沢田研二 「キャンディー」
from『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』、1974
1. 愛の逃亡者/THE FUGITIVE
2. ゴー・スージー・ゴー/GO SUSY GO
3. ウォーキング・イン・ザ・シティ/WALKING IN THE CITY
4. サタデー・ナイト/SATURDAY NIGHT
5. 悪夢の銀行強盗/RUN WITH THE DEVIL
6. マンデー・モーニング/MONDAY MORNING
7. 恋のジューク・ボックス/JUKE BOX JIVE
8. 十代のロックンロール/WAY BACK IN THE FIFTIES
9. 傷心の日々/NOTHING BUT A HEARTACHE
10. アイ・ウォズ・ボーン・トゥ・ラヴ・ユー/I WAS BORN TO LOVE YOU
11. L.A. ウーマン/L. A. WOMAN
12. キャンディー/CANDY
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年末、やっぱりバタバタしてしまって・・・すっかり時間が無くなってしまいました。
その間ジュリー界では、オフィシャル・サイトで拓郎さんの番組のTV放映時期の予告があったりしたわけですが・・・僕的に一番エキサイトしたのは、”若大将”と呼ばれていた現役時代の原辰徳監督にジュリーが曲を提供していた、という事実を初めて知ったことです(かの様ありがとうございます!)。
しかも2曲。
いずれも作詞・藤公之介さん、編曲・大野さんとのコンビで、「恋はうたかた」と「いくつもの季節」という曲なんですって!
そりゃもう、早速検索しましたよ~。
「恋はうたかた」
http://www.youtube.com/watch?v=giaEjlEYFb4
(「いくつもの季節」の方は見つけられなかった・・・)
おお~!これはキュート・ポップ系です。ジャングル・ビートのベースラインが渋い!
「都会は~蜃気楼♪」のトコのコード進行が斬新過ぎてビックリしました。いかにも定跡にとらわれないジュリーらしい作曲展開ですね~。
僕はアンチ巨人の阪神ファンですけど、それは野球というスポーツを楽しむ上で特定球団についてそう言ってるだけのことで、選手や監督個人については・・・阪神だろうが巨人だろうが他球団だろうが、ほとんどの野球人が憧れのスターです。現在の巨人にも、内海投手や坂本遊撃手など好きな選手もいてリスペクトしていますし、越智投手の復活も応援しています。
原さんのことも、現役時代から好感を持っていました。
レコードを出していたのは知ってたけど、こんなカワイイ歌をジュリーに提供して貰っていたとはねぇ~。
ちなみに原さんの歌唱力ですが、若き日のこの1曲だけで判断なさってはいけません。てらいのない素朴な味わいの歌声には定評があり、素人としてはかなり上手い方なんですよ~。
もしも来年ね、ジュリーの発議した「虎竜燕による巨人包囲網」が打ち破られ、ジャイアンツが連覇を成し遂げたとしたら・・・仕方ない、「敵ながらあっぱれ」ってことで、不肖DYNAMITEが「恋はうたかた」の考察記事を執筆し、ヤケクソで優勝のお祝いをしてあげようじゃあないの!
話が大幅に逸れました(汗)。
あと、このところの動きと言えば・・・ピーのイベント『瞳みのると過ごす年の瀬のひととき』にて、ピーから”全員タイガース”の具体的な予定についてお話があったとか・・・。
こりゃ来年の12月後半は、自分の誕生日がどうのこうのと言ってる場合ではなさそうですね!
そんなこんなで今年ももう残り僅かです。
”全然当たらないセットリスト予想”シリーズは今回でラスト。そしてこの記事が、2012年最後のブログ更新となります。
お正月コンサート・セットリスト予想として記事執筆構想を温めていた曲は残り3曲あったのですが、うち2曲はまた次の機会に、ということになりました(お正月にジュリーが歌ってくれたら、”セットリストを振り返る”シリーズにてすぐに書きたいと思っておりますが、まぁ僕の予想は大方ハズレますから・・・)。
まずは、その書けなかった2曲について少しだけですがここで触れておきます。
1曲は、アルバム『彼は眠れない』から、「噂のモニター」。
吉田建さんの作曲作品です。これは、「現在の鉄人バンドスタイルでバッチリはまる過去の曲は?」という主旨で語るつもりでした。
同じく建さん作曲で、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』収録の「FOXY FOX」と比較すると、尖ったセヴンス・ロック・ナンバーの雰囲気はよく似ているのに、アレンジの手法がまったく違います。「FOXY FOX」ではそのベーシストとしての腕を前面に押し出しているのに対し、「噂のモニター」は一瞬「これ、ベース入ってるの?」とすら思えるほどに、自身の演奏ミックス・バランスは控え目です。
その変化から窺えるのは、ジュリーのアレンジャー、プロデューサーとしての吉田建さんの意気込み。JAZZ MASTER期の中でもとても重要な曲だと考えています。
下山さんのアコギ、柴山さんのエレキ、というアンサンブルがいかにもマッチしそうで、是非鉄人バンドの演奏で聴いてみたいと思っているのですが・・・。
もう1曲は、アルバム『告白』から「護り給え」。
実現すれば、LIVEで採り上げられるのは『ワイルドボアの平和』以来6年ぶりということになります。「今の世相、社会に対してのジュリーの想い」というテーマで予想したもので、少し前までは今回のセットリスト予想、本命中の本命でした。
しかし今は「これはどちらかというと、ジュリーの想いよりむしろ、ファンの側からジュリーに対する気持ち」という感じなのかな、と考えが変わってきました。
例の、選挙応援演説・・・僕はジュリーの決断を尊重こそすれ抵抗は皆無でしたが、ただただ色々なことが心配で、当日は「護り給え」とひたすら祈っていました。同じ頃、おふたりのJ先輩もこの曲のタイトルを挙げていらっしゃいました。
しかし無事に終わってみれば、僕などが心配するようなことは何も無かったという・・・。「ジュリーらしいなぁ」と感心するばかりでした。
そのため、セットリスト予想していた「護り給え」についての心構えはずいぶん変わりました。
もしお正月に歌ってくれたら、純粋に楽曲の素晴らしさ(テンポこそ異なりますが、「カガヤケイノチ」同様の優しいワルツです)や、リリース当時から現在に至るまでの、この曲に込めるジュリーの世界観の変化などについて僕なりに考えていることもありますので、改めて書いてみたいと思います。
残った1曲が本日のお題です。
アルバム『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』から。
「キャンディー」、勝手にご指名!
この曲は、これまで3人のJ先輩からリクエストを頂いていました。最初にリクエストをくださった先輩のコメントは、うわ・・・2009年です。ずいぶんお待たせしてしまいました。まだこちらにいらしてくださっていると良いのですが・・・。
僕が「キャンディー」を今回のセットリスト予想に挙げたコンセプトは
”絶対にジュリー自身、大のお気に入りの曲のはずなのに、最近LIVEでご無沙汰になっているナンバー”
というもの。
この観点ではもう1曲・・・すでに記事執筆済みの「ジャスト・フィット」も有力で、いずれかが今回のお正月コンサートのセットリストに選ばれ、ハジけて歌うジュリーが見られるのではないかなぁ、と考えた次第です。
もちろん、2曲共歌ってくれたら最高なんですけどね!
さてお題の「キャンディー」ですが、普通に表記するなら「CANDY」と英語タイトルにするのが正しいんでしょうけど、ここでは敢えてカタカナにしています。
と言うのは・・・やはりこの最高にカッコ良いアルバム『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』という名盤の、ある特性を考えましてね・・・。
このアルバムは、古き良き60年代ポップン・ロールの真髄を、東洋の若き歌手が、プログレやハードロック、アフターサイケ全盛期の中で敢えて押し出したというプロモート戦略がまず素晴らしい。
「昔何処かで聴いたような、懐かしい感じ」を世界中のロック・リスナーに捧げる、というね・・・。言ってみればポピュラー・ミュージックとしての”ロック”の直球手法なのです。純粋に良い楽曲と、本物のヴォーカリストが揃っていなければ不可能なプロモート。
もちろん、ルックス含め当時のジュリーほどそれにうってつけの人材はいません。正しく、日本に沢田研二あり!ですよ。
「良き時代のポップス、ロックンロール」・・・特に日本のジュリーファンにとってそんな感慨を一層かきたてるのは、各収録曲に英語タイトルと日本語タイトルの2通りが用意されている、という粋な構成。これ、洋楽レコード・コレクターにとってはたまらないものがあるのです。
英語タイトルがまずあって、それをただカタカナにしただけの”邦題”が並べて書いてあるだけでも何かウキウキする感覚・・・分かる方も多くいらっしゃるはず。
例えばビートルズのファーストですと、おそらくみなさまご存知の曲で「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」(ジュリーのカヴァー・ヴァージョンも最高過ぎます!)など、単にカタカナにした邦題ならではの味わいがあります。
ちなみにこの曲、後に「その時ハートは盗まれた」という別の邦題が一部流れたりもしていますが、そんな感じの日本語解釈による邦題もまたイイもので、『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』にも、タイトルチューンの「愛の逃亡者」をはじめ、「悪夢の銀行強盗」「恋のジューク・ボックス」「十代のロックンロール」「傷心の日々」と、イカした和製タイトルが並んでいますね。
こうした”邦題”の魅力については、このアルバムからまたしかるべき曲をお題に採り上げた際に、暑苦しく語ろうと思っています。
さて、純粋に楽曲的な”古き良き感覚””永遠の懐かしさ”といった要素について。
70年代にこうしたポップン・ロール・スタイルを掲げて頭角を現したアーティストとして、エルトン・ジョンが挙げられると思います。ジュリーのこのアルバムにも同じテイストがあって、「十代のロックンロール」などは初めて聴いた時に「エルトン・ジョンみたいだなぁ」と感じたものでした。
そして、エルトン・ジョンの大きな魅力のひとつが、「懐かしさ」だけに留まらない斬新な楽曲構成・・・そうそう簡単にはマネして弾けないぞ、という緻密なコード進行にあります。それを究極にポップに仕上げ、理論的な難しさを全く感じさせないところが、彼の職人的な素晴らしさだと思うのです。
『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』収録全トラックの作曲者であるウェイン・ビッカートンにも、エルトン・ジョン同様の卓越したセンスがあります。
この人物については、不勉強な僕があれこれ語ることはやめにしましょう。いわみせんぱ・・・いや、いわみ先生の素晴らし過ぎるこちらの記事を是非ご参照くださいませ(いわみ様は現在地元の議員さんとしてご活躍中で、多忙につき残念ながらブログの更新は中断しています)。
そんなビッカートン入魂のアルバム収録全12曲の中、最も斬新なコード展開を擁する楽曲こそ、本日のお題「キャンディー」です!
キャッチーで親しみやすい、極上のポップ・ロック・・・それがいざ構成を紐解いてみると、複雑極まりない転調をバシバシ繰り返しているという、一筋縄ではいかない素晴らしい大名曲なのですよ~。
いざ採譜してみますと、まず初っ端の
♪ Candy~ ♪
F#
は、コードネーム通りのトニック、嬰ヘ長調でスタート。
ところが瞬時に
♪ I love you girl you know I do
E B
I want you to distraction girl You know its true ♪
F#m G#7 C#m
と進むと、「ありゃ、一体どういう理屈になってるんだこれ?」と戸惑いながら和音を探すことに・・・。少なくとも「F#m→G#7→C#m」の流れは嬰ハ短調もしくはホ長調特有の進行。
続く
♪ I know it true What can I do ♪
E F# E F#
で登場する「E」「F#」がそれぞれ「B」コードに向かうサブ・ドミナントとドミナントになっていることが曲調から判明し、ここではいつの間にかロ長調へと転調していることが分かります。
そうかと思えば息つく暇もなく
♪ Candy, you know you got me hooked on you ♪
B E C#
の最後の「C#」はメロディー冒頭の「F#」のドミナントとして機能していて、そのまま2番へと流れ、再び嬰ヘ長調に移行していくという・・・。
これほど複雑に練られたコード進行にも関わらず、メロディーにはまったく無理がありません。むしろ恋する主人公の滾る想いが聴き手にストレートに伝わってくるのが本当に凄いです。
こういう作曲スタイル、曲想はジュリーとしても手が合うのか、ヴォーカルの切れ味は言うに及ばず、後に自ら作曲した「夜の河を渡る前に」のコード進行の理屈とも共通点を見出すことができます。
まぁしかし・・・これまで他の曲でも散々書いてきたことの繰り返しになりますが、「キャンディー」についても、一番素晴らしいのはジュリーのヴォーカルですよ!
アルバム収録曲の中では「マンデー・モーニング」と双璧を為す、”ロック”なキレっぷり。加えて「キャンディー」の場合は、ジュリー必殺の”かすれ声攻撃”が炸裂していますからね~。
普段は艶のある声のヴォーカリストが、かすれた声で狂おしく歌う・・・僕にとってはその代表格がジョン・レノンかジュリーか、ってくらいです。
ジョン・レノンのかすれ声逸話で有名なのは、やはり「ツイスト・アンド・シャウト」でしょうか。
ビートルズのファースト・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』が、当時まだ無名だった彼等に用意されたたった1日限定のスタジオ作業でレコーディング・トラックを完了したという驚くべき事実(先にシングルとしてリリースされた2枚分4曲を除いた全10曲。正確には、セカンド・アルバム収録「ホールド・ミー・タイト」の前身ヴァージョンを加えて11曲)。
朝からブッ続けの作業・・・夜の10時を過ぎた頃、最後の最後に演奏され歌われた曲こそが「ツイスト・アンド・シャウト」でした。折しも風邪をこじらせてしまっていたジョンが、ドロップをなめながら最後の声を振り絞ってレコーディングされた第1トラック(!)が、世に音源としてリリースされ今なお世界中で多くの人に聴かれている、あの”かすれ声シャウティング・ヴォーカル”なのですね。
そこで僕がふと想像するのは、ジュリーのアルバム『愛の逃亡者/THE FUGITIVE』、ロンドン・レコーディングのスケジュールです。
ジュリーは売れっ子だったし何しろ忙しかったし、そうそう腰を据えて何か月もかけてレコーディング、とはいかなかったでしょう。発音の練習などをスタジオで費やした時間は省き、真にヴォーカル・レコーディングに費やされた時間というのは、とても少なかったのではないでしょうか。
朝から晩までかけて1日に数曲のヴォーカル・本番録り、のパターンも充分考えられます。
長時間酷使した喉で、1日の最後に録音された「キャンディー」が、結果ジョンの「ツイスト・アンド・シャウト」のような奇跡の”かすれ声ヴォーカル”トラックを生んだ・・・実際どうだったかは知る由もありませんが、僕はそんなふうに想像してしまうのです。
ジュリーのLIVEを観るようになってから、ジュリーはステージ終盤に向かってどんどん声が出るようになってくる、と感じることが多いです。
「キャンディー」のヴォーカルに、僕はそんな雰囲気を感じるんだけどなぁ・・・。生でそれが体感できたら、どれほど幸せなことか。
ということで。
今年も1年間、お世話になりました。
拙ブログも老虎ツアーを機にアクセスが増え、とても励みになっています。遊びにいらしてくださったみなさま、本当にありがとうございます。
年末年始は留守にします(たぶん)ので、記事で新年のご挨拶をさせて頂くのは、3日の夜か4日になる予定です。
その頃はもう、『燃えろ東京スワローズ』初日が目前に迫っているんですね・・・。別館side-Bの方も準備もしなければ。
それではみなさま、よいお年をお迎えくださいませ。
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