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2013年2月

2013年2月26日 (火)

沢田研二 「遥かなるラグタイム」「now here man」

from『いくつかの場面』、1975

Ikutuka

1. 時の過ぎゆくままに
2. 外は吹雪
3. 燃えつきた二人
4. 人待ち顔
5. 遥かなるラグタイム
6. U. F. O.
7. めぐり逢う日のために
8. 黄昏のなかで
9. あの娘に御用心
10. 流転
11. いくつかの場面

from『俺たち最高』、2006

Oretatisaikou

1. 涙のhappy new year
2. 俺たち最高
3. Caress
4. 勇気凛々
5. 桜舞う
6. weeping swallow
7. 遠い夏
8. now here man
9. Aurora
10. 未来地図

--------------------

今回は、急遽執筆の記事にて更新です。

先日upしました、ジュリーの新譜『Pray』楽曲内容予想記事に関して、いつもお世話になっている先輩から、ご質問を頂きました。
ご質問は記事本文の記述についてではなくて、頂いたコメントへの僕のお返事の文章の一節。

それは、僕が下山さん作曲の「Uncle Donald」の曲想を
「ハッキリしたラグタイムではないか、とも考えています」
と、個人的な予想をつけ加えたものでした。

先輩はこう仰るのです。
「”ラグタイム”というジャンル(?)がよく分かりません。アルバム『いくつかの場面』に「遥かなるラグタイム」というジュリーの曲もあって、少し気になりました。機会があれば教えてください」
と。

い~~~い質問ですねぇ~~~!

な~んて、大げさなことでもないんですが、「よくぞお尋ねくださった!」と思いました。
あの『Pray』の内容予想記事は1日でバ~ッと書いたものですから、あれこれ色々と考えたことをすべて書けていないのです。そして

「Uncle Donald」=ラグタイム

と、僕がそのタイトルから連想するに至ったある楽曲の存在があったことも、書けずじまいでした(勘の良いかたは「あれかな」と既に思っていらっしゃるかな?)。まぁ、大したことでもないと考えて書かなかっただけなのですが・・・。

先輩のご質問に単にお応えするだけでは寂しいですから、その先輩からのリクエストという形で、今日は僕が常々「これぞジュリー版ラグタイム!」と捉えている2曲をお題に採り上げつつ、その辺りを書いてみましょう。
(2曲同時のお題記事というスタイルは、2009年の超ヒヨッコ・モード全開期に書いた「あのままだよ」「Long Good-by」以来のことになります。懐かしいなぁ・・・)

まず1曲は言うまでもなく、アルバム『いくつかの場面』から「遥かなるラグタイム」。
もう1曲は、アルバム『俺たち最高』から「now here man」。

伝授!・・・と言うほどの深い記事ではありませんが、お楽しみくださいませ~。

さて、特別な音楽知識はなくとも、今日のお題のこの2曲が「なんとなく似てるな~」と日頃からお考えの方々は多いのではないでしょうか。
いやいや、改めてパッと続けてお聴き頂ければ歴然のはずです。この2曲、ハッキリ言って「似てる」どころではありません。瓜2つです。
もちろんこれは違う作曲者による偶然の類似で、一般的に「ラグタイムっぽい曲」という狙いを持って作られた結果、そうなってしまっただけのことです。

にしても・・・似てます。
ちょっと両曲のAメロのコードを検証してみましょうか。

まずは、「遥かなるラグタイム」。

♪ 窓辺遥かに 陽が落ちると
  B♭ D7        Gm           B♭7

  ああ流れくる  あの遥かなラグタイム ♪
     E♭ Edim  B♭   G7    C7        F7

変ロ長調のラグタイム王道進行です。

一方の「now here man」。こちらはハ長調です。

♪ 不意打ちで 鞄  から
  C    E7        Am  C7

  飛び出したポートレイ   ト ♪
  F          F#dim   Em7-5  A7

これまたラグタイム王道。
試しに、比較しやすいよう「now here man」の方を「遥かなるラグタイム」と同じ変ロ長調に移調して表記しますと

♪ 不意 打ちで 鞄  から
  B♭   D7        Gm  B♭7

  飛び出したポートレイ    ト ♪
  E♭       E
dim     Dm7-5  G7

となります。最後の2小節以外、まったく同じ進行をしていることが分かりますね。
いずれも、ウキウキと楽しげな佳曲に仕上がっています。この”ウキウキ感”がラグタイム・ナンバーの魅力のひとつでもあります。

そもそも、ラグタイムとはどんなジャンルなのか。
僕自身、さほど深い知識があるわけではないので、ここで『ラグタイム・ピアノ・コレクション』というスコアの序文を抜粋しましょう。


①1980年代に、アメリカのミズーリ州シダリアの黒人ピアノ奏者スコット・ジョプリンやトム・タービン達によって作られたピアノ音楽をラグタイムと呼びます。黒人特有のリズム感覚が出たシンコペーションのリズムが特色です。楽譜通りに演奏され、即興演奏の要素はありません。が、後年「ジャズの誕生」の1要素となりました。
②「古き良きアメリカ音楽」には、様々な作曲家達がいました。本書では、代表的な作家、ジョージ・ガーシュインとスティーブン・コリンズ・フォスターに焦点をあて、彼らの作品でも珍しいピアノ・ソロ小品を収載しました(・・・以下略)。

ということで、、有名な作曲家が何人か列記されています。
大して深く彼等を知らずとも・・・例えばスコット・ジョプリンの「エンターテイナー」は、曲を聴けば誰もが「あぁ、これ聴いたことある!」という感じでしょう。
大きな特徴は、裏拍を強調したリズムで、「跳ねる」感覚があるのです。これはジャズも同じで、ラグタイムがジャズのルーツとされる1要素と言われているようです。
僕は映画『陽のあたる教室』でジョージ・ガーシュインの「アイ・ガット・リズム」という曲を覚え、当時は無知故にそのリズム感から「ガーシュインはジャズなんだな」と勝手に認識してしまっていたものでした。基本的には、即興性の有無によってジャズと区別されているのだそうです。

1990年代後半だったと記憶していますが、それまで作曲家単体の曲集として自由な出版が厳しい状況だったジョージ・ガーシュインの版権が使いやすくなり、楽譜業界という狭い世界ながら、ちょっとした”ガーシュイン・ブーム”が起きたことがあります。
その流れで、ガーシュインに限らず「ラグタイム」という音楽ジャンルのスコア普及が脚光を浴びることとなり、様々な作曲家の様々なラグタイム・ナンバーのオムニバス・スコアが量産される時期がありました。
そのおかげで僕も当時、遅まきながらようやく数々のラグタイムの名曲達を初めて知ることとなり、その後、昔ながらのスタンダード曲や他ジャンルの名曲をラグタイム風にアレンジする編曲の面白さなどについても学んでいったのですが・・・。

その中に、こんなスコアがあったのでした。

Oldmcd

↑ 『楽しいラグタイム・ピアノ連弾曲集』目次より抜粋

このスコアは、1曲目「エンターテイナー」以外は元々ラグタイム・ナンバーではなく、ラグタイム・アレンジに適した有名な曲を寺島尚彦先生がラグタイム風に編曲なさったものですが・・・目次だけでみなさまもうお分かりでしょう。注目は2曲目のタイトルです。

マクドナルドじいさん。

いや、これは誰もが知るメチャクチャ有名な曲ですよ。
Old McDonald」・・・ここでは「マクドナルドじいさん」の邦題となっていますが、日本語詞が載った「ゆかいなまきば」と言えばみなさまもピンと来るでしょう。この方がタイトルもよく知られていますからね。

原曲はアメリカ民謡なのですが、曲の持つ愛らしい雰囲気、ウキウキする裏拍のアクセント・・・これで跳ねる感覚を強調すれば、正にラグタイム・ナンバー。
僕の中で「かなりラグタイムっぽい有名曲」と以前からインプットされていた曲で・・・解禁情報が二転三転した『Pray』収録2曲目のタイトルが「Uncle Donald」だと分かった瞬間、脳裏にパッと浮かんだ曲がこれだったんです。

「オールド・マクドナルド」から「アンクル・ドナルド」への連想。安易ですかね?
でも僕が「Uncle Donald」=「ドナルドおじさん」のタイトルから、ウキウキなラグタイム調の曲を想像してしまったのは、このためでした。
予想が当たるか当たらないかは新譜リリースまでお預けとして・・・4曲すべてが震災をテーマにした組曲・第2弾と判明した今、愛らしく楽しげなリズムで、その上でジュリーがシリアスなテーマに向かう曲、というのを今年は聴いてみたい、と・・・これは個人的な願望でもあります。

40年以上も歌手人生を歩んでいるジュリーのことですから、当然「Old McDonald」という原曲タイトルは知っているでしょう。その楽しげな曲調が、下山さんの作ったラグタイム風のメロディー、リズムに取り組んだ作詞作業の過程で浮かんできて、語感からの連想もあり、「ドナルド(キーン)おじさん」のことを歌いたくなった・・・それが今の僕の予想です。
全然外れるかもしれませんけど。

今回は肝心の楽曲考察が浅くなり恐縮ですが、お題の2曲について少し。
「遥かなるラグタイム」「now here man」・・・いずれも僕としては、アルバムの中で抜きん出て好きな曲、というわけではありません(もちろん、この2曲がアルバムの中で特に好き、というファンのみなさまもいらっしゃるでしょうが)が、「この曲が無ければアルバムの流れが成立しない」重要なナンバーだと感じています。

特に「遥かなるラグタイム」は、B面の「あの娘に御用心」と共に、寂寥感、孤独感に満ちたアルバム『いくつかの場面』収録曲の流れの中にあって、ホッと息を整えるような何とも言えない安心感があります。「人待ち顔」「U.F.O.」という僕の大好物2曲の間に配置されているのも個人的には大きなポイントで、絶対に飛ばして聴くことはできない、無くてはならない曲だと思います。
これはおそらく詞先なのかな。詞の中では「古き良き、懐かしきもの」の象徴として「ラグタイム」というフレーズが使われ、それを受けて東海林修さんが、ズバリ!な曲調をあてがったのではないでしょうか。
ジュリーのどこか力の抜けた飄々とした歌い方は、やはり「ラグタイム」を意識したものでしょう。「気軽に踊れる曲」という狙いかな。
このヴォーカル・スタイルはジュリー自身の判断だったのか、それともスタッフからのサジェスチョンがあったのか・・・興味深いところです。

「now here man」の方も素敵な曲です。
ただ僕の場合は、こういう曲想だとどうしてもランニングのベースラインが恋しくなってしまうなぁ・・・。でも、白井さんがアレンジでウクレレを採り入れたことにより、曲のウキウキ感が増していますね。
ちなみにこの「now here man」というタイトルは、ジュリーも歌ったことがあるビートルズの名曲、「ひとりぼっちのあいつ」(=「Nowhere Man」)とかけてあるんじゃないかと思うんですけど・・・どうでしょうか。

どちらの曲も今後のLIVEで聴くことは難しいかもしれませんが、今年「Uncle Donald」という新たなラグタイム・ナンバーが生まれることを期待しつつ・・・予想大外れの可能性を承知で、今日はこの記事を書かせて頂きました。

とにもかくにも、新譜が楽しみで仕方ない毎日なのです。
今年はどうか発売日到着を・・・頼むよアマゾンさん!

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2013年2月22日 (金)

沢田研二 「確信」

from『耒タルベキ素敵』、2000

Kitarubeki

disc-1
1. A・C・B
2. ねじれた祈り
3. 世紀の片恋
4. アルシオネ
5. ベンチャー・サーフ
6. ブルーバード ブルーバード
7. 月からの秋波
8. 遠い夜明け
9. 猛毒の蜜
10. 確信
11. マッサラ
12. 無事でありますよう
disc-2
1. 君のキレイのために
2. everyday Joe
3. キューバな女
4. 凡庸がいいな
5. あなたでよかった
6. ゼロになれ
7. 孤高のピアニスト
8. 生きてる実感
9. この空を飛べたら
10. 海に還るべき・だろう
11. 耒タルベキ素敵

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いや~参りました。
今回の記事、本当はもっと早くに更新できるはずだったのですが、結構日数が空いてしまいました。
それには理由があります!(キッパリ)

去る19日、ココログさんのログイン管理画面のリニューアルがありました。
すいぶん前から告知されていたことで、僕も一応準備はしていて(とは言ってもIDとパスワードの再度入力に備えてメモしておくだけですが)・・・なかなか切り替わらないなぁ、という感じで。
すっかり忘れかけた頃にようやくリニューアルとなりました。僕は問題なくログインし、今回記事の下書きの総仕上げにかかりました。

LIVEレポートなど特殊な記事を例外として、楽曲お題の記事については、基本僕は以下のような流れで書いています。

①お題曲を採譜し、実際に弾いて歌ってみて、どのあたりについて書きたいかを決め、該当部の歌詞を下書きしておく
②下書きにコード進行のメモをしておく
③同様に、書きたい内容についてひとことずつランダムにメモしておく(例えば今回で言うと、「CD紛失の顛末」とか「千夜一夜から引用」とか「ヘ長調からニ長調」といった短い言葉を羅列していました)
④それぞれのメモの前後を整え、文章の流れを決めたら、ひたすら長文を書く(意外とこの段階になると筆は速い)
⑤細かい修正、チェックをし、下書き→公開へと記事設定を変更して完成

今回記事、19日以前に③までの作業は終わっていたんです。リニューアル当日は張り切って④を頑張って・・・いやいや書きまくりました。
お題というのが、僕が堕ちた”人間・ジュリー”そのものを象徴するような大名曲ですから、筆の運びも速い速い。
で、かなりの文量を書いたところで「今日はここまでにしとくか」と、下書き保存したら・・・いきなり見たこともないエラー画面が出て。
書いた文章、全部が消えました。

その時は原因も分からず、ただただ放心し「あの文量を改めてもう一度書くのか・・・」と、気が遠くなる思いでした。
翌20日に、ココログさんのトップ画面に

一部に不具合が生じましたので、ログインページの管理画面を旧版に戻しました

とのインフォメーションが。
どうやら僕のブログは、「一部」の中に入っちゃってたみたい・・・。

それにしても・・・同じ文章を2度書くのって、何故1回目より2回目の方が大変なんでしょうね。
気持ちの問題でしょうか。
ということで、僕は今回記事の80パーセント程度の文章を、2度に渡って書き直す破目になったという・・・。

そしてそんなことをしている間に、『Pray』ツアーのインフォが来た来た~!
まずは新譜について、収録4曲すべて震災がテーマの作品であることがハッキリしました。
ツアー日程は・・・うわ、11月までの全公演一括振込ですか。参加回数は欲張らず、自分にとってのピンポイント4~5公演に絞ることになりそうです。他の諸々の予定と重ねて考えると、遠征までは無理かな・・・。
申込締切がほぼ一週間後の3月1日ですから、あれこれ悩んでいる時間的余裕もありません。ここはもう第六感で即断しないと・・・焦る~!

それでは、気をとり直して。
『燃えろ東京スワローズ』、”セットリストを振り返る”シリーズ。今日はいよいよラスト3曲目のお題です。

先日の2つのお題、「ヤマトより愛をこめて」「静かなまぼろし」の記事中で書いてきたことの繰り返しになりますが・・・今回のこのシリーズは

①「こんなに素晴らしい曲だったのか!」と、今さらながら改めてジュリーに打ちのめされたナンバー
②「LIVEで初めて聴けた!」という新鮮な感動に打ち震えた、新規ファンにとって垂涎のナンバー
③ドーム堕ちヒヨッコ組の特権、”『ジュリー祭り』ポカン曲”リベンジで盛り上がりまくったナンバー

というそれぞれのテーマに沿ってお題を採り上げていて、今日のテーマは③になります。

あの宝物のような『ジュリー祭り』セットリスト。ドーム堕ちの僕にとっては、『ジュリー祭り』参加の時点では心底盛り上がるには至らなかった(楽曲に対する無知故のヒヨッコ反応しかできず)名曲の数々を、その後のソロLIVEで少しずつ復習できることが本当に幸せなのです。
今回の『燃えろ東京スワローズ』(当然、人によってはタイガースだったりドラゴンズだったりするのですが)にも、そんな1曲がありました。

以前から、K様、wine様よりリクエストを頂いていたナンバー。他にも何人かの先輩から「この機に記事になるのが楽しみ」と、嬉しいお言葉を頂いています。僕の記事で何処まで期待にお応えできるか分かりませんが・・・頑張って書こうと思います。

アルバム『耒タルベキ素敵』から。「確信」、伝授です!

(註:今回の記事執筆は、僕の力量不足を露呈することになりました。「確信」・・・予想通り和音構成がメチャクチャ手強い曲でした。転調部で採譜に苦労しそうだな、とは予想していましたが、まさかAメロ部でいきなり途方に暮れるとはなぁ・・・。
記事を書く際、一度分析して歌ってみる、ということを課しているので無理矢理コードを当てはしましたが・・・まったく自信の無い箇所がいくつかあります。ギター1本で歌うくらいならさほどおかしな事にはならないまでも、CDに合わせて弾くと時折の違和感は否めません。才が無いので仕方ないことなのですが、無念です・・・)

これまで何度か書いたことがありますが、僕には『ジュリー祭り』以前の数年間、”第1次ジュリー堕ち”という時期があります。
たまたま『ROYAL STRAIGHT FLUSH 2』のリマスター盤を聴く機会があって、子供心に覚えていた大ヒット曲群のあまりのレベルの高さに驚き、そこから怒涛のアルバム購入が始まったのです。長いつき合いだったバンド仲間のYOKO君が『A面コレクション』を持っていたこともその頃初めて知り、二人で競うようにしてポリドール時代のアルバムを聴きまくりました。

で・・・ポリドール期のアルバムをすべて聴き終えたところで、僕もYOKO君も一度トーンダウンしているんですよ。

1995年以降のアルバムは、アマゾンさんのレビュー評価を参考に『REALLY LOVE YA』『単純な永遠』と買って(当時はまだ普通に市場在庫があったんです)、じゃあ今度は最近の作品を、と思い購入したのが、レビュー評価も抜群だった2枚組・・・『耒タルベキ素敵』。

僕のジュリー・アルバム収集への情熱は一旦ここで途絶えます。
「なんだか、全楽器の音圧が一様にデカい・・・」
初めてこのアルバムを聴いた時、そう思ってしまいました。YOKO君にも「さほどでもないよ」などと話したり・・・今となっては本当に信じ難いことですが。

何度か通して聴いて、そのうち気にいった曲だけ(当時)を聴くようになり、いつしか手にとらなくなって・・・遂に部屋の何処にあるのかすら分からなくなってしまいました(当時は散らかし放題の部屋だったのです。YOKO君はよく「アンタの部屋に行くと体調が悪くなる」などと言っていたものでした)。
僕にとって『耒タルベキ素敵』は、”ジュリーを追いかける最後のアルバム”になる、と考えていました。
とんでもないことでしたね。

そこで改めて思うのですが・・・よくぞ自分は『ジュリー祭り』に参加したものだなぁ、と。
あの日、一応ヒヨッコなりには気合入れて参加したつもりではありましたが、初めてのジュリーLIVE・・・ジュリーはあらゆる意味で僕の甘すぎた認識を覆してくれましたし、僕自身にまさかその後、こんなにも濃いジュリーファンとしての日々が待っているなどとは想像だにしていませんでした。

拓郎さんの番組で、ドーム公演についてジュリーがこんな感じのことを言っていましたね。
「まだ僕のLIVEを観ていない人がたくさんいるんじゃないか。”あの沢田研二が還暦だと。一度観てみるか!”・・・ということでお客さんが集まった」
と。
あれは正に、僕や、『ジュリー祭り』に共に参加したYOKO君のこと・・・いやいや、僕達と同じような気持ちでドームに集まった人が他にも本当にたくさんいらっしゃって、その多くが今、ジュリーのLIVEに万難排して足しげく通っているという、これはまったくジュリーの言葉通りのことなんです。
拓郎さんの番組で語った二大ドーム公演について、ジュリーは何の誇張もしていない・・・それは奇跡のような事実なんだ、と『ジュリー祭り』堕ちのヒヨッコだからこそ大きくうなずくところなんですよね・・・。

「一度観ておくか」・・・僕も実際、そういう気持ちでした。参加する前は。
それが一転、初LIVEのジュリーに堕とされ→未購入のアルバム大人買い→素晴らしい楽曲群にひたすら感銘を受け→2008年末には早くも「ジュリーのLIVEが観たい」という禁断症状に陥り→親切な先輩方の助けもあって『奇跡元年』参加・・・という怒涛の流れから、一体その後何度のジュリーLIVEにこれまで参加してきたことか。
最早正確に数えることすらままなりませんが、だいたい30回くらいなのかな。まぁ、YOKO君は僕の10分の1の3回ですけどね!(←だからこそ、彼は毎回ビビッドな反応ができるわけですが)

大人買いで知った、近年のジュリー・アルバムでのヴォーカルの素晴らしさ、楽曲のクオリティ・・・それは当然、僕が本格的にジュリー堕ちする大きな要因であったとは言えましょう。
でもそれだけならば、ポリドール時代のアルバムをすべて聴いている、というだけのことで自らをジュリーファンだと自惚れていた、2008年12月3日以前の僕にも当てはまってしまうことです。
僕は『ジュリー祭り』で、何よりもまず”人間・ジュリー”に堕ちたのでした。それが自分にとって最も大きく、最も大切なことです。

当時、自分のその気持ちをうまく説明することができませんでした(東京ドームのレポで、一応それらしきことはちょろっと書いてはいるんですけどね)。
僕が惹かれたジュリー最大の魅力とは何なのか。僕が心底惚れこんだ”人間・ジュリー”とはどういうアーティストなのか・・・。
でも現在は、わざわざ僕の下手な文章をこねくり回さずとも、それらを明快に説明することができます。今日のお題「確信」のGRACE姉さんの歌詞に、そのほとんどが詰まっているからです。

さて、僕がその真髄を理解し得ぬままに2年ほど放置してしまった(恥)大名盤『耒タルベキ素敵』がリリースされたのは、2000年。
「確信」・・・長くファンを続けてこられた先輩方にとっては、ジュリーファンとしての指標のような新曲だったことでしょう。
そして何より凄いのは、「確信」の歌詞がその後何年経っても、右肩上がりでジュリーの活動や生き様とリンクし、ますます真実を持って輝き続けていることではないでしょうか。

今、2013年。
ジュリーは「確信」の歌詞そのものの歌人生を、ステージから僕らファンに見せてくれています。


♪ カッコイイとかワルイとか
  F                 A7+5

  そんなこと       もうどうでもいいよ
              B♭maj7(onD)  C7

  負けない気持ちが有りさえするなら
  F                    Am7      A7       Dm

  ただそれだ けで ♪
           Gm   C7

これは決して、”カッコ悪さの肯定”ということではないんですよね。

僕のような凡人がロックに目覚めた場合に一番陥りやすいのは、「カッコ悪くたって構いはしないんだ」という無頼漢のような思考。
簡単に言えば、素行や身だしなみが悪いことを逆に誇り、好き勝手に振舞うことが自由な生き方なのだと勘違いすることです。

『ジュリー祭り』を体験して、漠然とではありますが「自分の考え方はとんでもない勘違いではなかったか」と気づかされた僕は、いきなり部屋の掃除など始めたわけですが(あまりに低次元の話でお恥ずかしい・・・)、その甲斐あってCD『耒タルベキ素敵』は無事に発掘され(数ケ月を要しました汗)、まずは『ジュリー祭り』セットリスト曲の本格的な復習です!
歌詞の記憶もおぼろげだった、『ジュリー祭り』に選ばれし名曲達。「A・C・B」「世紀の片恋」「遠い夜明け」「君のキレイのために」・・・そして、「確信」。
「確信」の歌詞カードを初めてじっくり読んで・・・そりゃもう、打ちのめされましたよ・・・。『ジュリー祭り』で僕の心を鷲掴みにした”人間・ジュリー”がそこにいました。
そして改めて、『ジュリー祭り』参加以前の自分を恥じました。

自分を甘やかしていただけの、強弁に過ぎない「個性」。
ズボラな生き方を誤魔化す、「ロック」という名の「鎧」。

それはすべて僕の浅はかな見栄でした。そんな「個性」や「鎧」は、男の矜持とは程遠いものだったのです。
そうではない高い志、生身の人間としての姿勢を、ジュリーは「確信」で歌っているのですね。これがロックなんだ、と思います。ハッキリ自覚していますが、僕が「ロック」という言葉から感じ取る思いは、『ジュリー祭り』参加前と後では、まるっきり違います。

『耒タルベキ素敵』がリリースされた2000年というと、GRACE姉さんはジュリー・ナンバーの作詞提供を始めたばかり・・・それでいきなり「確信」はじめ”人間・ジュリー”の真髄を描くような作品を生み出したのですから凄い。
例えば「まっすぐすぎる心」とか「心の眼の正しさ」といったフレーズです。
決して目新しい言葉ではないんだけど、ジュリーが歌うことによって意味が何倍も膨らみ深みを増すフレーズを採り入れていて・・・これは女性ならではのセンスなのでしょうね。
刺激的な飾りつけのアプローチではなく、ストレートで素直な作詞。それは、ジュリーと同じステージを経験したからこその「確信」でしょう。GRACE姉さんの作詞姿勢もまた、女性の矜持に満ち満ちていると思います。

おっと・・・「確信」について書こうとするとどうしても、歌詞やジュリーの生き方のことばかりに文量を費やしてしまいますが。
もちろんこれは、メロディーもアレンジも素晴らしいんです。
作曲が吉田建さんということで、最初の購入当初からその辺りは結構じっくり味わっていたんですよ。

Bメロで大胆な転調があるんですよね~。
全体の構成は、まず躍動的なサビがド~ン!と来て、ポップなAメロが続きます。ここまでがヘ長調。そして意表を衝くニ長調への転調からBメロへと繋がっていくのです。
ヘ長調からニ長調って・・・並行移調の行き先がマイナーだと暗いと思ってメジャーにしてみました、みたいな感じ?

♪ まっすぐすぎる心が
          D           Bm

  周りを敵に仕上げた でもたったヒトツだけの
   F#m           G    A            D           Bm

  大切を守ることが出来ればいい ♪
   B♭                                  C   A7

まぁ、2小節に渡って「B♭」で強引に押し通すあたりに今回の採譜の苦しさが滲み出ていますが(1小節単位でルートが移動しているのは確かなのですが・・・)、それにしてもこの進行、サビやAメロからはまったく予測不能な展開です。
しかも元の調への戻り方がまた変化球で・・・せっかく「出来ればいい♪」でヘ長調のドミナントである「C」に辿り着いたのに、「A7」で再度叩き斬ってしまうのです。
戻った先のサビは「B♭maj7→Fmaj7」のリフレインですから、「A7」で「さん・はい!」とメロディーを頭出しするのは、理屈で考えるだけでもいかにも難しそう・・・。
みなさんは、「出来ればいい♪」から「あの頃の生き方は♪」の繋がりのメロディーを、CDと一緒にうまく流れるように歌うことができますか?
ジュリーは楽々歌ってますけどね!それもまた、ジュリー天性の音感の良さでしょう。

でもジュリーは今、大ヒットを連発していた頃の自分のことを「生き急いだ英雄(ヒーロー)」だと思っているかな・・・?。
そこまでは、ファンからは分かりませんね。


長くなってきましたが、アレンジのお話も少しだけ。
アルバム『耒タルベキ素敵』の各曲アレンジについて白井良明さんは、「洋楽などのオマージュをあちらこちらに散りばめてある」と語っていますね。
「アルシオネ」がデヴィッド・ボウイの「スターマン」、「無事でありますよう」がエルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌」、「everyday Joe」がジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」、「キューバな女」がサンタナの「哀愁のヨーロッパ」・・・と、これまでこのブログ記事でもその辺りについては書いてきましたが・・・じゃあ、この「確信」は何でしょう?

パッと思いつくのはELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)というバンドのアレンジです。ロックの疾走するリズムとストリングスの融合。それが初期ELOナンバーの売りでした。
例えば、彼らの最高傑作と言われるアルバム『ディスカバリー』から、この曲はどうでしょう?

http://www.youtube.com/watch?v=3v6MBHpzZg8

「ロンドン行き最終列車」。曲調は違うけど、「確信」のシンセ・ストリングスの絡み方とイメージが重なる印象が僕にはあります。
でも、特定はできないなぁ~。ひょっとしたら、僕の知らない曲で、別のオマージュ元があるかもしれません。

あと、「確信」は上記シンセをはじめギターもベースもカッコイイけど、生のLIVEを観て改めて思ったのは、ドラムスが最高だ!ということ。
初っ端のソロは言うまでもなく、イントロ伴奏部などで「たかたか!」と炸裂する16分音符のフレーズが、フィル・インではなくアレンジ・アクセントとして採り入れられているのがメチャクチャ渋いです。
もちろんGRACE姉さんは、先のツアーでもCD音源通りのフレーズを再現してくれました。

といったところで、今回も長文になりましたが・・・『燃えろ東京スワローズ』”セットリストを振り返る”シリーズは、今回で終了です。
気持ちは早『Pray』リリースへと向かい、いてもたってもいられない感じなのですが、新譜を手にするまでの間、自由課題でどれくらいの記事が書けるかなぁ・・・。ともあれコツコツと頑張るつもりです。

今年も、祈りの3月がやってきますね。

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2013年2月16日 (土)

全然当たらないシリーズ~沢田研二『Pray』楽曲内容予想

開催中の”セットリストを振り返る”シリーズですが・・・またもや一度お休みさせて頂いて、ひとつ記事を挟みます。

今年もまた、3月11日という特別な日に届けられることになった、ジュリーの新譜マキシ・シングル。
涙色の空』『3月8日の雲』に引き続いて、鉄人バンドそれぞれのメンバーの手による作曲作品全4曲、そして全作詞ジュリーという構成。今や完全に確立した、”ジュリーwith鉄人バンド”の黄金スタイルです。

発売まではまだ日数もあるし、何も考えずにマッサラな心で新譜を受け取りたいのは山々なんですけど・・・。
どうにも気になって仕方がない!!
あれこれ想像せずにはいられない!!

ここはひとつ、情報解禁となった各曲タイトルと作曲クレジットから、楽曲内容を僕なりに予想してみよう、ということで急遽執筆しています。
一度自分で予想を立てて纏めることで、心の整理がついて、ジュリーのメッセージを素直に受け止める気構えが固まってくるんですよね・・・。

実は昨年も、まったく同じ日付に同じような記事を書いています。リリース情報解禁になった『3月8日の雲』の、発売前の楽曲内容予想の記事。
読み返してみますと・・・いやぁ僕の予想は全く当たっていません。全然検討違い・・・しかも浅い!

今年もまたその愚行を繰り返すことになってしまいますが、少しだけおつき合いくださいませ~。

130216


↑ たぶん全国各地のジュリーファンのみなさまが、手持ちの2つのアイテムで同じことを試していらっしゃるかと思いますが・・・僕は微妙にうまくいきませんでした。

1曲目「Pray~神の与え賜いし」
(作詞・沢田研二/作曲・GRACE)

重要なアルバム(と、今年も敢えて言いたい気持ちです)1曲目は、GRACE姉さんの作曲作品となりましたね。
まほろばの地球」のようなハードロック、「ひかり」のようなサイケデリック・チューン、「ロマンスブルー」のような抒情ポップス、「僕は歌うよ」のような穏やかな泣きのバラード・・・そして「恨まないよ」のような激しい慟哭のバラード。GRACE姉さんの作曲にも多彩なアプローチがあります。
今回の「Pray~神の与え賜いし」・・・僕の予想は長調のバラードです。
昨年同様、今年もまた鉄人バンドのメンバーはジュリーから「Pray For East Japan」のテーマで作曲を依頼されたと考えられます。後でジュリーがどんな歌詞を載せるにしろ、GRACE姉さんがそのテーマで作る曲はバラードだと思うんですよね・・・。
ただ、昨年の「恨まないよ」のような短調の激しい悲しみを持つメロディーではなく、長調で穏やかなメロディーではないでしょうか。

ジュリーの詞は「被災地への祈り」。これは間違いないでしょう。
神の与え賜いしものとは、「試練」なのかそれとも・・・?

2曲目「Uncle Donald」
(作詞・沢田研二/作曲・下山淳)

当初「Uncie Voice」という誤植情報が出回り、全国のジュリーファンが一斉に「Uncie」という存在しない単語の意味を調べたでしょうが、正解は「Uncle Donard」でした。正解が判明したのは良いけれど、その後オフィシャル・サイトで、2曲目から4曲目まですべてのタイトルが「Uncle Donald」、という誤植も一瞬登場したりして・・・。

さて、「ドナルドおじさん」・・・僕にはサッパリ意味が「?」だったんですけど、さすが僕の周囲の先輩方は洞察が深くて、その日のうちに諸説が。
「”Donald”は”怒鳴る”と掛けているのでは?」
ですとか
「ドナルド・キーン氏に何らかのインスパイアを受けた詞なのでは?」
などなど、興味深いお話の中で、僕が最も笑った・・・もとい、感心したのは
「おヒゲ自慢の曲では?」
という、ある先輩の大胆な予想です。

髭自慢ロック・・・新しい!新し過ぎる!
マジに期待したい、それ!

いや、確かに「Uncle Donald」というタイトルからは、バラードもハードロックな曲想も、浮かびにくいんです。例え曲先としてもね・・・。
ですから下山さんの作曲についての僕の予想は、過去作品で言うと「God Bless You」に近い感じなのでは、というものです。

ジュリーの詞も、震災と何らかの関連があるものかもしれませんが、明るいコミカルな語り口を予想していますが果たして・・・。

3曲目「Fridays Voice」
(作詞・沢田研二/作曲・柴山和彦)

これは最初、2年前のあの金曜日のことだ、と思ってしまいました。
だって・・・あの日が金曜日だったことは、みなよく覚えていますよね。ちょうどおやつの時間が近くなって、ふと週末の休日の予定に胸躍らせる・・・そんな時に、あんなことが起こってしまったのでした。

それは確かなことだけど、この曲のタイトルで使われている「Fridays」は、どうやらそれとは別の意味。
昨日、星のかけら様の御記事を拝見して「あぁ、そうか!」と目からウロコが落ちました。
そうだった・・・英語の曜日に「s」がついたら「毎週」というニュアンスが加わるんですよね
。学生時代、ブームタウン・ラッツの「I Don't Like Mondays」とかで「なるほど~」と覚えたものでした。
「Fridays Voice」、つまり「毎週金曜日の声」・・・ジュリーの作詞ならば、それは首相官邸前の声のことで決まりではないでしょうか。
今年も昨年と同じく、アルバム3曲目の柴山さんの作曲作品でこのテーマが投げ込まれるのでしょう。これはもう予想ではなく確信です。

ならば柴山さんの曲も、キャッチーなポップ・チューン、或いはカッコ良いリフ・ロックでしょうか。いずれにしても明るい曲調なのでは・・・?
F.A.P.P」や「やわらかな後悔」で炸裂した、柴山さん得意の、ギタリストならではの転調攻撃にも個人的には期待したいところです。

4曲目「Deep Love」
(作詞・沢田研二/作曲・大山泰輝)

これ、ある意味「若者よ」以上に衝撃的なタイトルだと思うんですけど。いやぁ・・・「Deeep Love」ですか、ジュリー!
と油断させておいて、昨年の「カガヤケイノチ」のようにこちらの予想を遥かに超える感動!そんな予感もありますけどね。

さて、泰輝さんの作曲作品・・・昨年の「3月8日の雲」は”怒り””苛立ち””やるせなさ”を象徴する、ギリギリと歯軋りするようなハードロックでしたが、今年は一転、渾身のバラードが来ると予想します!

ただ予想が難しいのは、それが「無事でありますよう」や「護られているI Love You」のような長調のバラードなのか、「そっとくちづけを」や「涙色の空」のような短調のバラードなのか、ということです。
ここでは一応、短調を予想しておきましょう。
(1曲目の「Pray~神の与え賜いし」を、長調のバラードと予想した兼ね合いもありますし・・・)
アルバムのラストを短調のバラードでシメるのは切な過ぎるようにも思いますが、そこはバラードの名手・泰輝さん。きっと爽やかなメロディーで包み込むような曲に仕上げてくれているんじゃないかな・・・。


・・・以上、蓋を開けてみれば「全然違うじゃん!」となるのを覚悟で、僕なりに予想させて頂きました。
今年もジュリーの新譜が聴ける歓び、ジュリーのメッセージを受け取る覚悟・・・身の引き締まる思いです。みなさまもきっとそうでしょう。

僕は結局、今年もアマゾンさんで予約しました。
昨年のようなこと(実際に商品発送されるまで、発売日から数週間かかってしまった)は無いと思ってはいますが、もしそうなったら、これまた昨年と同様、店頭にて購入し、遅れて届いたアマゾンさんの予約分をそのままYOKO君に引き取ってもらう、というパターンで行くつもりです。

もちろん今年も収録曲全曲の考察記事を書きます。
今日こうして予想を纏めたことで、一度落ち着きました。まずはできる限り無の境地で、素直にジュリーの新譜をじっくり味わうことから始めたいです。
本当に楽しみです!

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2013年2月13日 (水)

沢田研二 「静かなまぼろし」

from『彼は眠れない』、1989

Karehanemurenai

1. ポラロイドGIRL
2. 彼は眠れない
3. 噂のモニター
4. KI・MA・GU・RE
5. 僕は泣く
6. 堕天使の羽音
7. 静かなまぼろし
8. むくわれない水曜日
9. 君がいる窓
10. Tell Me... blue
11. DOWN
12. DAYS
13. ルナ

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『燃えろ東京スワローズ』”セットリストを振り返る”シリーズ。今日はその第2弾更新でございます。

先日「ヤマトより愛をこめて」の記事で書いた通り、今回のこのシリーズは、それぞれ3つのテーマに即した形でお題を採り上げています。

①「こんなに素晴らしい曲だったのか!」と、今さらながら改めてジュリーに打ちのめされたナンバー
②「LIVEで初めて聴けた!」という新鮮な感動に打ち震えた、新規ファンにとって垂涎のナンバー
③ドーム堕ちヒヨッコ組の特権、”『ジュリー祭り』ポカン曲”リベンジで盛り上がりまくったナンバー

今日のテーマは②です。

『燃えろ東京スワローズ』セットリストで、僕が初めて生のLIVE体感となったナンバーは、計5曲でした。
演奏順に

everyday Joe
「静かなまぼろし」
桜舞う
無事でありますよう
「Rock 黄 Wind」

ということで、記事未執筆だったのは「静かなまぼろし」と「Rock 黄 Wind」の2曲。
当然今日は、この2曲のいずれかを採り上げることになるわけですが・・・これまで何度か書いてきましたように、「Rock 黄 Wind」については僕の中で

次に阪神が優勝した時に書く!

という無謀な
(←コラコラ)決意があるのです。

今年それが実現すれば、ザ・タイガース再結成と併せて
絵に描いたようなキレイな流れになるのですが、正直そこまでうまくいく予感はありませんねぇ・・・。
むしろ昨年末に「キャンディー」の記事で口走ってしまった、ジュリー作曲・「恋はうたかた」(歌・若き日の原辰徳監督)の楽曲考察記事執筆(ジャイアンツ優勝ヤケクソお祝い記念)に追い込まれる可能性が高いように感じます・・・。
まぁいずれにしましても、現段階で「Rock 黄 Wind」はまだ書けません。

となれば、今日のお題は必然この曲。
大名盤『彼は眠れない』から・・・松任谷由実さん作詞・作曲のナンバー「静かなまぼろし」、伝授です~!


しかし・・・正直この曲の魅力を僕はずいぶん長い間見逃していたことになります。
今ツアー初日、唯一会場で曲のタイトルを思い出せなかった曲。曲そのものは覚えていて・・・絶対に知っている曲なのに題名が出てこない、収録アルバムを選定できない、という状態に陥りました。
LIVEのその場でタイトルを思い出せなかった、なんていう経験は『歌門来福』での「ロータスの子守歌」以来無かったですし、それが事もあろうにあの大名盤『彼は眠れない』収録曲だったわけですから、我ながらショックでした。

初日の「静かなまぼろし」を聴いてまず気づかされたこと・・・僕は『彼は眠れない』を大好きなアルバムだと思っていたけど、すべての曲を1枚通してじっくり聴く回数が全然足りていなかったなぁ、と。
これまでは、アルバムから好きな曲だけピックアップして重点的に聴くことが多かったみたいで・・・。
考えてみたら、例えば「堕天使の羽音」なんかも、DVD『ワイルドボアの平和』を観て再評価するまでは、CDでは飛ばして聴いたりしてたんだっけ。

「静かなまぼろし」については、決して敬遠していたわけではなかったけれど、聴き込みが足りずどこか軽視していた面があったんだと思います。
今ツアー初日参加後に改めてじっくりCDで聴いてみると、いやはや素晴らしい珠玉のバラードではないですか!聴こえ方がこれまでとはまったく違う・・・。
いくら「自分の中ですべてのジュリー・ナンバーの評価は一通りまとまっている」と思い込んでいても、こういうことがあるんですから・・・それがまた、ジュリーLIVE・ツアー初日の醍醐味である、とも思うんですよね~。

だいたい、松任谷由実さんの詞曲をジュリーが歌って、素晴らしくないはずがないんです。
ユーミンは・・・この人はもう間違いなく天才ですよね。
CDでアルバムを購入するまでには至りませんでしたが、大学時代にラジオでユーミンの曲がかかるとマメにチェックしていました(渋谷陽一さんがよくかけてくれていたので、あぁ、渋谷さんが推すということは、ユーミンはロックなんだなぁ、と思ったりしたものでした)し、その後も仕事絡みで聴く機会も多くあり、僕はかなりのユーミン・ナンバーを知っています。
有名な曲で一番好きなのは「ベルベット・イースター」。詞曲共に非常にレベルの高い作品です。アルバムだと『紅雀』かなぁ。良い意味で”負”の魅力に満ちた1枚ではないか、と考えています。いかんせん、浅い知識での感想ではありますが・・・。

彼女の最大の魅力は、女性らしくもあり、一方で女性らしからぬクールな視点もあり、という歌詞・・・詩人としてのユーミンでしょう。
「静かなまぼろし」に象徴される、”一瞬”を捉える感覚と物語性・・・桁外れの才能です。これは「ひこうき雲」や「最後の春休み」などもそうで、テーマがまったく違う曲に、それぞれ”一瞬”の鋭いセンスが織り込まれています。

ただ僕は「静かなまぼろし」のユーミン・ヴァージョンもおそらく聴いたことはあるはずなのですが、思い出せません。
でも、ジュリーのヴァージョンを先入観無しに一から考察するには、却ってその方が良かったのかもしれませんね。

ピアニストの作曲作品は、耳あたりだけで軽くギターで採譜すると、後で「あれっ?」となってしまう、一筋縄でいかないものが多いです。
ただでさえ才の無い僕にとっては大変な作業ではありますが、やっぱり時間はかかっても、鍵盤で音を確かめながら和音構成を確認していきませんとね・・・。

これまで、明らかにピアノで作曲されたと思われる場合のポール・マッカートニーの曲や、ピアニストとして超一流の腕を持つビリー・ジョエルの曲の勉強過程で多く経験したのは・・・どんなにポップに、素直に聴こえていても、ピアノの左手の音が和音のルート音とは限らない、ということです。いわゆる”分数コード”の存在に敏感にならなくてはいけません。
無論ユーミンも作曲は基本ピアノでしょうから、「静かなまぼろし」もその点、注意が必要になります。

♪ 通りの     ドアが  開き
     B7(onD#) A(onC#) E

  雑踏が  迷い込む ♪
     D#m7  G#7  C#m

う~ん、こうかなぁ・・・?
ギターで弾くなら「A(onC#)」の箇所は「Amaj7」で代用が効きそうですが、鍵盤の場合は左手の「ド#」の音は必須となるでしょう。

「雑踏が迷い込む♪」の箇所で美しく進行する和音の流れは、以前「
TWO」の記事で紹介させて頂いた”イエスタディ進行”のヴァリエーションになっています。「TWO」の記事を書いた際に、ありったけの”イエスタディ進行”採用ジュリー・ナンバーを検証したつもりでしたが、この「静かなまぼろし」にはその時まったく思い至りませんで・・・今回採譜してみて初めて気づかされた次第でした。

♪ もしも   微笑み 
  E   E(onF#)    E(onG#)

  この席で   向き合えば ♪
  G#7    C#m   F#m7     F#m7(onB)  B7

このあたりも独特です。
「もしも微笑み♪」の箇所などは、例えばこれがギタリストの作曲作品なら
「E→F#m7→G#m7」
という王道進行で採譜すればまず間違いないところですが(ギター1本で弾き語る場合は、その方が曲の雰囲気を出せるかもしれません)、ユーミンは右手の和音を「E」(ミ・ソ#・シ)で据え置いたまま、左手のルート音だけを1音ずつ上昇させて作曲しています。これがピアニストならではのコード進行なのです。

さて、僕は先日のツアー・ファイナル渋谷のレポで
「初日のタイトル忘れのリベンジもあり、この曲についてはじっくり聴き込んで臨んだ」
と書きました。
実際そのつもりだったのですが、実はとても大きなポイントを見逃したままツアーを終えてしまった、と後悔する点が今になって出てきてしまいました。
それは、楽器構成とアレンジについてのことなんです。

説明のために、ここでCD音源「静かなまぼろし」の楽器構成・・・そのすべての演奏トラックを書き出してみましょう。

・ドラムス
・ベース
・シンセサイザー(硬質なストリングスの音色)
・シンセサイザー(柔らかな音色のアルペジオ)
・ピアノ(やや右サイド寄りのミックス)
・マラカス(右サイドのミックス。歌詞カードのクレジットにパーカッションの明記が無いため、ドラムスのポンタさんの追加トラックなのか、シンセサイザーの音色設定による演奏なのか・・・その点は不明です)
・アルトサックス(左サイドのミックス)

以上です。

何か気がつきませんか・・・?
そう、「静かなまぼろし」のオリジナル音源には、ギターのトラックがまったく無いのです!
僕はずっと、アコギかエレキによるよるコード伴奏くらいは入っているものと決めつけ、深く分析せずに聴いてしまっていて・・・。

「じゃあ、鉄人バンドのギタリスト二人は、今ツアーのこの曲でどんな役割を担っていたのか?!」


今さらながら「キチンと観ておけば・・・」と大後悔です。
本来僕のブログのスタイルであればそういうことにこそ言及すべきなのに、何という力不足、勉強不足・・・時は戻りません。本当に悔しい思いです。

こうなると推測でしかないんですけど・・・下山さんはおそらくコード・バッキングをしながらベースラインをもカバーしていたのだと思います。
ちなみにベースラインと言えば・・・CD音源での吉田建さんのベース、地味ですがカッコ良くて渋いです。ちょっとアルバム『ミスキャスト』の頃のエキゾティクス期の雰囲気を感じるんですよ。「振り向く勇気がなかった♪」の直後、徐々に音階を上げていくフレーズとか・・・。

で・・・話を戻して、問題は柴山さんです。
しょあ様やぴょんた様のブログで復習させて頂いたところによりますと、今ツアー、この曲の柴山さんは

ヴォーカルの合間で「キュイ~ン♪」と言ってた

とのことですから、少なくともいくつかの箇所で単音を弾いていたことは確かなのです。
果たしてそれがどういう音色、フレーズだったのか・・・。

この曲での柴山さんのギターは、白のフェルナンデス。これは通称”いい風ギター”と言うくらいですから、サスティンの効いた音だったのでしょう。
「静かなまぼろし」アレンジ構成音の中、エレキギターで代用可能で、サスティンを効かせてヴォーカルの合間に演奏されるべき音とは・・・。

サックスか・・・!
確か泰輝さんはピアノとシンセサイザーの2パターンの音色だったはず。サックスの音をキーボードで聴いた記憶が無い・・・ということは。
柴山さんが、オリジナル音源のサックスのフレーズをギターで表現していたのでは・・・?!

今となっては確かめようもありませんが、その可能性が強いのです。まぁ、泰輝さんが上段のキーボードで”神の両手”を炸裂させていたのに僕が気づけなかっただけかもしれませんが・・・。
時を戻してもう一度、鉄人バンドの演奏に注意しつつ生の「静かなまぼろし」を聴いてみたい~!

最後はやはりジュリーのヴォーカルについて。
今回のツアー・セットリストの中でも、この「静かなまぼろし」は特に素晴らしい歌声でしたね。多くのジュリーファンの方々が、「一番良かった曲」と仰っているほどです。

実はこの曲、ジュリーの声域にバッチリ合っていて、しかも最高音の設定が意外や楽な「高いファの音」なんですね(まぁ、普通の男声からすると楽な高さではありません。あくまでジュリーならば、という基準です)。
曲の始まりはホ長調で、ずっと「ミ」が最高音のメロディーが展開しますが、最後に全体半音上がりの転調(ヘ長調)があって、そこから「ファ」の音が何度か登場します。
例えば

♪ し  あ わ      せ  だからこ  そ ♪
  B♭  C   B♭(onD)  B♭  B♭(onC)  F

このうち5音が「ファ」。特に最後の「こそ~♪」と伸びる音は、あまりにジュリーの声が美しいのでかなり高い音のように聴こえてしまう(僕だけかな?)のですが、ジュリーとしては楽々と出せる音域なのですね。
LIVEで歌うのは、ジュリー自身とても気持ちが良いんじゃないかな~。


ということで。
みなさま既にご存知の通り、今回は記事の最後の仕上げ段階でビッグ・ニュースが飛び込んできました。

http://www.hmv.co.jp/artist_%E6%B2%A2%E7%94%B0%E7%A0%94%E4%BA%8C_000000000016732/item_Prey_5347275

3月11日発売、アルバムタイトルが『PRAY』と来れば、これはもう・・・今年もまたジュリー渾身の真っ直ぐなメッセージ、思いを、ファンは足を踏ん張って吹き飛ばされないようにしながら全身で受け止める・・・そんな新譜になったのでしょうね。

僕も昨年同様に、ブログでも精魂尽き果てるような記事を書くことになるかもしれません。
それはとても大変なことだけれど・・・これぞファン冥利、というふうにも考えられます。僕らはただのファンじゃない・・・他でもない、ジュリーのファンなんだ!という思いが沸き上がってきますよ!

どうやらこれで、3月中旬以降は新譜の楽曲考察に集中することになりそうです。
それまでの間・・・”セットリストを振り返る”シリーズは残すところ1曲。あと、最近の個人的体験から急に書きたくなった曲もありますし、ピーの「楽しいときは歌おうよ」も残っています。
コツコツと進めていかなくては・・・。

次回更新では、ドーム堕ち組の特権・・・『ジュリー祭り』ポカン曲・リベンジをテーマに、『燃えろ東京スワローズ』”セットリストを振り返る”シリーズを締めくくる予定です。
頑張ります!

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2013年2月 7日 (木)

沢田研二 「いま、このときめきを」

Imakonotokimeki

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お正月コンサートの”セットリストを振り返る”シリース開催途中ですが・・・今日は一旦お休み。
ちょっと別の曲を採り上げ、ジュリー界の旬な話題に便乗し、短い記事を書きます~(後註:全然短くはならなかった汗)。

いよいよ今週末の2月9日、『吉田拓郎の千夜一夜』・・・ジュリーをゲストに迎えての拓郎さんとの対談が放映されますね。
ジュリーが自身の言葉で語る番組。
誇大なアジテーションもミスリードもない、今のジュリーのテレビ出演・・・本当に貴重です。

思えば、ジュリーは『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアー・ファイナルで
「拓郎さんから声をかけて頂いて、嬉しかった!」
と、お客さんに知らせてくれたのでした。
ジュリーが喜んだのは、拓郎さんとの対談番組ならば、ありのままの自分の言葉で臨める、という拓郎さんへの信頼もあったのでしょう。
「大好きな人同士」。
本物、本物を知る、ですよね・・・きっと。

お二人のキャラクターを考えますと、何か外部に対して変に気負うでもなく、拓郎さんが言うように「この年齢だからこそ」という思い、立場で色々なことを語るのでしょうけど、僕のような平凡な1ファンからしますと、このお二人の組み合わせだけで、もう大興奮。
まさに巨星相まみえる、と言うべき二人の対談です!

ジュリーについては当然として・・・僕は拓郎さんにも「天上の才」を感じますし、郷里の縁もある、と勝手に考えています。

広島のイメージが強い拓郎さんですが、実は拓郎さんの生まれは僕の故郷である鹿児島県。
調べてみますとそれは当時の大口市(現在は統合されてしまいましたが)というところで、「鹿児島の北海道」と言われている街です。
今でもそうかと思いますが・・・僕の少年時代(ちょうどビートルズ繋がりから聴きはじめた拓郎さんのオールナイトニッポンを、毎週楽しみしていた頃です)、拓郎さんは鹿児島県人のヒーローだったんですよ。
もちろん周囲に熱心なファンも多かったですし、鹿児島出身のビッグネーム・長○剛さんも、元々は拓郎さんに憧れてギターを手にしたのがスターダムへの最初の一歩となったのです。

今日は、ジュリーとの対談放映迫る!という絶好の機会でもありますし、至らぬ知識しか持たないながらも、僕なりに拓郎さんのことを書いてみたいと思います。

僕はジュリーファンですから、まずはやはり記事のお題として挙げたこの曲を中心に、拓郎さんの魅力について語っていくのが自然でしょうか。


Konotokimekiwo_2

↑ 深夜放送ファン・別冊 『沢田研二のすばらしい世界』より
画像がナナメってるのはスキャンの不手際ではありません。何故だか最初から製本がこうなってるんですよ~。

後追いファンの僕は、恥ずかしながらつい最近初めて知った曲です。
『フジカラー』CMタイアップ曲「いま、このときめきを」。
作詞・作曲が拓郎さん、歌・ジュリー。

添付したスコアではタイトルが「このときめきを」になっていますが、これは誤植?それとも正式タイトルが「このときめきを」で、「いま、このときめきを」というのはCMのキャッチフレーズなのかな・・・。
何せ曲の存在すらずっと知らなかった僕には、正解が分かりません。「いま、このときめきを」の「いま」が「今」と漢字表記されている記述もネットで見かけます。
とりあえず今回の記事タイトルは、個人的に一番しっくりくる「いま、このときめきを」とさせて頂きましたが、もし正解が分かりましたら、それに応じて修正することになるかと思います。

さてこの曲・・・僕は当然音源は所有せず、You Tubeの恩恵に預かったわけですが、いやいや素晴らしい名曲ですね!

まず、詞曲はいかにも拓郎さんらしい。
拓郎さんは、ボブ・ディラン風の「歌い語り」を日本語の曲に取り入れる技術が卓越しているばかりか、邦楽ならではの解釈を上乗せしたスタイルを確立。その才は並ぶ者無し・・・最高峰のシンガーソングライターです。

拓郎さんのメロディーやヴォーカルスタイルを、楽譜業界では「講釈」と表現することがあります。
これは、人間の声でしか表現できない歌である、という意味です。「この部分は講釈だから、譜面では表現しきれないんだよね」ということがままあるのです。

例えば、「春だったね」という有名な曲があります。
その一節

「曇りガラスの窓をたたいて 君の時計を止めてみたい」

この「窓をたたいて♪」「止めてみたい♪」の箇所。
語るようにして歌われるメロディー。音階はあるのですが、それをピアノなど楽器で譜面通りに演奏しても、拓郎さんの作ったニュアンスには到底及ばないのです。人間が歌って初めて伝わるメロディーなんですよね。

「いま、このときめきを」にも、”講釈”まではいかないまでも、似たニュアンスは登場します。

♪ きみの胸をつらぬいて しまいそう だ ♪
        Em  D       Bm         D  Bm  Em

の辺りですとか。
ちなみにこの「しまいそうだ」の部分、スコアでは単に
「D→Em」
で採譜してありますが、僕は上記の通り
「D→Bm→Em」
と弾いた方が良いと考えます。
「きみの胸をつらぬいて♪」のところが、1拍、1拍、2拍のコードチェンジになっていますから、次節のコードも拍の韻を踏むのが妥当なのです。
拓郎さんが当てたコードもおそらくそうではなかったか、と思っているのですが・・・。


またこの「しまいそうだ」の部分は、長調の曲をマイナーコードに着地させています。このパターン、拓郎さんが作ると独特の味わいが出て、重要な曲のキメ部として光るのです。
これまた有名な曲ですが、「シンシア」の

「朝を待つのがこわいから」

と、2番で歌われる部分が正にそれです。
1番もコード進行は同じですが、歌詞の臨場感も合わせ、僕は「シンシア」の曲中で2番のこの箇所が一番グッときます。

このように、「いま、このときめきを」はいかにも拓郎さんらしい魅力に溢れる名曲ですが、その上でジュリーのヴォーカルに違和感がまったく無い・・・無垢に伸びあがる純朴な歌声が、奇跡のように曲に合っています。これだけ”拓郎さんならでは”という曲が、いざ歌うとしっかりジュリーの曲になっているんですよね。
やはり、天才同士の組み合わせと言うほかありません。

さて、実は僕は先の2月2日に放映された長めの番宣(『とっておきサンデー』)を見れていないのですが・・・1月の中旬くらいでしたか、先んじて短い番宣が何度かお茶の間に流れた時、先輩方の間で大きく2つのことが話題になっていました。

Senyaitiya

① 二人の前に置かれた緑色の飲み物は果たして何なのか?
② 拓郎さんが「ササッ」と軽くギターを弾いている様子・・・これは何の曲なのか?

この2点です。

確かにこの飲み物は、謎ですよねぇ・・・。
僕は最初、フレッシュメロンジュースかと思いましたが、先輩方のお話ではその線は無いようです。
みなさまの推理で挙げられていたのは

・抹茶のフラペチーノ
・アイス抹茶ラテ
・野菜メロンジュースの豆乳ミックス
・青汁入りスムージー

など。
僕レベルの食センスでは、思いつかないものばかりです・・・。果たして放映当日、答は明らかになるのでしょうか?

そして、拓郎さんが弾いている曲・・・こちらも謎です。
キチンとした”歌のコーナー”として拓郎さんが歌う曲はもう判明しましたが、どうも番宣でのこのシーンは、対談の合間に、思いつくままにちょっと歌った、という感じを受けるんですよ。おそらくこのシーン、フルコーラス歌ったわけではないでしょう。

先輩方に「ギターの押さえ方で何か分からない?」
と尋ねられたのですが、画像の通り、確認できたのはローコードの「D」のみ。
ただ、「いま、このときめきを」にも「D」のコードが何度も登場しますから、この貴重なナンバーのサワリが聴ける可能性は、僅かながらあるんじゃないかな・・・?

ちなみに、どういうシーンか分からないけれど、拓郎さんが「ギタリストで参加」と告知されている曲、「危険なふたり」も候補に挙げられますね。
この曲で「D」のコードが登場するのは、「別れるつも~り~♪」の直後の「ジャ、ジャッ、ジャ~ン♪」の「ジャ~ン♪」と突き放す箇所です。
拓郎さんが「ジャ、ジャ、ッ、ジャ~ン♪」と弾いて、ジュリーが条件反射的にクルリと回ってみせる、という可能性は・・・さすがにナイか(笑)。

ともあれ「いま、このときめきを」は、拓郎さんの詞曲、ジュリーのヴォーカル共にバッチリCM商品のコンセプトと合っていて、こういったタイアップはとてもイイんじゃないかなぁ、と僕は思います。
当時のジュリーにときめかれて、胸をつらぬかれない女性はいないでしょうしね~。

今年はザ・タイガースが再結成することになり、トッポが「CMもやろうよ~」と提案しているそうですが、ジュリーはいまひとつ乗り気じゃないみたいですね・・・。
でももしやるとしたら、タイガースにとっても対象商品にとってもコンセプト相入れるCMを期待したいところ・・・そう考えればやはり、多くの先輩方の仰る通り『明治チョコレート』が最適ではないでしょうか。

僭越ながらこの若輩が一案出させて頂きますと・・・。

昔のCM映像もチラッと挟みつつ、今のメンバーが揃ってスタジオ・リハに打ち込む様子から流してね。
トッポあたりが
「そろそろ休憩にしようよ!」
とか言って。
楽器を置いて、板チョコにかぶりつくメンバー(スタジオルーム内は基本飲食禁止ですが、まぁこの際細かいことはいいじゃあないの!)のショット。ドアップ担当は、ピー先生をフィーチャーしたらどうかな?
で、シメに

「何十年経っても変わらない仲間。何十年経っても変わらないおいしさ・・・。僕らは、明治チョコレート!」

というジュリーのナレーションが来るわけですよ~。
細かいことを言えば、最後の「僕らは、明治チョコレート!」だけは5人揃って言った方が良いかな?
明治製菓のお偉い様、ひとつご検討お願いしますよ~。

ということで。
後追いファンの生意気な提案で、最後に少し話が逸れてしまいましたが。
来たる2月9日放映の『吉田拓郎の千夜一夜』、みなさまもどうぞお見逃しなく!!

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2013年2月 2日 (土)

沢田研二 「ヤマトより愛をこめて」

from『今度は、華麗な宴にどうぞ。』、1978

Konndohakareina

1. ダーリング
2. 酔いどれ関係
3. ハッピー・レディー
4. 女はワルだ
5. 探偵(哀しきチェイサー)
6. ヤマトより愛をこめて
7. お嬢さんお手上げだ
8. グッバイ・マリア
9. スピリット

from single、1978

Yamato

1. ヤマトより愛をこめて
2. 酔いどれ関係

from『ROYAL STRAIGHT FLUSH』

Royal

1. カサブランカ・ダンディ
2. ダーリング
3. サムライ
4. 憎みきれないろくでなし
5. 勝手にしやがれ
6. ヤマトより愛をこめて
7. 時の過ぎゆくままに
8. 危険なふたり
9. 追憶
10. 許されない愛
11. あなたに今夜はワインをふりかけ
12. LOVE(抱きしめたい)

-------------------

それでは、満を持して。
本日の記事から、恒例”セットリストを振り返る”コーナーを開催いたします。
『燃えろ東京スワローズ』
(←僕は東京しか参加してない)・・・今回も素晴らしいセットリストでしたね~。

今回はその中から、計3曲を採り上げます。それぞれの曲、それぞれのテーマに沿っての執筆です。そのテーマとは・・・

①「こんなに素晴らしい曲だったのか!」と、今さらながら改めてジュリーに打ちのめされたナンバー
②「LIVEで初めて聴けた!」という新鮮な感動に打ち震えた、新規ファンにとって垂涎のナンバー
③ドーム堕ちヒヨッコ組の特権、”『ジュリー祭り』ポカン曲”リベンジで盛り上がりまくったナンバー

この3つ。
今日のお題は①です。

いやぁ・・・ジュリーLIVEに参加するたびにそういう曲には出逢うのですが、まさかまさか、「超」がつく有名曲、新規ファンとは言えこれまで何度も生で聴いたことのあった大ヒット・ナンバーでそれが味わえるとは。
それだけで、ジュリーの凄さが分かるってモンです。

先日書き上げた渋谷ファイナルのレポを読んでくださった方々なら、僕がどの曲に打ちのめされたかはお分かりでしょう。
あの日のこの曲のヴォーカルは、本当に凄かった!

正しく、時を超えて燦然と輝き続ける、誰もが知る歌詞とメロディー、至高のバラード。
「ヤマトより愛をこめて」、僭越ながら伝授です!



Yamato2


↑ 『ピアノ弾き語り 沢田研二・ベスト・アルバム』より

今はとにかく、1・20渋谷ファイナルのあの感動が薄れないうちに、イの一番にこの曲について語りたい・・・そんな思いでいっぱいです。
あの日一夜限りのジュリーのヴォーカルが素晴らしかった・・・その影響が大きいのでしょうが、僕は「ヤマトより愛をこめて」のあまりに卓越した楽曲としての素晴らしさを、ここにきて初めて知ったような気がします(恥)。
誰もが知るジュリーの大ヒット・ナンバーって・・・後追いファンとしては、こういった刺激的な機会を持たないと、なかなか深く突っ込んで考えようとしないんです。・・・いや、それは僕だけかな?

この機に音源を繰り返し聴くと・・・何という曲でしょうね、これは。
心底、ジュリー・バラードの金字塔だと思えます。それをこのヒヨッコに、今のジュリーがステージから教えてくれた、というのがまた奇跡のような話です。
LIVEの感動を噛みしめながらCD音源を聴いて、色々なことを考えましたよ・・・今日はそれを全部語り倒してしまおう、という主旨ですからみなさま大長文の御覚悟を~(汗)。

考察に入る前に少しだけ雑談を。
僕は、『宇宙戦艦ヤマト』の映画版は観ていません。映画が公開された時、まだ小学生でしたから・・・。しかも、凄い田舎に住んでいましたからね。町内に映画館なんて無かったんです。
松本零士さん絡みですと、中学生になった時の『銀河鉄道999』の映画版は観に行ってるんですよ。友人と連れ立って、汽車で50分ほどの街に出かけて・・・。『ヤマト』は僕にとって”早過ぎた大ヒット映画”でした。

大人になってから、まぁレンタルなどで観ようと思えば観られたわけですが、そこまでの渇望は無く、現在に至ってしまっています。
やっぱり(ジュリーファンとして、という意味からも)観ておいた方が良いですかね・・・?ストーリー自体はもう知っちゃってるんですけど。

さぁそれでは・・・いよいよ「ヤマトより愛をこめて」の楽曲考察に入ります。
まずは、阿久さんの歌詞について語ってみたいと思います!

これは・・・男が男に向けた餞の歌なんですよね。
危険な戦地に友を送り出す、という・・・『宇宙戦艦ヤマト』のコンセプトにピタリと合致します。

この曲のリリースは1978年。
当時と現在は社会の様々な状況も違い、詞のテーマ、コンセプトをそのまま賛辞するには躊躇われるところもありますが・・・ここはシンプルに、ひとつの優れた楽曲の歌詞としての考察ということで、書きます。

♪ そのひとのやさしさが 花にまさるなら
        Gm             F          E♭         B♭  D7

  そのひとの美しさが 星にまさるなら
        Gm        Cm7       D7        Gm

  君は手をひろげて守るがいい
        Cm7             F7        B♭  Gm

  からだを投げ出す値打ちがある ♪
           Cm7      D7            B♭  D7

誰のために、何のために身体を投げ出すのか・・・それは、愛する人を護るためだ、ということ。そのために身を賭せるのだ、と。
「値打ちがある」とは阿久さんらしいクールな言い回しで、男の琴線に触れるフレーズです。

♪ ひとりひとりが思うことは
        Gm            Cm7

  愛するひとのためだけでいい ♪
     D7                              Gm   G7

ちっぽけな人間ひとりが死力を尽くせるのは、愛する人のことを考えた時。詞の語り手は、そう言葉をかけています。

♪ 今はさらばといわせないでくれ
     Cm7       F7        B♭      Gm

  今はさらばといわせないでくれ ♪
        Cm7            D7        Gm

これは
「きっと戻れよ。また会おう」
ということなのでしょうが、それがとても叶わぬ状況下での言葉のやりとりであることも、同時に示唆しているようです。
辛い歌です。大野さんが直球の悲しい短調のメロディーをつけたのは自然なことだったでしょう。

みなさまご存知かと思いますが、TVアニメ主題歌の方も阿久さんの作詞作品です(作曲は宮川泰さん。これまたとてつもない強力なコンビですね・・・)。
こちらでは、戦地に赴く側(ヤマトの乗組員)の視点で描かれていますが、「ヤマトより愛をこめて」で阿久さんは今度は逆に、送り出す側からの視点でこの詞を書いた、という見方もできそうです。
(無論それ以外にも、正に戦地最中での個々の別れ、などの他、色々な構図も考えられます。タイトルが「ヤマトより愛をこめて」ですから、TVアニメ主題歌同様の視点もまたありきかもしれません)

映画版のエンディング・テーマをジュリーが歌う、となれば当時なら当然、阿久さんと大野さんのコンビに曲が委ねられます。
『ヤマト』のコンセプトに沿い歌詞のテーマを練った阿久さんが、作詞の過程でそのテーマそのものを、ジュリーの歌声と美貌、男らしさに捧げたという推測は成り立つと思います。
男が男にかける言葉とはどういうものであるのか・・・阿久さんはジュリーの曲であればこそ、そんな作詞に至ったのではないでしょうか。

もちろん大野さんもそうでしょう。阿久さんにしろ大野さんにしろ、当時、ジュリーのためなら身体を投げ出す、という各分野のプロフェッショナルな男性が、一体どれほどいたことか。
その最高峰の人材による、男性ならではのジュリーへの思いの結晶として作られた楽曲こそ、「ヤマトより愛をこめて」だと今になって僕には感じられます。男×男の強い気持ちが反映されているからこそ、それがまた女性ファンの大きな支持、感動を呼んだとも言えるのです。
その手の話になるとよく挙げられる「君をのせて」よりもむしろ、僕はこの「ヤマトより愛をこめて」の方にそれを感じるのです。

まぁ、僕はその手のセンスにはまったく疎い(何度か書いていますが、共にドーム参戦したYOKO君は、結構そちらの感覚には鋭いです。彼にはいずれの機会にこの考察の感想を聞いてみます)ですから、完全に勘違いの深読みかもしれませんが・・・。


いや、男×男と言ってもそれはまぁ・・・決して変な意味ではないのですよ。
僕が考える「ヤマトより愛をこめて」で描かれているシチュエーションとは・・・「護る」人はそれぞれ他に女性(たぶんね)がいて、その上で通わせる普遍的な情愛です。

ただ・・・時代は移り、ジュリーも65歳になってお髭姿でLIVEをやったりしているけれど、当時と同じように、ジュリーのためなら身を賭すという人は、今も各界にたくさんいるでしょう。
まったく別の低次元、遠く離れたところにいるただの一般人に過ぎない僕ですら、万が一ジュリーに一大事が起こったとしたら・・・何とかならないか、身を投げ出しても何かできないか、と無力ながらもそんなふうに考えるでしょう。
ですからそれは別段怪しい感情ではないのです。もっと基本的、一般的な、自然な情愛です。
男が男に惚れる、とはそういうことではないでしょうか。
そして、阿久さん達がジュリーに惚れていなければ、この曲は生まれようもなかった・・・と、”アニメのエンディーング・テーマ”という顔を持つ「ヤマトより愛をこめて」について、そこまで考えるのはやっぱり僕の飛躍し過ぎなのかな・・・?


さて、今回の記事は冒頭で「ヤマトより愛をこめて」収録のCDジャケットを3つ並べました。
アルバム『今度は、華麗な宴にどうぞ。』、ベスト盤『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』、そしてシングル盤。

(シングル盤のジャケットは、『JULIE SINGLE COLLECTION BOX』からCD盤のものをスキャンしました。改めて、このジャケットのジュリーは途方もなく美しいですねぇ・・・)

この3枚それぞれ、ヴァージョンが違うんですよね。
と言っても、3パターンの別ヴァージョン・トラックがあると僕が認識したのは、実はほんの少し前・・・昨年の夏のことなのです。

きっかけは、先輩ブロガーさん・星のかけら様の『シングルの旅』の御記事で、この曲のヴァージョン違いについて書いていらしたのを拝見した時でした。
僕はその時点で『今度は~』と『ロイヤル』のヴァージョン違いについては、『今度は~』を購入し聴いた時からの認識がありましたが、細部隅々に渡っての違いまでは検証していませんでした。にわかにアレンジフェチの血が騒ぎ、「よし、この機に徹底的に聴き比べてみよう」と思い立ったのです。

そこで「せっかく、改めてじっくり聴くんだから」と考え、手持ちの『JULIE SINGLE COLLECTION BOX』から『ヤマトより愛をこめて』を取り出し、遅まきながらシングル盤リリース時の追体験をしようとしました。
僕はこの『JULIE SINGLE COLLECTION BOX』の「ヤマトより愛をこめて」、てっきり『ロイヤル~』と同じトラックだとばかり思い込んでいて・・・何と聴くのはその時が初めてだったわけですが・・・。

「えっ?『ロイヤル』と違う!」

驚きましたよ。
『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』って言うくらいですから、当然それは、シングル・ヴァージョンをそのまま収載したベスト盤だとばかり考えていましたからね~。
不肖DYNAMITE、2012年にして初めて、正規の『ヤマトより愛をこめて』シングル・ヴァージョンを認識したことになります。
それにしても・・・YOKO君に『A面コレクション』を借りた時(『ジュリー祭り』よりも数年前の話です)には何も感じなかったなぁ。まぁ、当時はファンとしての心構えがドーム参加以降と比べて全然違いますから、それは仕方ないですか・・・。
というわけで、『A面コレクション』収録のこの曲がシングル・ヴァージョンなのか『ロイヤル~』のヴァージョンなのか、現時点で僕は把握しておりません。他の曲も含め、近い機会に検証してみなければなりませんねぇ・・・。

ということで。
それでは3つのヴァージョンがどのように異なるか、についての考察に移りたいと思います。

ミックス、マスタリングから判断すると、レコーディングはシングル・ヴァージョンが一番最初に行われたようです。
その後すぐに、アレンジ違いのアルバム・ヴァージョンのために追加トラック、ミックス作業があり、翌年リリースのベスト盤『ROYAL STRAIGHT FLUSH』のために改めてマスタリングされた、という順序でしょう。

厳密に言うと、シングル盤と『ロイヤル~』の違いについては、ヴァージョン違いと言うよりも「マスタリング違い」という表現が正しいかもしれません。
この2つの音源、構成楽器や各トラックのミックス・バランスはすべて同じなのです。
ただ、聴くとイントロから明らかに違いますよね・・・そう、『ロイヤル~』の方では、全体の音量をフェード・インさせているのです。
さらに、フェード・アウトのタイミングも異なります。シングル盤と比べて早めに幕を閉じるのです。

さて、大名盤『今度は、華麗な宴にどうぞ。』収録のアルバム・ヴァージョン。こちらはシングル盤、『ロイヤル』とはアレンジ、ミックスが異なります。
(ちなみにシングル盤とアルバム・ヴァージョンのフェード・アウトのタイミングはほぼ同時ですが、よ~く聴くとシングル盤の方がほんの僅かに長く音が残っています)
ただし、骨子となっている演奏のレコーディング・トラックは同一で、シングル盤からのトラックの足し算、引き算によるヴァージョン違い、ということになります。

足し算されたのは、右サイドにミックスされたオーボエ。
引き算されたのは、シングル盤では左サイドで強い主張をしていたリード・エレキギターと、左サイドで渋く鳴っていたアコースティック・ギターのアルペジオです。
あと、引き算まではいってませんが、ストリングスのミックス音量もアルバム・ヴァージョンでは弱めになっています。

引き算(オミット)されたトラック・・・アコギは完全に消えているようですが、エレキの方はかすかに鳴っているのが確認できますね。これはカセットテープ・レコーディング時代のヴァージョン違いではよく見受けられる、ミックス作業上の特徴。優れた耳を持つ人が聴けば、アコギの残響音も確認できるのかなぁ・・・。
僕の推測が誤っており、アルバム・ヴァージョンの方がシングルより先にレコーディングされた場合においても、ここまでの考察記述は翻りませんが、唯一、アコースティック・ギターについてのみ、後録りであった可能性は残ります。

足し算された方のオーボエ・・・これは大活躍していますねぇ。
大体において、アルバム『今度は、華麗な宴にどうぞ。』は、「バックの演奏が後ろに引っ込んでしまってもいいから、とにかくジュリーの声を前に出しまくれ!」という特殊なミックス・バランスで統一されています。演奏音は(音量レベル的には)ほとんど目立たないんですよ(ただ1つの例外が、「酔いどれ関係」のベース)。
そんな中、この曲のオーボエはそれでも大きな印象が残ります。シングル盤との比較があれば一層のことでしょう。
ギターが引っ込んでいるぶん、ヴォーカルの合間合間で自然に耳を奪われるのかもしれませんね。

ギターやオーボエの足し引きの中、不動の魅力を放つのはジュリーのヴォーカルと大野さんのピアノ。
この時期の大野さんのピアノ・レコーディングには独特の硬質感があって、僕は以前、「コンプレッサーでもカマしてんじゃないの?」と書いたことがありますが、どうやら当たっていたようです。


http://www.jasrac.or.jp/sakka/vol_15/ohno_inner1.html

いやぁ、大野さんにとってもやはりジュリーは、”身体を投げ出す値打ちがある”人であったことが、たとえハッキリそう言わずとも、クールで淡々とした語り口の中から滲んでいるように思えるではないですか~。
僕はこの大野さんのインタビュー、大好きです!

まぁしかし、「ヤマトより愛をこめて」・・・ジュリーのヴォーカルをはじめ、詞・曲・アレンジ・演奏どれをとっても大名曲ですね。
今さらながらですが感動しています。
それをこのヒヨッコに改めて知らしめてくれたのが、2013年・65歳のジュリーのヴォーカルだったというのが・・・繰り返しになりますが本当に凄いことだと思うわけです。

リリース時の1978年と言えば、ジュリーが前人未踏の”日本レコード大賞2連覇”に向けて勇躍していた年ですよね。
ところが、絶好の名曲となった「ヤマトより愛をこめて」は、映画とのタイアップということで受賞の対象外とされ、ジュリーは次のシングル「LOVE(抱きしめたい)」で勝負をかけることになったのだそうですね。
実は僕はこの経緯、ずっと知りませんでした。洋楽カバー曲が対象外なのは、西城秀樹さんの「YOUNG MAN」の時に知ったんですけど・・・。

先の大野さんのインタビューによれば、”「LOVE(抱きしめたい)」で2連覇は間違いない”と聞いていたが、ダメでした」とのことです。
もし「ヤマトより愛をこめて」だったら・・・と、ジュリーファンとしてはどうしても考えてしまいますよね。
だって、今じゃタイアップなんて当たり前ですからねぇ。むしろタイアップありき、でヒット曲が生まれることが多いですし。
その後、レコード大賞2連覇は細川たかしさんが最初に成し遂げたんでしたっけ・・・?


最後は余談になるんですけど、僕は『宇宙戦艦ヤマト』アニメ主題歌の方も大変な大名曲だと思っています。

Yamato3


↑ 『アニメソング大百科 Vol.1』より

昔から大好きな曲で、ブラスバンドでドラム叩いたこともありますよ~。
ブラスバンド・アレンジの場合のドラムの肝は、曲中何度も登場する派手なロールよりもむしろ、歌メロ直前の2小節にあります。「ん・た、ん・た、ん・た、ん・た・・・」と叩いて、楽曲全体のリズム表現の変化を他楽器に先んじてリードするのです。これが快感。
(でも今になって、その頃からトランペットやっとけば良かったなぁ、とも思う・・・)。

この曲は詞やメロディーも良いけど、一番惹かれるのはアレンジです。特にイントロ!
歌メロはハ短調なのですが、イントロ冒頭は勇壮な変ホ長調なんですよね~。それが、上記スコアで言うと2段目2小節目・・・そこから豪快なオーケストラの旋律が下降し、短調へと移行していくのです。最高にシビれます!

さてさて次回更新は・・・。
”セットリストを振り返る”シリーズ②となるか、もしかしたら貴重なタイミングもあることですし、拓郎さんについて書くかもしれません。まだハッキリ決めていません。

いずれにしても来週・・・僕もみなさまと同じく、週末の『吉田拓郎の千夜一夜』放映を楽しみに過ごしたいと思っております~。

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