において、この曲は「2月」のテーマなんですよね。

「裏切り者と朝食を」は、楽曲構成についても面白い仕掛けが多く、語りどころが満載です。
とにかくこの曲、すべてのジュリーのスタジオ・レコーディング・ナンバーの中で、一番イントロが長い曲ではないでしょうか。
ざっと1分と01秒。他にこれだけイントロを引っ張っている曲ってありましたっけ・・・?

イントロ冒頭、「Fmaj7→Cmaj7」の美しいリフレインに先んじて登場する木管系の音色のシンセサイザー(左右で追いかけっこするように鳴っている音)は、曲に独特のオリエンタルな雰囲気を味つけしています。
間奏でも似たような音色のシンセ・ソロがセンターにミックスされていますが、こちらは左右の音とは若干設定が違うのかな。僕の手持ちのシンセサイザーだと、「尺八」のパッチで高音部を弾くと同じような音が出ますが・・・。

こうしたシンセサイザーの音色はやっぱり、ジュリーが独立して作った『架空のオペラ』の音作りに繋がるように思えてなりません。ジュリーの中で何処かオリエンタルっぽい音世界への渇望が、確かにあったと思うんですよ・・・。
そう言えば『歌門来福』で歌われた「砂漠のバレリーナ」で、泰輝さんがこの曲のシンセと同じような音を出していたっけ・・・。

また、この曲の構成が面白いのはバイオリンやシンセサイザーのアレンジばかりではありません。
このアルバムのナンバーが「詞先」であること、そしてその提供された詞に対してジュリーが細心の解釈を持って作曲に打ち込んでいること・・・その証明として考えられるのが、「裏切り者と朝食を」に登場する突然のリズムの変化です。

♪ 心ゆれて 体ゆれて ぬくもり消えて
   Am           Fmaj7        G           C

  にぎりしめたナイフの
  E7

  もっていき場さがしながら ♪
    Am

この部分、いきなりワルツになってます!
Aメロまで進んだ段階でのこの曲は、1拍目と2拍目裏にアクセントのある、当時のクールな邦楽ロック王道の4拍子の雰囲気に満ち満ちているんですよ・・・。ですからこの唐突なワルツへの移行は、メロディーやアレンジだけ追っていると「あれっ?」と意表を突かれてしまいます。
しかも「にぎりしめたナイフのもっていき場さがしながら♪」の小節割りは、明らかに変(褒めてます!)。ワルツ部全体の小節数が奇数になっているのですね(4+5の9小節)。
例えば、この部分でドラムスは3拍目にアクセントを入れてきます。1小節目がフロアタム、2小節目でスネア、と交互に繰り返し、2つの小節でひと纏まりの演奏パターンになっているのが、9小節目のフロアタムで放り投げたような印象のままワルツ部が終わります。
ジュリーのメロディーが同一和音で粘っているからこそ、その進行性を敢えて断ち切るようなクールなドラムスに、僕は耳が行ってしまいます。

この、粘っこく着地地点を求め彷徨う変則の小節割りは、自由な作曲の才を持つジュリーの得意技のひとつ。こうしたジュリーの、枠に囚われない素晴らしい発想、柔軟性については、「めぐり逢う日のために」の記事で以前触れたことがあります。

「Am」のコードで引っ張る奇数小節での粘りは、続く

♪ 裏切り者と朝食を 裏切り者と朝食を ♪
  E7                Am  Bm7-5   E7    Am

というキメ部(曲はここで4拍子に戻っています)が、一転安定して聴こえる(ワルツ部で一瞬心を乱していた歌の主人公がハッと我に返る)、という効果をも生んでいるようです。

ただ、ジュリーがワルツへの移行を採用したのは決して奇をてらったのではなく、里中さんの「心ゆれて」「体ゆれて」という歌詞に純粋に応えたものでしょう。「ゆれる」感覚をワルツのリズムに託したのではないでしょうか。
危機的な状況の中で平静を装う男女。しかし胸中では激しい葛藤と別離への哀しい決意が渦巻いている・・・里中さんの詞も、この部分では愛憎が交差する登場人物の本性を抜き出して描いているように思えます。
ジュリーがしっかりと歌詞を噛み砕いて曲を練っていることが窺える、その結果としてのリズムの変化なのだ、と僕などは例によって深読みしてしまったのですが、みなさまの解釈はいかがでしょうか・・・。

ジュリーのヴォーカルは、CO-CoLO期へと繋がるこの時期特有のものでしょう・・・気だるい、そしてセクシーな熟した男の歌声。
そうかと思えば間奏やエンディングでは
「あお~~~~ん!」
という、遠吠えのようなシャウトがひっきりなしに・・・これ、ジュリー本人ですよね?
ザ・タイガースの方の「愛するアニタ」のシャウトのイメージを少しだけ重ねてしまったりして・・・。

最後に、今回のお題のリクエストをくださった先輩が、かつて大ファンだったと仰る里中満智子さんの本職・・・漫画作品について少しだけ。

小学校の何年生くらいだったのかな・・・クラスの学級文庫に里中さんの作品『スポットライト』が第1巻だけ置いてあって、僕は何度も繰り返し読みました(男子だったから恥ずかしかったのでしょうか、コソコソと読んでいた記憶があるような無いような)。
ですから、主人公の女の子が公開オーディション番組の出演を終えて帰宅した時、番組を観て娘のふがいなさに怒った母親に家に入れてもらえず、玄関前で「ブルーライト・ヨコハマ」を歌い直してようやく許されるシーンなど、場面場面を結構ハッキリと覚えています。

1巻は物凄くイイところで終わっていましてね・・・でも続きを読むこと無くずっと来てしまいました。
物語のだいたいの経過や結末は、その先輩をはじめ色々な方に教えて頂きましたが(あれ、今思えばみなさんジュリーファンです。何故複数のジュリーファンの先輩にこんなことを教えて頂けたんだろう?僕、過去にこのブログで『スポットライト』の話を書いたことなんてありましたっけ?)、機会があれば自分でキチンと読んでみたいものです。

調べてみたら、『スポットライト』は1975年~76年の作品だったそうですね。ジュリーのアルバムで言えば『いくつかの場面』や『チャコールグレイの肖像』の頃ということになります。
何処か翳りのある、美しいばかりではない、歌い手としてアーティストとして只者ではない・・・その才能が誰にでも見える形でハッキリ表れてきた時期です。考えてみますと、ある意味退廃的な気だるい魅力は、里中さんの『スポットライト』が発表されたちょうどその頃のジュリーに多く見出すことができるのです。
架空の物語とは言え、芸能界の闇、露骨なプロモートの駆け引きにまで踏み込んだ『スポットライト』を描いた里中さんは、当時トップ・アイドルだったジュリーをどう見ていたのでしょうか。

いずれにしても、里中さん作詞・ジュリー作曲の「裏切り者と朝食を」が奇跡のようなクレジットであり、耽美・退廃の魅力に満ちた名曲として仕上がったのは、自然なことだったように思われます。
聴けば聴くほど・・・のクセになる曲ですね!

それでは、次回更新もみなさまから頂いているリクエストにお応えしてのお題となります。
5月いっぱいまでは、「今後のLIVEでとても聴けそうもない曲」(あくまで個人的な考えに基づいてですが)ということで書きますから、必然ポリドール期のナンバーが続きますよ~。

| | コメント (19) | トラックバック (0)

2013年5月18日 (土)

沢田研二 「CAFE ビアンカ」

from『G. S. I LOVE YOU』、1980

Gsiloveyou

1. HEY!MR.MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFE ビアンカ
7. おまえがパラダイス
8. I'M IN BLUE
9. I'LL BE ON MY WAY
10. SHE SAID・・・・・・
11. THE VANITY FACTORY
12. G. S. I LOVE YOU

---------------------

今日は、つい先日J先輩からリクエストを頂いた曲をお題に採り上げます。
アレンジについて暑苦しく掘り下げる大長文となることが予想されますので、枕もそこそこにいきなり本題に入りますよ~。

アルバム『G. S. I LOVE YOU』から。
「CAFE ビアンカ」、伝授!

とにかく僕は、ビートルズネタが絡むと途端に物凄い勢いで書いてしまうんですよね・・・。
まずは、前回記事で少し触れましたが・・・今回このお題を採り上げるきっかけとなった、ジュリーと中村雅俊さんのデュエットによるビートルズ「恋におちたら」のカバー映像をもう一度おさらいしておきましょう。

https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=pLF3FEIPBEg

本当に素晴らしい歌声だと何度も聴き惚れてしまいます。
ジュリーは、ソロ部でジョン・レノンのパート、ハモリ部でポール・マッカートニーのパートを歌っていますね。

僕にこの映像を教えてくださったJ先輩はビートルズにも詳しい方で、同じことを仰っていたのですが・・・ビートルズのオリジナル音源の「恋におちたら」では、ポールがちょっと歌に苦労している箇所があるんです。
これは60年代前半のレコーディングではある程度は仕方のないことで、今ならコーラス・パートのトラックは後録りが基本ですが、当時はリード・ヴォーカルと同時の一発録りですからね・・・。しかもこの曲の場合は歌メロのほとんどが緻密に練りこまれたハーモニーから成っていますから、なおさらです。

このようにビートルズ初期作品では、音程や歌詞や発声タイミングなど、誰かが上手く歌えても他の誰かがいまひとつ、という状態のままオッケーテイクとして採用されることもしばしば(初期ビートルズはレコーディングにじっくりと打ち込める時間も少なかったのです)。
そのパターンで一番有名なのは、「プリーズ・プリーズ・ミー」の3番。リード・ヴォーカルのジョンが豪快に歌詞を間違いますが、ポールとジョージは何事もなかったように正しい歌詞でコーラスを
(←どこかで聞いたような話ですが)・・・。「しまった間違った!」ということでジョンはすぐ後に続く「カモン、カモン・・・♪」の最初の「カモン」を笑いながら歌っています。このテイクが現在も正規音源として世界中で聴かれているのです。

僕のようなビートルズ・フリークはそういった箇所も含め「完成テイク」として曲が頭に叩きこまれています。
ただ、今回ジュリーが歌った「恋におちたら」を聴き、「あぁ、そうかそうか」と、ジュリーの歌う完璧なメロディーで改めてこのビートルズ・ナンバーの名曲を噛みしめる機会を得ました。新鮮な感覚でしたね~。
ポールってメチャクチャ音域の広いヴォーカリストで、高い「ラ」とか「シ」とか平気で出しちゃう人なんですけど、上の映像を観るとメロディーが高く跳ね上がる箇所でさすがのジュリーも「ちょっと高いな~!」と顎を動かして上向きになる恍惚っぽい表情
(←やわらかい表現にしてみました汗)で歌っているのがイイですね~。

さて、それではこの「恋におちたら」という曲のどの辺りが今回のお題「CAFE ビアンカ」と繋がると僕が考えているのかと言いますと。
この曲のオマージュ元などアレンジ作業仕上げの過程についてまず参考にしなければならないのは、伊藤銀次さんがかつて”『G. S. I LOVE YOU』制作秘話”としてブログに連載してくださっていた記事。ファンが立ち入れない音源制作過程のエピソードが満載で、本当に貴重なお話を堪能できます。
アルバム全曲をすべてについてではありませんが、いくつかの収録曲については銀次さんが当時を振り返りながらとても細やかにアレンジ解説してくれていて、その中には「CAFE ビアンカ」についての記事もありました。

「恋におちたら」についての言及までには少し時間がかかりますが、銀次さんの解説を参考にしながら「CAFE ビアンカ」のアレンジとそのオマージュ元を順を追って考察していきましょう。

「CAFE ビアンカ」のアレンジについて銀次さんは、「かまやつひろしさんの曲を聴いた瞬間に、ビートルズのティル・ゼア・ウォズ・ユーみたいな仕上がりにしたいと思った」と語っています。

Cafe3


シンコー・ミュージック刊 バンドスコア
『ウィズ・ザ・ビートルズ』より

元々はブロードウェイ・ミュージカルのナンバーだったものを、ポール・マッカートニーのヴォーカルでビートルズがカバーした曲。R&B色が強い彼等のセカンド・アルバムの中で唯一「バラード寄り」のナンバーです。
(リリース当時としても)古き良き時代の洒落た雰囲気を持つこの曲は、かまやつさん作曲段階のコード進行やメロディーの時点である程度は連想できたのかもしれませんが、アルバム全体のバランス、そしてかまやつさん作の2曲(もう1曲は「午前3時のエレベーター」)にそれぞれ違った味付けをしようとした銀次さんの切り口は、やはり素晴らしいと思います。

Cafe1


『ス・ト・リ・ッ・パ・- 沢田研二楽譜集』より

余談になりますが、このスコアで『CAFE ビアンカ』は見開き左ページに「NOISE」と抱き合わせで収載されておりまして、じゃあその見開きの右ページの方はどうなっているかというと

Cafe2

こうなっているわけです。
いやぁ、素晴らしい本が出版されていたものだなぁ、と改めて思う次第です・・・。

さて、ビートルズ・ヴァージョンの「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」と言えばアレンジの肝はガット・ギター(リード・ギター担当)とアコースティック・ギター(サイド・ギター担当)のアンサンブルと、静かに曲の抑揚を強調するボンゴですから、当然銀次さんは「CAFE ビアンカ」のアレンジでそれらの楽器を採り入れています。
で、たぶん銀次さんとしては普通に「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」のポールのようなシンプルなエレキベースを考えていたかと思いますが、アレンジを詰めていく段階で吉田建さんが「自分はウッド・ベースを弾こうかな」と申し出てくれた、と銀次さんはとても嬉しそうにブログで書いてくれています。

自分の身体に染みついているビートルズやストーンズなどの洋楽ロック・エッセンスを惜しみなく注ぎ込むことで、ジュリー・アルバムのアレンジャーという大役(銀次さんの文章からは、まぁ謙遜もありましょうが「若造が凄い仕事をやらせて頂いた」という大きな喜びと心地よいプレッシャーがあったことが窺えます)に立ち向かっていった銀次さん。
自分が提示した60年代洋楽ロックへのオマージュに、建さんのウッド・ベースがジャズの要素を加味し、一層のオシャレな雰囲気が「CAFE ビアンカ」に注入され・・・それがまたジュリーの声に凄まじく合っていた、という”魔法”が銀次さんの中で今も強く印象に残っているのではないでしょうか。
ちなみに、ストーンズの「アンダー・マイ・サム」をアレンジ・オマージュ元とした「THE VANITY FACTORY」でも、まったく同じ魔法がかかっているんですよ~。

僕がタイムリーで観ていた『イカ天』の審査員として、キチンとした音楽観をそれぞれが違った形で持ちつつ絶妙なコンビぶりを発揮していた銀次さんと建さんには、かつてこんな共同作業の経験があったんだなぁ、と・・・後追いジュリーファンの僕は今さらのようにしみじみとしてしまいます。

名前は忘れましたけど、『イカ天』に登場したあるバンドに対して、銀次さんがちょっと専門的な注文をした回があって、その時バンドのメンバーが「いや、僕らはジュリーとか好きなんで・・・」と、「分かりにくいのかなぁ」みたいな感じで言葉を返したんです。
僕はそのバンドはとても良いと思ったし、銀次さんもおそらく同様で、僅かに足りない部分のサジェスチョンとしての注文だったかと思うのですが・・・メンバーの返答を聴いて、あの温厚な銀次さんの顔色が変わりました。
「俺だってジュリー好きだよ!一緒にしないでよ!」

銀次さんが語気荒くそう言い放ったことを、当時まだまだジュリーファンではなかった僕がとても印象深く覚えていて、こうして記事中で書いているというのもね・・・何かの巡り合わせなのでしょうか。
あ、そのバンドメンバーは銀次さんの一喝に大変恐縮していましたよ。ジュリーへの愛情を示した銀次さんへのリスペクトでしょう。
今僕がそのバンドの曲を聴けたら、ジュリーファンとして何か新しく発見できることがあるかもしれないなぁ。どなたかバンド名を覚えていらっしゃらないでしょうかねぇ・・・。

と、すでに話が長くなっていますが(汗)。
銀次さんのブログには「CAFE ビアンカ」のオマージュ元の話について「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」1曲しか明記がありませんが、当然それだけではないはずなんですよ。

ビートルズへの愛情故か、若さ溢れるバイタリティー故か、ジュリーの仕事で気合に満ちていたのか・・・とにかく銀次さんはとんでもなく細かいところにまでオマージュを散りばめ、もうご本人も何処から何処まで、と、とてもすべてを語り切れなくなっていると思うんです。
その細かさについて、アルバム他収録曲で銀次さんの言及があるものを挙げると、「HEY!MR. MONKEY」のイントロが「今日の誓い」であったり(曲全体が「タックスマン」なのはすぐ分かりますが、これは細かい!)、「I'M IN BLUE」のイントロが「エニータイム・アット・オール」であったり(これは銀次さんのブログを拝見するまで僕はまったく気づけませんでした)・・・。
ならば、「CAFE ビアンカ」にもまだまだ銀次さんのビートルズ・ネタが詰まっているに違いない!と考え、今回記事を書くにあたって、この曲に秘められたビートルズ・ナンバーを僕なりに推測してみました。

そこでようやく「恋におちたら」のお話。

Cafe4


シンコー・ミュージック刊 バンドスコア
『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』より

「CAFE ビアンカ」の0’24”と1’15”に登場する、僅か1小節の和音進行がズバリ「恋におちたら」へのオマージュではないか、と。

♪ 最後の灯をつけた キャンドルライトに
  G             B7   Em         C    E7    Am  Am7

  ほほえんでいた You will be shinning ♪
     D7                 Daug         G          E♭ D7

の、「E♭→D7」の箇所ですね。
この進行に載せてガット・ギターがアルペジオで絡みます。これが「恋におちたら」の

♪ from the very  start   that  you would
              D  Em F#m    Fdim  Em7

  love me more than her ♪
  A7                       D    Gm7  A7

「Gm7→A7」・・・分かりやすく「CAFE ビアンカ」と同じト長調に移調した時「Cm7→D」となる部分をオマージュとしたものではないでしょうか。
「E♭→D7」と「Cm7→D7」では違うコード進行じゃん、と思われるかもしれませんが、「E♭」の構成音は「ミ♭・ソ・シ♭」、「Cm7」の構成音は「ド・ミ♭・ソ・シ♭」。これはもう双子みたいなものです。
かまやつさんの配した「E♭」のコードから、「恋におちたら」の僅か1小節の印象的なキメ部を連想することは、銀次さんの実力からすればたやすいことだったかもしれません。
また、そこにガット・ギター8分音符の単音アルペジオを持ってくることで、「恋におちたら」と同じアルバムに収録され、似た感じの曲想を持つビートルズ・ナンバー「アンド・アイ・ラヴ・ハー」の雰囲気までをも採り入れているように僕には思えます。

Cafe5


シンコー・ミュージック刊 バンドスコア
『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』より

「アンド・アイ・ラヴ・ハー」のアレンジの肝は、間奏のみならず歌メロ部でもアルペジオで活躍するガット・ギターと、ボサノバっぽいタイミングのリズムを刻むクラベス(日本の拍子木みたいな音が出るラテン・パーカッション)で、何とこのクラベスの音が、「CAFE ビアンカ」の中でたった1打だけ・・・0’04”に登場するのです!
全体の演奏の中で、「1箇所」ではなく「1打」ですよ。たったの1打、それだけのためにクラベスをこの曲に導入しているという・・・銀次さんの狙い、おそるべしです。ビートルズ・フリークのリスナーが無意識にこの1打音だけで右脳を刺激される、ということを銀次さんは心得ているのですね。

さらに、「シャ~イニ~ン♪」というメロディー部と和音の組み合わせに僕は「ミズリー」というビートルズ・ナンバーをも連想してしまいますが、これはかまやつさん作曲の時点で完成していたのかな・・・。

あとは、間奏のピアノです。
いかに楽曲全体を「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」のイメージに統一したとしても、ビートルズの「ティル・ゼア~」と同じように間奏をガット・ギターで・・・という選択は銀次さんには考えられなかったはずです。『イカ天』審査員時代に一番拘ったのは「歌詞が安易ではないかどうか」という姿勢。そう、ポップ・ミュージックにおける歌詞の存在は銀次さんが構築する楽曲の仕上がり上、最も重要なパーツなのです。

♪ 誰もすわる人 の いないピアノ
  G             B7  Em    C    E7  Am  Am7

  奏でていたよ You will be shinning ♪
   D7               Daug         G           E♭ D7

この詞の直後に間奏が来るなら、それはピアノ・ソロでなければならない・・・銀次さんにとっては当然の発想だったでしょう。

ビートルズ・ナンバーのピアノ・ソロと言えば、有名なのは「イン・マイ・ライフ」(演奏・ジョージ・マーティン)や「ドント・レット・ミー・ダウン」「ゲット・バック」(演奏・ビリー・プレストン)といった中後期の作品なのでしょうが、歌詞からのインスピレーションで「CAFE ビアンカ」に採用されたピアノ・ソロは、いわゆる「歌メロをそのままなぞる」というシンプルなもの。
ここで銀次さんの頭にビートルズ的な着想があったとすれば、たぶんこれです。

Cafe6


シンコー・ミュージック刊 バンドスコア
『ウィズ・ザ・ビートルズ』より

「ナット・ア・セカンド・タイム」。間奏ではサビのメロディーをそのままピアノの単音低音部で弾いています。
技術的には何てことない演奏ですが、逆にそれがいかにも50~60年代のオールディーズ、といった感じで独特の味わいがあるのです。
誰にでも弾けそうな、シンプルに歌メロをなぞるだけの演奏は、「CAFE ビアンカ」の”誰もすわる人のいないピアノ”という詞の世界に合うパターンではないでしょうか。

銀次さんのブログによれば、このピアノ・ソロはジュリーが「自分が弾く」と申し出て演奏したそうですね!
こうした逸話は僕のような新規ファンにとっては本当に貴重。不注意な僕は銀次さんのブログで知るまで、CDの演奏クレジットを完全に見逃していましたよ・・・。
歌入れを待つジュリー、作曲者のかまやつさん等アルバムに関わるメンバーがレコーディング現場に集まり、アイデアを出し合いながら楽しげに曲を仕上げていく様子が伝わってきます。
銀次さんは『G. S. I LOVE YOU』制作秘話を書き終えた後、「いずれは次作『S/T/R/I/P/P/E/R』制作秘話も」と予告してくれたのですが、忙しいのでしょうね・・・まだその記事にはとりかかれないようです。ジュリー・アルバムのアレンジには思い入れが強く、おいそれと気軽に書くことは出来ないのでしょうね。
でも、ジュリーファンは首を長くして待っていますよ!
(と、いくらこんなところに書いても銀次さんには届かないのですが泣)

さて、そのレコーディング現場で「エンディングにマージーなコードを鳴らしたい」と思いつき、銀次さんと二人でギターを抱えて(その際銀次さんは急遽柴山さんのギターを借りたとか)しっくりする和音を探した、というかまやつさん。
そのアイデアは結局かまやつさん自身の判断でお蔵入りとなったそうですが、「CAFE ビアンカ」のコード進行は、かまやつさん作曲の時点で非常に練り込まれています。

例えばこの曲には、ト長調からロ短調という珍しいパターンの転調が登場します。
調が変わる繋ぎ目の部分にどんなコードを当てているか、というのは転調曲を聴く際の醍醐味です。その点、かまやつさんはさすがですよ!

まずト長調からロ短調へと移行する箇所は

♪ もて遊んでた You will be shinning
     D7                             G           G  F#7

  時は過ぎ去って すべて消えても ♪
  Bm            Em   Bm               F#7

「F#7」はロ短調のドミナントですからこれはごく一般的なコードを採用している、とは言えるんですけど、この曲の場合は調の変化それ自体が特殊なので、「G→F#7」と半音下がりの進行で「F#7」が登場する、というのがポイントです。雰囲気がガラリと変わりますね。

凄いのは、ロ短調から再びト長調へと戻る箇所。

♪ あの日のほほえみ フロアに残る・・・ ♪
  Bm                Em   A7           D7  Daug

「A7→D7→Daug」が渋過ぎます!
この「D7→Daug」の進行はAメロひと回し目でも登場しますが、メロディーへの切り込み方は全然違います。かまやつさん、冴えまくりです。

最後になりますが・・・このところ書いているお題曲同様にやはりこの「CAFE ビアンカ」もこの先のLIVEで聴ける機会は無さそうだ、と思います(泣)。
リリース当時は、ステージでこの曲が歌われたこともあったのでしょうね・・・。

目を閉じて、今のジュリーが「CAFE ビアンカ」を歌う様子を想像してみますと・・・脳内には、冒頭で書いた「恋におちたら」の高音部で恍惚の表情(←いや、そう見えるだけなんですけど)で歌うジュリーが登場してしまいます。
「ほほ~えんで~いた♪」の辺りで、「お、ちょっと高いな!」と軽く顎を上げるようにして歌うジュリーです。
生で観てみたいですけどね・・・。

それでは次回更新ですが、せっかくですのでみなさまからリクエストを頂いていたナンバー(溜まりまくってる汗)の中で、採譜など考察がすぐにできそうな曲を見繕っていくつか続けて書きていきたいと思います。
『ジュリー祭り』参加の相方・YOKO君からも2曲ほど頼まれているんだけど、もう3年以上も書く機会を逸しています。近いうちにどちらか1曲だけでも書いておかなければ・・・。

| | コメント (12) | トラックバック (0)

2013年5月14日 (火)

沢田研二 「おれたちは船乗りだ」

from『JULIEⅡ』、1971

Julie2

1. 霧笛
2. 港の日々
3. おれたちは船乗りだ
4. 男の友情
5. 美しい予感
6. 揺れるこころ
7. 純白の夜明け
8. 二人の生活
9. 愛に死す
10. 許されない愛
11. 嘆きの人生
12. 船出の朝

--------------------

さぁ今日は、みなさまの反応が心配なお題です。
『ジュリー祭り』以降、LIVE会場でお会いしたりブログのコメント欄でお話を伺ったりして、数多くのジュリーファンの先輩方と膨大なジュリー・ナンバーについてたくさんお話をさせて頂いておりますが・・・今日採り上げる曲は話題にのぼったことがただの一度もありません。
『ジュリー祭り』以前のポリドール期のアルバム大人買い時代から、渋いアルバム収録曲について散々語り合ってきた盟友・YOKO君ですら、この曲については「アッという間に終わってワケ分かんないよね・・・」と、正当な評価をしてくれていません。

しかし僕にとっては・・・確かにアルバム収録曲中傑出して好き、というわけではないにしても、絶対に飛ばして聴くことはできない・・・最愛のアルバムの重要なパーツを構成するナンバーとして、さらに、てらいのない無垢で伸びやかなヴォーカルが素晴らしい初期ジュリーの隠れた名曲として、この機にみなさまに是非聴き返して頂きたいなぁ、と考えている曲なのです。

数年ぶりの「コメント数ゼロ」という事態に怯えつつ・・・アルバム『JULIEⅡ』から。
「おれたちは船乗りだ」、伝授!

前回記事で、「次回はちょっと蟹江敬三さんのことを書く」と予告しまして。
この話題を枕に持ってきますと本題がものすごく短くなってしまいそうなので、無理矢理に考察本題の冒頭に持って来ることにしました(汗)。

蟹江敬三さん・・・何かって言うと、視聴者の評判も上々と聞く今年上半期のNHK朝ドラ『あまちゃん』ですよ!
個人的には、毎日ここまで楽しみに観ている朝ドラは『ちりとてちん』以来となります。
僕の場合は朝の放映ではなくて、会社の昼休みに何人かの社員と集まって再放送を観ています。今のところ、仕事の外回りで致し方ない時を除き、できる限りじっくり観続けていますね。
ストーリーも音楽も楽しい作品です。『ちりとてちん』もそうでしたが、僕はやっぱり朝ドラの主題曲は歌モノよりインストの方がいいなぁ・・・。

で、最近になってドラマの主要キャストとして、主人公のおじいちゃん役で蟹江敬三さんが加わりまして、イイ味出しまくっています。
年に10日しか故郷・三陸に帰ってこないという海の男。
「やっぱりおばあちゃんの待つ故郷の家が一番いい、ということを確かめに海に出ていくんだ」と、とぼけた表情で朴訥に言い放つカッコ良さ。

♪ おれたちは船乗りだ 陸にいちゃ暮せない
  C              G7                         C

  棲み家は 海だ海だ ♪
  F     D7     G7

そうかと思えば、おばあちゃんとケンカして外でヤケ酒をあおりながら「北欧の女はいいぞ~」と仲間達に虚勢を張る、可愛らしさ。

♪ おれたちにほれるなよ 娘さん気をつけな
  C              G7                      C

  浮気な 鳥さ鳥さ ♪
  F   D7   G7

そんな蟹江さん演ずるおじいちゃんのキャラクターが僕の中で、『JULIEⅡ』のストーリーにおける重要登場人物のひとり、船乗りの親父さんのイメージとピッタリ重なってしまったという次第(但し「男の友情」だけは、栗本薫さんの『グイン・サーガ』に登場するカメロン提督で不動ですが)なのです。
まぁ、年齢設定は随分違うのでしょうけどね。
とにかく、蟹江さんが『あまちゃん』に登場するようになってすぐに僕は、ジュリーファンの間でもなかなか話題に上がることのない「おれたちは船乗りだ」という佳曲をブログのお題に採り上げよう、と決めたのでありました。

実は・・・僕は子供の頃、蟹江さんのことが凄く怖かったのです。
中には「そうそう、そうだった!」と賛同してくださる同世代の方もいらっしゃるかもしれませんが・・・これは完全に『Gメン’75』(『太陽にほえろ』『特捜最前線』と並ぶ僕のお気に入りの刑事ドラマです)のトラウマなのですよ・・・。

僕の知る限り、元々若き日の蟹江さんは特撮系で狂気じみたキャラクターというか設定というか、そんな配役が多かったように思います。
確か『ウルトラマンエース』で、人間が牛になる、というメチャクチャな話があって子供心に強烈に覚えているんですけど、どうも僕の記憶の中ではそれが蟹江さんの演技だったように思うんだよなぁ・・・実際のところどうなんだろうなぁ・・・。

おっと、『Gメン’75』の話でした。
文字通り血も涙も無い大悪人を蟹江さんが演じていたのですが、その徹底した非道ぶり、あまりのインパクト、あまりの反響(役どころが過激過ぎて決して良い反響ばかりではなかったと思われますが)に、その後怪奇シリーズ、猟奇シリーズのようなノリで凶悪犯の名も「望月源治」と新たに固定され、何と「冷酷、非情、人間味ゼロ」の犯人役を蟹江さんが演ずる一連のシリーズが始まってしまったという・・・。
シリーズは源治の死により一旦はケリがつくものの、蟹江さんの凄まじい演技の怨念か・・・後に望月源治には双子の弟が存在していたことが発覚(笑)し、当然演じるのは蟹江さん。
こうなってくると、子供にとっては俳優・蟹江敬三さんと架空の登場人物・望月源治の区別がどんどんつき辛くなってくるわけですよ。

『Gメン’75』ファンの少年達は、次回予告で蟹江さんの姿を確認すると1週間楽しみに(?)怯えながら待ち、放映を観た当日夜はトイレにも行けずにすぐさま布団をかぶって寝るしかない・・・。
それほど凄まじい犯人像を、蟹江さんはものの見事に演じていたのでした。

Werethesail1


『Gメン’75』 第218話 「梟の森みな殺しの夜」より
望月源治のルーツは、別名、別設定の犯人役を蟹江さんが演じたこの回にまで遡ります。この時点ではあくまで単発のストーリーでした。
蟹江さん演じる犯人は、情け容赦のない惨たらしい犯行の後、返り血を拭うでもなく現場から走り去るでもなく、悠然と畑のスイカを盗み地面で叩き割って食べ、喉の渇きをうるおすという・・・蒸し暑い夏の夜のお茶の間が一気に凍りついた強烈なシーン。

10代前半だったDYNAMITEが、蟹江さんのことを「俳優」として見る前に「望月源治」として見てしまうようになったのも、蟹江さんの凄まじい演技の為せる業とはいえ・・・実際、トラウマ期間は長かったです。
少し後に、ホームドラマか何かで蟹江さんが普通のサラリーマン役でテレビに出ているのを見ても、とにかく怖くて劇中の蟹江さんの役が頭に入ってこないくらいでしたからね。

それが払拭されたのは、これもやはり刑事ドラマの『特捜最前線』の最末期。蟹江さんが刑事役としてゲスト出演したのですが、「実はこの刑事は陰で悪事を働いている」と視聴者をミスリードする脚本だったのです。
蟹江さんに望月源治の面影を消せない僕のような者はコロッと騙され、「コイツはとんでもない悪党で間違いない」と。
しかし結末は逆。「悪い奴に違いない」という先入観があっただけにその決着は強烈で、一転して蟹江さんがとても爽やかに見えたものです。僕もようやくそこで「蟹江さん=望月源治」という呪縛から解き放たれたのでした。

以来、蟹江さんは個人的に大好きな俳優さんのひとりとなりました。
本当に良い感じで年齢を重ねられ、『あまちゃん』での飄々とした船乗りのおじいちゃん役は、男が見てカッコイイ男・・・蟹江さん最高のハマリ役です。若き日に演じた望月源治と同じくらいにね!

話ついでに、蟹江さん同様『あまちゃん』に出演されている平泉征さんの若き日の画像も紹介しておきましょう。

Werethesail2


『Gメン’75』 第254話 「警視庁の女スパイ」より
中島はるみさん演じる吹雪刑事登場編にて、非道な犯人役を熱演する平泉さん。『Gメン’75』の多くの回で平泉さんは主に犯人役で活躍されていました。

さてそれでは、”海の男”をテーマとしてアルバム『JULIEⅡ』にコミカルな味つけをしている「おれたちは船乗りだ」について詳しく書いていきましょう。

『JULIEⅡ』は最初から最後まで収録曲が完全にストーリー仕立てになっていますから、いわゆる「ストーリーの合間」的なナンバーがいくつかあります。全体の物語に厚みを与えているわけですね。
人によっては(と言うか僕自身が初めてアルバムを通して聴いた際にそう感じたのですが)、そういった曲を”場繋ぎ的”と軽く聴き流しがちな傾向もあるようです。
その最たる例が「おれたちは船乗りだ」でしょう。
何と言っても収録曲中唯一、歌詞の主人公がジュリー演ずる少年ではなく、船乗りのおやっさん(もしくは船乗り仲間とその傍にいる少年をも合わせた大人数からの視点)になっているのですから。

ただ、ジュリーのヴォーカルは本当に凄い!
いや、「美しい予感」「純白の夜明け」「愛に死す」などとんでもなく凄いヴォーカルの他収録曲がアルバムに居並ぶ中、確かになかなかその点気づきにくい配置の曲ではあるんですけど・・・例えば以下の箇所のヴォーカルを、みなさまちょっと聴き直してみてください。

♪ 可愛い娘が泣いて とめても明日には
  Am             Em        Am                   Em

  また錨を 巻きあげてゆく ♪
     F     Em     F           G7

特に「錨を~♪」と伸びあがる部分の、ジュリーの声の素晴らしさ。

これまでも何度か書いてきているように、『JULIEⅡ』は演奏のレベルが非常に高く、当時の邦楽リリースのLPとしては最高峰と考えられる演奏トラックを前面に押し出しているミックスになっています。
つまりこの時点では、周囲のスタッフが「歌の神」の存在にまだ気づいていない・・・それが逆に当時のジュリーの声の特性を自然に引き出し、ジュリーも「僕は歌に専念してできる限りのことをするだけ」という無心・無垢な境地から自分でも知らず知らずにその稀有な才能をほとばしらせているのです。
そういったことが「おれたちは船乗りだ」という、良い意味で”目立ちにくい、アルバムの中の1収録曲”でも当たり前のように発揮されていることこそが、『JULIEⅡ』の魅力、完成度を象徴しているように僕には思われます。

無論、作曲も”繋ぎ曲だから”などという安易なものでは断じてありません。何と言ってもこれは、クニ河内さんの作品なのです。
ザ・タイガース後期、あの「怒りの鐘を鳴らせ」や「誓いの明日」など、ストイックなまでに自作曲に強烈な哲学を盛り込む素晴らしい作品を生み出した作曲家。僕はクニ河内さんの凄みについて、一昨年にザ・タイガースの記事を書きながら学ばせて頂いたようなものです。
「おれたちは船乗りだ」についても、さきほど「ジュリーのヴォーカルを聴き直して」と挙げた箇所など、いくら和音がマイナーコードに進行していっても、朗らかさ、愉快さ、爽やかさを失わない「陽」の哲学というものが、メロディーに練り込まれているのではないでしょうか。

それにしても『JULIEⅡ』の作曲家陣は本当に豪華です。質の高い”競作”とはこういう作品を指すのでしょうね。

また、他収録曲と同様にこの「おれたちは船乗りだ」においても、東海林修先生のプロフェッショナルなアレンジに注目。
楽しげな曲想を生かすべく、イントロそして歌メロと歌メロの繋ぎ目にボ・ディドリー風の陽気なリズム(「緑色のKiss Kiss Kiss」記事参照)を採用しています。
さらに、ストリングスの出番が本当に「満を持して」という感じ。最初から入ってこない、というのがポイントだと思います。
演奏時間の短い曲ですが、隅々にまで細かい仕掛けや工夫が行き届いていて、何度聴いても新鮮なんですよね~。

エンディングの口笛は、わざと微妙にメロディーをずらしているのが「楽しき船乗り」的なワイワイとした雰囲気をよく表しています。
この「微妙にずらす」というのがいざやってみると意外と難しい・・・この口笛、ジュリー自身も参加しているのでしょうか。だとすればやっぱり天才です!

ちなみに『JULIEⅡ』収録曲のスコアは、こちらのお宝本に全曲収載されています。

Werethesail3


『沢田研二のすべて』より

「おれたちは船乗りだ」のコード進行において最も重要なフックである「D7」を「Dm」で表記するなど、当時ならではの大らかな採譜箇所はいくつか見られますが、他収載曲と比較しますとかなりマシな方かな~。
少し前に紹介させて頂いた「不良時代」の採譜ほど「話にならん!」って感じではないです。でも、この曲に関しては僕が記事中で明記したコードで弾いて頂いた方がまだ無難かと。
まぁ、世の中に「おれたちは船乗りだ」をギターで弾き語りたい、という方がどのくらいいらっしゃるのか想像もつきませんけどね・・・。

それでは次回更新ですが・・・あるJ先輩からこちらの映像を教えて頂きまして。

https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=pLF3FEIPBEg
(up主様に感謝!)

初めて観ましたよ。ビートルズのサード・アルバムに収録されている、隠れたバラード名曲「恋におちたら」のカバー!
出だしのジョン・パートに引き続いて、ハモリ部でジュリーは一転ポールのパート(高音の方)を歌っているのですが・・・もう、言葉が無い。素晴らし過ぎる声です。

で。
この「恋におちたら」と、あともう数曲のビートルズ・ナンバーを合わせてオマージュ元としたんだろうな、と僕が常々考えているジュリー・ナンバーのお話を先輩方にしましたら、「記事をお待ちしてマッスル!」とリクエストを頂いてしまいました。
ちょっと今後のLIVEで聴くのは難しそうな曲・・・せっかくの機会ですので次回記事に早速書いてみようと思っています。
オールウェイズ期の曲です。
オマージュ元の「恋におちたら(IF I FELL)」からお題が予想がつく方はいらっしゃるかな?
ヒントは映像の0’57”くらいに登場する短い伴奏部の和音進行。映像のヴァージョンはビートルズのオリジナルとはアレンジが違うから、ちょっと伝わりにくいでしょうか。

あと、『あまちゃん』ネタ絡みでもう1曲記事に採り上げようと考えているジュリー・ナンバーがあるのですが、そちらは6月から開始予定の”恒例・全然当たらないセットリスト予想”シリーズでの執筆となります。
書きたい曲が溜まりまくって、嬉しい悲鳴でございます。
それではまた数日後に!


☆    ☆    ☆

(プチ情報)
元チェッカーズ、現a-bra:zの武内亨さんのツイートで、今週の『ミュージックフェア』に鈴木雅之さんと共に出演、との情報があったのだそうです。
前回「バイ・バイ・バイ」記事中で紹介させて頂いた通り、鈴木さんと武内さん達(武内さんに加え、元チェッカーズの大土井裕二さん、藤井尚之さん、元シャネルズ=ラッツ&スターの鈴木善雄さん、桑野信義さん)は、鈴木さんの最新アルバム『オープン・セサミ』収録「恋はくじけず~You can't worry love」という曲でコラボ競演されています。この曲こそ、あのジュリーwithザ・ワイルドワンズに「涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」の2曲を提供した吉田Qさんの作詞・作曲作品。
マーチン(鈴木さん)のヴォーカル、武内さん達による演奏、コーラス共々素晴らしい曲で、武内さん達は当然この曲のために出演されるとのこと。
興味のある方は、是非ご覧になってくださいませ~。

| | コメント (17) | トラックバック (0)

2013年5月10日 (金)

沢田研二 「バイ・バイ・バイ」

from『Jewel Julie -追憶-』、1974

Jeweljulie_3

1. お前は魔法使い
2. 書きかけのメロディー
3. 親父のように
4. ママとドキドキ
5. 四月の雪
6. ジュリアン
7. 衣裳
8. ヘイ・デイヴ
9. 悲しい戦い
10. バイ・バイ・バイ
11. 追憶

--------------------

いきなり暑くなりましたね~。

ジュリー界は今、音楽劇ラスト名古屋公演の真っただ中でございますが・・・今日の拙ブログではまず本題の前に、2つのタイムリーな情報について少し書いておきたいと思います。

ひとつ目・・・6月28日の『Pray』ツアー初日が待ち遠しい今日この頃ですが、さらにその先に待っているのがザ・タイガース再結成。遂に先行チケット申し込みのインフォメーションが来ましたね!
「近い将来、です!」と2012年1月24日武道館公演で宣言してくれたジュリー。
いよいよその時か・・・と実感が沸いてきます。

インフォで僕が真っ先に確認したのは、12・27大トリ東京ドーム公演の開演時間。
サラリーマンやOLのみなさまはほとんどそうかと思いますが、この27日って確実に仕事納めの日じゃないですか。これで例えば開演が午後4時、とかだったら・・・僕は完全にアウト。悔し涙に暮れながら参加をあきらめるしかありませんでした。
確定した開演時間は午後6時半ということで・・・これなら何とかなるかもしれない、いや、何とかしなければいけない。
席は何処でもいい・・・とにかく参加して、ザ・タイガースであの広い東京ドームをフルハウスにするんだ!

もう1箇所の参加を初日の武道館にするか長崎遠征に踏み切るかで悩みましたが、12月3日は『ジュリー祭り』記念日であると同時に私事ながら結婚記念日でもあるので、その日は有給をとりカミさんと一緒に過ごして、ザ・タイガースで1日を締めくくろうと決めました。
でも武道館は競争率も激しいようで・・・無事にチケットがとれますかどうか。

さて、僕は『澤會』『オフィス二十二世紀』共に会員ですから、ジュリーとピーの事務所さん2種類の、それぞれのインフォを同時に受け取りました。


130508_01

44年の歳月を経て、ついにオリジナル・メンバー全員が揃ってのLIVEが本年12月に実現します。
・・・・・・夢にまで見たことが現実になったのです。

「インフォにはこういう文面を載せようね」とメンバーで話し合ったのでしょうね。一字一句、「・・・・・・夢にまで見た」の「・・・・・・」の数までキッチリ同じ。
きっとタローの『青い鳥クラブ』のインフォも同様の構成でしょう。
トッポ、サリー、ジュリー、ピー、タローというメンバー表記順については、ぴょんた様が素早く「五十音順なんだね」と気づかれました。

謳い文句を打ち合わせたり、全員の気遣いでメンバーを五十音順表記にしたり・・・これは正に、高校生男子の文化祭バンドのノリじゃないですか~。なんだかこちらも青春時代を思い出して楽しくなってきます。

ジュリーもピーも、ファンクラブの会費もとっていないのに、こんなに嬉しいお知らせを丁寧にいち早く会員に届けてくださる・・・その志、ファンとしてはどちらの事務所さんにも応えたい、という気持ちになります。


(註:以下、74年生まれ様に頂いたコメントでのご指摘に従い、チケットはすべて澤會さんへの申し込みとすることにしましたが、最初に書いた文章はそのまま残しておきます)

ですから僕は2箇所の参加会場をひとつずつ、それぞれのファンクラブで申し込もうと思います。

武道館はいつも通り『澤會』さんに申し込みます。
これはちょっとだけ下心があります。きっと、ステージ裏の北西スタンド、北スタンド、北東スタンドの多くが澤會さんの枠なんじゃないかなぁ、と考えるからです。
ステージ裏というのは正面からメンバーの姿を観られない席ですが、老虎ツアー・ファイナルのレポートでも書いたように、ステージ裏1階席で聴こえる音はスバリ、ステージ上のメンバーが確認しているモニター返しの音と同じなのです。そして今回はオリジナル・メンバー5人だけの演奏・・・ステージ裏1階席で聴こえてくるのはおそらく、僕の知らないあの伝説の新宿ACBで彼等が出していた音と近いものになるんじゃないか・・・そんなふうに想像しているのです。

まぁそれはあくまで贅沢な願望、と言うか下心です(汗)。大事なのは何とか抽選を通過し武道館の中に入ること、ですね。

ファイナルの東京ドームは『オフィス二十二世紀』さんに申し込もうと思います。
会場が会場ですから、ピー先生の受け持つチケットも枚数が相当多いでしょう。
僕はその末席中の末席で構いません。
『ジュリー祭り』の時、僕は一般販売のS席購入で2階前方席・・・それ自体は良かったのですが、周囲のお客さんは最後までほとんど着席のままでした。
今回のドーム、僕は席の良し悪しは問いませんが、やっぱり皆でスタンディングしてガ~ッと盛り上がりたい。
その点、周りがピーファンの方々だったら凄いと思うんですよ。みなさんが44年貯めていたエネルギーが、きっとすべて解放され出しきれると思う・・・僕はそんな雰囲気を一緒に味わってみたいです。

(ここまで、ジュリーとピーの事務所さんへ参加会場別に申し込むつもりで書いてきましたが、インフォの特記事項は、「チケットの申し込みはすべて1箇所の事務所で」という意味にもとれます。考えてみますとその方が不正の取り締まりもしやすいですしね。
結局、僕は武道館、東京ドームとも澤會さんに申し込むことに致しました)

激戦となる武道館公演の抽選は抽選としても、ジュリーファンのみなさまはまぁその辺りは慣れたもので、申し込み締め切りまでゆっくりあれこれ考えて・・・といったいつもの感じですけど、僕の周囲のピーファンのみなさまの多くは「一刻も早く申し込みを!ひと時の遅れが一大事に・・・!」と、インフォ到着後すぐさま往復ハガキを買いに走り、翌朝には投函していらっしゃる。その行動の素早さ、漲る気合。
この若輩が大変失礼ながら、そんなみなさまのご様子を微笑ましく思い過ごしているという状況です(汗)。

でも・・・そのお気持ち、いかばかりか。と、そう考えるだけで胸に来るものがあります。
12月が本当に楽しみですね!

で、2つ目のタイムリーな話題というのは。
みなさま、ジュリーwithザ・ワイルドワンズに「
涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」の2曲を提供した若きシンガーソングライター・吉田Qさんを覚えていらっしゃいますか?
僕はその後地道に活動を続けるQさんをずっと応援していますが、つい先日リリースされた鈴木雅之さんのニュー・アルバム『オープン・セサミ』に、Qさん作詞・作曲のナンバーが1曲収録されています。

ソニーのショップさんに予約していた『オープン・セサミ』の豪華CDは、先日8日に我が家に無事到着(タイガースのインフォ到着と同日)。
アルバムとしても相当な力作で、さだまさしさんや槇原敬之さんなど錚々たるビッグネームが楽曲を提供・・・そんな中、8曲目

「恋はくじけず~You can't worry love~」


この曲が、我らが吉田Qさんの作品です。
いやぁ、ポップかつ胸キュンな、素晴らしい曲ですよ~。

そして曲自体の素晴らしさもさることながら・・・ちょっと見てください、この楽曲クレジット。


Img650

まず先頭に、ジュリーファンにとってもお馴染みの木崎賢治さんのお名前。
さらに、僕のようなザ・ベストテン世代にとっては凄まじく豪華絢爛な演奏陣。ヴォーカルのマーチン(鈴木雅之さん)を加えますと、シャネルズから3名、チェッカーズから3名というね。
その若さからは考えられないほどに、常に昭和のエッセンス溢れる吉田Qさんの個性的な作曲作品と合わせての、このメンバー。マーチン自らラジオで語っていたように、これは正にバック・トゥ・ザ80'sです!

この曲については、ジュリーのツアーが始まりセットリスト・ネタバレ禁止期間に入りましたら、拙ブログのお題として採り上げ詳しい楽曲考察記事を執筆する予定です。
「恋はくじけず~You can't worry love」・・・みなさまも、機会がありましたら是非聴いてみてくださいませ。

さて、それでは本題です。
今日もいつもの同じような感じの楽曲考察記事ではあるのですが、ダブル・トラックというヴォーカル・レコーディング手法について触れますので、本当に久々に『ジュリー・ヴォーカル徹底分析!』のカテゴリーでの更新とさせて頂きます。
せっかく過去に「
影-ルーマニアン・ナイト」「人待ち顔」と2曲の記事に渡り、ダブル・トラック・ヴォーカルについてこのカテゴリーで掘り下げて書いてきた経緯がありますからね。

今回は
「同じ人が同じヴォーカル・パートを2度歌ったテイクを同時に流してミックスダウンする」
という「人待ち顔」パターンではなく
「ただ1つのヴォーカル・トラックをエンジニアが複製してコンマ数秒ずらしたテイクを作成し、ミックスダウンする」
というパターンのダブル・トラックです。

現在、タローのバンドで活躍中の速水清司さん作詞・作曲のナンバー。僕のような後追いのファンが昨年、あの井上バンドの速水さんのギターを生で聴く機会を得たのも、ピーの復活あればこそでしたね・・・。

アルバム『Jewel Julie -追憶-』から。
「バイ・バイ・バイ」、伝授!

このアルバムはラスト収録の「追憶」以外、歌詞カードに編曲者のクレジットが無く、作詞・作曲もジュリーを含めたバンド・メンバーで固められています。
少なくとも編曲者クレジット無しの1曲目から10曲目までは井上バンドのメンバーが力を合わせて演奏、アレンジを作り上げていったことが容易に推測されます。これは、今年のジュリーの新譜『Pray』に編曲者のクレジットが無かったことと同じ意味合いになるでしょう。純粋にジュリーとバンドの作品、ということです。
バンドとしてのアルバム・・・その最後の10曲目が「バイ・バイ・バイ」です。

タイムリーなジュリーファンの先輩方の中で、このアルバムを新譜でレコード購入し最初に聴いた時、1曲目から通して井上バンドの音とジュリーの美しいヴォーカルに身を委ねてきて・・・この10曲目へ来て「ん?何か雰囲気変わった?」と当時漠然と感じた方はいらっしゃいませんでしたか?

♪ 長い間つきあってきた
  A7            D7

  可愛いあの娘にバイ・バイ・バイ
  E7                   A7

  お前の想い出忘れよう
  A7                D7

  倖せになれよバイ・バイ・バイ ♪
  E7               A7

それまでの9曲の流れから、「バイ・バイ・バイ」でほんの微妙な変化を感じた方がいらっしゃったとすれば、その方はジュリーのヴォーカルをよく注意して聴かれていたのだと思います。
このアルバムでは唯一、ダブルトラック・ヴォーカルが採用されている曲なのですね。

一般的に、ダブルトラック・ヴォーカルの採用理由はいくつかあって、ビートルズ初期にジョージ・マーティン達レコーディング・スタッフが採り入れたのは、「全体の音に厚みを持たせる」という意味合いが大きかったようです。まだ4トラック・レコーディングの時代、限られたトラック数の中でいかに迫力のある音にするか、と工夫していたわけです。
ただ、ジョン・レノンなどはあれほどの素晴らしい声を持ちながら、このダブルトラック処理によって自分の声が変化するのをとても面白がっていたようで、一時期この処理を好んでリクエストしていたようですね。

その後ポピュラー・ミュージックの世界で、ダブルトラック・ヴォーカル処理には様々な意義や必要性が見出されます。
線の細いヴォーカル・テイクを助ける意味で使用されたり、或いはダブルトラックの独特の声がそのまま楽曲のコンセプトとして求められる場合もあります。「バイ・バイ・バイ」はその後者のパターンではないか、と僕は推測します。

ジュリー・ナンバーには全時代通して、ダブルトラック・ヴォーカルの曲は極めて少ないです。まぁ当然ですよね。あれだけのヴォーカル・・・基本的には素が一番良いに決まっていますから。
それでも、曲のコンセプトやアルバム制作背景によっては、稀にダブルトラック処理が採り入れられている曲がいくつかあります。アルバムとして抜きんでて採用率が高いのは『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』。これは、ロンドンに打って出るという世界戦略において、ミックスやエンジニアリングにも期するところがありその結果でしょう。

では、「バイ・バイ・バイ」の場合はどうでしょうか。
先述の通り、「線の細さをカバーする」という理由はジュリーには当然当てはまりませんから、これは楽曲コンセプトが求めた処理かと思われます。
「バイ・バイ・バイ」は歌詞の流れだけで考えると、結構悲しいテーマの歌ですよね。慣れ親しんだ街を去ることに「未練はないさ♪」としつつも、恋人(?)や友人の冷たさに打ちひしがれ、無理に元気を出して旅立とう、というものです。
しかしその中にあって、タイトル・フレーズの「バイ・バイ・バイ」は、爽快に「あばよ!」といった感じのいかにも青年っぽいニュアンス。加えて速水さんの作曲はカラッと潔いブルース進行になっています。
ジュリーのヴォーカル・インパクトで寂寥感が強まるよりも、軽い爽やかな印象を聴き手に与える意図があったのではないでしょうか。ダブルトラックの意図としては、「人待ち顔」とよく似た狙いなんだろうなぁと僕は感じます。
その効果で「バイ・バイ・バイ」はブルースと言うよりむしろ優しげなフォーク・ソングのように聴こえたりもするのです。日本の70年代フォークは、ダブルトラック・ヴォーカルの手法が最も輝いていた時代でもありますからね。

ただ、速水さんの作曲段階でブルース以外に具体的なオマージュ元があったとすれば、それはアメリカン・ロックではないかと僕は推測します。
バンド演奏においても、細い音色のリード・ギターと明るいタッチのピアノ・・・この絡み方は60年代末から70年代初頭のアメリカン・ロック独特の雰囲気を踏襲しているのではないでしょうか。CSN&Y或いはザ・バンドあたりが頭にあったんじゃないかなぁ。
考えてみますとアルバム『JEWEL JULIE -追憶-』は、守備範囲の広さと言うかセンスの良さと言うか・・・作曲家としての速水さんの魅力満載なんですよね。
ストーンズ・バラードの真骨頂を3連符に見出したような「親父のように」、キング・クリムゾンの難解にして絢爛な和音展開を思わせる「ジュリアン」。洋楽好きの一般リスナーをもうならせたであろう名曲揃いです。

ともあれ、「バイ・バイ・バイ」をアメリカン・ロックへのオマージュとするのは僕の個人的な推測に過ぎないとしても、速水さんの作曲がブルース・コードを基調としたものであることは間違いありません。
しかしその進行は渋み走ったブルース一辺倒ではなく、平行移調で短調となる展開部では、胸キュンなメロディーも用意されています。

♪ 街を出て行く俺を 友達だった奴さえ
  F#m          C#7     F#m      C#7

  見送っちゃあくれない 誰一人として
  D7              F               A       C#7

  可愛いあの娘の姿さえもない ♪
  D7      F            A        C#7  E7

この辺りは歌詞のテーマ通りのメロディー、といった感じなのかな。
ここではサリーのベースが表拍になり、2拍目と4拍目で「ぎゅ~ん」と指をすべらせているのが効果的。
そう、井上バンドの(他収録曲との比較としては)控え目ながらも、純粋でけれん味のない演奏も「バイ・バイ・バイ」の爽やかな印象に大きく貢献しています。
井上バンドの演奏トラックは


(Left to Right)
・エレキ・ギター(サイドギター)
・ピアノ
・ベース
・エレキギター(リードギター)

というシンプルなもの。
もちろん、シンプルであるが故にそれぞれのトラックの噛み合わせがアレンジ段階でじっくり練られていて・・・例えばこの曲は、1番と2番の間、エンディング、と2箇所で印象的なコーラス・パートがありますよね。
コーラスのメロディーとコード進行(歌メロには登場しない「A7→B7→E7」という進行。井上バンドのアレンジ段階で生まれた進行なのかもしれません)は同じなのに、2箇所がそれぞれ違ったように聴こえませんか?
これは、演奏が違うのです。

1’36”からのコーラス・パートでは大野さんのピアノが高音連打。大野さんのピアノはヴォーカル部でも鳴っているのですが、ここではそれまでよりも明らかに高音位置での演奏にとって変わります。
対して2’33”からのエンディング・コーラス・パートでは、大野さんのピアノはヴォーカル部と同じノーマルな音域での演奏。そこへ今度は右サイドのリード・ギターが渋く噛んできます。先のパートではこのギターが無いんです。
フェイド・アウトが近くなるとコーラスにジュリーも加わり、大野さんも再び高音部の演奏に切り替え、ギターも一層細かく弾きまくります。やっぱり「ジュリーと井上バンド」のアルバムとしては、この「バイ・バイ・バイ」で締めくくり、ということなんだと思います。

後追いファンの僕は、アルバム『JEWEL JULIE -追憶-』の当時の制作コンセプトについて想像でしか語れません。そんな僕には、ラスト収録のシングル・ナンバー「追憶」がボーナスと言うかアンコールと言うか、そんな感じのアルバム作りに聴こえるのです。
もちろんここでの「追憶」はシングルとはヴァージョン違いで、グルーヴ感溢れる素晴らしいテイクなんですけど、純粋にジュリーと井上バンドのアルバムとしては「バイ・バイ・バイ」までの全10曲、という印象です。

それを強く感じさせるのが、「バイ・バイ・バイ」のフェイド・アウトのミキシング。
この曲、3’35”あたりでもう完全に無音になっているんですよ。それでもミックスダウン作業は継続され、約10秒間の無音状態があり、曲のトータルタイムが3”45”。
これは、アルバムの流れとして「追憶」の前に一旦ひと呼吸置く、という狙いがあるんじゃないかなぁ。みなさまはどうお考えでしょうか。

ところで「バイ・バイ・バイ」での左右2つのギター・トラック・・・僕にはどちらが堯之さんでどちらが速水さんなのかが判別できません。

ヒヨッコ新規ファンの僕も、昨年のピーとタローのジョイント・ライヴ『Childhood Friend』に参加し、遂に速水さんのギターを生で聴く機会を得ました。「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のソロを聴いて、「お前は魔法使い」や「影絵」のリード・ギターが速水さんの演奏であったのだ、ということを今さらながら実感したのですが、「バイ・バイ・バイ」のギターの音色や設定は、ちょっと毛色が違いますからねぇ。
作曲者の速水さんがリードを弾く、というのが普通の考え方なんでしょうけど、この曲の場合はいわゆる”ソロを弾きまくるリード・ギター”ではないのです。アレンジメント・リードなんですよね。
ですから、速水さんが作曲時そのままにサイド・ギターのカッティングを担当し、味付けとして堯之さんが単音を担当した、という線も充分考えられます。いずれにしても、僕には断定はできないです・・・残念。

さて次回更新ですが・・・これまた70年代のナンバーを予定しております。「絶対にこの先のLIVEでは聴けなさそう・・・」という渋いお題が続きますよ~。

記事の枕で蟹江敬三さんのことなど書こうかなぁ、と考えています(本題より枕の方が長くなる予感汗)。
このヒントだけでお題のジュリー・ナンバーが分かる人がいらしゃったら、神!

| | コメント (15) | トラックバック (0)

2013年5月 6日 (月)

沢田研二 「A WONDERFUL TIME」

from『A WONDERFUL TIME.』、1982

Wonderfultime

1. ”おまえにチェック・イン”
2. PAPER DREAM
3. STOP WEDDING BELL
4. WHY OH WHY
5. A WONDERFUL TIME
6. WE BEGAN TO START
7. 氷づめのHONEY
8. ZOKKON
9. パフューム
10. 素肌に星を散りばめて

---------------------

先の5月2日・・・1984年の『ザ・トップテン』と1986年の『歌のトップテン』の放映があり、出演者にジュリーの名前がある、ということでメチャクチャ楽しみにしていました。
当時のジュリーのTV出演に関する知識などまったく持たない僕は、安直にシングル・リリース年と重ね合わせ、頭の中で勝手に「渡り鳥 はぐれ鳥」と「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」の貴重映像を妄想し盛り上がりまくり、いざ録画を観てみますと・・・。

2つとも、ジュリーはほんの一瞬しか登場しなかった・・・(涙)。

ある先輩が「1時間番組にしては出演者の数が多すぎると思った~」と嘆いていらっしゃいましたが、僕はそんなことすら思い至らなかったなぁ・・・残念でした。
まぁ、久々にチェッ○ーズの「OH !! POPSTAR」を堪能できましたけどね。僕は彼等のシングルではこの曲と「NANA」「ONE NIGHT GIGOLO」が好き。
「OH !! POPSTAR」は、普段サックスの尚之さんがサイド・ギターを弾く演奏スタイルが当時強く印象に残り、「自分も複数の楽器をこなせるようになるぞ!」と意気込んでいたことなど思い出しました。
この日放映された『歌のトップテン』での彼等は、キッチリ音を出していましたね~。サックスが無いので、亨さんの単音が重要な曲なんだなぁ、と再認識しました。
番組中には音当てで出演の方々もいらっしゃいましたが、チェッ○ーズはちゃんと「バンド」してます!

しかし・・・考えてみるとその頃ジュリーをテレビで観た記憶って、僕はないんですよね・・・。「渡り鳥 はぐれ鳥」を何かで観たのが最後じゃなかったかなぁ。

で、そんなことを考えて呆けていたら、翌3日『ドリフ大爆笑』での「”おまえにチェック・イン”」の放映をすっかり見逃してしまったという・・・。こちらは素晴らしい映像だったようですね(涙)。

それでは気をとり直して。
今日は、先日めでたく復帰なされたじゅり風呂さんの大先輩、saba様へのお祝い記念お題でございます。
「A WONDERFUL TIME」、伝授!

まず考察本題の前に少しだけ・・・これは少し前に「護り給え」の記事で詳しく触れたことなんですけど、みなさまの中に、原因不明の胃痛(胃カメラを飲んでも何も見つからない)や、断続的な吐き気などに悩まされている方はいらっしゃいませんか?
そんな方には一度、胆石の検査をお勧めします。
胆石というとどうしても、「いきなり我慢できないほどの痛みが襲ってきてそのまま病院に直行」という症状が一般的にイメージが強いと思います。
ですから僕も今年初めに胃痛(だと思い込んでいた)や吐き気に悩まされた時は、てっきり胃がおかしいのだとばかり考えました。が、会社の健康診断で自分に胆石があることを知っていて、問診の際にたまたまそんなことを話したらお医者さんが「それは怪しい」と。
後日よく調べてもらったら、胃の不調だと思い込んでいたのが実は胆石症であったことが分かったのです。

そして偶然同じ時期にsaba様が胆石の手術をなされていたのですが、saba様も最初は胃が弱っているとお考えだったようです。

原因不明の体調不良は、身体ばかりでなく精神的にもキツイものです。胆石の移動進行具合から、今回saba様は手術、僕は経過観察と対処は分かれましたが、いずれにしましても「原因がハッキリした」というのが何より一番良かったことだとつくづく思います。
心の負担というものがどれほど身体に影響するか、僕もこの歳で初めて身に染みました(原因が胃の重大な病気ではなく胆石症だと分かったとたんに症状がサ~ッと退いていったのです。これは僕が単純過ぎるのかな?)

ジュリーのツアー、タイガースの再結成に向けてすべてのみなさまの健康を願ってやみませんが、もし「原因不明の胃痛が・・・」という方がいらっしゃっいましたら、この機に胃以外の原因についても是非調べてみてくださいね・・・。

さて、「A WONDERFUL TIME」です。
思えば(先日観た両トップテン映像を観ても感じたけれど)80年代前半の流行歌の歌詞には、この手のテーマが多かった・・・阿久さん時代やそれ以前のジュリーにもシチュエーションとしては同テーマの曲がありましたけど、80年代のそれは良い意味でライト、詞から連想する風景がカラッとしています。
しかし、普通の人が歌えば単なる背徳の世界。ジュリーが歌えば紙一重で非日常の楽園の地。これは正に歌声と、内からじわっと醸し出される表現力の違い。
「A WONDERFUL TIME」はその意味で、エキゾティクス期のジュリー・ヴォーカルの究極形のようなナンバーです。

加えてこの曲は後にちょっとしたムーヴメントになる”シティ・サウンド”の走りのようなサウンドが大きな特徴。
「”おまえにチェックイン”」→「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」というシングル攻勢は繋がりとして完璧なんですけど、短期スパンでその間にアルバム・
タイトルチューンの「A WONDERFUL TIME」をシングルで切っても間違いなくヒットしたでしょうし、それにより世のシティ・サウンドの台頭が1年ほど早まった可能性もあり得ます。

それでは、そんな隠れた(と敢えて言います)大名曲を色々な角度から考察してまいりましょう。

まず・・・歌詞と言えば、僕は三浦徳子さんがこの曲のキメ台詞として採用した「ティ・アモール」の意味が分からないまま、今まで放置してきてしまいました。

♪ すみれ色の瞳 僕を見つめて
        F#dim              Gm

  一夜だけの風に 髪なびかせ ティ・アモール ♪
     C                         F      B♭         A

禁断の一夜を前にして少しとまどいながらも、身体と気持ちはもう完全に前のめり・・・。
歌の主人公のそんな心境を、「行くぞ~!」とか「やっほ~!」とか(僕の想像力と語彙は残念ながらこの程度です)そういった感じの景気づけ的なフレーズとして、この「ティ・アモール」が使われているのかな。

最初、恥ずかしいことに「フランス語だろうなぁ」と考えました。が、大学でフランス語を2年間学んだはずなのに「じゅ・すい」「ちゅ・え」くらいしか脳に残っていない僕ではどうにもこうにも・・・(汗)。
こうして考察記事を書くことを決めた以上、この状況は許されません。せめて調べる努力くらいはしませんとね。

早速検索!
するといきなり

「もしかして テ・アモーレ?」

とPC画面に冷たく尋ねられ、「たぶんそうです」と素人判断してクリック。
で、辿り着いたのが

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1312268028

ポ、ポルトガル語・・・?
あぁ、それで何となく曲の世界の景色が固まってきました。海は海でもあの辺りの海ね・・・なるほど。
でもこれ、「ti amo」なのかなぁ。だって、「アモーレ」はイタリア語ですよね。
まぁ良いでしょう。今の時点では脳内の風景は地中海付近ということにしておこう・・・正解はきっと、この記事を読んだ優しい先輩が教えてくださるはず
(←甘えまくり)

曲作りやアレンジ、演奏については・・・先述の通り、流行歌としての”シティ・サウンド”をいち早くジュリーの作品に採り入れた、というのが大きな狙いだったと思います。
硬質な音なんだけど、高音がキラキラして目立っている・・・「A WONDERFUL TIME」であればギターとシンセがその象徴。「おりゃあ!」と強く演奏を主張するのではなく、クールなリフレインで静かに昂ぶっていく。そんなサウンドです。
演奏楽器の目立ち役は(もちろん例外はありますが)シンセサイザーで、「A WONDERFUL TIME」の場合もそう。

シティ・サウンドというからには詞のテーマが都会の喧騒なのかというとそうではなく、あくまで音作りに関して、都会的で洗練されているということ。これは付け焼刃的な技術ではボロボロの演奏になってしまうスタイルですが、その点腕に覚えのエキゾティクスならばまったく問題ありません。

後に台頭した時期のシティ・サウンドの詞は、クールな風景描写を織り交ぜたものが多かったようです。
寒いニューヨークのイメージも暖かい地中海のイメージもグローバルに取り込めるスタイルのシティ・サウンドは、日本特有のジメッとした湿り気を一切排除し、カラリとした印象の新しい(当時)音楽。
それは三浦さんの「A WONDERFUL TIME」の歌詞ともバッチリ合っているのですが・・・ジュリーのシティ・サウンドは、後に台頭するそのムーヴメントと比べて完全に異なる特性があります。
それはズバリ、ヴォーカルです。

例えば、シティ・サウンド・アーティストの雄として山本達彦さんが挙げられます。山本さんの曲に顕著なように、そこではヴォーカルも演奏やアレンジ同様に、内なる熱さを極力抑えクールな発声で静かに歌詞とメロディーを伝える、という感じです。
もちろんそれはそれで素晴らしい表現であり、ジャンルとして確立されたシティ・サウンドの真髄と言えます。

しかし。
クールに整頓されたメロディーと演奏に載せて歌うジュリーのヴォーカルの、反して何と官能的、情熱的なことよ!

♪ 青  い 海に 揺れ る
  Dm7 Am7   B♭maj7  Am7  

  あのひとのほほえみ
  Gm       A7          Dm  C#dim  Em7-5  A7

  真  夏の 夢 なの か
  Dm7   Am7  B♭maj7  Am7

  ひとときのWonderful Time ♪
  Gm      A7              Dm


(註:3連符で「Dm→C#dim→Em7-5→A7」と進行する箇所・・・作曲の佐藤健さんのアイデアなのかアレンジの後藤次利さんのアイデアなのかは分かりませんが、素晴らしく冴えていると思います)

16ビートと言っても「A WONDERFUL TIME」のそれは折り目正しく制御されたタイプのシティ・サウンドのそれとは異質で、まるで熱く熱く燃えたぎるアフリカン・ビートのような狂おしさを感じます。これはすべてジュリーのヴォーカルがそうさせているわけで、ジュリーにしか作り得なかったシティ・サウンドがムーヴメントに先だってリリースされてしまった、という・・・これまた「時代の先を行っていた」ジュリー・ナンバーの代表例と言えるのではないでしょうか。
このリズム、この旋律に身を委ねて歌の世界に入り込んだ時、ジュリーが対象女性に向かう時のヴォーカルのパッション・・・僕はここに、およそ20年後の作品「キューバな女」と同じ表現、方向性を感じてしまうほどです。

凄いのは、こういったジュリーの変化、新しいサウンドと表現がタイムリーでこの曲を聴いていらしたファンのみなさまに何の抵抗もなく自然に受け入れられた、ということ(そうだったんですよね?)。
自身の進化と聴き手の支持を両立させる、という難しい命題をいともたやすく、矢継ぎ早に作品をリリースし続けていったジュリーは本当に驚くべき奇跡の歌手です。後にアルバム『単純な永遠』にまつわりサエキけんぞうさんが「世界にただ一人ジュリーしかいないんじゃないか」と発言しているのは、正にそういう意味なんだと僕は思っています。
逆に言えば、どれほど演奏やアレンジのコンセプトが変化しようと、ジュリーのヴォーカルをもってすればそれが唯一のジュリー・サウンドということでしょうか。

先程、シティ・サウンドの音作りに三浦さんの歌詞が合っている、と書きましたが・・・この頃の三浦さんの詞は阿久さん時代のダンディズムとはまた違った男っぽさがあって、女性ファンがジュリーに歌って欲しい言い回しを心得ているかのようです。それもまた、ジュリーのこの曲のヴォーカルを引き出すことに一役買っているでしょう。
僕が最もそれを感じるのは、2番Aメロ。

♪ 明日など誓う男 その方が罪深い
  Gm7   A7  Dm7  Gm7    A7      Dm7

  昨日までのことも みんな
     Gm7   C7     Fmaj7  B♭maj7

  ステンドグラスの光の中 ♪
  Gm7              E7      A7

「明日を誓う男なんて信用できない」と美貌熟したジュリーに断言させてしまう確信犯。
こうなると誰にでも許される歌ではないですよね。ジュリーの声(とルックス)だからこそ通用するわけで・・・ここまでジュリーのアルバムにはいつもそういう曲が1曲は収録されていたのだ、と思いますが、よくぞこの「A WONDERFUL TIME」をアルバムのタイトルチューンに抜擢したなぁ、と。
どちらかと言うと詞も音もライトなイメージのあるアルバムが、このタイトルチューンの存在で現実から一歩逸脱したような不思議な魅力を纏ってきますからね・・・。

さて、僕は5月いっぱいまでは「今年のツアーでは聴けないだろう」と個人的に考えているお題を採り上げています(6月に入ったら今度はセットリスト予想シリーズに切り替わります)。
でも、その中には「今年は聴けないと思うけど、いつかきっと・・・」という曲もあれば、「この先聴く機会は無いだろう」と無念の涙に暮れながら書いている曲の2通りがあって、残念ながら「A WONDERFUL TIME」は後者。これだけの大名曲ですが、今のジュリーが歌いたいタイプの曲ではないように思われます。
これは「万が一やってくれたら大感激!」という気持ちの裏返しなんですけどね。70年代、80年代のジュリー・ナンバーには本当にそういう曲が多いです。
そもそも僕は、「A WONDERFUL TIME」が過去のツアーで複数回歌われたことがあるのかどうかすら知りませんしね・・・。

最後になりましたが・・・ひょっとしたらご存知の方がいらっしゃるかと、この機にお尋ねしたいことがあります。
当時、『A WONDERFUL TIME』というタイトルのエレクトーンの楽譜が出版されてはいなかったでしょうか?

これ、J先輩から昔のジュリー関連本を見せて頂いた際に、2度ほど広告みたいな感じでタイトルだけ見かけたことがあるんです。
確かエレクトーンと明記があったように記憶していますが、果たして中身が本当に楽譜なのか、そもそもそれがジュリーのアルバム『A WONDERFUL TIME』ということで合っているのか、合っていたとしてもアルバム全曲収載と捉えて良いものなのかどうか・・・究極を言えば、それが本当に実在した本なのかどうかすら僕には分からないのです。ネットで検索しても、何もヒットしないんですよ・・・。

もしこれがジュリーの『A WONDERFUL TIME』全曲を収載した楽譜だったら、何とか一度拝んでみたいのです。お持ちのかたはいらっしゃいませんかねぇ・・・。
いや、本当にほんの5分間見せて頂くだけで良いのです。僕が確認したいのはほんの数か所のみですから。
このアルバムのほとんどの収録曲は自力である程度のところまでは採譜できるのですが、ただ1曲「PAPER DREAM」でどうにも力が及ばない細かい箇所があるんですよ・・・。
「PAPER DREAM」は
大好きな曲で、以前記事のお題に採り上げようとしたのですが、採譜段階で保留となったままです。

何か情報をご存知のかたがいらっしゃいましたら、是非お願い申し上げます。

それでは・・・次回更新は70年代のジュリー・ナンバーをお題に予定しております。
ゴールデン・ウィークも終わりですね。夏の『Pray』ツアーに向け、また明日から日常を頑張っていきましょう!


| | コメント (22) | トラックバック (0)

2013年5月 2日 (木)

沢田研二 「グランドクロス」

from『第六感』、1998

Dairokkan

1. ホームページLOVE
2. エンジェル
3. いとしいひとがいる
4. グランドクロス
5. 等圧線
6. 夏の陽炎
7. 永遠に(Guitar Orchestra Version)
8. 麗しき裏切り
9. 風にそよいで
10. 君にだけの感情(第六感)
11. ラジカル ヒストリー

(註:このアルバムの収録曲「ラジカル ヒストリー」の「ラジカル」と「ヒストリー」の間が「・」ではなくスペースであることに今回初めて気がつきました汗)

--------------------

帝国ホテルのトークショーに参加されたみなさま、いかがでしたか?
僕は金銭的なこともあり、少なくともジュリーがLIVEを続けてくれている間はトークショーに参加することは難しいと思っていますが、あのジュリーが自分の好きなことを一方的に(笑)たっぷり話してくれる時間というのは、日々の雑念もかき消える本当に楽しいひとときなのでしょうねぇ・・・。

ジュリーって、「他の人が考えないところを考えている」という点では相当な変わり者で・・・その絶大なネームバリューも合わせ、ミステリー作家で言えばアガサ・クリスティーのような立ち位置のキャラクターだなぁ、と僕は思っています。クリスティーの作品はいつも「裏」を突いてきますからね。
とにかくジュリーのトークショー・・・タイトルだけではどんな中身なのかさっぱり分からない、という・・・。
それが今年はズバリ『タイガースのここだけの噺を一席』ということで・・・最初にインフォでタイトルを知った時に僕は
「おおっ、やっぱり今年はザ・タイガースいよいよ再結成ということで、さすがのジュリーも直球サービスで来たか!」
と興奮しました。
しかしすぐに周囲の先輩や多くのじゅり風呂さん達が


「タイガース」って言ってるけど「ザ」がついてないよ。これは阪神の方のタイガースのことなんじゃない?

と仰るのでビックリ。
むむむ・・・長年のジュリーとジュリーファンの関係、おそるべし。そこまで裏を読まねばならないのか!

確かにジュリーはLIVEのMCなどでも「ザ・タイガース」と常に「ザ」をつけますよね。今年のお正月コンサート初日も、散々阪神の方のタイガースについて語り倒した後に
「タイガースと言えばザ・タイガースですよ!」
と話を繋げ、あの電撃発表があったのでした。

まぁ、昨夜の先輩の速報によりますと、今回のトークショーでは無事にタイガースの話が満載だったとのことで、不参加の僕も何故かホッとひと安心。
阪神の話題一色になったとしても何ら不思議ではありませんでしたからね。なんたってお正月コンサートのタイトルであれだけ煽って種を蒔いているジュリーです。

ジュリーとしても、今の段階で喋りたいプロ野球ネタ、たくさんあるでしょう。
まず、今年の阪神はこれまでのところなかなか出足好調な方でして。新外国人のコンラッドが期待外れでしたが、そのおかげで(?)新井兄弟が揃って復調の兆しを見せています。
しかしながら・・・ジュリーの提唱した”巨人包囲網”計画の方は散々。少し前にヤクルトが頑張ってくれましたが、それでも巨人の全体の勝敗からすれば蚊が刺したほど。巨人は圧倒的な強さで早くもペナントレース争いで独走態勢に入ってしまいました。
このままでは・・・昨年末「キャンディー」の記事を執筆した際にうっかり宣言してしまった


他球団の包囲網をモノともせず見事巨人優勝の暁には、潔く勝者を讃え、ジュリー作曲の原辰徳監督の曲「恋はうたかた」をお題に採り上げ、ヤケクソでお祝いする!

という企画が本当に実現しかねません・・・。
(註:実は記事を書くこと自体は楽しみにしていたりして)

おっと、僕が野球の噺を一席ぶってどうする(汗)。

とにかく・・・僕が本格的にジュリー堕ちしたのは2008年の『ジュリー祭り』。まだ数年しか経っていません。
当然ジュリーの歴史については本当に知らないことだらけで、毎年トークショーをやっていることもしばらくの間は全然知りませんでした。今年で20周年なんですってね・・・凄いことです。

で、トークショーの存在を知った時(たぶん2009年の今頃くらい)、過去にどういう感じだったのかネットで色々調べたことがあるんです。どのサイト様に辿り着いたかすらもう覚えていないんですけど、そちらで過去のトークショーのタイトル一覧を発見。
ヒヨッコの感想は当然「ワケ分からん!」と。
タイトルからその年のトークショーのコンセプトや内容を推しはかる、ということがまるでできないのです。想像もつかない。

その中に(本当に情けないのですが、記憶が曖昧)「キリギリス」がどうたらこうたら、って長いタイトルの年がありましたでしょ?
一覧の中で、僕はこれが一番謎のタイトルでした。

全然関係無いのかもしれませんが、「キリギリス」と聞いて僕がジュリーに関連して思い当たることと言えば唯一、大好きなジュリー・ナンバーの歌詞に登場するフレーズです。
今日はその曲をお題に採り上げます。
アルバム『第六感』から・・・「グランドクロス」、伝授!

とにかく聴くと元気が出る、大好きな曲です。
ジュリーの歌でグ~ッと心が勇んでくるような感覚・・・ジュリーファンのみなさまそれぞれ自分の中にそんな曲をお持ちでしょうが、僕にとってそれは「愛しい勇気」「Good good day」そして「グランドクロス」ですね。

で、問題の「キリギリス」というフレーズが登場するのは、2番です。

♪ 戦いやめられなかった  兵士の耳に
  C        G(onB)      Am   Fm

  キリギリスの僕の歌は  届くだろうか ♪
  C            G(onB)  Am  Fm          Em

これがジュリーの作詞だったら不謹慎にも「あぁ、動物シリーズか」と深く気にとめなかったかもしれませんが(それはそれでファンとして問題アリ、ですけど)、この詞は覚さんですからね。作詞全体のコンセプトに合致した必然性があって、「キリギリス」と言っているはずなんです。

恥ずかしながら僕は「キリギリス」と言えば『アリとキリギリス』の寓話くらいしか連想できません。でも、それで合っているのかな・・・?

寓話の中でキリギリスは、将来への備えなどそっちのけ。余計な荷物は何も持たず、ただ毎日歌を歌い楽しく暮らしています。
アリはそんなキリギリスを尻目にせっせと働き冬に備え、寒い真冬になってもあたたかい部屋で過ごすことができる、一方キリギリスは凍える寒さに泣き途方に暮れてしまう、という話。

子供心に僕がその話に感じていたのは
「何故アリ達はキリギリスを暖かい部屋に招いてあげないのか」
というものでした。
身も蓋もない感想ですけど、僕はこの寓話の「楽ばかりせず、日頃から有事に備えておかなきゃ」という教訓よりもむしろ、アリの非情さの方が心に残っています。「キリギリスがかわいそうだ!」というね。
おそらく、自分自身がどちらかと言えばキリギリス・タイプであることを何となく心得ていたのでしょう。ダメな少年です・・・。

ただ、大人になって多少はアリっぽいこともしているけれど、僕はやはりキリギリス的な本質を持ち続けていると思います。アリ・タイプの方が幸せな人生だ、とはどうしても思えないんですよ。人生観が甘いのでしょうね。

「グランドクロス」に登場する「キリギリス」は、「兵士」と対義的に使われています。
戦闘的で利己的で、仲間内で揉み合いケンカしてあくせくしている「アリ」達のそばで、「みんな仲良くしようよ♪」という歌を歌っている、ということなんじゃないかなぁ、と安直に考えてみましたが、この解釈は都合良過ぎるでしょうか。

覚さんはこの詞で「夢はもう何も見ない」とまで断じていますが、それは「君さえいれば、これ以上は望まない」ということですよね。
「君」以外の余計なものは持たない、と。
そう、これはいわば、究極の断捨離ソング。

実は僕は物を捨てるのが大の苦手でした
(←掃除が苦手とも言う)。生まれて初めて「ちょっと不要なものを見繕って処分し、部屋の整理でもしてみるか」と思いたったきっかけというのが、東京ドームで感動させられたジュリーのMC「日常を粛々と・・・」だったわけですから、正にジュリーは僕の生活スタイルを根底から変えた人だ、と言い切れます。
その後あっという間に所帯を持つことになり、引越しの際には本当にたくさんの物を捨てましたね。古書価格の相場が5千円前後の『サンリオSF文庫』が100冊くらいはあったのかな。それらも纏めて、他の本やCDと一緒に大量に図書館に寄付したりしました。レコードもずいぶん捨てた・・・。
でも、いざそうしてみると後悔どころか、むしろスッキリするものです。これは初めての感覚でした。

と、SFの話が出たところで強引に話を進めますが・・・この「グランドクロス」というタイトル・フレーズ。受けるイメージは、「神の怒り」とか「宇宙の脅威」といったニュアンスで、あまり目出度いフレーズでは無さそう。語呂はカッコイイですけどね。
小学校低学年の頃、子供向けの科学モノの単行本を結構読んでいました。お決まりのテーマで「人類は21世紀まで生きられるか?」みたいな感じの本はたくさんあって、そのせいでしょうね・・・僕が「グランドクロス」から連想するのは”惑星直列”。簡単に言いますと、太陽を軸に水星から冥王星までの惑星が一直線に並んだ時、何かが起こる!というもの(この当時、と言うかつい最近まで冥王星は9番目の惑星とされていました)。
実際、該当年には何も起こらなかったにせよ、子供心に恐怖心(ワクワク感と紙一重でしたから単純な”恐怖”とは違いますが)を植えつけられていたものです。

そんな僕にとって、この曲での「グランドクロス」は、”人智の及ばぬスケールの、畏怖すべきイベント”を象徴しているように感じられます。
つまり、世の中は、人生は、あくせくしていてもどうしようもないことが起こりうるのだ、と。
「世界の終わり」なんて言葉は軽々しく使うものではありませんが、そういうスケールに対峙するちっぽけな自分を客観視した時、ずいぶんつまらないモノを抱えて右往左往する姿よりも、もっと素敵でシンプルな生き方があるんじゃないか、というのが覚さんのテーマなのかな、と僕なりに勝手に納得してみたり・・・。
みなさまの解釈はいかがでしょうか?

さて、「グランドクロス」は覚さんの詞やジュリーのヴォーカルばかりでなく、白井さんの珍しく(?)正攻法な作曲、パワーポップな演奏もやはり素晴らしいです。
特に白井さん作曲のジュリー・ナンバーでここまでストレートにポップなパターンは逆に貴重(他の曲はほとんどがポップはポップでも変化球の変態ポップ・パターンが多い)かも。
その分「ココのリードギターのフレーズは、こう!」と作曲段階から練られていたような明快で端正なギターが、ジュリーのヴォーカルの合間合間で何度も炸裂していますね。
加えてBメロでは、ジュリーのヴォーカルに完全に合わせてギターを弾く箇所があって

♪ も  う 夢はも  う  何も見ない ♪
  Em Am       Em  Am  Dm        Fm

「もう、夢はもう♪」ではユニゾン、「何も見ない♪」では下のハモり。
緻密と言うか芸が細かいと言うか・・・やっぱり変態ですね、白井さん(褒めてます!)。

間奏のピアノとリードギターはもちろん、サビで縦の刻みを入れる”ジェット・ストリングス”と名付けたくなるようなシンセサイザーが影ながら渋いです。

音作りで触れておきたいのは、ドラムスのチューニング。スネアが「カンカン!」という感じで鳴っています。
このドラム・チューニングは次作『いい風よ吹け』収録の「鼓動」、次々作『耒タルベキ素敵』収録の「君のキレイのために」などでも採り入れられています。アレンジャーとしての白井さんが、アルバム全体の流れを描いた際に必要としたアイデアなのでしょうか。

あと、伊豆田さんのコーラスが素晴らしいのは毎度のことですが、2番の「Can you hear me?」の部分のメロディーが最高に美しい!裏メロにするには勿体ないほどの痺れるコーラス・パートです。

こんな感じで、細かく曲を聴いていても、個人的にゾクゾクするポイントが満載。やはり僕にとっては、「曲への思い入れの強さ=アレンジや演奏の好み」ということになるのかもしれません。

この「グランドクロス」は、ジュリーのLIVEを見続けていればこの先1度は生で聴く機会が訪れると予想しています。
ただ、それは今年ではないと思う・・・タイガース再結成も無事終わり、その他色々とジュリーの中で「恩返し」的なことがすべて終わった時。自らの「歌人生」の最終章を意識して足を踏み出した時、ジュリーはこの曲をまた歌うんじゃないかな・・・。
予想が外れていきなり今年のツアーで歌ってくれたら、そりゃあ嬉しいですけどね~。

今の鉄人バンドのスタイルでこの曲がLIVEに採り上げられたとすれば、演奏の一番の見せ場は泰輝さんのピアノ・ソロになるような気がします。
ちょうど昨年の『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーでの「
気になるお前」のように、泰輝さんのキーボードの前でジュリーと柴山さんがヘドバンする光景が目に浮かぶのですが・・・さてどうでしょう。

最後に・・・。
このところ僕は、色々なジュリー・ナンバーを時代を飛び跳ね行き来するような感じで記事を書いていますが、ジュリーは本当に、その時々の年齢でジャストに歌うべき歌を歌ってきているなぁ、と感じることしきりです。

今日のお題「グランドクロス」がリリースされたのは、ジュリー50歳の時。正にこのテーマを歌うにふさわしい年齢で、ジュリーの名曲がまた1曲増えた・・・タイムリーなジュリーファンのみなさまはきっとそう感じたことでしょう。
この曲に限らず、アルバム『第六感』すべての収録曲のコンセプトもジュリーのヴォーカルも、「50代になったばかりのジュリー」の生き様と自然にマッチしていて・・・聴けば聴くほどに大名盤。本物の「歌」が、当時のジュリーの志とともにたくさん詰まっています。
そして、40代も後半に突入した後追いファンの僕にとっては、今ようやくこの「グランドクロス」の歌詞が身に染みてくる年齢にさしかかった、と考えています。

人は必死に色々なものをかかえて生きている・・・それは仕方のないこと。
それは何も「モノ」についてばかりではなくて、仕事だったりしがらみだったり病気だったり自分自身の生き方だったり。
でも、よく言われるように元々人間は何も持たずに生まれてくるわけで。

生まれてきた時の状態に持ち物をリセットする、なんてできっこないんだけれど、懸命に生きていく中で、多くの余計な持ち物を容易く捨てられる気構えというものが心に訪れる・・・そんな出逢いがある。

♪ こんな手ぶらな未来に つきあえる
          C                 E7              Am

  君 素敵すぎるよもう 遠のいていく夏
       F                 G7    C               A7

  グランドクロスに抱かれながら ♪
  F               G7            C

「手ぶらな未来につきあえる♪」とは・・・何と素敵な言い回し、理想的な心のありようでしょうか。
世の中がどうであろうと、そういう気持ちでいることが幸せなんだ、と覚さんは言っていて、ジュリーもそう解釈してこの曲を歌っているのかな・・・。
ヒヨッコの新規ファンはそんなジュリーの「グランドクロス」を聴いて、『アリとキリギリス』のキリギリスさんは、実は最後の時まで幸せを謳歌していたのかもしれないなぁ、などと浅いことをつい考えてしまうのでした・・・。

といったところで。
次回更新はエキゾティクス期のジュリー・ナンバーに舞い戻る予定。リスペクトするJ先輩の復帰お祝いとしてお題を採り上げます。

そして今日は『ファミリー劇場』のトップテンでしたか・・・80年代の懐かしいジュリーの映像が放映されるようですね。
帰宅してから録画を観る予定で、今から楽しみにしています!

(後註:観ました・・・あまりの物足りなさに打ちひしがれております。ジュリーが映ったのは2つの番組合わせても10秒くらいかな・・・)

| | コメント (14) | トラックバック (0)

« 2013年4月 | トップページ | 2013年6月 »