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2013年3月15日 (金)

沢田研二 「Pray~神の与え賜いし」

from『Pray』、2013

Pray

1. Pray~神の与え賜いし
2. Uncle Donald
3. Fridays Voice
4. Deep Love

-------------------

新譜『Pray』。
今年もまた、ジュリーの祈りが届けられました。

聴き手の身体に直接ぶつかってくるような、圧倒的なジュリーの歌声。
適当な言い方ではないのでしょうが、ジュリーに「分かってんのか!」と諭されたような感覚が、まず最初はあって・・・。
なかなか真っ直ぐ向き合う体勢に持ち込めない凡庸な自分がもどかしいながらも、何度も何度も聴くうちに、少しづつ何か確かなものが心に積もっていくような・・・今はそんなふうに感じています。

これまで、ジュリーを語る時に僕はよく「矜持」という言葉を使ってきました。
これは僕自身が20歳くらいあたりから父親に何度となく「矜持を持て」と言われてきたこともあって、身近な言葉だったからかもしれません。
ただ、その言葉の意味を完全に掴んでいたかと言うと、甚だ心もとない状態で。
「信念」と言うと少し違う気がしますし、「プライド」と言うと全然違う気がする・・・そんな曖昧な考えのもとに、自分に無いものを持っているジュリーを見て「矜持」「矜持」と僕は容易く連呼していたように思います。

新譜を初めて聴いて、まず最初にガツン!と飛び込んできたジュリーの歌詞は・・・。

♪ 澄み渡る 矜持あり
  E     C D      C    D

  誰  かに      示すことではな    く ♪
  C#m  C#m7(onB) A       C      Bsus4  B7

「矜持」とは、誰かに示すことではない。
ひけらかすようなものじゃない。

ただ・・・「澄み渡れ」、と。

凡人の身にはなかなか届かない境地ではありますが、ジュリーの歌詞の一節から、その言葉の真の意味に少しだけ近づけたような気がします。


僕は今年も、ジュリーが届けてくれた新曲の1曲1曲を、僕なりのベストを尽くして記事に書いていきます。
ただ、今日の記事は新譜について書く第1回ということになりますので、アルバム全体の印象、購入までのいきさつなどに触れてから本題に入ろうと思います。前置きが長くなりますが、どうかおつき合いくださいませ。

ジュリーの新譜『Pray』を、僕はアマゾンさんで予約していました。
しかし結局、発売日を前にした1月10日の正午過ぎ、僕は銀座山野楽器さんで平積みされていた中の1枚を購入していたのでした・・・。

昨年の『3月8日の雲』は・・・おそらくアマゾンさんで初回入荷設定数の読み違いがあったのでしょう、予約した多くの人が、発売日から数週間経たないと発送されないということがありました。僕もその一人で、待ち切れずに翌12日に店頭で買い求め、遅れて届いたアマゾンさんからの商品を、そのままJ友のYOKO君に引き取ってもらいました。
今年はさすがに去年のようなことはないだろう、と考えていたのですが・・・。

発売日前日の10日になっても、アマゾンさんからの発送メールが来ません。
(註:実はこれは自業自得・・・と言いますか完全な自分のミス。デヴィッド・ボウイの新譜と同時に予約注文し、うっかり2点同時発送の設定にしてしまっていたのです・・・。アマゾンさんが後から発送してくださったCDは、封を開けずにYOKO君に引き取ってもらいます

(後註:デヴィッド・ボウイの新譜の方も素晴らしかったです。80年代以降のボウイのアルバムの中では一番好きです!)


とにかく、どうしても3月11日に聴きたい、という思いがあったので焦りました。
そして、9日の時点で購入を済ませていらっしゃる方もたくさんいらして、そのお一人、keinatumeg様が「1曲入魂」とのレビュー記事を書かれていたのを拝見するに及び、遂にいてもたってもいられなくなってしまいました。
「通常のCDは流れを考慮し、個々の曲に押し引きありで構成されているが、今回の新譜は1曲完結の印象」
と、keinatumeg様は感想を書いていらっしゃいました。

これは・・・鉄人バンドメンバーの作曲アプローチがバラードに片寄ったか!
・・・などとあれこれ想像するうち、「一刻も早く聴きたい」という欲求に抗えなくなった僕は、フラリと『Pray』を求めて街へ出かけてしまったのでした(ちょうど帰る頃にあの凄まじい砂嵐に出くわし、電車も止まってしまい大変でした・・・)。

銀座山野楽器さんで無事に購入。

Yamano


(銀座山野さんで新譜を購入なさったジュリーファンの方々は多かったと思いますが・・・さすがのディスプレイでしたよね!)

本来、翌11日になってから聴くべき作品かとは思いましたが、実際手にしてしまうともう我慢がききません・・・。丸の内線で銀座→池袋を地下鉄で移動する間、ちょうど4曲すべてを1度聴くことができました。

最初の1回を聴き終えた時点での感想は、去年とほぼ同じでした。
ジュリーの歌声、歌詞にただただ圧倒されるばかり。受け止めるのに必死。
そして何度か繰り返して聴くうち、やっと和音構成やアレンジ、そして素晴らしい演奏に耳がいくようになり・・・。

凄い!
まさに1曲入魂です。
その演奏、アレンジは、ジュリーと鉄人バンドでなければこうはなり得ない、というレベルにまで達しています。
何でしょう、この一体感は・・・。

ジュリーは今、世間のどんなバンドよりも、バンドとしての音楽に取り組めている・・・そう思えます。

ぴょんた様が「今回は編曲のクレジットが無いですね」と気づかれました。
昨年までは、作曲者の鉄人バンドのメンバーが編曲のクレジットも兼ねていましたよね。それが今年は無表記となりました。
これはもう、「編曲・ジュリーwith鉄人バンド」ということに他ならないでしょう。

すべてのメンバーの音が繊細に、エキサイティングに重なり合い、ジュリーの歌と一体となる完成度。もちろん伊豆田さんのコーラスもその域にあります。
『涙色の空』から前人未踏の地へと踏み出したジュリーと鉄人バンドはとうとう、ここまでのバンド・サウンドを築き上げたのです。
何の無理も何の誇示もない・・・ジュリーが「歌いたいことを歌う」ことで、誰も届かないほどの高みに自然と駆け上がった、ジュリーと鉄人バンドの音楽。

ジュリーのヴォーカルと歌詞はもう・・・いくらジュリーが自分を「普通の人」と言っても、やっぱり普通じゃないですよ。
こんなに凄い、特別な歌人生を歩み続けている人はいない、と思ってしまいます。

おそらく、「今年も”Pray For East Japan”のテーマで」とのジュリーの依頼を受けた鉄人バンドの曲が出揃ったのは、昨年末から今年始めにかけて・・・あたりでしょうか。
それを受けてジュリーが取り組んだ作業は、「作詞」という感覚ではなかったかもしれませんね。鉄人バンドの作った新しいメロディーを聴いた瞬間、ずっと心に留めておいた思いが開放されて、言葉となって溢れ出す・・・そんな感じだったのではないでしょうか。

そして僕らジュリーファンは、魂の大名盤をまた今年も聴ける。これからまだまだ、聴くたびにきっとどんどん凄くなる。

本当は、それを真に実感するまでじっくり時間をかけてから楽曲考察に取り組みたいところですが・・・そこまでに至るのは、いずれ生のLIVEで体感してからのこと。
今は今の僕が出来うる限りの力を注いで、今年の4曲に対峙し記事にしようと思っています。

今日はその1曲目。
女性らしいGRACE姉さんの優しいメロディーに、ジュリーと鉄人バンドの切実な思いが荘厳にシンクロしたバラード。
「Pray~神の与え賜いし」・・・至らぬ考察ではありますが、とにかく全力で伝授させて頂きます!

♪ 寡黙な人の声 耳済ませば
  E           B       A          E

  復興を 宴に  するなと嘆く ああ ♪
  C#m       F#m7  A            B  Baug

「寡黙な」と言うと思い出されるのが、昨年の「
カガヤケイノチ」のフレーズ。
とすれば今年の新譜1曲目「Pray~神の与え賜いし」は、「カガヤケイノチ」で歌われた人達の続きを描いた歌なのでしょうか・・・。

新譜4曲すべてについて言えますが、ジュリーが歌っているのは「今」。2011年3月11日を踏まえての、人々の「今」です。
僕は、「復興を宴にするな!」と嘆いていた方を知っています。もうその方の声は何処にも残っていません・・・残されたのは、寡黙。

「カガヤケイノチ」を連想したのは、歌詞のフレーズばかりではありません。この「Pray~神の与え賜いし」も「カガヤケイノチ」と同じ、祈りのワルツ・バラードなんですよね。
しかし今回は、ハッキリした「ブン、チャッ、チャッ」のワルツよりも、ロッカ・バラードの譜割りに近いです。でも、「12/8」のロッカ・バラードとも言えません。
スコア表記するなら、「6/8」のワルツでしょう。
僕は新譜の楽曲内容予想記事で、GRACE姉さんは穏やかな長調のバラードを作曲したのではないか、と書きましたが、それは当たりました。でも、ワルツという想像以上に穏やかな曲調までは、考えていませんでしたね。

そう、この曲はとても穏やかで、優しい曲なんです。
アレンジを抜きにして、ただAメロの旋律だけを追ってみてください。まるで童謡のように穏やかで、涼やかで、優しい曲だと感じられるはずです。
同じワルツの曲で、あの震災以降多くの人に歌われいっそう愛されるようになった「ふるさと」という童謡がありますが、メロディーの持つ優しさは、本当にそんな感じです。GRACE姉さんの今回の作曲は、深い思いを土地の風景描写のようにして託した・・・そんなアプローチではないでしょうか。
この曲がアコギ伴奏とコーラスを軸として賛美歌のような出だしになっているのには、そんな意味もあるのかなぁと思います。

ただそこに(GRACE姉さんも望んだことなのでしょうが)、遅々として進まぬ復興への強い苛立ちや迷い、悲しみがまずは加味されます。それはジュリーの1番の歌詞にもあり、また鉄人バンドの間奏アレンジにもあります。

それではここで、鉄人バンドの演奏、全レコーディング・トラックを書き出してみましょう。

GRACE姉さん・・・ドラムス
柴山さん・・・エレキギター(右サイド)、エレキギター(センター)
下山さん・・・アコースティック・ギター、エレキギター(左サイド)
泰輝さん・・・キーボード3種(鉄琴系の音、オルガン、硬質なストリングス系の音)

(ツアー初日後註:どうやら鉄琴系の音は泰輝さんの演奏ではなく、GRACE姉さんのビブラフォンだったようです)


お気づきのように、昨年の『3月8日の雲』収録曲の考察記事では
「これはたぶん柴山さん、これはたぶん下山さん」
としていたそれぞれのギター・トラックを、今回はハッキリ断定して書かせて頂いています。
これは『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアーに参加して「やはりそうか!」と確信を得たところによるもので、どうやら『涙色の空』以降のジュリーの4曲入りマキシ・シングルは、基本として(リード・パートが中央にPANを振られる場合はあるものの)ギタリストの演奏トラックが、LIVEでの立ち位置通りにミキシングされているようなのです。
つまり、ヘッドフォンで聴いた時・・・LIVEで上手に立つ柴山さんの演奏は右側から、下手に立つ下山さんの演奏は左側から鳴っている、というミックスです。
(ただし今回も、「Deep Love」の中にひとつだけ、自信の持てないトラックがあります。その点については「Deep Love」の記事にて書かせて頂きます)

ミキシングというのは縁の下の力持ち的な作業で、決して派手に表に出ることはありませんが・・・ジュリーと一体となり、リスペクトを持って寄り添っているのは演奏者の鉄人バンドのみにあらず。ミキサーさんもそうなのです。
ジュリーは今、本当に信頼できるスタッフに囲まれている・・・僕はこの記事の場を借りまして、左右バランスのことばかりに限らず、この大名盤を深い思いの共有とともに仕上げてくれたミキサーさんにも、大きな拍手を送りたいと思います。

話を戻します。

こうなると、この曲が夏からのツアーで演奏された時にまず注目すべきは、レコーディングではアコギ、エレキの2トラックを担った下山さんがどうやって楽曲全体の演奏を一人で再現するのか、ということ(キーボード3種の音色については、泰輝さん一人で演奏可能。柴山さんの2トラックについては後に語ります)です。
これは・・・昨年の「カガヤケイノチ」に引き続いての、下山さんのアコギ→エレキ持ち替えシーン再現も充分あり得ますよ~!

持ち替えないとしたら、全編アコギということになるのでしょうか。やはりこの曲の1番では、どうしてもアコギの音が必要でしょうから・・・。ヴォーカルとコーラス・パートを優しく先導する、暖かな伴奏ですよね。
でも、2番以降のエレキでのバッキングもしみじみ良くて、到底捨て難い・・・。
例えば、コーラス(後註:更新段階ではフランジャーと記しましたが、改めて聴き込むとどうやらコーラスのようです。アンプがジャズコなのかもしれません)に軽めのディストーションをかけ合わせた音色のアルペジオ。下山さんは今回の新譜で、他の曲でもこのエフェクト設定を採り入れています。

穏やかなメロディーに加味された、苛立ちや憤り・・・それをジュリーの歌詞同様に強く表しているのが、1番が終わったと同時に狂おしく噛みこんでくる柴山さんのリード・ギターでしょう。
昨年の「恨まないよ」をも上回るような、激しい慟哭のギターです。

この曲はホ長調ですが、Bメロではト長調のニュアンスが加わります。「ド・ミ・ソ」(=ト長調のサブ・ドミナント)→「レ・ファ#・ラ」(=ト長調のドミナント)と進行する箇所です。
この2つの和音は、ホ長調の穏やかな曲調をその一瞬だけ尖らせる効果があります。そして柴山さんのリード・ギター部は、そのBメロと同じ和音進行の長尺となっていて、溜まりに溜まった思いを一気に吐き出しているかのような印象を聴き手に与えます。
今から、ステージの柴山さんに当てられる照明と、渾身に猛るソロを奏でる雄姿がとても楽しみです。

また間奏のリード・パート以外では
「よみがえれ僕たちよ♪」
と最後のBメロを今度は希望の祈りに替えて歌うジュリーの後ろで、密かに炸裂するワーミーな情念のバッキングにも、是非注目したいと思っています。
(後註:先輩のブロガーさんも、この音が気になる、と書いていらっしゃいました。確かにムックリみたいな音!その実は、柴山さんのワウ・ギターの音です)

出だしのアカペラっぽい構成を引き継ぐかのような、泰輝さんの荘厳なオルガンがまた素晴らしい。
柴山さんの間奏部では、Bメロの旋律をこのオルガンが復唱するようなアレンジになっていますね。

さらに、硬質なストリングスの音・・・ストリングスとは微妙に違うんだけど、オーケストラのように曲を包み込む音(1番Aメロの2回し目から薄く噛みこんできます)があります。エンディングでたったひとつこの音色だけが美しくも優しく残るので、このキーボードの音に強い印象をお持ちのかたが多いのではないでしょうか。
もちろん1番に登場する鉄琴系の音やオルガンと、このストリングス系の音は同時弾き(ストリングス系の音が下段のセッティングになるかな?)。
泰輝さんの”神の両手”が今年も間違いなくステージで炸裂することでしょう。
加えてこの音は、楽曲全体の低音をカバーする役割も果たしているようです。

そしてGRACE姉さんのドラムス。
間奏部のスネアのアタックから、ヴォーカル部では正統派の刻みへ。とりたてて難しい演奏をしているわけではないのに、この力強さと優しさはどうでしょう。
全収録4曲の中で、自らの作曲作品が最も女性らしい演奏で、最も上品で正攻法なのです。心を晒した直球です。
これこそが、詩人の魂と歌心を持つGRACE姉さんのドラムスですよ!

確かに、間奏部のリードギターとドラムスは、ジュリーの歌詞「不公平すぎます」「理不尽です」といったフレーズを受け、やり場のない感情が溢れる、不穏なフレージングとなって表現されています。
しかし、GRACE姉さんのその不穏なスネアのリズムは、「3月8日の雲」や「恨まないよ」で聴かれた”どうしようもない””ただただ悲しい”といった負のイメージよりも、優しさや健気さの方が上回っています。
これはもちろんGRACE姉さん自身の思いによるところもあるのでしょうが・・・ひとつ、鉄人バンドのさりげないアレンジの工夫があることにみなさまお気づきでしょうか。

バンド唯一の女性であるGRACE姉さんの不安や悲しみに、そっと影から力強く寄り添う音。

間奏部、右サイドに注意して聴いてみてください。
柴山さんが、GRACE姉さんのスネアのアタックと寸分違わないリズムで、ディストーション・ギターでのユニゾンのバックアップをしているのです!
ヘッドフォンに不慣れですとなかなか聴き取りにくいかもしれませんが、このアレンジは「Pray~神の与え賜いし」で最も感動的なアイデアだと僕は感じています。
不安の中にいる人を、決して一人にしない。寄り添い、祈る・・・そんな柴山さんの演奏ではないでしょうか。

つまり、柴山さんも下山さん同様に、この曲で追加ギター・トラックの重ね録りをしていることになります(おそらく間奏リード・ギターが一番最後の録音。ジュリーのヴォーカルよりも後のレコーディングであった可能性もあります)。
LIVEでは、この間奏部右サイドのバッキング・トラックはどう再現されるのでしょうか。下山さんがサッとエレキに持ち替えてフォローするのか、それとも割愛されてしまうのか・・・。

いずれにしても、この「Pray~神の与え賜いし」という曲は、優しく穏やかな祈り、寄り添う思いを感じさせるアレンジをまず目指しているのではないか、と考えているところです。

そして、ジュリーの歌詞もきっとそうなんです。
1番で歌われる苦しみ、悲しみ、不安を受けての間奏からいざ2番に入ると、詞の内容はガラリと変わります。長い道のりではあるけれど「粘り切り拓ける、時は味方」なんだ、とハッキリ希望を指し示しています。
時は味方・・・「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」ですね。その気持ちを少しでも多くの人が持つこと、なのでしょう。
1番で憤りや苦しみを歌ったからこその、2番の希望。

1番の「憤り」という点で言うと・・・歌詞中に、「かの人」の「天罰」なる発言が登場します。
実は僕は「かの人」石原氏については、複雑な思いを持っています。

福祉都政について・・・氏の、この場合においての「強き者が弱き者を助けるのは当然」という信念は、尊敬しています。

(先の都知事選で、応援していた宇都宮氏が、前任者石原氏の都政を「福祉切り捨て」と発言したと知った時は「これは勝てない」と思ってしまいました。他都道府県を凌ぐ石原氏の福祉政策に助けられ感謝している社会的弱者の方々とそのご家族・・・そんな多くの都民の浮動票がこれで望めなくなった、と考えたからです。宇都宮氏ほどの人がそんなスタンスに立たねばならないのが選挙戦というものなのかもしれませんが、「前任者の良いところは良いところとして認め引き継ぐ」とひとまず明確にした上で、氏本来の政策を掲げて戦っていれば、投票結果は大きく違ったのではないか・・・と、これはあくまで私見です)

しかしながら石原氏の、「天罰」「些細なこと」「単なるセンチメント」「戦争するぞ」等の発言は、僕にとってはまったく受け入れ難いものです。それこそ、氏が「弱者切り捨ての人だ」と思われたとしてもこれは仕方ない・・・。
ただ「Pray~神の与え賜いし」でのジュリーの歌声を聴くと、「それを怒っているだけではダメなんだ」と言われているように感じます。
怒ることよりも大切な感情があるだろう、と。

僕は昨年の「単なるセンチメント」発言の時は、烈火の如く怒りました。ジュリーの気持ちを「単なる」などと言い捨てるのか、と。
でもそのすぐ後、ジュリーならば「単なるセンチメントの何が悪い?」と涼やかに応えるのではないか、と考え直しました。これは、どの曲のお題の時だったかなぁ・・・記事にも書いたことがあります。
ジュリーについてそう考えるのは、僕自身が「これが僕の気持ちだもの」と言えるかどうか、ということにも繋がっていくのかもしれません。

神が罰など与えるものか。
ジュリーに澄み渡る矜持あり。

それにしてもジュリー、「のたもうた」とはまた、かなり強烈ですよね。
現代で「のたもうた」と言うとそれは、「偉そうに言ってくれやがった」くらいの意味なのでしょうから・・・。

さて、予言しておきます(と、僕などが言わずとも・・・ジュリーファンのみなさまの感性はそれを逃がしはしないでしょうけど)が、CDで聴いた時と生のLIVEを体感した時とで、今回の収録曲中最も印象が変わるのは、この1曲目「Pray~神の与え賜いし」だと僕は考えます。

CDリリース直後の段階で、いくら僕がここで「この曲は優しい曲だ、穏やかな曲だ」と語っても、やはり1番の歌詞や、間奏の荒ぶるリードギターのイメージは相当強く、ある意味「怖さ」を感じながらこの曲に聴き入る方々も多いと考えられます。
それが生のLIVEで歌われ演奏されると、ジュリーのヴォーカルは何処までも優しく、激しい間奏はむしろ美しさをもってすべての人に聴こえるのではないでしょうか。
「Pray~神の与え賜いし」はきっとそういう曲だ、と僕は思っていますが・・・考察が甘いでしょうかねぇ。

今回の新譜では、昨年の『3月8日の雲』収録曲のような、驚異的な高音のメロディーは登場しません。
例えばこの「Pray~神の与えし」の最高音は、高い「ミ」の音。男声としては高いことは高いですが、ジュリーならば余裕で歌える音域です。
長いツアーを通して「歌いきる」ことを重視してそういう設定にしたのか、それとも鉄人バンドの作ったキー通りに歌って結果的にそうなったのか・・・それは分かりません。
しかしこれで、夏からのツアーでの新譜4曲が、最大の表現力と最大の感情と至高の歌声で届けられることは間違いないでしょう。
特にこの「Pray~神の与え賜いし」では、お客さんの様々な不安が癒され、会場全体が穏やかな感動に包まれることを期待しています。

「遂げる日」とはどんな日か。
ジュリーは最後にこう歌います。

♪ 神の与え賜いし 運命だと
  E           B         A        E

  いつか思える日を 与え賜 え
  C#m          F#m     A    B  E

  いつか思える日を ♪
  C#m          F#m


現状では、とてもそんなふうには思えない。でも、そう思える、遂げられる日がいつかきっと来ますように・・・。
それがジュリーの「Pray」=復興への祈り。そして聴き手へのメッセージ。
やっぱりこの曲は、「カガヤケイノチ」から続く、希望を示した歌だと僕は思うのです。

「祈り」と言えば・・・僕はつい先日、「護り給え」と祈る記事を個人的に書かせて頂きました。
病と闘っていらっしゃる先輩は、まだまだ難しい病状ながらも、その後お医者さんが「峠は越えた」と言ってくださった、と娘さんが再度近況をお知らせくださいました。
会話での明確な意志疎通や、身体を動かすことなどは未だなかなか難しいようですが、娘さんがジュリーの新譜を聴かせてあげると、先輩は笑顔を見せていらしたそうです。

多くの人が強い思いを重ねれば、祈りが届いて叶うことがある・・・ジュリーの「祈り」という曲への思いも合わせ、僕はそう信じます。

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コメント

DYさん、お邪魔します。
今年も稀有な作品が生まれましたね…。サウンドについての伝授は、言うことなしです!個人的には、ミキシングのことについて触れてくださったのが、うれしいです。今回の新譜の音は、音楽的知識が乏しい私が聴いても『素晴らしい!』と思えるほど、優れたミキシングだと思います。独立系作品とは思えない完成度ですよね!そして、ジュリーの歌唱は、keinatuemagさんが書かれたとおり、シンガーとして新たなステージに上がった、と感じさせる素晴らしい歌唱です!
で、“Pray~神の与え賜いし”での歌唱についての個人的感想ですが、ジュリーは、曲の素直で優しい持ち味を引き出しつつ、実に細やかで繊細な感情表現を織り交ぜています。そして、私は、その表現に、ジュリーの深い祈りを感じました。
今回の新譜でジュリーは、心から思うことを歌うだけで、それが絶唱として成立してしまう領域に到達したのかもしれません。もちろん、それは、ジュリーの長年の精進による引き出しの多さの賜物です。震災が、ジュリーの“伝える力”を引き出したことは、複雑な気持ちにもなるのですが、ジュリーの被災地、そして日本を想う真摯な気持ちに神が応えてくださったのだと思います。

追伸:ボウイが新作をリリースしたタイミングにも、ある種の“必然”を感じました。五輪後、金融危機が引き金となってEUの理念が綻びを露見し、どんよりとした空気に支配された欧州が必要としているのは、まさにボウイの音楽だと思います。ボウイの“ヤミ(闇と病みの両方)”に対する感受性は、さすがです。

投稿: 74年生まれ | 2013年3月15日 (金) 19時18分

74年生まれ様

ありがとうございます!

そう…本当に稀有な作品ですね。ただ、ジュリーにとっては「あたりまえ」な作品なのかなぁ…。

この1曲目をジュリーが「祈る」というタイトルの曲にしたのは、やはりGRACE姉さんの作曲がワルツだったからだと思います。
「護り給え」「カガケイノチ」…ジュリーの祈りの言葉に、ワルツのリズムが合っているのでしょうか。

ボウイの新譜については『ロックジェット』にも素晴らしい記事があります。
正直僕は『レッツ・ダンス』以降のボウイの作品とは波長が合わなくなってしまいました。つまり今回は、僕にとってほぼ30年ぶりの、ドキドキするボウイの新譜ということになりました。

僕は、凄い2作品を同時注文していたんですね…。

投稿: DYNAMITE | 2013年3月15日 (金) 21時27分

DY様 こんばんは。

いきなりアカペラの讃美歌か、と意表を突かれました。でも、間奏でカズさんの狂おしいギターが唸りだし、やっぱりただの讃美歌じゃない、と向き直しました。
時々ジュリーのヴォーカルに被さる鉄琴系の音、私はGRACEさんのメタルフォンかと思ってたのですが。
生あるものの生を弄ぶものへの聖なる怒り。
「のたもう」で、「あの人」へのケンカ売りしてくれてるし。

自然災害は火山列島に住んでいるものの宿命ですが、原発は「ナウシカ」の巨神兵のようなもの。
自らの手に負えないものを創りだし利用し、持て余して封印することも出来ず。
どちらにしても、巻き込まれたものにとっては「天罰」もへったくれもないです。

この4曲はあらかじめきっちりとアレンジがあったというよりみんなでアドリブ演奏をしながら仕上げていったんじゃないかという気がするんですが。どうなんでしょう?

投稿: nekomodoki | 2013年3月16日 (土) 00時34分

DY様

度々失礼します。新譜4曲が頭の中で渦巻いています。そして、考察記事を読んで更に熱くなっています。特に、アレンジや演奏、コーラスにミキシングに至る全ての作業が、ジュリーと一体しているというご意見に納得しました。私もヘッドフォンで聴いてみました。

過去の歌がプレイバックしました。「僕はキュンとなる性質だからごめんね(何度もキュンとさせて欲しい)」「電話は出んわ(絆は消えゆく傷なんだね)」「静かに通る声(静かに熱い覚悟)」「モニュメントは要らないよ(モニュメントなど要らない)」

「護る」同様、ジュリーが今伝えたい言葉がこうして、過去の作品と一緒に頭の中を一瞬にして駆け巡っています。

「彼の人のたもうた 天罰だと」の説明をありがとうございました。記事を読んで、あの日のニュースを思い出しました。

投稿: BAT OUT OF HELL LOVE | 2013年3月16日 (土) 00時48分

DY様へ

 弱っちい(笑)、今の私の心は、まだ新譜を聴くには? 至って居りません。
 コメ欄を閉じられた☆二つ前の記事『護り給え』の“6/7頁”に、少し? 気持ちが繋がります…
 待ちに待った新譜を購入したものの、仕事に追われていた頃は、ジュリーの楽曲に限らず、じっくり聴く時間を作り出せなくて、1ヶ月以上経っても(*時には購入したことも忘れて?)、CD
は“未開封”のままということが度々ありましたが。
 然し、時間があっても(苦笑)
…流れ的に? ジュリーの今までのスタンスから、☆3月11日に“こういう形の新譜”を出されることには“大絶賛”をしたいのですが…今回の楽曲の歌詞の端々に、想像しうる以上に?
あまりに“ストレートな語彙”が使用されていることを、幾つかのジュリ風呂さんで知り…
 昨春、『3月8日の雲』を初めて聴いた時に、何だか“とても正常では居られない”気持ちに襲われて、聴き終えた後、暫く動けなくなった…「“魂”を持っていかれた様な(!?)、感覚」が蘇り…“ジュリーの声”を通して、これらの歌詞を耳に入れてしまうことに、突如? 抵抗感が出てきて…どうしても聴けないのです。
 ※ 昨年は…その後、幾つかのジュリ風呂さんの関連記事に巡り合ったお陰で、いつしか我が心も整い(笑)…夏のソロ・コン前には、車を運転しながらでもCDを聴ける(*“魂”を持っていかれなくなった?)様になって、コンサート会場では、普通に笑顔で☆『カガヤケイノチ』を合唱できたのですが…

 今、ここに、コメントされた皆様方それぞれの“考察力”の素晴らしさに触発されて居ります。
 ジュリーの歌の数々は、ずっと、私の“思考の道しるべ”になってくれていたことは否めません。
 再び、ジュリーの与えし課題…“イノチ、命”と向き合っています。
 感謝しながら…又々“日にち薬が必要な歌詞”を乗り越えなければ…
 もっと暖かくなって…お彼岸を過ぎた頃には、今回の全新譜と、ちゃんと向き合える心になっていたいと思います。
 有り難うございました。

投稿: えいこはん | 2013年3月16日 (土) 10時51分

nekomodoki様

ありがとうございます!

最初の1回目で聴いた時には、この曲には怖さの迫力を感じました。昨年の「3月8日の雲」「恨まないよ」の2曲と、曲を受けとる自分の心は近かったんです。
しかし数回聴いて、「カガヤケイノチ」に近くなってきました。「怖さ」より「穏やかさ」を強く感じるようになったんです。

鉄琴系の音、確かにGRACE姉さんかも!
LIVEでは、老虎の時の「銀河のロマンス」のように、泰輝さんとGRACE姉さんでキラキラをユニゾンするかもしれません。
僕は今回の鉄人バンドのアレンジで、寄り添い合う、重なり合うという「ユニゾン」のアイデアがひとつのメッセージになっているのでは、と考えます。
当記事で触れた柴山さんのギターとGRACE姉さんのドラムスも然り…このユニゾン・アイデアの魅力については、「Fridays Voice」の記事で詳しく書くことになると思います!

すみません、一度切ります。

投稿: DYNAMITE | 2013年3月16日 (土) 19時56分

お返事遅れて申し訳ありませんsweat01

BAT OUT OF HELL LOVE様

ありがとうございます!

「何度もキュンとさせて欲しい」「モニュメントなどいらない」…僕もまったく同じ思いで聴きました。
過去曲でのジュリー独特の言葉遣いが、本当に「自分の言葉」だったことが、昨年の作品も合わせ、震災をテーマにした曲達で痛いほどに伝わってきます。

その上で、鉄人バンドの演奏とアレンジ、伊豆田さんのコーラス、そしてミックス。すべて一体となって…凄いとしか言えません。
まず1曲記事を書いた後にも新たな発見があり、あれもこれも書けば良かった、という思いに駆られたりしますが…とにかく僕も全力で前に進んでいきます!

たびたびすみませんsweat01また一度切ります。

投稿: DYNAMITE | 2013年3月18日 (月) 09時01分

えいこはん様

お返事遅れてごめんなさいsweat01

僕は昨年「カガヤケイノチ」の記事で、無理に急いで受け止めなくていい、ゆっくり聴いてくれればいい、というジュリーのメッセージを個人的に感じたことを書かせて頂きましたが…今年もまったく同じことを思います。

暖かくなって…本当にそうですね。
僕も今年は春に母の十三回忌で帰省の予定がありますが、その頃にはこの新譜の記事も書き終えているはずで、改めて違った思いを持って曲を聴くことになるのでは…と思っています。

4曲とも素晴らしい名曲です。僕もひとまず記事を書き終えたら、再度1からゆっくりと味わっていくつもりです!

投稿: DYNAMITE | 2013年3月18日 (月) 09時14分

DY様

こんにちは、桜満開です。

さて昨日、銀座の山野楽器に立ち寄りました。「Pray」が、アルバム週間ランキングで2位でした。直に見るとやはり嬉しい。

私はCDを車の中で聴くことが多いんですが、デジタル機能って便利ですねぇ。マイアルバム作成が出来るので、「3月8日の雲」と「Pray」を繋げて8曲。それに、「涙色の空」「緑色のKISS KISS KISS」「無事でありますよう」「護られてI Love You」の4曲(いずれも作詞ジュリー、作曲大輝さん)を繋げて12曲。更にボーナストラックとして、「我が窮状」「ヤマトより愛をこめて」の2曲(こちらは作曲大野さん)を入れて、計14曲。待望のフルアルバムが完成です。過去作品がとても新鮮に感じますし、穏やかな気持ちにさせてくれるので、気に入っています。

今作全曲を通して、ギターのハードプレイも大きなポイントだと思います。(たぶんカズさんだと思いますが)私には、サンタナのような哀愁を感じながらも心地よいハードプレイだなと思いました。カズさんもジュリーの歌唱同様に、キャリアの集大成と新境地に至ったのかなと嬉しく思っています。

投稿: BAT OUT OF HELL LOVE | 2013年3月22日 (金) 12時18分

BAT OUT OF HELL LOVE様

ありがとうございます!

桜…このところの陽気にビックリしたかのような感じで咲きましたね~。

柴山さんはじめ鉄人バンドの演奏、仰るように完全に新境地に達していると思います。
どんなに激しい演奏をしても、「俺達はロックしてるんだぜ!」といったような気負いがまったく無いのです。それが逆に途方もなくロックで…。
僕が鉄人バンドの、ジュリーの「歌いたいこと」との一体化を感じるのは正にその点です。

ジュリーと鉄人バンドは、とんでもない境地に向かっているようです。
この先どこまで駆け上がっていくのか…それをタイムリーで体感できるのは、本当に幸せなことだと思っています!

投稿: DYNAMITE | 2013年3月22日 (金) 12時44分

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